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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/50 20160101AFI20241227BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20241227BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024521795
(86)(22)【出願日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2023019647
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 卓哉
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-127021(JP,A)
【文献】特開2020-195223(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037815(WO,A1)
【文献】特開2017-070177(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031988(WO,A1)
【文献】特開2014-079149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/50
H02J 50/10
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を受電し、受電した電力を接続された負荷装置に供給するとともに次の送受電装置に電力を送電する中間送受電装置を複数備えたワイヤレス給電装置において、
前記負荷装置は、整流器と負荷を有し、
複数の前記中間送受電装置のそれぞれは、
受電コイルを有し電力を受電する受電装置と、
互いに直列接続された送電コイルと共振キャパシタを有し電力を送電可能な送電装置と、
前記受電装置と並列に接続されるキャパシタと、
一方の端子は前記キャパシタと接続され、他方の端子は、前記送電装置および前記負荷装置に接続され、前記キャパシタと前記受電コイルの並列接続に対し直列接続されているとともに、前記共振キャパシタと直列接続されたインダクタと、
を備え
第1の中間送受電装置の出力電圧は、前記第1の中間送受電装置の前記送電コイルと、前記第1の中間送受電装置の後段の第2の中間送受電装置の前記受電コイル間の結合係数の逆数と、前記受電コイルのインダクタンスを前記送電コイルのインダクタンスで除した値の平方根とを乗じた値に、さらに前記第2の中間送受電装置の入力電圧を乗じた値であり、前記インダクタのインダクタンス値と前記受電コイルのインダクタンス値を同じ値とすることで前記各中間送受電装置での電圧を一定の範囲に収めることを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項2】
前記第1の中間送受電装置の出力電圧は、前記第2の中間送受電装置の入力電圧の値と等しいことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項3】
前記送電コイルと前記共振キャパシタとの間の第一共振周波数と、前記受電コイルと前記キャパシタとの間の第二共振周波数と、前記インダクタと前記キャパシタとの間の第三共振周波数とが互いに一致するように、前記送電コイル、前記共振キャパシタ、前記受電コイル、前記キャパシタ、前記インダクタの各々を構成することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項4】
電源に接続され、複数の中間送受電装置の1つに電力の送電を行う送電装置を備え、前記電源に接続された送電装置には、出力電圧と出力電流の位相差を検出する検出手段を有し、検出される位相差があらかじめ定められた範囲内にない場合に、前記電源からの送電を停止することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項5】
電源に接続され、複数の中間送受電装置の1つに電力の送電を行う送電装置、前記中間送受電装置または前記負荷の電圧を検出する検出手段、を備え、検出された電圧があらかじめ定められた範囲内にない場合に、前記電源からの送電を停止することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項6】
前記電源からの送電を停止する制御はコントローラで行うことを特徴とする請求項に記載のワイヤレス給電装置。
【請求項7】
複数の中間送受電装置の最終段の中間送受電装置には、後段に電力を送電しないための構成を備えたことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ワイヤレス給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁界を介してワイヤレスで電力伝送を行う磁界結合型ワイヤレス給電技術がある。この磁界結合型ワイヤレス給電技術において、中継装置を用いて、複数のワイヤレス給電装置を多段接続し、順々に電力伝送を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6681574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中継装置を複数用いて順次ワイヤレス給電を行うシステムでは各中継装置で所望の電圧および電力供給が行える制御が必要になる。しかし、制御のために交流(AC)で受電し、直流(DC)に変換し、再度送電のためにAC変換すると、装置構成が複雑化し、部品数の増加、および損失が増加するという問題があった。
【0005】
本願は、上述のような問題を解決するためになされたもので、各中間送受電装置で直流から再度交流変換することなく各負荷電圧をあらかじめ定められた範囲内に制御することができるため、効率が向上するワイヤレス給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示されるワイヤレス給電装置は、
電力を受電し、受電した電力を接続された負荷装置に供給するとともに次の送受電装置に電力を送電する中間送受電装置を複数備えており、負荷装置は、整流器と負荷を有し、複数の中間受電装置のそれぞれは、受電コイルを有し電力を受電する受電装置と、互いに直列接続された送電コイルと共振キャパシタを有し電力を送電可能な送電装置と、受電装置と並列に接続されるキャパシタと、一方の端子はキャパシタと接続され、他方の端子は、送電装置および負荷装置に接続され、キャパシタと受電コイルの並列接続に対し直列接続されているとともに、共振キャパシタと直列接続されたインダクタと、を備え
第1の中間送受電装置の出力電圧は、第1の中間送受電装置の送電コイルと、第1の中間送受電装置の後段の第2の中間送受電装置の受電コイル間の結合係数の逆数と、受電コイルのインダクタンスを送電コイルのインダクタンスで除した値の平方根とを乗じた値に、さらに第2の中間送受電装置の入力電圧を乗じた値であり、インダクタのインダクタンス値と受電コイルのインダクタンス値を同じ値とすることで各中間送受電装置での電圧を一定の範囲に収めることを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本願に開示されるワイヤレス給電装置によれば、各中間送受電装置で直流から再度交流変換することなく各負荷電圧をあらかじめ定められた範囲内に制御することができるため、効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るワイヤレス給電装置の全体図である。
図2】実施の形態1に係る中間送受電装置の構成を説明する図である。
図3】実施の形態1に係る中間送受電装置の複数配置を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る中間送受電装置の最終段の構成を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る中間送受電装置の各コイルのインダクタンスと結合係数を説明する図である。
図6】実施の形態1に係るワイヤレス給電装置の動作を説明する図である。
図7】実施の形態1に係る交流出力電源の半導体スイッチのオン、オフを説明する図である。
図8図7の半導体スイッチング動作時の出力電圧波形の一例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る交流出力電源の電流検出部の配置を説明する図である。
図10】実施の形態1に係るワイヤレス給電装置の全無負荷時の動作を説明するフローチャートである。
図11図10における、電流と電圧の位相差を説明する図である。
図12】比較例1の構成を示す図である。
図13】比較例2の構成を示す図である。
図14】比較例3の構成を示す図である。
図15】実施の形態1に係る中間送受電装置の効果を説明する等価回路に変換する範囲を示す図である。
図16図15の範囲の等価回路図である。
図17】実施の形態1に係る中間送受電装置の多段接続の構成を説明する図である。
図18】実施の形態2に係る交流出力電源と複数の中間送受電装置の概略構成図である。
図19】実施の形態2に係るワイヤレス給電装置の全無負荷時の動作を説明するフローチャートである。
図20】実施の形態1、2のコントローラのハードウェアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願に係るワイヤレス給電装置の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態における基本的な構成を説明する。図1は実施の形態1の基本的な構成を説明するワイヤレス給電装置の全体図である。
〈交流出力電源と送電コイル〉
直流電力を交流電力に変換して出力する交流出力電源01と、交流出力電源01に直接接続された共振モジュール02と、第1送電コイル03と、複数の中間送受電装置11、12、・・・1と複数の負荷装置21、22、・・・2で構成される。交流出力電源01は、図1においてフルブリッジインバータで構成される。半導体スイッチの種類は問わない。また、直流から交流に変換できるスイッチ構成であればフルブリッジ構成でなくてもよい。
【0011】
共振モジュール02はキャパシタで構成される。最もシンプルな構成として、図1に第1送電コイル03に対して直列にキャパシタが接続される構成を示したがその他の構成でもよい。
【0012】
〈中間送受電装置〉
複数の中間送受電装置11~1xのうち、中間送受電装置11~1x-1は同じ構成である。中間送受電装置11の構成例を図2に示す。中間送受電装置11は、受電コイル101、電圧制御モジュール102、共振キャパシタ103、送電コイル104、負荷装置21で構成される。受電コイル101の後段に電圧制御モジュール102が接続される。電圧制御モジュール102の後段に、負荷装置21、および送電コイル104と共振キャパシタ103からなる回路が並列に接続される。共振キャパシタ103および送電コイル104は直列接続されている。
【0013】
中間送受電装置11内の電圧制御モジュール102は、キャパシタとインダクタの組で構成される。キャパシタは、受電コイル101に対して並列に接続され、インダクタはキャパシタと受電コイル101の並列接続構成に対して直列接続される。なお、後述する〈中間送受電装置の設定〉に記載の関係が成り立つのであれば、上記構成例に限る必要はない。
【0014】
負荷装置21は整流用のダイオードブリッジ201の後段に平滑用のキャパシタ202が接続され、その後段に負荷203が接続される。負荷203は、インバータ、モータ、あるいはその他照明等の種々の負荷機器でもよい。なお、図1では省略するが、後述する図9に示すように交流出力電源01には電流が検出できるように電流検出部71が接続されている。
【0015】
〈中間送受電装置の複数配置〉
中間送受電装置11~1xは次のように配置構成される。中間送受電装置11の受電コイル101は、第1送電コイル03と近接配置され、磁気結合する。中間送受電装置12の受電コイル101は、中間送受電装置11の送電コイル104と近接配置され、磁気結合する。中間送受電装置13~1についても同様の配置で構成される。
【0016】
中間送受電装置13以降の中間送受電装置1i-1~1i+1を配置を図3に示す。中間送受電装置1の受電コイル101は、i-1番目の中間送受電装置1i-1の送電コイル104i―1と近接配置され、第i番目の中間送受電装置1の送電コイル104は、第i+1番目の中間送受電装置1i+1の受電コイル101i+1と近接配置される。
【0017】
最終段に配置される中間送受電装置1図4に示す。中間送受電装置1は送電コイル104部分を電圧制御装置後段の送電装置を接続しない、あるいは開放する回路60を持ち、開放状態とする。
【0018】
〈中間送受電装置の設定〉
図5に中間送受電装置1、1i+1の各コイルのインダクタンスと結合係数を示す。
「送電コイル104と受電コイル101 i+1間の結合係数kの逆数」と、「受電コイル101 i+1のインダクタンス値Lを送電コイル104のインダクタンス値Lで除した値の平方根」を乗じた値が1に近い値となり、電圧制御装置1i+1のインダクタのインダクタンス値Lと受電コイル101 i+1のインダクタンス値Lが同程度とする。この構成の理由については後述する〈電圧制御モジュールの効果を発揮する理由の説明〉にて詳細に説明する。











【0019】
〈ワイヤレス給電装置の動作〉
次に本装置の動作について説明する。動作例説明時に中間送受電装置の数が定まっていないと説明が煩雑になるので、図6のように、中間送受電装置1i-1、1、1i+1の3つの場合について説明を行う。中間送受電装置1i-1~1i+1に負荷装置2i-1~2i+1が接続される。なお、中間送受電装置の数が増減しても、基本的な動作は同じである。
【0020】
まず電力投入開始シーケンスを始める。起動時においては3つの負荷装置2i-1~2i+1が全て無負荷状態である。一方で負荷装置2i-1~2i+1のキャパシタ202i-1~202i+1に電荷が蓄積されていないため、このキャパシタ202i-1~202i+1の充電のために動作時に有効電力が供給される。
(1)あらかじめ定められた周波数で、交流出力電源01の半導体スイッチQ1~Q4をオンオフする。すなわち、図7に示すように対角方向のスイッチの組をオンまたはオフする。このような動作により、例えば出力電圧は図8のようになる。これはフルブリッジインバータの標準的なスイッチング動作である。位相シフトで実現してもよいし、PWM(Pulse Width Modulation)で実現してもよい。
(2)直流電圧Vが入力され、半導体スイッチQ1とQ4をオフ、Q2とQ3をオンにした状態と、半導体スイッチQ1とQ4をオン、Q2とQ3をオフにした状態をあらかじめ定められた周波数で繰り返す。これにより交流出力電源01よりから交流電圧Voutを出力する。
(3)この動作により、共振モジュール02および第1送電コイル03に交流電力を供給する。第1送電コイル03に交流電流が通流することにより、第1送電コイル03の周囲に磁界が発生する。
(4)この磁界が中間送受電装置1i―1の受電コイル101i-1に鎖交し、受電コイル101i-1に誘導起電力が生じ、電流が流れる。ここで発生した電流は電圧制御モジュール102i-1を介して、負荷装置2i-1のキャパシタ202i-1を充電する。
(5)同時に中間送受電装置1i-1の送電コイル104i-1に電流を供給する。これにより、送電コイル104i-1の周囲に磁界が発生する。
(6)この磁界が中間送受電装置1の受電コイル101に鎖交し、受電コイル101に誘導起電力が生じ、電流が流れる。ここで発生した電流は電圧制御モジュール102を介して、中間送受電装置1に接続された、負荷装置2iのキャパシタ202を充電する。
(7)同時に中間送受電装置1の送電コイル104に電流を供給する。これにより、送電コイル104に交流電流が通流することにより、送電コイル104の周囲に磁界が発生する。
(8)この磁界が中間送受電装置1i+1の受電コイル101i+1に鎖交し、受電コイル101i+1に誘導起電力が生じ、電流が流れる。ここで発生した電流は電圧制御モジュール102i+1を介して、中間送受電装置1i+1に接続された負荷装置2i+1のキャパシタ202i+1を充電する。
(9)ここで各負荷装置2i-1~2i+1が、あらかじめ定めた電圧を超え次第起動し、電力が供給される。なお、本実施の形態の負荷装置2i-1~2i+1の入力電圧は、ほぼ同じになる動作となる。
(10)中間送受電装置2i+1が最終段1の場合、送電コイル104への経路は、図4に示す回路60により開放されている状態となる。
【0021】
〈全無負荷条件〉
また動作中に、各負荷装置2i-1~2i+1の全てがほぼ無負荷、あるいは著しく軽負荷になることがありうる。このような場合、各中間送受電装置1i-1~1i+1の電圧が過剰に上昇するのを防ぐために、次の動作を行う。図9に電流検出部71を含むフルブリッジインバータの交流出力電源01および中間送受電装置1i-1を示す。電流検出部71で検出された電流は、コントローラ72に入力され、コントローラ72は交流出力電源01を制御する。図 10にフローチャートを示す。
(1)電流検出部71の電流を検出し(図10中、ステップS1)送電コイル104i-1~104i+1の電圧と電流の位相差(図11中、Phase difference)を常時監視しておき(ステップS2)、あらかじめ定めた位相差よりも大きくなり、あらかじめ定めた範囲外になったときに(ステップS3、No)、無負荷あるいは著しい軽負荷と判定し(ステップS4)、電力供給をやめる(ステップS5)。あるいは位相シフト制御において、出力電圧を下げるといった動作を行う。
(2)また、あらかじめ定めた範囲外になった後も、あらかじめ定めたタイミングで電力供給を行い、位相差があらかじめ定めた範囲内にあれば(ステップS3、Yes)再度電力供給を継続し(ステップS6)、あらかじめ定めた範囲の外にあれば無負荷状態が継続していると判定し、電力供給を行わない(ステップS5)。
【0022】
〈比較例の構成と比較しての優位性と効果の説明〉
ここでは本実施の形態の構成が比較例1~3に対して有効である理由を示す。
比較例1.
比較例1としては図12のように、中間送受電装置において受電した電力を一度直流に変換し、再度交流に変換する構成が考えられる。図12では簡略化のために中間送受電装置61~63の3つを示している。中間送受電装置61~63の内部に交流から直流、直流から交流への変換手段(交流-直流-交流変換手段)が配置されている。中間送受電装置61~63のそれぞれに、負荷装置21~23が接続されている。
【0023】
この比較例1の構成は、中間送受電装置61~63の各段の供給電圧が装置構成によらず常時制御可能なことがメリットである。一方で交流から直流、直流から交流変換を行うので、損失が生じ、接続数が増えるほど、その損失は大きくなっていく。また、交流-直流-交流変換を行うため、インバータおよびそれを構成する半導体スイッチ、半導体スイッチを駆動するための制御回路などがそれぞれの中間送受電装置61~63に必要となり、コスト高および装置サイズの増大を招く。
【0024】
比較例2.
一方で、交流-直流-交流変換を行わず、交流のまま、受電コイルから次の送電コイルに電力供給する構成を図13に示す。図では簡略化のために中間送受電装置81~83の3つを示している。中間送受電装置81~83には、交流-直流-交流変換手段を有さない。中間送受電装置81~83のそれぞれに、負荷装置21~23が接続されている。
【0025】
これは直列共振型のワイヤレス給電構成に、負荷装置21~23を並列に接続した構成である。この構成において、ワイヤレス給電を複数段接続し、電力供給することは可能である。しかし、中間送受電装置81~83に接続された負荷装置21~23の消費電力に応じて、中間送受電装置81~83の各送電コイル104-1~104-3に印加される電圧が大幅に変わってしまう。3つ以上の接続となる次段、次々段などはさらに電圧が変動する恐れがあり、適切な電圧で各負荷にワイヤレス給電が実現できないという課題がある。
【0026】
すなわち、ある条件で適切に電力供給できていたとしても、負荷装置21~23のどれか一つでも電力消費が変動すれば接続段全体の電圧に影響してしまう。この問題は直列共振型ワイヤレス給電システムにおける疑似的な電流源特性による。ある範囲までは電流一定を負荷側に流すので、負荷装置21~23内の負荷のインピーダンスが変動すると電圧が変動する。この電圧変動が次の段の出力電圧を変化させる。つまり中間送受電装置全段で電圧一定(または電圧を一定範囲内に収めること)を実現することが原理的にできない。
【0027】
比較例3.
また、直列共振型のワイヤレス給電に、負荷装置21~23を直列に接続した構成について図14に構成例を示す。図では簡略化のために中間送受電装置91~93の3つを示している。比較例2と同様、中間送受電装置91~93には、交流-直流-交流変換を有さない。負荷装置21~23を、中間送受電装置91~93の各送電コイルおよび受電コイルに直列接続した場合、その直列接続のワイヤレス給電システムにおける疑似的な電流源特性から、負荷消費電力変動に伴う、送電コイルの印加電圧(電流)変動影響が少なくなる。しかしこの構成では各負荷装置21~23のどれか一つでも無負荷およびそれに近い軽負荷状態になってしまうと、電力供給が実行できなくなる。無負荷に近い状態、つまり負荷装置21~23の実効的な抵抗値が大きい状態になると、共振特性から外れ、電流源特性が維持されなくなる。また、たとえ電流源特性を維持していたとしても、負荷装置両端の印加電圧が過大になるため現実的ではない。電流が一定のまま、負荷抵抗値が増加すればすなわち電圧が増加する。
【0028】
これら比較例1~3に対し、図1に示した実施の形態1の構成では、中間送受電装置11~1の受電コイル101~101の後段に電圧制御モジュール102~102を接続し、負荷装置21~2xと送電コイル104~104xを並列に接続することで上述した比較例1~3の課題を全て解決している。このような構成にすることで、中間送受電装置11~1ごとの交流-直流-交流変換がなくなるため、損失を低減可能であるとともに装置サイズおよび構成部品の低減も可能である。
【0029】
また負荷装置21~2の電力消費によらず、送電コイル104~104に印加する電圧を一定にすることができる。本来、この構成においては電力消費が少ない場合に電圧が増大することが課題となるが、このような継続接続型の構成を採用することにより、ある中間送受電装置において電力消費が無くとも、いずれかの中間送受電装置および負荷装置において電力消費があれば、各中間送受電装置における電圧をほぼ一定にすることが可能である。つまり、負荷装置の無負荷状態にも対応している。
【0030】
例外として、全ての負荷装置が無負荷になった場合は、電圧が上昇してしまうが、これについても前述した方法で交流出力電源01側の電圧と電流の位相差の検出により制御が可能である。
【0031】
〈電圧制御モジュールの効果を発揮する理由の説明〉
ここで実施の形態1の電圧制御モジュール102の構成が効果を発揮できる理由について等価回路と数式を用いて説明する。まず1対の中間送受電装置1、1i+1の等価回路を考える。これは、図1の第1送電コイル03および共振モジュール02と中間送受電装置11間と考えてもよい。図15に等価回路に変換する該当箇所を示す。電圧制御モジュール以降をZout_i+1とまとめる。図16図15の該当箇所の等価回路を示す。ここで、各インピーダンスをZ、Z、Z、Zとする。それぞれのインピーダンスを次のように求める。
【0032】
【数1】
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
【数6】
【0038】
【数7】
【0039】
【数8】
【0040】
仮に伝送効率を、ηを1とすると、
【数9】
【0041】
このとき出力電圧Vout_i+1は次のようになる。
【数10】
【0042】
ここで式(12)、(13)を式(11)に代入する。
【数11】
【0043】
【数12】
【0044】
式(14)より、出力電圧Vout_i+1の負荷抵抗依存がないことがわかる。すなわち、入力電圧Vin_jに対して出力電圧Vout_i+1が、結合係数とコイルインダクタンスL、Lで定まる。
【0045】
つまり、中間送受電装置を複数段接続しても、各中間送受電装置での電圧を負荷によらず、一定の範囲内に収めることが理論上可能であることが示されている。例えば、以下の式(15)に示すように、出力電圧Voutと入力電圧Vinを等しくすることができる。これは、「送電コイルと受電コイル間の結合係数kの逆数」と、「受電コイルのインダクタンス値L(L)を送電コイルのインダクタンス値L(L)で除した値の平方根」とを1にした状態である。
【0046】
【数13】
【0047】
実用上は、伝送効率ηの要素を考慮して出力電圧Voutと入力電圧Vinとが等しくなるように補正する。例えば伝送効率が0.9程度であれば、「送電コイル(インダクタンス値L)と受電コイル(インダクタンス値L)間の結合係数kの逆数」と、「受電コイルのインダクタンス値Lを送電コイルのインダクタンス値Lで除した値の平方根」とを1.1程度にする。図17に多段接続時の等価回路図と電圧を示す。これは、図15の回路の等価回路である図16を多段に接続したものと等価である。ある中間送受電装置の入力電圧と出力電圧が等しいということは、その後段に接続される中間送受電装置間の入力電圧と出力電圧も等しくなることを示している。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態2は、図18に示すように、実施の形態1に加えて、中間送受電装置11と交流出力電源01との間に無線通信機構08を備える。なお、図示していないが中間送受電装置間にも無線通信機構08を備える。中間送受電装置11には、電圧検出部73を配置する。なお、無線通信機構08に電圧検出部73で検出した電圧を送信する。送信された電圧情報はコントローラ72で受信する。
【0049】
次に動作について図19のフローチャートにて説明する。
(1)電圧検出部73の電圧を検出し(図19中、ステップS11)、コントローラ72で判定を行う(ステップS12)。検出電圧があらかじめ定めた範囲を超える場合には、(ステップS13、No)、無負荷あるいは著しい軽負荷と判定し(ステップS14)、電力供給を停止する(ステップS15)。あるいは、出力電圧を下げるといった動作を行う。
(2)また、電圧があらかじめ定めた範囲内にあれば(ステップS13、Yes)再度電力供給を継続し(ステップS16)、あらかじめ定めた範囲の外にあれば無負荷状態が継続していると判定し、電力供給をやめる(ステップS15)。
(3)また、あらかじめ定めた範囲外になった後も、あらかじめ定めたタイミングで電力供給を行い、電圧があらかじめ定めた範囲内になれば(ステップS13、Yes)再度電力供給を継続し(ステップS16)、あらかじめ定めた範囲の外にあれば無負荷状態が継続していると判定し、電力供給を行わない(ステップS15)。
【0050】
このような実施の形態2の構成により、電流と電圧の位相差検出が不要となる。また本構成においても、全ての中間送受電装置の電圧を厳密に管理する必要がなく、どこか1つの中間送受電装置の出力電圧の検出で足りる。ワイヤレス給電装置を多段接続した構成においては応用上、各装置間で何らかの通信モジュールが搭載されることがありうる。そういった場合に追加の構成なく、電圧値を直接検出および制御できるところに本実施の形態構成の優位点がある。
【0051】
コントローラ72内のマイコンのハードウェアの一例を図20に示す。プロセッサ100と記憶装置200から構成され、図示していないが、記憶装置はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100は、記憶装置200から入力されたプログラムを実行することにより、図11図19で上述した無負荷状態の制御を行う。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果等のデータを記憶装置200の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0052】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0053】
01:交流出力電源、02:共振モジュール、03:第1送電コイル、08:無線通信機構、11、12:中間送受電装置、21、22:負荷装置、71:電流検出部、72:コントローラ、73:電圧検出部、100:プロセッサ、101:受電コイル、102:電圧制御モジュール、103:共振キャパシタ、104:送電コイル、200:記憶装置、201:ダイオードブリッジ、202:キャパシタ、203:負荷。
【要約】
電力を受電し、受電した電力を接続された負荷に供給するとともに次の送受電装置に電力を送電する中間送受電装置(11)を複数備えたワイヤレス給電装置において、複数の中間送受電装置(11)のそれぞれは電力を受電する受電装置(101)と電力を送電可能な送電装置(104)を有し、受電装置(101)の後段に、各中間送受電装置での電圧を前記負荷によらず一定の範囲に収めるための電圧制御装置(102)を接続している。これにより、各負荷電圧を定められた範囲内に制御することができるため、効率が向上する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
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図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20