(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】気象予測装置、気象予測システム、及び気象予測方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
G01W1/00 A
(21)【出願番号】P 2024564629
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2023005879
【審査請求日】2024-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 直也
(72)【発明者】
【氏名】後町 将人
(72)【発明者】
【氏名】浅見 廣愛
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩志
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 洋
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0064802(US,A1)
【文献】特開2002-049298(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112345698(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108052704(CN,A)
【文献】特開2006-184206(JP,A)
【文献】特開2004-109001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割されたグリッド毎に観測された気象データを含むグリッドデータを取得する第1取得部と、
前記第1取得部により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、前記グリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合し、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む不均一グリッドデータを生成する生成部と、
前記生成部により生成された不均一グリッドデータを用いて、前記所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する予測処理部と、
を備えた気象予測装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記不均一グリッドにおける各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データを生成し、
前記予測処理部は、
前記生成部により生成された隣接グリッド判定データに基づいて、前記不均一グリッドデータが示す不均一グリッドから、不均一な隣接関係となっているグリッドの組を特定し、当該特定したグリッドの組に対して内挿補間処理を施した上で前記予測を行う
ことを特徴とする請求項1記載の気象予測装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記グリッドデータが示すグリッドのうち、前記予測対象領域を含むグリッドを細分化し、気象データの時間的な変化に乏しい領域を含むグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気象予測装置。
【請求項4】
前記生成部は、
前記グリッドデータが示すグリッドのうち、前記予測対象領域における気象予測に影響を与える気象要素が発生し得る領域を含むグリッドを細分化する
ことを特徴とする請求項3記載の気象予測装置。
【請求項5】
前記グリッドデータが示すグリッドのうち、細分化する対象となる細分化対象グリッドを示すデータと、隣接するグリッドと統合する対象となる統合対象グリッドを示すデータである変換対象データを取得する第2取得部を備え、
前記生成部は、
前記第2取得部により取得された変換対象データに基づいて、前記細分化及び前記統合を行う
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の気象予測装置。
【請求項6】
前記生成部は、
前記第2取得部により取得された変換対象データに基づいて、前記グリッドデータが示すグリッドから、前記細分化対象グリッドと前記統合対象グリッドとを選択する領域選択部と、
前記領域選択部により選択された細分化対象グリッドを細分化するとともに、前記領域選択部により選択された統合対象グリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合することにより、前記不均一グリッドデータを生成する選択領域グリッド変換部と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項5記載の気象予測装置。
【請求項7】
前記選択領域グリッド変換部は、前記細分化及び前記統合を行ったグリッドにおける気象データを補充し、
前記予測処理部は、前記選択領域グリッド変換部により気象データが補充された後の不均一グリッドデータを用いて前記予測を行う
ことを特徴とする請求項6記載の気象予測装置。
【請求項8】
前記選択領域グリッド変換部は、
前記細分化及び前記統合を行ったグリッドにおける気象データを、当該各グリッドに隣接するグリッドにおける気象データに基づいて内挿補間することにより補充する
ことを特徴とする請求項7記載の気象予測装置。
【請求項9】
前記選択領域グリッド変換部は、
前記細分化及び前記統合を行ったグリッドにおける気象データを取得する旨を前記第1取得部に指示することにより、当該各グリッドにおける気象データを補充する
ことを特徴とする請求項7記載の気象予測装置。
【請求項10】
前記第1取得部は、
前記予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータと、当該所定領域以外の周辺領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータとを取得し、
前記生成部は、
前記第1取得部により取得された所定領域及び周辺領域毎のグリッドデータに基づいて、当該所定領域及び周辺領域をつなぎ合わせた領域に関する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む拡張不均一グリッドデータを生成し、
前記予測処理部は、
前記生成部により生成された拡張不均一グリッドデータを用いて前記予測を行う
ことを特徴とする請求項1記載の気象予測装置。
【請求項11】
前記所定領域及び前記周辺領域の位置を示すデータを取得する第3取得部を備え、
前記生成部は、
前記第3取得部により取得された位置データに基づいて、前記拡張不均一グリッドデータを生成する
ことを特徴とする請求項10記載の気象予測装置。
【請求項12】
前記予測処理部により予測された気象データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記予測結果が所定の精度を確保できていないと判定した場合、前記生成部に対し、不均一グリッドデータの再生成を指示し、
前記生成部は、当該指示を受けると、前記不均一グリッドに含まれる、細分化されたグリッドのうち、さらに細分化できるグリッドを細分化することにより、不均一グリッドデータを再生成する
ことを特徴とする請求項1記載の気象予測装置。
【請求項13】
前記判定部は、
前記予測処理部により予測された、将来の任意の時刻における予測結果を示す気象データと、当該時刻において実際に予測対象領域にて観測された気象データとの一致率を算出し、当該算出した一致率が閾値未満である場合に、前記予測結果が所定の精度を確保できていないと判定する
ことを特徴とする請求項12記載の気象予測装置。
【請求項14】
前記生成部は、
前記第1取得部により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうち、当該グリッドにおける気象データが示す風速及び湿度が閾値以上であるグリッドを細分化する
ことを特徴とする請求項1記載の気象予測装置。
【請求項15】
互いに通信可能に接続された第1の気象予測装置及び第2の気象予測装置を含んで構成される気象予測システムであって、
前記第1の気象予測装置は、
予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割された各グリッドにて観測された気象データを含むグリッドデータを取得する第1取得部と、
前記グリッドデータが示すグリッドから、グリッド変換の対象となるグリッドを選択し、当該選択した結果を示すデータを前記第2の気象予測装置に送信する領域選択部と、
前記第2の気象予測装置から送信されたグリッド変換の結果を示すデータに基づいて、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在するグリッドを示す不均一グリッドデータを生成するグリッド再構築部と、
前記グリッド再構築部により生成された不均一グリッドデータを用いて、前記所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する予測処理部と、
を備え、
前記第2の気象予測装置は、
前記領域選択部により選択されたグリッドに対してグリッド変換を行い、当該グリッド変換の結果を示すデータを前記第1の気象予測装置に送信する選択領域グリッド変換部を備え、
前記選択領域グリッド変換部による処理と、前記グリッド再構築部による処理とが並行して行われることを特徴とする気象予測システム。
【請求項16】
気象予測装置による気象予測方法であって、
第1取得部が、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割されたグリッド毎に観測された気象データを含むグリッドデータを取得するステップと、
生成部が、前記第1取得部により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、前記グリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合し、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む不均一グリッドデータを生成するステップと、
予測処理部が、前記生成部により生成された不均一グリッドデータを用いて、前記所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測するステップと、
を有する気象予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気象予測装置、気象予測システム、及び気象予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、予測対象領域の気象を予測する気象予測装置が知られている。この気象予測装置を用いた気象予測システムでは、予測対象領域において観測された気温、湿度、及び気圧等の気象データから、予測対象領域における将来の雨及び風等の気象状況を予測する。
【0003】
局所的な集中豪雨及び竜巻等を捉えるためには、予測対象領域を細かく区切ったグリッド(メッシュ)の情報が必要であるが、長時間の予測を行うためにはその周辺の比較的広範囲の情報を考慮する必要がある。しかし、一般に細かいグリッドを用いて広範囲の予測を行う場合、計算機では膨大なデータ量を扱うことになるため、計算機の規模が増大するだけでなく、演算時間も増加する。
【0004】
そこで、従来の気象予測システムでは、まず大域的な気象状況を予測し、その後、ある特定の局所的な地点における気象状況を予測する、ネスティング手法と呼ばれる手法により、予測に必要な演算時間の短縮を図る技術が提案されてきた。
【0005】
例えば特許文献1には、局所的な気流要素により、注目点から放出された拡散物質がどのように拡散するかを予測するシステムが開示されている。このシステムでは、注目点から放出された拡散物質の拡散状況を予測するために、注目点を含む局所領域A1と、局所領域A1を含む中領域A2と、中領域A2を含む大領域A3(A1<A2<A3)とを設定する。そして、局所領域A1よりも広い中領域A2及び大領域A3における気流計算を実施し、その結果を用いて局所領域A1の気流を予測することで、処理負荷の軽減及び処理時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載のシステム(以下、「従来システム」ともいう。)では、局所領域A1、中領域A2、及び大領域A3の各領域に対して、予め格子状に所定間隔で配置された評価地点が設定されている。そして、従来システムでは、上記各領域に対して設定された評価地点ごとに気流データを求め、当該気流データを用いて拡散計算を行うことにより、注目点から放出された拡散物質の拡散状況を予測している。
【0008】
しかしながら、従来システムでは、拡散状況の予測に用いられる評価地点が、上記各領域に対して予め定められた間隔で固定的に配置されているため、拡散状況の予測精度をより高めたい場合に必ずしも十分な構成を備えているとはいえないという問題があった。
【0009】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、従来に対し、処理負荷の増大を抑制しつつ、気象状況の予測精度を向上可能な気象予測装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る気象予測装置は、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割されたグリッド毎に観測された気象データを含むグリッドデータを取得する第1取得部と、第1取得部により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、グリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合し、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む不均一グリッドデータを生成する生成部と、生成部により生成された不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する予測処理部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、従来に対し、処理負荷の増大を抑制しつつ、気象状況の予測精度を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る気象予測装置を含む気象予測システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る気象予測装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、実施の形態1における観測データの一例を示す図であり、
図3Bは、実施の形態1における領域選択部による選択の一例を示す図であり、
図3Cは、実施の形態1における不均一グリッドの一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における隣接グリッド判定データの一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における不均一グリッド予測処理部による内挿補間処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6A、
図6Bは、実施の形態1に係る気象予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る気象予測装置を含む気象予測システムの構成例を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る気象予測装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】実施の形態3に係る気象予測装置を含む気象予測システムの構成例を示す図である。
【
図10】実施の形態3に係る気象予測装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】実施の形態4に係る気象予測装置を含む気象予測システムの構成例を示す図である。
【
図12】実施の形態4に係る気象予測装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】実施の形態4における領域選択部による選択の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態5に係る気象予測装置を含む気象予測システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
【0014】
図1は、実施の形態1に係る気象予測装置1を含む気象予測システム100の構成例を示す図である。気象予測システム100は、例えば
図1に示すように、観測装置10と、観測データ記録部15と、分割設定値データ記録部16と、気象予測装置1とを含んで構成される。
【0015】
<観測装置10>
観測装置10は、気象予測の対象となる領域(以下、「予測対象領域」ともいう。)を含む、所定領域における気象状況(気象データ)を観測する装置である。観測装置10は、例えば、予測対象領域を含む所定領域内の任意の箇所、又は当該所定領域の近傍の任意の箇所に設置される。
【0016】
観測装置10は、例えば予め設定された所定の時刻において、当該所定領域における気象状況を観測し、観測データD1を生成する。観測データD1は、例えば上記所定領域を複数のグリッド(格子)に分割してなるグリッドデータである。また、このグリッドデータには、グリッド毎に観測された気象データが含まれている。
【0017】
例えば、上記所定領域が3行3列の合計9つのグリッドに分割され、各グリッドをグリッド(i、j)と表記する場合、観測データD1には、グリッド毎の気象データとして、
グリッド(1,1)=(晴れ、北風、温度15℃、湿度26%、・・・)、
グリッド(1,2)=(晴れ、東風、温度17℃、湿度30%、・・・)、
グリッド(1,3)=(曇り、西風、温度12℃、湿度45%、・・・)、
グリッド(2,1)=(晴れ、北風、温度16℃、湿度28%、・・・)、
グリッド(2,2)=(晴れ、東風、温度14℃、湿度32%、・・・)、
グリッド(2,3)=(曇り、西風、温度13℃、湿度48%、・・・)、
グリッド(3,1)=(晴れ、北風、温度11℃、湿度25%、・・・)、
グリッド(3,2)=(晴れ、東風、温度13℃、湿度33%、・・・)、
グリッド(3,3)=(曇り、西風、温度10℃、湿度50%、・・・)などのデータが含まれる。観測装置10は、例えば上記のようなグリッド毎の気象データが含まれる観測データD1を生成し、生成した観測データD1を観測データ記録部15に記録させる。
【0018】
観測データ記録部15は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)などの記録媒体で構成される。観測データ記録部15は、観測装置10により生成された観測データD1を記録する。
【0019】
分割設定値データ記録部16は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)などの記録媒体で構成される。分割設定値データ記録部16は、分割設定値データD2を記録する。
【0020】
分割設定値データD2は、後述する不均一グリッド構築部4がグリッド変換を行う際に使用するパラメタである。具体的には、分割設定値データD2は、上記所定領域に含まれる複数のグリッドのうち、グリッド変換を行う対象となるグリッドを指定したデータ(以下、「変換対象データ」ともいう。)である。なお、詳しくは後述するが、グリッド変換とは、グリッドを細かくする(細分化する)こと、又は、グリッドを粗くする(統合する)ことをいう。
【0021】
例えば、分割設定値データD2は、グリッドを細かくする(細分化する)対象となるグリッドと、グリッドを粗くする(統合する)対象となるグリッドとを指定したデータである。なお、ここでは、「グリッドを細かくする」とは、グリッドの内部の領域を細分化することをいい、「グリッドを粗くする」とは、あるグリッドと、そのグリッドに隣接するグリッドとを結合して、1つのグリッドにまとめることをいう。また、以下の説明では、グリッドを細かくする対象となるグリッドを「細分化対象グリッド」ともいい、グリッドを粗くする対象となるグリッドを「統合対象グリッド」ともいう。
【0022】
例えば、上記した3行3列の合計9つのグリッドの場合、分割設定値データD2では、細分化対象グリッドとしてグリッド(1,1)、グリッド(1,3)、及びグリッド(2,1)が指定され、統合対象グリッドとしてグリッド(3,3)が指定されている。なお、分割設定値データD2は、例えば気象予測システム100のユーザ(以下、単に「ユーザ」ともいう。)により予め生成され、分割設定値データ記録部16に記録される。
【0023】
ここで、「グリッドの内部の領域を細かくする(細分化する)」とは、あるグリッドをさらに細かくして後続の処理を実施することで、予測対象領域における気象データをより高精度に予測することを意図している。
【0024】
例えば、ユーザは、予測対象領域を含むグリッドについては、分割設定値データD2においてこのグリッドを細分化対象グリッドに指定する。また、ユーザは、予測対象領域における気象予測に多大な影響を与える気象要素(例えば台風及び黄砂など)が発生し得る領域がある場合、そのような領域(例えば台風多発地帯、及び黄砂を考慮した砂漠地帯など)を含むグリッドについても、分割設定値データD2においてこのグリッドを細分化対象グリッドに指定する。なお、以下の説明では、予測対象領域における気象予測に多大な影響を与える気象要素が発生し得る領域を「影響領域」ともいう。
【0025】
一方、「グリッドの内部の領域を粗くする(統合する)」とは、あるグリッドとそのグリッドに隣接するグリッドとを統合して後続の処理を実施することで、処理負荷及び計算コストの増大を抑えながら予測処理を実施することを意図している。
【0026】
例えば、気象データにさほど変化がない、起伏の少ない土地からなる領域が所定領域に含まれる場合、そのような領域については、細かいグリッドによる高精度な予測は必要なく、ある程度の広さのグリッドに基づいて予測を行えば十分である場合がある。そこで、ユーザは、気象データにさほど変化がない領域、または気象データの時間的な変化に乏しい領域を含むグリッドについては、分割設定値データD2においてこのグリッドを統合対象グリッドに指定する。なお、「気象データにさほど変化がない領域」または「気象データの時間的な変化に乏しい領域」とは、例えば、所定の時間間隔(例えば5分間)における気象データの変化量が所定値以下である領域をいう。また、以下の説明では、このような領域を「単調領域」ともいう。
【0027】
<気象予測装置1>
気象予測装置1は、例えば
図1に示すように、観測データ取得部2(第1取得部)と、分割設定値データ取得部3(第2取得部)と、不均一グリッド構築部4(生成部)と、不均一グリッド予測処理部5(予測処理部)と、隣接グリッド判定データ記録部6と、を含んで構成される。
【0028】
観測データ取得部2は、観測データ記録部15から観測データD1(グリッドデータ)を取得する。観測データ取得部2は、当該取得した観測データD1を不均一グリッド構築部4に出力する。
【0029】
分割設定値データ取得部3は、分割設定値データ記録部16から分割設定値データD2を取得する。分割設定値データ取得部3は、当該取得した分割設定値データD2を不均一グリッド構築部4に出力する。なお、ここでは、分割設定値データD2において、例えば予測対象領域を含むグリッド、及び影響領域を含むグリッドが細分化対象グリッドに指定され、単調領域を含むグリッドが統合対象グリッドに指定されている。
【0030】
不均一グリッド構築部4は、観測データ取得部2から観測データD1を取得する。また、不均一グリッド構築部4は、分割設定値データ取得部3から分割設定値データD2を取得する。そして、不均一グリッド構築部4は、観測データD1が示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、観測データD1が示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合することにより、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在するグリッド(以下、「不均一グリッド」ともいう。)を構築し、不均一グリッドを示すデータ(以下、「不均一グリッドデータ」ともいう。)を生成する。このとき、不均一グリッド構築部4は、例えば分割設定値データ取得部3から取得した分割設定値データD2に基づいて、細分化するグリッド(細分化対象グリッド)と統合するグリッド(統合対象グリッド)とを選択する。
【0031】
<不均一グリッド構築部4>
不均一グリッド構築部4は、例えば
図1に示すように、領域選択部41と、選択領域グリッド変換部42と、グリッド再構築部43とを含んで構成される。
【0032】
領域選択部41は、分割設定値データD2に基づいて、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。領域選択部41は、選択した結果を示すデータを選択領域グリッド変換部42に出力する。
【0033】
選択領域グリッド変換部42は、領域選択部41から選択結果を示すデータを取得し、当該取得したデータに基づいてグリッド変換を行う。具体的には、選択領域グリッド変換部42は、例えば領域選択部41により選択された細分化対象グリッドを、観測データD1から一旦取り出し、取り出した細分化対象グリッドを所定の数のグリッドに細分化する。また、選択領域グリッド変換部42は、例えば領域選択部41により選択された統合対象グリッドを、観測データD1から一旦取り出し、取り出した統合対象グリッドを、隣接するグリッドと統合する。選択領域グリッド変換部42は、グリッド変換(細分化及び統合)を行った結果を示すデータをグリッド再構築部43に出力する。
【0034】
また、選択領域グリッド変換部42は、上記グリッド変換を行った後の観測データD1(グリッドデータ)における、各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データD3を生成する。そして、選択領域グリッド変換部42は、当該生成した隣接グリッド判定データD3を隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる。
【0035】
隣接グリッド判定データ記録部6は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)などの記録媒体で構成される。隣接グリッド判定データ記録部6は、隣接グリッド判定データD3を記録する。
【0036】
グリッド再構築部43は、選択領域グリッド変換部42から、上記グリッド変換を行った結果を示すデータを取得する。グリッド再構築部43は、当該取得したデータに基づいて、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在したグリッド(不均一グリッド)を構築し、当該不均一グリッドを示すデータ(不均一グリッドデータ)を生成する。グリッド再構築部43は、生成した不均一グリッドデータを不均一グリッド予測処理部5に出力する。
【0037】
不均一グリッド予測処理部5は、グリッド再構築部43から不均一グリッドデータを取得する。不均一グリッド予測処理部5は、当該取得した不均一グリッドデータと、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている隣接グリッド判定データD3とを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する。そして、不均一グリッド予測処理部5は、予測した予測対象領域の気象データを予測結果として出力する。
【0038】
このとき、不均一グリッドデータが示す不均一グリッドでは、予測対象領域を含むグリッドが細分化され、単調領域を含むグリッドが隣接するグリッドと統合されている。したがって、不均一グリッド予測処理部5は、細分化したグリッドにおける処理負荷の増大を、統合したグリッドにおける処理負荷の低減で補償することができる。その結果、不均一グリッド予測処理部5は、予測処理全体としての処理負荷の増大を抑制しつつ、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0039】
また、上記不均一グリッドでは、影響領域を含むグリッドも細分化されている。これにより、不均一グリッド予測処理部5は、影響領域において発生する気象要素の影響を予測対象領域に精度よく反映させ、予測対象領域における気象予測の精度をさらに向上させることができる。
【0040】
次に、実施の形態1に係る気象予測装置1の動作例について、
図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0041】
なお、以下の説明では、説明を簡単にするため、気象予測装置1の観測データ取得部2は、予め観測データ記録部15から観測データD1を取得し、当該取得した観測データD1を不均一グリッド構築部4に出力しているものとする。同様に、気象予測装置1の分割設定値データ取得部3は、予め分割設定値データ記録部16から分割設定値データD2を取得し、当該取得した分割設定値データD2を不均一グリッド構築部4に出力しているものとする。
【0042】
また、以下の説明では、分割設定値データD2において、予測対象領域を含むグリッド及び影響領域を含むグリッドが細分化対象グリッドに指定され、単調領域を含むグリッドが統合対象グリッドに指定されているものとする。
【0043】
まず、不均一グリッド構築部4の領域選択部41は、分割設定値データD2に基づいて、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する(ステップST01)。
【0044】
ここで、領域選択部41を含む不均一グリッド構築部4による処理の一例を
図3に示す。
図3Aは、観測データ記録部15から取得した観測データD1(グリッドデータ)の一例を示している。なお、
図3Aに示す観測データD1が示す各グリッドには、上述のように、グリッド毎の気象データが含まれている。
図3Aでは、この気象データの相違を、グリッドの濃淡で表現している。
【0045】
領域選択部41は、分割設定値データ記録部16から取得した分割設定値データD2に基づいて、例えば
図3Bに示すように、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。例えば、
図3Bにおいて、太線で囲まれたグリッドは、細分化対象グリッド又は統合対象グリッドとして選択されたグリッドを示している。
【0046】
次に、選択領域グリッド変換部42は、領域選択部41により選択されたグリッドに対し、グリッド変換を行う(ステップST02)。具体的には、選択領域グリッド変換部42は、領域選択部41により選択された細分化対象グリッドを細分化するとともに、領域選択部41により選択された統合対象グリッドを統合する。
【0047】
例えば、選択領域グリッド変換部42は、
図3Bに示すように、細分化対象グリッドを観測データD1から一旦取り出し、取り出した細分化対象グリッドを例えば4つのグリッドに細分化する。なお、選択領域グリッド変換部42が細分化対象グリッドをいくつのグリッドに細分化するかについては、例えば分割設定値データD2においてユーザが任意に設定可能である。
【0048】
また、
図3Bでは図示していないが、選択領域グリッド変換部42は、統合対象グリッドを統合する場合も、細分化対象グリッドを細分化する場合と同様に行えばよい。例えば、選択領域グリッド変換部42は、統合対象グリッドと、この統合対象グリッドの東西南北(上下左右)に隣接するグリッド(隣接グリッド)とを観測データD1から一旦取り出し、取り出した各グリッドをまとめて1つのグリッドとすればよい。また、選択領域グリッド変換部42は、上記に加えて、統合対象グリッドの斜め方向に隣接するグリッドを観測データD1から一旦取り出し、取り出した各グリッドをまとめて1つのグリッドとしてもよい。なお、上述の例をはじめとして、選択領域グリッド変換部42が統合対象グリッドをどの範囲までの隣接グリッドとまとめるかについては、分割設定値データD2においてユーザが任意に設定可能である。
【0049】
なお、選択領域グリッド変換部42は、上記のようなグリッド変換を行った後、当該変換後のグリッドにおける気象データを補充する必要がある。その場合、例えば選択領域グリッド変換部42は、変換後のグリッドにおける気象データを観測装置10から再取得する旨を観測データ取得部2に指示してもよい。観測データ取得部2は、この指示を受けると、変換後のグリッドにおける気象データを観測装置10から再取得し、再取得した気象データを選択領域グリッド変換部42に出力する。そして、選択領域グリッド変換部42は、この再取得された気象データを、変換後のグリッドにおける気象データとして補充すればよい。
【0050】
あるいは、選択領域グリッド変換部42は、変換後のグリッドにおける気象データを、当該変換後のグリッドに隣接するグリッドにおける気象データに基づいて補間することにより、補充するようにしてもよい。選択領域グリッド変換部42は、上記のようにして気象データを補充すると、補充した気象データを含む、グリッド変換を行った結果を示すデータを、グリッド再構築部43に出力する。
【0051】
また、このとき選択領域グリッド変換部42は、隣接グリッド判定データD3を生成し、生成した隣接グリッド判定データD3を隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる。隣接グリッド判定データD3は、上述のように、選択領域グリッド変換部42がグリッド変換を行った後の観測データD1(すなわち、不均一グリッドデータ)が示すグリッドにおける、各グリッドの隣接関係を示すデータである。
【0052】
隣接グリッド判定データD3の一例を、
図4を参照しながら説明する。
図4は、不均一グリッドの一例である。なお、
図4では、説明の便宜上、統合対象グリッドの表示を省略している。また、
図4では、説明の便宜上、各グリッドを識別するための番号を各グリッドに付している。
【0053】
不均一グリッドが
図4に示す例の場合、隣接グリッド判定データD3は、例えば、
グリッド1に隣接するグリッド=(グリッド61、グリッド62、及びグリッド2)、
グリッド2に隣接するグリッド=(グリッド1、グリッド71、グリッド72、及びグリッド3)、
グリッド3に隣接するグリッド=(グリッド2、グリッド8、グリッド41、及びグリッド43)、
グリッド41に隣接するグリッド=(グリッド3、グリッド42、及びグリッド43)、
グリッド42に隣接するグリッド=(グリッド41、グリッド44、及びグリッド51)、
グリッド43に隣接するグリッド=(グリッド3、グリッド41、グリッド44、及びグリッド91)、
グリッド44に隣接するグリッド=(グリッド42、グリッド43、グリッド53、及びグリッド92)、
グリッド51に隣接するグリッド=(グリッド42、グリッド52、及びグリッド53)、
グリッド52に隣接するグリッド=(グリッド51、及びグリッド54)などのように生成される。
【0054】
次に、グリッド再構築部43は、選択領域グリッド変換部42から取得した、グリッド変換を行った結果を示すデータに基づいて、例えば
図3Cに示すような、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在した不均一グリッドを構築し、不均一グリッドを示す不均一グリッドデータを生成する(ステップST03)。なお、
図3Cの例では、細分化されたグリッドは4つのグリッドに細分化されている。また、
図3Cの例では、右下の空白で示されたグリッドが統合されたグリッドである。
【0055】
例えば、グリッド再構築部43は、
図3Cに示すように、選択領域グリッド変換部42により細分化されたグリッドを、観測データD1における元の位置に戻して、他のグリッドと合成する。この場合、グリッド再構築部43は、細分化されたグリッドの観測データD1における元の位置を予め記憶しておくとよい。
【0056】
なお、
図3Cでは、グリッド再構築部43が細分化されたグリッドを観測データD1における元の位置に戻す場合を例示しているが、グリッド再構築部43が統合されたグリッドを観測データD1における元の位置に戻す場合についても同様である。グリッド再構築部43は、上記のようにして生成した不均一グリッドデータを不均一グリッド予測処理部5に出力する。
【0057】
なお、上記の例では、選択領域グリッド変換部42が、領域選択部41により選択された細分化対象グリッド及び統合対象グリッドを観測データD1から一旦取り出し、取り出したグリッドを細分化及び統合し、グリッド再構築部43が、細分化及び統合されたグリッドを観測データD1における元の位置に戻す例を説明した。しかしながら、選択領域グリッド変換部42はこれに限らず、領域選択部41により選択された細分化対象グリッド等を観測データD1から取り出さずに、そのままの位置で細分化等して不均一グリッドを構築し、不均一グリッドデータを生成してもよい。この場合、グリッド再構築部43は省略されてもよい。
【0058】
また、上記の例では、選択領域グリッド変換部42が隣接グリッド判定データD3を生成して隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる例を説明したが、これに限らず、例えばグリッド再構築部43が隣接グリッド判定データD3を生成して隣接グリッド判定データ記録部6に記録させてもよい。
【0059】
次に、不均一グリッド予測処理部5は、グリッド再構築部43から取得した不均一グリッドデータと、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている隣接グリッド判定データD3とを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する(ステップST04)。
【0060】
ここで、不均一グリッド予測処理部5による気象予測の方法について、グリッドデータを用いた従来の気象予測の方法と対比しながら説明する。
【0061】
例えば、従来の気象予測では、基本的には各グリッドが1対1で隣接するように構成されたグリッド(以下、「均一グリッド」ともいう。)を示すデータ(以下、「均一グリッドデータ」ともいう。)を用いることを前提とし、この均一グリッドにおける各グリッドの気象データを参照することにより、予測対象領域の気象予測を行う。
【0062】
例えば、従来の気象予測では、均一グリッドにおけるあるグリッドと、このグリッドの東西南北(上下左右)に隣接する4つのグリッドと、このグリッドの高さ方向に隣接する2つのグリッドとの合計7つのグリッドを用いた、7点ステンシル計算と呼ばれる計算を繰り返すことにより、気象予測を行う。具体的には、例えば従来の気象予測では、これら7つのグリッドの各グリッドにおける気象データ(気温、及び湿度など)に所定の重み係数等を乗算したうえで、これらの各気象データに対して加算及び乗算等の所定の演算を行う。従来の気象予測では、この演算を、グリッドデータに含まれるすべてのグリッドが計算対象となるよう順次繰り返すことにより、予測対象領域の気象データを予測する。
【0063】
一方、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドでは、グリッド同士の隣接関係は必ずしも1対1とはならない。例えば、
図4で示したように、選択領域グリッド変換部42によるグリッド変換の結果、統合されたグリッドのいずれか一方の隣(例えば東側)に、複数個のグリッドが隣接するといった状態が生じる場合がある。なお、以下の説明では、このように1つのグリッドのいずれか一方の隣に複数個のグリッドが隣接する関係を「不均一な隣接関係」ともいう。この場合、不均一グリッド予測処理部5は、上述のような従来手法を用いた処理を行うことができない。
【0064】
そこで、不均一グリッド予測処理部5は、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている隣接グリッド判定データD3を参照して、不均一な隣接関係となっているグリッドの組を特定する。そして、不均一グリッド予測処理部5は、当該特定したグリッドの組に対して内挿補間処理を施すことにより、不均一な隣接関係を実質的に解消する。
【0065】
不均一グリッド予測処理部5による内挿補間処理の一例を
図5に示す。例えば
図5において、符号501は統合されたグリッド(レ点)であり、符号502~504はグリッド501の左隣に隣接するグリッド(それぞれ○、△、□)である。このとき、グリッドの大きさは、グリッド501>グリッド502>グリッド503=グリッド504となっている。
【0066】
この場合、不均一グリッド予測処理部5は、例えばグリッド501について、東西南北(上下左右)方向に隣接するグリッドが複数であるか否かを、隣接グリッド判定データD3に基づいて判断する。例えば
図5の例では、グリッド501の西側(左側)に3つのグリッド(グリッド502~504)が隣接している。この場合、不均一グリッド予測処理部5は、これらグリッド501~504が不均一な隣接関係にあると判断する。
【0067】
そして、不均一グリッド予測処理部5は、例えば
図5に示すように、まず、グリッド502~504を中点位置に内挿補間し、その結果として、新たなグリッド505(×)を得る。
【0068】
例えば、
図5に示すグラフ506は、グリッド502~504における気象データ(例えば気温、湿度、及び気圧等)を模式的に示したグラフである。グラフ506の横軸上における「〇」「△」「□」は、それぞれ各グリッドに付された記号「〇」「△」「□」に対応しており、グラフ506の横軸上における「×」は、内挿補間の結果として得られた新たなグリッド「×」に対応している。
【0069】
例えば、気象データが気温であり、記号「□」が付されたグリッド504における気温が20℃であり、記号「△」が付されたグリッド503における気温が19℃であり、記号「○」が付されたグリッド502における気温が16℃であった場合、不均一グリッド予測処理部5は、これらの気温を内挿補間した結果として、記号「×」が付されたグリッド505における気温を18℃とする。
【0070】
これにより、レ点が付されたグリッド501の左隣には、記号「×」が付されたグリッド505が1つだけ隣接することとなる。そして、不均一グリッド予測処理部5は、このような処理を、不均一な隣接関係にあるグリッドの組に対して順次行う。これにより、不均一グリッド予測処理部5は、グリッド再構築部43から取得した不均一グリッドデータを用いて、従来手法による演算を行えるようになる。
【0071】
以上の処理を、
図2のフローチャートに基づいて説明すると、不均一グリッド予測処理部5は、不均一グリッドにおける各グリッドを(i、j)と表記する場合、i及びjを1からカウントアップさせながら、各グリッドを一つずつ参照する(ステップST41)。なお、iは各グリッドの東西方向(左右方向)の位置を示す変数であり、jは各グリッドの南北方向(上下方向)の位置を示す変数である。
【0072】
次に、不均一グリッド予測処理部5は、グリッド(i、j)の東西南北の各方向に隣接するグリッドの数を、隣接グリッド判定データD3に基づいて算出する(ステップST42)。
【0073】
そして、不均一グリッド予測処理部5は、グリッド(i、j)の東西南北の各方向に隣接するグリッドの数が複数であるか否かを判定する(ステップST43)。その結果、グリッド(i、j)の東西南北の各方向に隣接するグリッドの数が複数であると判定された場合(ステップST43;YES)、不均一グリッド予測処理部5は、上述のように、それらのグリッドを内挿補間処理により補間し、1つのグリッドへ変換する(ステップST44)。その後、処理はステップST41へ戻る。
【0074】
一方、グリッド(i、j)の東西南北の各方向に隣接するグリッドの数が複数でないと判定された場合(ステップST43;NO)、処理はステップST41へ戻る。
【0075】
以下、不均一グリッド予測処理部5は、すべてのグリッドについて、ステップST41~ST44の処理を繰り返す。その後、処理はステップST45へ遷移し、不均一グリッド予測処理部5は、ステップST41~ST44の処理が完了した不均一グリッドデータを用いて、予測対象領域における気象データを予測する(ステップST45)。
【0076】
なお、気象予測装置1では、不均一グリッド予測処理部5が上記のような内挿補間処理を行った場合でも、補間前のグリッド(例えば
図5に示すグリッド502~504)に対して再びグリッド変換が行われる可能性もある。そこで、不均一グリッド予測処理部5は、上記のような内挿補間処理を行った場合でも、補間前のグリッドに関するデータは観測データD1から削除せずにそのまま残しておくとよい。また、上記と同様の理由から、不均一グリッド予測処理部5は、補間前の時点で生成されていた隣接グリッド判定データD3は更新しない方がよい。
【0077】
また、不均一グリッド予測処理部5は、上記のような内挿補間処理を行った場合、効率化の観点から、新たに得られたグリッド505に関するデータ(気象データなど)を観測データD1に追加してもよい。また、上記の場合、不均一グリッド予測処理部5は、効率化の観点から、補間後のグリッド間の隣接情報(例えば
図5に示すグリッド505とグリッド501とが隣接している旨の情報)を隣接グリッド判定データD3に追加してもよい。
【0078】
不均一グリッド予測処理部5は、上記のような処理を行うことにより、不均一グリッドデータを用いて予測対象領域の気象データを予測することができる。特に、上記の例では、不均一グリッドデータが示す不均一グリッドにおいて、予測対象領域を含むグリッドが細分化されている一方、単調領域を含むグリッドは隣接するグリッドと統合されている。したがって、不均一グリッド予測処理部5は、細分化したグリッドにおける処理負荷の増大を、統合したグリッドにおける処理負荷の低減で補償することができる。その結果、不均一グリッド予測処理部5は、予測処理全体としての処理負荷の増大を抑制しつつ、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0079】
また、上記の例では、不均一グリッドデータが示す不均一グリッドにおいて、影響領域を含むグリッドも細分化されている。これにより、不均一グリッド予測処理部5は、影響領域において発生する気象要素の影響を予測対象領域に精度よく反映させ、予測対象領域における気象予測の精度をさらに向上させることができる。
【0080】
次に、
図6を参照して、実施の形態1に係る気象予測装置1のハードウェア構成例を説明する。気象予測装置1における観測データ取得部2、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4(領域選択部41、選択領域グリッド変換部42、及びグリッド再構築部43)、並びに不均一グリッド予測処理部5の各機能は、処理回路により実現される。処理回路は、
図6Aに示すように、専用のハードウェアであってもよいし、
図6Bに示すように、メモリ53に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)ともいう)52であってもよい。
【0081】
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路51は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。観測データ取得部2、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4、及び不均一グリッド予測処理部5の各部の機能それぞれを処理回路51で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路51で実現してもよい。
【0082】
処理回路がCPU52の場合、観測データ取得部2、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4、及び不均一グリッド予測処理部5の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ53に格納される。処理回路は、メモリ53に記録されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、気象予測装置1は、処理回路により実行されるときに、例えば
図2に示した各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを備える。また、これらのプログラムは、観測データ取得部2、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4、及び不均一グリッド予測処理部5の手順及び方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ53としては、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、又はDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0083】
なお、観測データ取得部2、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4、及び不均一グリッド予測処理部5の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、観測データ取得部2については専用のハードウェアとしての処理回路でその機能を実現し、分割設定値データ取得部3、不均一グリッド構築部4、及び不均一グリッド予測処理部5については処理回路がメモリ53に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0084】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0085】
以上のように、実施の形態1によれば、気象予測装置1は、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割されたグリッド毎に観測された気象データを含むグリッドデータ(観測データD1)を取得する観測データ取得部2と、観測データ取得部2により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、グリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合し、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む不均一グリッドデータを生成する不均一グリッド構築部4と、不均一グリッド構築部4により生成された不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する不均一グリッド予測処理部5と、を備えた。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、従来に対し、処理負荷の増大を抑制しつつ、気象状況の予測精度を向上可能となる。
【0086】
また、不均一グリッド構築部4は、不均一グリッドにおける各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データD3を生成し、不均一グリッド予測処理部5は、不均一グリッド構築部4により生成された隣接グリッド判定データD3に基づいて、不均一グリッドデータが示す不均一グリッドから、不均一な隣接関係となっているグリッドの組を特定し、当該特定したグリッドの組に対して内挿補間処理を施した上で予測を行う。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、不均一グリッドデータを用いた気象予測を正確に行うことができる。
【0087】
また、不均一グリッド構築部4は、グリッドデータが示すグリッドのうち、予測対象領域を含むグリッドを細分化し、気象データの時間的な変化に乏しい領域を含むグリッド当該グリッドに隣接するグリッドとを統合する。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、予測処理全体としての処理負荷の増大を抑制しつつ、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0088】
また、不均一グリッド構築部4は、グリッドデータが示すグリッドのうち、予測対象領域における気象予測に影響を与える気象要素が発生し得る領域を含むグリッドを細分化する。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、上記領域において発生する気象要素の影響を予測対象領域に精度よく反映させ、予測対象領域における気象予測の精度をさらに向上させることができる。
【0089】
また、気象予測装置1は、グリッドデータが示すグリッドのうち、細分化する対象となる細分化対象グリッドを示すデータと、隣接するグリッドと統合する対象となる統合対象グリッドを示すデータである変換対象データ(分割設定値データ)D2を取得する分割設定値データ取得部3を備え、不均一グリッド構築部4は、分割設定値データ取得部3により取得された変換対象データD2に基づいて、細分化及び統合を行う。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、グリッドの細分化及び統合を正確に行うことができる。
【0090】
また、不均一グリッド構築部4は、分割設定値データ取得部3により取得された変換対象データに基づいて、グリッドデータが示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する領域選択部41と、領域選択部41により選択された細分化対象グリッドを細分化するとともに、領域選択部41により選択された統合対象グリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合することにより、不均一グリッドデータを生成する選択領域グリッド変換部42と、を含んで構成される。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを適切に選択して不均一グリッドデータを生成することができる。
【0091】
また、選択領域グリッド変換部42は、細分化及び統合を行ったグリッドにおける気象データを補充し、不均一グリッド予測処理部5は、選択領域グリッド変換部42により気象データが補充された後の不均一グリッドデータを用いて予測を行う。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、補充された気象データに基づいて、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0092】
また、選択領域グリッド変換部42は、細分化及び統合を行ったグリッドにおける気象データを、当該各グリッドに隣接するグリッドにおける気象データに基づいて内挿補間することにより補充する。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、細分化及び統合を行ったグリッドにおける気象データを容易に補充することができる。
【0093】
また、選択領域グリッド変換部42は、細分化及び統合を行ったグリッドにおける気象データを取得する旨を観測データ取得部2に指示することにより、当該各グリッドにおける気象データを補充する。これにより、実施の形態1に係る気象予測装置1は、細分化及び統合を行ったグリッドにおける気象データを容易に補充することができる。
【0094】
実施の形態2.
実施の形態1では、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する気象予測装置について説明した。実施の形態2では、所定領域だけでなくその周辺領域を気象データの観測対象とした場合において、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する気象予測装置について説明する。
【0095】
図7は、実施の形態2に係る気象予測装置1bを含む気象予測システム100bの構成例を示す図である。実施の形態2に係る気象予測システム100bは、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100に対し、観測装置10が複数設置されている点、及び、位置データ記録部17が追加されている点が異なっている。
【0096】
また、実施の形態2に係る気象予測装置1bは、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測装置1に対し、位置データ取得部7(第3取得部)が追加されるとともに、不均一グリッド構築部4が不均一グリッド構築部4bに、不均一グリッド予測処理部5が不均一グリッド予測処理部5bに、それぞれ変更されている点が異なっている。なお、不均一グリッド構築部4bの各構成要素は、符号の末尾に「b」を付して表現する。
【0097】
実施の形態2に係る気象予測システム100b及び気象予測装置1bのその他の構成は、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100及び気象予測装置1と同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
観測装置10は、実施の形態1と同様、気象予測の対象となる領域(予測対象領域)を含む、所定領域における気象状況(気象データ)を観測する装置である。実施の形態2では、観測装置10は複数台設置されており、そのうちのある観測装置10は、予測対象領域を含む所定領域(以下、「基準領域」ともいう。)における気象状況を観測する。また、その他の観測装置10は、当該基準領域以外の所定領域(以下、「周辺領域」ともいう。)における気象状況を観測する。なお、基準領域と周辺領域とは、例えば隣接する(地続きの)領域である。
【0099】
各観測装置10は、例えば予め設定された時刻において、観測対象となる領域における気象状況を観測し、観測データD1を生成する。観測データD1は、実施の形態1と同様、例えば上記基準領域又は周辺領域を複数のグリッド(格子)に分割してなるグリッドデータであり、このグリッドデータには、グリッド毎に観測された気象データが含まれている。各観測装置10は、生成した観測データD1を観測データ記録部15に記録させる。
【0100】
分割設定値データ記録部16は、分割設定値データD2を記録する。実施の形態2では、分割設定値データD2は、例えばユーザにより上記基準領域及び周辺領域毎に生成され、分割設定値データ記録部16に記録されている。
【0101】
位置データ記録部17は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)などの記録媒体で構成される。位置データ記録部17は、位置データD4を記録する。
【0102】
位置データD4は、上記基準領域及び周辺領域のそれぞれの位置を示すデータである。例えば、上記基準領域及び周辺領域がそれぞれ矩形状に区画された領域である場合、位置データD4は、当該矩形状に区画された領域の中心点の緯度及び経度、並びに、当該矩形状に区画された領域の四隅の点の緯度及び経度を示すデータを含んでいる。位置データD4は、ユーザにより予め生成され、位置データ記録部17に記録される。なお、ここで示した位置データD4はあくまで一例であり、上記基準領域及び周辺領域のそれぞれの位置を示すデータであれば、位置データD4は上記以外のデータを含んでいてもよい。
【0103】
位置データ取得部7は、位置データ記録部17から位置データD4を取得する。位置データ取得部7は、当該取得した位置データD4を不均一グリッド構築部4bに出力する。
【0104】
不均一グリッド構築部4bは、観測データ取得部2から基準領域及び周辺領域毎の観測データD1を取得する。また、不均一グリッド構築部4bは、分割設定値データ取得部3から基準領域及び周辺領域毎の分割設定値データD2を取得する。そして、不均一グリッド構築部4bは、各観測データD1について、観測データD1(グリッドデータ)が示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、観測データD1が示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合することにより、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示す不均一グリッドデータを生成する。このとき、不均一グリッド構築部4は、分割設定値データ取得部3から取得した、基準領域及び周辺領域毎の分割設定値データD2に基づいて、対応する領域における細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。また、不均一グリッド構築部4は、位置データ取得部7から取得した位置データD4に基づいて、不均一グリッドデータを生成する。
【0105】
領域選択部41bは、基準領域及び周辺領域毎の分割設定値データD2に基づいて、対応する領域における観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。領域選択部41bは、選択した結果を示すデータを選択領域グリッド変換部42bに出力する。
【0106】
選択領域グリッド変換部42bは、領域選択部41bから選択結果を示すデータを取得する。選択領域グリッド変換部42bは、当該取得したデータに基づき、実施の形態1と同様、基準領域及び周辺領域毎にグリッド変換(細分化及び統合)を行う。選択領域グリッド変換部42bは、グリッド変換を行った結果を示すデータをグリッド再構築部43bに出力する。
【0107】
また、選択領域グリッド変換部42bは、上記グリッド変換を行った後の観測データD1(グリッドデータ)における、各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データD3を、基準領域及び周辺領域毎に生成する。また、選択領域グリッド変換部42は、当該生成した基準領域及び周辺領域毎の隣接グリッド判定データD3を隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる。
【0108】
グリッド再構築部43bは、選択領域グリッド変換部42bから、上記グリッド変換を行った結果を示すデータを取得する。グリッド再構築部43bは、当該取得したデータに基づいて、基準領域及び周辺領域毎に、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在したグリッド(不均一グリッド)を構築し、当該不均一グリッドを示すデータ(不均一グリッドデータ)を生成する。また、グリッド再構築部43bは、位置データD4に基づいて、基準領域及び周辺領域毎に生成した不均一グリッドデータを合成し、基準領域及び周辺領域をつなぎ合わせた領域に関する不均一グリッドデータ(以下、「拡張不均一グリッドデータ」ともいう。)を生成する。グリッド再構築部43bは、生成した拡張不均一グリッドデータを不均一グリッド予測処理部5bに出力する。
【0109】
不均一グリッド予測処理部5bは、グリッド再構築部43bから拡張不均一グリッドデータを取得し、当該取得した拡張不均一グリッドデータと、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている基準領域及び周辺領域毎の隣接グリッド判定データD3とを用いて、基準領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する。そして、不均一グリッド予測処理部5bは、予測した予測対象領域の気象データを予測結果として出力する。
【0110】
次に、実施の形態2に係る気象予測装置1bの動作例について、
図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0111】
まず、不均一グリッド構築部4bの領域選択部41bは、基準領域及び周辺領域毎の分割設定値データD2に基づいて、対応する領域における観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する(ステップST11)。なお、領域選択部41bは、
図8に示す点線の枠内に示すように、この選択を、基準領域及び周辺領域毎に並行して行ってもよい。
【0112】
次に、選択領域グリッド変換部42bは、領域選択部41bにより選択されたグリッドに対し、基準領域及び周辺領域毎にグリッド変換を行う(ステップST12)。なお、選択領域グリッド変換部42bは、
図8に示す点線の枠内に示すように、このグリッド変換を、基準領域及び周辺領域毎に並行して行ってもよい。
【0113】
次に、グリッド再構築部43bは、選択領域グリッド変換部42bから取得した、グリッド変換を行った結果を示すデータに基づいて、基準領域及び周辺領域毎に不均一グリッドを構築し、不均一グリッドデータを生成する。また、グリッド再構築部43bは、位置データD4に基づいて、基準領域及び周辺領域毎に生成した不均一グリッドデータを合成し、基準領域及び周辺領域をつなぎ合わせた領域に関する拡張不均一グリッドデータを生成する(ステップST13)。
【0114】
次に、不均一グリッド予測処理部5bは、グリッド再構築部43bから拡張不均一グリッドデータを取得し、当該取得した拡張不均一グリッドデータと、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている基準領域及び周辺領域毎の隣接グリッド判定データD3とを用いて、基準領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する(ステップST14)。
【0115】
このように、実施の形態2に係る気象予測装置1bは、互いに異なる領域を観測対象とする観測装置10により得られた観測データを組み合わせて利用できる。したがって、気象予測装置1bは、より広範囲にわたる領域において観測された観測データを効率よく加味しつつ、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0116】
以上のように、実施の形態2によれば、観測データ取得部2は、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータD1と、当該所定領域以外の周辺領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータD1とを取得し、不均一グリッド構築部4bは、観測データ取得部2により取得された所定領域及び周辺領域毎のグリッドデータD1に基づいて、当該所定領域及び周辺領域をつなぎ合わせた領域に関する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む拡張不均一グリッドデータを生成し、不均一グリッド予測処理部5bは、不均一グリッド構築部4bにより生成された拡張不均一グリッドデータを用いて予測を行う。これにより、実施の形態2に係る気象予測装置1bは、実施の形態1の効果に加え、より広範囲にわたる領域において観測された観測データを効率よく加味しつつ、予測対象領域における気象予測を高精度に行うことができる。
【0117】
また、気象予測装置1bは、所定領域及び周辺領域の位置を示すデータD4を取得する位置データ取得部7を備え、不均一グリッド構築部4bは、位置データ取得部7により取得された位置データD4に基づいて、拡張不均一グリッドデータを生成する。これにより、実施の形態2に係る気象予測装置1bは、実施の形態1の効果に加え、拡張不均一グリッドデータを正確に生成することができる。
【0118】
実施の形態3.
実施の形態1では、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する気象予測装置について説明した。実施の形態3では、予測された気象データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定可能な気象予測装置について説明する。
【0119】
図9は、実施の形態3に係る気象予測装置1cを含む気象予測システム100cの構成例を示す図である。実施の形態3に係る気象予測装置1cは、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測装置1に対し、判定部8が追加されるとともに、不均一グリッド構築部4が不均一グリッド構築部4cに、不均一グリッド予測処理部5が不均一グリッド予測処理部5cに、それぞれ変更されている点が異なっている。なお、不均一グリッド構築部4cの各構成要素は、符号の末尾に「c」を付して表現する。実施の形態3に係る気象予測システム100c及び気象予測装置1cのその他の構成は、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100及び気象予測装置1と同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0120】
不均一グリッド予測処理部5cは、予測した予測対象領域の気象データ(以下、「予測データ」ともいう。)を外部に出力する前に、判定部8に出力する。
【0121】
判定部8は、不均一グリッド予測処理部5cから予測データを取得する。そして、判定部8は、当該取得した予測データに基づき、当該予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定する。
【0122】
判定部8は、この場合の判定を例えば以下のように行う。例えば、判定部8は、将来の任意の時刻(例えば200秒後)における予測結果を示す予測データを不均一グリッド予測処理部5から取得する。また、判定部8は、実際に上記時刻(例えば200秒後)に観測装置10により観測された、予測対象領域の気象データ(以下、「実測データ」ともいう。)を取得する。この場合、判定部8は、例えば上記実測データを観測装置10から直接取得してもよいし、観測データ取得部2に対して観測装置10からの上記実測データの取得を指示し、観測データ取得部2により取得された実測データを取得してもよい。
【0123】
そして、判定部8は、予測データと実測データとの一致率を算出し、算出した一致率が閾値以上であれば、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていると判定する。一方、判定部8は、算出した一致率が閾値未満であれば、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていないと判定する。なお、この閾値は、例えばユーザにより予め設定され、分割設定値データ記録部16に記録されていればよい。
【0124】
判定部8は、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていると判定した場合、その旨を不均一グリッド予測処理部5cに通知する。一方、判定部8は、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていないと判定した場合、その旨を不均一グリッド予測処理部5cに通知するとともに、不均一グリッド構築部4cに対し、不均一グリッドの再構築及び不均一グリッドデータの再生成を指示する。
【0125】
この指示を受けると、不均一グリッド構築部4cの領域選択部41cは、先の予測の際に細分化対象グリッドとして選択していたグリッドを参照し、このグリッドの内の少なくとも1つが、さらに細分化できるグリッドであるか否かを判断する。
【0126】
なお、この判断は、例えば以下のようにして行われる。例えば、ユーザは、1つのグリッドについて細分化することができる最大回数を予め設定しておき、当該最大回数を示すデータを分割設定値データ記録部16に記録しておく。そして、領域選択部41cは、先の予測の際に細分化対象グリッドとして選択していたグリッドについて、そのグリッドが細分化された回数が、当該最大回数に達していない場合に、そのグリッドはさらに細分化できるグリッドであると判断する。
【0127】
あるいは、ユーザは、1つのグリッドが取り得る最小面積を予め設定しておき、当該最小面積を示すデータを分割設定値データ記録部16に記録しておく。そして、領域選択部41cは、先の予測の際に細分化対象グリッドとして選択していたグリッドについて、そのグリッドの面積が、当該最小面積よりも大きい場合に、そのグリッドはさらに細分化できるグリッドであると判断する。
【0128】
そして、領域選択部41cは、細分化対象グリッドとして選択していたグリッドのうちの少なくとも1つが、さらに細分化できるグリッドであると判断した場合、その旨を示すデータを選択領域グリッド変換部42cに出力する。一方、細分化対象グリッドとして選択していたグリッドのすべてが、それ以上細分化できないグリッドであれば、領域選択部41cはその旨を不均一グリッド予測処理部5cに通知する。
【0129】
選択領域グリッド変換部42cは、領域選択部41cから、細分化対象グリッドとして選択していたグリッドのうちの少なくとも1つがさらに細分化できるグリッドである旨を示すデータを取得すると、実施の形態1と同様の方法で、そのグリッドをさらに細分化する。選択領域グリッド変換部42cは、細分化した結果を示すデータをグリッド再構築部43cに出力する。また、選択領域グリッド変換部42cは、細分化を行った後の観測データD1(グリッドデータ)における、各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データD3を生成し、当該生成した隣接グリッド判定データD3を隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる。
【0130】
グリッド再構築部43cは、実施の形態1と同様にして、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在した不均一グリッドを構築し、不均一グリッドを示す不均一グリッドデータを生成する。そして、不均一グリッド予測処理部5cは、当該生成された不均一グリッドデータを用いて再度予測を行い、その結果得られた予測データを判定部8に出力する。判定部8は、上記と同様の流れで、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定する。
【0131】
なお、不均一グリッド予測処理部5cは、判定部8から、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できている旨を通知された場合、当該予測結果を外部に出力する。また、不均一グリッド予測処理部5cは、領域選択部41cから、細分化対象グリッドとして選択していたグリッドのすべてがそれ以上細分化できないグリッドである旨を通知された場合、その旨と、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていない旨とを併せて外部に出力してもよい。
【0132】
なお、気象予測装置1cでは、不均一グリッド予測処理部5cから判定部8への予測データの出力と、判定部8による判定は、繰り返し行われてもよい。その場合、当該繰り返しの回数は、例えばユーザにより予め設定され、分割設定値データ記録部16に記録されていてもよい。
【0133】
次に、実施の形態3に係る気象予測装置1cの動作例について、
図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、
図10に示すフローチャートのステップST21~ST23は、
図2に示すフローチャートのステップST01~ST03と同様であるため、再度の説明は省略する。
【0134】
ステップST24において、不均一グリッド予測処理部5cは、不均一グリッドデータを用いて、予測対象領域における気象データを予測し、当該予測により得られた予測データを判定部8に出力する。
【0135】
ステップST25において、判定部8は、不均一グリッド予測処理部5から予測データを取得し、当該取得した予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定する(ステップST25)。その結果、判定部8は、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていると判定した場合(ステップ25;YES)、不均一グリッド予測処理部5は当該予測データが示す予測結果を出力して処理を終了する。一方、判定部8は、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていないと判定した場合(ステップ25;NO)、不均一グリッド構築部4cに対し、不均一グリッドの再構築及び不均一グリッドデータの再生成を指示する。その後、処理はステップST21へ戻り、領域選択部41cによる再度の領域選択(さらに細分化できる細分化対象グリッドの選択)が行われる。以下、気象予測装置1cは、ステップST25において、予測データが示す予測結果が所定の精度を確保できていると判定されるまで、ステップST21~ST25の処理を繰り返す。
【0136】
このように、実施の形態3に係る気象予測装置1cは、不均一グリッドを用いた予測処理の結果、所定の精度を確保した予測結果が得られなかった場合に、不均一グリッドの再構築及び不均一グリッドデータの再生成を行って予測処理を行う。これにより、気象予測装置1cは、所定の精度が得られていない予測結果を出力することを回避でき、より高精度な予測結果を出力することができる。
【0137】
以上のように、実施の形態3によれば、気象予測装置1cは、不均一グリッド予測処理部5cにより予測された気象データが示す予測結果が所定の精度を確保できているか否かを判定する判定部8を備え、判定部8は、予測結果が所定の精度を確保できていないと判定した場合、不均一グリッド構築部4cに対し、不均一グリッドデータの再生成を指示し、
不均一グリッド構築部4cは、当該指示を受けると、不均一グリッドに含まれる、細分化されたグリッドのうち、さらに細分化できるグリッドを細分化することにより、不均一グリッドデータを再生成する。これにより、実施の形態3に係る気象予測装置1cは、実施の形態1の効果に加え、所定の精度が得られていない予測結果を出力することを回避でき、より高精度な予測結果を出力することができる。
【0138】
また、判定部8は、不均一グリッド予測処理部5cにより予測された、将来の任意の時刻における予測結果を示す気象データと、当該時刻において実際に予測対象領域にて観測された気象データとの一致率を算出し、当該算出した一致率が閾値未満である場合に、予測結果が所定の精度を確保できていないと判定する。これにより、実施の形態3に係る気象予測装置1cは、実施の形態1の効果に加え、予測結果が所定の精度を確保できているか否かを正確に判定することができる。
【0139】
実施の形態4.
実施の形態1では、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する気象予測装置について説明した。実施の形態4では、予測対象領域における降雨及び風に関する予測をより高精度に行うことが可能な気象予測装置について説明する。
【0140】
図11は、実施の形態4に係る気象予測装置1dを含む気象予測システム100dの構成例を示す図である。実施の形態4に係る気象予測装置1dは、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測装置1に対し、領域選択部41が領域選択部41dに、不均一グリッド構築部4が不均一グリッド構築部4dに、それぞれ変更されている点が異なっている。実施の形態4に係る気象予測システム100d及び気象予測装置1dのその他の構成は、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100及び気象予測装置1と同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0141】
領域選択部41dは、実施の形態1と同様、分割設定値データD2に基づいて、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。
【0142】
また、領域選択部41dは、上記の選択後に、観測データD1が示すグリッドを一つずつ参照し、各グリッドにおける気象データが示す風速及び湿度が閾値以上であるか否かを判定する。そして、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上であると判定したグリッドを、細分化対象グリッドとして追加的に選択する。なお、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上であると判定したグリッドが、既に分割設定値データD2に基づいて細分化対象グリッドに選択されていれば、その選択を維持する。
【0143】
一方、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上でないと判定したグリッドについては、細分化対象グリッドとして追加的に選択しない。なお、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上でないと判定したグリッドが、既に分割設定値データD2に基づいて細分化対象グリッドに選択されていれば、その選択を維持してもよいし、処理負荷を考慮してその選択を取り消してもよい。その後、領域選択部41dは、選択した結果を示すデータを選択領域グリッド変換部42に出力する。なお、上記風速及び湿度に関する閾値は、例えばユーザにより予め設定され、分割設定値データ記録部16に記録されていればよい。
【0144】
次に、実施の形態4に係る気象予測装置1dの動作例について、
図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0145】
まず、不均一グリッド構築部4dの領域選択部41dは、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する(ステップST31)。
【0146】
具体的には、領域選択部41dは、例えば
図12に示す点線の枠内に示すように、まず分割設定値データD2に基づいて、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する(ステップST311)。
【0147】
次に、領域選択部41dは、ステップST311における選択後に、観測データD1が示すグリッドを一つずつ参照する(ステップST312)。例えば、領域選択部41dは、例えば
図13に示すように、各グリッドを(i、j)と表記する場合、i及びjを1からカウントアップさせながら、各グリッドを一つずつ参照する。なお、iは各グリッドの東西方向(左右方向)の位置を示す変数であり、jは各グリッドの南北方向(上下方向)の位置を示す変数である。
【0148】
そして、領域選択部41dは、グリッド(i、j)における気象データ(気象状況)を取得する(ステップST313)。
【0149】
次に、領域選択部41dは、グリッド(i、j)における気象データが示す風速及び湿度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップST314)。その結果、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上であると判定した場合(ステップST314;YES)、そのグリッド(i、j)を細分化対象グリッドとして追加的に選択する(ステップST315)。一方、領域選択部41dは、風速及び湿度が閾値以上でないと判定した場合(ステップST314;NO)、そのグリッド(i、j)を細分化対象グリッドとして追加的に選択しない。その後、処理はステップST312へ戻り、以下、領域選択部41dは、すべてのグリッドについて、ステップST312~ST315を繰り返す。
【0150】
ステップST31が終了すると、処理はステップST32へ遷移する。なお、ステップST32~ST34は、
図2に示すフローチャートのステップST2~ST4と同様であるため、再度の説明は省略する。なお、細分化対象グリッドとして追加的に選択されたグリッドは、例えば
図13に示すように、ステップST32において、選択領域グリッド変換部42bにより細分化されるが、それ以外のグリッドについては、例えば従前の選択結果が維持される。
【0151】
このように、実施の形態4に係る気象予測装置1dは、風速及び湿度が閾値以上であると判定されたグリッドを、分割設定値データD2に基づく選択とは別に、細分化対象グリッドとして追加的に選択する。これは、例えば予測対象領域における降雨及び風の予測を行う上では、特に風速及び湿度が予測に与える影響が強いと考えられることに基づいている。
【0152】
例えば、降雨に着目すると、湿度、より厳密にいうと上空の水蒸気混合量の気象要素が、降水の有無及び降水量に強く影響する。また、風に関しては、風速(風の強さ)によって風向等も決定することが可能となる。そこで、気象予測装置1dでは、上記のように、風速及び湿度が閾値以上であるグリッドについては、分割設定値データD2に基づく選択とは別に、細分化対象グリッドとして追加的に選択するようにした。これにより、気象予測装置1dは、予測対象領域における降雨及び風に関する予測をより高精度に行うことができる。
【0153】
なお、上記の説明では、領域選択部41dが、分割設定値データD2に基づいて細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択した後、各グリッドを一つずつ参照して細分化対象グリッドを追加的に選択する例について説明した。しかしながら、領域選択部41dはこれに限らず、例えば分割設定値データD2に基づく細分化対象グリッドの選択を省略し、風速及び湿度に基づく細分化対象グリッドの選択のみを行ってもよい。
【0154】
また、上記の説明では、領域選択部41dが、風速及び湿度に基づいて、細分化対象グリッドを追加的に選択する例について説明した。しかしながら、領域選択部41dはこれに限らず、例えば風速及び湿度に加えて気圧を上記選択の判定要素として用いてもよい。これは、一般的に、気圧が気象予測において重要な気象要素であると言われていることに基づく。例えば、降雨及び風速は、気圧による影響を受けやすく、気圧との関係次第では、台風及びゲリラ豪雨等の発生を引き起こす可能性がある。そこで、領域選択部41dは、風速及び湿度に加えて気圧を上記選択の判定要素として用いることにより、予測対象領域における降雨及び風に関する予測をさらに高精度に行うことができる。
【0155】
以上のように、実施の形態4によれば、不均一グリッド構築部4dは、観測データ取得部2により取得されたグリッドデータD1が示すグリッドのうち、当該グリッドにおける気象データが示す風速及び湿度が閾値以上であるグリッドを細分化する。これにより、実施の形態4に係る気象予測装置1dは、実施の形態1の効果に加え、予測対象領域における降雨及び風に関する予測をより高精度に行うことができる。
【0156】
実施の形態5.
実施の形態1では、1台の気象予測装置を含む気象予測システムについて説明した。実施の形態5では、2台の気象予測装置による並列処理により予測処理を高速化することが可能な気象予測システムについて説明する。
【0157】
図14は、実施の形態5に係る気象予測装置1e(第1の気象予測装置)及び気象予測装置1f(第2の気象予測装置)を含む気象予測システム100eの構成例を示す図である。実施の形態5に係る気象予測システム100eは、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100に対し、気象予測装置1が気象予測装置1eに変更されるとともに、気象予測装置1fが追加されている点が異なっている。
【0158】
なお、実施の形態5に係る気象予測装置1eは、実施の形態1に係る気象予測装置1から選択領域グリッド変換部42が削除されたものであり、実施の形態5に係る気象予測装置1fは、上記選択領域グリッド変換部42が搭載されたものである。実施の形態5に係る気象予測システム100e及び気象予測装置1eのその他の構成は、
図1に示す実施の形態1に係る気象予測システム100及び気象予測装置1と同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0159】
気象予測システム100eでは、
図14に示すように、気象予測装置1eと気象予測装置1fとが不図示のネットワークを介して通信可能に接続されている。また、気象予測システム100eでは、気象予測装置1eが、気象予測処理における主要な処理を担う主要処理装置として位置づけられ、気象予測装置1fが、主要処理装置の外部に位置して主にグリッド変換処理を行う外部処理装置として位置づけられる。
【0160】
なお、気象予測装置1eと気象予測装置1fとは、同程度の演算性能を有しているものでもよいが、これ以外にも、例えば外部処理装置である気象予測装置1fの方が、主要処理装置である気象予測装置1eよりも高い演算性能を有していてもよい。例えば、気象予測装置1eは、CPU(Central Processing Unit)を備え、気象予測装置1fは、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0161】
なお、気象予測システム100eでは、前提として、気象予測装置1eが気象予測装置1fへのグリッド変換対象のグリッドデータの転送、及び気象予測装置1fによる処理結果の管理等を行い、気象予測装置1fは、主に気象予測装置1eから転送されたグリッドデータに対するグリッド変換を行うものとする。
【0162】
次に、実施の形態5に係る気象予測システム100eの動作例を説明する。まず、気象予測装置1eの領域選択部41は、実施の形態1と同様、分割設定値データD2に基づいて、観測データD1が示すグリッドから、細分化対象グリッドと統合対象グリッドとを選択する。領域選択部41は、選択した結果を示すデータを、観測データD1とともに、ネットワークを介して気象予測装置1fの選択領域グリッド変換部42に送信する。
【0163】
気象予測装置1fの選択領域グリッド変換部42は、領域選択部41から送信された選択結果を示すデータと観測データD1とを受信すると、当該選択結果を示すデータに基づいてグリッド変換(細分化及び統合)を行う。そして、選択領域グリッド変換部42は、グリッド変換を行った結果を示すデータを、ネットワークを介して気象予測装置1eのグリッド再構築部43に送信する。
【0164】
また、選択領域グリッド変換部42は、上記グリッド変換を行った後の観測データD1(グリッドデータ)における、各グリッドの隣接関係を示す隣接グリッド判定データD3を生成し、当該生成した隣接グリッド判定データD3を、ネットワークを介して気象予測装置1eの隣接グリッド判定データ記録部6に記録させる。
【0165】
気象予測装置1eのグリッド再構築部43は、選択領域グリッド変換部42から、グリッド変換を行った結果を示すデータを受信すると、当該受信したデータに基づいて不均一グリッドを構築し、当該不均一グリッドを示す不均一グリッドデータを生成する。グリッド再構築部43は、生成した不均一グリッドデータを不均一グリッド予測処理部5に出力する。
【0166】
気象予測装置1eの不均一グリッド予測処理部5は、グリッド再構築部43から不均一グリッドデータを取得すると、当該取得した不均一グリッドデータと、隣接グリッド判定データ記録部6に記録されている隣接グリッド判定データD3とを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する。そして、不均一グリッド予測処理部5は、予測した予測対象領域の気象データを予測結果として出力する。
【0167】
ここで、気象予測装置1fの選択領域グリッド変換部42によるグリッド変換処理は、各グリッドで独立であり、並行して処理できる。そこで、選択領域グリッド変換部42は、グリッド毎のグリッド変換処理を並行して行いつつ、1グリッド分のグリッド変換処理を完了し次第、その結果を示すデータを随時気象予測装置1eのグリッド再構築部43に送信する。また、気象予測装置1eのグリッド再構築部43は、選択領域グリッド変換部42からグリッド変換の結果を示すデータを受信すると、その都度、当該データが示すグリッドを観測データD1における元の位置に戻して他のグリッドと合成し、不均一グリッドを構築する。このとき、選択領域グリッド変換部42によるグリッド変換処理と、グリッド再構築部43による不均一グリッドの構築処理とは、並行して実施可能である。
【0168】
このように、実施の形態5に係る気象予測システム100eでは、気象予測装置1eと気象予測装置1fとにより、不均一グリッドの構築に必要な処理を分担して行う。これにより、気象予測システム100eでは、例えばグリッド変換処理と不均一グリッドの構築処理とを並行して行うことができ、1台の気象予測装置を用いた場合よりも予測処理を高速化することができる。
【0169】
また、その場合、気象予測システム100eでは、気象予測装置1fの演算性能を、気象予測装置1eの演算性能よりも優れたものとし、より処理負荷の大きいグリッド変換処理を気象予測装置1fで行うようにすれば、グリッド変換処理をさらに高速化でき、結果として予測処理をさらに高速化することができる。
【0170】
以上のように、実施の形態5によれば、気象予測システム100eは、互いに通信可能に接続された気象予測装置1e及び気象予測装置1fを含んで構成される気象予測システム100eであって、気象予測装置1eは、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータD1であって、分割された各グリッドにて観測された気象データを含むグリッドデータD1を取得する観測データ取得部2と、グリッドデータが示すグリッドから、グリッド変換の対象となるグリッドを選択し、当該選択した結果を示すデータを気象予測装置1fに送信する領域選択部41と、気象予測装置1fから送信されたグリッド変換の結果を示すデータに基づいて、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在するグリッドを示す不均一グリッドデータを生成するグリッド再構築部43と、グリッド再構築部43により生成された不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する不均一グリッド予測処理部5と、を備え、気象予測装置1fは、領域選択部41により選択されたグリッドに対してグリッド変換を行い、当該グリッド変換の結果を示すデータを気象予測装置1eに送信する選択領域グリッド変換部42を備え、選択領域グリッド変換部42による処理と、グリッド再構築部43による処理とが並行して行われる。これにより、実施の形態5に係る気象予測システム100eは、従来に対し、処理負荷の増大を抑制しつつ、気象状況の予測精度を向上可能となるとともに、1台の気象予測装置を用いた場合よりも予測処理を高速化することができる。
【0171】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示は、従来に対し、処理負荷の増大を抑制しつつ、気象状況の予測精度を向上可能となり、気象予測装置、気象予測システム、及び気象予測方法に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0173】
1、1b、1c、1d、1e、1f 気象予測装置、2 観測データ取得部(第1取得部)、3 分割設定値データ取得部(第2取得部)、4、4b、4c、4d 不均一グリッド構築部(生成部)、5、5b、5c 不均一グリッド予測処理部(予測処理部)、6 隣接グリッド判定データ記録部、7 位置データ取得部(第3取得部)、8 判定部、10 観測装置、15 観測データ記録部、16 分割設定値データ記録部、17 位置データ記録部、41、41b、41c、41d 領域選択部、42、42b、42c 選択領域グリッド変換部、43、43b、43c グリッド再構築部、51 処理回路、52 CPU、53 メモリ、100、100b、100c、100d、100e 気象予測システム、506 グラフ、A1 局所領域、A2 中領域、A3 大領域。
【要約】
気象予測装置(1)は、予測対象領域を含む所定領域を複数のグリッドに分割してなるグリッドデータであって、分割されたグリッド毎に観測された気象データを含むグリッドデータを取得する観測データ取得部(2)と、観測データ取得部により取得されたグリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドを細分化するとともに、グリッドデータが示すグリッドのうちの所定のグリッドと当該グリッドに隣接するグリッドとを統合し、細分化されたグリッドと統合されたグリッドとが混在する不均一グリッドを示すデータであって、グリッド毎の気象データを含む不均一グリッドデータを生成する不均一グリッド構築部(4)と、不均一グリッド構築部により生成された不均一グリッドデータを用いて、所定領域に含まれる予測対象領域の気象データを予測する不均一グリッド予測処理部(5)とを備えた。