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特許7612117ヘッドライト制御装置、および、ヘッドライト制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】ヘッドライト制御装置、および、ヘッドライト制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/076 20060101AFI20241227BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B60Q1/076
B60Q1/04 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024543676
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2022032693
(87)【国際公開番号】W WO2024047777
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島谷 紫織
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃史
(72)【発明者】
【氏名】宗平 真
(72)【発明者】
【氏名】竹裏 尚嘉
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-347881(JP,A)
【文献】特開2009-120148(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108773317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/076
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が撮像された撮像画像に基づき、前記運転者の向きを検出する向き検出部と、
前記車両の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部と、
前記向き検出部が検出した前記運転者の向きに関する向き情報と、前記走行関連情報取得部が取得した前記走行関連情報とに基づき、前記車両に設けられているヘッドライトの設置位置から前記運転者が向いている方向において前記運転者の視認位置と推定される推定視認位置までの距離である奥行距離を推定する奥行距離推定部と、
前記奥行距離推定部が推定した前記奥行距離に基づいて、前記ヘッドライトによる光の照射範囲を決定する照射決定部と、
前記ヘッドライトに対して、前記照射決定部が決定した前記照射範囲に前記光を照射させるヘッドライト制御部
とを備えたヘッドライト制御装置。
【請求項2】
前記奥行距離推定部は、
前記向き情報と、前記走行関連情報と、前記運転者の挙動に関する情報と前記走行関連情報とが対応付けられた奥行距離推定用情報との比較によって、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項3】
前記奥行距離推定部は、
前記向き情報と、前記走行関連情報と、前記向き情報および前記走行関連情報を入力とし前記奥行距離に関する情報を出力する機械学習モデルとに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項4】
前記走行関連情報取得部は、前記走行関連情報として前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部を有し、
前記奥行距離推定部は、前記向き情報と前記車両情報とに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のヘッドライト制御装置。
【請求項5】
前記走行関連情報取得部は、前記走行関連情報として前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、前記走行関連情報として地図情報を取得する地図情報取得部とを有し、
前記奥行距離推定部は、前記向き情報と前記車両情報と前記地図情報とに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のヘッドライト制御装置。
【請求項6】
前記走行関連情報取得部は、前記走行関連情報として前記車両の周辺に関する車外情報を取得する車外情報取得部を有し、
前記奥行距離推定部は、前記向き情報と前記車外情報とに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項7】
前記走行関連情報取得部は、前記走行関連情報として前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、前記走行関連情報として前記車両の周辺に関する車外情報を取得する車外情報取得部とを有し、
前記奥行距離推定部は、前記向き情報と前記車両情報と前記車外情報とに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項8】
前記走行関連情報取得部は、前記走行関連情報として前記車両に関する車両情報を取得する車両情報取得部と、前記走行関連情報として地図情報を取得する地図情報取得部と、前記走行関連情報として前記車両の前方に関する車外情報を取得する車外情報取得部とを有し、
前記奥行距離推定部は、前記向き情報と前記車両情報と前記地図情報と前記車外情報とに基づき、前記奥行距離を推定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項9】
前記車外情報取得部が取得する前記車外情報には前記車両の周辺に存在する物体までの距離に関する情報が含まれ、
前記奥行距離推定部は、前記車両の前方に存在する前記物体までの距離に基づき、前記奥行距離を調整し、調整後の前記奥行距離を、推定した前記奥行距離とする
ことを特徴とする請求項6から請求項8のうちのいずれか1項記載のヘッドライト制御装置。
【請求項10】
前記向き検出部が検出した前記運転者の向きの信頼度を判定する信頼度判定部を備え、
前記奥行距離推定部は、前記信頼度判定部が前記信頼度は低いと判定した前記運転者の向きを、前記奥行距離の推定に用いない
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項11】
前記照射決定部は、前記照射範囲において、第1照射範囲と前記ヘッドライトによる照射光量を前記第1照射範囲よりも小さくする第2照射範囲とを設定し、
前記ヘッドライト制御部は、前記ヘッドライトに対して、前記照射範囲のうち、前記照射決定部が設定した前記第2照射範囲には、前記照射決定部が設定した前記第1照射範囲に照射させる前記光よりも小さい前記照射光量の前記光を照射させる
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項12】
前記照射決定部は、前記向き情報と前記走行関連情報とに基づき、前記運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定し、前記運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、前記第2照射範囲を広げる周囲確認判定部を有する
ことを特徴とする請求項11記載のヘッドライト制御装置。
【請求項13】
前記奥行距離推定部は、前記奥行距離を推定するとともに前記照射範囲の理想幅を推定し、
前記照射決定部は、前記奥行距離推定部が推定した前記奥行距離と前記照射範囲の前記理想幅とに基づいて前記照射範囲を決定する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項14】
前記奥行距離推定部は、前記奥行距離を推定するとともに前記ヘッドライトによる前記光の理想光量を推定し、
前記ヘッドライト制御部は、前記ヘッドライトに対して、前記照射決定部が決定した前記照射範囲において、前記奥行距離推定部が推定した前記理想光量で、前記光を照射させる
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項15】
向き検出部が、車両の運転者が撮像された撮像画像に基づき、前記運転者の向きを検出するステップと、
走行関連情報取得部が、前記車両の走行に関連する走行関連情報を取得するステップと、
奥行距離推定部が、前記向き検出部が検出した前記運転者の向きに関する向き情報と、前記走行関連情報取得部が取得した前記走行関連情報とに基づき、前記車両に設けられているヘッドライトの設置位置から前記運転者が向いている方向において前記運転者の視認位置と推定される推定視認位置までの距離である奥行距離を推定するステップと、
照射決定部が、前記奥行距離推定部が推定した前記奥行距離に基づいて、前記ヘッドライトによる光の照射範囲を決定するステップと、
ヘッドライト制御部が、前記ヘッドライトに対して、前記照射決定部が決定した前記照射範囲に前記光を照射させるステップ
とを備えたヘッドライト制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドライト制御装置、および、ヘッドライト制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両におけるヘッドライトの点灯制御において、運転者の視認性を向上させるため、運転者が向いている方向にヘッドライトの光が照射されるよう、運転者が向いている方向に基づいて、ヘッドライトの照射範囲を変化させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-120148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような従来技術では、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮したヘッドライトの制御が行えていないという課題があった。その結果、運転者が実際に視認しようとしている場所を照射できていない状況が発生している可能性があった。
【0005】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、車両における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライトの点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御を可能としたヘッドライト制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るヘッドライト制御装置は、車両の運転者が撮像された撮像画像に基づき、運転者の向きを検出する向き検出部と、車両の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部と、向き検出部が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部が取得した走行関連情報とに基づき、車両に設けられているヘッドライトの設置位置から運転者が向いている方向において運転者の視認位置と推定される推定視認位置までの距離である奥行距離を推定する奥行距離推定部と、奥行距離推定部が推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライトによる光の照射範囲を決定する照射決定部と、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した照射範囲に前記光を照射させるヘッドライト制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライトの点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図2】実施の形態1において、奥行距離推定部が奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図3図2に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.6の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報とから推定される車両の走行状態および運転者の推定視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
図4】実施の形態1において、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図6図6Aおよび図6Bは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】実施の形態2に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図8】実施の形態2において、奥行距離推定部が奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図9図8に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.6の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報と地図情報とから推定される車両の走行状態および運転者の視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
図10図10Aは、実施の形態2において、奥行距離推定部が推定する奥行距離の一例について説明するための図であり、図10Bは、実施の形態2において、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、奥行距離推定部が推定した図10Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図11図11Aおよび図11Bは、実施の形態1において、奥行距離推定部が、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲について、具体的に何m~何mの範囲になるかの算出方法の一例を説明するための図である。
図12図12Aは、実施の形態2において、奥行距離推定部が推定する奥行距離のその他の一例について説明するための図であり、図12Bは、実施の形態2において、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、奥行距離推定部が推定した図12Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図13】実施の形態2に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図14】実施の形態3に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図15】実施の形態3において、奥行距離推定部が奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図16図15に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.8の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車外情報とから推定される車両の走行状態および運転者の視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
図17】実施の形態3において、奥行距離推定部が推定した奥行距離に基づいて照射決定部が照射範囲を決定し、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図18】実施の形態3において、奥行距離推定部が推定した奥行距離に基づいて照射決定部が照射範囲を決定し、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した照射範囲に光を照射させた様子のその他の一例を説明するための図である。
図19】実施の形態3において、奥行距離推定部が推定した奥行距離に基づいて照射決定部が照射範囲を決定し、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した照射範囲に光を照射させた様子のその他の一例を説明するための図である。
図20】実施の形態3に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図21】実施の形態4に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図22】実施の形態4において、奥行距離推定部が奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図23図22に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.7の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報と地図情報と車外情報とから推定される車両の走行状態および運転者の視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
図24図24Aは、実施の形態4において、奥行距離推定部が推定する奥行距離の一例について説明するための図であり、図24Bは、実施の形態4において、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、奥行距離推定部が推定した図24Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図25】実施の形態4に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図26】実施の形態5に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図27】実施の形態5において、信頼度判定部が、向き検出部によって検出された運転者の向きの信頼度が低いと判定する場面の一例を説明するための図である。
図28】実施の形態5に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図29】実施の形態6に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図30】実施の形態6において、ヘッドライト制御部が、ヘッドライトに対して、照射決定部が決定した第1照射範囲および第2照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図であって、図30Aは、第1照射範囲および第2照射範囲に光が照射されている様子を横から見た図であり、図30Bは、第1照射範囲および第2照射範囲に光が照射されている様子を車両側から見た図である。
図31】実施の形態6に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
図32】実施の形態7に係るヘッドライト制御装置の構成例を示す図である。
図33】実施の形態7において、周囲確認判定部が、運転者が周囲の確認を行っているか否かの判定に用いる周囲確認判定用条件の内容の一例を説明するための図である。
図34】実施の形態7において、周囲確認判定部が、照射決定部が設定した第2照射範囲を広げた後の、照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図35】実施の形態7において、ヘッドライト制御装置がヘッドライトに対して照射させる光の照射範囲の一例について説明するための図であって、車両の周囲の状況を上から見た俯瞰図である。
図36】実施の形態7において、ヘッドライト制御装置がヘッドライトに対して照射させる光の照射範囲の一例について説明するための図であって、図36Bは、図35に示すような車両の周囲の状況において、ヘッドライト制御装置がヘッドライトに対して照射させる光の照射範囲の一例を示す図であり、図36Aは、図35に示すような車両の周囲の状況において、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置がヘッドライトに対して照射させる光の照射範囲の一例を示す図である。
図37】実施の形態7に係るヘッドライト制御装置の動作について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1の構成例を示す図である。
実施の形態1において、ヘッドライト制御装置1は、車両100に搭載されていることを想定する。
ヘッドライト制御装置1は、車両100の運転者の向きに基づいて、車両100に設けられているヘッドライト2の灯火制御を行う。実施の形態1において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向であらわされる。実施の形態1において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向に加え、運転者の身体の向き、言い換えれば、運転者の姿勢、を含むものとしてもよい。以下の実施の形態1では、一例として、「運転者の向き」には運転者の姿勢が含まれるものとする。
実施の形態1では、ヘッドライト制御装置1が行う、運転者の向きに基づくヘッドライト2の灯火制御は、例えば、夜間の駐車場、または、夜間の市街地等、車両100の周囲が暗い場所において、運転者によってヘッドライト2がオンにされた場合、または、ヘッドライト制御装置1が周囲の明暗から自動でヘッドライト2をオンにすると判別した場合に行われることを想定している。
【0010】
ヘッドライト制御装置1は、ヘッドライト2、車内撮像装置3、および、走行関連情報取得装置4と接続される。ヘッドライト2、車内撮像装置3、および、走行関連情報取得装置4は、車両100に設けられている。
【0011】
ヘッドライト2は、車両100の前方を照らす照明器具である。ヘッドライト2は、例えば、ハイビームとロービームと補助光とを照射可能な一般的なヘッドライトであるため詳細な構成例についての説明は省略する。ヘッドライト2は、車両100において、車両100の進行方向に対して左側に搭載される左ライト(図示省略)と、車両100において、車両100の進行方向に対して右側に搭載される右ライト(図示省略)とを備える。左ライトと右ライトとは、それぞれ、遠方を照らすハイビームユニット(図示省略)と近方を照らすロービームユニット(図示省略)と補助光ユニット(図示省略)で構成される。
ハイビームユニット、ロービームユニット、および、補助光ユニットは、例えば、それぞれ、アレイ状に配置された複数のLED光源等の光源(図示省略)で構成され、各光源は個々に点灯可能である。なお、実施の形態1において、アレイ状に配置されるとは、光源が、車両100の幅方向に一列に配置されることをいう。各光源が点灯することで、車両100の前方の領域にハイビーム、ロービーム、または、補助光が照射される。ハイビームユニット、ロービームユニット、および、補助光ユニットは、例えば、それぞれMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いてもよい。ハイビームユニット、ロービームユニット、および、補助光ユニットは、光をMEMSミラーで反射させることで、配光範囲を制御することができる。
【0012】
実施の形態1において、車両100の前方においてハイビームユニットがハイビームを照射可能とする領域を「ハイビーム照射可能領域」という。ハイビーム照射可能領域が、車両100のどれぐらい前方までの、どれぐらいの範囲の領域であるかは、ハイビームユニットの仕様等に応じて、予め決められている。実施の形態1において、車両100の前方においてロービームユニットがロービームを照射可能とする領域を「ロービーム照射可能領域」という。ロービーム照射可能領域が、車両100のどれぐらい前方までの、どれぐらいの範囲の領域であるかは、ロービームユニットの仕様等に応じて、予め決められている。実施の形態1において、車両100の前方において補助光ユニットが補助光を照射可能とする領域を「補助光照射可能領域」という。補助光照射可能領域が、車両100のどれぐらい前方までの、どれぐらいの範囲の領域であるかは、補助光ユニットの仕様等に応じて、予め決められている。
【0013】
実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1は、例えば、各光源について点灯または消灯させることで、ハイビーム、ロービーム、または、補助光を照射または遮光させる制御を行う。これにより、ヘッドライト制御装置1は、ヘッドライト2による光の照射範囲を制御する。
なお、ヘッドライト制御装置1は、各光源について点灯および消灯を行うだけでなく、点灯時の光量の制御を行うことも可能である。例えば、ヘッドライト制御装置1は、ヘッドライト2の各光源の電流値を制御することでヘッドライト2の光量を制御することもできる。
【0014】
車内撮像装置3は、車両100内をモニタリングすることを目的に車両100に設置されたカメラ等であり、少なくとも、運転者の顔を撮像可能に設置されている。
車内撮像装置3は、赤外線カメラまたは可視光カメラ等である。
車内撮像装置3は、撮像した撮像画像(以下「車内撮像画像」という。)を、ヘッドライト制御装置1に出力する。
車内撮像装置3は、例えば、車両100内の運転者の状態を監視するために車両100に搭載される、いわゆる「ドライバーモニタリングシステム(Driver Monitoring System,DMS)」が有する撮像装置と共用のものであってもよい。
【0015】
走行関連情報取得装置4は、車両100の走行に関連する情報(以下「走行関連情報」という。)を取得する。
実施の形態1では、走行関連情報取得装置4は、例えば、車速センサ(図示省略)またはハンドル舵角センサ(図示省略)等の装置を想定している。車速センサまたは舵角センサ等の装置は、走行関連情報として、車速またはハンドル舵角等、車両100に関する情報(以下「車両情報」という。)を取得する。
走行関連情報取得装置4、ここでは車速センサまたはハンドル舵角センサ等の装置は、取得した走行関連情報、ここでは車両情報を、ヘッドライト制御装置1に出力する。
【0016】
ヘッドライト制御装置1は、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14、ヘッドライト制御部15、および、記憶部16を備える。走行関連情報取得部12は、車両情報取得部121を備える。
【0017】
向き検出部11は、車内撮像装置3から車内撮像画像を取得する。そして、向き検出部11は、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出する。
【0018】
向き検出部11は、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像から運転者の顔パーツ(例えば目、鼻、口等)を検出し、人の顔が撮像された撮像画像から人の顔向きを検出する公知の画像認識技術、または、人の顔が撮像された撮像画像から人の視線方向を検出する公知の画像認識技術を用いて、運転者の顔向き、または、視線方向を検出する。
例えば、向き検出部11は、車内撮像装置3が赤外線カメラである場合、近赤外の点光源を照射し、角膜で反射されたプルキニエ像と瞳孔の位置関係から、運転者の視線方向を検出できる。例えば、向き検出部11は、予め用意され向き検出部11が記憶している、顔向き角度毎の顔画像の標準パターンと、車内撮像画像とのパターンマッチングにより最も類似度が高い顔向き角度を求めることにより、運転者の顔向きを検出できる。
【0019】
また、向き検出部11は、人が撮像された撮像画像から人の姿勢を検出する公知の画像認識技術を用いて、運転者の姿勢を検出する。
【0020】
なお、向き検出部11は、運転者の顔向きと視線方向のうち、少なくともいずれか一方を検出するようになっていればよい。
例えば、向き検出部11は、運転者の顔向きと視線方向の両方を検出し、より信頼度の高いほうを採用してもよい。例えば、向き検出部11は、運転者がサングラスまたは眼鏡を着用している場合は、運転者の視線方向より運転者の顔向きのほうがより信頼度が高いと判定する。
例えば、向き検出部11は、運転者の顔向きと視線方向の両方を検出した上で、優先度をつけて、どちらかを運転者の向きとして採用するようにしてもよい。例えば、向き検出部11は、検出した運転者の顔向きと視線方向との差が大きい場合は運転者の視線方向を運転者の向きとして採用し、検出した運転者の顔向きと視線方向との差が小さい場合は運転者の顔向きを運転者の向きとして採用する。
【0021】
実施の形態1において、向き検出部11は、例えば、運転者の向きのうち、運転者の顔向き、または、視線方向を、運転者の頭部中心を基準として検出するものとする。なお、車内撮像装置3の設置位置および画角は予めわかっているので、向き検出部11は、運転者の頭部中心の位置を算出可能である。運転者の頭部中心の位置は、実空間上の一点であり、例えば、地図上にマッピング可能な座標値であらわされる。
また、実施の形態1において、運転者の向きのうち、運転者の顔向き、または、視線方向は、例えば、運転者の頭部中心と当該頭部中心の正面の一点とを通る直線に対する水平角度および垂直角度であらわされるものとする。なお、実施の形態1において、「水平」とは、厳密に水平であることに限定されず、略水平を含む。また、実施の形態1において、「垂直」とは、厳密に垂直であることに限定されず、略垂直を含む。
詳細には、運転者の顔向き、または、視線方向は、例えば、運転者が車両100の進行方向に対して正面を向いたときを基準(0度)とし、運転者が正面を向いた状態から車両100の進行方向に対して右または上に向くほど大きい値となる角度であらわされる。運転者の顔向き、または、視線方向は、例えば、運転者が車両100の進行方向に対して書面を向いたときを基準(0度)とし、運転者が正面を向いた状態から車両100の進行方向に対して左または下に向くほど、小さい値となる角度であらわされる。なお、実施の形態1において、正面とは、厳密に真正面であることに限定されず、略真正面を含む。
【0022】
以下の実施の形態1において、単に「運転者の顔向き」というとき、当該「運転者の顔向き」は、運転者の視線方向も含む、「運転者の顔向き、または、視線方向」のことをいう。
【0023】
向き検出部11は、検出した運転者の向きに関する情報(以下「向き情報」という。)を、奥行距離推定部13に出力するとともに、記憶部16に記憶させる。向き情報は、運転者の顔向きと姿勢を示す情報、詳細には、運転者の顔向きの水平角度および垂直角度を示す情報と、運転者の姿勢の水平角度および垂直角度を示す情報を含む。
向き検出部11は、向き情報を記憶部16に記憶させる際、例えば、向き情報に検出時刻を付与して、当該向き情報を記憶させる。
例えば、記憶部16が複数(例えば50個)設けられるようにし、向き検出部11は、最新の50個の向き情報を、各記憶部16に記憶させるようにしてもよい。この場合、向き検出部11は、向き情報を記憶部16に記憶させる際、向き情報に検出時刻を付与しなくてもよい。
【0024】
なお、実施の形態1において、向き検出部11は、運転者の向きを検出しなかった場合、例えば記憶部16に向き情報を無効値として記憶させ、運転者の向きを検出しなくなってから予め設定された時間(以下「向き検出判定用時間」という。)が経過したかを判定する。向き情報を記憶部16に記憶させる際に向き情報に検出時刻を付与しない場合は、向き検出部11は、記憶部16に何個連続で無効値が記憶されているかで向き検出判定用時間が経過したかを判定すればよい。向き検出部11は、向き検出判定用時間が経過していない場合は、記憶部16を参照し、直前に検出した運転者の向きを示す向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
運転者の向きを検出しなくなってから向き検出判定用時間が経過したと判定した場合は、向き検出部11は、ヘッドライト制御部15に、運転者の向きに無効値を設定した向き情報(以下「向き無効情報」という。)を、出力する。向き検出部11は、向き無効情報を、奥行距離推定部13および照射決定部14を介してヘッドライト制御部15に出力してもよいし、直接ヘッドライト制御部15に出力してもよい。なお、図1では、向き検出部11からヘッドライト制御部15への矢印の図示は省略している。
【0025】
走行関連情報取得部12は、走行関連情報取得装置4から走行関連情報を取得する。
詳細には、車両情報取得部121は、走行関連情報取得装置4から、車両情報を取得する。
車両情報取得部121は、取得した車両情報を、走行関連情報として奥行距離推定部13に出力する。
【0026】
奥行距離推定部13は、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報とに基づいて、奥行距離を推定する。
詳細には、奥行距離推定部13は、向き情報と、走行関連情報(ここでは車両情報)と、運転者の挙動に関する情報と走行関連情報とが対応付けられた奥行距離推定用情報との比較によって、奥行距離を推定する。
実施の形態1において、奥行距離とは、車両100に設けられているヘッドライト2の設置位置から、運転者が向いている方向において、運転者が視認しようとしていると推定される位置(以下「推定視認位置」という。)までの距離である。つまり、奥行距離とは、ヘッドライト2の設置位置を示す点から、運転者が向いている方向を示す仮想的な直線上にある推定視認位置を示す点までの距離である。なお、奥行距離は、右ライトの設置位置から推定視認位置までの距離としてもよいし、左ライトの設置位置から推定視認位置までの距離としてもよい。
奥行距離推定用情報は、当該奥行距離を推定するための情報であり、管理者等によって予め設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。
【0027】
ここで、図2は、実施の形態1において、奥行距離推定部13が奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図2に示すように、奥行距離推定用情報は、入力情報と推定情報とが定義され、入力情報と推定情報とが対応付けられたテーブル形式の情報である。実施の形態1では、図2に示すように、例えば、入力情報として運転者の挙動と車両情報とが定義され、推定情報として奥行距離が定義されている。
奥行距離推定用情報において、運転者の挙動には、例えば、運転者の顔向きの上下方向、運転者の顔向きの左右方向、および、運転者の状態が含まれる。また、奥行距離推定用情報において、車両情報には、例えば、車速およびハンドル舵角が含まれる。
運転者の顔向きの上下方向は、当該運転者の顔向きが正面方向の向きであるとする「正面」、上方向の向きであるとする「上方」、または、下方向の向きであるとする「下方」であらわされる。運転者の顔向きの左右方向は、当該運転者の顔向きが正面方向の向きであるとする「正面」、右方向の向きであるとする「右」、または、左方向の向きであるとする「左」であらわされる。
運転者の状態は、例えば、運転者が身を乗り出している状態、運転者の顔向きの変化量が予め設定された閾値以下である状態等を含む。
【0028】
奥行距離推定部13は、向き検出部11から出力された向き情報に基づいて、運転者の挙動を判定し、判定した挙動と、車両情報取得部121が取得した車両情報に含まれている車速およびハンドル舵角を示す情報を、図2に示すような奥行距離推定用情報で設定されている入力情報としての運転者の挙動および車両情報とつきあわせて、推定情報としての奥行距離の情報を得ることで、奥行距離を推定する。
【0029】
例えば、奥行距離推定部13は、向き情報に含まれている運転者の垂直方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの上下方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるかを判定する。例えば、予め、運転者の顔向きが「正面」であるとする角度範囲と、「上方」であるとする角度範囲と、「下方」であるとする角度範囲とが定義された情報(以下「上下角度範囲情報」という。)が設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。奥行距離推定部13は、向き検出部11が検出した運転者の垂直方向の顔向きに基づき、上下角度範囲情報を参照して、運転者の顔向きの上下方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるかを判定する。
【0030】
また、例えば、奥行距離推定部13は、向き情報に含まれている運転者の水平方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの左右方向が「正面」であるか「右」であるか「左」であるかを判定する。例えば、予め、運転者の顔向きが「正面」であるとする角度範囲と、「右」であるとする角度範囲と、「左」であるとする角度範囲とが定義された情報(以下「左右角度範囲情報」という。)が設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。奥行距離推定部13は、向き検出部11が検出した運転者の垂直方向の顔向きに基づき、左右角度範囲情報を参照して、運転者の顔向きの左右方向が「正面」であるか「右」であるか「左」であるかを判定する。
【0031】
また、例えば、奥行距離推定部13は、向き情報に含まれている運転者の姿勢を示す情報に基づいて、運転者の姿勢が、予め設定された「身を乗り出している状態」であるか否かを判定する。予め、運転者の姿勢がどれぐらい傾いたときに「身を乗り出している状態」であると判定するかの条件が管理者等によって設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。
また、例えば、奥行距離推定部13は、記憶部16に記憶されている時系列の向き情報から、運転者の顔向きの変化量を算出し、当該変化量が閾値以下であるか否かを判定する。なお、当該変化量の判定に用いる閾値は、管理者等によって予め設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。
【0032】
例えば、今、運転者の顔向きが「上方」の範囲内の向きであったとする。また、車両100の走行速度が90km/hであったとする。また、車両100のハンドル舵角が右に3度であったとする。なお、奥行距離推定用情報は、図2に示すような内容であったとする。
この場合、奥行距離推定部13は、向き情報と、走行関連情報(ここでは車両情報)と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離は「80~100m」であると推定することになる(図2の奥行距離推定用情報のNo.6参照)。
【0033】
例えば、運転者の顔向きが「上方」であり、車速が「80km/h」以上であり、かつ、ハンドル舵角が「右または左に5度以下」である場合、車両100は高速道路を走行中であり、運転者が視認しようとしている可能性が高い、運転者の顔向きの先にあると推定される物体、言い換えれば、推定視認位置に存在すると推定される物体(以下「推定視認対象物」という。)は、標識であると推定される。そこで、奥行距離推定用情報において、奥行距離には、車両100が高速道路を「80km/h」以上、かつ、ハンドル舵角が「右または左に5度以下」の状態で走行中に運転者が標識を確認しようとすると、当該標識はおそらくこれぐらいの奥行距離の位置にあるであろうと想定される「80~100m」が設定されている(図2の奥行距離推定用情報のNo.6)。
【0034】
同様に、図2の奥行距離推定用情報のNo.1~No.5の条件においても、運転者の挙動および車両情報から推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物に基づいて、奥行距離が設定されている。
図3は、図2に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.6の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報とから推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物の一例を対応付けて示した図である。
管理者等は、例えば、図3に示すような、運転者の挙動と車両情報とから推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物の一例との対応関係に基づき、奥行距離推定用情報を生成する。管理者等は、例えば、車両100を試走させてみることで得られた情報から、上記対応関係を検証して、奥行距離推定用情報を生成してもよい。
【0035】
なお、図2に示す奥行距離推定用情報では、No.1~No.6の6パターンの条件が設定されているが、これは一例に過ぎない。また、図2に示すような奥行距離推定用情報の内容は、一例に過ぎない。
奥行距離推定用情報は、向き情報と走行関連情報(ここでは車両情報)とから奥行距離の情報が得られる情報となっていればよい。
【0036】
また、上述した例のように、奥行距離には幅を持たせた値が設定され得る。
例えば、奥行距離推定部13が、奥行距離は「80~100m」と推定した場合、詳細には、奥行距離推定部13は、奥行距離を、ヘッドライト2の設置位置から推定視認位置までが80m~100mの範囲の距離と推定したことになる。
【0037】
奥行距離推定部13は、推定した奥行距離に関する情報(以下「奥行距離情報」という。)を、照射決定部14に出力する。
奥行距離情報は、奥行距離と推定視認位置とが対応付けられた情報である。なお、ヘッドライト2の設置位置と運転者の頭部中心の位置とはわかっているため、奥行距離推定部13は、ヘッドライト2の設置位置と運転者の頭部中心の位置関係と、推定した奥行距離と、運転者の向きとに基づけば、推定視認位置を推定できる。推定視認位置は、実空間上の一点であり、例えば、右灯具もしくは左灯具を原点とした座標値、または、地図上にマッピング可能な座標値であらわされる。
【0038】
なお、奥行距離推定部13は、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報(ここでは車両情報取得部121が取得した車両情報)とに基づき判定した運転者の挙動と車両情報とが、奥行距離推定用情報で設定されている入力情報としての運転者の挙動と車両情報とにつきあわない場合、例えば、奥行距離推定用情報からは奥行距離は推定できなかったとして、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。奥行距離の初期値は、例えば、予め、管理者等によって設定され、奥行距離推定部13が参照可能な場所に記憶されている。
奥行距離推定部13は、初期値を設定した奥行距離に関する奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0039】
照射決定部14は、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する。
詳細には、照射決定部14は、ヘッドライト2の照射可能領域、言い換えれば、ハイビーム照射可能領域、ロービーム照射可能領域、および、補助光照射可能領域のうち、どこまでの範囲を光が照射される範囲とするかを、ヘッドライト2による光の照射範囲として決定する。
以下の説明において、ヘッドライト2による光の照射範囲のことを、単に「照射範囲」ともいう。
【0040】
照射決定部14による照射範囲の決定方法の一例について、説明する。
照射決定部14は、運転者が向いている方向における、照射範囲の上下方向および左右方向を決定する。
詳細には、照射決定部14は、運転者が向いている方向において、ヘッドライト2の設置位置を基準位置とし、当該設置位置から正面に照射される光の照射角度を基準(0度)として、垂直方向に何度から何度までの範囲を照射範囲の上下方向とし、水平方向に何度から何度までの範囲を照射範囲の左右方向とするかを決定する。
【0041】
例えば、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、まず、ヘッドライト2の設置位置から奥行距離だけ離れた推定視認位置までの仮想的な線分と、ヘッドライト2の設置位置から車両100の進行方向に引いた仮想的な直線とがなす垂直方向の向き(以下「奥行距離垂直角度」という。)を算出する。照射決定部14は、奥行距離水平角度と同様の方法で、奥行距離垂直角度を算出できる。
そして、照射決定部14は、例えば、奥行距離垂直角度から垂直方向に予め設定された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向とする。
【0042】
また、例えば、照射決定部14は、照射範囲の左右方向について、まず、ヘッドライト2の設置位置から奥行距離だけ離れた推定視認位置までの仮想的な線分と、ヘッドライト2の設置位置から車両100の進行方向に引いた仮想的な直線とがなす水平方向の向き(以下「奥行距離水平角度」という。)を算出する。照射決定部14は、奥行距離情報に基づけば、奥行距離と推定視認位置とがわかる。また、ヘッドライト2の設置位置は、予めわかっている。照射決定部14は、奥行距離と推定視認位置とヘッドライト2の設置位置とに基づけば、奥行距離水平角度が算出できる。
そして、照射決定部14は、例えば、奥行距離水平角度から水平方向に予め設置された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向とする。
【0043】
なお、上述したように、奥行距離推定部13により、奥行距離が幅を持った値として推定されていることもある。
この場合、照射範囲の上下方向について、照射決定部14は、例えば、まず、奥行距離の範囲のうち、最も小さい距離(例えば、図2を用いて上述した例でいうと「80m」)に基づき奥行距離垂直角度(第1奥行距離垂直角度とする)を算出する。また、照射決定部14は、奥行距離の範囲のうち、最も大きい距離(例えば、図2を用いて上述した例でいうと「100m」)に基づき奥行距離垂直角度(第1奥行距離垂直角度とする)を算出する。
そして、照射決定部14は、例えば、第1奥行距離垂直角度と第2奥行距離垂直角度のうち、小さいほうから大きいほうまでの範囲を、照射範囲の上下方向とする。
奥行距離推定部13は、照射範囲の左右方向についても、同様の方法で、第1奥行距離水平角度と第2奥行距離水平角度とを算出し、例えば、第1奥行距離水平角度と第2奥行距離水平角度のうち、小さいほうから大きいほうまでの範囲を、照射範囲の左右方向とする。
【0044】
例えば、照射決定部14は、奥行距離の範囲の中央に基づいて、照射範囲の上下方向を決定してもよい。例えば、奥行距離が「80m~100m」と推定された場合、照射決定部14は、中央となる奥行距離「90m」から、奥行距離垂直角度を算出する。照射決定部14は、算出した奥行距離垂直角度を中央とし、当該奥行距離垂直角度から垂直方向に予め設定された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向としてもよい。
また、例えば、照射決定部14は、同様の方法で、奥行距離の範囲の中央に基づいて、照射範囲の水平方向を決定してもよい。
【0045】
なお、照射決定部14は、奥行距離推定部13が奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定した場合、当該初期値に基づき照射範囲を決定することになる。
詳細には、照射決定部14は、奥行距離推定部13から、初期値を設定した奥行距離に関する奥行距離情報が出力された場合、奥行距離の初期値に対応する照射範囲の上下方向および左右方向を決定する。
【0046】
照射決定部14は、決定した照射範囲に関する情報(以下「照射情報」という。)を、ヘッドライト制御部15に出力する。
照射情報は、ヘッドライト2の設置位置を基準位置とした、照射範囲の上下方向の角度範囲および左右方向の角度範囲を示す情報を含む。
【0047】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる。
【0048】
例えば、照射決定部14から、ヘッドライト制御部15へ、θ度~θ度を上下方向とし、φ度~φ度を左右方向とする旨の照射情報が出力されたとする。
この場合、ヘッドライト制御部15は、例えば、ヘッドライト2のロービームユニット、ハイビームユニット、または、補助光ユニットの光源に対し、個々に、左右方向にφ度~φ度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ度の範囲に、光を照射させる制御を行う。ヘッドライト制御部15は、例えば、ロービームユニット、ハイビームユニット、または、補助光ユニットの複数の光源に対し、個々に、光軸を変化させて、上記範囲に光を照射させる制御を行ってもよいし、ロービームユニット、ハイビームユニット、または、補助光ユニットの複数の光源のうち、点灯させる光源を調整することで、上記範囲に光を照射させる制御を行ってもよい。
【0049】
これにより、図4を用いて説明したような照射範囲にヘッドライト2が照射した光が照射されるようになる。
図4は、実施の形態1において、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図4において、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲は「LA」で示されている。なお、図4は、車両100が走行中の道路を横から見た図としている。また、図4では、一例として、運転者の顔向きが「上方」の範囲内の向きであり、車両100の走行速度が90km/hであり、車両100のハンドル舵角が右に3度である場合に、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させたものとしている。
なお、図4に示す例では、奥行距離推定部13が、図2に示すような内容の奥行距離推定用情報に基づき運転者の向きと走行関連情報(ここでは車両情報)とが当該奥行距離推定用情報のNo.6に当てはまるとして奥行距離を「80~100m」であると推定し、照射決定部14は、左右方向にφ度~φ度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図4では左右方向の照射範囲は図示省略)。
照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「80m」に基づき第1奥行距離垂直角度を算出し、奥行距離「100m」に基づき第2奥行距離垂直角度を算出して、照射範囲の上下方向を決定したものとしている。
【0050】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13によって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車両情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
その結果、ヘッドライト制御部15は、推定視認位置に存在すると推定される推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御することができる。運転者は、推定視認対象物を視認することができる。
図4に示すような状況では、推定視認対象物は、標識であると推定される(図3参照)。つまり、ヘッドライト制御部15は、運転者の推定視認対象物である標識に、光が照射されるようにできる。なお、図4では、わかりやすさのため標識も図示するようにしているが、当該標識は、存在すると推定される物体であり、実際に存在するとは限らない。
【0051】
また、ヘッドライト制御部15は、向き検出部11から向き無効情報が出力された場合、ヘッドライト2に対して、運転者の向きが取得できないとき用の照射方向に光を照射させる。運転者の向きが取得できないとき用の照射方向は、例えば、正面方向である。当該正面方向をどこまでの範囲とするかの情報は、予め管理者等によって生成され、ヘッドライト制御部15が参照可能な場所に記憶されている。
【0052】
記憶部16は、各種情報を記憶する。
なお、図1では、記憶部16は、ヘッドライト制御装置1に備えられているが、これは一例に過ぎない。記憶部16は、ヘッドライト制御装置1の外部の、ヘッドライト制御装置1が参照可能な場所に備えられてもよい。
【0053】
実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1の動作について説明する。
図5は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1の動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1は、例えば、ヘッドライト2またはヘッドライト制御装置1がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図5のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1は、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、ヘッドライト制御装置1がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図5のフローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1の制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。または、運転者の向き追従機能スイッチがある場合、ヘッドライト制御装置1の制御部は、ヘッドライト制御装置1がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、ヘッドライト制御装置1がオフの状態である、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0054】
向き検出部11は、車内撮像装置3から車内撮像画像を取得し、取得した車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出する(ステップST1-1)。
向き検出部11は、向き情報を、奥行距離推定部13に出力するとともに、記憶部16に記憶させる。
当該ステップST1-1において、向き検出部11は、運転者の向きを検出しなかった場合、運転者の向きを検出しなくなってから向き検出判定用時間経過するまでであれば、記憶部16を参照し、直前に検出した運転者の向きを示す向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
運転者の向きを検出しなくなってから向き検出判定用時間経過した場合は、向き検出部11は、ヘッドライト制御部15に、向き無効情報を出力する。向き検出部11がヘッドライト制御部15に向き無効情報を出力した場合、ヘッドライト制御装置1の動作は、後述のステップST2~ステップST3の処理をスキップし、ステップST4の処理に進む。
【0055】
走行関連情報取得部12は、走行関連情報取得装置4から走行関連情報を取得する。
詳細には、車両情報取得部121は、走行関連情報取得装置4から、車両情報を取得する(ステップST1-2)。
車両情報取得部121は、取得した車両情報を、奥行距離推定部13に出力する。
【0056】
奥行距離推定部13は、ステップST1-1にて向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、ステップST1-2にて走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定する(ステップST2)。
奥行距離推定部13は、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0057】
照射決定部14は、ステップST2にて奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する(ステップST3)。
照射決定部14は、照射情報を、ヘッドライト制御部15に出力する。
【0058】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、ステップST3にて照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる(ステップST4)。
ステップST1-1にて、向き検出部11がヘッドライト制御部15に向き無効情報を出力した場合、当該ステップST4にて、ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者の向きが取得できないとき用の照射方向に光を照射させる。
【0059】
なお、例えば、ステップST2にて、奥行距離推定部13は、奥行距離が推定できなかった場合、例えば、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。
例えば、奥行距離推定用情報の内容が図2に示したような内容であるとし、運転者の顔向きが上下方向に「正面」の範囲内の向きであり、左右方向に「右」の向きであるとする。また、車両100の走行速度が30km/hであるとする。また、ハンドル舵角が5度であるとする。この場合、運転者の顔向きと車速は、奥行距離推定用情報のNo.2とつきあうが、ハンドル舵角がつきあわない。そこで、奥行距離推定部13は、奥行距離に初期値を設定する。
この場合、ステップST3にて、照射決定部14は、初期値が設定された奥行距離に基づき照射範囲を決定し、ステップST4にて、ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、初期値が設定された奥行距離に基づき決定された照射範囲に光を照射させる。
例えば、その後、奥行距離推定部13は、奥行距離推定用情報を用いて推定できれば、当該奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定する。例えば、上述の例で、運転者の顔向きと車速はそのままの状態で、ハンドル舵角が20度になったとする。運転者が右折しようとしてハンドルを右に切った場合が想定される。この場合、奥行距離推定部13は、運転者の顔向きと車速とハンドル舵角が、奥行距離推定用情報のNo.2とつきあうとして、奥行距離「15~20m」を推定する。
そして、照射決定部14は、奥行距離推定部13が奥行距離推定用情報に基づいて推定した奥行距離に基づき照射範囲を決定し、ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる。
つまり、ヘッドライト制御装置1は、奥行距離を初期値としたヘッドライト2の点灯制御から、奥行距離推定部13によって推定された奥行距離に応じたヘッドライト2の点灯制御、言い換えれば、運転者の推定視認位置に存在すると推定される推定視認対象物に光が照射されるようにする点灯制御、へと切り替える。
【0060】
運転者の向きだけでは、ヘッドライト2の設置位置と運転者が実際に見ようとしていると推定される位置(推定視認位置)との間の距離、すなわち、奥行距離は、わからない。仮に、ヘッドライト2に対しどれぐらい先に光を照射させるかが固定的に決められていると、ヘッドライト2は、運転者が実際に見ようとしていると推定される場所または当該場所に存在している物体に光を照射することが困難である。
なお、運転者の頭の位置とヘッドライト2の設置位置とは異なる。そのため、ヘッドライト2に対し、運転者が向いている方向の範囲全体をカバーするよう光を照射しようとすると照射範囲が広すぎ、歩行者や他車両の運転者にグレアを与えてしまう。
上述したような従来技術では、以上のようなことが考慮されておらず、運転者の推定視認位置にヘッドライト2の光を照射できていない状況が発生し得る。
【0061】
例えば、運転者の推定視認位置が、固定的に決められているヘッドライト2からの光の照射範囲よりも近く、運転者の推定視認位置にヘッドライト2の光が照射できない状況が発生し得る。
具体例を挙げると、例えば、運転者が地下駐車場で手前にある停車車両の陰から歩行者が飛び出してこないか確認しているとする。この場合、実際は、運転者は、停車車両がある数メートル先を確認しているところ、周囲に停車車両等がない場所を走行しているような通常の運転時に運転者が視認していると想定される数十メートル先がヘッドライト2に光を照射させるヘッドライト2からの距離として固定的に決められていると、停車車両の陰にいる歩行者の上半身には、ヘッドライト2の光が照射されていない可能性がある。数メートル先はヘッドライト2による光の照射範囲に入っていない可能性があるためである。このように、奥行距離を考慮せず、固定的に決められているヘッドライト2からの距離だけ先の範囲に光を照射させても、飛び出してきた歩行者に光を照射させることができない可能性がある。そうすると、運転者は、歩行者の発見が遅れてしまう。
また、逆に、運転者の推定視認位置が、固定的に決められているヘッドライト2からの光の照射範囲よりも遠く、運転者の推定視認位置にヘッドライト2の光が照射できない状況も発生し得る。
具体的を挙げると、例えば、運転者が高速道路を走行中に前方の標識を確認するとする。この場合、運転者が確認しようとしている標識は、固定的に決められているヘッドライト2からの光の照射範囲よりも遠く、当該照射範囲に入っていない可能性がある。奥行距離を考慮せず、固定的に決められているヘッドライト2からの距離だけ先の範囲に光を照射させても、標識に光を照射させることができない可能性がある。そうすると、運転者は、標識の確認が遅れてしまう。
【0062】
これに対し、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1は、上述したように、車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出し、走行関連情報(ここでは車両情報)を取得する。ヘッドライト制御装置1は、検出した運転者の向きに関する向き情報と取得した走行関連情報とに基づき奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する。そして、ヘッドライト制御装置1は、ヘッドライト2に対して、決定した照射範囲に光を照射させる。
そのため、ヘッドライト制御装置1は、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0063】
以上の実施の形態1では、ヘッドライト制御装置1において、奥行距離推定部13は、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報、より詳細には車両情報取得部121が取得した車両情報と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定していた。これに限らず、例えば、奥行距離推定部13は、奥行距離を推定するとともに、照射範囲の幅(以下「照射範囲の理想幅」という。)を推定するようにしてもよい。例えば、管理者等は、奥行距離推定用情報において、奥行距離を設定するとともに、照射範囲の上下方向の上限と左右方向の上限とを、それぞれ、照射範囲の理想幅として設定しておく。奥行距離推定部13は、向き情報と車両情報と奥行距離推定用情報とに基づき、奥行距離と照射範囲の理想幅とを推定する。
この場合、奥行距離推定部13は、奥行距離情報と照射範囲の理想幅に関する情報とを照射決定部14に出力する。
照射決定部14は、奥行距離推定部13が推定した奥行距離と照射範囲の理想幅とに基づいて照射範囲を決定する。詳細には、照射決定部14は、例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲が、照射範囲の理想幅を超えていた場合、照射範囲の理想幅までの範囲を、照射範囲と決定する。
例えば、奥行距離推定部13によって推定された奥行距離が幅をもった値である場合、照射決定部14が奥行距離に基づき決定する照射範囲が広すぎることにより、ヘッドライト2からの光で対向車等にグレアを与えてしまうおそれがある。
奥行距離推定部13が照射範囲の理想幅を推定し、照射決定部14が照射範囲の理想幅を上限として照射範囲を決定することで、ヘッドライト制御装置1は、対向車等に与えるグレアを低減できる。
【0064】
また、以上の実施の形態1において、奥行距離推定部13は、奥行距離を推定するとともにヘッドライト2による照射光量(以下「理想光量」という。)を推定するようにしてもよい。例えば、管理者等は、奥行距離推定用情報において、奥行距離を設定するとともに、当該奥行距離に応じた理想的な照射光量を理想光量として設定しておく。例えば、管理者等は、奥行距離が大きいほど、理想光量に大きい値を設定しておく。奥行距離推定部13は、向き情報と車両情報と奥行距離推定用情報とに基づき、奥行距離と理想光量とを推定する。
この場合、奥行距離推定部13は、奥行距離情報を照射決定部14に出力するとともに、推定した理想光量に関する情報を、ヘッドライト制御部15に出力する。
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲において、奥行距離推定部13が推定した理想光量で、光を照射させる。
奥行距離推定部13が理想光量を推定し、ヘッドライト制御部15がヘッドライト2に対して理想光量で光を照射させることで、ヘッドライト制御装置1は、運転者が向いている方向において、光を照射させる車両100からの距離に応じて、運転者が推定視認対象物を視認するのに必要と想定される光量で、光を照射させることができる。
【0065】
以上の実施の形態1において、奥行距離推定部13は、奥行距離を推定するとともに照射範囲の理想幅および理想光量を推定するようにしてもよい。
【0066】
また、以上の実施の形態1では、ヘッドライト制御装置1は、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0067】
図6Aおよび図6Bは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
実施の形態1において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1は、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいてヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0068】
処理回路1001が専用のハードウェアである場合、処理回路1001は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0069】
処理回路がプロセッサ1004の場合、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、または、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ1005に記憶される。プロセッサ1004は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1は、プロセッサ1004により実行されるときに、上述の図5のステップST1-1、ステップST1-2~ステップST4が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ1005とは、例えば、RAM、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0070】
なお、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、向き検出部11と、走行関連情報取得部12については専用のハードウェアとしての処理回路1001でその機能を実現し、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部についてはプロセッサ1004がメモリ1005に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
また、ヘッドライト制御装置1は、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0071】
以上のように、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1は、車両100の運転者が撮像された撮像画像(車内撮像画像)に基づき、運転者の向きを検出する向き検出部11と、車両100の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部12と、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報とに基づき、車両100に設けられているヘッドライト2の設置位置から運転者が向いている方向において運転者の視認位置と推定される推定視認位置までの距離である奥行距離を推定する奥行距離推定部13と、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する照射決定部14と、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させるヘッドライト制御部15とを備えるように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1は、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1は、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0072】
詳細には、ヘッドライト制御装置1において、走行関連情報取得部12は、走行関連情報として車両100に関する車両情報を取得する車両情報取得部121を有し、奥行距離推定部13は、向き情報と車両情報とに基づき、奥行距離を推定する。
そのため、ヘッドライト制御装置1は、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1は、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0073】
実施の形態2.
実施の形態1では、ヘッドライト制御装置は、向き情報と車両情報とに基づき、奥行距離を推定していた。
実施の形態2では、さらに、地図情報を用いて、奥行距離を推定する実施の形態について説明する。
【0074】
図7は、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aの構成例を示す図である。
実施の形態2において、ヘッドライト制御装置1aは、車両100に搭載されていることを想定する。
ヘッドライト制御装置1aは、車両100の運転者の向きに基づいて、車両100に設けられているヘッドライト2の灯火制御を行う。実施の形態2において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向であらわされる。実施の形態2において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向に加え、運転者の身体の向き、言い換えれば、運転者の姿勢、を含むものとしてもよい。
実施の形態2では、ヘッドライト制御装置1aが行う、運転者の向きに基づくヘッドライト2の灯火制御は、例えば、夜間の駐車場、または、夜間の市街地等、車両100の周囲が暗い場所において、ヘッドライト2がオンにされた場合に行われることを想定している。
以下の実施の形態2においても、単に「運転者の顔向き」というとき、当該「運転者の顔向き」は、運転者の視線方向も含む、「運転者の顔向き、または、視線方向」のことをいう。
【0075】
図7において、実施の形態1にて図1を用いて説明したヘッドライト制御装置1と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1とは、走行関連情報取得部12aが車両情報取得部121に加え地図情報取得部122を備えた点が異なる。
また、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aにおける奥行距離推定部13aの具体的な動作が、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1における奥行距離推定部13の具体的な動作とは異なる。
【0076】
実施の形態2において、走行関連情報取得装置4は、車速センサ(図示省略)またはハンドル舵角センサ(図示省略)の他、カーナビゲーション装置、GPS(Global Positioning System)、または、高精度ロケータ等の測位装置を含む。カーナビゲーション装置等の測位装置は地図情報を保持している。
地図情報には、車両100の現在位置、車両100が走行している経路に関する経路情報、または、車両100が走行している車線(ここでいう車線とはいわゆるレーン)に関する情報も含まれるものとする。例えば、高精度ロケータは、数十cm単位で車両100の現在位置の情報を取得できるため、車両100が走行している車線に関する情報を取得できる。
走行関連情報取得装置4は、車両情報および地図情報を、走行関連情報として、ヘッドライト制御装置1aに出力する。
【0077】
地図情報取得部122は、走行関連情報取得装置4から地図情報を取得する。
地図情報取得部122は、取得した地図情報を、走行関連情報として、奥行距離推定部13aに出力する。
【0078】
奥行距離推定部13aは、向き検出部11が検出した運転者の向きと、走行関連情報取得部12a(詳細には車両情報取得部121が取得した車両情報と地図情報取得部122が取得した地図情報)とに基づき、奥行距離を推定する。
詳細には、奥行距離推定部13aは、向き情報と、走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)と、奥行距離推定用情報との比較によって、奥行距離を推定する。
【0079】
ここで、図8は、実施の形態2において、奥行距離推定部13aが奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図8に示すように、実施の形態2において、奥行距離推定用情報は、例えば、運転者の挙動と、車両情報と、地図情報と、奥行距離とが対応付けられたテーブルである。
奥行距離推定用情報において、運転者の挙動には、例えば、運転者の顔向きの上下方向と、運転者の顔向きの左右方向とが含まれる。運転者の顔向きの上下方向は、「正面」、「上方」、または、「下方」であらわされる。運転者の顔向きの左右方向は、「正面」、「右」、または、「左」であらわされる。
また、奥行距離推定用情報において、車両情報には、例えば、車速が含まれる。
また、奥行距離推定用情報において、地図情報には、例えば、車両100の走行位置の情報、経路情報、および、車線位置の情報が含まれる。
【0080】
奥行距離推定部13aは、向き検出部11が検出した運転者の向きに基づいて、運転者の挙動を判定し、判定した挙動と、車両情報取得部121が取得した車両情報に含まれている車速およびハンドル舵角を示す情報と、地図情報取得部122が取得した地図情報に含まれている車両100の走行位置を示す情報、経路情報、および、車線位置を示す情報とを、図8に示すような奥行距離推定用情報で設定されている運転者の挙動、車両情報、および、地図情報とつきあわせて奥行距離の情報を得ることで、奥行距離を推定する。
【0081】
例えば、奥行距離推定部13aは、向き情報に含まれている運転者の垂直方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの上下方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるかを判定する。
また、例えば、奥行距離推定部13aは、向き情報に含まれている運転者の水平方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの左右方向が「正面」であるか「右」であるか「左」であるかを判定する。
奥行距離推定部13aによる運転者の顔向きの上下方向および左右方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるか「右」であるか「左」であるかの判定方法は、実施の形態1にて説明済みの、奥行距離推定部13による運転者の顔向きの上下方向および左右方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるか「右」であるか「左」であるかの判定方法と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0082】
例えば、今、運転者の顔向きが、上下方向に「正面」の向きであり、左右方向に「右」の向きであったとする。また、車両100の走行速度が30km/hであるとする。また、車両100の走行位置が交差点の15m手前であるとする。また、車両100の経路は、「次の交差点を右折」であるとする。
なお、奥行距離推定用情報は、図8に示すような内容であったとする。
この場合、奥行距離推定部13aは、向き情報と、走行関連情報(ここでは、車両情報および地図情報)と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離は「交差点の歩道と横断歩道とを含む5mの余裕を有する範囲」であると推定することになる(図8の奥行距離推定用情報のNo.2参照)。
【0083】
例えば、運転者の顔向きが上下方向に「正面~上方」、左右方向に「右もしくは左」であり、車速が「15~35km/h」であり、かつ、車両100が「交差点20m以内」で「次の交差点を右折または左折」しようとしている場合、車両100は交差点を右左折しようとしており、運転者の推定視認対象物は、歩行者であると推定される。そこで、奥行距離推定用情報において、奥行距離には、車両100が交差点を右左折しようとして「交差点20m以内」を「15~35km/h」で走行中に運転者が歩行者を確認しようとすると、当該歩行者はおそらくこれぐらいの奥行距離の位置にいるであろうと想定される「交差点の歩道と横断歩道とを含む5mの余裕を有する範囲」が設定されている(図8の奥行距離推定用情報のNo.2)。
同様に、図8の奥行距離推定用情報のNo.1、No.3~No.6の条件においても、運転者の挙動、車両情報、および地図情報から推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物に基づいて、奥行距離が設定されている。
図9は、図8に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.6の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報と地図情報とから推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物の一例を対応付けて示した図である。
【0084】
なお、図8に示す奥行距離推定用情報では、No.1~No.6の6パターンの条件が設定されているが、これは一例に過ぎない。また、図8に示すような奥行距離推定用情報の内容は、一例に過ぎない。
図8に示す奥行距離推定用情報では、地図情報として、走行位置と経路情報と車線位置とが設定されているが、これは一例に過ぎず、奥行距離推定用情報において、例えば、地図情報として、ある位置との距離(例えば、交差点まで20m以内、高速道路インターまで50m以内等)を示す情報が設定されていてもよい。
奥行距離推定用情報は、向き情報と走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)とから奥行距離の情報が得られる情報となっていればよく、奥行距離推定用情報において、少なくとも、運転者の顔向きと、車速と、走行位置の情報とが、奥行距離と対応付けられていればよい。
【0085】
奥行距離推定部13aは、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0086】
なお、奥行距離推定部13aは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報取得部12aが取得した走行関連情報(ここでは車両情報取得部121が取得した車両情報と地図情報取得部122が取得した地図情報)とが、奥行距離推定用情報で設定されている入力情報とつきあわない場合、例えば、奥行距離推定用情報からは奥行距離は推定できなかったとして、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。
奥行距離推定部13aは、初期値を設定した奥行距離に関する奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0087】
照射決定部14は、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定し、照射情報をヘッドライト制御部15に出力する。ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる。
【0088】
ここで、図10Aは、実施の形態2において、奥行距離推定部13aが推定する奥行距離の一例について説明するための図である。
図10Bは、実施の形態2において、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、奥行距離推定部13aが推定した図10Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部14が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図10Aは、車両100が走行中の道路を上から見た俯瞰図としている。
図10Bは、車両100が走行中の道路を横から見た図としている。図10Bにおいて、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲は「LA」で示されている。
なお、図10Aでは、奥行距離は、右ライトから運転者の推定視認位置までの距離としている。また、図10Bでは、便宜上、車両100を左から見た図としているが、図10Bで示されている照射範囲は、右ライトによる照射範囲とする。
図10Aおよび図10Bでは、一例として、運転者の顔向きが上下方向に「正面」の向きであり、左右方向に「右」の向きであり、車両100が交差点の15m手前で次の交差点を右折しようと走行速度30km/hで走行している場合に、奥行距離推定部13aが奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定し、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させたものとしている。なお、奥行距離推定用情報は、図8に示すような内容であったとする。
【0089】
奥行距離推定部13aは、図8に示すような内容の奥行距離推定用情報に基づき、向き情報から判定された運転者の挙動と走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)とが当該奥行距離推定用情報のNo.2に当てはまるとして、奥行距離を「交差点の歩道と横断歩道とを含む、5mの余裕を有する範囲」と推定する。その結果、運転者の向きにおいて、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲が推定される(図10A参照)。なお、このとき、奥行距離推定部13aは、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲について、具体的に、何m~何mの範囲になるかを、例えば、以下の図11Aおよび図11Bを用いて説明するような方法で、地図情報に基づいて算出する。なお、以下の図11Aおよび図11Bを用いて説明する方法は一例に過ぎず、奥行距離推定部13aは、その他の方法で、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲を算出してもよい。
また、図11Aおよび図11Bは、実施の形態1において、奥行距離推定部13aが、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲について、具体的に何m~何mの範囲になるかの算出方法の一例を説明するための便宜上の図であり、図11Aおよび図11Bに示す道路と、図10Aで示す道路とは一致していない。
【0090】
図11Aおよび図11Bは、車両100が走行中の道路を上から見た俯瞰図としている。図11Aおよび図11Bでは、説明の簡単のため、車両100の図示は省略されているが、車両100は一般道を走行中で、次の交差点を右折しようとしており、運転者は右を向いているものとする。このときの運転者の向きはθd度であるとする。
【0091】
〈各種情報の取得〉
まず、奥行距離推定部13aは、地図情報から、自車線と右折先の車線を含む道路の車線数、および、交差点までの距離を示す情報を取得する。ここでは、例えば、奥行距離推定部13aは、自車線と右折先の車線を含む道路は片側2車線の道路であり、交差点までの距離は15mとの情報を取得したとする。
図11Aおよび図11Bに示されている例でいうと、運転者は、右を向いている。この場合、奥行距離推定部13aは、向き情報と地図情報とから、運転者は車両100からみて手前の歩道を見ようとしていると推定する。さらに、図11Aおよび図11Bに示す道路は一般道であるので、奥行距離推定部13aは、車線幅は3.5mであると仮定する。なお、道路種別に応じて、車線幅をどれぐらいと仮定するかは、予め決められているものとする。走行関連情報取得装置4として高精度ロケータが使用されている場合は、奥行距離推定部13aは、高精度ロケータから取得した車線幅情報を使用してもよい。
【0092】
〈ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離の算出〉
奥行距離推定部13aは、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離を算出する。詳細には、奥行距離推定部13aは、運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道手前までの距離(図11Aにおいて「D11」で示されている)を算出し、これに基づき、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離を算出する。
奥行距離推定部13aは、車両100が右折しようとしていることから、現在車両100は片側2車線の道路のうちの右車線を走行していると推定する。なお、走行関連情報取得装置4として高精度ロケータが使用されている場合は、奥行距離推定部13aは、実際の走行レーンの情報を用いて車両100が走行している車線を推定してもよい。
奥行距離推定部13aは、運転者の頭部中心の位置と、運転者の向きと、仮定した車線幅と、地図情報から取得した道路の車線数とに基づき、運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道手前までの距離を算出する。今、車両100が走行している車線は片側2車線の道路のうちの右車線であり、車線幅は3.5mであると仮定している。また、運転者の向きはθd度としている。例えば、運転者の頭部中心の位置が、車両100の走行車線の幅方向の中央であるとした場合、奥行距離推定部13aは、(3.5×2.5)/sinθd(m)を、運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道手前までの距離として算出する。そして、奥行距離推定部13aは、算出した運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道手前までの距離、に基づき、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離を算出する。なお、運転者の頭部中心の位置とヘッドライト2の設置位置との位置関係はわかっているため、奥行距離推定部13aは、運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道手前までの距離、に基づき、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離を算出できる。
【0093】
〈ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離の算出〉
奥行距離推定部13aは、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離の算出と同様の方法で、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離を算出する。詳細には、奥行距離推定部13aは、運転者の頭部中心から運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道奥までの距離(図11Bにおいて「D12」で示されている)を算出し、これに基づき、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離を算出する。
ここでは、奥行距離推定部13aは、{15-(3.5×2)}/sinθd(m)を、運転者が向いている方向を示す仮想的な直線の、歩道奥までの距離、として算出し、当該距離に基づき、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離を算出する。
【0094】
〈奥行距離の範囲の算出〉
奥行距離推定部13aは、算出した、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離と、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離とに基づき、奥行距離の範囲を算出する。
今、奥行距離推定部13aは、例えば、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲を算出するものとしている。例えば、奥行距離推定部13aが算出したヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離が「Am」、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離が「Bm」であったとすると、奥行距離推定部13aは、これらの距離から5mの余裕を加え、「Am-5m」~「Bm+5m」までの範囲を、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離の範囲として算出する。
【0095】
図10Aを用いた説明に戻る。
ここでは、奥行距離推定部13aは、例えば、上述の図11Aおよび図11Bを用いて説明したような方法で、奥行距離を「10m~30m」と推定したものとしている。具体的には、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離が15m、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離が25mであると算出した後、それぞれ5mの余裕を加え、「15m-5m=10m」~「25m+5m=30m」を奥行距離の範囲としたものである。
また、例えば、照射決定部14は、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離「10m~30m」に基づき、左右方向にφ度~φ度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図10B参照。図10Bでは左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「10m」に基づき第1奥行距離垂直角度を算出し、奥行距離「30m」に基づき第2奥行距離垂直角度を算出して、照射範囲の上下方向を決定したものとしている。
【0096】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13aによって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
その結果、ヘッドライト制御部15は、推定視認位置に存在すると推定される推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御することができる。運転者は、推定視認対象物を視認することができる。
【0097】
図10Aおよび図10Bに示すような状況では、推定視認対象物は、歩行者であると推定される(図9参照)。つまり、ヘッドライト制御部15は、運転者の推定視認対象物である、運転者が向いている方向に存在すると推定される歩行者A(図10Aおよび図10BにてW1で示されている)に、光が照射されるようにできる。今、運転者の向きは、交差点の手前の歩道と進行方向の道路とを含む方向である。よって、運転者の推定視認対象物である歩行者は、交差点の手前の歩道または進行方向の道路上の横断歩道を横断している歩行者Aと推定される。
例えば、車両100の経路上において、交差点の向こう側の歩道に歩行者B(図10AにてW2で示されている)がいることもあり得る。しかし、当該歩行者Bは、運転者が向いている方向に存在しない。よって、運転者の推定視認対象物とは推定されない。つまり、歩行者Bには光が照射されるようにはならない。
ヘッドライト制御部15は、運転者が向いている方向において、推定された奥行距離だけ離れた位置(推定視認位置)に存在すると推定される運転者の推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御する。
なお、図10Aおよび図10Bでは、わかりやすさのため歩行者Aおよび歩行者Bも図示するようにしているが、当該歩行者Aおよび歩行者Bは、存在すると推定されるものであり、実際に存在するとは限らない。
【0098】
ここで、図12Aは、実施の形態2において、奥行距離推定部13aが推定する奥行距離のその他の一例について説明するための図である。
図12Bは、実施の形態2において、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、奥行距離推定部13aが推定した図12Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部14が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図12Aは、車両100が走行中の道路を上から見た俯瞰図としている。
図12Bは、車両100が走行中の道路を横から見た図としている。図12Bにおいて、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲は「LA」で示されている。
なお、図12Aでは、奥行距離は、右ライトから運転者の推定視認位置までの距離としている。また、図12Bでは、便宜上、車両100を進行方向に対して左側から見た図としているが、図12Bで示されている照射範囲は、右ライトによる照射範囲とする。
また、図12Aおよび図12Bでも、図10Aおよび図10B同様、一例として、運転者の顔向きが上下方向に「正面」の向きであり、左右方向に「右」の向きであり、車両100が交差点の15m手前で次の交差点を右折しようと、走行速度30km/hで走行している場合に、奥行距離推定部13aが奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定し、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させたものとしている。また、奥行距離推定用情報は、図8に示すような内容であったとしている。
図10図12とでは、運転者の顔向きが異なる。
【0099】
この場合、奥行距離推定部13aは、図8に示すような内容の奥行距離推定用情報に基づき、向き情報から判定された運転者の挙動と走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)とが当該奥行距離推定用情報のNo.2に当てはまるとして、奥行距離を「交差点の歩道と横断歩道とを含む5mの余裕を有する範囲」と推定する。その結果、運転者が向いている方向において、交差点付近の歩道と交差点の横断歩道とを含む、5mの余裕を有する奥行距離が推定される(図12B参照)。
ここでは、奥行距離推定部13aは、地図情報に基づき、奥行距離を、例えば「20m~37m」と推定したものとしている。具体的には、ヘッドライト2の設置位置から歩道手前までの距離が25m、ヘッドライト2の設置位置から歩道奥までの距離が32mであると算出した後、それぞれ5mの余裕を加え、「25m-5m=20m」~「32m+5m=37m」を奥行距離の範囲としたものである。
また、例えば、照射決定部14は、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離「20m~37m」に基づき、左右方向にφ度~φ度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図12B参照。図12Bでは左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「20m」に基づき第1奥行距離垂直角度を算出し、奥行距離「37m」に基づき第2奥行距離垂直角度を算出して、照射範囲の上下方向を決定したものとしている。
【0100】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13によって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
図12Aおよび図12Bに示すような状況では、推定視認対象物は歩行者であると推定される(図9参照)が、今、図12Aおよび図12Bに示すように、運転者が向いている方向は、車両100の進行方向の道路と交差点の向こう側の歩道とを含む方向である。この場合、運転者の推定視認対象物は、交差点の向こう側の歩道または進行方向の道路上の横断歩道を横断している歩行者B(図12Aおよび図12BにてW2で示されている)と推定される。
ヘッドライト制御部15は、運転者の推定視認対象物である、運転者が向いている方向に存在すると推定される歩行者Bに、光が照射されるようにできる。
仮に、車両100の経路上において、交差点の手前の歩道に歩行者A(図12AにてW1で示されている)がいたとしても、当該歩行者Aは、運転者が向いている方向に存在しない。よって、運転者の推定視認対象物とは推定されない。つまり、歩行者Aには光が照射されるようにはならない。
【0101】
このように、ヘッドライト制御装置1aは、向き情報と、車両情報と、地図情報と、奥行距離推定用情報とを用いて推定した奥行距離に応じて、運転者の推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2の適切な点灯制御ができる。
【0102】
実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1では、奥行距離推定部13は、向き情報と車両情報とから、奥行距離推定用情報を用いて、奥行距離を推定していた。奥行距離推定部13は、奥行距離を推定する際、地図情報を考慮していなかった。
そのため、例えば、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1において、奥行距離推定部13が、図2に示したような奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定するものとし、仮に、運転者の顔向きが上下方向に「正面」の向きであり、左右方向に「右」の向きであり、車両100が交差点の15m手前で次の交差点を右折しようと、走行速度30km/hで走行している場合、奥行距離推定部13は、運転者が右折のためにハンドルをある程度(例えば、20度以上)切らないと、奥行距離を推定できない。
このような状況下では、奥行距離推定部13は、運転者が進行方向、ここでは、右方向、にハンドルをある程度切ってはじめて、例えば、奥行距離「15~20m」と推定できる(図2のNo.2参照)。右方向にハンドルをある程度切るまでは、車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物の推定が難しいためである。
【0103】
これに対し、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aでは、奥行距離推定部13aが奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報には、地図情報が含まれている。なお、管理者等は、奥行距離推定用情報を生成する際、例えば、車両100の経路を根拠に推定視認対象物を推定し、奥行距離を設定できる。
奥行距離推定部13aは、向き情報と車両情報と地図情報と奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定する。
その結果、奥行距離推定部13aは、例えば上述の例において、運転者が右折のためにハンドルをある程度切るよりも早いタイミングで、奥行距離を推定できる。
つまり、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1と比べ、早いタイミングで、奥行距離に応じたヘッドライト2の点灯制御を行うことができる。例えば、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1と比べ、早いタイミングで、奥行距離を初期値としたヘッドライト2の点灯制御から、奥行距離推定部13aによって推定された奥行距離に応じたヘッドライト2の点灯制御、言い換えれば、運転者の推定視認位置に存在すると推定される推定視認対象物に光が照射されるようにする点灯制御、へと切り替えることができる。
【0104】
実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aの動作について説明する。
図13は、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1aは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図13のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1aは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図13のフローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1aの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12a、奥行距離推定部13a、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12a、奥行距離推定部13a、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0105】
図13のフローチャートで示す動作について、ステップST1-1、ステップST1-2、ステップST3~ステップST4の処理内容は、それぞれ、実施の形態1にて説明済みの、図5のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1の動作のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST3~ステップST4の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0106】
地図情報取得部122は、走行関連情報取得装置4から地図情報を取得する(ステップST1-3)。
地図情報取得部122は、取得した地図情報を、走行関連情報として、奥行距離推定部13aに出力する。
【0107】
奥行距離推定部13aは、ステップST1-1にて向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、ステップST1-2にて車両情報取得部121が取得した車両情報と、ステップST1-3にて地図情報取得部122が取得した地図情報と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定する(ステップST2a)。
【0108】
ステップST3において、照射決定部14は、ステップST2aにて奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する(ステップST3)。
【0109】
このように、ヘッドライト制御装置1aは、車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出し、走行関連情報(ここでは車両情報および地図情報)を取得する。ヘッドライト制御装置1aは、検出した運転者の向きに関する向き情報と取得した走行関連情報とに基づき奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する。そして、ヘッドライト制御装置1aは、ヘッドライト2に対して、決定した照射範囲に光を照射させる。
そのため、ヘッドライト制御装置1aは、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
ヘッドライト制御装置1aは、奥行距離の推定に地図情報を用いることにより、運転者の向きと車両情報だけでは奥行距離の推定が困難な状況でも、奥行距離を推定可能とし、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0110】
以上の実施の形態2において、例えば、奥行距離推定部13aは、奥行距離を推定するとともに、照射範囲の理想幅を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13aは、奥行距離情報と照射範囲の理想幅に関する情報とを照射決定部14に出力する。
照射決定部14は、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離と照射範囲の理想幅とに基づいて照射範囲を決定する。詳細には、照射決定部14は、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲が、照射範囲の理想幅を超えていた場合、照射範囲の理想幅までの範囲を、照射範囲と決定する。
奥行距離推定部13aが照射範囲の理想幅を推定し、照射決定部14が照射範囲の理想幅を上限として照射範囲を決定することで、ヘッドライト制御装置1aは、対向車等に与えるグレアを低減できる。
【0111】
また、以上の実施の形態2において、奥行距離推定部13aは、奥行距離を推定するとともにヘッドライト2による理想光量を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13aは、奥行距離情報を照射決定部14に出力するとともに、推定した理想光量に関する情報を、ヘッドライト制御部15に出力する。
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲において、奥行距離推定部13aが推定した理想光量で、光を照射させる。
奥行距離推定部13aが理想光量を推定し、ヘッドライト制御部15がヘッドライト2に対して理想光量で光を照射させることで、ヘッドライト制御装置1aは、運転者が向いている方向において、光を照射させる車両100からの距離に応じて、運転者が推定視認対象物を視認するのに必要と想定される光量で、光を照射させることができる。
【0112】
以上の実施の形態2において、奥行距離推定部13aは、奥行距離を推定するとともに照射範囲の理想幅および理想光量を推定するようにしてもよい。
【0113】
また、以上の実施の形態2では、ヘッドライト制御装置1aは、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0114】
実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態2において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1aは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいてヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0115】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1aは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図13のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST1-3~ステップST4が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12aと、奥行距離推定部13aと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1aは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0116】
以上のように、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aは、車両100の運転者が撮像された撮像画像(車内撮像画像)に基づき、運転者の向きを検出する向き検出部11と、車両100の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部12aと、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部12aが取得した走行関連情報とに基づき、奥行距離を推定する奥行距離推定部13aと、奥行距離推定部13aが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する照射決定部14と、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させるヘッドライト制御部15とを備えるように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1aは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1aは、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0117】
詳細には、ヘッドライト制御装置1aにおいて、走行関連情報取得部12aは、走行関連情報として車両100に関する車両情報を取得する車両情報取得部121と、走行関連情報として地図情報を取得する地図情報取得部122とを有し、奥行距離推定部13aは、向き情報と車両情報と地図情報とに基づき、奥行距離を推定する。
そのため、ヘッドライト制御装置1aは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1aは、運転者の推定視認位置を適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0118】
実施の形態3.
実施の形態1では、ヘッドライト制御装置は、向き情報と車両情報とに基づき奥行距離を推定していた。
実施の形態3では、向き情報と車両周辺の情報とに基づき奥行距離を推定する実施の形態について説明する。
【0119】
図14は、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bの構成例を示す図である。
実施の形態3において、ヘッドライト制御装置1bは、車両100に搭載されていることを想定する。
ヘッドライト制御装置1bは、車両100の運転者の向きに基づいて、車両100に設けられているヘッドライト2の灯火制御を行う。実施の形態3において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向であらわされる。実施の形態3において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向に加え、運転者の身体の向き、言い換えれば、運転者の姿勢、を含むものとしてもよい。
実施の形態3では、ヘッドライト制御装置1bが行う、運転者の向きに基づくヘッドライト2の灯火制御は、例えば、夜間の駐車場、または、夜間の市街地等、車両100の周囲が暗い場所において、ヘッドライト2がオンにされた場合に行われることを想定している。
以下の実施の形態3においても、単に「運転者の顔向き」というとき、当該「運転者の顔向き」は、運転者の視線方向も含む、「運転者の顔向き、または、視線方向」のことをいう。
【0120】
図14において、実施の形態1にて図1を用いて説明したヘッドライト制御装置1と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1とは、走行関連情報取得部12bが車両情報取得部121に代えて車外情報取得部123を備えた点が異なる。
また、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bにおける奥行距離推定部13bの具体的な動作が、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1における奥行距離推定部13の具体的な動作とは異なる。
【0121】
実施の形態3において、走行関連情報取得装置4は、車外撮像装置(図示省略)またはレーダ(図示省略)等の装置を想定している。車外撮像装置またはレーダ等の走行関連情報取得装置4は、走行関連情報として、車両100の周辺の物体に関する情報(以下「車外情報」という。)を取得する。車外情報には、例えば、車両100の周辺を撮像した撮像画像(以下「車外撮像画像」という。)と、車両100の周辺に存在する物体までの距離に関する情報(以下「距離情報」という。)とが含まれる。
【0122】
車外撮像装置は、少なくとも車両100の前方を撮像する。車外撮像装置は、車両100の前方だけでなく、車両100の側方または後方を撮像するようになっていてもよい。
車外撮像装置は、撮像した車外撮像画像を、走行関連情報として、ヘッドライト制御装置1bに出力する。
なお、ここでは、車外撮像装置は1つ、ヘッドライト制御装置1bに接続されていることを想定しているが、これは一例に過ぎない。例えば、車外撮像装置は車両100に複数搭載され、複数の車外撮像装置がヘッドライト制御装置1bと接続されていてもよい。
【0123】
レーダは、少なくとも車両100の前方に存在する物体との距離を取得する。レーダは、車両100の前方だけでなく、車両100の側方または後方に存在する物体との距離を取得するようになっていてもよい。
レーダは、取得した物体との距離に関する距離情報を、走行関連情報として、ヘッドライト制御装置1bに出力する。距離情報には、例えば、物体の存在、物体の位置、物体までの距離等を示す情報が含まれる。
なお、ここでは、レーダは1つ、ヘッドライト制御装置1bに接続されていることを想定しているが、これは一例に過ぎない。例えば、レーダは車両100に複数搭載され、複数のレーダがヘッドライト制御装置1bと接続されていてもよい。例えば、近傍の物体との距離を取得するレーダと遠方の物体との距離を取得するレーダ、のように、互いに異なる種類の複数のレーダが、ヘッドライト制御装置1bと接続されていてもよい。
【0124】
車外情報取得部123は、走行関連情報取得装置4から、車外情報を取得する。
詳細には、車外情報取得部123は、車外撮像装置から車外撮像画像を取得し、レーダから距離情報を取得する。
車外情報取得部123は、取得した車外情報を、走行関連情報として、奥行距離推定部13bに出力する。
【0125】
奥行距離推定部13bは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、車外情報取得部123が取得した車外情報とに基づき、奥行距離を推定する。
詳細には、奥行距離推定部13bは、向き情報と、走行関連情報(ここでは車外情報)と、奥行距離推定用情報との比較によって、奥行距離を推定する。
【0126】
ここで、図15は、実施の形態3において、奥行距離推定部13bが奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図15に示すように、実施の形態3において、奥行距離推定用情報は、例えば、運転者の挙動と、車外情報と、奥行距離とが対応付けられたテーブルである。
奥行距離推定用情報において、運転者の挙動には、例えば、運転者の顔向きの上下方向と、運転者の顔向きの左右方向とが含まれる。運転者の顔向きの上下方向は、「正面」、「上方」、または、「下方」であらわされる。運転者の顔向きの左右方向は、「正面」、「右」、または、「左」であらわされる。
また、奥行距離推定用情報において、車外情報には、例えば、車両100の前方に存在する物体に関する情報が含まれる。
【0127】
実施の形態3において、奥行距離推定部13bは、奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定すると、推定した奥行距離を、車外情報に基づいて、奥行距離調整用条件(詳細は後述する)を参照して、調整する。奥行距離推定部13bは、調整後の奥行距離を、推定した奥行距離として確定させる。以下、奥行距離推定部13bが奥行距離を推定し、推定した奥行距離を調整して、推定した奥行距離を確定させるまでの流れについて、詳細に説明する。
【0128】
〈奥行距離の推定〉
まず、奥行距離推定部13bは、向き情報に基づいて、運転者の挙動を判定する。例えば、奥行距離推定部13bは、向き情報に含まれている運転者の垂直方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの上下方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるかを判定する。また、例えば、奥行距離推定部13bは、向き情報に含まれている運転者の水平方向の顔向きを示す情報から、運転者の顔向きの左右方向が「正面」であるか「右」であるか「左」であるかを判定する。
奥行距離推定部13bによる運転者の顔向きの上下方向および左右方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるか「右」であるか「左」であるかの判定方法は、実施の形態1にて説明済みの、奥行距離推定部13による運転者の顔向きの上下方向および左右方向が「正面」であるか「上方」であるか「下方」であるか「右」であるか「左」であるかの判定方法と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0129】
また、奥行距離推定部13bは、車外情報取得部123が取得した車外情報に基づいて、車両100の周辺に存在する物体(例えば、標識、歩行者、白線、車両等)を判定する。例えば、奥行距離推定部13bは、車外撮像画像に対して公知の画像認識技術を用いた画像認識処理を行って、車両100の周辺に存在する物体を判定できる。また、車外撮像装置の設置位置および画角と、レーダの設置位置および検出範囲とは、予めわかっているので、奥行距離推定部13bは、車外撮像画像上の物体と、距離情報で示されている物体との対応付けができる。すなわち、奥行距離推定部13bは、車外撮像画像と距離情報とに基づけば、車外撮像画像で撮像されている物体が、車両100からどれぐらいの距離の位置に存在している物体であるかの紐づけができる。なお、奥行距離推定部13bは、例えば、車外撮像画像上の物体の位置を示す座標と、距離情報における物体の位置を示す座標とに基づき、位置の近いものを同一の物体とみなす方法等、公知の種々の方法を用いて、車外撮像画像上の物体と距離情報で示されている物体との対応付けを行ってもよい。また、レーダの設置位置と車両100の位置との関係は、予めわかっているので、奥行距離推定部13bは、距離情報に基づけば、レーダが検出した物体が、車両100からどれぐらいの距離の位置に存在しているか、判定できる。
【0130】
なお、奥行距離推定部13bは、車外情報取得部123から出力された車外情報を、取得日時を付与して記憶部16に記憶させるようにし、過去の車外情報から、検出された物体の加速度を算出し、算出した加速度が大きく変わった、言い換えれば、物体が急激に移動したと判定した場合は、当該物体は誤検出された物体であると判定してもよい。奥行距離推定部13bは、誤検出された物体であると判定した物体に関する車外情報は奥行距離の推定に用いないようにする。
【0131】
また、車外撮像画像上の物体と距離情報で示されている物体との対応付けは、車外情報取得部123が行ってもよい。この場合、例えば、車外情報取得部123が、対応する物体がわかる形態で、車外情報を、奥行距離推定部13bに出力する。
また、車外情報取得部123が、過去の車外情報に基づく物体が誤検出されたか否かの判定を行ってもよい。車外情報取得部123は、誤検出された物体であると判定した物体に関する車外情報は奥行距離推定部13bに出力しないようにする。
【0132】
そして、奥行距離推定部13bは、判定した挙動と、車両100の周辺に存在する物体を示す情報とを、図15に示すような奥行距離推定用情報で設定されている運転者の挙動および車外情報とつきあわせて奥行距離の情報を得ることで、奥行距離を推定する。
【0133】
例えば、今、運転者の顔向きが「正面」の向きであり、車両100の前方には「横向きの停止車両」が複数あり、かつ、「歩行者」がいるとする。なお、奥行距離推定用情報は、図15に示すような内容であったとする。
この場合、奥行距離推定部13bは、運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報(ここでは車外情報)と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離は「5~15m」であると推定する(図15の奥行距離推定用情報のNo.1参照)。
【0134】
例えば、運転者の顔向きが上下方向に「正面~上方」であり、車両100の前方には「横向きの停止車両」が複数あり、かつ、「歩行者」がいる場合、車両100は駐停車しようとしており、運転者の推定視認対象物は、歩行者(または歩行者がいそうな場所)であると推定される。そこで、奥行距離推定用情報において、奥行距離には、車両100が駐停車しようとしているときに運転者が歩行者(または歩行者がいそうな場所)を確認しようとすると、当該歩行者(または歩行者がいそうな場所)はおそらくこれぐらいの奥行距離の位置にいる(ある)であろうと想定される「5~15m」が設定されている(図15の奥行距離推定用情報のNo.1)。
同様に、図15の奥行距離推定用情報のNo.2~No.8の条件においても、運転者の挙動および車外情報から推定される車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物に基づいて、奥行距離が設定されている。
図16は、図15に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.8の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車外情報とから推定される車両100の走行状態および運転者の視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
【0135】
なお、図15に示す奥行距離推定用情報では、No.1~No.8の8パターンの条件が設定されているが、これは一例に過ぎない。また、図15に示すような奥行距離推定用情報の内容は、一例に過ぎない。
例えば、奥行距離推定用情報において、車外情報として、車両後方に存在する物体を示す情報と隣車線の種別(追い越し車線か対向車線か)を示す情報が設定されていてもよい。例えば、車両後方に存在する物体が車両であり、隣車線の種別が追い越し車線である場合、奥行距離には、車両100が高速道路を走行中であり運転者の推定視認対象物は標識であることを想定した値が設定されている。
また、例えば、奥行距離推定用情報において、車外情報として、車両側方に存在する物体を示す情報と、当該物体の高さを示す情報が設定されていてもよい。例えば、車両側方に存在する物体が建物の塀等の静止物であり、当該静止物の高さが所定の閾値以上である場合、奥行距離には、車両100が見通しの悪い交差点を走行中であり運転者の推定視認対象物は歩行者であることを想定した奥行距離が設定されている。
奥行距離推定用情報は、向き情報と走行関連情報(ここでは車外情報)とから奥行距離の情報が得られる情報となっていればよい。
【0136】
また、奥行距離推定部13bは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報取得部12bが取得した走行関連情報(ここでは車外情報取得部123が取得した車外情報)が、奥行距離推定用情報で設定されている入力情報とつきあわない場合、例えば、奥行距離推定用情報からは奥行距離は推定できなかったとして、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。
【0137】
〈推定した奥行距離の調整〉
奥行距離を推定すると、奥行距離推定部13bは、推定した奥行距離と車外情報とに基づき、推定した奥行距離を調整し、推定した奥行距離を確定させる。なお、奥行距離推定部13bは、奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離が幅を有しない場合はこの調整を実施しない。
詳細には、奥行距離推定部13bは、推定した奥行距離と車外情報とに基づき、奥行距離を調整するための奥行距離調整用条件を参照して、奥行距離を調整する。
奥行距離調整用条件は、予め、管理者等によって生成され、奥行距離推定部13bが参照可能な場所に記憶されている。
【0138】
奥行距離調整用条件には、例えば、以下の(条件1)~(条件4)のような条件が設定されている。
【0139】
(条件1)
車両の前方において、運転者が向いている方向に移動体が存在し、ヘッドライトから当該移動体までの距離が奥行距離の範囲内である場合、推定された奥行距離を、ヘッドライトから当該移動体までの距離とする。
【0140】
(条件2)
車両の前方において、運転者が向いている方向に移動体が存在し、ヘッドライトから当該移動体までの距離が奥行距離の範囲外である場合、奥行距離推定用情報に基づく奥行距離をそのまま奥行距離とする。
【0141】
(条件3)
車両の前方において、運転者が向いている方向に移動体は存在しないが車両の周辺に移動体以外の物体、言い換えれば、静止物体が存在し、ヘッドライトから当該静止物体までの距離が奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離よりも小さい場合、推定された奥行距離を、(ヘッドライトから静止物体までの距離+予め設定された加算用距離)とする。
【0142】
(条件4)
車両の前方において、運転者が向いている方向に移動体が存在せず、かつ、車両の周辺に静止物体が存在しない場合、奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離をそのまま奥行距離とする。
また、車両の前方において、運転者が向いている方向に移動体が存在せず、かつ、車両の周辺に静止物体が存在するが、ヘッドライトから当該静止物体までの距離が奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離の範囲外である場合、奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離をそのまま奥行距離とする。
【0143】
奥行距離調整用条件において、移動体は、人を含む。
また、奥行距離調整用条件において、加算用距離は、予め管理者等によって設定され、奥行距離推定部13bが参照可能な場所に記憶されている。加算用距離には、例えば、2~5mの間の距離が設定されている。ここでは、一例として、加算用距離には「3m」が設定されているものとする。加算用距離には、幅を持たせた値が設定されていてもよい。
【0144】
奥行距離推定部13bは、車外情報取得部123が取得した車外情報に基づいて、車両100の前方において、運転者が向いている方向に存在する物体があるか否か、物体が存在する場合にはその種別、ここでは移動体か静止物体かを判定できる。
レーダの設置位置および検出範囲は予めわかっているので、奥行距離推定部13bは、運転者が向いている方向に存在する物体があるか否かを判定できる。なお、奥行距離推定部13bは、運転者が向いている方向を、向き情報から判定できる。また、上述のとおり、奥行距離推定部13bは、車外撮像画像上の物体と、距離情報で示されている物体との対応付けができる。よって、奥行距離推定部13bは、運転者が向いている方向に存在する物体があると判定した場合、例えば、車外撮像画像に対して公知の画像認識技術を用いた画像認識処理を行って、当該物体の種別、言い換えれば、移動体か静止物体かを判定できる。奥行距離推定部13bは、例えば、距離情報を用いて、物体の種別を判定してもよい。距離情報には、例えば、物体の速度に関する情報が含まれている。
また、レーダの設置位置と車両100の位置とヘッドライト2の設置位置との関係は予めわかっているので、奥行距離推定部13bは、当該位置関係と距離情報に基づけば、レーダが検出した物体が、ヘッドライト2からどれぐらいの距離の位置に存在しているかを判定できる。なお、奥行距離推定部13bは、例えば、運転者の顔向きを中心として予め設定された角度だけ垂直方向および水平方向に広げた範囲を、物体が存在しているか否かを判定する対象とする「運転者が向いている方向」とすればよい。
【0145】
なお、上述したような奥行距離調整用条件は一例に過ぎず、奥行距離調整用条件は適宜設定可能である。
また、奥行距離調整用条件は、例えば、検出された物体の種別と、ヘッドライト2から当該物体までの距離および奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離の差を示す情報と、調整後の奥行距離を示す情報とが対応付けられたテーブル形式の情報としてもよい。
【0146】
奥行距離推定部13bは、奥行距離を調整すると、調整後の奥行距離を、推定した奥行距離とし、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0147】
なお、奥行距離推定部13bは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報取得部12bが取得した走行関連情報(ここでは車外情報取得部123が取得した車外情報)とに基づき判定した運転者の挙動と車外情報とが、奥行距離推定用情報で設定されている入力情報としての運転者の挙動と車外情報とにつきあわない場合、例えば、奥行距離推定用情報からは奥行距離は推定できなかったとして、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。
奥行距離推定部13bは、初期値を設定した奥行距離に関する奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0148】
照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定し、照射情報をヘッドライト制御部15に出力する。ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる。
【0149】
ここで、図17図18、および、図19は、実施の形態3において、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離に基づいて照射決定部14が照射範囲を決定し、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。なお、奥行距離推定部13bが奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報は、図15に示すような内容であったとする。また、奥行距離推定部13bは、上述の(条件1)~(条件4)の奥行距離調整用条件に従って、奥行距離を調整するものとする。
図17図18、および、図19は、それぞれ、車両100が走行中の道路を横から見た図としている。図17図18、および、図19において、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲は「LA」で示されている。
【0150】
図17に示す例では、運転者の顔向きが、上下方向に「正面」の範囲内の向きであり、車両100の前方に複数の停車車両(図17にて「C」で示されている。なお、図17では説明の簡単のため停車車両は1台のみ図示している)があり、かつ、歩行者(図17にて「W」で示されている)がいる状況で車両100が走行しているとする。歩行者は、運転者が向いている方向において、ヘッドライト2から12mの距離に存在するとする。
この場合、奥行距離推定部13bは、奥行距離推定用情報に基づき、運転者の顔向きと走行関連情報(ここでは車外情報)とが当該奥行距離推定用情報のNo.1に当てはまるとして奥行距離を「5~15m」と推定する。その後、奥行距離推定部13bは、「5~15」と推定した奥行距離の調整を行う。図17に示す例では、運転者が向いている方向において、「5~15m」の範囲内に歩行者が存在するので、奥行距離推定部13bは、奥行距離を調整し、「12m」を、推定した奥行距離とする。
照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離「12m」に基づき、照射範囲を決定する。ここでは、照射決定部14は、左右方向にφ度~φ度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図17では左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「12m」に基づき奥行距離垂直角度を算出し、当該奥行距離垂直角度から垂直方向に予め設定された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向の角度範囲を決定したものとしている。
【0151】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13bによって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車外情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
その結果、ヘッドライト制御部15は、運転者が向いている方向に存在している歩行者に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御することができる。運転者は、歩行者を視認することができる。
奥行距離推定用情報を用いて推定される奥行距離は、運転者が向いている方向に実際に存在している物体を考慮して推定されるものではない。一方、運転者が向いている方向において、奥行距離推定用情報を用いて推定された奥行距離の範囲内に実際に移動体が存在していれば、運転者は当該移動体を視認しようとしている確率が高いといえる。奥行距離推定部13bが、奥行距離を、運転者が向いている方向に実際に存在している移動体に基づいて調整することで、推定視認対象物である確率が高い、実際に存在している移動体(ここでは歩行者)に対して、光が照射されるようになる。
【0152】
図18に示す例では、図17に示す例同様、運転者の顔向きが、上下方向に「正面」の範囲内の向きであり、車両100の前方に複数の停車車両(図18にて「C」で示されている。なお、図18では説明の簡単のため停車車両は1台のみ図示している)があり、かつ、歩行者(図18にて「W」で示されている)がいる状況で車両100が走行しているとする。ただし、歩行者は、運転者が向いている方向において、ヘッドライト2から20mの距離に存在するとする。
この場合、運転者が向いている方向において、「5~15m」の範囲内に歩行者が存在しないので、奥行距離推定部13bは、奥行距離推定用情報に基づき「5~15m」と推定した奥行距離をそのまま、推定した奥行距離とする。
照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離「5~15m」に基づき、照射範囲を決定する。ここでは、照射決定部14は、左右方向にφ度~φ10度の範囲、かつ、上下方向にθ度~θ10度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図18では左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「5m」に基づき第1奥行距離垂直角度を算出し、奥行距離「15m」に基づき第2奥行距離垂直角度を算出して、照射範囲の上下方向を決定したものとしている。
【0153】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13bによって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車外情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
その結果、ヘッドライト制御部15は、運転者の推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御する。ここで、歩行者が実際に存在する位置は、ヘッドライト2の光の照射範囲に含まれない。すなわち、歩行者にはヘッドライト2の光は照射されない。ヘッドライト2からみて、奥行距離推定用情報を用いて推定した奥行距離より遠い位置に存在する歩行者は推定視認対象物ではなく、当該歩行者よりも近い距離に推定視認対象物が存在していると推定される。奥行距離推定部13bが奥行距離を調整する際、運転者が向いている方向に実際に歩行者が存在していても、当該歩行者が奥行距離推定用情報を用いて推定した奥行距離より遠い位置に存在する場合には奥行距離を大きくする等せず、奥行距離推定用情報を用いて推定した奥行距離をそのままとする。
これにより、ヘッドライト制御装置1bは、実際に存在する歩行者だとしても、推定視認対象物である可能性が低い歩行者には、光を照射せず、推定視認対象物が存在する可能性がより高いと推定される範囲に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御できる。
【0154】
図19に示す例では、運転者の顔向きが、上下方向に「正面」の範囲内の向きであり、車両100の前方に複数の停車車両(図19にて「C」で示されている。なお、図19では説明の簡単のため停車車両は1台のみ図示している)がある状況で車両100が走行しているとする。車両100の周辺に歩行者等の移動体は存在しない。停車車両までの距離は、「4m」であるとする。
この場合、運転者が向いている方向において移動体は存在しないが停車車両が存在し、ヘッドライト2から当該停車車両までの距離が奥行距離推定用情報に基づき推定された「5~15m」の範囲内であるため、奥行距離推定部13bは、奥行距離を調整し、「7m」を、推定した奥行距離とする。
照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離「7m」に基づき、照射範囲を決定する。ここでは、照射決定部14は、左右方向にφ11度~φ12度の範囲、かつ、上下方向にθ11度~θ12度の範囲を照射範囲と決定したものとしている(図19では左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「7m」に基づき奥行距離垂直角度を算出し、当該奥行距離垂直角度から垂直方向に予め設定された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向の角度範囲を決定したものとしている。
【0155】
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、運転者が向いている方向において、奥行距離推定部13bによって運転者の向きと走行関連情報(ここでは車外情報)を考慮して推定された奥行距離に基づいて照射決定部14によって決定された照射範囲、に光を照射させる。
その結果、ヘッドライト制御部15は、運転者の推定視認対象物に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御する。ここで、ヘッドライト2の光は、車両100からみて停車車両の奥の範囲に照射される。例えば、運転者が向いている方向において、静止物体がある場合、当該静止物体の陰から歩行者等の移動体が飛び出してくる可能性があり、運転者は、この飛び出しがないかを視認しようとしていると推定される。奥行距離推定部13bが奥行距離を調整することで、奥行距離は、運転者が向いている方向が、飛び出しが発生しそうな状況である場合、当該飛び出しが発生しそうな場所を推定視認位置とした奥行距離に調整される。
これにより、ヘッドライト制御装置1bは、推定視認対象物が存在する可能性がより高いと推定される範囲に光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御できる。
【0156】
例えば、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1は、実際に車両100の周辺に存在する物体を考慮した奥行距離の推定は行っていなかった。
これに対し、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bは、上述したとおり、車外情報に基づく奥行距離の推定、より詳細には、奥行距離推定用情報に基づき推定した奥行距離を車外情報に基づいて調整し、奥行距離を確定させる奥行距離の推定、を行うことで、実際に車両100の周辺に存在する物体を考慮した奥行距離の推定を行う。ヘッドライト制御装置1bは、運転者が向いている方向において実際に存在する物体があるか否かに基づき、より実際の状況に即した奥行距離を推定する。
これにより、ヘッドライト制御装置1bは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0157】
実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bの動作について説明する。
図20は、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1bは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図20のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1bは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図20のフローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1bの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12b、奥行距離推定部13b、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12b、奥行距離推定部13b、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0158】
図20のフローチャートで示す動作について、ステップST1-1、ステップST3~ステップST4の処理内容は、それぞれ、実施の形態1にて説明済みの、図5のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1の動作のステップST1-1、ステップST3~ステップST4の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0159】
車外情報取得部123は、走行関連情報取得装置4から、車外情報を、取得する(ステップST1-4)。
詳細には、車外情報取得部123は、車外撮像装置から車外撮像画像を取得し、レーダから距離情報を取得する。
車外情報取得部123は、取得した車外情報を、走行関連情報として、奥行距離推定部13bに出力する。
【0160】
奥行距離推定部13bは、ステップST1-1にて向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、ステップST1-4にて車外情報取得部123が取得した車外情報と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定する(ステップST2b)。
詳細には、奥行距離推定部13bは、奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定すると、推定した奥行距離を、車外情報に基づき、奥行距離調整用条件を参照して、調整し、推定した奥行距離を確定させる。
奥行距離推定部13bは、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0161】
ステップST3において、照射決定部14は、ステップST2bにて奥行距離推定部13bが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する(ステップST3)。
【0162】
このように、ヘッドライト制御装置1bは、車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出し、走行関連情報(ここでは車外情報)を取得する。ヘッドライト制御装置1bは、検出した運転者の向きに関する向き情報と、取得した走行関連情報とに基づき、奥行距離を推定する。その際、ヘッドライト制御装置1bは、奥行距離推定用情報を用いて推定した奥行距離を、車外情報と奥行距離調整用条件とに基づき調整し、調整後の奥行距離情報を推定した奥行情報とする。そして、ヘッドライト制御装置1bは、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定し、ヘッドライト2に対して、決定した照射範囲に光を照射させる。
そのため、ヘッドライト制御装置1bは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0163】
以上の実施の形態3において、例えば、奥行距離推定部13bは、奥行距離を推定するとともに、照射範囲の理想幅を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13bは、奥行距離情報と照射範囲の理想幅に関する情報とを照射決定部14に出力する。
照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離と照射範囲の理想幅とに基づいて照射範囲を決定する。詳細には、照射決定部14は、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲が、照射範囲の理想幅を超えていた場合、照射範囲の理想幅までの範囲を、照射範囲と決定する。
奥行距離推定部13bが照射範囲の理想幅を推定し、照射決定部14が照射範囲の理想幅を上限として照射範囲を決定することで、ヘッドライト制御装置1bは、対向車等に与えるグレアを低減できる。
【0164】
また、以上の実施の形態3において、奥行距離推定部13bは、奥行距離を推定するとともに、ヘッドライト2による理想光量を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13bは、奥行距離情報を照射決定部14に出力するとともに、推定した理想光量に関する情報を、ヘッドライト制御部15に出力する。
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲において、奥行距離推定部13bが推定した理想光量で、光を照射させる。
奥行距離推定部13bが理想光量を推定し、ヘッドライト制御部15がヘッドライト2に対して理想光量で光を照射させることで、ヘッドライト制御装置1bは、運転者が向いている方向において、光を照射させる車両100からの距離に応じて、運転者が推定視認対象物を視認するのに必要と想定される光量で、光を照射させることができる。
【0165】
以上の実施の形態3において、奥行距離推定部13bは、奥行距離を推定するとともに照射範囲の理想幅および理想光量を推定するようにしてもよい。
【0166】
また、以上の実施の形態3では、ヘッドライト制御装置1bは、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0167】
実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態3において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1bは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向き関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0168】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1bは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図20のステップST1-1、ステップST1-4~ステップST4が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12bと、奥行距離推定部13bと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1bは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0169】
以上のように、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bは、車両100の運転者が撮像された撮像画像(車内撮像画像)に基づき、運転者の向きを検出する向き検出部11と、車両100の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部12bと、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、走行関連情報取得部12bが取得した走行関連情報とに基づき、奥行距離を推定する奥行距離推定部13bと、奥行距離推定部13bが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する照射決定部14と、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させるヘッドライト制御部15とを備えるように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1bは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1bは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0170】
詳細には、ヘッドライト制御装置1bにおいて、走行関連情報取得部12bは、走行関連情報として車両100の前方に関する車外情報を取得する車外情報取得部123を有し、奥行距離推定部13bは、向き情報と車外情報とに基づき、奥行距離を推定する。
そのため、ヘッドライト制御装置1bは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1bは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0171】
実施の形態4.
実施の形態2では、実施の形態1におけるヘッドライト制御装置において、車両情報に加え、地図情報を取得し、向き情報と車両情報と地図情報とに基づき奥行距離を推定していた。
実施の形態3では、実施の形態1におけるヘッドライト制御装置において、車両情報に代えて、車外情報を取得し、向き情報と車外情報とに基づき奥行距離を推定していた。
実施の形態4では、実施の形態2と実施の形態3とを組み合わせた実施の形態について説明する。
【0172】
図21は、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cの構成例を示す図である。
実施の形態4において、ヘッドライト制御装置1cは、車両100に搭載されていることを想定する。
図21において、実施の形態1、実施の形態2、および、実施の形態3にて、それぞれ、図1図7、および、図14を用いて説明したヘッドライト制御装置1、1a、1bと同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0173】
ヘッドライト制御装置1cにおいて、走行関連情報取得部12cは、車両情報取得部121と地図情報取得部122と車外情報取得部123とを備える。
【0174】
奥行距離推定部13cは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、車両情報取得部121が取得した車両情報と、地図情報取得部122が取得した地図情報と、車外情報取得部123が取得した車外情報とに基づき、奥行距離を推定する。
詳細には、奥行距離推定部13bは、向き情報と、走行関連情報(ここでは車両情報、地図情報、および、車外情報)と、奥行距離推定用情報との比較によって、奥行距離を推定する。
【0175】
図22は、実施の形態4において、奥行距離推定部13cが奥行距離の推定に用いる奥行距離推定用情報の内容の一例を示す図である。
図22に示すように、実施の形態4において、奥行距離推定用情報は、例えば、運転者の挙動と、車両情報と、地図情報と、車外情報と、奥行距離とが対応付けられたテーブルである。
なお、実施の形態4において、奥行距離推定部13cは、奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定すると、推定した奥行距離を、車外情報に基づいて、奥行距離調整用条件を参照して調整する。奥行距離推定部13cは、調整後の奥行距離を、推定した奥行距離として確定させる。
奥行距離推定部13cは、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0176】
図23は、図22に示す奥行距離推定用情報において設定されている、No.1~No.7の条件にて入力情報に対応する奥行距離について、当該奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と車両情報と地図情報と車外情報とから推定される車両100の走行状態および運転者の視認対象物の一例と対応付けて示した図である。
【0177】
なお、奥行距離推定部13cは、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報取得部12cが取得した走行関連情報(ここでは車両情報取得部121が取得した車両情報、地図情報取得部122が取得した地図情報、および、車外情報取得部123が取得した車外情報)とに基づき判定した運転者の挙動と車両情報と地図情報と車外情報とが、奥行距離推定用情報で設定されている入力情報としての運転者の挙動と車両情報と地図情報と車外情報とにつきあわない場合、例えば、奥行距離推定用情報からは奥行距離は推定できなかったとして、当該奥行距離に当該奥行距離の初期値を設定する。
奥行距離推定部13cは、初期値を設定した奥行距離に関する奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0178】
照射決定部14は、奥行距離推定部13cが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定し、照射情報をヘッドライト制御部15に出力する。ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させる。
【0179】
ここで、図24Aは、実施の形態4において、奥行距離推定部13cが推定する奥行距離の一例について説明するための図である。
図24Bは、実施の形態4において、ヘッドライト制御部15が、ヘッドライト2に対して、奥行距離推定部13cが推定した図24Aに示すような奥行距離に基づき照射決定部14が決定した照射範囲に、光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図24Aは、車両100が走行中の道路を上から見た俯瞰図としている。
図24Bは、車両100が走行中の道路を横から見た図としている。図24Bにおいて、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲は「LA」で示されている。
なお、図24Aでは、奥行距離は、右ライトから運転者の推定視認位置までの距離としている。また、図24Bでは、便宜上、車両100を進行方向に対して左側から見た図としているが、図24Bで示されている照射範囲は、右ライトによる照射範囲とする。
【0180】
図24Aおよび図24Bでは、一例として、運転者の顔向きが、上下方向に「正面」の範囲内の向きであり、車両100の周辺の、運転者が向いている方向に、2人の歩行者(歩行者C、歩行者D。図24Aおよび図24Bにて、それぞれ、「W3」、「W4」で示されている)が存在しているとする。歩行者Cとヘッドライト2との距離は「6m」、歩行者Dとヘッドライト2との距離は「22m」であるとする。また、車両100の前方には標識(図24Aおよび図24Bでは図示省略)があり、車両100が走行している車線(ここでいう車線はいわゆるレーン)において、白線が途切れているとする。
この場合、奥行距離推定部13cは、図22に示すような内容の奥行距離推定用情報に基づき、向き情報から判定された運転者の挙動と走行関連情報(ここでは車両情報、地図情報、および、車外情報)とが当該奥行距離推定用情報のNo.3に当てはまるとして、奥行距離を、「交差点の歩道と横断歩道を含む5mの余裕を有する範囲」と推定する。奥行距離推定部13cは、当該「交差点の歩道と横断歩道を含む5mの余裕を有する範囲」を、地図情報に基づき「5m~20m」と算出したとする(図24A参照)。奥行距離推定部13cは、ヘッドライト2から歩行者Cまでの距離が奥行距離の範囲内であるため、奥行距離を「6m」と調整し、「6m」を推定した奥行距離とする。
【0181】
照射決定部14は、奥行距離推定部13cが推定した奥行距離「6m」に基づき、照射範囲を決定する。ここでは、左右方向にφ13度~φ14度の範囲、かつ、上下方向にθ13度~θ14度の範囲を照射範囲と決定したものとする(図24B参照。図24Bでは左右方向の照射範囲は図示省略)。
なお、ここでは、照射決定部14は、照射範囲の上下方向について、奥行距離「6m」に基づき奥行距離垂直角度を算出し、当該奥行距離垂直角度から垂直方向に予め設定された角度分だけ広げた角度の範囲を、照射範囲の上下方向の角度範囲を決定したものとしている。
【0182】
その結果、ヘッドライト制御部15は、運転者が向いている方向に存在している歩行者Cに光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御することができる。運転者は、歩行者Cを視認することができる。
歩行者Dにはヘッドライト2の光は照射されない。
【0183】
なお、仮に歩行者Dがヘッドライト2から「12m」の距離に存在したとする。歩行者Cも歩行者Dも、奥行距離推定部13cが奥行距離推定用情報に基づき推定した奥行距離の範囲内に存在することになる。この場合、奥行距離推定部13cは、例えば、ヘッドライト2から歩行者Cまでの距離とヘッドライト2から歩行者Dまでの距離とを含む範囲を、奥行距離と推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離調整用条件には、例えば、「ヘッドライトからの距離が、奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離の範囲内となる移動体が複数存在する場合、ヘッドライトから当該複数の移動体までの距離を含む範囲を、奥行距離推定用情報に基づき推定された奥行距離の範囲となるよう調整する」との条件が設定されている。
ヘッドライト制御部15は、歩行者Cにも歩行者Dにも光が照射されるよう、ヘッドライト2を制御することになる。
【0184】
このように、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cは、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1aと実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1bとを組み合わせたヘッドライト制御装置とすることで、より多くの状況においてヘッドライト2の制御を行うことができるとともに、運転者が向いている方向において実際に存在する物体があるか否かに基づき、より実際の状況に即した奥行距離を推定する。
これにより、ヘッドライト制御装置1bは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0185】
実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cの動作について説明する。
図25は、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1cは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図25のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1cは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図25フローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1cの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12c、奥行距離推定部13c、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12c、奥行距離推定部13c、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0186】
図25のフローチャートで示す動作について、ステップST1-1、ステップST1-2、ステップST1-3、ステップST3~4の処理内容は、それぞれ、実施の形態2にて説明済みの、図13のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1aの動作のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST1-3、ステップST3~4の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。また、図25のフローチャートで示す動作について、ステップST1-4の処理内容は、実施の形態3にて説明済みの、図20のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1bの動作のステップST1-4の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0187】
奥行距離推定部13cは、ステップST1-1にて向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、ステップST1-2にて車両情報取得部121が取得した車両情報と、ステップST1-3にて地図情報取得部122が取得した地図情報と、ステップST1-4にて車外情報取得部123が取得した車外情報と、奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定する(ステップST2c)。
詳細には、奥行距離推定部13cは、奥行距離推定用情報を用いて奥行距離を推定すると、推定した奥行距離を、車外情報に基づき、奥行距離調整用条件を参照して、調整し、推定した奥行距離を確定させる。
奥行距離推定部13cは、奥行距離情報を、照射決定部14に出力する。
【0188】
ステップST3において、照射決定部14は、ステップST2cにて奥行距離推定部13cが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する(ステップST3)。
【0189】
このように、ヘッドライト制御装置1cは、車内撮像画像に基づき、運転者の向きを検出し、走行関連情報(ここでは車両情報、地図情報、および、車外情報)を取得する。ヘッドライト制御装置1cは、検出した運転者の向きに関する向き情報と、取得した走行関連情報とに基づき、奥行距離を推定する。その際、ヘッドライト制御装置1cは、奥行距離推定用情報を用いて推定した奥行距離を、車外情報と奥行距離調整用条件とに基づき、調整し、調整後の奥行距離情報を推定した奥行情報とする。そして、ヘッドライト制御装置1cは、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定し、ヘッドライト2に対して、決定した照射範囲に光を照射させる。
そのため、ヘッドライト制御装置1cは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0190】
以上の実施の形態4において、例えば、奥行距離推定部13cは、奥行距離を推定するとともに、照射範囲の理想幅を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13cは、奥行距離情報と照射範囲の理想幅に関する情報とを照射決定部14に出力する。
照射決定部14は、奥行距離推定部13cが推定した奥行距離と照射範囲の理想幅とに基づいて照射範囲を決定する。
【0191】
また、以上の実施の形態4において、奥行距離推定部13cは、奥行距離を推定するとともに、ヘッドライト2による理想光量を推定するようにしてもよい。この場合、奥行距離推定部13cは、奥行距離情報を照射決定部14に出力するとともに、推定した理想光量に関する情報を、ヘッドライト制御部15に出力する。
ヘッドライト制御部15は、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲において、奥行距離推定部13cが推定した理想光量で、光を照射させる。
【0192】
以上の実施の形態4において、奥行距離推定部13cは、奥行距離を推定するとともに照射範囲の理想幅および理想光量を推定するようにしてもよい。
【0193】
また、以上の実施の形態4では、ヘッドライト制御装置1cは、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0194】
また、以上の実施の形態4は、実施の形態2と実施の形態3とを組み合わせた実施の形態としたが、これに限らず、実施の形態1と実施の形態3とを組み合わせた実施の形態とすることもできる。この場合、図14で示したヘッドライト制御装置1bの構成例において、ヘッドライト制御装置1bの走行関連情報取得部12bは、車両情報取得部121と車外情報取得部123を備える。奥行距離推定部13bは、向き情報と車両情報と車外情報とに基づき、奥行距離を推定する。詳細には、奥行距離推定部13bは、向き情報と車両情報と車外情報とに基づき、例えば、図22に示したような奥行距離推定用情報の内容のうち、入力情報に地図情報が設定されていない奥行距離推定用情報との比較によって、奥行距離を推定する。
【0195】
実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態4において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1cは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0196】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1cは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図25のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST1-3、ステップST1-4~ステップST4が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12cと、奥行距離推定部13cと、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1cは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0197】
以上のように、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cは、車両100の運転者が撮像された撮像画像(車内撮像画像)に基づき、運転者の向きを検出する向き検出部11と、車両100の走行に関連する走行関連情報を取得する走行関連情報取得部12cと、向き検出部11が検出した運転者の向きと、走行関連情報取得部12cが取得した走行関連情報とに基づき、奥行距離を推定する奥行距離推定部13cと、奥行距離推定部13cが推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2による光の照射範囲を決定する照射決定部14と、ヘッドライト2に対して、照射決定部14が決定した照射範囲に光を照射させるヘッドライト制御部15とを備えるように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1cは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1cは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0198】
詳細には、ヘッドライト制御装置1cにおいて、走行関連情報取得部12cは、走行関連情報として車両100の前方に関する車外情報を取得する車外情報取得部123を有し、奥行距離推定部13cは、向き情報と車両情報と地図情報と車外情報とに基づき、奥行距離を推定する。
そのため、ヘッドライト制御装置1cは、車両100における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライト2の点灯制御において、運転者が実際に、向いている方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
ヘッドライト制御装置1cは、運転者の推定視認位置をより適切に照射することができ、車両100が夜間等に走行する際の運転支援を行うことができる。
【0199】
実施の形態5.
例えば、運転者は、頷く、ヘッドライト2の光が追従する必要がないくらい瞬間的なよそ見をする、または、目を細める等、何かを視認しようとしているわけではなく向きを変えることがあり得る。この場合、運転者の向きは、奥行距離を推定するのに用いるべきではない。
実施の形態5では、運転者の向きが、何かを視認しようとしているときの向きであると推定できるかを示す信頼度に基づき、運転者が向いている方向にヘッドライト2の光を照射させる制御を行うようにする実施の形態について説明する。
【0200】
図26は、実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dの構成例を示す図である。
実施の形態5において、ヘッドライト制御装置1dは、車両100に搭載されていることを想定する。
ヘッドライト制御装置1dは、車両100の運転者の向きに基づいて、車両100に設けられているヘッドライト2の灯火制御を行う。実施の形態5において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向であらわされる。実施の形態5において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向に加え、運転者の身体の向き、言い換えれば、運転者の姿勢、を含むものとしてもよい。
実施の形態5では、ヘッドライト制御装置1dが行う、運転者の向きに基づくヘッドライト2の灯火制御は、例えば、夜間の駐車場、または、夜間の市街地等、車両100の周囲が暗い場所において、ヘッドライト2がオンにされた場合に行われることを想定している。
【0201】
図26において、実施の形態1にて図1を用いて説明したヘッドライト制御装置1と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dは、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1とは、信頼度判定部17を備えた点が異なる。
【0202】
信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度を判定する。実施の形態5において、運転者の向きの「信頼度」とは、何かを視認しようとしているときの向きであると推定できるかの度合いを示し、信頼度が低い場合というのは、検出された運転者の向きの精度が低い可能性がある場合と検出された運転者の向きがヘッドライト2で照射する必要のない向きである場合の両方を含む。なお、検出された運転者の向きの精度が低い可能性がある場合の一例としては、例えば、運転者が目を細めている場合が挙げられる。また、ヘッドライト2で照射する必要のない向きの一例としては、例えば、運転者が頷いている場合の運転者の向き、または、運転者がよそ見をしている場合の運転者の向きが挙げられる。
実施の形態5では、一例として、信頼度判定部17は、運転者の向きの信頼度が「高い」か「低い」かを判定するものとする。
信頼度判定部17は、例えば、予め設定された期間(以下「信頼度判定用期間」という。)遡って向き検出部11によって検出された運転者の向きに基づいて、運転者の向きの信頼度を判定する。信頼度判定部17は、信頼度判定用期間遡って向き検出部11によって検出された運転者の向きを、記憶部16に記憶されている向き情報から判定すればよい。
【0203】
例えば、信頼度判定部17は、信頼度判定用期間で一定以上、運転者の向きが変化した場合、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度は「低い」と判定する。
信頼度判定用期間で一定以上、運転者の向きが変化する場面としては、例えば、運転者が頷いた場面、運転者が瞬間的なよそ見をした場面等が考えられる。
また、例えば、運転者が目を細めている場面で検出された運転者の向きの信頼度も「低い」と考えられる。この場合の信頼度は、信頼度判定用期間で一定以上、運転者の向きが変化したか否かによらず、検出された運転者の向きから常時判定可能である。よって、例えば、信頼度判定部17は、運転者が目を細めている場面での信頼度の判定は、向き検出部11によって検出された運転者の向きに基づき、信頼度判定期間に関係なく常に行ってもよい。
【0204】
信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度が「低い」と判定した場合、当該向きを示す向き情報を、奥行距離推定部13に出力しないようにする。例えば、信頼度判定部17は、向き検出部11から出力された向き情報を、信頼度が「高い」と直近で判定された向き情報に書き換え、書き換え後の向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
奥行距離推定部13は、信頼度判定部17が信頼度は低いと判定した運転者の向きを、奥行距離の推定に用いない。
なお、信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度が「高い」と判定した場合は、向き検出部11から出力された向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
【0205】
図27は、実施の形態5において、信頼度判定部17が、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度が低いと判定する場面の一例を説明するための図である。なお、図27において、ヘッドライト2の光の照射範囲は「LA」で示されている。
例えば、運転者が頷いた場合、運転者の顔向きが、瞬間的に下方に変化する。
この場合、信頼度判定部17は、運転者の向きの信頼度は「低い」と判定し、信頼度が「高い」と直近で判定された向き情報、ここでは、運転者が頷く前の向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
奥行距離推定部13は、運転者が頷く前の向き情報と車両情報と奥行距離推定用情報とを用いて、奥行距離を推定する。
その結果、ヘッドライト2は、ヘッドライト制御部15によって、運転者が頷く前の運転者が向いている方向において、推定視認対象物に光を照射するよう制御される。
【0206】
検出した運転者の向きについて、信頼度が低い運転者の向きについては、奥行距離を推定する対象から除外することで、ヘッドライト制御装置1dは、不要なレベリングを防止し、運転者に対し、当該運転者が何かを視認しようとしたものではない向きに追従するヘッドライト2の光による煩わしさを低減することができる。実施の形態1において、不要なレベリングとは、例えば、運転者が頷いた瞬間に運転者の向きに追従してヘッドライト2が下方向を照射すること、または、運転者が目を細めたときに視線検出精度が下がってしまい運転者が見ていない方向をヘッドライト2が照射することである。
【0207】
実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dの動作について説明する。
図28は、実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1dは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図28のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1dは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図28フローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1dの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、信頼度判定部17、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、信頼度判定部17、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14、および、ヘッドライト制御部15に、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0208】
図28のフローチャートで示す動作について、ステップST1-11、ステップST1-2、ステップST2~4の処理内容は、それぞれ、実施の形態1にて説明済みの、図5のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1の動作のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2~4の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0209】
信頼度判定部17は、ステップST1-11にて向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度を判定する(ステップST1-12)。
信頼度判定部17は、例えば、信頼度判定用期間遡って向き検出部11によって検出された運転者の向きに基づいて、運転者の向きの信頼度を判定する。
信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度が「低い」と判定した場合、向き検出部11から出力された向き情報を、奥行距離推定部13に出力しないようにする。例えば、信頼度判定部17は、向き検出部11から出力された向き情報を、信頼度が「高い」と直近で判定された向き情報に書き換え、書き換え後の向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度が「高い」と判定した場合は、向き検出部11から出力された向き情報を、奥行距離推定部13に出力する。
【0210】
このように、ヘッドライト制御装置1dは、検出した運転者の向きの信頼度を判定し、信頼度が低いと判定した運転者の向きは、奥行距離推定用情報を用いた奥行距離の推定に用いないようにする。
検出した運転者の向きについて、信頼度が低い運転者の向きについては、奥行距離を推定する対象から除外することで、ヘッドライト制御装置1dは、不要なレベリングを防止し、運転者に対し、当該運転者が何かを視認しようとしたものではない向きに追従するヘッドライト2の光による煩わしさを低減することができる。
【0211】
なお、以上の実施の形態5では、信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の向きの信頼度を判定するものとしたが、これは一例に過ぎず、信頼度判定部17は、向き検出部11によって検出された運転者の顔のパーツの信頼度を判定してもよい。この場合、例えば、向き検出部11は、運転者の向きの検出に用いた運転者の顔のパーツに関する情報を、向き情報とあわせて信頼度判定部17に出力する。
信頼度判定部17は、検出された運転者の顔のパーツの信頼度が「低い」と判定した場合、例えば、信頼度が「高い」と直近で判定された運転者の顔のパーツに基づいて、運転者の向きを再検出させる。信頼度判定部17が当該運転者の向きの再検出を行ってもよい。なお、信頼度判定部17は、例えば、検出された運転者の顔のパーツの一部が取得できていない場合である。
【0212】
また、以上の実施の形態5では、ヘッドライト制御装置1d、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0213】
また、以上の実施の形態5は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1において、信頼度判定部17を備えるものとしたが、これは一例に過ぎない。例えば、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1a、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1b、または実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cが、信頼度判定部17を備える構成としてもよい。
【0214】
実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態5において、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1dは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きも関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0215】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1dは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図28のステップST1-11~ステップST1-12、ステップST1-2、ステップST2~ステップST4が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、信頼度判定部17と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14と、ヘッドライト制御部15と、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1dは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0216】
以上のように、実施の形態5に係るヘッドライト制御装置1dは、信頼度判定用期間遡って向き検出部11によって検出された運転者の向きに基づき、向き検出部11が検出した運転者の向きの信頼度を判定する信頼度判定部17を備え、奥行距離推定部13は、信頼度判定部17が信頼度は低いと判定した運転者の向きを、奥行距離の推定に用いないように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1dは、不要なレベリングを防止し、運転者に対し、当該運転者が何かを視認しようとしたものではない向きに追従するヘッドライト2の光による煩わしさを低減することができる。
【0217】
実施の形態6.
実施の形態6では、ヘッドライト制御装置が、光の強さが異なる複数の照射範囲を設定する実施の形態について説明する。
【0218】
図29は、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eの構成例を示す図である。
実施の形態6において、ヘッドライト制御装置1eは、車両100に搭載されていることを想定する。
ヘッドライト制御装置1eは、車両100の運転者の向きに基づいて、車両100に設けられているヘッドライト2の灯火制御を行う。実施の形態6において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向であらわされる。実施の形態6において、「運転者の向き」は、運転者の顔向き、または、運転者の視線方向に加え、運転者の身体の向き、言い換えれば、運転者の姿勢、を含むものとしてもよい。
実施の形態6では、ヘッドライト制御装置1eが行う、運転者の向きに基づくヘッドライト2の灯火制御は、例えば、夜間の駐車場、または、夜間の市街地等、車両100の周囲が暗い場所において、ヘッドライト2がオンにされた場合に行われることを想定している。
【0219】
図29において、実施の形態1にて図1を用いて説明したヘッドライト制御装置1と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eにおいて、照射決定部14aおよびヘッドライト制御部15aの具体的な動作が、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1における照射決定部14およびヘッドライト制御部15の具体的な動作とは異なる。
【0220】
照射決定部14aは、ヘッドライト2に対して照射させる光の強さが異なる複数の照射範囲を設定する。実施の形態6において、ヘッドライト2が照射する光が強いとは、ヘッドライト2が照射する光の光量が大きいことをいう。
実施の形態6では、一例として、照射決定部14aは、ヘッドライト2による照射光量を大きくする照射範囲(第1照射範囲とする)と、ヘッドライト2による照射光量を小さくする照射範囲(第2照射範囲とする)の、ヘッドライト2による照射光量を異ならせる2つの照射範囲を設定するものとする。
第1照射範囲における照射光量は、適宜設定可能であるが、運転者が当該第1照射範囲に存在し得る推定視認対象物をじゅうぶんに視認可能な程度の照射光量を有するものとする。第2照射範囲における照射光量は、第1照射範囲における照射光量よりも小さく、当該第2照射範囲に存在し得る歩行者または他車両に対してグレアを与えない程度の小さな照射光量とする。
【0221】
照射決定部14aは、第1照射範囲の上下方向について、例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲の上下方向のうち、予め設定されている、第1照射範囲の上下方向の上限角度までとする。照射決定部14aは、例えば、奥行距離に基づいて算出した照射範囲の上下方向の中央から垂直方向に上限角度まで広げた範囲を、第1照射範囲の上下方向とする。照射決定部14aは、奥行距離に基づいて算出した照射範囲の上下方向のうち、第1照射範囲以外の範囲を、第2照射範囲の左右方向とする。
また、照射決定部14aは、第1照射範囲の左右方向について、例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲の水平方向のうち、予め設定されている、第1照射範囲の左右方向の上限角度までとする。照射決定部14aは、例えば、奥行距離に基づいて算出した照射範囲の左右方向の中央から水平方向に上限角度まで広げた範囲を、第1照射範囲の左右方向とする。照射決定部14aは、奥行距離に基づいて算出した照射範囲の左右方向のうち、第1照射範囲以外の範囲を、第2照射範囲の左右方向とする。
なお、第1照射範囲の上下方向の上限角度、および、左右方向の上限角度は、例えば、管理者等によって設定され、照射決定部14aが参照可能な場所に記憶されている。
【0222】
例えば、第1照射範囲の上下方向の上限角度を「5度」、左右方向の上限角度を「8度」とする。また、例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲の上下方向および左右方向が、それぞれ、ヘッドライト2の設置位置を基準(0度)とした「3度~13度」、「0.5度~12.5度」の範囲であったとする。この場合、照射決定部14aは、照射範囲の上下方向の中央「8度」から垂直方向に5度となるまで広げた「5.5度~10.5度」の範囲を、第1照射範囲の上下方向に決定し、照射範囲の左右方向の中央「6.5度」から水平方向に8度となるまで広げた「2.5度~8.5度」の範囲を、第1照射範囲の左右方向に決定する。奥行距離推定部13は、ヘッドライト2の設置位置を基準として垂直方向に「3度~5.5度」の範囲、および、「10.5度~13度」の範囲を、第2照射範囲の上下方向に決定し、ヘッドライト2の設置位置を基準として水平方向に「0.5度~5.5度」の範囲、および、「10.5度~12.5度」の範囲を、第2照射範囲の水平方向に決定する。
【0223】
照射決定部14aは、決定した照射範囲に関する照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。
照射決定部14aが出力する照射情報は、第1照射範囲の上下方向の角度範囲および左右方向の角度範囲を示す情報と、第2照射範囲の上下方向の角度範囲および左右方向の角度範囲を示す情報とを含む。
【0224】
ヘッドライト制御部15aは、ヘッドライト2に対して、照射決定部14aが決定した照射範囲に光を照射させる。
詳細には、ヘッドライト制御部15aは、ヘッドライト2に対して、照射範囲のうち、照射決定部14aが設定した第2照射範囲には、照射決定部14aが設定した第1照射範囲に照射させる光よりも小さい照射光量の光を照射させる。
【0225】
ここで、図30は、実施の形態6において、ヘッドライト制御部15aが、ヘッドライト2に対して、照射決定部14aが決定した第1照射範囲および第2照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図30Aは、第1照射範囲および第2照射範囲に光が照射されている様子を車両100が走行中の道路の横から見た図であり、図30Bは、第1照射範囲および第2照射範囲に光が照射されている様子を車両100側から見た図としている。
図30において、運転者は「D」で示され、ヘッドライト2による光の照射範囲のうち、第1照射範囲は「LA1」で示され、第2照射範囲は「LA2」で示されている。なお、図30Bでは、車両100等の図示は省略している。
【0226】
例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離が、「5~15m」、または、「80~100m」等、幅を持たせた距離である場合、仮に、照射決定部14aが、奥行距離の幅の範囲内に光が照射されるよう照射範囲を決定すると、ヘッドライト制御部15aがヘッドライト2に対して照射させる光の照射範囲の幅が大きくなってしまう。そうすると、ヘッドライト制御装置1dは、歩行者または他車両の運転者に対してグレアを与えてしまう可能性がある。
そこで、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1dは、ヘッドライト2による照射光量を大きくする第1照射範囲と、ヘッドライト2による照射光量を小さくする第2照射範囲を設定し、ヘッドライト2に対して、照射範囲のうち、照射決定部14aが設定した第2照射範囲には、照射決定部14aが設定した第1照射範囲に照射させる光よりも小さい照射光量の光を照射させる。
これにより、ヘッドライト制御装置1dは、歩行者または他車両の運転者に対して与えてしまうグレアを低減しつつ、車両100の運転者が向いている方向において当該運転者が推定視認対象物を視認できるよう、光を照射させることができる。
【0227】
なお、上述したような、照射決定部14aによる第1照射範囲および第2照射範囲の決定方法は、一例に過ぎない。照射決定部14aは、その他の方法で、第1照射範囲および第2照射範囲を決定してもよい。
例えば、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲のうち、第1照射範囲の上下方向とする割合と、第1照射範囲の左右方向とする割合とがそれぞれ設定されており、照射決定部14aは、予め設定されている割合に基づいて、第1照射範囲の上下方向および左右方向を設定してもよい。
【0228】
また、例えば、照射決定部14aは、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて算出した照射範囲のうち、どれぐらいの範囲を第1照射範囲の上下方向、および、左右方向とするかを、奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と走行関連情報とから推定される車両100の走行状態に基づいて設定してもよい。例えば、奥行距離推定部13は、車両100の走行状態が駐停車中の状態であれば、第1照射範囲の上下方向の上限角度および左右方向の上限角度を「10度」とし、車両100の走行状態が走行中であれば、第1照射範囲の上下方向の上限角度および左右方向の上限角度を「5度」として、第1照射範囲の上下方向および左右方向を設定してもよい。なお、車両100の走行状態がどのような状態である場合に、第1照射範囲の上下方向および左右方向をどれぐらいとするかは、予め決められている。
この場合、例えば、実施の形態1にて図3を用いて説明したような、車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物が対応付けられた情報が予め管理者等によって生成され、照射決定部14aが参照可能な場所に記憶されている。また、奥行距離推定部13は、奥行距離情報とともに、向き情報と走行関連情報とを、照射決定部14aに出力する。
【0229】
また、例えば、奥行距離推定部13が奥行距離を推定するとともに照射範囲の理想幅を推定する場合、照射決定部14aは、照射範囲の理想幅に応じた照射範囲を第1照射範囲とし、奥行距離に基づく照射範囲のうち、第1照射範囲以外の範囲を第2照射範囲としてもよい。
【0230】
実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eの動作について説明する。
図31は、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1eは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図31のフローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1eは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図31のフローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1eの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14a、および、ヘッドライト制御部15aに、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14a、および、ヘッドライト制御部15aに、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0231】
図31のフローチャートで示す動作について、ステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2の処理内容は、それぞれ、実施の形態1にて説明済みの、図5のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1の動作のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2の処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0232】
照射決定部14aは、ステップST2にて奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づき、ヘッドライト2による照射光量を大きくする第1照射範囲と、ヘッドライト2による照射光量を小さくする第2照射範囲を設定する(ステップST3a)。
照射決定部14aは、決定した照射範囲に関する照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。
【0233】
ヘッドライト制御部15aは、ヘッドライト2に対して、ステップST3aにて照射決定部14aが決定した照射範囲に光を照射させる(ステップST4a)。
詳細には、ヘッドライト制御部15aは、ヘッドライト2に対して、照射範囲のうち、照射決定部14aが設定した第2照射範囲には、照射決定部14aが設定した第1照射範囲に照射させる光よりも小さい照射光量の光を照射させる。
【0234】
このように、ヘッドライト制御装置1eは、奥行距離に基づき決定する照射範囲において、第1照射範囲と、ヘッドライト2による照射光量を第1照射範囲よりも小さくする第2照射範囲とを設定し、ヘッドライト2に対して、照射範囲のうち、第2照射範囲には、1照射範囲に照射させる光よりも小さい照射光量の光を照射させる。
そのため、ヘッドライト制御装置1eは、歩行者または他車両の運転者に対して与えてしまうグレアを低減しつつ、車両100の運転者が向いている方向において当該運転者が推定視認対象物を視認できるよう、光を照射させることができる。
【0235】
なお、以上の実施の形態6において、照射範囲の位置は、運転者の向きの変化に追従して変化させられるが、ヘッドライト制御装置1eは、運転者の向きの変化に追従して変化させる第1照射範囲の位置の移動速度と、運転者の向きの変化に追従して変化させる第2照射範囲の位置の移動速度とを異ならせてもよい。例えば、ヘッドライト制御装置1eにおいて、照射決定部14aは、運転者の向きの変化に追従して変化させる第1照射範囲の移動速度は、運転者の向きの短時間平均により制御し、運転者の向きの変化に追従して変化させる第2照射範囲の移動速度は、運転者の向きの長時間平均により制御してもよい。
これにより、ヘッドライト制御装置1eは、運転者が向かなくなった方向でもしばらくは第2照射範囲の範囲内とでき、ヘッドライト2の光が照射されるようにできる。その結果、ヘッドライト制御装置1eは、例えば、運転者が向かなくなった方向において歩行者の飛び出しがあった場合等に、当該歩行者にヘッドライト2の光を照射させ、運転者に対して歩行者を早期発見させることができる。
【0236】
なお、以上の実施の形態6では、照射決定部14aは、ヘッドライト2による照射光量が異なる2つの照射範囲を設定するものとしたが、これは一例に過ぎず、照射決定部14aは、ヘッドライト2による照射光量が段階的に異なる3つ以上の照射範囲を設定してもよい。
【0237】
また、以上の実施の形態6では、照射決定部14aは、照射範囲の上下方向、および、左右方向に対して、それぞれ、照射光量が異なる2つの照射範囲(第1照射範囲および第2照射範囲)を設定するものとしたが、これは一例に過ぎない。例えば、照射決定部14aは、照射範囲の上下方向のみ、照射光量が異なる照射範囲を設定してもよいし、照射範囲の左右方向のみ、照射光量が異なる照射範囲を設定してもよい。
【0238】
また、以上の実施の形態6では、ヘッドライト制御装置1eは、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0239】
また、以上の実施の形態6は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置1において、第1照射範囲および第2照射範囲を設定するものとしたが、これは一例に過ぎない。例えば、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置1a、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1b、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1c、または、実施の形態5にかかるヘッドライト制御装置1dにおいて、第1照射範囲および第2照射範囲を設定してもよい。
なお、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置1b、および、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置1cは、奥行距離を、実際に運転者の向きに存在している物体を考慮して調整する。そのため、例えば、ヘッドライト2と運転者の向きに存在している移動体との距離が奥行距離と推定された場合、奥行距離は、幅を有していない距離となる可能性が高い。この場合、ヘッドライト制御装置1b、1cが、ヘッドライト2に対して照射させる光の照射範囲の幅が大きくならないと想定される。しかし、例えば、車外撮像装置またはレーダで測定された物体の位置には、測定誤差が含まれ得る。そこで、例えば、ヘッドライト制御装置1b、1cは、当該測定誤差の範囲を、第2照射範囲として設定するようにしてもよい。
【0240】
実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態6において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1eは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0241】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1eは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図31のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2~ステップST4aが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14aと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1eは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0242】
以上のように、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eは、照射決定部14aが、照射範囲において、第1照射範囲とヘッドライト2による照射光量を第1照射範囲よりも小さくする第2照射範囲とを設定し、ヘッドライト制御部15aは、ヘッドライト2に対して、照射範囲のうち、照射決定部14aが設定した第2照射範囲には、照射決定部14aが設定した第1照射範囲に照射させる光よりも小さい照射光量の光を照射させるように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1eは、歩行者または他車両の運転者に対して与えてしまうグレアを低減しつつ、車両100の運転者が向いている方向において当該運転者が推定視認対象物を視認できるよう、光を照射させることができる。
【0243】
実施の形態7.
実施の形態7では、ヘッドライト制御装置が、光の強さが異なる複数の照射範囲を設定する際、光の弱い照射範囲について、実施の形態6で設定していた範囲よりもさらに広げる実施の形態について説明する。
【0244】
図32は、実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの構成例を示す図である。
実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの構成例について、図29を用いて説明した実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eの構成例と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの構成例は、図29を用いて説明した実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eとは、照射決定部14bが周囲確認判定部141を備えるようにした点が異なる。
【0245】
周囲確認判定部141は、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する情報と走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報(ここでは車両情報取得部121が取得した車両関連情報)とに基づき、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定し、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、照射決定部14bが設定した第2照射範囲を広げる。
詳細には、例えば、周囲確認判定部141は、向き情報と、走行関連情報(ここでは車両情報)と、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定するための周囲確認判定用条件とをつきあわせることで、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定する。
【0246】
ここで、図33は、実施の形態7において、周囲確認判定部141が、運転者が周囲の確認を行っているか否かの判定に用いる周囲確認判定用条件の内容の一例を説明するための図である。
周囲確認判定用条件は、例えば、運転者の挙動と車両情報とが対応付けられたテーブルである。周囲確認判定用条件は、予め、管理者等によって生成され、周囲確認判定部141が参照可能な場所に記憶されている。
周囲確認判定部141は、向き情報と車両情報とから運転者の挙動および車速等を判定し、判定した運転者の挙動および車速等が、周囲確認判定用条件と一致した場合、運転者は周囲の確認を行っていると判定する。
周囲確認判定部141は、判定した運転者の挙動および車速等が、周囲確認判定用条件と一致しない場合は、運転者は周囲の確認を行っていないと判定する。
【0247】
そして、周囲確認判定部141は、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、照射決定部14bが設定した第2照射範囲を広げる。
なお、照射決定部14bは、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eが備える照射決定部14aと同様の方法で、第1照射範囲および第2照射範囲を設定すればよいため、重複した説明を省略する。
ここでは、例えば、周囲確認判定部141は、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、第2照射範囲の左右方向を、ヘッドライト2が光を照射可能な領域、言い換えれば、ハイビーム照射可能領域、ロービーム照射可能領域、および、補助光照射可能領域の限界まで、広げる。
【0248】
照射決定部14bは、照射決定部14bが設定した第1照射範囲を示す情報と、周囲確認判定部141が第2照射範囲を広げた場合は、広げられた後の第2照射範囲を示す情報と含む照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。
周囲確認判定部141が第2照射範囲を広げなかった場合は、照射決定部14bは、照射決定部14bが設定した第1照射範囲および第2照射範囲を示す情報を含む照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。
【0249】
図34は、実施の形態7において、周囲確認判定部141が、照射決定部14bが設定した第2照射範囲を広げた後の、照射範囲に光を照射させた様子の一例を説明するための図である。
図34は、第1照射範囲および第2照射範囲に光が照射されている様子を車両100側から見た図としている。
図34において、第1照射範囲は「LA1」で示され、第2照射範囲は「LA2」で示されている。
なお、周囲確認判定部141が第2照射範囲を広げなかった場合、光が照射される、照射決定部14bが設定した第1照射範囲および第2照射範囲は、実施の形態6にて図30Bで示したような範囲である。
【0250】
周囲確認判定部141が第2照射範囲を広げることで、図34に示すように、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ている方向における推定視認対象物のみならず、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所も明るくすることができる。
なお、ヘッドライト制御装置1fは、第2照射範囲、言い換えれば、第1照射範囲よりも小さい、歩行者または他車両の運転者等にグレアを与えない程度の照射光量が照射される範囲を広げる。よって、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所を明るくするとともに、運転者が見ていない方向において、歩行者または他車両の運転者等にグレアを与えないようにできる。
【0251】
図35および図36は、実施の形態7において、ヘッドライト制御装置1fがヘッドライト2に対して照射させる光の照射範囲の一例について説明するための図である。
図35は、車両100の周囲100の状況を上から見た俯瞰図である。
図36Bは、図35に示すような車両100の周囲の状況において、ヘッドライト制御装置1fがヘッドライト2に対して照射させる光の照射範囲の一例を示す図であり、図36Aは、図35に示すような車両100の周囲の状況において、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eがヘッドライト2に対して照射させる光の照射範囲の一例を示す図である。
【0252】
例えば、今、車両100は地下駐車場を走行しており、車両100の前方において、車両100の進行方向に対して、車両100が走行している道路の左右には、第1停車車両(図35にて「C1」で示されている)と第2停車車両(図35にて「C2」で示されている)が停車しているとする。また、車両100からみて、右前方の第1停車車両の陰から、歩行者(図35にて「W」で示されている)が出てこようとしている。
運転者は、車両100から見て左前方を向いている。
【0253】
この場合、例えば、実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eでは、図36Aに示すように、推定された奥行距離に基づいて決定された照射範囲において、当該照射範囲のうちの第2照射範囲は、運転者の向いている方向、すなわち、車両100の左前方に設定されるようになっていた。そうすると、歩行者(図36Aにおいて「W」で示されている)が出てこようとしている車両100の右前方は、運転者が向いている方向とは反対側となり、照射範囲は設定されない。その結果、歩行者付近は暗くなってしまい、運転者は歩行者の発見が遅れてしまう。
【0254】
これに対し、実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fは、図36Bに示すように、推定された奥行距離に基づいて決定された照射範囲では車両100の左前方に設定される第2照射範囲について、照射可能領域の限界まで、左右方向を広げる。これにより、歩行者(図36Bにおいて「W」で示されている)が出てこようとしている車両100の右前方が、照射範囲、詳細には、第2照射範囲に設定されることになる。その結果、歩行者付近にもヘッドライト2による光が照射されるようになり、運転者は、歩行者の早期発見が可能となる。
【0255】
なお、周囲確認判定部141がどこまで第2照射範囲を広げるかは、適宜設定可能である。
以上の実施の形態7では、周囲確認判定部141は、ヘッドライト2が光を照射可能な領域の限界まで、第2照射範囲の左右方向を広げるものとしたが、これは一例に過ぎず、周囲確認判定部141は、予め設定された範囲だけ、第2照射範囲の左右方向を広げてもよい。周囲確認判定部141は、照射決定部14bが、奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づいて決定した第2照射範囲よりも広げるようになっていればよい。
【0256】
また、周囲確認判定部141は、どれぐらい第2照射範囲を広げるかを、奥行距離が導き出される根拠となる、運転者の挙動と走行関連情報とから推定される車両100の走行状態(例えば、駐停車中、または、交差点右左折中)または車両100の車速に基づいて設定してもよい。この場合、例えば、実施の形態1にて図3を用いて説明したような、車両100の走行状態および運転者の推定視認対象物が対応付けられた情報が予め管理者等によって生成され、周囲確認判定部141が参照可能な場所に記憶されている。また、奥行距離推定部13は、奥行距離情報とともに、向き情報と走行関連情報とを、照射決定部14bに出力する。
【0257】
また、以上の実施の形態7では、周囲確認判定部141は、第2照射範囲の左右方向にのみ、当該第2照射範囲を広げるものとしたが、これは一例に過ぎず、周囲確認判定部141は、当該第2照射範囲の上下方向に、当該第2照射範囲を広げてもよい。
【0258】
実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの動作について説明する。
図37は、実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの動作について説明するためのフローチャートである。
ヘッドライト制御装置1fは、例えば、ヘッドライト2がオンの状態になった場合、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を行うと判定し、図37フローチャートで示すような動作を開始する。ヘッドライト制御装置1fは、例えば、ヘッドライト2がオフの状態になるまで、または、車両100の電源がオフにされるまで、図37のフローチャートで示すような動作を繰り返す。
例えば、ヘッドライト制御装置1fの制御部(図示省略)は、車両100に搭載されているヘッドライトスイッチから、ヘッドライト2の状態を示す情報を取得し、ヘッドライト2がオンの状態であるか否かを判定する。制御部は、ヘッドライト2がオンの状態であると判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を開始すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14b、および、ヘッドライト制御部15aに、ヘッドライト2の点灯制御開始を指示する情報を出力する。
また、制御部は、ヘッドライト2がオフの状態ある、または、車両100がオフにされたと判定すると、運転者の向きに基づくヘッドライト2の点灯制御を終了すると判定し、向き検出部11、走行関連情報取得部12、奥行距離推定部13、照射決定部14b、および、ヘッドライト制御部15aに、ヘッドライト2の点灯制御終了を指示する情報を出力する。
【0259】
図37のフローチャートで示す動作について、ステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2~ステップST3a、ステップST4aの処理内容は、それぞれ、実施の形態6にて説明済みの、図31のフローチャートで示すヘッドライト制御装置1eの動作のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2~ステップST3a、ステップST4aの処理内容と同様であるため、重複した説明を省略する。
実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fの動作は、図31のフローチャートを用いて説明した実施の形態6に係るヘッドライト制御装置1eの動作から、ステップST3a-1~ステップST3a-2の処理が追加になっている。
【0260】
ステップST3aにて、照射決定部14aが、ステップST2にて奥行距離推定部13が推定した奥行距離に基づき、第1照射範囲と第2照射範囲を設定すると、周囲確認判定部141は、ステップST1-1にて向き検出部11が検出した運転者の向きに関する向き情報と、ステップST1-2にて車両情報取得部121が取得した車両関連情報とに基づき、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定する(ステップST3a-1)。
【0261】
ステップST3a-1にて、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合(ステップST3a-1の“YES”の場合)、周囲確認判定部141は、ステップST3aにて照射決定部14bが設定した第2照射範囲を広げる(ステップST3a-2)。
照射決定部14bは、ステップST3aにて設定した第1照射範囲を示す情報と、ステップST3a-2にて周囲確認判定部141によって広げられた後の第2照射範囲を示す情報と含む照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。
【0262】
ステップST3a-1にて、運転者が周囲の確認を行っていないと判定した場合(ステップST3a-1の“NO”の場合)、照射決定部14bは、ステップST3aにて設定した第1照射範囲および第2照射範囲を示す情報を含む照射情報を、ヘッドライト制御部15aに出力する。そして、ヘッドライト制御装置1bの動作は、ステップST3a-2の処理をスキップしてステップST4aの処理へ進む。
【0263】
このように、ヘッドライト制御装置1fは、運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報(ここでは車両情報)とに基づき、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定し、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、第2照射範囲を広げる。
そのため、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ている方向における推定視認対象物のみならず、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所も明るくすることができる。また、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所を明るくするとともに、運転者が見ていない方向において、歩行者または他車両の運転者等にグレアを与えないようにできる。
【0264】
なお、以上の実施の形態7では、ヘッドライト制御装置1fは、車両100に搭載される車載装置とし、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部とは、車載装置に備えられているものとした。これに限らず、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部のうち、一部が車両100の車載装置に備えられるものとし、その他が当該車載装置とネットワークを介して接続されるサーバに備えられてもよい。また、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の全部がサーバに備えられてもよい。
【0265】
実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fのハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明したヘッドライト制御装置1のハードウェア構成と同様であるため、図示を省略する。
実施の形態7において、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の機能は、処理回路1001により実現される。すなわち、ヘッドライト制御装置1fは、車内撮像装置3から取得した車内撮像画像に基づいて検出した運転者の向きに関する向き情報と走行関連情報とに基づいて奥行距離を推定し、推定した奥行距離に基づいて、ヘッドライト2の点灯制御を行うための処理回路1001を備える。
処理回路1001は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ1005に格納されるプログラムを実行するプロセッサ1004であってもよい。
【0266】
処理回路1001は、メモリ1005に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の機能を実行する。すなわち、ヘッドライト制御装置1fは、処理回路1001により実行されるときに、上述の図37のステップST1-1、ステップST1-2、ステップST2~ステップST4aが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1005を備える。また、メモリ1005に記憶されたプログラムは、向き検出部11と、走行関連情報取得部12と、奥行距離推定部13と、照射決定部14bと、ヘッドライト制御部15aと、図示しない制御部の処理の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
記憶部16は、例えば、メモリ1005で構成される。
ヘッドライト制御装置1fは、ヘッドライト2、車内撮像装置3、または、走行関連情報取得装置4等の装置と、有線通信または無線通信を行う入力インタフェース装置1002および出力インタフェース装置1003を備える。
【0267】
以上のように、実施の形態7に係るヘッドライト制御装置1fは、照射決定部14bが、向き検出部11が検出した運転者の向きに関する情報と走行関連情報取得部12が取得した走行関連情報とに基づき、運転者が周囲の確認を行っているか否かを判定し、運転者が周囲の確認を行っていると判定した場合、第2照射範囲を広げる周囲確認判定部141を有するように構成した。
そのため、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ている方向における推定視認対象物のみならず、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所も明るくすることができる。また、ヘッドライト制御装置1fは、運転者が見ていない可能性が高い物体が存在し得る場所を明るくするとともに、運転者が見ていない方向において、歩行者または他車両の運転者等にグレアを与えないようにできる。
【0268】
なお、以上の実施の形態1~7では、奥行距離推定部13、13a、13b、13cは、奥行距離推定用情報を用いて、奥行距離を推定するようにしていた。しかし、これは一例に過ぎない。
例えば、奥行距離推定部13、13a、13b、13cは、向き情報を入力とし、奥行距離を出力する学習済みのモデル(以下「機械学習モデル」という。)を用いて、奥行距離を推定してもよい。
機械学習モデルは、向き情報を入力とし、奥行距離および照射範囲の理想幅を出力するモデルであってもよいし、向き情報を入力とし、奥行距離および理想光量を出力するモデルであってもよいし、向き情報を入力とし、奥行距離、照射範囲の理想幅、および、理想光量を出力するモデルであってもよい。
例えば、管理者等は、車両100を試走させて向き情報と、試走中に運転者が視認しようとした対象物までの奥行距離の情報とを収集し、収集した向き情報および奥行距離の情報を学習用データとして、学習装置に機械学習モデルを生成させておく。生成された機械学習モデルは、ヘッドライト制御装置1、1a、1b、1c、1d、1e、1fが参照可能な場所に記憶される。
また、機械学習モデルは、向き情報だけでなく、地図情報、車両情報、または、車外情報も入力とし、奥行距離および照射範囲の理想幅を出力するモデルであってもよい。
ヘッドライト制御装置1、1a、1b、1c、1d、1e、1fは、機械学習モデルを用いて奥行距離を推定するようにすることで、向き情報のバリエーションにより対応した奥行距離を推定できる。
【0269】
また、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本開示に係るヘッドライト制御装置は、車両における、運転者が向いている方向に基づくヘッドライトの点灯制御において、運転者が実際に顔向きまたは視線方向のどれぐらい先を視認しようとしているかを考慮した点灯制御ができる。
【符号の説明】
【0271】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f ヘッドライト制御装置、11 向き検出部、12,12a,12b,12c 走行関連情報取得部、121 車両情報取得部、122 地図情報取得部、123 車外情報取得部、13,13a,13b,13c 奥行距離推定部、14,14a,14b 照射決定部、141 周囲確認判定部、15,15a ヘッドライト制御部、16 記憶部、17 信頼度判定部、2 ヘッドライト、3 車内撮像装置、4 走行関連情報取得装置、100 車両、1001 処理回路、1002 入力インタフェース装置、1003 出力インタフェース装置、1004 プロセッサ、1005 メモリ。
図1
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