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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】獣枷装着装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
A01M23/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024101776
(22)【出願日】2024-06-25
【審査請求日】2024-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2023146676
(32)【優先日】2023-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596028538
【氏名又は名称】伊集院 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 勝
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-60411(JP,A)
【文献】特開2013-46575(JP,A)
【文献】特開2001-112399(JP,A)
【文献】登録実用新案第3061945(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/00-23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に略円形の開口部を、後部に該開口部の上面と同一高さに一定長さの柄を備えた枠体と、前記開口部内又は下側にあって、かつ、下動可能な踏板とを設け、
金属製の細帯又はワイヤーを締め具に通して成る縮小のみ容易なくくり輪を設け、該くくり輪を前記開口部の上面より僅かに突出した、前記踏板の上端周り、又は前記踏板の周端上側に略円形の輪郭を形成する郭部材を設けてその周り、に掛け回し、
前記くくり輪に、振動により音を発する音具及び/又は害獣の足へ一定の負担を与える足纏具を設け、
前記柄に前記くくり輪を縮小させる付勢力を発生する弾機を設け、
該弾機の前端に備えたキャッチ部材本体と前記くくり輪の後端に備えた受座とを一時的に連結し、かつ、一定の力以上で該連結を解除する構造の連結手段を設けると共に、前記キャッチ部材本体の後部に一定長さの地面への固定索を備え、
前記弾機を付勢して前記踏板を一時的に略水平に保持し、かつ、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造のトリガー手段を設け、
もって、前記害獣の脚部に前記音具及び/又は前記足纏具を装着させた後、前記害獣が発する引張力で前記連結手段による連結が解除されて、前記害獣を解放するように構成されている、獣枷装着装置。
【請求項2】
第1レバーを設けて該第1レバーの、前部を前記踏板又は前記郭部材に固定し、後端部を前記枠体又は前記柄の下部に設けた第1レバー支持台に回動自在に軸着し、中間部の何れかの個所に上向き突起状のトリガー心金を設けて該トリガー心金が通過する孔を前記枠体又は前記柄に設け、
前記連結手段を連結して前記弾機を付勢すると共に、前記キャッチ部材本体の後部に備えた芯受け孔に前記トリガー心金を嵌入して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記第1レバーの回動により前記トリガー心金が前記芯受け孔から外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置。
【請求項3】
請求項2記載の獣枷装着装置に於いて、
前記第1レバーを軸着位置より後方に一定長さ延長し、更に、前記柄に長窓を設けて第2レバーを前端部が前記第1レバーの後端部上に一時的に重なるよう設け、該第2レバーの後端部を前記柄の下部に設けられた第2レバー支持台に回動自在に軸着し、
前記第2レバーの前端部は前記柄の上面までの高さを備え、更に、前方に前記くくり輪の一部と前記連結手段を一時的に載せるためのトレイを備えて、該トレイに前記トリガー心金が通過する孔を設け、
前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記第1レバーの回動により前記第2レバーも回動し、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させつつ跳ね上げた後、前記第2レバーの前端部が前記第1レバーの後端部から外れ、前記第2レバーと前記トレイは元の位置に復するようにした、獣枷装着装置。
【請求項4】
請求項2記載の獣枷装着装置に於いて、
前記郭部材は前記踏板を底板とする内筒とし、該内筒を前記第1レバーの前端に固定し、
前記くくり輪を、前記開口部に嵌入した前記内筒の上端周りに掛け回すようにした、獣枷装着装置。
【請求項5】
前記枠体は筒状であって外筒とし、前記郭部材は前記踏板を底板とする内筒とし、該内筒を前記外筒に上下動自在に嵌入して前記くくり輪を前記内筒の上端周りに掛け回し、
前記弾機を付勢して前記キャッチ部材本体と前記受座とを連結することにより、前記くくり輪を引張して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記くくり輪が前記外筒の内縁に押し上げられて前記内筒から外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置。
【請求項6】
前記郭部材は、前記踏板の周端の前後に上向きに設けた一対の側板と、左右対称に該側板に回動自在に軸着した一対の半ループ状のガイドとで構成し、該ガイドが前記開口部を左右に跨ぐようにして、前記ガイド周りに前記くくり輪を掛け回し、
前記弾機を付勢して前記キャッチ部材本体と前記受座とを連結することにより前記くくり輪を引張し、前記ガイドが僅かなハの字形を成して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記ガイドの左右が反転して前記くくり輪が外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させつつ跳ね上げる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置。
【請求項7】
前記音具及び/又は前記足纏具と前記受座とを備えた前記くくり輪と前記踏板を複数設け、全ての前記踏板を前記枠体の下側に設けた1個の連結腕により一体的に連結し、
全ての前記受座を1個の前記キャッチ部材本体に連結し、
前記弾機を付勢して全ての前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が何れかの前記踏板を踏み下げると、前記トリガー手段が働き、前記害獣が踏み入れた前記くくり輪を縮小させるように構成されている、請求項2乃至4の何れかに記載の獣枷装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田畑等に侵入又は接近した害獣を捕獲することなく、一定の負担と警戒心を与えることによって人の活動域への侵入を防止するための、獣枷装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農山村地域に於ける過疎化と住民高齢化に伴い野生動物の勢力が増し、鳥獣による農林業等に係る被害が深刻な状況にあり、これに対処することが重大な全国的課題となっている。対処する方途として第一に害獣の個体群管理があるが、我国には鳥獣保護管理法があり、狩猟免許と行政の許可なくして駆除又は捕獲を行うことが禁止されている。
【0003】
狩猟免許を取得した者が実行できる、特に猪や鹿等を対象とする捕獲法の一つに、ワイヤーで作るくくり罠がある。その中でも下記両文献に示すように、くくり輪を害獣の脚部上方へ跳ね上げる方式が従来知られている。くくり罠は猟銃や箱罠等、他の方法に比して簡便で経済的にできる方法であるが、危険を伴うことが一つの問題である。
【0004】
一方、狩猟免許を持たない一般人にできることは侵入防止対策であり、その従来の方途として最も簡便なものは、音による威嚇である。爆竹等大音量のものもあるが、鳥獣は自らの近辺で音を発して居場所を知られることを非常に嫌がり、それだけで逃げ去るものが多いから、この習性を利用して、鳥獣の接近を電子的に感知して警報や光を発する装置も、市販されている。しかし、これらの方途ではやがて鳥獣が軽い威嚇だけであることを学習してしまい、その効果は限定的である。
【0005】
より確実な従来の方途として、農地周りの防護柵がある。それ用の様々の柵や網が市販されているが、強力な害獣には頑丈で十分な高さの金網と支柱を要し、広い農地には費用がかさむ。また、柵を登る、又は掘り潜ることのできる害獣に対しては無力である。
他の方途として電気柵があるが、同じく万全なものでもなく、経済的問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6295366号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「山口県わな捕獲・解体マニュアル」、発行 山口県環境生活部自然保護課、平成31年3月発行、P2~P4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、近年の我国の農山村地域では獣害に侵され、その対策が喫緊の課題になっているにも拘わらず、農林業に携わる一般人は鳥獣保護管理法による規制で狩猟や捕獲は原則禁じられ、取り得る従来の手段としては主に防護柵か電気柵の設置に限られている。
本発明が解決しようとする課題は、幅広い害獣を対象として上記規制を受けることなく一般人がなし得る安全で有効な自衛手段、即ち、害獣を捕獲することなく侵入した地域から退散させ、その後は再接近することを恐れさせ、もって農山地への害獣の侵入を防止する方策の一つを、経済的に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、
上面に略円形の開口部を、後部に該開口部の上面と同一高さに一定長さの柄を備えた枠体と、前記開口部内又は下側にあって、かつ、下動可能な踏板とを設け、
金属製の細帯又はワイヤーを締め具に通して成る縮小のみ容易なくくり輪を設け、該くくり輪を前記開口部の上面より僅かに突出した、前記踏板の上端周り、又は前記踏板の周端上側に略円形の輪郭を形成する郭部材を設けてその周り、に掛け回し、
前記くくり輪に、振動により音を発する音具及び/又は害獣の足へ一定の負担を与える足纏具を設け、
前記柄に前記くくり輪を縮小させる付勢力を発生する弾機を設け、
該弾機の前端に備えたキャッチ部材本体と前記くくり輪の後端に備えた受座とを一時的に連結し、かつ、一定の力以上で該連結を解除する構造の連結手段を設けると共に、前記キャッチ部材本体の後部に一定長さの地面への固定索を備え、
前記弾機を付勢して前記踏板を一時的に略水平に保持し、かつ、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造のトリガー手段を設け、
もって、前記害獣の脚部に前記音具及び/又は前記足纏具を装着させた後、前記害獣が発する引張力で前記連結手段による連結が解除されて、前記害獣を解放するように構成されている、獣枷装着装置、である。
【0010】
請求項2記載の発明は、
第1レバーを設けて該第1レバーの、前部を前記踏板又は前記郭部材に固定し、後端部を前記枠体又は前記柄の下部に設けた第1レバー支持台に回動自在に軸着し、中間部の何れかの個所に上向き突起状のトリガー心金を設けて該トリガー心金が通過する孔を前記枠体又は前記柄に設け、
前記連結手段を連結して前記弾機を付勢すると共に、前記キャッチ部材本体の後部に備えた芯受け孔に前記トリガー心金を嵌入して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記第1レバーの回動により前記トリガー心金が前記芯受け孔から外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置、である。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項2記載の獣枷装着装置に於いて、
前記第1レバーを軸着位置より後方に一定長さ延長し、更に、前記柄に長窓を設けて第2レバーを前端部が前記第1レバーの後端部上に一時的に重なるよう設け、該第2レバーの後端部を前記柄の下部に設けられた第2レバー支持台に回動自在に軸着し、
前記第2レバーの前端部は前記柄の上面までの高さを備え、更に、前方に前記くくり輪の一部と前記連結手段を一時的に載せるためのトレイを備えて、該トレイに前記トリガー心金が通過する孔を設け、
前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記第1レバーの回動により前記第2レバーも回動し、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させつつ跳ね上げた後、前記第2レバーの前端部が前記第1レバーの後端部から外れ、前記第2レバーと前記トレイは元の位置に復するようにした、獣枷装着装置、である。
【0012】
請求項4記載の発明は、
請求項2記載の獣枷装着装置に於いて、
前記郭部材は前記踏板を底板とする内筒とし、該内筒を前記第1レバーの前端に固定し、
前記くくり輪を、前記開口部に嵌入した前記内筒の上端周りに掛け回すようにした、獣枷装着装置、である。
【0013】
請求項5記載の発明は、
前記枠体は筒状であって外筒とし、前記郭部材は前記踏板を底板とする内筒とし、該内筒を前記外筒に上下動自在に嵌入して前記くくり輪を前記内筒の上端周りに掛け回し、
前記弾機を付勢して前記キャッチ部材本体と前記受座とを連結することにより、前記くくり輪を引張して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記くくり輪が前記外筒の内縁に押し上げられて前記内筒から外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置、である。
【0014】
請求項6記載の発明は、
前記郭部材は、前記踏板の周端の前後に上向きに設けた一対の側板と、左右対称に該側板に回動自在に軸着した一対の半ループ状のガイドとで構成し、該ガイドが前記開口部を左右に跨ぐようにして、前記ガイド周りに前記くくり輪を掛け回し、
前記弾機を付勢して前記キャッチ部材本体と前記受座とを連結することにより前記くくり輪を引張し、前記ガイドが僅かなハの字形を成して前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が前記踏板を踏み下げると、前記ガイドの左右が反転して前記くくり輪が外れ、前記弾機の付勢を瞬時に開放して前記くくり輪を縮小させつつ跳ね上げる構造を前記トリガー手段とする、請求項1記載の獣枷装着装置、である。
【0015】
請求項7記載の発明は、
前記音具及び/又は前記足纏具と前記受座とを備えた前記くくり輪と前記踏板を複数設け、全ての前記踏板を前記枠体の下側に設けた1個の連結腕により一体的に連結し、
全ての前記受座を1個の前記キャッチ部材本体に連結し、
前記弾機を付勢して全ての前記踏板を一時的に保持し、前記害獣が何れかの前記踏板を踏み下げると、前記トリガー手段が働き、前記害獣が踏み入れた前記くくり輪を縮小させるように構成されている、請求項2乃至4の何れかに記載の獣枷装着装置、である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明に依れば、くくり輪を使いながら害獣に一定の装着物を装着するだけで、殺傷することなく解放する。それにより、上記法に依る規制を受けることなく狩猟免許を持たない一般人が使用できる有効な害獣対策手段を提供できる。そして、対策に必要な作業を、害獣からの危害を受けることなく安全であり、かつ簡便なものとする。
また、くくり輪径とワイヤー径を自由に選定できることから、くくり罠に比して装置の対象害獣の範囲を広くし、成功率を上げ、軽量化し易くする。
【0017】
次に、害獣が田畑周辺又はそれへの獣道等に設置された本装置の踏板を踏み下げることにより、次の二つの中、少なくとも一つの効果を得ることができる。
一つには、その脚部に振動により何らかの音を発する音具が装着され、驚いて逃れようとする害獣自らの強力な運動によりくくり輪は本装置から離脱するから、害獣は枷の一たる音具を鳴動させつつ装着されたまま逃走する。以後、害獣は移動する度に音具を鳴動させることになるから、人の生活域に接近し難くなるし、接近すれば人が感知し易くなる。
二つには、同様にして害獣の脚部へ一定の負担を与える他の枷たる足纏具を装着することができる。これにより害獣のその後の活動力に一定の制限を加えるから、害獣の警戒心を強めて農山地への再接近をより強力に阻止することができる。
【0018】
コスト面では、本装置は比較的軽量な部材を害獣に装着するだけの機能のため、くくり罠に比して低強度なもので良く、また、害獣による損傷も受け難いから、くくり輪とその付属品を補充するだけで繰り返し長期間使用できる。このようなことから、害獣対策コストを低くすることができる。
以上述べた効果は、請求項2乃至7記載の全ての発明と共通のものである。
【0019】
請求項2記載の発明に依れば、くくり輪はトリガー手段の構成部材とされておらず、第1レバーを中心としてトリガー手段を構成している。即ち、一時的に弾機を付勢して第1レバーに設けたトリガー心金をキャッチ部材本体の芯受け孔に嵌入させることにより、略水平に踏板を保持するから、くくり輪は踏板の上端又は郭部材周りに強く引張されることなく掛け回される。よって、くくり輪をそれらから外すための抵抗は、殆どない。
更に、トリガー心金が小径であるため、芯受け孔との係合を外すための抵抗は小さいことと、第1レバーの梃子としての効果によりトリガー心金の下動力が増強されることから、トリガー手段の敏感度が高められる。そのため、本発明は猪や鹿等の比較的大型の害獣だけでなく、ハクビシン等の比較的小型の害獣にも容易に効果を発揮できる。
【0020】
請求項3記載の発明に依れば、トリガー手段が働いた時、第2レバーによりくくり輪を跳ね上げるから、害獣の脚上部に装着物を装着させ、より離脱し難くすることができる。また、第2レバーとトレイはくくり輪を跳ね上げた直後に元の位置に戻るから、害獣を解放するまでそれらが固定策と絡むことがない。
【0021】
請求項4記載の発明に依れば、内筒の深さだけ地面より低い位置に踏板を設置できるから、くくり輪を自ずと害獣の脚部上方に確実に装着することができる。比較的簡素で破損し難い構造でありながら、請求項3記載の発明と同様の効果が得られる。
【0022】
請求項5記載の発明に依れば、トリガー手段の構成にレバー部材もトリガー心金と芯受け孔もなく、一時的に弾機を付勢して外筒に嵌入させた内筒周りにくくり輪を巻きつけることにより踏板を保持する。よって、請求項2乃至4記載の発明に比してトリガー手段の敏感度が低くなることと引き換えに、装置を簡素、安価で頑丈とすることができる。
【0023】
請求項6記載の発明に依れば、前項発明と同じくレバー部材もトリガー心金と芯受け孔もなく、一時的に弾機を付勢してガイド周りにくくり輪を巻き付けることにより踏板を保持し、害獣が踏板を踏み下げると、僅かなハの字形を成していたガイドが反転して強力にくくり輪を跳ね上げることができる。よって、請求項2乃至4記載の発明に比してトリガー手段の敏感度が低くなることと引き換えに、くくり輪を跳ね上げる機能を強化できる。
【0024】
請求項7記載の発明に依れば、1台の装置に複数のくくり輪を設け、その何れに害獣が足を踏み入れてもその害獣の脚部にくくり輪が装着されるから、装着成功率を上げることができる。尚、請求項5又は6に掛かる発明に対しては、何れも踏板に要する負荷が大きくなり、トリガー手段の敏感度が更に低くなるため、本項の適用に適さない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1の構成を説明する斜視図である。
図2】実施例1のくくり輪3部分を説明する説明図である。
図3】実施例1の装置中心線での断面図である。
図4】実施例2の構成を説明する斜視図である。
図5】実施例2の装置中心線での断面を示す説明図である。
図6】実施例3の構成を説明する説明図である。
図7】実施例4の構成を説明する斜視図である。
図8】実施例4の装置中心線での断面を示す説明図である。
図9】実施例5の構成を説明する説明図である。
図10】実施例6の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0027】
請求項2に掛かる本発明装置の実施例1を、図1乃至3により説明する。
図1に於いて、枠体1は一定高さの馬蹄形の台枠状を成し、その開口部1Aには円形の踏板2が一時的に下側から緩く塞ぐように嵌入されている。踏板2は開口部1A上面より僅かに突出しており、その周りに金属製の細帯3Aを締め具4に通すことによって成るくくり輪3が、単に位置と形状を定めるために強く引張されずに掛け回されている。
枠体1の上面と同一高さに備えられた柄1Bの後部には弾機6が鞘6Aと固定金具6Bを介して固定され、弾機6とくくり輪3とは連結手段8により連結されている。
【0028】
このくくり輪3周りの詳細の一例を図2に示す。本例ではくくり輪3として公知の金属製結束バンドと同様のものを用いており、細帯3Aとその前端に備えた締め具4とで構成している。この締め具4はボールロック式と呼ばれる機構により輪を縮小する方向のみ容易とするものが一般的であるが、本発明ではその方式に拘らない。
くくり輪3として細帯3Aはロープ3Bに代えることもできるが、その場合の締め具4を含めた説明は実施例5で後述する。
【0029】
細帯3Aの後端部には、不意に外れ難い形状のフックを成した受座82が備えられ、その直前方には音具5及び足纏具10が繋がれている。受座82がキャッチ部材本体81と係合するようにして、両者で連結手段8を構成しており、一定以上の引張力でバネ鋼製のキャッチ部材本体81の先端が開口し、連結が解除されるものとしている。そして、キャッチ部材本体81の後部には芯受け孔81Aが備えられ、更にその後部には弾機6と、後端部を地面に固定された適切な長さの固定索9とが繋がれている。尚、キャッチ部材としては磁石方式を含めて多種が公知であるが、本発明ではその方式に拘らない。
【0030】
図は、音具5と足纏具10を細帯3Aの後部に示しているが、共に締め具4近傍でも良いし、前後に両者を振り分けても良い。音具5は振動により大きい音を発するものが良く、本例では鈴2個として示している。本例の足纏具10は一定重さの鉄片で矩形状を成し、その上辺中央付近で適当長さのワイヤーで繋いでいるから、重さだけでなく、害獣が野山を歩行する際に周囲の草木と絡み、一定の負担を掛けることができる。足纏具10は棒状としても良いが、何れの場合にも左右方向中央部で繋ぐのが効果的である。
【0031】
このような構成を成しているから、仕掛け時に弾機6を引張してトリガー心金71を芯受け孔81Aに係合させ、同時にキャッチ部材本体81と受座82を連結しておけば、後述のトリガー手段が働いてトリガー心金71の該係合が外されると、くくり輪3は後方に引張されると同時に前方は害獣の足に掛かっているため縮小する。そして次に逃れようとする害獣自らの激しい運動により更に引張されると、固定策9の長さに制約されて負荷の多くは弾機6から固定索9に移り、緊縛が進み一定以上の負荷となったところで連結手段8の連結が解除され、害獣は音具5及び/又は足纏具10を装着したまま逃走する。
【0032】
図3は、地面穴11内に略水平に設置された実施例1の装置中心線での断面図であるが、これによりトリガー手段の構造を説明する。
踏板2の下部中央に第1レバー72の前端部が固定されており、この後端部は枠体1、又は位置状況によっては柄1B、の下部に設けられた第1レバー支持台73に軸着され、軸周りに回動自在となっている。第1レバー72には、後端より前方に上向き突起状にトリガー心金71が固定されており、これは枠体1に設けられた孔1Cを通り心受け孔81Aに挿入されて弾機6により後方に引張されているから、第1レバー72は枠体1と平行に支持され、踏板2は開口部1Aに嵌入してこれを塞ぐ。従い、仕掛け時にはくくり輪3に弾機6による負荷が掛からないようになっているから、くくり輪3を踏板2から外すための抵抗は殆ど無い。
そこへ害獣が踏板2を踏み下げると、トリガー心金71は小径であることと第1レバー72の梃子としての作用により、抵抗少なく、かつ、強く下動して心受け孔81Aから外れるから、小さな力でも敏感に作動するトリガー手段となっている。
【実施例2】
【0033】
請求項3に掛かる本発明装置の実施例2を、図4及び5により説明する。
図4に示すように、本例では枠体1、柄1B、踏板2、くくり輪3、弾機6、連結手段8及び第1レバー72等の基本的構成は実施例1と同様であるが、柄1Bの前部付近に長窓1Dが設けられ、くくり輪3を跳ね上げる機能が加えられている。
【0034】
図5は装置中心線での断面図であるが、第1レバー72を軸着位置より後方に段差を設けて一定長さ延長し、第2レバー74を、その前端部が第1レバー72の後端部上に一時的に重なるよう設け、後端部で柄1Bの下部に備えられた第2レバー支持台75に回動自在に軸着している。よって、踏板2が下方向へ回動すると、第1レバー72の後端部で第2レバー74の前端部を長窓1Dの上方へ蹴り上げる構造になっている。
また、第2レバー74の前端部は柄1B上面までの高さを備え、更に、くくり輪3の一部と連結手段8を載せるためのトレイ76が左右の支え板76Aを伴って固定され、それにはトリガー心金71が通過できる孔76Bが設けられている。よって、害獣が踏板2を踏み下げた瞬間に、トリガー心金71は孔76Bと孔1Cを通り強く下動してキャッチ部材本体81から外れるから、細帯3Aは付勢された弾機6によって後方に引張される。そしてくくり輪3は、トレイ76により害獣の脚部上方へ跳ね上げられつつ縮小する。
この時、第1レバー72の回動に伴いその後端部は前上方向へ移動するのに対し、第2レバー74の前端部は後上方向へ移動するから両者の上記重なりが一定回動後外れ、第2レバー74とトレイ76は落下して元の位置に戻る。尚、第1レバー72後端の上記段差は必須なものではなく、例えばトリガー心金71を十分長いものとすれば、トレイ76は元の位置に戻る際に第1レバー72の後端と接触しないから、該段差は不要である。
【実施例3】
【0035】
請求項4に掛かる本発明装置の実施例3を、図6により説明する。本例の柄1Bの後部周りは実施例1と同様の構造であるので、図6は枠体1周りのみを示す。
枠体1の開口部1Aには、郭部材の一例としての、踏板2を底板とする内筒2Aが下側より嵌入されており、その側部に第1レバー72の前端部を固定している。そして、弾機6を引張してトリガー心金71を心受け孔81Aに挿入し、内筒2Aを略水平に支持すると共に、実施例1と同様のくくり輪3を内筒2Aの上端に緩く掛け回している。
このようにしたから、実施例1と同様に、害獣が踏板2を踏み下げた瞬間にトリガー心金71は強く下動して心受け孔83から外れ、くくり輪3は引張されて縮小する。この時、くくり輪3は内筒2Aの深さだけ害獣の脚部上方で縮小することになる。
【実施例4】
【0036】
請求項5に掛かる本発明装置の実施例4を、図7及び8により説明する。
図7に於いて、本例の枠体1は柄1Bを備えた外筒であり、これに踏板2を底板とする郭部材たる内筒2Aが上下動自在に嵌入されており、この内筒2Aの上端周りに実施例1と同様のくくり輪3を掛け回し、その後端を引張して締め付けられるようにしている。
連結手段8は、弾機6の前端にあって芯受け孔のないキャッチ部材本体81と、くくり輪3の後端に備えた受座82とで構成している。そして、このくくり輪3の後部には音具5と足纏具10が備えられている。
キャッチ部材本体81の後部には弾機6及び固定索9が繋がれているが、弾機6を内装した鞘6Aの後端部は固定金具6Bにより柄1Bの後端に揺動自在に保持され、固定索9は適切な長さにして後端部を地面の固定物に繋いでいる。本例に限らず、くくり輪3収縮後から害獣が解放されるまで連結手段8は全方位に移動する可能性があるため、弾機6の保護に該固定方式は有効である。
【0037】
図8は、弾機6が装置中心線上にあるものとした場合の、地面に設置された装置の中心線での断面を示す説明図であるが、これによりトリガー手段の構造を説明する。
弾機6を一時的に付勢してキャッチ部材本体81と受座82とを連結させると、くくり輪3は内筒2Aを締め付けつつ後方に引張して、踏板2を略水平に保持する。そこへ害獣が踏板2を踏み下げると、くくり輪3は開口部1Aの内周縁に押し上げられて内筒2Aの上端から外れ、害獣の脚部に飛び移りつつ縮小する。音具5と足纏具10の装着後、実施例1と同様にして連結手段8の連結が解除され、害獣は解放される。
【実施例5】
【0038】
請求項6に掛かる本発明装置の実施例5を、図9により説明する。本例の柄1Bの後部周りは他の実施例と略同様であるので、図9は枠体1周りのみを示す。本例では、前端部に音具5を繋いだくくり輪3にはワイヤー3Bを用いており、締め具4にはくくり罠用部品として公知のくくり金具と同様の金具を用いている。これは該金具がワイヤー3Bを用いたくくり輪3の緩み防止の機能に適合するためであって、この例に限らず、締め具4はどの場合でも細帯3A又はワイヤー3Bとの組合せで適切なものを選択するのが良い。
【0039】
本例の枠体1は底面のない矩形箱状を成し、開口部1Aを一時的に下側から塞ぐように、左右両側が開口部よりやや大きい略長円形の踏板2を下行可能なように設けている。この踏板2はその周端の前後に一対の側板2Dを上向きに備え、これらに開口部1Aを左右に跨ぐ一対の半ループ状のガイド2Cが左右対称に軸着されて郭部材を形成し、X-X視に示すような左右の上下動を可能としている。そしてガイド2C周りにくくり輪3を掛け回し、その後端を引張して締めつけられるようにしている。
仕掛け時には弾機6を引張して付勢し、キャッチ部材本体81と受座82とを連結させるから、くくり輪3はガイド2Cを締めつけて踏板2を開口部1Aの下面に引きつけ、ガイド2Cは僅かなハの字形を成して静止する。そこへ害獣が踏板2を踏み下げると、ガイド2Cの左右が強力に反転してくくり輪3は害獣の脚部上方に飛び移り縮小する。そして実施例1と同様にして、連結手段8の連結が解除される。
尚、矩形箱状の枠体1は一例であって、ガイド2Cと踏板2とで開口部1Aの周縁を上下に挟む部分と一定の高さがある限り、該形状に拘らない。
【実施例6】
【0040】
請求項2及び7に掛かる本発明装置の実施例6を、図10により説明する。
底面のない矩形箱状の枠体1の上面には2個の円形開口部とそれらに嵌入する踏板2とが設けられ、夫々の上端周りに音具5を繋いだくくり輪3が掛け回されている。両踏板2はZ視に示すように、枠体1の下側で1個の連結腕2Bに連結され、その中央で第1レバー72に固定されて一体的に第1レバー支持台73との軸廻りに回動可能としている。
そして、連結手段8は、両くくり輪3の後端部に夫々備えた受座82と、芯受け孔81Aを備えた1個のキャッチ部材本体81とで構成している。
このようにしたから、何れの踏板2を害獣が踏み踏み下げても実施例1と同様にしてトリガー手段が働き、害獣が踏み入れたくくり輪3のみが縮小し、踏み入れないくくり輪3は同時に引張されても、空引きとなって収縮することなく残される。
くくり輪3が3以上設けられた場合も、同様にして実施できる。
【0041】
請求項3又は4と、請求項7に掛かる本発明装置についても、複数の踏板2を連結腕2Bで一体的に連結するなど本例と同様にして、何れの踏板2を害獣が踏み下げても、夫々実施例2又は3と夫々同様に作動させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 枠体
1A 開口部
1B 柄
1C 孔
1D 長窓
2 踏板
2A 内筒
2B 連結腕
2C ガイド
2D 側板
3 くくり輪
3A 細帯
3B ワイヤー
4 締め具
5 音具
6 弾機
6A 鞘
6B 固定金具
71 トリガー心金
72 第1レバー
73 第1レバー支持台
74 第2レバー
75 第2レバー支持台
76 トレイ
76A 支え板
76B 孔
8 連結手段
81 キャッチ部材本体
81A 心受け孔
82 受座
9 固定索
10 足纏具
11 地面穴
【要約】
【課題】近年の農山地では獣害対策が喫緊の課題になっているにも拘わらず、免許のない一般人は鳥獣保護管理法により狩猟は禁じられ、取り得る手段は限られている。その手段も有効性や費用等の問題があり、十分には普及し難い状況にある。上記規制を受けることなく一般人がなし得る有効で、かつ、安全で経済的な獣害対策が緊急に求められている。
【解決手段】くくり罠を含めた罠類は、害獣を捕獲するから上記法の規制を受ける。本発明は、害獣を捕獲することなく音具等の枷類を装着しその後は逃走させる装置により解決することを提案する。本発明は、枷類を装着した直後に、害獣が逃げようとする力を利用して連結手段が外れるようにすると共に、敏感度を高めたトリガー手段により、猪等の比較的大型の害獣だけでなく、ハクビシン等の小型害獣にも利用できるようにした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10