(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】灯火制御装置および灯火制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/24 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
B60Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2024549014
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2022036640
(87)【国際公開番号】W WO2024069916
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達矢
(72)【発明者】
【氏名】下谷 光生
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-100852(JP,A)
【文献】特開2018-69752(JP,A)
【文献】国際公開第2020/208818(WO,A1)
【文献】特開2007-38878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の障害物を検出する障害物検出部と、
前記自車両のドライバが前記障害物を認知したか否かを判断するドライバ認知状態判断部と、
前記自車両の灯火装置が発する光の照射方向および照射態様を制御する灯火制御部と
を備え、
前記灯火制御部は、前記障害物が検出されると前記障害物に光を照射し、前記ドライバが前記障害物を認知したか否かの判断結果に応じて前記障害物に照射する光の照射態様を制御する、
灯火制御装置。
【請求項2】
前記灯火制御部は、前記障害物が検出されると前記障害物に照射する光の照射態様を第1の照射態様に設定して前記障害物への光の照射を開始し、前記ドライバが前記障害物を認知したと判断されると前記障害物に照射する光の照射態様を第2の照射態様に変更し、
前記第2の照射態様は、前記第1の照射態様よりも前記障害物が検出される前における前記灯火装置の光の照射態様に近い、
請求項1に記載の灯火制御装置。
【請求項3】
前記障害物への光の照射を開始する前に前記ドライバが前記障害物を認知したと判断された場合、前記灯火制御部は、前記障害物に照射する光の照射態様を前記第2の照射態様に設定して前記障害物への光の照射を開始する、
請求項2に記載の灯火制御装置。
【請求項4】
前記灯火制御部は、前記第1の照射態様で前記障害物に光を照射してから一定時間経過しても前記ドライバが前記障害物を認知していないと判断されると前記障害物に照射する光の照射態様を第3の照射態様に変更し、
前記第3の照射態様は、前記第1の照射態様よりも前記障害物が検出される前における前記灯火装置の光の照射態様から大きく相違する、
請求項2に記載の灯火制御装置。
【請求項5】
前記灯火制御部は、前記障害物が検出されると前記障害物に照射する光の照射態様を第1の照射態様に設定して前記障害物への光の照射を開始し、前記第1の照射態様で前記障害物に光を照射してから一定時間経過しても前記ドライバが前記障害物を認知していないと判断されると前記障害物に照射する光の照射態様を第2の照射態様に変更し、
前記第2の照射態様は、前記第1の照射態様よりも前記障害物が検出される前における前記灯火装置の光の照射態様から大きく相違する、
請求項1に記載の灯火制御装置。
【請求項6】
前記灯火制御部は、前記障害物が前記自車両の前照灯の照射範囲から外れたときは、前記障害物に対する光の照射を終了する、
請求項1に記載の灯火制御装置。
【請求項7】
前記灯火制御部は、光の色調、照度および配光、光の動的変化の度合い、ならびに投影される照射オブジェクトのうち少なくとも1つを制御することで、前記障害物に照射する光の照射態様を制御する
請求項1に記載の灯火制御装置。
【請求項8】
前記照射オブジェクトは、図形または文字である
請求項7に記載の灯火制御装置。
【請求項9】
前記第1の照射態様は動的に変化する照射態様であり、前記第2の照射態様は静的な照射態様である、
請求項2に記載の灯火制御装置。
【請求項10】
前記第2の照射態様は、前記障害物が検出される前における前記灯火装置の光の照射態様と同じである、
請求項2に記載の灯火制御装置。
【請求項11】
灯火制御装置の障害物検出部が、自車両周辺の障害物を検出し、
前記灯火制御装置のドライバ認知状態判断部が、前記自車両のドライバが前記障害物を認知したか否かを判断し、
前記灯火制御装置の灯火制御部が、前記自車両の灯火装置が発する光の照射方向および照射態様を制御し、
前記灯火制御部は、前記障害物が検出されると前記障害物に光を照射し、前記ドライバが前記障害物を認知したか否かの判断結果に応じて前記障害物に照射する光の照射態様を制御する、
灯火制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の灯火装置を制御する灯火制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前方に検出された障害物にその存在を強調する派手な(目立つ)照射態様で光を照射することにより、ドライバに障害物の存在を知らせることで、運転を支援する灯火制御装置が提案されている(例えば下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の灯火制御装置は、ドライバが障害物を認知した後も、派手な照射態様での障害物への光の照射を継続する。しかし、派手な照射態様の障害物への光の照射は、既に障害物を認知したドライバにとって煩わしい。
【0005】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、障害物に対するドライバの認知状態に適した照射態様で障害物に光を照射することが可能な灯火制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る灯火制御装置は、自車両周辺の障害物を検出する障害物検出部と、自車両のドライバが障害物を認知したか否かを判断するドライバ認知状態判断部と、自車両の灯火装置が発する光の照射方向および照射態様を制御する灯火制御部とを備え、灯火制御部は、障害物が検出されると障害物に光を照射し、ドライバが障害物を認知したか否かの判断結果に応じて障害物に照射する光の照射態様を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、障害物に対するドライバの認知状態に応じた照射態様で障害物に光を照射することができる。
【0008】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1~3に係る灯火制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】障害物の検出前における灯火装置の光の照射態様の例を示す図である。
【
図3】支援照射光の第1の照射態様の例を示す図である。
【
図4】支援照射光の第2の照射態様の例を示す図である。
【
図5】支援照射光の第1の照射態様の変形例を示す図である。
【
図6】支援照射光の第2の照射態様の変形例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る灯火制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】支援照射光の第3の照射態様の例を示す図である。
【
図9】支援照射光の第3の照射態様の変形例を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係る灯火制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態3に係る灯火制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】灯火制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図13】灯火制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る灯火制御システムの構成を示すブロック図である。当該灯火制御システムは、車両の前方に検出された障害物に光を照射することでドライバの運転支援を行う。以下、運転支援のために行われる障害物への光の照射を「支援照射」という。また、灯火制御システムは車両に搭載されているものと仮定し、以下、灯火制御システムを搭載した車両を「自車両」という。
【0011】
図1に示すように、実施の形態1に係る灯火制御システムは、灯火制御装置10と、灯火装置20と、周辺検出装置31と、ドライバ状態検出装置32とを備えている。
【0012】
周辺検出装置31は、自車両の周辺の状況を検出するセンサであり、自車両周辺の状況の検出結果の情報である周辺情報を灯火制御装置10に提供する。周辺検出装置31は、例えば、レーダーや超音波センサなどに代表されるTOFセンサ(time of flight)、あるいはカメラなどで構成される。周辺検出装置31の検出範囲は、少なくとも自車両の前方を含むものとする。
【0013】
ドライバ状態検出装置32は、自車両のドライバの状態を検出するセンサであり、ドライバの状態の検出結果の情報であるドライバ情報を灯火制御装置10に提供する。ドライバ状態検出装置32は、例えば、ドライバを撮影するカメラなどで構成される。ドライバ状態検出装置32は、ドライバの視線、顔向き、表情、動作のうちの1つ以上を検出するものとする。
【0014】
灯火制御装置10は、灯火装置20の動作を制御する機能を有し、障害物検出部11、ドライバ認知状態判断部12および灯火制御部13を備えている。
【0015】
障害物検出部11は、周辺検出装置31から取得した自車両の周辺情報に基づいて、自車両の周辺の障害物を検出する。より具体的には、障害物検出部11は、自車両周辺に存在する障害物の位置(自車両に対する相対位置)を検出し、例えば、自車両の前後方向をX軸、車幅方向をY軸とするXY座標系における障害物の位置の座標を特定する。
【0016】
ドライバ認知状態判断部12は、ドライバ状態検出装置32から取得したドライバ情報、具体的には、ドライバの視線、顔向きなど、ドライバがどこを見たかを判断できる情報と、障害物検出部11が検出した障害物の位置とに基づいて、ドライバが障害物を認知したか否かを判断する。ドライバが障害物を認知したか否かは、例えば、ドライバが障害物の方を見たかどうかで判断することができる。
【0017】
灯火制御部13は、灯火装置20が発する光の照射方向および照射態様を制御する。特に、灯火制御部13は、障害物検出部11により障害物が検出されると、灯火装置20が発する光の照射方向を制御して、当該障害物に光を照射する支援照射を行う。このとき、灯火制御部13は、ドライバ認知状態判断部12によるドライバが障害物を認知したか否かの判断結果に応じて、障害物に照射する光の照射態様を制御する。障害物に照射する光の照射態様の制御は、灯火制御部13が、灯火装置20が発する光の色調、照度および配光、光の動的変化の度合い、ならびに投影される照射オブジェクトのうち少なくとも1つを制御することによって行われる。照射オブジェクトは、図形や文字などである。図形は平面図形でも立体図形でもよいが、平面図形よりも立体図形の方がドライバの目を引く効果は高い。
【0018】
なお、動的な照射態様とは、時間の経過あるいは障害物との距離などの変化に応じて照射態様が変化するものをいう。動的な照射態様の例としては、時間の経過とともに色調が徐々に変化する照射態様などがある。他方、静的な照射態様とは、時間の経過あるいは障害物との距離などの変化があっても、照射態様が変化しないものをいう。
【0019】
実施の形態1では、灯火制御部13は、障害物検出部11により障害物が検出されると、灯火装置20が障害物に照射する光の照射態様を第1の照射態様に設定して、障害物に対する支援照射を開始する。また、灯火制御部13は、ドライバ認知状態判断部12によりドライバが障害物を認知したと判断されると、支援照射において灯火装置20が障害物に照射する光(以下「支援照射光」という)の照射態様を第2の照射態様に変更する。ここで、第2の照射態様は、第1の照射態様よりも、障害物が検出される前における灯火装置20の光の照射態様に近いものとする。
【0020】
灯火装置20は、前照灯21と、補助灯などからなる支援照射灯22とを含み、灯火制御装置10からの指示に従って様々な照射態様を実現することができる。本実施の形態では、説明の簡略化のため、前照灯21は、障害物の検出結果に関係なく、ドライバによる灯火スイッチ(不図示)の操作に応じて自車両の前方を照射する一般的な前方照射を行うものとし、障害物に対する支援照射は、支援照射灯22によって行われるものとする。よって、支援照射光の照射態様は、支援照射灯22が発する光によって規定される。
【0021】
ただし、前照灯21が、光の色調、照度および配光、光の動的変化の度合い、ならびに投影される照射オブジェクトのうち少なくとも1つを制御可能なものである場合は、支援照射の一部または全部の機能が前照灯21によって行われてもよい。例えば、支援照射光の照度を上げる場合、支援照射灯22が障害物に照射する光の照度を上げる代わりに、前照灯21が障害物の方向へ発する光の照度を上げてもよい。支援照射の全部の機能を前照灯21で実施可能であれば、支援照射灯22は省略されてもよい。
【0022】
灯火制御装置10の動作の具体例を説明する。例えば、
図2のように、自車両100の前方に障害物が存在しない状態において、灯火装置20が、灯火制御装置10による制御のもと、前照灯21が発する前方照射光101を用いた前方照射のみを行っており、支援照射灯22は消灯していたとする。
【0023】
その後、
図3のように、自車両100の前方に障害物200が出現したと仮定する。また、
図3の時点ではドライバが障害物200を認知していないものとする。この場合、障害物検出部11によって障害物200が検出されると、灯火制御部13は、支援照射灯22を駆動して、支援照射灯22が発する支援照射光102を障害物200へ向けて照射する支援照射を開始する。このときドライバ認知状態判断部12は、ドライバが障害物を認知していないと判断するため、灯火制御部13は、支援照射光102の照射態様を第1の照射態様に設定する。その結果、障害物200に光を照射する支援照射が、第1の照射態様で実施される。第1の照射態様は、派手な(目立つ)照射態様でよく、そうすることによりドライバに対する障害物への注意喚起度合いを高くできる。
【0024】
その後、ドライバが障害物200を認知すると、ドライバ認知状態判断部12は、ドライバが障害物200を認知したと判断し、灯火制御部13は、
図4のように、支援照射光102の照射態様を、第1の照射態様から第2の照射態様に変更する。第2の照射態様は、第1の照射態様よりも、障害物200が検出される前、すなわち
図2の時点における灯火装置20の光の照射態様に近い。
図2の時点では支援照射灯22は消灯していたため、例えば、第2の照射態様における支援照射光102の照度を、第1の照射態様における支援照射光102の照度よりも低いものにすれば、第2の照射態様を、第1の照射態様よりも障害物200が検出される前の照射態様に近いものにできる。
【0025】
ドライバが障害物を認知した後の支援照射光の照射態様(第2の照射態様)が、ドライバが障害物を認知する前の支援照射光の照射態様(第1の照射態様)よりも、障害物が検出される前の灯火装置20の照射態様に近いことで、ドライバが障害物を認知した後に支援照射光を煩わしく感じることが抑制される。
【0026】
このように、実施の形態1に係る灯火制御システムによれば、障害物に対するドライバの認知状態に適した照射態様で障害物に光を照射することができる。
【0027】
なお、障害物への光の照射を開始する前にドライバが障害物を認知したと判断される場合には、灯火制御部13は、第1の照射態様による支援照射の実施を省略し、支援照射光の照射態様を初めから第2の照射態様に設定して、支援照射を開始してもよい。
【0028】
支援照射光102の照射態様の変更は、支援照射光102の色調、照度および配光、光の動的変化の度合い、ならびに投影される照射オブジェクトのうち少なくとも1つを変化させることによって行われればよい。例えば、支援照射光102の照射態様を色調によって変更する場合、前照灯21から照射される前方照射光101の色が白であれば、第1の照射態様における支援照射光102の色を赤、第2の照射態様における支援照射光102の色を黄、などとすればよい。
【0029】
また、支援照射光102の照射態様を光の動的変化の度合いによって変更する場合、前方照射光101は照射態様が変化しない静的なものであるので、例えば、第1の照射態様を
図5のように支援照射光102の照射範囲が振動する動的なものとし、第2の照射態様を
図6のように支援照射光102の照射範囲が固定された静的なものとすればよい。第1の照射態様および第2の照射態様の両方を動的なものとする場合、第2の照射態様の動的変化の度合いを、第1の照射態様の動的変化の度合いよりも小さくすればよい。光の動的変化の態様は、振動、点滅、色調変化など、どのようなものでもよい。
【0030】
また、支援照射光102の照射態様を光の配光によって変更する場合、第1の照射態様では支援照射光102の光束の照射範囲を絞って障害物に照射し、第2の照射態様ではその照射範囲を広げてもよい。あるいは、第1の照射態様では支援照射光102の輪郭を明瞭にし、第2の照射態様では支援照射光102の輪郭をぼやかしてもよい。支援照射光102の照射範囲を広げたり輪郭をぼやかしたりすると、支援照射光102が目立たなくなる(際立たなくなる)ため、これらの場合でも、第2の照射態様は第1の照射態様よりも障害物が検出される前の照射態様に近いと言える。
【0031】
また、支援照射光102の照射態様を照射オブジェクトによって変更する場合、第1の照射態様では支援照射光102で目立つ照射オブジェクト(例えば立体的な図形や文字)を投影し、第2の照射態様では支援照射光102であまり目立たない照射オブジェクト(例えば平面的な図形や文字)を投影してもよい。
【0032】
このように、支援照射光102の照射態様の変更方法には種々のものが考えられ、その方法は上記した例に限られない。例えば、支援照射光102の色調と配光の両方を変化させるなど、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0033】
また、第2の照射態様は、障害物が検出される前における灯火装置の光の照射態様と同じであってもよい。その場合、ドライバが障害物を認知すると支援照射が終了するのと実質的に同じになり、障害物を認知したドライバが支援照射を煩わしく感じることを無くすことができる。
【0034】
また、本実施の形態では、障害物が検出される前の状態(
図2)において灯火装置20の前照灯21が点灯している例を示したが、前照灯21は消灯していてもよい。すなわち、「障害物が検出される前における灯火装置20の光の照射態様」には、灯火装置20が消灯した状態も含まれる。
【0035】
図7は、実施の形態1に係る灯火制御装置10の動作を示すフローチャートである。以下、
図7のフローチャートに基づいて、灯火制御装置10の動作を説明する。
【0036】
自車両が走行を開始して、灯火制御装置10が動作を開始すると、障害物検出部11は、周辺検出装置31から自車両の周辺情報を取得する(ステップS101)。また、ドライバ認知状態判断部12は、ドライバ状態検出装置32からドライバ情報を取得する(ステップS102)。
【0037】
障害物検出部11は、自車両の周辺情報に基づいて自車両周辺に障害物が検出されているか否かを判断する(ステップS103)。障害物が検出されていなければ(ステップS103でNO)、灯火制御部13は、支援照射を実施中か否かを確認する(ステップS104)。支援照射の実施中であれば(ステップS104でYES)、灯火制御部13は支援照射を終了し(ステップS105)、続いて、自車両の走行が終了したか否かを確認する(ステップS106)。自車両の走行が継続されれば(ステップS106でNO)ステップS101へ戻るが、自車両の走行が終了すれば(ステップS106でYES)、灯火制御装置10は動作を終了する。
【0038】
一方、ステップS103において、障害物検出部11により自車両周辺の障害物が検出されれば(ステップS103でYES)、灯火制御部13は、予め定められた支援照射実施条件が満たされているか否かを確認する(ステップS107)。支援照射実施条件は、支援照射を実行すべき状態か否の判断基準である。本実施の形態では、障害物が前照灯21の照射範囲内にあるという条件を、支援照射実施条件とする。よって、ステップS107では、障害物検出部11により検出された障害物の位置が前照灯21の照射範囲内にあるか否かが判断される。ただし、支援照射実施条件は、この例に限られず、任意の条件でよい。
【0039】
障害物の位置が前照灯21の照射範囲内にあれば、支援照射実施条件が満たされていると判断され(ステップS107でYES)、ドライバ認知状態判断部12が、ドライバ情報に基づいて、ドライバが当該障害物を認知しているか否かを判断する(ステップS108)。ドライバが当該障害物を認知していなければ(ステップS108でNO)、灯火制御部13は、支援照射灯22が発する支援照射光の照射態様を第1の照射態様に設定して支援照射を実施する(ステップS109)。一方、ドライバが当該障害物を認知していれば(ステップS108でYES)、灯火制御部13は、支援照射灯22が発する支援照射光の照射態様を第2の照射態様に設定して支援照射を実施する(ステップS110)。その後、ステップS106へ移行する。
【0040】
なお、ステップS107において、障害物の位置が前照灯21の照射範囲内になければ、支援照射実施条件が満たされていないと判断され(ステップS107でNO)、ステップS104へ移行する。このとき、支援照射の実施中であれば(ステップS104でYES)、灯火制御部13は支援照射を終了する(ステップS105)。したがって、前照灯21の照射範囲内で障害物が検出されて支援照射が開始されても、その後、当該障害物が前照灯21の照射範囲から外れれば、支援照射は終了する。つまり、障害物が前照灯21の照射範囲から外れ、支援照射実施条件が満たされなくなることは、支援照射の終了条件となる。
【0041】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る灯火制御装置10は、支援照射を第1の照射態様で開始した後に、ドライバが障害物を認知すると、支援照射の照射態様を第1の照射態様よりも目立たない第2の照射態様に変更することで、ドライバが煩わしく感じることを抑制した。
【0042】
実施の形態2では、さらに、第1の照射態様よりも目立つ照射態様である第3の照射態様を導入し、支援照射を第1の照射態様で開始しても、一定期間ドライバが障害物を認知しない場合に、支援照射の照射態様を第3の照射態様に変更することで、ドライバの注意を障害物の方へ誘導する灯火制御装置10を提案する。また、実施の形態2の灯火制御装置10は、第1の照射態様または第3の照射態様での支援照射を開始した後にドライバが障害物を認知した場合は、実施の形態1と同様に、支援照射の照射態様を第2の照射態様に変更するものとする。なお、実施の形態2に係る灯火制御システムの構成は、実施の形態1(
図1)と同様である。
【0043】
例えば、
図3で示したように、灯火制御装置10が、支援照射光102の照射態様を第1の照射態様に設定して、障害物200に支援照射光102を照射する支援照射を開始したとする。その後、一定時間経過しても、ドライバ認知状態判断部12によりドライバが障害物を認知していないと判断された場合、灯火制御部13は、
図8のように、障害物200に照射する支援照射光102の照射態様を第3の照射態様に変更する。
【0044】
第3の照射態様は、第1の照射態様よりも、障害物が検出される前、すなわち
図2の時点における灯火装置20の光の照射態様から大きく相違する。
図2の時点では支援照射灯22は消灯していたため、例えば、第3の照射態様における支援照射光102の照度を、第1の照射態様における支援照射光102の照度よりも高いものにすれば、第3の照射態様を、第1の照射態様よりも障害物が検出される前の照射態様から乖離したものにできる。
【0045】
ドライバが障害物を認知していないときに、支援照射光の照射態様が、ドライバが障害物を認知する前の支援照射光の照射態様(第1の照射態様)よりも、障害物が検出される前の灯火装置20の照射態様から大きく相違する第3の照射態様に変化するため、ドライバの注意を障害物の方へ誘導し、障害物の認知を促すことができる。
【0046】
このように、実施の形態2に係る灯火制御システムによれば、ドライバが障害物の認知が遅れた場合に、障害物に対するドライバの認知状態に適した照射態様で障害物に光を照射することができる。
【0047】
また、支援照射を開始した後にドライバが障害物を認知すれば、実施の形態1と同様に、支援照射光の照射態様が、ドライバが障害物を認知する前の支援照射光の照射態様(第1の照射態様)よりも、障害物が検出される前の灯火装置20の照射態様に近い第2の照射態様に変化するため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
実施の形態2においても、支援照射光102の照射態様の変更は、支援照射光102の色調、照度および配光、光の動的変化の度合い、ならびに投影される照射オブジェクトのうち少なくとも1つを変化させることによって行われればよい。
【0049】
例えば、支援照射光102の照射態様を光の動的変化の度合いによって変更する場合、第1の照射態様を
図5のように支援照射光102の照射範囲が振動するものとし、第3の照射態様を
図9のように支援照射光102の照射範囲が、第1の照射態様よりも大きな振幅で振動するものとすればよい。
【0050】
図10は、実施の形態2に係る灯火制御装置10の動作を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、
図7のフローチャートに対し、ステップS111およびS112を追加したものである。ステップS101~S110は、
図7と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0051】
ステップS111は、検出された障害物をドライバが認知していないと判断されたとき(ステップS108でNOと判断されたとき)に実行される。当該ステップS111では、支援照射が開始されて一定期間が経過したか否かが判断される。
【0052】
ステップS112は、障害物をドライバが認知しておらず、且つ、支援照射が開始されて一定期間が経過したとき(ステップS111でYESと判断されたとき)に実行される。当該ステップS112では、灯火制御部13が、支援照射灯22が発する支援照射光の照射態様を第3の照射態様に設定して支援照射を実施する。
【0053】
なお、ステップS111において、支援照射が開始されて一定期間が経過していなければ(ステップS111でNO)、ステップS109へ移行し、灯火制御部13は、支援照射灯22が発する支援照射光の照射態様を第1の照射態様に設定して支援照射を実施する。
【0054】
<実施の形態3>
実施の形態2では、支援照射を開始した後にドライバが障害物を認知すると、実施の形態1と同様の動作、すなわち、支援照射の照射態様を目立たない第2の照射態様に変更する例を示したが、この実施の形態1と同様の動作は必ずしも行われなくてよい。つまり、実施の形態2の技術は、実施の形態1の技術と組み合わせることなく実施可能である。
【0055】
実施の形態3では、実施の形態2の技術を単独で実施する例を示す。実施の形態3に係る灯火制御システムの構成は、実施の形態1(
図1)と同様である。
【0056】
ここで、実施の形態3では、説明の都合上、実施の形態2における「第3の照射態様」、すなわち、第1の照射態様よりも障害物が検出される前における灯火装置20の光の照射態様から大きく相違する照射態様を、「第2の照射態様」と呼ぶ。
【0057】
図11は、実施の形態3に係る灯火制御装置10の動作を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、
図7のフローチャートに対し、ステップS108~S110を、ステップS201~S204に置き換えたものである。ステップS101~S107は、
図7と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0058】
実施の形態3では、障害物が検出され、且つ、支援照射実施条件が満たされていると判断されると(ステップS107でYES)、ドライバ認知状態判断部12が、ドライバ情報に基づいてドライバが当該障害物を認知しているか否かを判断する(ステップS201)。ドライバが当該障害物を認知していれば(ステップS201でYES)、灯火制御部13は、支援照射灯22が発する支援照射光の照射態様を第1の照射態様に設定して支援照射を実施する(ステップS202)。また、ドライバが当該障害物を認知していなくても(ステップS201でNO)、支援照射が開始されてから一定時間経過していなければ(ステップS203でNO)、ステップS202へ移行し、灯火制御部13は、第1の照射態様での支援照射を実施する。
【0059】
しかし、ドライバが当該障害物を認知していない状態(ステップS201でNOと判断される状態)が、支援照射が開始されてから一定時間経過しても続いていると、ステップS203でYESと判断され、灯火制御部13は、第2の照射態様(すなわち、第1の照射態様よりも障害物が検出される前における灯火装置20の光の照射態様から大きく相違する照射態様)での支援照射を実施する(ステップS204)。
【0060】
ドライバが障害物を認知していないときに、支援照射光の照射態様が、ドライバが障害物を認知する前の支援照射光の照射態様(第1の照射態様)よりも、障害物が検出される前の灯火装置20の照射態様から大きく相違する第2の照射態様に変化するため、ドライバの注意を障害物の方へ誘導し、障害物の認知を促すことができる。
【0061】
実施の形態3に係る灯火制御システムによれば、ドライバが障害物の認知が遅れた場合に、障害物に対するドライバの認知状態に適した照射態様で障害物に光を照射することができる。
【0062】
<ハードウェア構成例>
図12および
図13は、それぞれ灯火制御装置10のハードウェア構成の例を示す図である。
図1に示した灯火制御装置10の構成要素の各機能は、例えば
図12に示す処理回路50により実現される。すなわち、灯火制御装置10は、自車両周辺の障害物を検出し、自車両のドライバが障害物を認知したか否かを判断し、自車両の灯火装置が発する光の照射方向および照射態様を制御するための処理回路50を備え、処理回路50は、障害物が検出されると障害物に光を照射し、ドライバが障害物を認知したか否かの判断結果に応じて障害物に照射する光の照射態様を制御する。処理回路50は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ(中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる)を用いて構成されていてもよい。
【0063】
処理回路50が専用のハードウェアである場合、処理回路50は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものなどが該当する。灯火制御装置10の構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されてもよいし、それらの機能がまとめて一つの処理回路で実現されてもよい。
【0064】
図13は、処理回路50がプログラムを実行するプロセッサ51を用いて構成されている場合における灯火制御装置10のハードウェア構成の例を示している。この場合、灯火制御装置10の構成要素の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせ)により実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。プロセッサ51は、メモリ52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、灯火制御装置10は、プロセッサ51により実行されるときに、自車両周辺の障害物を検出する処理と、自車両のドライバが障害物を認知したか否かを判断する処理と、自車両の灯火装置が発する光の照射方向および照射態様を制御する処理と、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ52を備え、当該プログラムを実行するプロセッサ51は、障害物が検出されると障害物に光を照射し、ドライバが障害物を認知したか否かの判断結果に応じて障害物に照射する光の照射態様を制御する。換言すれば、このプログラムは、灯火制御装置10の構成要素の動作の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0065】
ここで、メモリ52は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置のほか、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0066】
以上、灯火制御装置10の構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、灯火制御装置10の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であってもよい。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路50でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ51としての処理回路50がメモリ52に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0067】
以上のように、灯火制御装置10は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0068】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0069】
上記した説明は、すべての態様において、例示であって、例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0070】
10 灯火制御装置、11 障害物検出部、12 ドライバ認知状態判断部、13 灯火制御部、20 灯火装置、21 前照灯、22 支援照射灯、31 周辺検出装置、32 ドライバ状態検出装置、50 処理回路、51 プロセッサ、52 メモリ、100 自車両、101 前方照射光、102 支援照射光、200 障害物。