(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】製鉄用加熱炉の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20250106BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20250106BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20250106BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20250106BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20250106BHJP
F27D 21/02 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G01N21/84 B
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
F27D1/00 V
F27D21/02
(21)【出願番号】P 2020215756
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】717007295
【氏名又は名称】株式会社Liberaware
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 永次
(72)【発明者】
【氏名】新田 法生
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-015628(JP,A)
【文献】米国特許第09382002(US,B1)
【文献】特開2019-036269(JP,A)
【文献】特開2018-002131(JP,A)
【文献】特開平10-042281(JP,A)
【文献】特開2007-333279(JP,A)
【文献】特開2018-105530(JP,A)
【文献】特開2013-040714(JP,A)
【文献】特開2016-088121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0061376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00 - B64B 1/70
B64C 1/00 - B64C 99/00
B64D 1/00 - B64D 47/08
B64F 1/00 - B64F 5/60
B64G 1/00 - B64G 99/00
F27D 1/00
F27D 17/00 - F27D 99/00
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に、
略平行に並設される複数の構造体が水平方向に沿って
延在する製鉄用加熱炉の内部空間を、無人飛行体を用いて撮像する製鉄用加熱炉の検査方法であって、
前記無人飛行体は撮像装置を備え、
前記無人飛行体を、前記複数の構造体のうち第1の構造体と第2の構造体の間に飛行させることと、
前記無人飛行体を、
根元から先端に向かって延在する前記構造体の
延在方向において
根本側に位置させた状態で、前記撮像装置の撮像方向の基準方向を、前記構造体の
先端側であって、前記構造体の延在方向に沿う方向として調整することと、
前記撮像装置の基準方向の調整の後に、前記無人飛行体を、前記
根本側の位置に維持した状態において、前記無人飛行体をヨー軸まわりに回転をさせることと、
前記ヨー軸まわりの回転によって前記無人飛行体の前記撮像装置の撮像方向が、前記基準方向よりも前記第1の構造体側を向いた状態、および前記基準方向よりも第2の構造体側を向いた状態の少なくともいずれかにおいて、前記無人飛行体の前記撮像装置により撮像画像を生成することと、
を含む、製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項2】
前記無人飛行体は自律制御により飛行を実行する、請求項1に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項3】
前記無人飛行体の前記撮像装置の撮像方向が一方の構造体側を向いて
前記無人飛行体の前記撮像装置により撮像画像を生成するとき、前記無人飛行体は、それぞれの前記構造体の間において、前記一方の構造体側とは異なる他方の構造体側に近接している、請求項1
または2に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項4】
前記撮像画像は、前記第1の構造体および前記第2の構造体に対応するオルソ画像の生成および三次元仮想オブジェクトを取得するための情報の生成の少なくともいずれかに用いられる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項5】
前記前記無人飛行体を、前記構造体の
延在方向において前記構造体の
根本側
に位置させる場合に、前記構造体のいずれか短い方の中心よりも
根本側に位置させることを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項6】
前記無人飛行体を、前記
根本側の位置に維持した状態において、水平方向において前記構造体の前記延在方向を基準として、前記撮像装置の撮像方向が前記第1の構造体側を向いたときの前記基準方向を基準とする第1の最大角度と、前記撮像装置の撮像方向が前記第2の構造体側を向いたときの前記基準方向を基準とする第2の最大角度との間で前記無人飛行体をヨー軸まわりに回転をさせることを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項7】
前記構造体はラジアントチューブを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項8】
前記構造体は前記製鉄用加熱炉の炉壁を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項9】
前記製鉄用加熱炉は、連続焼鈍炉またはバッチ焼鈍炉を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【請求項10】
前記無人飛行体は自律制御により
撮像を実行する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製鉄用加熱炉の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続焼鈍炉やバッチ焼鈍炉等の製鉄用加熱炉の点検において、省人化および短時間化が求められる。運転を停止した直後の加熱炉は高温であるため、人員が作業する場合、作業可能な温度に下がるまで待機する必要がある。そのため、例えば、ドローンを用いて点検することで、人員が作業する場合よりも早く点検を開始することが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボイラ内における炉壁の検査を、ドローンを用いて行う技術が開示されている。例えば、ドローンを用いた点検においては、カメラ等の撮像装置を用いて炉内を撮像し、かかる撮像画像により炉内の状況を確認したり、炉内の構造物のモデリングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製鉄用加熱炉の内部空間においては、温度が高いと内部における気流の影響が大きい。特に配管等の構造体の狭所まわりにおいては、構造体自体に残留する熱の影響もあり、気流の影響を受けやすく、ドローンによる撮像における安定的な姿勢の維持が困難となる。このような構造体においては、構造体の根元側の撮像画像の解像度に粗密が生じやすく、精度の高い撮像画像を得ることが困難である。
【0006】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造体の狭所まわりの撮像処理を精度高く行うことが可能な製鉄用加熱炉の検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、内部、に複数の構造体が水平方向に沿って略平行に並設される製鉄用加熱炉の内部空間を、無人飛行体を用いて撮像する製鉄用加熱炉の検査方法であって、前記無人飛行体は撮像装置を備え、前記無人飛行体を、前記複数の構造体のうち第1の構造体と第2の構造体の間に飛行させることと、前記無人飛行体を、前記構造体の水平方向における延在方向において一方側に位置させた状態で、前記撮像装置の撮像方向の基準方向を、前記構造体の他方側であって、前記構造体の前記延在方向に沿う方向として調整することと、前記無人飛行体を、前記一方側の位置に維持した状態において、前記無人飛行体をヨー軸まわりに回転をさせることと、前記無人飛行体の前記撮像装置の撮像方向が、前記基準方向よりも前記第1の構造体側を向いた状態、および前記基準方向よりも第2の構造体側を向いた状態の少なくともいずれかにおいて、前記無人飛行体の前記撮像装置により撮像画像を生成することと、を含む、製鉄用加熱炉の検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、構造体の狭所まわりの根元側の撮像処理を精度高く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る検査方法に用いる無人飛行体1の構成例を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る無人飛行体1のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】同実施形態に係る製鉄用加熱炉の検査方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第1の例を示す図である。
【
図5】同実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第2の例を示す図である。
【
図6】同実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第3の例を示す図である。
【
図7】同実施形態の第1の変形例に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の例を示す図である。
【
図8】同実施形態の第2の変形例に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<無人飛行体の構成例>
図1は、本開示の一実施形態に係る検査方法に用いる無人飛行体1の構成例を示す斜視図である。本明細書において、
図1に示すX方向、Y方向およびZ方向は、それぞれ無人飛行体1の前後方向、幅方向および高さ方向を意味する。本実施形態に係る無人飛行体1は、いわゆる複数の回転翼3により揚力や推力を得る回転翼機である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る無人飛行体1は、本体部2と回転翼3とを備える。なお、
図1に示す無人飛行体1の構成は一例であり、
図1に示す本体部2および回転翼3とは異なる構造、形状およびサイズを有する回転翼機であっても、以下に説明する本体部2および回転翼3に対応する構成を有する回転翼機であれば、本発明の範疇に含まれうる。
【0013】
より具体的には、本体部2は、支持フレーム21と、補助フレーム22とからなる。補助フレーム22は、支持フレーム21に接続される。具体的には、補助フレーム22は、支持フレーム21の前後方向のそれぞれから伸びるように接続される。かかる補助フレーム22は、アーム23を含む。
図1に示すように、回転翼3はアーム23に支持される。なお、本実施形態に係るアーム23は、支持フレーム21とも接続している。本体部2を構成する素材は特に限定されず、例えば、炭素繊維樹脂、ガラス繊維樹脂、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、チタンその他の材料であり得る。
【0014】
支持フレーム21は、図示しない回路基板、フライトコントローラまたはバッテリ等、無人飛行体1の飛行の制御および動力に係る部品を積載して支持する。例えば、支持フレーム21には、フライトコントローラを含む制御回路が実装されてもよい。かかるバッテリから後述するモータ20およびセンサに電力が供給され、フライトコントローラによりモータ24の回転数等の制御が行われる。
【0015】
補助フレーム22は、無人飛行体1の機体を構成し、支持フレーム21に接続され、回転翼3を支持する。
図1に示す例では、補助フレーム22は、支持フレーム21の前後方向端部から前後方向に伸び、途中から幅方向において左右に延伸する構成を有している。補助フレーム22は、回転翼3のプロペラガードとしての機能を発揮しうる。例えば、飛行体の衝突時に、補助フレーム22は、モータ4に取り付けられる回転翼3とモータ4とを保護し得る。
【0016】
アーム23の、補助フレーム22の端部と支持フレーム21との間に、回転翼3が設けられる。
図1に示す例では、アーム23にはモータマウント231が設けられ、モータマウント231に回転翼3に動力を与えるモータ4が設けられ、回転翼3はモータ4に取り付けられる。
【0017】
なお、アーム23および回転翼3は、本実施形態においては、前後左右の4箇所に設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。無人飛行体1の構造、形状、装備およびサイズ等に応じて、アーム23および回転翼3の設けられる数は適宜変更されうる。
【0018】
また、無人飛行体1の前方側の支持フレーム21と補助フレーム22との接続部分において、支持フレーム21に、カメラ5が設けられる。カメラ5は、
図1に示す位置の他に、支持フレーム21の任意の箇所に設けることができる。かかるカメラ5は、一人称視点(First Person View:FPV)で撮像するために設けられるものであってもよく、点検対象を撮像するために設けられるものである。なお、支持フレーム21とカメラ5とは、ジンバル等を介して接続されていてもよい。
【0019】
次に、無人飛行体1のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る無人飛行体1のハードウェア構成例を示す図である。
図2に示すように、無人飛行体1は、本体部2において、フライトコントローラ11、バッテリ14、ESC(Electric Speed Controller)15および送受信部16を備える。
【0020】
フライトコントローラ11は、例えば、中央演算処理装置(CPU)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルプロセッサなど、1つ以上のプロセッサを有することができる。フライトコントローラ11は、メモリ12を有しており、当該メモリ12にアクセス可能である。メモリ12は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラ11が実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0021】
メモリ12は、たとえば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ5やセンサ13から取得したデータは、メモリ12に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。たとえば、カメラ5で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0022】
フライトコントローラ11は、無人飛行体1の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。たとえば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する無人飛行体1の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC15を経由して無人飛行体1の推進機構であるモータ4を制御する。モータ4により回転翼3が回転することで無人飛行体1の揚力を生じさせる。
【0023】
フライトコントローラ11は、1つ以上の外部のデバイス(たとえば、操縦用装置17)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部16と通信可能である。送受信部16は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。送受信部16は、たとえば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0024】
送受信部16は、センサ13で取得したデータ、フライトコントローラ11が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。センサ13により得られた情報は、送受信部16を介して操縦用装置17等に出力されてもよい。
【0025】
操縦用装置17は、無人飛行体1の飛行の操縦を制御するための装置である。なお、無人飛行体1の飛行は、地上等にいるオペレータの操縦により制御されてもよいし、飛行経路情報やセンシングによる自律的な飛行プログラムに基づく自動操縦により制御されてもよい。操縦用装置17は、例えば、送受信機(プロポ)、スマートフォン、タブレット等の端末等であってもよい。
【0026】
本実施の形態に係るセンサ13は、例えば、慣性センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサ、風センサ、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、高度センサ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等の近接センサ、またはカメラ5以外のビジョン/イメージセンサ等を含み得る。
【0027】
<検査方法>
次に、本実施形態に係る無人飛行体1を用いた製鉄用加熱炉の検査方法の一例について説明する。ここでいう検査方法は、加熱炉の検査における無人飛行体1を用いた加熱炉の内部空間における撮像方法を含む。なお、本実施形態における製鉄用加熱炉とは、例えば、連続焼鈍炉またはバッチ焼鈍炉を主に含みうる。このような焼鈍炉においては、一方向に伸びる配管が粗密に、かつ一定間隔で設けられているため、本検査方法がより有用となる。加熱または焼鈍される材料は特に限定されず、例えば鋼材は、薄板(板またはコイル)、厚板、形鋼、線材、棒鋼、条鋼または加工後/成形後の鋼材であり得る。また、本検査方法においては、加熱炉の内部空間において、水平方向に沿って伸びて略平行に並設される2つの配管の間に飛行し、かかる2つの配管の根元側を撮像するものである。ここでいう配管は、構造体の一例である。構造体は配管に限定されず、例えば、加熱炉の炉壁や加熱炉内に設けられる設備等であり得る。この構造体は、少なくとも水平方向に延在する構造体であり得る。「少なくとも水平方向に延在する」とは、配管や壁のように、水平方向のうち少なくとも一方向に伸びる構造体である。構造体と構造体の間は、例えば、配管と炉壁の間であってもよいし、炉壁と炉壁の間であってもよいし、配管とその他の構造体との間であってもよいし、炉壁とその他の構造体との間であってもよいし、その他の構造体同士の間であってもよい。かかる配管は、例えば、ラジアントチューブであってもよい。ラジアントチューブは加熱炉の内部を加熱するために設けられる熱源であるため、検査の開始時に加熱炉の内部の温度が低下しても、ラジアントチューブ自体が熱を保持していることがあり、そのためラジアントチューブ周囲においては気流の変化が大きく、従来の手法では撮像が困難である。そのため、本検査方法によれば、簡易な方法でラジアントチューブの撮像の精度を向上させることができる。なお、配管は2つの配管以外に1または複数の配管が設けられていてもよい。また、本検査方法は、製鉄用途以外の加熱炉にも適用可能である。
【0028】
また、本実施形態に係る検査方法の一例では、無人飛行体1をオペレータの操縦により飛行を制御しているとするが、無人飛行体1は、かかる検査方法を実施するための飛行およびカメラ5による撮像の少なくともいずれかを自動的に実行するよう制御されてもよい。すなわち、無人飛行体1の制御は、自律制御によるものであってもよい。
【0029】
図3は、本実施形態に係る製鉄用加熱炉の検査方法の流れの一例を示すフローチャートである。まず、加熱炉内の温度が適当な温度にまで低下した段階で、無人飛行体1の飛行を開始する(ステップS101)。無人飛行体1は、第1の配管と第2の配管の間にまで飛行する(ステップS103)。第1の配管と第2の配管の間に到達するまでの飛行経路は特に限定されず、また、かかる地点に到達するまでに、無人飛行体1による他の処理が行われてもよい。
【0030】
次に、無人飛行体1は、第1の配管と第2の配管の間において、撮像位置および撮像方向を調整する(ステップS105)。
図4は、本実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第1の例を示す図である。
図4において、Lはラジアントチューブ100A(第1の構造体の一例)とラジアントチューブ100B(第2の構造体の一例)の延在方向に相当し、Wはラジアントチューブ100A、100Bの並設方向に相当し、Hは高さ方向に相当する。本明細書において水平方向とは、延在方向Lおよび並設方向Wの少なくともいずれかの成分からなる方向を意味する。なお、本実施形態に係るラジアントチューブ100A、100Bの構造は特に限定されず、例えば、ストレート型のラジアントチューブであってもよいし、U型のラジアントチューブであってもよいし、M型のラジアントチューブであってもよい。ここでいうラジアントチューブ100A、100Bの水平方向における延在方向とは、加熱炉の内壁101を基準として、配管が内壁101から延びる方向を(すなわち内壁101に対して直交する方向)を意味する。また、この場合における第1の配管と第2の配管の間とは、高さ方向Hにおいて設置位置が略同一の配管であって、並設方向Wにおいて連続的に並設されている2つの配管の間を意味する。例えば、M型のラジアントチューブが並設されている場合において、一方のラジアントチューブバーナー側の配管と、他方のラジアントチューブの排気側の配管がほぼ同じ高さで並設されている場合は、第1の配管と第2の配管との間は、一方のラジアントチューブのバーナー側の配管と、他方のラジアントチューブの排気側の配管との間に相当し得る。
【0031】
図4に示すように、無人飛行体1は、ラジアントチューブ100A、100Bの間に位置している。また、無人飛行体1は、ラジアントチューブ100A、100Bの延在方向Lにおいて中心CT1よりも一方側(この場合は、ラジアントチューブ100A、100Bの根元側)に位置している。なお、中心CT1とは、例えば、ラジアントチューブ100A、100Bの延在方向Lにおけるいずれか短い方の長さの半分に相当する位置である。なお、中心CT1を、ラジアントチューブ100A、100Bのいずれか短い方の長さの半分に相当する位置とすることで、双方のラジアントチューブをより狭い画角で撮像することができ、効率的に撮像処理を行うことができる。ただし、本技術はかかる例に限定されず、中心CT1の位置は、いずれか一方のラジアントチューブの延在方向Lの長さにおける半分に相当する位置であってよい。また、根元側に無人飛行体1を位置させることで、撮像が比較的困難である根元側の画像をより高い品質で得ることができる。
図4に示した例では、ラジアントチューブ100Aおよび100Bの延在方向Lにおける長さは同一としている。一方側とは、
図4に示す場合では、ラジアントチューブ100A、100Bの根元側(内壁101側)を意味している。また、本実施形態に係る無人飛行体1は、ラジアントチューブ100A、100Bの並設方向Wにおける中心CS1上を飛行している。中心CS1は、高さ方向Hから見たときに、ラジアントチューブ100A、100Bの並設方向Wにおいて対面する面を端部とする場合の中心位置である。
【0032】
また、無人飛行体1のカメラ5(撮像装置)の撮像方向の基準方向が、ラジアントチューブ100A、100Bの他方側(中心CT1を挟んで一方側とは反対側)であって、延在方向Lに沿う方向に調整されるよう、無人飛行体1の飛行姿勢が制御される。
図4に示す例では、カメラ5の撮像方向の基準方向は、中心CS1に沿う方向となっている。
【0033】
このような状態において、カメラ5の画角の境界線SA1、SA2の間の領域を撮像することができる。しかしながら、かかる基準方向のみでは、境界線SA1、SA2の近傍にあたるラジアントチューブ100A、100Bの根元部分102A、102Bにおいては、画角に含まれないか、またはカメラ5のレンズパラメータの影響を大きく受け、撮像画像に含まれるラジアントチューブ100A、100Bの像に歪みが生じ得る。
【0034】
そこで次に、無人飛行体1は、第1の配管側(ラジアントチューブ100A側)へと回転し、撮像処理を行って撮像画像を生成する(ステップS107)。まず、無人飛行体1の回転制御においては、無人飛行体1を延在方向Lにおける上記一方側に位置させた状態に維持する。そして、カメラ5の撮像方向が、配管の延在方向Lを基準として、ラジアントチューブ100A側を向いたときの第1の最大角度を限度として、第1の配管側に回転させる。この際、無人飛行体1は、ヨー軸(
図4に示す高さ方向Hに沿った軸)まわりの回転を行う。
【0035】
図5は、本実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第2の例を示す図である。
図5に示すように、無人飛行体1は、カメラ5の撮像方向LA1が第1の配管側を向くように、その場でヨー軸まわりに回転している。なお、無人飛行体1の回転の際、高さ方向Hから見て、LW平面上における回転前の位置と回転後の位置について、ラジアントチューブ100A、100Bの間であって、中心CT1より内壁101側であれば、多少の変動は可能である。無人飛行体1の回転角度は、延在方向Lと撮像方向LA1とがなす角度に相当する。この回転角度の最大値が第1の最大角度である。第1の最大角度は特に限定されないが、例えば、ラジアントチューブ100Aを含む複数の画像からなるオルソ画像を生成する際に、オーバーラップ率が所定の条件を満たすことが可能な最大限の角度が第1の最大角度となる。
【0036】
図5に示すように、無人飛行体1をその場でヨー軸まわりにラジアントチューブ100A側に回転をさせることで、根元部分102Aが画角の中心部分に含まれるので、歪みのない撮像画像を得ることができる。また、ラジアントチューブ100A、100Bの間のような、狭所でかつ気流の影響を受けやすい場所であっても、ヨー軸まわりの回転制御のみを行えばよいため、飛行制御も簡易である。さらに、ポスト処理であるオルソ画像の生成や三次元仮想オブジェクトを構成する点群やメッシュ等の情報の生成の処理においても、ラジアントチューブ100Aの連続的な構造を精度良く反映させることができる。
【0037】
なお、ラジアントチューブ100Aを対象とする撮像処理は、無人飛行体1の、初期の撮像方向と第1の最大角度における撮像方向との間において、適宜行われ得る。
【0038】
次に、無人飛行体1は、第2の配管側(ラジアントチューブ100B側)へと回転し、撮像処理を行って撮像画像を生成する(ステップS109)。まず、無人飛行体1の回転制御においては、ラジアントチューブ100A側と同様に、無人飛行体1を延在方向Lにおける上記一方側に位置させた状態に維持する。そして、カメラ5の撮像方向が、配管の延在方向Lを基準として、ラジアントチューブ100B側を向いたときの第2の最大角度を限度として、第2の配管側に回転させる。この際、無人飛行体1は、ヨー軸まわりの回転を行う。
【0039】
図6は、本実施形態に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の第3の例を示す図である。
図6に示すように、無人飛行体1は、カメラ5の撮像方向LA1が第2の配管側を向くように、その場でヨー軸まわりに回転している。無人飛行体1の回転角度は、延在方向Lと撮像方向LA1とがなす角度に相当する。この回転角度の最大値が第2の最大角度である。第2の最大角度は特に限定されないが、例えば、ラジアントチューブ100Bを含む複数の画像からなるオルソ画像を生成する際に、オーバーラップ率が所定の条件を満たすことが可能な最大限の角度が第2の最大角度となる。
【0040】
ステップS107と同様に、無人飛行体1をその場でヨー軸まわりにラジアントチューブ100B側に回転をさせることで、根元部分102Bが画角の中心部分に含まれるので、歪みのない画像を得ることができる。また、ラジアントチューブ100A、100Bの間のような、狭所でかつ気流の影響を受けやすい場所であっても、ヨー軸まわりの回転制御のみを行えばよいため、飛行制御も簡易である。さらに、ポスト処理であるオルソ画像の生成や三次元仮想オブジェクトを構成する点群等の生成の処理においても、ラジアントチューブ100Bの連続的な構造を精度良く反映させることができる。また、ラジアントチューブ100A、100Bの間においてそれぞれのラジアントチューブの撮像処理を行うことから、ラジアントチューブ100Aと100Bの相対的な位置関係を精度良く得ることができる。
【0041】
なお、ラジアントチューブ100Aを対象とする撮像処理は、無人飛行体1の、初期の撮像方向と第2の最大角度における撮像方向との間において、適宜行われ得る。つまり、無人飛行体1は、第1の最大角度と第2の最大角度とにより規定される撮像方向の範囲内において、撮像処理を適宜行うことが可能である。なお、上記の例では、ラジアントチューブ100A、100Bの撮像において、無人飛行体1のヨー軸まわりの回転角度の最大値としてそれぞれ第1の最大角度および第2の最大角度として回転角度を規定して制御することとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、無人飛行体1はかかる撮像位置においてヨー軸回りに特段の制限なく回転するように制御されてもよい。ただし、第1の最大角度および第2の最大角度の少なくともいずれかを予め設定しておくことにより、撮像により得られる情報量の最大化と、撮像処理における効率化とを両立することができる。
【0042】
撮像が完了すると、本検査方法は終了する。得られた撮像画像は、例えば、ラジアントチューブ100A、100Bを含むオルソ画像の生成に用いられたり、ラジアントチューブ100A、100Bを模した三次元仮想オブジェクトを構成する点群の情報の生成に用いられ得る。
【0043】
このように、本実施形態に係る検査方法では、略平行に並設される2本の配管の間に無人飛行体1を飛行させ、配管の延在方向Lにおける一方側に位置させた状態で他方側を向いた状態を基準とし、かかる位置でヨー軸まわりに回転しながら撮像を行う。これにより、配管まわりの気流による無人飛行体1の飛行制御への影響を最小限にとどめながら、配管まわりの撮像画像を精度高く得ることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、無人飛行体1をラジアントチューブ100A、100Bの延在方向Lにおける根元側を一方側とする位置に飛行させるとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、無人飛行体1をラジアントチューブ100A、100Bの延在方向Lにおける先端側を一方側とする位置に飛行させ、かかる位置から加熱炉の内壁101側に向けて撮像を行うこととしてもよい。また、他の実施形態においては、ラジアントチューブ100Aおよび100Bのいずれかのみを撮像対象としてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、ラジアントチューブ100A、100B側への無人飛行体1の回転制御は、無人飛行体1の初期の位置においてヨー軸方向まわりに行うとしたが、本技術はかかる例に限定されない。
【0046】
図7は、本実施形態の第1の変形例に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の例を示す図である。
図7に示す例では、無人飛行体1のカメラ5の撮像方向は、ラジアントチューブ100A側となっている。本変形例では、無人飛行体1のカメラ5がラジアントチューブ100A側を向いているとき、無人飛行体1の撮像位置は、高さ方向Hから見て、ラジアントチューブ100Aよりもラジアントチューブ100Bに近接している。すなわち、無人飛行体1のヨー軸まわりの回転中心位置が、中心CS1よりもラジアントチューブ100B側である。この状態は、無人飛行体1が、ヨー軸まわりに回転するとともに、並設方向Wに沿ってラジアントチューブ100B側に移動していることになる。
【0047】
図7に示す例では、
図5に示す例と比較して、無人飛行体1がラジアントチューブ100Aよりも少し遠ざかっている。そのため、ラジアントチューブ100Aの、カメラ5の画角に収まる領域が増加する。これにより、撮像対象であるラジアントチューブ100Aを確実に撮像することができる。また、レンズパラメータの影響をより抑えることができる。なお、ラジアントチューブ100B側を向いて撮像する際も、無人飛行体1の位置をラジアントチューブ100A側に近づけることで、同様の効果を得ることができる。
【0048】
次に、本実施形態の第2の変形例について説明する。上記実施形態では配管と配管の間に無人飛行体1を飛行させて、それぞれの配管を撮像する例について説明したが、本技術はかかる例に限定されない。
図8は、本実施形態の第2の変形例に係る無人飛行体1の撮像位置および撮像方向の例を示す図である。
図8に示す例では、無人飛行体1は、配管100Aと炉壁101Bの間を飛行しながら、配管100Aと炉壁101Bをそれぞれ撮像する。無人飛行体1は、配管100Aと炉壁101Bとのそれぞれに対して向くように回転方向R1に沿ってヨー軸まわりに回転しながらカメラ5により撮像する。無人飛行体1の飛行方法およびカメラ5による撮像方法は、上記実施形態と同様である。このように、無人飛行体1のカメラ5による撮像対象は、配管等に限定されない。かかる場合においては、炉壁101Bの近傍のような、無人飛行体1による飛行が安定しにくい領域であっても、精度高く炉壁101Bの像を得ることが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0051】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
内部に、複数の構造体が水平方向に沿って略平行に並設される製鉄用加熱炉の内部空間を、無人飛行体を用いて撮像する製鉄用加熱炉の検査方法であって、
前記無人飛行体は撮像装置を備え、
前記無人飛行体を、前記複数の構造体のうち第1の構造体と第2の構造体の間に飛行させることと、
前記無人飛行体を、前記構造体の水平方向における延在方向において一方側に位置させた状態で、前記撮像装置の撮像方向の基準方向を、前記構造体の他方側であって、前記構造体の前記延在方向に沿う方向として調整することと、
前記無人飛行体を、前記一方側の位置に維持した状態において、前記無人飛行体をヨー軸まわりに回転をさせることと、
前記無人飛行体の前記撮像装置の撮像方向が、前記基準方向よりも前記第1の構造体側を向いた状態、および前記基準方向よりも第2の構造体側を向いた状態の少なくともいずれかにおいて、前記無人飛行体の前記撮像装置により撮像画像を生成することと、
を含む、製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目2)
前記無人飛行体の前記撮像装置の撮像方向が一方の構造体側を向いているとき、前記無人飛行体は、それぞれの前記構造体の間において、前記一方の構造体側とは異なる他方の構造体側に近接している、項目1に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目3)
前記撮像画像は、前記第1の構造体および前記第2の構造体に対応するオルソ画像の生成および三次元仮想オブジェクトを取得するための情報の生成の少なくともいずれかに用いられる、項目1または2に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目4)
前記前記無人飛行体を、前記構造体の水平方向における延在方向において前記構造体のいずれか一方側位置させる場合に、前記構造体のいずれか短い方の中心よりも一方側に位置させることを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目5)
前記無人飛行体を、前記一方側の位置に維持した状態において、水平方向において前記構造体の前記延在方向を基準として、前記撮像装置の撮像方向が前記第1の構造体側を向いたときの前記基準方向を基準とする第1の最大角度と、前記撮像装置の撮像方向が前記第2の構造体側を向いたときの前記基準方向を基準とする第2の最大角度との間で前記無人飛行体をヨー軸まわりに回転をさせることを含む、項目1~4のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目6)
前記構造体はラジアントチューブを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目7)
前記構造体は前記製鉄用加熱炉の炉壁を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目8)
前記製鉄用加熱炉は、連続焼鈍炉またはバッチ焼鈍炉を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
(項目9)
前記無人飛行体は自律制御により飛行および撮像の少なくともいずれかを実行する、項目1~8のいずれか1項に記載の製鉄用加熱炉の検査方法。
【符号の説明】
【0052】
1 無人飛行体
2 本体部
3 回転翼
5 カメラ
100A、B ラジアントチューブ