(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】キャニスタベントソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
F02M25/08 301H
(21)【出願番号】P 2024534827
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028133
(87)【国際公開番号】W WO2024018550
(87)【国際公開日】2024-01-25
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 惇嗣
(72)【発明者】
【氏名】栗原 朗優
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045472(JP,A)
【文献】特開2008-240638(JP,A)
【文献】特開平09-228904(JP,A)
【文献】特開2010-116814(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112302834(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0114914(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0025693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 1/00 , 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気と連通する通路を開閉するバルブ部と、
前記通路における外気と前記バルブ部との間に設けられたフィルタ部と、
前記フィルタ部の上部において前記バルブ部につながる第一の内部通路と外気とを連通させる第一の開口部と、
前記フィルタ部の下底部に形成され、前記第一の内部通路につながる第二の内部通路と外気とを連通させる第二の開口部と、
前記第二の内部通路において前記第一の内部通路と前記第二の開口部との間に配置されたラビリンス構造部品と、
を備え、
前記フィルタ部は、外筒部および当該外筒部の内部に配置された内筒部を有する円筒形状であり、
前記ラビリンス構造部品は、第一の円環部および第二の円環部を有し、
前記内筒部の外周と前記第一の円環部の内周とが接するように配置され、
前記第一の円環部の内径は、前記第二の円環部の内径より小さく、
前記第二の円環部の内径は、前記第一の円環部の外径より小さく、
前記第一の円環部の外径は、前記第二の円環部の外径より小さく、
前記第一の円環部と前記第二の円環部との間に隙間を有する、ように前記第一の円環部と前記第二の円環部とが組み合わされて構成されているキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記ラビリンス構造部品は、
前記フィルタ部に組み付けられた状態において、
前記第一の円環部は、前記第二の内部通路の上部から下部に向かって前記内筒部から前記外筒部の方向へ延びる傾斜形状を有し、
前記第二の円環部は、前記第一の円環部よりも前記フィルタ部における下底部側に配置され、前記第二の内部通路の上部から下部に向かって前記外筒部から前記内筒部の方向へ延びる傾斜形状を有する、
請求項1に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記第一の内部通路は、
前記第一の開口部、前記外筒部の上部に形成された開口部、前記内筒部の上部に形成された開口部、および、前記内筒部、を介して、外気と前記バルブ部とを連通するよう構成されている、
請求項1または請求項2に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記第二の開口部の開口面積は、前記第一の開口部の開口面積より小さい、
請求項1または請求項2に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記第二の開口部から、前記第二の内部通路を上部へ進むにしたがって、前記フィルタ部の中心軸に向かって延びるテーパ部を有する、
請求項1または請求項2に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記第二の開口部から、前記第二の内部通路を上部へ進むにしたがって、前記フィルタ部の中心軸に向かって延びるテーパ部を有する、
請求項4に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項7】
前記第二の開口部に防塵フィルタを備えた、
請求項1または請求項2に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項8】
前記防塵フィルタは、樹脂により構成されている、
請求項7に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
【請求項9】
外気と連通する通路を開閉するバルブ部と、
前記通路における外気と前記バルブ部との間に設けられたフィルタ部と、
前記フィルタ部の上部において前記バルブ部につながる第一の内部通路と外気とを連通させる第一の開口部と、
前記フィルタ部の下底部に形成され、前記第一の内部通路につながる第二の内部通路と外気とを連通させる第二の開口部と、
前記第二の内部通路において前記第一の内部通路と前記第二の開口部との間に配置されたラビリンス構造部品と、
を備え、
前記フィルタ部は、外筒部および当該外筒部の内部に配置された内筒部を有する円筒形状であり、
前記第二の開口部から、前記第二の内部通路を上部へ進むにしたがって、前記フィルタ部の中心軸に向かって延びるテーパ部を有するキャニスタベントソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、キャニスタベントソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
キャニスタベントソレノイドバルブの中には、例えば特許文献1に示されるように、バルブ部と外気との間にフィルタ部が取り付けられるものがある。フィルタ部は、バルブ部に外気が取り込まれる際に、外気に含まれるダスト等の異物を除去して、異物がバルブ部へ流入することを抑制する。
具体的には、例えば、特許文献1におけるフィルタ装置(8)およびフィルタ部(32)は、円筒形であり、外気である空気が内部に入ると、空気が円筒形の内面(46)に沿って円運動またはサイクロン運動で回転するように構成されている。空気に混入している物質は、遠心力により内部の壁に押し付けられて、フィルタ部における下部の空間に設けられたデッドエアスペース(54)に収集される。物質が除去された空気は、空気の流れの回転軸付近に設けられたおよび出口ポート(56)を通ってバルブ部(33)へ取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される構成は、出口ポートからバルブ部へ水が入り込んでしまう可能性が高いという課題がある。例えば、仮に大量の水がフィルタ部に入り込んだ場合または長時間にわたって水がフィルタ部に入り込んだ場合、フィルタ部における下部の空間に水がたまって出口ポートの位置まで達し、出口ポートからバルブ部へ水が入り込んでしまう。バルブ部へ水が入り込んでしまった場合、バルブ部における金属部品の劣化が進みやすくなってしまう。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するもので、キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、バルブ部への水の流入を、より抑制することが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のキャニスタベントソレノイドバルブは、外気と連通する通路を開閉するバルブ部と、前記通路における外気と前記バルブ部との間に設けられたフィルタ部と、前記フィルタ部の上部において、前記バルブ部につながる第一の内部通路と外気とを連通させる第一の開口部と、前記フィルタ部の下底部に形成され、前記第一の内部通路につながる第二の内部通路と外気とを連通させる第二の開口部と、前記第二の内部通路において前記第一の開口部と前記第二の開口部との間に配置されたラビリンス構造部品と、を備えた。
前記フィルタ部は、外筒部および当該外筒部の内部に配置された内筒部を有する円筒形状であり、前記ラビリンス構造部品は、第一の円環部および第二の円環部を有し、前記内筒部の外周と前記第一の円環部の内周とが接するように配置され、前記第一の円環部の内径は、前記第二の円環部の内径より小さく、前記第二の円環部の内径は、前記第一の円環部の外径より小さく、前記第一の円環部の外径は、前記第二の円環部の外径より小さく、前記第一の円環部と前記第二の円環部との間に隙間を有する、ように前記第一の円環部と前記第二の円環部とが組み合わされて構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、バルブ部への水の流入を、より抑制することが可能な構造を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係るキャニスタベントソレノイドバルブの全体構成を説明するための一部断面斜視図である。
【
図2】
図2Aは、
図1における矢印a方向に見た場合のフィルタ部の斜視図である。
図2Bは、
図1におけるフィルタ部の拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるラビリンス構造部品を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、フィルタ部の別の構成例を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示の実施の形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本開示に係るキャニスタベントソレノイドバルブ1の全体構成を説明するための一部断面斜視図である。
図1に示すキャニスタベントソレノイドバルブ1は、バルブ部10とフィルタ部100とを含み構成されている。
【0011】
バルブ部10は、外気と連通する通路を開閉する。
バルブ部10は、ソレノイドバルブである。
バルブ部10は、フィルタ部100における第一の内部通路と連通している。
バルブ部10の詳細な内部構成については、既知の技術を適用すればよいため、ここでの詳細な説明を省略する。
なお、バルブ部10は、フィルタ部100とは別に取り扱われる場合、バルブ装置とも言う。
【0012】
フィルタ部100は、外気とバルブ部10との間の通路に設けられている。
フィルタ部100は、バルブ部10に外気が取り込まれる際に、外気に含まれるダスト等の異物を除去して、異物がバルブ部10へ流入することを抑制する。
図1に示すフィルタ部100は、例えば実際に車両に搭載されて使用される状態を示している。この状態において、フィルタ部100は、重力方向のフィルタ下部100b、および、重力方向とは反対方向のフィルタ上部100aとを有する。説明において、フィルタ下部100bとフィルタ上部100aとは、例えば、フィルタ部100の内部に配置されたラビリンス構造部品130より下方の部分をフィルタ下部100bとし、ラビリンス構造部品130より上方の部分をフィルタ上部100aとする。
なお、フィルタ部100は、バルブ部10とは別に取り扱われる場合、フィルタ装置とも言う。
【0013】
図2Aは、
図1における矢印a方向に見た場合のフィルタ部100の斜視図である。
図2Bは、
図1におけるフィルタ部100の拡大図である。
図2Aおよび
図2Bに示すフィルタ部100は、外筒部101、および、当該外筒部101の内部に配置された内筒部102を有する円筒形状である。
具体的には、フィルタ部100は、外筒部101、および、内筒部102を有する。外筒部101の中心軸および内筒部102の中心軸は、同一の軸bになるように構成されている。外筒部101の径は、内筒部102の径より大きい。内筒部102は、外筒部101の内部に配置されている。
また、フィルタ部100は、上底部である蓋部103を備えている。蓋部103は、外筒部101の外径より大きい内径を有し、外筒部101の上部を覆うように配置されている。蓋部103の内周壁と外筒部101の外周壁との間には隙間が形成され、下方に向かって開口している。これにより、次に説明する第一の開口部110が形成されている。
なお、蓋部103は、フィルタ部100の内部に後述するラビリンス構造部品130およびフィルタ材140などを配置した上で内筒部102および外筒部101に被せるように取り付けられる。
【0014】
フィルタ部100は、第一の開口部110、第二の開口部120、および、ラビリンス構造部品130を含み構成されている。
【0015】
第一の開口部110は、フィルタ部100のフィルタ上部100aにおいてバルブ部10につながる第一の内部通路と外気とを連通させる。第一の開口部110において、外筒部101の外周壁には突部が形成され、外筒部101の外周壁に沿って異物または水が直接入り込まないように構成されている。
第一の内部通路は、第一の開口部110、外筒部101の上部に形成された開口部、内筒部102の上部に形成された開口部、および、内筒部102、を介して、外気とバルブ部10とを連通するよう構成されている。
内筒部102の上部には、内筒部102の外周を囲うようにフィルタ材140が配置されている。フィルタ材140は、また、ラビリンス構造部品130の上部に載置されるように配置されている。フィルタ材140は、例えばウレタンといった発泡体である。フィルタ材140の材質は、仕様に応じて必要とされる材質が適宜選択されるものである。フィルタ材140は、第一の内部通路の外筒部101の上部に形成された開口部と内筒部102の上部に形成された開口部との間において、異物または水が内筒部102へ入らないように機能する。
【0016】
第二の開口部120は、フィルタ部100の下底部104に形成され、第一の内部通路につながる第二の内部通路と外気とを連通させる。
第二の内部通路は、第二の開口部120と第一の内部通路との間を連通する通路である。具体的には、第二の内部通路は、フィルタ上部100aの外筒部と内筒部との間において第一の内部通路から分岐し、重力方向(下方向)にあるフィルタ下部100bへ向かって延びて第二の開口部120に達する通路である。
この第二の開口部120を有するフィルタ部100は、第一の開口部110からフィルタ部100の内部に水が入り込んだ場合、第二の内部通路および第二の開口部120を介して排水が可能な構造になっている。
【0017】
第二の内部通路は、テーパ部124を有する。テーパ部124は、第二の開口部120から第二の内部通路を進むにしたがって、フィルタ部100における内筒部102の軸に向かって傾斜して延びる部分である。テーパ部124は、フィルタ部100の第二の内部通路に入り込んだ水の排水を促進することができる。
【0018】
第二の開口部120の開口面積は、第一の開口部110の開口面積より小さくなるように構成されている。開口面積は、例えば開口部における最小の面積を用いて計算される。
これにより、第二の開口部120よりも第一の開口部110から外気が流入しやすくなり、第二の開口部120からの異物の侵入を抑制することができるように構成されている。
【0019】
隔壁部122は、フィルタ部100の内部における第二の内部通路に設けられ、フィルタ部100の下底部104からラビリンス構造部品130が配置された位置まで延びる隔壁である。隔壁部122は、ラビリンス構造部品130を載置する座面として機能する。また、隔壁部122は、フィルタ部100における外筒部の強度を補うリブとして機能する。
【0020】
ラビリンス構造部品130は、第一の開口部110と第二の開口部120との間に配置されている。具体的には、ラビリンス構造部品130は、第二の内部通路において第一の内部通路と第二の開口部120との間に配置されている。
ラビリンス構造部品130は、ラビリンス構造を有する。ラビリンス構造部品130は、ラビリンス構造を有することにより、第二の内部通路をラビリンス化し、第二の内部通路において流れを妨げるように機能する。例えば、ラビリンス構造部品130は、第二の内部通路において第一の開口部110側から見た場合に第二の開口部120を直接見ることができないように通路を遮るような形状を有する。また、ラビリンス構造部品130は、第二の内部通路において第二の開口部120側から見た場合に第一の開口部110側を直接見ることができないように通路を遮るような形状を有する。
【0021】
ラビリンス構造部品130について、さらに、説明する。
図3は、
図1におけるラビリンス構造部品130を示す斜視図である。
図4は、
図3のc-c線断面図である。
フィルタ部100が外筒部101の内部に内筒部102を配置した円筒形状である場合、
図3および
図4に示すように、ラビリンス構造部品130は、第一の円環部132および第二の円環部134を有する。第一の円環部132と第二の円環部134とは接続部136を介して一体に成型されて構成されている。第一の円環部132と第二の円環部134とは、第一の円環部132の中心軸と第二の円環部134の中心軸とが上述した外筒部101の中心軸および内筒部102の中心軸と同軸になるように構成されている。
ラビリンス構造部品130は、フィルタ部100における内筒部102の外周と第一の円環部132の内周とが接するように配置されている。
ラビリンス構造部品130において、第一の円環部132の内径dは、第二の円環部134の内径fより小さい。
ラビリンス構造部品130において、第二の円環部134の内径fは、第一の円環部132の外径eより小さい。
ラビリンス構造部品130において、第一の円環部132の外径eは、第二の円環部134の外径gより小さい。
ラビリンス構造部品130においては、第一の円環部132と第二の円環部134との間に隙間を有する。
ラビリンス構造部品130においては、このような第一の円環部132と第二の円環部134とが組み合わされて構成されている。
なお、説明において、ラビリンス構造部品130は、第一の円環部132と第二の円環部134とを1組だけ用いて構成されているものを示したが、第一の円環部132と第二の円環部134との組を複数組組み合わせて構成されているものであってもよい。
【0022】
ラビリンス構造部品130における第一の円環部132は、傾斜形状を有する。具体的には、第一の円環部132は、第二の内部通路の上部から下部に向かって内筒部102から外筒部101の方向へ延びる傾斜形状を有する。さらに、具体的には、ラビリンス構造部品130がフィルタ部100に組み付けられた状態において、第一の円環部132は、第二の内部通路において上部から下部に向かうにしたがって内筒部102の外周壁から外筒部101の内周壁の方向へ延びる形状を有する。このような形状の例として、図に示す第一の円環部132は、その断面が台形形状である。
ラビリンス構造部品130における第二の円環部134は、傾斜形状を有する。具体的には、第二の円環部134は、第一の円環部132よりも下部に配置されており、第二の内部通路の上部から下部に向かって外筒部101から内筒部102の方向へ延びる傾斜形状を有する。さらに、具体的には、ラビリンス構造部品130がフィルタ部100に組み付けられた状態において、第二の円環部134は、第一の円環部132よりもフィルタ部100における下底部104側に配置され、第二の内部通路において上部から下部に向かうにしたがって外筒部101の内周壁から内筒部102の外周壁の方向へ延びる形状を有する。このような形状の例として、図に示す第二の円環部134は、その断面が三角形形状である。
なお、説明において、第一の円環部132の断面が台形形状であり、第二の円環部134の断面が三角形形状である例を説明したが、本開示はこの例に限定されない。第一の円環部132の断面が三角形形状であり、第二の円環部134の断面が台形形状であってもよい。第一の円環部132の断面および第二の円環部134の断面がそれぞれ三角形形状であってもよい。第一の円環部132の断面および第二の円環部134の断面がそれぞれ台形形状であってもよい。
また、第一の円環部132の断面および第二の円環部134の断面は、三角形形状または台形形状でなくてもよい。例えば、三角形形状または台形形状の一部を切り欠いた逆L字形状または逆V字形状であってもよい。
【0023】
ラビリンス構造部品130は、第一の円環部132の内径、第一の円環部132の外径、第二の円環部134の内径、第二の円環部134の外径、第一の円環部132と第二の円環部134との間に隙間の開口面積、当該隙間を形成する第一の円環部132の角度および第二の円環部134の角度、第一の円環部132の断面形状、および、第二の円環部134の断面形状、といった条件を適宜設定することにより、第二の内部通路における流れの圧力損失を設定することができる。
例えば、第一の開口部110からバルブ部10へ向かう第一の内部通路における圧力損失に対して、第二の開口部120から第二の内部通路を介してバルブ部10へ向かう通路の圧力損失を2倍にするように設計した場合は、第二の開口部120からの外気の吸引力を第一の開口部110からの外気の吸引力のおよそ2分の1まで低減させることが可能になる。これにより、第二の開口部120からバルブ部10へ水が入り込むリスクをさらに低減させることができる。
【0024】
このようなラビリンス構造部品130を有することにより、フィルタ部100は、第一の開口部110から第一の内部通路を介して第二の内部通路に入り込んだ水が第一の円環部132から第二の円環部134へ集まりやすく、さらに、第一の円環部132と第二の円環部134との隙間を介して、第二の内部通路の下部へ流れて第二の開口部120から排水されやすい構造にすることができる。
また、仮に第二の開口部120から第二の内部通路へ外気に混ざって水または異物が入り込んだ場合、ラビリンス構造部品130における第二の円環部134および第一の円環部132により、フィルタ部100の下底部104から上部への流れが阻害されるように構成されているので、第一の内部通路へ水および異物が入り込みにくくなっている。
【0025】
ここで、フィルタ部100の別の構成例を説明する。
図5は、フィルタ部100の別の構成例を示す断面斜視図である。
図5に示すフィルタ部100´は、第二の開口部120´に防塵フィルタ150を備えた構成である。この防塵フィルタ150は、例えば樹脂からなる網目形状のフィルタである。防塵フィルタ150は、例えば、フィルタ部100´と一体成型されている。または、防塵フィルタ150は、例えばフィルタ部100´における第二の開口部120´に接着剤等を用いて貼り付けられている。
防塵フィルタ150を備えたフィルタ部100´は、第二の開口部120´から異物が入り込むことを低減させる構造にすることができる。また、防塵フィルタ150を備えたフィルタ部100´は、第二の内部通路を介してバルブ部10へ向かう通路における圧力損失を大きくすることができ、第二の開口部120´からフィルタ部100´の内部通路へ水が入り込むことをさらに低減させることができる。
また、樹脂成型された防塵フィルタ150を採用することにより、生産性を向上させることができ、キャニスタベントソレノイドバルブ1を低コストで生産することが可能になる。
図5に示すフィルタ部100´は、防塵フィルタ150を備えた点以外の構成が上述したフィルタ部100の構成と同じであるため、そのほかの構成の詳細な説明を省略する。
【0026】
従来技術と本開示とを対比して説明する。
従来技術においては、出口ポートからバルブ部へ水が入り込んでしまう可能性が高い構成であった。これにより、バルブ部における金属部品の劣化が進みやすかった。また、出口ポートに設けられたフィルタが水に浸されることにより加水分解が生じてしまう場合があった。その結果、キャニスタベントソレノイドバルブの製品寿命が短くなってしまう場合があった。
これに対して、本開示のフィルタ部100またはフィルタ部100´を含むキャニスタベントソレノイドバルブ1は、上述したような構成を有するため、上記したような従来技術における問題が生じない。
【0027】
本開示について、以下に整理して記載する。
本開示は、以下のような構成を開示した。
(1)
外気と連通する通路を開閉するバルブ部と、
前記通路における外気と前記バルブ部との間に設けられたフィルタ部と、を備え、
前記フィルタ部の上部において前記バルブ部につながる第一の内部通路と外気とを連通させる第一の開口部と、
前記フィルタ部の下底部に形成され、前記第一の内部通路につながる第二の内部通路と外気とを連通させる第二の開口部と、
前記第二の内部通路において前記第一の内部通路と前記第二の開口部との間に配置されたラビリンス構造部品と、
を備えたキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、バルブ部への水の流入を、より抑制することが可能な構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0028】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(2)
前記フィルタ部は、外筒部および当該外筒部の内部に配置された内筒部を有する円筒形状であり、
前記ラビリンス構造部品は、第一の円環部および第二の円環部を有し、
前記内筒部の外周と前記第一の円環部の内周とが接するように配置され、
前記第一の円環部の内径は、前記第二の円環部の内径より小さく、
前記第二の円環部の内径は、前記第一の円環部の外径より小さく、
前記第一の円環部の外径は、前記第二の円環部の外径より小さく、
前記第一の円環部と前記第二の円環部との間に隙間を有する、ように前記第一の円環部と前記第二の円環部とが組み合わされて構成されている、
上記(1)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、円筒形状のフィルタ部に適した構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0029】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(3)
前記ラビリンス構造部品は、
前記フィルタ部に組み付けられた状態において、
前記第一の円環部は、前記第二の内部通路において上部から下部に向かうにしたがって前記外筒部の内周壁に近づく形状を有し、
前記第二の円環部は、前記第一の円環部よりも前記フィルタにおける下底部側に配置され、前記第二の内部通路において上部から下部に向かうにしたがって前記内筒部の中心軸に近づく形状を有する、
上記(2)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、第一の開口部からフィルタ部に侵入した水を排出しやすい構造を提供することができる、という効果を奏する。
また、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、第二の開口部からの水が入り込むことを抑制する構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0030】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(4)
前記第一の内部通路は、前記第一の開口部、前記外筒部の上部に形成された開口部、前記内筒部の上部に形成された開口部、および、前記内筒部、を介して、外気と前記バルブ部とを連通するよう構成されている、
上記(2)、または、上記(3)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、外筒部の内部に設けられた内筒部を通路にした構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0031】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(5)
前記第二の開口部の開口面積は、前記第一の開口部の開口面積より小さい、
上記(1)、上記(2)、または、上記(3)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、第二の開口部からの異物の侵入を抑制する構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0032】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(6)
前記第二の開口部から前記第二の内部通路を進むにしたがって、前記フィルタ部における前記内筒部の軸に向かって延びるテーパ部を有する、
上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、または、上記(5)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、フィルタ部に入り込んだ水の排水を促進する構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0033】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(7)
前記第二の開口部に防塵フィルタを備えた、
上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、または、上記(6)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、第二の開口部から異物が入り込むことを低減する構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0034】
本開示は、さらに、以下のような構成を開示した。
(8)
前記防塵フィルタは、樹脂からなる、
上記(7)に記載のキャニスタベントソレノイドバルブ。
これにより、本開示は、さらに、上記キャニスタベントソレノイドバルブにおいて、生産性が向上する構造を提供することができる、という効果を奏する。
【0035】
なお、本開示は、この開示の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは、実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示に係るキャニスタベントソレノイドバルブは、バルブ部へ水が入り込むことを抑制する構造を有するので、例えば車両に搭載されるキャニスタベントソレノイドバルブに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0037】
1 キャニスタベントソレノイドバルブ、10 バルブ部(バルブ装置)、100,100´ フィルタ部(フィルタ装置)、100a フィルタ上部、100b フィルタ下部、101 外筒部、102 内筒部、103 蓋部、104 下底部、110 第一の開口部、120,120´ 第二の開口部、122 隔壁部、124 テーパ部、130 ラビリンス構造部品、132 第一の円環部、134 第二の円環部、136 接続部、140 フィルタ材、150 防塵フィルタ。