(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 1/20 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
H02B1/20 A
(21)【出願番号】P 2024550570
(86)(22)【出願日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2024019537
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 洸平
(72)【発明者】
【氏名】香川 耕一
(72)【発明者】
【氏名】河西 克紀
(72)【発明者】
【氏名】松永 敏宏
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220486(JP,A)
【文献】特開2024-60399(JP,A)
【文献】特開2023-166160(JP,A)
【文献】特開2004-112962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0194672(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00-1/38
H02B 1/46-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性能に優れたガスが封入された主回路タンクの内部に高電圧が印加される主回路を収納したガス絶縁開閉装置であって、
前記主回路タンクを内外に貫通するブッシングを介して外線ケーブルを接続するケーブル室を有し、前記ケーブル室はケーブル室固定筐体と
前面部、両側面部、上面部、および底面部を有するケーブル室分割筐体から構成され、
前記ケーブル室分割筐体は、水平方向にスライドさせることで着脱可能な構造を備えたガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記ケーブル室分割筐体は複数に分割可能な構造である請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
前記ケーブル室には、前記外線ケーブル、および雷サージから保護する避雷器を保持するケーブルブラケットを備え、
前記ケーブルブラケットは、前後方向および上下方向に位置調整が可能である請求項1または請求項2に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
前記ケーブル室分割筐体をスライドして、前記ケーブル室の前記ケーブル室固定筐体に取付ける際に、前記ケーブル室分割筐体に当接する前記ケーブル室分割筐体の上側に位置するコンパートメントの角部を面取りし、
前記ケーブル室分割筐体の上部面、および前記コンパートメントの下部面に潤滑剤を塗布した請求項1
または請求項2に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記ケーブル室分割筐体をスライドして、前記ケーブル室の前記ケーブル室固定筐体に取付ける際に、前記ケーブル室分割筐体に当接する前記ケーブル室分割筐体の上側に位置するコンパートメントの角部を面取りし、
前記ケーブル室分割筐体の上部面、および前記コンパートメントの下部面に潤滑剤を塗布した請求項3に記載のガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス絶縁開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉装置(スイッチギヤ)は、主回路部、制御回路部、遮断器の駆動部、母線部、ケーブル室等は仕切りによって別々の区画となっていることが多い。その中でも、ガス絶縁開閉装置では高電圧が印加される主回路部をタンク(密閉容器)内に収納し、タンク内には絶縁性能に優れた絶縁媒体となるガスを封入することで、主回路機器配置の省スペース化を実現している。
また、設置スペースの制約から、更なるガス絶縁開閉装置の外形寸法の縮小化が求められており、ガス絶縁開閉装置を構成するケーブル室についても縮小化が必須である。
【0003】
開閉装置では、外線ケーブル施工作業は、ケーブル室の前面の一部開口からの作業となるため基本的に一人作業となり、スペースも限定的である。このため重量の大きいケーブル接続作業および避雷器取付け作業を確実に高品質で実施するには高い技量が求められる。
この対策として、床板と背面側の側壁に亘って開口部を有し、この開口部を覆うL字型カバーを取り外すだけで外線ケーブルをケーブル室の内部に引き込むことが可能な構造のスイッチギアが開示されている(例えば、特許文献1)。
また、開口部を筐体の底面後部から背面下部へ向かってL字形に形成し、開口部を塞ぐ閉塞板を設ける配電盤が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-220486号公報
【文献】特開平9-191510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の開閉装置ではケーブル室の開口のサイズが限定的であり、例えば、後面と後方の壁が近い場合は開口からの接続作業は困難である。また、多様な接続形態へのケーブル施工作業は困難である。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、ケーブル施工時には、前面に加えて側面からアクセスが可能で、縮小化したガス絶縁開閉装置の外形寸法を維持したまま、多様なケーブル接続形態への対応が容易なガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のガス絶縁開閉装置は、絶縁性能に優れたガスが封入された主回路タンクの内部に高電圧が印加される主回路を収納したガス絶縁開閉装置であって、前記主回路タンクを内外に貫通するブッシングを介して外線ケーブルを接続するケーブル室を有し、前記ケーブル室はケーブル室固定筐体と前面部、両側面部、上面部、および底面部を有するケーブル室分割筐体から構成され、前記ケーブル室分割筐体は、水平方向にスライドさせることで着脱可能な構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガス絶縁開閉装置によれば、縮小化した外形寸法を維持したまま、多様なケーブル接続形態への対応が容易なガス絶縁開閉装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るガス絶縁開閉装置の構成を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1に係るガス絶縁開閉装置のケーブル室の構造図である。
【
図3】実施の形態1に係るガス絶縁開閉装置のケーブル室の概略図である。
【
図4】実施の形態1に係る比較例のガス絶縁開閉装置のケーブル室の概略図である。
【
図5】実施の形態2に係るガス絶縁開閉装置の構成を示す側面図である。
【
図6】実施の形態3に係るガス絶縁開閉装置のケーブル室着脱に関連する要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1は、絶縁性能に優れたガスが封入された主回路タンクの内部に高電圧が印加される主回路を収納し、主回路タンクを内外に貫通するブッシングを介して外線ケーブルを接続するケーブル室を有し、ケーブル室はケーブル室固定筐体とケーブル室分割筐体から構成され、ケーブル室分割筐体は、水平方向にスライドさせることで着脱可能な構造を備えたガス絶縁開閉装置に関するものである。
【0011】
以下、実施の形態1に係るガス絶縁開閉装置について、ガス絶縁開閉装置の構成を示す側面図である
図1、ケーブル室の構造図である
図2、ケーブル室の概略図である
図3、および比較例のガス絶縁開閉装置のケーブル室の概略図である
図4に基づいて説明する。
なお、各図において同一部分もしくは相当部分は、同一符号で示している。
【0012】
まず、実施の形態1のガス絶縁開閉装置1の構成をガス絶縁開閉装置1の側面図である
図1に基づいて説明する。なお、本開示に直接関係のない構成要素は省略している。
説明をわかりやすくするために、
図1の前後方向をX方向、左右方向をY方向、および上下方向をZ方向として適宜説明する。
図2以降においても、X、Y、Z方向は
図1に準ずる。
なお、以降の説明において、
図1の右側、すなわちY方向の正側をガス絶縁開閉装置1の前面とする。
【0013】
ガス絶縁開閉装置1は、筐体10の内部に複数のコンパートメントを有し、主回路タンク2、ケーブル室3、断路器室4、制御室5に区分されており、ベース9の上に固定されている。
ケーブル室3は、ケーブル室固定筐体30a、ケーブル室分割筐体30bから構成される。ケーブル室分割筐体30bはケーブル室カバー8を備える。
【0014】
ケーブル室固定筐体30aの内部には外線ケーブル20を固定するためのケーブルブラケット7aを備え、ケーブルブラケット7aは前後方向と上下方向の位置調整可能である。
ケーブル室3内には、主回路タンク2を貫通するブッシング6が設けられている。
ブッシング6はケーブル室3の下方から引き込まれた外線ケーブル20と接続される。
なお、ブッシング6の外形形状はEN(European Norm)規格で定められるが、外線ケーブル20の接続端末(コネクタ)の形状はケーブルメーカごとに異なる。
また、
図1はガス絶縁開閉装置1の側面図であるため、外線ケーブル20は1本しか記載されていないが、三相交流電源の場合は、3本の外線ケーブル20が
図1のX方向に並んで固定されている。
なお、
図1のA部については、実施の形態3で説明する。
【0015】
図2はガス絶縁開閉装置1のケーブル室3の構造図である。ケーブル室分割筐体30bは水平方向(
図2ではY方向)にスライドすることで簡単に脱着可能である。例えば、ねじ等でケーブル室固定筐体30a、断路器室4、およびベース9に取付けられる。
【0016】
図3はガス絶縁開閉装置1のケーブル室3の概略図であり、ケーブル室固定筐体30aの奥行き寸法L1とケーブル室分割筐体30bの奥行き寸法L2の寸法比に任意であり、制限はない。
【0017】
ガス絶縁開閉装置1は据付後、外線ケーブル20をブッシング6に接続する施工を実施する必要がある。
比較例として示す一般的なガス絶縁開閉装置1Rでは、
図4のように、ケーブル室3Rの前面のケーブル室カバー8Rを取外すことで、前面の開口部から作業を行うことになり、限られたスペースでのケーブル施工作業となる。
一方、実施の形態1のガス絶縁開閉装置1では、
図3のように、ケーブル室分割筐体30bを取り外すことで、前面と両側面の一部に開口部を設けることができる。このため、ケーブル施工時には、前面に加えて側面からアクセスが可能となる。したがって、必要なスペースを確保するとともに、複数人での作業が可能になることで高品質、短時間での施工作業ができる。
【0018】
また、ケーブル接続施工後はケーブル室分割筐体30bを水平方向にスライドすることで再度取付ければよい。
ケーブル室3の外形寸法についても、ケーブル施工作業に必要なスペースの確保はケーブル室分割筐体30bを取り外しすることを前提として考慮すればよく、ケーブル室3の外形寸法を縮小できる。
【0019】
なお、以上の説明では、ガス絶縁開閉装置を例として説明したが、実施の形態1のガス絶縁開閉装置は、高い絶縁性能が必要とされる油絶縁開閉装置、固体絶縁開閉装置、および複合絶縁開閉装置などに適用できる。
【0020】
また、以上の説明では、ケーブル室3をケーブル室固定筐体30aとケーブル室分割筐体30bから構成されるとしたが、ケーブル室分割筐体30bをさらに複数(例えば、2)に分割することができる。この場合、ケーブル室カバー8と壁との距離が小さい場合でも、ケーブル室分割筐体30bを簡単に脱着できる。
【0021】
また、以上の説明では、主回路に接続される外線ケーブル20をケーブル室3で接続することを説明したが、制御ケーブルの接続処理をケーブル室3で行うこともできる。
【0022】
以上説明のように、実施の形態1のガス絶縁開閉装置によれば、縮小化した外形寸法を維持したまま、多様なケーブル接続形態への対応が容易にできる。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態2は、ケーブル室における2条目の外線ケーブル、および避雷器の接続に関するものである。
【0024】
実施の形態2のガス絶縁開閉装置について、ガス絶縁開閉装置の構成を示す側面図である
図5に基づいて説明する。
実施の形態2の図面において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0025】
実施の形態1との差異は、1条目の外線ケーブル20に加え、2条目の外線ケーブル20または避雷器21がブッシング6に接続されることである。これに伴い、2条目の外線ケーブル20または避雷器21を固定するケーブルブラケット7bを備え、ケーブルブラケット7bは前後方向と上下方向の位置調整可能である。
この構成においても、ケーブル室分割筐体30bは水平方向にスライドすることで簡単に脱着可能である。例えば、ケーブル室分割筐体30bをねじ等でケーブル室固定筐体30a、およびベース9に取付けられる構造とすることで、2条目の外線ケーブル20、または避雷器21を接続するような、多様なケーブル接続形態への対応が容易にできる。
なお、
図5のA部については、実施の形態3で説明する。
【0026】
以上説明のように、実施の形態2のガス絶縁開閉装置によれば、縮小化した外形寸法を維持したまま、多様なケーブル接続形態への対応を容易にできる。さらに、2条目の外線ケーブル20、または避雷器21の接続にも対応することができる。
【0027】
実施の形態3.
実施の形態3は、ケーブル室分割筐体30bの着脱時の上部コンパートメントとの干渉を軽減する対策に関するものである。
【0028】
実施の形態3のガス絶縁開閉装置について、ケーブル室着脱に関連する要部の説明図である
図6に基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態3の図面において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0029】
図6は、
図1と
図5のA部の拡大図であり、ケーブル室分割筐体30bを取り外した状態を示す。着脱可能なケーブル室分割筐体30bの上側に位置するコンパートメントである断路器室4の角部を図
6のB部に示すように面取りしている。この面取りをすることで、ケーブル室分割筐体30bを取り外した状態からガス絶縁開閉装置1へ取付ける際、断路器室4との干渉を軽減できる。
また、
図6に示すハッチング部はケーブル室分割筐体30bを着脱時に水平方向にスライドする際の当接面となるが、摩擦力軽減させるために、潤滑剤41を塗布する。
なお、ケーブル室分割筐体30bの底面とベース9の当接面にも同様に潤滑剤を塗布する場合がある。
このような構成とすることで、ケーブル室分割筐体30bの着脱作業を円滑にでき、作業工数を削減できる。
【0030】
以上説明のように、実施の形態3のガス絶縁開閉装置によれば、縮小化した外形寸法を維持したまま、多様なケーブル接続形態への対応を容易にできる。さらにケーブル室分割筐体の着脱時の干渉を軽減し、作業を円滑化できる。
【0031】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0032】
1 ガス絶縁開閉装置、2 主回路タンク、3 ケーブル室、4 断路器室、5 制御室、6 ブッシング、7a,7b ケーブルブラケット、8 ケーブル室カバー、9 ベース、10 筐体、20 外線ケーブル、21 避雷器、30a ケーブル室固定筐体、30b ケーブル室分割筐体、41 潤滑剤、1R ガス絶縁開閉装置、3R ケーブル室、8R ケーブル室カバー。
【要約】
ガス絶縁開閉装置(1)は、絶縁性能に優れたガスが封入された主回路タンク(2)の内部に高電圧が印加される主回路を収納し、主回路タンク(2)を内外に貫通するブッシング(6)を介して外線ケーブル(20)を接続するケーブル室(3)を有し、ケーブル室(3)はケーブル室固定筐体(30a)とケーブル室分割筐体(30b)から構成され、ケーブル室分割筐体(30b)は、水平方向にスライドさせることで着脱可能な構造を備える。