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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024528145
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2022024708
(87)【国際公開番号】W WO2023248341
(87)【国際公開日】2023-12-28
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】上村 龍也
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137288(JP,A)
【文献】国際公開第2010/119860(WO,A1)
【文献】特開2011-117895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発射して移動物および静止物を含む物体からの反射信号を受信するレーダと、
前記物体を撮像することで前記物体の画像データを取得するカメラと、
前記反射信号に対して信号処理を実行することで前記物体の位置であるレーダ検出位置および前記物体の速度であるレーダ検出速度を検出するレーダ信号処理部と、
前記画像データに基づいて、前記物体の位置であるカメラ検出位置および前記物体の種類である物体種類を検出するカメラ画像処理部と、
前記レーダ検出位置が示す位置と前記カメラ検出位置が示す位置とが同一であるか否かを判定し、同一と判定した前記物体の、前記レーダ検出位置、前記レーダ検出速度、および前記物体種類を外部装置に出力するフュージョン処理部と、
を備え、
前記カメラ画像処理部は、
前記移動物の前記カメラ検出位置および前記移動物の前記物体種類を検出し、
前記レーダ信号処理部は、
前記レーダ検出位置、前記移動物の前記カメラ検出位置、および前記移動物の前記物体種類に基づいて、前記物体の中から前記静止物を特定し、前記静止物の前記レーダ検出速度に基づいて、自装置が搭載される車両である自車両の速度を自車両速度として算出し、前記自車両速度に基づいて、前記移動物および前記静止物を前記レーダに追尾させる、
ことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記カメラ画像処理部は、
前記画像データに基づいて、前記移動物の前記カメラ検出位置および前記移動物の前記物体種類を検出する物体認識部を有し、
前記レーダ信号処理部は、
前記反射信号に基づいて前記レーダ検出位置を検出する位置検出部と、
前記反射信号に基づいて前記レーダ検出速度を検出する速度検出部と、
前記レーダ検出位置、前記移動物の前記カメラ検出位置、および前記移動物の前記物体種類に基づいて、前記速度検出部が検出した前記レーダ検出速度の中から、前記静止物の前記レーダ検出速度を特定する静止物判別部と、
前記静止物の前記レーダ検出速度に基づいて前記自車両速度を算出する自車両速度検出部と、
前記位置検出部が検出した前記レーダ検出位置と、前記速度検出部が検出した前記レーダ検出速度と、前記自車両速度とに基づいて、前記移動物と前記静止物とをそれぞれ別々のパラメータで追尾処理する追尾処理部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記フュージョン処理部は、
前記カメラ画像処理部から前記移動物の前記カメラ検出位置および前記移動物の前記物体種類を取得し、前記レーダ信号処理部から前記静止物の前記レーダ検出位置および前記静止物の前記レーダ検出速度を取得し、前記レーダ検出位置が示す前記物体の位置と、前記カメラ検出位置が示す前記物体の位置とが同じであるか否かに基づいて、前記レーダ検出位置が示す前記物体と前記カメラ検出位置が示す前記物体とが同一であるか否かを判定する同一判定部と、
前記同一判定部が同一と判定した前記物体の前記レーダ検出位置、前記レーダ検出速度、および前記物体種類を外部装置に出力する出力部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両から物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両搭載用の物体検出装置は、車両の利用環境に存在する人、障害物等の物体を短時間に検出できる装置である。この物体検出装置は、車両制御機能または警報通知機能と、物体検出機能とを用いることによって、安全な車両運転を実現することができる。車両搭載用の物体検出装置には、レーダ、カメラ、ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging、光による検知と測距)、超音波センサ等を用いた種々の種類がある。近年では、各種センサの普及により、複数のセンサを組合せることで性能の向上を実現するフュージョン型の物体検出装置が幅広く利用されるようになっている。
【0003】
特許文献1に記載の物体検出装置は、レーダおよびカメラを用いたフュージョン型の物体検出装置であり、レーダおよびカメラを用いて検出した物体の位置データから、物体が歩行者であるか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/119860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、レーダによって物体を検出する際に自車両の速度を用いていないので、レーダによる物体の追尾処理性能が低くなり、物体を正確に検出できない場合があるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、物体を正確に検出できる物体検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の物体検出装置は、電磁波を発射して移動物および静止物を含む物体からの反射信号を受信するレーダと、物体を撮像することで物体の画像データを取得するカメラとを備える。また、本開示の物体検出装置は、反射信号に対して信号処理を実行することで物体の位置であるレーダ検出位置および物体の速度であるレーダ検出速度を検出するレーダ信号処理部と、画像データに基づいて、物体の位置であるカメラ検出位置および物体の種類である物体種類を検出するカメラ画像処理部とを備える。また、本開示の物体検出装置は、レーダ検出位置が示す位置とカメラ検出位置が示す位置とが同一であるか否かを判定し、同一と判定した物体の、レーダ検出位置、レーダ検出速度、および物体種類を外部装置に出力するフュージョン処理部を備える。カメラ画像処理部は、移動物のカメラ検出位置および移動物の物体種類を検出する。レーダ信号処理部は、レーダ検出位置、移動物のカメラ検出位置、および移動物の物体種類に基づいて、物体の中から静止物を特定し、静止物のレーダ検出速度に基づいて、自装置が搭載される車両である自車両の速度を自車両速度として算出し、自車両速度に基づいて、移動物および静止物をレーダに追尾させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる物体検出装置は、物体を正確に検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる物体検出装置の構成を示す図
図2】実施の形態にかかる物体検出装置が物体を検出する処理の処理手順を示すフローチャート
図3】実施の形態にかかる物体検出装置が検出する物体を説明するための図
図4】実施の形態にかかる物体検出装置が検出した物体の位置および速度を説明するための図
図5】実施の形態にかかる物体検出装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
図6】実施の形態にかかる物体検出装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる物体検出装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる物体検出装置の構成を示す図である。車両搭載用の物体検出装置100は、フュージョン型の物体検出装置であり、レーダ1およびカメラ2を用いて物体を検出する。
【0012】
物体検出装置100は、カメラ2を用いて物体を検出することで、センサの1つであるレーダ1の検出精度を向上させる。物体検出装置100は、レーダ1とカメラ2とを組合せて物体検出装置100が搭載される車両(自車両)の速度を高精度に検出し、レーダ1による物体の追尾処理の精度を向上させることで、高精度に物体を検出する。
【0013】
物体検出装置100は、レーダ1と、カメラ2と、レーダ信号処理部であるレーダ信号処理器3と、カメラ画像処理部であるカメラ画像処理器4と、フュージョン処理部であるフュージョン処理器5とを備える。
【0014】
カメラ2は、レンズ、ホルダ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体)センサ、電源半導体部品、水晶デバイス等の部品を用いて構成されている。カメラ2は、物体を撮像することで物体の画像データ(画像情報)を取得し、カメラ画像処理器4に出力する。
【0015】
カメラ画像処理器4は、画像データに基づいて、物体の位置および物体の種類のデータ(以下、物体種類という)を検出する。カメラ画像処理器4には、MCU(Micro Control Unit)、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が用いられる。カメラ画像処理器4は、物体認識部12と、メモリ42とを有している。
【0016】
物体認識部12は、カメラ2に接続されており、カメラ2から画像データを受け付ける。物体認識部12は、機械学習、深層学習等によって得られた特徴データ(特徴量)をデータベースとし、データベース内の特徴データと、カメラ2からの画像データとに基づいて、人、障害物等の物体を認識し、物体種類を検出する。具体的には、物体認識部12は、画像データから特徴データを抽出し、この特徴データと、深層学習等によって得られた特徴データとを比較することで物体を認識し、物体種類を検出する。
【0017】
物体認識部12は、予め設定された特定の移動物に対して物体種類を検出する。物体認識部12は、例えば、歩行中の人、移動中の自転車などを移動物として抽出し、抽出した移動物の物体種類を検出する。
【0018】
また、物体認識部12は、画像データに含まれる物体の座標に基づいて、物体の位置(以下、カメラ検出位置という)を検出する。物体認識部12は、物体種類およびカメラ検出位置を、物体認識データであるカメラ検出データ13としてメモリ42に格納する。
【0019】
カメラ画像処理器4は、物体種類およびカメラ検出位置を含んだカメラ検出データ13をレーダ信号処理器3に出力する。物体認識部12が認識する物体は、移動物であるので、カメラ画像処理器4は、移動物の物体種類およびカメラ検出位置を含んだカメラ検出データ13をレーダ信号処理器3に出力する。
【0020】
レーダ1は、人、障害物等の物体に電磁波を発射して、物体からの反射信号を受信する。レーダ1は、反射信号をレーダ信号処理器3に出力する。レーダ1は、移動物および静止物の両方の物体から反射信号を受信する。
【0021】
レーダ信号処理器3は、レーダ1が受信した反射信号(受信信号)に対して信号処理を実行することで、物体の位置および速度を検出する。レーダ1は、車両搭載用の物体検出装置100に配置されるので、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave、周波数変調連続波)方式、FCM(Fast Chirp Modulation)方式などを用いて物体を検出する。レーダ1は、高周波半導体部品、電源半導体部品、基板、水晶デバイス、チップ部品、アンテナ等を用いて構成される。
【0022】
レーダ信号処理器3には、MCU、CPU等が用いられる。レーダ信号処理器3は、位置検出部6と、速度検出部7と、追尾処理部8と、メモリ41と、静止物判別部10と、自車両速度検出部11とを有している。
【0023】
位置検出部6および速度検出部7は、レーダ1に接続されており、レーダ1から反射信号を受け付ける。位置検出部6および速度検出部7は、反射信号に対し、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transformation)を用いた演算処理を実行する。具体的には、位置検出部6および速度検出部7は、反射信号に対し、距離方向、速度方向、および水平角度方向に高速フーリエ変換を実行することで、物体の位置および速度をそれぞれ検出する。位置検出部6は、物体の位置(位置データ)をレーダ検出位置として静止物判別部10および追尾処理部8に出力し、速度検出部7は、物体の速度(速度データ)をレーダ検出速度として静止物判別部10および追尾処理部8に出力する。
【0024】
静止物判別部10は、物体検出装置100を使用するフィールド上に存在する物体が静止物であるか否かを判別する。静止物判別部10は、レーダ検出位置、カメラ検出位置、および物体種類に基づいて、物体に含まれる移動物を特定する。静止物判別部10は、レーダ検出速度の中から移動物に対応するレーダ検出速度を除去することで、静止物に対応するレーダ検出速度を抽出する。静止物判別部10は、複数からなる物体のデータ(レーダ検出位置およびレーダ検出速度)の中から、移動物に相当するデータのみを削除することで、静止物のレーダ検出速度を特定する。
【0025】
具体的には、静止物判別部10は、カメラ画像処理器4が検出したカメラ検出位置および物体種類の中から、予め設定された特定の物体種類と同じ物体種類と、この物体種類に対応するカメラ検出位置とを抽出する。静止物判別部10は、レーダ検出位置の中から、抽出したカメラ検出位置と同じ位置を示すレーダ検出位置に対応するレーダ検出速度を静止物のデータとして抽出する。
【0026】
具体的には、静止物判別部10は、物体種類に対応するカメラ検出位置の物体を移動物であると判定する。そして、静止物判別部10は、位置検出部6および速度検出部7から送られてきた検出データの中から、移動物であると判定した物体の検出データを除去する。すなわち、静止物判別部10は、位置検出部6および速度検出部7から送られてきたレーダ検出位置と、カメラ検出位置とが同じ位置となっている物体の検出データを、移動物の検出データとして除去する。静止物判別部10は、位置検出部6および速度検出部7から送られてきた複数の検出データ(レーダ検出位置およびレーダ検出速度)から移動物に相当するデータのみを削除することで、静止物のレーダ検出速度を特定する。
【0027】
静止物判別部10は、静止物のレーダ検出位置と、静止物のレーダ検出速度とを自車両速度検出部11に出力する。
【0028】
カメラ画像処理器4が検出する移動物は、人、他の車両等が該当する。物体検出装置100が搭載される車両である自車両が移動している時には、静止物に相対速度が付与される。すなわち、物体検出装置100は、自車両が移動している時には、物体検出装置100と静止物との間の相対速度を静止物の速度として検出する。このため、物体検出装置100は、レーダ1のみで移動物と静止物とを判別することは困難であるが、本実施の形態の物体検出装置100は、レーダ1とカメラ2とを組み合わせることで物体が静止物であるか否かを容易に判別できる。
【0029】
自車両速度検出部11は、静止物判別部10から送られてくるレーダ検出速度を平均化処理することで、自車両の速度(以下、自車両速度という)を算出する。自車両速度検出部11は、自車両速度を検出結果として追尾処理部8に出力する。
【0030】
追尾処理部8は、位置検出部6および速度検出部7から送られてくるレーダ検出位置およびレーダ検出速度と、自車両速度検出部11から送られてくる自車両速度とに基づいて、移動物と静止物とをそれぞれ別々のパラメータで追尾処理する。
【0031】
具体的には、追尾処理部8は、レーダ検出位置、レーダ検出速度、および自車両速度に基づいて、物体を移動物と静止物とに区別する。そして、追尾処理部8は、自車両速度に基づいて、移動物と静止物とをそれぞれ別々のパラメータでレーダ1に追尾させる。
【0032】
追尾処理部8は、位置検出部6および速度検出部7から送られてくるレーダ検出位置およびレーダ検出速度を、自車両速度に基づいて平滑化する。また、追尾処理部8は、次のフレームにおけるレーダ検出位置およびレーダ検出速度を、自車両速度に基づいて推定する。また、追尾処理部8は、レーダ検出位置およびレーダ検出速度に識別情報を付与する。追尾処理部8は、追尾処理に用いたレーダ検出位置およびレーダ検出速度をレーダ検出データ9としてメモリ41に格納する。
【0033】
フュージョン処理器5は、レーダ1が検出したレーダ検出位置およびレーダ検出速度をレーダ信号処理器3から取得する。また、フュージョン処理器5は、カメラ画像処理器4から物体種類およびカメラ検出位置を取得する。フュージョン処理器5は、レーダ検出位置、レーダ検出速度、物体種類、およびカメラ検出位置を用いてデータ処理を実行し、データ処理結果を、物体検出装置100としての検出結果として外部装置(例えば、車両制御装置20)に出力する。すなわち、フュージョン処理器5は、移動物の位置、速度、および物体種類に対してデータ処理を実行し、データ処理結果を外部装置に出力する。
【0034】
フュージョン処理器5は、同一判定部14と、メモリ43と、出力部16とを有している。同一判定部14は、レーダ検出位置とカメラ検出位置とに基づいて、物体の同一判定を実行する。具体的には、同一判定部14は、レーダ検出位置が示す物体の位置と、カメラ検出位置が示す物体の位置とが同じであるか否かに基づいて、レーダ検出位置が示す物体とカメラ検出位置が示す物体とが同一であるか否かの判定処理である同一判定処理を実行する。同一判定部14は、この同一判定処理により、レーダ1を用いて取得されたレーダ検出位置と、レーダ1を用いて取得されたレーダ検出速度と、カメラ2を用いて取得された物体種類との対応付けを行う。
【0035】
同一判定部14は、レーダ検出位置と、レーダ検出速度と、物体種類とを対応付けしたデータを、フュージョン検出データ15としてメモリ43に格納する。カメラ2を用いて特定された物体種類は移動物であるので、同一判定部14は、移動物のレーダ検出位置と、移動物のレーダ検出速度と、移動物の物体種類とを対応付けしたデータを、フュージョン検出データ15としてメモリ43に格納する。
【0036】
出力部16は、レーダ検出位置と、レーダ検出速度と、物体種類とが対応付けされたフュージョン検出データ15を、物体検出装置100の後段側の装置である車両制御装置20に出力する。このように、フュージョン処理器5は、レーダ検出位置と、レーダ検出速度と、物体種類とを含んだフュージョン検出データ15を、車両制御装置20に転送する。これにより、自車両に搭載された車両制御装置20は、フュージョン検出データ15を自車両の制御に用いる。すなわち、車両制御装置20は、移動物の位置、速度、および種類に基づいて、自車両を制御する。なお、出力部16は、フュージョン処理器5の外部に配置されていてもよい。
【0037】
つぎに、物体検出装置100による物体検出の処理手順について説明する。図2は、実施の形態にかかる物体検出装置が物体を検出する処理の処理手順を示すフローチャートである。車両搭載用の物体検出装置100は、物体検出のフレームを開始すると(ステップS1)、レーダ1が、物体から取得した反射信号をレーダ信号処理器3に出力し(ステップS2)、カメラ2が、取得した画像データをカメラ画像処理器4に出力する(ステップS8)。
【0038】
レーダ信号処理器3では、位置検出部6および速度検出部7が物体の位置および速度を検出する(ステップS3)。位置検出部6は、レーダ1を用いて検出した物体の位置をレーダ検出位置として静止物判別部10および追尾処理部8に出力し、速度検出部7は、レーダ1を用いて検出した物体の速度をレーダ検出速度として静止物判別部10および追尾処理部8に出力する。
【0039】
カメラ画像処理器4では、物体認識部12が、画像データに基づいて、物体を認識し(ステップS9)、物体種類を検出する。また、物体認識部12は、画像データに含まれる物体の座標に基づいて、物体の位置であるカメラ検出位置を検出する。
【0040】
カメラ画像処理器4は、カメラ検出位置および物体種類をカメラ検出データ13としてメモリ42に格納する(ステップS10)。すなわち、カメラ画像処理器4は、カメラ検出位置および物体種類を、メモリ42に出力し、カメラ検出データ13としてメモリ42に記憶させる。カメラ画像処理器4は、メモリ42内のカメラ検出データ13をレーダ信号処理器3およびフュージョン処理器5に出力する。
【0041】
レーダ信号処理器3の静止物判別部10は、レーダ検出位置、カメラ検出位置、および物体種類に基づいて、物体の中から静止物を判別する(ステップS4)。
【0042】
ここで、静止物の判別方法について説明する。図3は、実施の形態にかかる物体検出装置が検出する物体を説明するための図である。ここでは、物体検出装置100が自車両である車両30に搭載され、車両30の前方(移動方向)に物体が位置している場合について説明する。物体には、静止物と移動物とがある。図3では、車両30の前方に静止物A1~C1と、移動物X1とが位置している場合を示している。
【0043】
物体検出装置100は、車両30の移動中に物体を検出する。レーダ1は、車両30の移動方向の前方に位置する物体から反射信号を受信し、カメラ2は、車両30の移動方向の前方に位置する物体から画像データを取得する。
【0044】
レーダ1の水平覆域であるレーダ水平覆域21およびカメラ2の水平覆域であるカメラ水平覆域22の両方に含まれる領域が、物体検出装置100が物体を検出するフィールドである。図3では、レーダ水平覆域21内およびカメラ水平覆域22内に、静止物A1~C1と、移動物X1とが位置している。したがって、レーダ信号処理器3の位置検出部6および速度検出部7は、何れも静止物A1~C1および移動物X1を検出できる。また、カメラ画像処理器4の物体認識部12は、移動物X1を検出できる。
【0045】
静止物判別部10が静止物を判別すると、自車両速度検出部11は、判別した静止物の速度に基づいて自車両速度を算出する(ステップS5)。具体的には、自車両速度検出部11は、静止物判別部10から送られてくる静止物A1~C1のレーダ検出速度を平均化処理することで、自車両速度を算出する。このように、物体検出装置100は、静止物A1~C1のレーダ検出速度に基づいて自車両速度を算出することができる。
【0046】
図4は、実施の形態にかかる物体検出装置が検出した物体の位置および速度を説明するための図である。図4では、レーダ信号処理器3の位置検出部6および速度検出部7が図3に示した物体から検出した位置および速度をプロットしたイメージ図を示している。図4では、静止物A1~C1の位置および速度をPa~Pcとして図示し、移動物X1の位置および速度をPxとして図示している。
【0047】
車両30が移動している時、物体検出装置100から見ると、静止物A1~C1および移動物X1は、ともに速度を持つこととなる。すなわち、車両30が移動すると、レーダ信号処理器3は、静止物A1~C1および移動物X1が車両30に対して相対速度を有していることを検出する。
【0048】
また、カメラ画像処理器4は、カメラ検出位置および物体種類を検出する。そして、レーダ信号処理器3の静止物判別部10は、レーダ検出位置、カメラ検出位置、および物体種類に基づいて、移動物X1を検出する。静止物判別部10は、静止物の候補から移動物X1を除外することで、物体の中から静止物A1~C1を抽出する。
【0049】
例えば、レーダ信号処理器3が静止物であると判定した静止物A1,B1,C1の速度を、それぞれVA,VB,VCとすると、自車両速度検出部11は、以下の式(1)を用いて自車両速度Vcarを算出する。
【0050】
Vcar=(VA+VB+VC)/3・・・(1)
【0051】
このように、物体検出装置100は、静止物の車両30に対する相対速度を算出し、この相対速度に基づいて自車両速度を算出する。
【0052】
なお、本実施の形態では、物体検出装置100が、静止物の速度の平均値に基づいて自車両速度を算出する場合について説明したが、物体検出装置100は、静止物の速度の、最小値、最大値、中央値等を自車両速度として採用してもよい。
【0053】
レーダ信号処理器3は、自車両速度を算出した後、自車両速度に基づいて、物体の追尾処理を実行する。具体的には、追尾処理部8は、自車両速度、レーダ検出位置、およびレーダ検出速度に基づいて、物体の追尾処理を実行する(ステップS6)。追尾処理部8は、自車両速度、レーダ検出位置、およびレーダ検出速度に基づいて、移動物と静止物とをそれぞれ別々のパラメータで追尾処理する。
【0054】
追尾処理部8は、追尾処理に用いたレーダ検出位置およびレーダ検出速度をレーダ検出データ9としてメモリ41に格納する(ステップS7)。すなわち、追尾処理部8は、レーダ検出位置およびレーダ検出速度を、メモリ41に出力し、レーダ検出データ9としてメモリ41に記憶させる。レーダ信号処理器3は、メモリ41内のレーダ検出データ9をフュージョン処理器5に出力する。
【0055】
フュージョン処理器5の同一判定部14は、レーダ検出位置およびレーダ検出速度をレーダ信号処理器3から取得する。同一判定部14は、レーダ検出位置とカメラ検出位置とに基づいて、物体の同一判定を実行する(ステップS11)。同一判定部14は、レーダ検出位置が示す物体の位置と、カメラ検出位置が示す物体の位置とが同じであるか否かに基づいて、レーダ検出位置が示す物体とカメラ検出位置が示す物体とが同一であるか否かの判定処理である同一判定処理を実行する。
【0056】
このように、同一判定部14は、フュージョン処理器5に送られてきた各種データに対して、レーダ検出位置、レーダ検出速度、および物体種類を紐づけするために、レーダ検出位置、およびカメラ検出位置に基づいて物体の同一判定をする。
【0057】
同一判定部14は、同一であると判定した物体(移動体)に対し、レーダ検出位置と、レーダ検出速度と、物体種類とを対応付けする。同一判定部14は、レーダ検出位置、レーダ検出速度、および物体種類を対応付けしたデータを、フュージョン検出データ15としてメモリ43に格納する(ステップS12)。すなわち、同一判定部14は、レーダ検出位置、レーダ検出速度、および物体種類を対応付けしたデータを、メモリ43に出力し、フュージョン検出データ15としてメモリ43に記憶させる。
【0058】
同一判定部14が、フュージョン検出データ15の一部としてメモリ43に格納する位置および速度のデータは、レーダ1を用いて検出されたレーダ検出位置およびレーダ検出速度である。また、同一判定部14が、フュージョン検出データ15の一部としてメモリ43に格納する物体種類は、カメラ2を用いて検出されたデータである。
【0059】
フュージョン処理器5の出力部16は、メモリ43内のフュージョン検出データ15を車両制御装置20に出力する。これにより、フュージョン検出データ15は、車両制御装置20による車両30の制御に用いられる(ステップS13)。以上で、物体検出フレームが完了し、物体検出の次フレームに移行して(ステップS14)、同様の処理がステップS1からS14まで繰り返し実行される。
【0060】
レーダ1の検出データをデータ処理するレーダ信号処理器3の追尾処理部8は、仮に自車両の速度が未知の場合、検出する物体が移動物であるか静止物であるかを識別することができず、追尾処理部8による追尾処理性能が低下する。本実施の形態では、静止物判別部10が、カメラ2およびカメラ画像処理器4で得た、物体の位置(カメラ検出位置)および物体種類に基づいて移動物を検出し、レーダ1が検出した物体のデータから移動物のデータを削除している。これにより、静止物判別部10は、高精度に静止物のデータのみを抽出することができる。その結果、自車両速度検出部11は、高精度に自車両速度を検出できる。したがって、追尾処理部8は、自車両速度に基づいて、移動物と静止物とを高精度に判別できるので、追尾処理の精度が向上し、レーダ1を用いた物体検出性能が向上する。このように、レーダ1による検出データを採用するフュージョン型の物体検出装置100は、物体の検出性能を向上させることができる。
【0061】
なお、物体検出装置の中には、物体検出装置が搭載される自車両から自車両の速度情報を入手して、レーダの追尾処理に反映する装置がある。この物体検出装置の場合、自車両とのインターフェース数が増加することで、ハードウェア規模の拡大等によって製造コストが増加する。
【0062】
ここで、物体検出装置100が備える、レーダ信号処理部であるレーダ信号処理器3、カメラ画像処理部であるカメラ画像処理器4、およびフュージョン処理部であるフュージョン処理器5のハードウェア構成について説明する。以下、レーダ信号処理器3、カメラ画像処理器4、およびフュージョン処理器5を、データ処理部という。物体検出装置100のデータ処理部は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用回路などの専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0063】
図5は、実施の形態にかかる物体検出装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。図5に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、物体検出装置100が備えるデータ処理部の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を物体検出装置100に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。上記プログラムは、物体を検出する処理を物体検出装置100が備えるデータ処理部に実行させるプログラムであるとも言える。
【0064】
プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。
【0065】
また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0066】
図6は、実施の形態にかかる物体検出装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。図6に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。また、レーダ信号処理器3、カメラ画像処理器4、およびフュージョン処理器5は、それぞれ別々の処理回路で構成されてもよい。また、レーダ信号処理器3、カメラ画像処理器4、およびフュージョン処理器5のうちの2つが上述した処理回路で構成され、残りの1つが上述した処理回路で構成されてもよい。
【0067】
このように実施の形態では、物体検出装置100が移動物のカメラ検出位置および移動物の物体種類に基づいて、物体の中から静止物を特定し、静止物のレーダ検出速度に基づいて、自装置が搭載される車両である自車両の速度を自車両速度として算出し、自車両速度に基づいて、移動物および静止物をレーダ1に追尾させる。これにより、物体検出装置100は、物体を正確に検出することができる。
【0068】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 レーダ、2 カメラ、3 レーダ信号処理器、4 カメラ画像処理器、5 フュージョン処理器、6 位置検出部、7 速度検出部、8 追尾処理部、9 レーダ検出データ、10 静止物判別部、11 自車両速度検出部、12 物体認識部、13 カメラ検出データ、14 同一判定部、15 フュージョン検出データ、16 出力部、20 車両制御装置、21 レーダ水平覆域、22 カメラ水平覆域、30 車両、41~43 メモリ、100 物体検出装置、A1~C1 静止物、X1 移動物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6