(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】熱交換器、室外機および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20241227BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28D1/053 A
(21)【出願番号】P 2024524467
(86)(22)【出願日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2023035082
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 洋次
(72)【発明者】
【氏名】足立 理人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 七海
(72)【発明者】
【氏名】八柳 暁
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇志
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-073786(JP,U)
【文献】国際公開第2021/235463(WO,A1)
【文献】特開平10-132490(JP,A)
【文献】特開2012-163310(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112013710(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00-9/26
F28D 1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、
複数の前記伝熱管が配置された方向に沿って延びる筒状のヘッダ管を有するヘッダとを備え、
前記ヘッダ管は、
複数の前記伝熱管の下端側が挿入される天面壁および前記天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材と、
底面壁および前記底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有
し、前記ヘッダ管において下部にある第2部材とを有し、
2つの前記第2側面壁の間の距離が、2つの前記第1側面壁の間の距離よりも狭く、前記第1側面壁の高さが前記第2側面壁の高さよりも高く、前記第2側面壁の高さは、前記第1側面壁の高さよりも低く、前記第1側面壁が前記第2側面壁
を覆って前記筒状となり、
前記ヘッダ管内における前記伝熱管の下端から前記底面壁までの距離が、2つの前記第1側面壁の間の距離よりも長
く、
前記第2部材の前記底面壁が、複数の前記伝熱管が配置された方向から見たときに、弧状をなす曲面を有し、前記曲面の部分が露出するように前記第1部材が前記底面壁の一部分までを覆う、熱交換器。
【請求項2】
水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、
複数の前記伝熱管が配置された方向に沿って延びる筒状のヘッダ管を有するヘッダとを備え、
前記ヘッダ管は、
複数の前記伝熱管の下端側が挿入される天面壁および前記天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材と、
底面壁および前記底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有する第2部材とを有し、
2つの前記第2側面壁の間の距離が、2つの前記第1側面壁の間の距離よりも狭く、前記第1側面壁の高さが前記第2側面壁の高さよりも高く、前記第1側面壁が前記第2側面壁の一部を覆って前記筒状となり、
前記ヘッダ管内における前記伝熱管の下端から前記底面壁までの距離が、2つの前記第1側面壁の間の距離よりも長く、
前記第2部材の前記底面壁と2つの前記第2側面壁とのそれぞれの接続部分である第2接続部、および、前記第1部材の前記天面壁と2つの前記第1側面壁とのそれぞれの接続部分である第1接続部は、内面が曲面で形成されており、前記第2接続部の曲げ半径R2および前記第1接続部の曲げ半径R1は、R2<R1の関係にある熱交換器。
【請求項3】
前記第1部材の2つの前記第1側面壁は、壁間の距離が狭まる方向に第1側面壁下端部が屈曲し、前記第1側面壁下端部が、前記第2部材の前記底面壁の外面の一部を覆う請求項1または請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、
複数の前記伝熱管が配置された方向に沿って延びる外管と前記外管内に設置された内管とを有するヘッダとを備え、
前記外管は、複数の前記伝熱管の下端側が挿入される天面壁および前記天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材、および、底面壁および前記底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有する第2部材を有し、
前記外管において下部にある前記第2部材において、前記第2側面壁の高さは、前記第1側面壁の高さよりも低く、前記第1側面壁が前記第2側面壁
を覆って縦長形状の筒状となり、
前記内管は、前記外管との間で前記冷媒が連通させる複数のオリフィスを有
し、
前記第2部材の前記底面壁が、複数の前記伝熱管が配置された方向から見たときに、弧状をなす曲面を有し、前記曲面の部分が露出するように前記第1部材が前記底面壁の一部分までを覆う、熱交換器。
【請求項5】
水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、
複数の前記伝熱管が配置された方向に沿って延びる外管と前記外管内に設置された内管とを有するヘッダとを備え、
前記外管は、複数の前記伝熱管の下端側が挿入される天面壁および前記天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材、および、底面壁および前記底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有する第2部材を有し、前記第1側面壁が前記第2側面壁の一部を覆って筒状となり、
前記内管は、前記外管との間で前記冷媒が連通させる複数のオリフィスを有し、
前記第2部材の前記底面壁と2つの前記第2側面壁とのそれぞれの接続部分である第2接続部、および、前記第1部材の前記天面壁と2つの前記第1側面壁とのそれぞれの接続部分である第1接続部は、内面が曲面で形成されており、前記第2接続部の曲げ半径R2および前記第1接続部の曲げ半径R1は、R2<R1の関係にある熱交換器。
【請求項6】
水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、
複数の前記伝熱管が配置された方向に沿って延びる外管と前記外管内に設置された内管とを有するヘッダとを備え、
前記外管は、複数の前記伝熱管の下端側が挿入される天面壁および前記天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材、および、底面壁および前記底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有する第2部材を有し、前記第1側面壁が前記第2側面壁の一部を覆って筒状となり、
前記内管は、前記外管との間で前記冷媒が連通させる複数のオリフィスを有し、
前記内管が有する前記オリフィスの高さ方向における位置は、前記第2部材の上端部の高さ方向における位置よりも高い位置にある熱交換器。
【請求項7】
前記第1部材の前記天面壁は、高さ方向において上に突出する曲面を有する壁であり、前記第2部材の前記底面壁は、高さ方向において下に突出する曲面を有する壁であり、前記底面壁における弧の半径は、前記天面壁における弧の半径よりも大きい関係にある請求項1、請求項2、請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記ヘッダの外面において、前記天面壁と前記底面壁との間の距離と、前記第1側面壁の間の距離との比率が、1より大きく、2.4以下の関係にある請求項1、請求項2、請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記内管の高さ方向における寸法中心の位置は、前記外管の高さ方向における寸法中心の位置よりも低い位置にある請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記内管は、前記伝熱管を通過する空気の流れにおいて風下となり、前記内管の高さ方向における寸法中心よりも下となる位置に、前記複数のオリフィスを有する請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記第2部材は、2つの前記第2側面壁における第2側面壁上端部の一部が面取りされた形状である請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記内管は、上面が平面および他の面が湾曲面で構成され、断面がD字形状となる管である請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項13】
請求項1、請求項2、請求項4~請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器を、室外側熱交換器として有する室外機。
【請求項14】
請求項13に記載の室外機と、
室内側熱交換器および絞り装置を有し、空調対象空間の空気を調和する室内機と
を備える空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、熱交換器、室外機および空気調和装置に関するものである。特に、冷媒分配器となるヘッダを有する熱交換器などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷媒量削減および熱交換器の高性能化をはかるため、空気調和装置用の熱交換器において、伝熱管の細管化が進められている。伝熱管の細管化が進む中で、冷媒の圧力損失増加を抑制するために、熱交換器は分岐数が増加する。このような多分岐分配に対応するために、冷媒の分配などを行う一対のヘッダを、高さ方向(上下方向)にそれぞれ配設した熱交換器が開発されている。このような熱交換器では、筒状で側面が長尺な管の長手方向が水平方向に沿って配置される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
熱交換器が蒸発器として機能する場合、液状の冷媒と気体状の冷媒とが混在する二相冷媒が、高さ方向において、下側に位置するヘッダの管内に流入する。このとき、ヘッダでは、液状の冷媒が、管内の下部に滞留しやすくなる。熱交換器に冷媒が滞留すると、冷媒回路内を循環する冷媒量が少なくなる。冷媒回路内を循環する冷媒量を維持するため、冷媒回路では、熱交換器内の滞留分を考慮した量の冷媒を、あらかじめ回路内に有する必要があり、その分、冷媒量が増加する。そこで、ヘッダに滞留する冷媒量の削減をはかる熱交換器が提案されている(たとえば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-005194号公報
【文献】特表2014-512502号公報
【文献】国際公開第2019/078066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、熱交換器は、ヘッダにおける管の断面積を小さくして内容積を減らし、冷媒が滞留しないようにすることができる。ただ、ヘッダにおいて、単に管の断面積を小さくして冷媒の滞留を抑制するだけでは、管内において、冷媒の圧力損失が増加するなどして、冷媒の分配がうまくできないなどの可能性がある。
【0006】
そこで、開示に係る熱交換器、室外機および空気調和装置は、上記のような課題を解決し、冷媒分配の悪化を抑制し、熱交換性能を高く維持しつつ、熱交換器に滞留する冷媒量を低減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示に係る熱交換器は、水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、複数の伝熱管が配置された方向に沿って延びる筒状のヘッダ管を有するヘッダとを備え、ヘッダ管は、複数の伝熱管の下端側が挿入される天面壁および天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材と、底面壁および底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有し、ヘッダ管において下部にある第2部材とを有し、2つの第2側面壁の間の距離が、2つの第1側面壁の間の距離よりも狭く、第1側面壁の高さが第2側面壁の高さよりも高く、第2側面壁の高さは、第1側面壁の高さよりも低く、第1側面壁が第2側面壁を覆って筒状となり、ヘッダ管内における伝熱管の下端から底面壁までの距離が、2つの第1側面壁の間の距離よりも長く、第2部材の底面壁が、複数の伝熱管が配置された方向から見たときに、弧状をなす曲面を有し、曲面の部分が露出するように第1部材が底面壁の一部分までを覆うものである。
【0008】
また、この開示に係る室外機は、上記の熱交換器を、室外側熱交換器として有するものである。
【0009】
そして、この開示に係る空気調和装置は、上記の室外機と、室内側熱交換器および絞り装置を有し、空調対象空間の空気を調和する室内機とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
開示に係る熱交換器、室外機および空気調和装置によれば、分配ヘッダは、天面および2つの側面となる第1部材および底面となる第2部材を有し、第2部材を第1部材が覆う形で構成する。第2部材が分配ヘッダの底面として設置されることで、分配ヘッダの下部において液冷媒が滞留する領域を減らし、滞留する冷媒を少なくすることができる。このとき、分配ヘッダは、縦長の形状とすることで、断面積を減らさなくても滞留する冷媒を少なくすることができ、圧力損失の低減をはかることができる。このため、伝熱管に流入する冷媒の分配を改善して熱交換性能を高く維持しつつ、熱交換器に滞留する冷媒量を低減することができる。したがって、冷媒回路全体の冷媒量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る室外機200の構成を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係る熱交換器1000の構成を説明する図である。
【
図4】実施の形態1に係る熱交換器1000をX方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る分配ヘッダ1100のヘッダ管1110における縦横比率について説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その1)である。
【
図8】実施の形態1に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その2)である。
【
図9】実施の形態1に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その3)である。
【
図10】実施の形態1に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その4)である。
【
図11】実施の形態2に係る熱交換器1000をX方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【
図12】実施の形態2に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【
図13】実施の形態2に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その1)である。
【
図14】実施の形態2に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その2)である。
【
図15】実施の形態2に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その3)である。
【
図16】実施の形態2に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その4)である。
【
図17】実施の形態3に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【
図18】実施の形態4に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係る熱交換器、室外機および空気調和装置について、図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に、構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、図における上方を「上」とし、下方を「下」として説明する。また、圧力および温度の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態、動作などにおいて相対的に定まるものとする。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。
【0013】
実施の形態1.
<空気調和装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。ここでは、冷凍サイクル装置の一例として、空気調和装置について説明する。
図1に示すように、実施の形態1の空気調和装置は、室外機200、室内機100および2本の冷媒配管300を有する。そして、室外機200が有する圧縮機210、四方弁220および室外側熱交換器230と室内機100が有する室内側熱交換器110および絞り装置120が、冷媒配管300により配管接続され、冷媒回路を構成する。ここで、実施の形態1の空気調和装置は、1台の室外機200と1台の室内機100が配管接続されているものとする。ただし、接続台数は、これに限定するものではない。
【0014】
室内機100は、空気調和対象空間内に設置され、空気調和を行う装置である。室内機100は、冷媒回路を構成する室内側熱交換器110および絞り装置120のほかに、室内送風機130を有する。絞り装置120は、冷媒を減圧して膨張させる膨張弁などを有する機器である。絞り装置120は、たとえば、電子式膨張弁などで構成した場合は、後述する制御装置400などの指示に基づいて開度調整を行う。また、室内側熱交換器110は、空気調和対象空間である室内の空気と冷媒との熱交換を行う負荷側の熱交換器である。たとえば、暖房運転時においては、室内側熱交換器110は、凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、冷房運転時においては、室内側熱交換器110は、蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。室内送風機130は、室内側熱交換器110に室内の空気を通過させ、室内側熱交換器110を通過させた空気を室内に供給する。ここでは、室内側熱交換器110は、冷媒と室内の空気とを直接的に熱交換するものとして説明するが、これに限定しない。室内側熱交換器110は、たとえば、水を媒介して、冷媒と水とを熱交換し、水が室内の空気と熱交換を行うようにしてもよい。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る室外機200の構成を説明する図である。室外機200は、空気調和対象空間外に設置される装置である。ここで、実施の形態1の室外機200は、たとえば、筐体の上部中央に室外送風機280の吹き出し口を有するトップフロー型の装置である。実施の形態1の室外機200は、
図1に示すように、冷媒回路を構成する機器として、圧縮機210、四方弁220、室外側熱交換器230、補助熱交換器240、冷媒量調整弁250、バイパス配管260およびアキュムレータ270を有する。また、室外機200は、室外送風機280を有する。圧縮機210は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機210は、たとえば、スクロール型圧縮機、レシプロ型圧縮機またはベーン型圧縮機などである。ここで、実施の形態1における空気調和装置は、たとえば、インバータ装置(図示せず)などを有し、圧縮機210に供給する電力の駆動周波数を任意に変化させることができる。駆動周波数を変化させることにより、圧縮機210が有するモータ(図示せず)は、回転数を変え、圧縮機210の駆動容量を変化させることができる。
【0016】
冷媒流路切替装置となる四方弁220は、たとえば、冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える弁である。四方弁220は、暖房運転が行われる際、圧縮機210の吐出側と室内側熱交換器110とを接続するとともに、圧縮機210の吸引側と室外側熱交換器230と接続する。また、四方弁220は、冷房運転が行われる際、圧縮機210の吐出側と室外側熱交換器230とを接続するとともに、圧縮機210の吸引側を室内側熱交換器110と接続する。ここでは、四方弁220を用いた場合について例示しているが、流路切替装置はこれに限定されるものではない。流路切替装置は、たとえば、複数の二方弁などを組み合わせてもよい。
【0017】
室外側熱交換器230は、冷媒と室外の空気との熱交換を行う。ここで、実施の形態1の室外側熱交換器230は、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。一方、冷房運転時においては、室外側熱交換器230は、凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、
図1に示すように、ここでは、室外側熱交換器230は、2つの熱交換器1000Aおよび熱交換器1000Bを有する。冷媒回路において、熱交換器1000Aおよび熱交換器1000Bとが互いに並列になるように配管接続されているものとする。熱交換器1000(熱交換器1000Aおよび熱交換器1000B)の詳細については、後述する。ここでは、室外側熱交換器230は、冷媒と室外の空気との熱交換を行うものとして説明するが、他の外部流体と冷媒との熱交換を行ってもよい。また、室外送風機280は、駆動により、室外機200外部からの空気を室外側熱交換器230に通過させ、室外機200内から流出させる空気の流れを形成する。
【0018】
補助熱交換器240は、たとえば、二重管またはプレート熱交換器を有する。補助熱交換器240は、冷房運転時において、室外側熱交換器230から流出した冷媒を過冷却する。補助熱交換器240は、室外側熱交換器230から流出して室内側熱交換器110に向かって主冷媒回路を流れる冷媒とバイパス配管260および冷媒量調整弁250を通過した冷媒とを熱交換する冷媒間熱交換器である。バイパス配管260は、バイパス流路を形成する配管である。バイパス流路は、冷房運転時に、補助熱交換器240の主冷媒回路側を通過した冷媒の一部が分岐し、冷媒量調整弁250および補助熱交換器240のバイパス流路側を通過して、アキュムレータ270の冷媒流入側の配管に流れる流路である。冷媒量調整弁250は、バイパス配管260に配置され、バイパス配管260を通過する冷媒の冷媒量を調整する冷媒量調整装置である。このとき、冷媒量調整弁250は、補助熱交換器240を通過して分岐した冷媒の一部を減圧して、補助熱交換器240のバイパス流路側を通過させる。
【0019】
アキュムレータ270は、圧縮機210の吸入側に設置される。アキュムレータ270は、気体状の冷媒(以下、ガス冷媒という)を通過させ、液状の冷媒(以下、液冷媒という)を溜める。
【0020】
制御装置400は、空気調和装置の機器を制御する。制御装置400は、たとえば、絞り装置120、圧縮機210、冷媒量調整弁250などを制御する。制御装置400は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することができる。また、マイコン、CPUなどを有する演算装置とソフトウェアとで構成することができる。演算装置がソフトウェアを実行処理することで、制御を実現する。
【0021】
<空気調和装置の動作>
次に、空気調和装置の各機器の動作について、冷媒の流れに基づいて説明する。まず、暖房運転における冷媒回路の各機器の動作を、冷媒の流れに基づいて説明する。暖房運転のときには、制御装置400は、冷媒量調整弁250を閉止させる。
図1の実線矢印は、暖房運転における冷媒の流れを示している。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室内側熱交換器110に流入する。ガス冷媒は、室内側熱交換器110を通過中に、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。凝縮し、液化した冷媒は、絞り装置120を通過する。冷媒は、絞り装置120を通過する際、減圧される。絞り装置120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、補助熱交換器240および室外側熱交換器230を通過する。ここで、冷媒量調整弁250が閉止しているため、補助熱交換器240では、冷媒間での熱交換は行われない。室外側熱交換器230において、室外送風機280から送られた室外の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁220およびアキュムレータ270を通過して、再度、圧縮機210に吸入される。以上のようにして、空気調和装置の冷媒が循環し、暖房に係る空気調和を行う。
【0022】
次に、冷房運転について説明する。冷房運転のときには、制御装置400は、冷媒量調整弁250を調整し、主冷媒回路を通過する冷媒の一部をバイパス配管260に通過させる。
図1の点線矢印は、冷房運転における冷媒の流れを示している。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室外側熱交換器230に流入する。そして、冷媒は、室外側熱交換器230を通過して、室外送風機280が供給する室外の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。補助熱交換器240の主冷媒回路側を通過した冷媒の一部は、バイパス配管260を通過し、冷媒量調整弁250において減圧され、低温および低圧の冷媒となって補助熱交換器240のバイパス配管側を通過する。このため、冷媒間の熱交換が行われ、補助熱交換器240の主冷媒回路側を通過した冷媒が過冷却される。液化した冷媒は、絞り装置120を通過する。ここで、冷媒は、絞り装置120を通過する際、減圧され、気液二相状態となる。絞り装置120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、室内側熱交換器110を通過する。そして、室内側熱交換器110において、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁220を通過して、再度、圧縮機210に吸入される。以上のようにして空気調和装置の冷媒が循環し、冷房に係る空気調和を行う。
【0023】
<熱交換器1000の構成>
図3は、実施の形態1に係る熱交換器1000の構成を説明する図である。室外側熱交換器230は、パラレル配管形となるコルゲートフィンチューブ型の熱交換器1000を有する。ここで、以下においては、熱交換器1000における上下の方向をZ方向(高さ方向)とする。そして、Z方向と垂直に交わる方向を水平方向とする。また、水平方向において、ある方向をX方向(縦水平方向)とし、X方向に直交する方向をY方向(横水平方向)とする。
【0024】
前述したように、室外機200の室外側熱交換器230は、2台の熱交換器1000(熱交換器1000Aおよび熱交換器1000B)を有する。熱交換器1000Aおよび熱交換器1000Bは、冷媒回路において、それぞれ並列に配管接続される。ただし、実施の形態1の冷媒回路における接続数および形態は、これに限定するものではない。
【0025】
各熱交換器1000は、それぞれ2本の分配ヘッダ1100(分配ヘッダ1100Aおよび分配ヘッダ1100B)、折り返しヘッダ1200、複数の伝熱管1300および複数のコルゲートフィン1400を有する。
【0026】
実施の形態1における室外側熱交換器230の熱交換器1000は、2つの分配ヘッダ1100と折り返しヘッダ1200とによる一対のヘッダが、Z方向において、上下に分かれて配置される。たとえば、室外機200においては、圧縮機210などの機器が室外機200の下側に設置されている。このため、配管接続などの関係で、折り返しヘッダ1200が上側に位置し、冷媒分配器となる2つの分配ヘッダ1100が、折り返しヘッダ1200よりも下側の位置に配置される。
【0027】
そして、2つの分配ヘッダ1100と折り返しヘッダ1200との間には、複数の伝熱管1300がY方向に沿って並んで配置される。実施の形態1における伝熱管1300は、後述するように、断面が扁平形状を有する。ここでは、分配ヘッダ1100と折り返しヘッダ1200とに対して垂直となり、互いに平行となるように扁平面を対向させた複数の伝熱管1300の群が、2列に並んで配置されている。1つの列における伝熱管1300の群は、1本の分配ヘッダ1100に接続される。
【0028】
冷媒分配器となる分配ヘッダ1100は、それぞれ、冷凍サイクル装置を構成する他の装置と配管接続され、熱交換媒体となる流体である冷媒が流入出し、冷媒を分岐または合流させる。分配ヘッダ1100は、ヘッダ管1110(ヘッダ管1110Aおよびヘッダ管1110B)並びに冷媒出入口管1120(冷媒出入口管1120Aおよび冷媒出入口管1120B)を有する。ヘッダ管1110は、長尺の筒状の管である。また、分配ヘッダ1100は、それぞれ、外部からの冷媒が流入出する冷媒出入口管1120を有する。ここで、ヘッダ管1110の長手方向は、複数の伝熱管1300の配置方向であるY方向に沿っているものとする。分配ヘッダ1100の構造などについては、後にさらに説明する。
【0029】
また、折り返しヘッダ1200は、一方の列における伝熱管1300の群から流入する冷媒を合流させ、他方の列における伝熱管1300の群に分岐して流出させる橋渡し(ブリッジ)としての役割を果たすヘッダである。
【0030】
実施の形態1における伝熱管1300は、断面が扁平形状を有し、空気の流通方向である奥行き方向に沿った扁平形状の長手側における外面が平面状であり、当該長手方向に直交する短手側における外面が曲面状である。実施の形態1の伝熱管1300は、管の内部において、冷媒の流路となる複数の穴を有する多穴扁平伝熱管である。実施の形態1において、伝熱管1300の穴は、分配ヘッダ1100と折り返しヘッダ1200との間の流路となるため、Z方向を向いて形成されている。そして、前述したように、伝熱管1300は、長手側における外面が対向して、X方向に等間隔に配列される。実施の形態1における室外側熱交換器230の熱交換器1000を製造する際、各伝熱管1300は、分配ヘッダ1100と折り返しヘッダ1200とが有する挿入穴(図示せず)に挿し込まれ、ろう付けされて、接合される。前述したように、分配ヘッダ1100は下側に配置されるため、各伝熱管1300は、分配ヘッダ1100の天面に挿入され、後述する天面壁1111Bと接合される。ろう付けのろう材は、たとえば、アルミニウムを含むろう材が使用される。これにより、分配ヘッダ1100および折り返しヘッダ1200と、各伝熱管1300の内部とが連通する。
【0031】
また、配列された伝熱管1300の互いに対向する扁平面間には、コルゲートフィン1400が配列される。コルゲートフィン1400は、冷媒と外気との伝熱面積を広げるために配列される。コルゲートフィン1400は、板材に対してコルゲート加工が行われ、山折りおよび谷折りを繰返すつづら折りにより、折り曲げられて波形状に、蛇腹となって形成される。ここで、波形状に形成されてできた凹凸による折り曲げ部分は、波形状の頂部となる。実施の形態1において、コルゲートフィン1400の頂部は、Z方向にわたって並んでいる。コルゲートフィン1400は、波形状の頂部と伝熱管1300の扁平面とが面接触している。そして、接触部分は、ろう材によってろう付けされ、接合される。コルゲートフィン1400の板材は、たとえば、アルミニウム合金を材質とする。そして、板材表面には、ろう材層がクラッドされる。クラッドされたろう材層は、たとえば、アルミシリコン系のアルミニウムを含むろう材を基本とする。
【0032】
図4は、実施の形態1に係る熱交換器1000をX方向から見たときの断面の一部を示す図である。また、
図5は、実施の形態1に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。分配ヘッダ1100のヘッダ管1110は、長尺の管形状である冷媒分配管である。ヘッダ管1110は、第1部材1111、第2部材1112および蓋体1113を有する。
【0033】
図4に示す蓋体1113は、第1部材1111および第2部材1112を組み合わせてできる管の両端における開口部分を閉じ、管内の空間と管外の空間とを仕切る蓋となる。蓋体1113は、管両端において、第1部材1111および第2部材1112と接合される。2つの蓋体1113のうち、一方の蓋体1113は、前述した冷媒出入口管1120を有する。
【0034】
また、第1部材1111は、Y方向に延びる、長尺の管形状であるヘッダ管1110において、天面および扁平側面となる逆U字形状をなす半開放の部材である。第1部材1111は、第1側面壁1111Aおよび天面壁1111Bを有する。天面壁1111Bは、複数の伝熱管1300が挿入され、接合される壁である。
図5に示すように、実施の形態1の天面壁1111Bは、曲面を有する壁であり、熱交換器1000をY方向から見たときに、弧状をなす。2つの第1側面壁1111Aは、天面壁1111Bの両端における接続部分となる第1接続部1111Cからそれぞれ下方に延びて、互いに対向する壁となる。各第1側面壁1111Aは、熱交換器1000をY方向から見たときに、互いの壁間距離が短くなる向きに、第1側面壁1111Aの下端となる下端第1側面壁下端部1111Dが屈曲して曲がった形状となっている。このため、各第1側面壁1111Aは、後述する第2部材1112の底面壁1112Bの一部まで覆い、第2部材1112を抱え込むようにして支えることができる。また、第1側面壁下端部1111Dの内面と底面壁1112Bの外面とによる接合面積を増やすことができる。
【0035】
第2部材1112は、筒状であるヘッダ管1110において、底面となる部材である。第2部材1112は、第2側面壁1112Aおよび底面壁1112Bを有する。底面壁1112Bは、ヘッダ管1110の底面となる壁である。
図5に示すように、実施の形態1の底面壁1112Bは、曲面を有する壁であり、熱交換器1000をY方向から見たときに、弧状をなす。2つの第2側面壁1112Aは、底面壁1112Bの両端における接続部分となる第2接続部1112Cからそれぞれ上方に延びて、互いに対向する壁となる。2つの第2側面壁1112Aの間の距離は、2つの第1側面壁1111Aの間の距離よりも狭い。また、各第2側面壁1112Aの高さは、第1側面壁1111Aの高さよりも低い。
【0036】
ここで、第2部材1112は、第1部材1111の第1側面壁1111Aおよび天面壁1111Bによって形成される空間内に設置され、第1部材1111と接合される。したがって、第1部材1111の第1側面壁1111Aにおける壁内面の一部と、第2部材1112の第2側面壁1112Aおよび底面壁1112Bの一部における壁外面とが接合される。第2部材1112が、第1部材1111の第1側面壁1111Aおよび天面壁1111Bによって形成される空間内に設置されることで、
図5に示すように、ヘッダ管1110の管内において、第2部材1112の分、下部が狭くなる。
【0037】
また、
図5に示すように、第1部材1111の第1接続部1111Cにおける曲げ半径をR1とし、第2部材1112の第2接続部1112Cにおける曲げ半径をR2とする。このとき、曲げ半径R1と曲げ半径R2とは、R2<R1の関係にある。第2部材1112における曲げ半径R2を小さくし、ヘッダ管1110の下部における容積をより少なくすることで、液冷媒の滞留を少なくすることができる。
【0038】
さらに、前述したように、第1部材1111の天面壁1111Bと第2部材1112の底面壁1112Bは、Y方向から見たときに弧状をなしている。底面壁1112Bにおける弧の半径は、天面壁1111Bにおける弧の半径よりも大きい。したがって、底面壁1112Bの曲面の方が緩やかで直線に近くなる。このため、ヘッダ管1110の下部における容積が、より少なくなる。
【0039】
図6は、実施の形態1に係る分配ヘッダ1100のヘッダ管1110における縦横比率について説明する図である。実施の形態1における分配ヘッダ1100は、ヘッダ管1110内の空間において、伝熱管1300の下端となる伝熱管下端部1310と底面壁1112Bとの間におけるZ方向の距離Hが、2つの第1側面壁1111Aの間における幅方向の距離Wよりも長い。このため、
図5に示すように、分配ヘッダ1100のヘッダ管1110は、外観においても、X方向から見たときには、縦長さ(Z方向の長さ)が長く、横長さ(X方向の長さ)が短い、縦横比率が異なる縦長の扁平形状となる。たとえば、
図5では、分配ヘッダ1100のヘッダ管1110の縦横比率(縦長さ/横長さ)は、管の外面で見たときには、おおよそ1.41である。また、縦横比率は、管の内面で見たときには、おおよそ1.47である。ただし、ヘッダ管1110の縦横比率は、
図5に表された比率に限定するものではない。たとえば、分配偏差が30[%]より小さい場合には、冷媒分配において偏りが少ないといえる。試行などの結果、
図6に示すように、ヘッダ管1110の縦横比率について、1<縦横比率(縦長さ/横長さ)≦2.4の範囲で、分配偏差が30[%]より小さくなることから、縦横比率がこの範囲において、冷媒分配の効果が有効であることを見い出した。特に、管内の空間において、縦長さ/横長さによる縦横比率が、1.2以上2以下であることがより望ましいことがわかる。このような範囲は、良好な冷媒分配と滞留する冷媒の増加抑制との両面で有効である。
【0040】
図7~
図10は、実施の形態1に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その1)~(その4)である。
図7~
図10は、分配ヘッダ1100の第1部材1111および第2部材1112並びに伝熱管1300を模式的に示している。また、前述したように、熱交換器1000が蒸発器として機能する場合、分配ヘッダ1100には、気液二相状態の冷媒が流入する。分配ヘッダ1100の管内において、重力などの関係で、気液二相状態の冷媒のうち、ガス冷媒は上部に多く、液冷媒は下部に多くなる。液冷媒は、分配ヘッダ1100の管内において波状流となる。
図7~
図10において、下部に集まる液冷媒と伝熱管1300の伝熱管下端部1310との位置関係を、液面2000として表す。ただし、液面2000は、仮想的な面であって、実際には、
図7~
図10の液面2000に示すように、ガス冷媒と液冷媒との境界面は固定的ではない。
【0041】
図7は、実施の形態1に係る分配ヘッダ1100において、伝熱管下端部1310と底面壁1112Bとの間におけるZ方向の距離Hが、2つの第1側面壁1111Aの間におけるX方向の距離Wよりも長い場合における冷媒の状態を、Y方向から見た図である。
図8は、
図7が示す冷媒の状態を、X方向から見た図である。
図9は、
図7の分配ヘッダ1100と断面積が同じではあるが、距離Hが距離Wよりも短い場合における冷媒の状態を、Y方向から見た図である。
図10は、
図9が示す冷媒の状態を、X方向から見た図である。
【0042】
距離Hが距離Wよりも短い場合、
図9に示すように、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と液面2000との距離が近くなる。このため、
図10に示すように、冷媒流入側となる冷媒出入口管1120に近い伝熱管1300では液冷媒が多く通過し、管内において、冷媒出入口管1120から離れた位置では液冷媒が少なくなる部分が生じる。したがって、分配ヘッダ1100のヘッダ管1110において、液面2000のY方向における変化が大きくなり、冷媒出入口管1120から近い位置にない伝熱管1300では、伝熱管1300を通過する液冷媒が少なくなる。このため、伝熱管1300の位置により、ガス冷媒と液冷媒の割合に偏りが生じる。
【0043】
一方、距離Hが距離Wよりも長い場合、
図7に示すように、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と液面2000との距離が
図9の場合よりも離れることになる。このため、冷媒出入口管1120に近い伝熱管1300を通過しなかった液冷媒が冷媒出入口管1120から離れた位置まで届くことで、分配ヘッダ1100のヘッダ管1110において、液面2000のY方向における変化が小さくなる。したがって、冷媒出入口管1120から近い位置にない伝熱管1300においても、液冷媒を通過させることができ、各伝熱管1300を通過するガス冷媒と液冷媒の割合をより均一にすることができる。
【0044】
以上のように、実施の形態1における熱交換器1000によれば、分配ヘッダ1100は、天面および2つの側面となる第1部材1111および底面となる第2部材1112を有し、第2部材1112を第1部材1111が覆う形で構成する。第1部材1111によって形成される半開放の空間内において、第2部材1112が分配ヘッダ1100の底面として設置されることで、分配ヘッダ1100の下部において液冷媒が滞留する領域を減らし、滞留する冷媒を少なくすることができる。このとき、分配ヘッダ1100は、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と底面壁1112Bとの間の距離Hが、2つの第1側面壁1111Aの間の距離Wよりも長くなる形状とする。分配ヘッダ1100を縦長の形状とすることで、分配ヘッダ1100内において、下部となる領域を減らすことで、単純に管径を小さくする場合よりも、断面積を減らさずにすみ、圧力損失の低減をはかることができる。このため、各伝熱管1300に流入する冷媒の分配の偏りが少なくなるように改善しつつ、熱交換器1000に滞留する冷媒量を低減することができる。したがって、冷媒回路全体の冷媒量を削減することができる。
【0045】
また、第1部材1111の第1側面壁1111Aは、対向する第1側面壁下端部1111D同士が間隔が狭まる方向に曲げられて構成される。このため、第1側面壁1111Aは、第1側面壁下端部1111Dにおいて、第2部材1112の底面壁1112Bの外面の一部を覆い、第2部材1112を抱え込むことになり、第2部材1112との接合面積を増やすことができる。
【0046】
さらに、第2接続部1112Cの曲げ半径R2と第1接続部1111Cの曲げ半径R1とについて、R2<R1の関係となるような形状にする。また、第2部材1112の底面壁1112Bにおける弧の半径は、第1部材1111の天面壁1111Bにおける弧の半径よりも大きくする形状にする。これにより、分配ヘッダ1100内において、下部となる領域を減らすことができる。
【0047】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2に係る熱交換器1000をX方向から見たときの断面の一部を示す図である。また、
図12は、実施の形態2に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
図11および
図12において、
図4および
図5と同じ符号を付している部材などについては、実施の形態1で説明したことと同様の機能および動作を行う。
【0048】
図11において、実施の形態2の熱交換器1000における分配ヘッダ1100は、外管1110Cと内管1120Cとを有する2重構造の冷媒分配器である。外管1110Cは、実施の形態1で説明したヘッダ管1110と同様に、第1部材1111および第2部材1112を組み合わせて構成される管である。一方、内管1120Cは、外管1110Cに沿って外管1110Cの内部に設置される長尺の管である。特に限定するものではないが、実施の形態2の分配ヘッダ1100においては、冷媒出入口管1120は、内管1120Cと一体となっているものとする。
【0049】
ここで、実施の形態2における分配ヘッダ1100の外管1110Cと内管1120Cとの位置関係について説明する。
図12に示すように、外管1110CのZ方向の寸法中心線をE-E線とし、内管1120CのZ方向の寸法中心線をF-F線とする。このとき、Z方向において、F-F線がE-E線よりも低い位置となる。外管1110C内の空間において、下部に内管1120Cが位置することで、液冷媒が滞留しやすい領域を減らすことができる。
【0050】
内管1120Cは、冷媒流出孔となるオリフィス1121を有する。オリフィス1121から流出した冷媒は、内管1120Cと外管1110Cとの間の空間に噴出され、外管1110Cから伝熱管1300に流入する。冷媒出入口管1120から内管1120Cの内部に流入した気液二相冷媒は、オリフィス1121から内管1120Cと外管1110Cとの間の空間に流出する際に攪拌される。このため、液冷媒とガス冷媒とが均質に近い状態となる。複数の伝熱管1300を通過する冷媒の冷媒分流比を、より均一化することで、熱交換器1000は熱交換性能が向上する。
【0051】
ここで、実施の形態2におけるオリフィス1121は、内管1120Cの直下ではなく、内管1120Cの斜め下方であって、熱交換器1000を通過する空気の風下側に気液二相冷媒を噴出する向きに設けられる。
【0052】
前述したように、伝熱管1300は、多穴扁平伝熱管である。このため、伝熱管1300は、空気が通過する方向となるX方向に沿って複数の流路を有する。オリフィス1121から風下側に気液二相冷媒を噴出することにより、また、
図12の実線矢印で示すように、気液二相冷媒においてガス冷媒の割合が多いガスリッチ冷媒が、伝熱管1300の風下側流路に供給されることになる。一方、
図12の点線矢印で示すように、気液二相冷媒において液冷媒の割合が多い液リッチ冷媒が、伝熱管1300の風上側流路に供給されることになる。したがって、冷媒と空気との温度差が大きい風上側に液冷媒を多く分配することができ、伝熱性能を向上させることができる。
【0053】
また、オリフィス1121は、環状流路の下部の領域に気液二相冷媒を噴出させることで、噴出の勢いにより液冷媒の滞留を抑制する。このため、冷媒の削減をはかることができる。さらに、オリフィス1121は、Z方向において、外管1110Cの第2部材1112における第2側面壁1112Aの上端となる第2側面壁上端部1112Dの位置Tよりも高い位置Sにある。このため、オリフィス1121から勢いを抑えることなく気液二相冷媒を噴出することができ、液冷媒の滞留を抑制することができる。
【0054】
図13~
図16は、実施の形態2に係る分配ヘッダ1100内における冷媒の状態を説明する図(その1)~(その4)である。
図13~
図16は、分配ヘッダ1100の外管1110C(第1部材1111および第2部材1112)、内管1120C並びに伝熱管1300を模式的に示している。液面2000は、実施の形態1で説明したことと同様の麺である。
【0055】
図13は、実施の形態2に係る分配ヘッダ1100において、伝熱管下端部1310と底面壁1112Bとの間におけるZ方向の距離Hが、2つの第1側面壁1111Aの間におけるX方向の距離Wよりも長い場合における冷媒の状態を、Y方向から見た図である。
図14は、
図13が示す冷媒の状態を、X方向から見た図である。
図15は、
図13の分配ヘッダ1100と断面積が同じではあるが、距離Hが距離Wよりも短い場合における冷媒の状態を、Y方向から見た図である。
図16は、
図15が示す冷媒の状態を、X方向から見た図である。
【0056】
距離Hが距離Wよりも短い場合、
図15に示すように、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と内管1120Cのオリフィス1121との距離が近くなる。このため、オリフィス1121から噴出する冷媒が大きく影響する。たとえば、
図16に示すように、冷媒流入側となる冷媒出入口管1120に近い伝熱管1300では液冷媒が多く通過し、管内において、冷媒出入口管1120から離れた位置では液冷媒が少なくなる部分が生じる。したがって、分配ヘッダ1100の外管1110Cにおいて、液面2000のY方向における変化が大きくなり、冷媒出入口管1120から近い位置にない伝熱管1300では、伝熱管1300を通過する液冷媒が少なくなる。このため、伝熱管1300の位置により、ガス冷媒と液冷媒の割合に偏りが生じる。
【0057】
一方、距離Hが距離Wよりも長い場合、
図13に示すように、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と内管1120Cのオリフィス1121との距離が
図15の場合よりも遠くなる。このため、伝熱管1300の冷媒通過において、オリフィス1121の影響が少なくなる。冷媒出入口管1120に近い伝熱管1300を通過しなかった液冷媒が冷媒出入口管1120から離れた位置まで届くことで、分配ヘッダ1100の外管1110Cにおいて、液面2000のY方向における変化が小さくなる。したがって、冷媒出入口管1120から近い位置にない伝熱管1300においても、液冷媒を通過させることができ、各伝熱管1300を通過するガス冷媒と液冷媒の割合をより均一にすることができる。
【0058】
以上のように、実施の形態2に係る熱交換器1000によれば、分配ヘッダ1100は、外管1110Cと内管1120Cとを有する二重管構造の冷媒分配器である。そして、分配ヘッダ1100において、外管1110Cが、天面および2つの側面となる第1部材1111並びに底面となる第2部材1112を有する。また、第2部材1112を第1部材1111が覆う構成とする。このとき、分配ヘッダ1100は、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と底面壁1112Bとの間の距離Hが、2つの第1側面壁1111Aの間の距離Wよりも長くなる形状とする。そして、外管1110C内において、伝熱管1300の伝熱管下端部1310と内管1120Cが有するオリフィス1121との間を空ける。このため、各伝熱管1300に流入する冷媒の分配の偏りが少なくなるように改善しつつ、熱交換器1000に滞留する冷媒量を低減することができる。したがって、冷媒回路全体の冷媒量を削減することができる。
【0059】
外管1110Cの第2部材1112は、複数のオリフィス1121の位置よりも、Z方向において下側の位置にあるため、オリフィス1121からの気液二相冷媒の勢いを保ったまま噴出させることで、液冷媒の削減をはかることができる。また、内管1120CのZ方向における寸法中心の位置が、外管1110CのZ方向における寸法中心の位置よりも低い位置にあることで、外管1110Cの下部における空間の内容積を減少させ、熱交換器1000に滞留する冷媒量を低減することができる。
【0060】
また、内管1120Cが有するオリフィス1121のZ方向における位置は、第2側面壁1112Aの第2側面壁上端部1112DのZ方向における位置よりも高い位置にある。オリフィス1121からの気液二相冷媒の勢いを保ったまま噴出させることで、液冷媒の削減をはかることができる。そして、内管1120Cにおいて、複数のオリフィス1121は、空気流れにおいて風下となる方向に設置される。このため、伝熱管1300において、風上側の流路には液冷媒の割合が多い気液二相冷媒が流入し、風下側の流路には、ガス冷媒の割合が多い気液に装冷媒を流入させることができる。したがって、熱交換器1000における熱交換効率がよくなる。
【0061】
実施の形態3.
図17は、実施の形態3に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
図17において、
図5および
図12と同じ符号を付している部材などについては、実施の形態1および実施の形態2で説明したことと同様の機能および動作を行う。
【0062】
図17に示すように、実施の形態3の熱交換器1000は、外管1110Cの第2部材1112における第2側面壁1112Aの第2側面壁上端部1112Dにおいて、面取りがなされている。第2側面壁1112Aの第2側面壁上端部1112Dを面取りして傾斜させることにより、角部分が削られた分、内管1120Cの径を大きくすることができる。このため、内管1120C内の空間における内容積を大きくすることができる。内管1120C内の空間における内容積が大きくなると、外管1110C内の空間において、内管1120C以外の部分の空間の内容積を減少させることができる。特に、外管1110C内の空間下部における内容積を減少させることができるため、液冷媒が滞留しやすい領域を減らすことができる。
【0063】
実施の形態4.
図18は、実施の形態4に係る熱交換器1000をY方向から見たときの断面の一部を示す図である。
図18において、
図5および
図12と同じ符号を付している部材などについては、実施の形態1および実施の形態2で説明したことと同様の機能および動作を行う。
【0064】
図18に示すように、実施の形態4の熱交換器1000は、内管1120Cは、上面が平面であり、他の面が湾曲面で構成されることで、断面がD字の管形状である。内管1120Cの断面の形状がD字形状であることで、内管1120Cの断面積を大きくすることができ、管内の空間における内容積を大きくすることができる。内管1120C内の空間における内容積が大きくなると、外管1110C内の空間において、内管1120C以外の部分の空間の内容積を減少させることができる。特に、外管1110C内の空間下部における内容積を減少させることができるため、液冷媒が滞留しやすい領域を減らすことができる。
【符号の説明】
【0065】
100 室内機、110 室内側熱交換器、120 絞り装置、130 室内送風機、200 室外機、210 圧縮機、220 四方弁、230 室外側熱交換器、240 補助熱交換器、250 冷媒量調整弁、260 バイパス配管、270 アキュムレータ、280 室外送風機、300 冷媒配管、400 制御装置、1000,1000A,1000B 熱交換器、1100,1100A,1100B 分配ヘッダ、1110,1110A,1110B ヘッダ管、1110C 外管、1111 第1部材、1111A 第1側面壁、1111B 天面壁、1111C 第1接続部、1111D 第1側面壁下端部、1112 第2部材、1112A 第2側面壁、1112B 底面壁、1112C 第2接続部、1112D 第2側面壁上端部、1113 蓋体、1120,1120A,1120B 冷媒出入口管、1120C 内管、1121 オリフィス、1200 折り返しヘッダ、1300 伝熱管、1310 伝熱管下端部、1400 コルゲートフィン、2000 液面。
【要約】
開示に係る熱交換器は、水平方向に沿って並んで間を隔てて配置され、高さ方向に冷媒が流れる流路を有する複数の伝熱管と、複数の伝熱管が配置された方向に沿って延びる筒状のヘッダ管を有するヘッダとを備え、ヘッダ管は、複数の伝熱管の下端側が挿入される天面壁および天面壁の両端から下方に延びて対向する2つの第1側面壁を有する第1部材と、底面壁および底面壁の両端から上方に延びて対向する2つの第2側面壁を有する第2部材とを有し、2つの第2側面壁の間の距離が、2つの第1側面壁の間の距離よりも狭く、第1側面壁の高さが第2側面壁の高さよりも高く、第1側面壁が第2側面壁の一部を覆って筒状となり、ヘッダ管内における伝熱管の下端から底面壁までの距離が、2つの第1側面壁の間の距離よりも長いものである。