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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】刷版交換装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20250106BHJP
   B41F 33/08 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
B41F27/12 D
B41F33/08 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021082207
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175625
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594041427
【氏名又は名称】寿原株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】津田 鎮説
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074639(JP,A)
【文献】特開平10-044374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0005726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転印刷機の版胴に装着される刷版の交換を行う刷版交換装置であって、
前記版胴に装着予定の前記刷版がセットされる刷版セット部を有し、
前記刷版セット部は、前記刷版を前記版胴に対して当該版胴の軸方向において位置決めするために、前記刷版セット部にセットされている前記刷版を当該刷版の長さ方向に沿う側端縁が前記版胴の一部に対して前記軸方向において接近して当接するように移動させる刷版移動部を備え
前記刷版移動部は、
前記刷版セット部にセットされた前記刷版を前記長さ方向と交差する幅方向の両側から挟んで位置する一対の移動部材と、
前記一対の移動部材を前記幅方向に移動させるために駆動される駆動部と、
を備えていることを特徴とする刷版交換装置。
【請求項2】
前記刷版セット部は、前記刷版を前記版胴の前記軸方向には移動が許容された状態で支持可能な刷版支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の刷版交換装置。
【請求項3】
前記一対の移動部材は、片方の移動部材が、前記刷版セット部にセットされた前記刷版の前記幅方向において前記版胴での位置決め部となる前記一部が位置する一方側とは反対の他方側の前記側端縁に対して前記幅方向における前記他方側から当接した状態で前記一方側に移動可能である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の刷版交換装置。
【請求項4】
前記刷版移動部は、前記刷版を当該刷版における前記長さ方向の前端である版頭側屈曲部が前記版胴の周面に前記軸方向に沿うように設けられた係止部に係止した状態において前記版胴の前記軸方向に移動させることを特徴とする請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の刷版交換装置。
【請求項5】
前記刷版セット部は、
前記刷版における前記長さ方向の後端である版尻側屈曲部を掛止可能として前記刷版の前記長さ方向に移動可能な掛止部材と、
前記掛止部材を当該掛止部材に掛止された前記刷版の版頭側から版尻側に向かう付勢力を有して支持する付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載の刷版交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転印刷機の版胴に装着される刷版の交換を行う刷版交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の刷版交換装置として、例えば特許文献1に記載の刷版交換装置が知られている。この刷版交換装置では、輪転印刷機の版胴に刷版を装着する際、まず、その版胴に装着する予定の刷版が刷版交換装置にセットされる。すなわち、刷版には位置決め孔が穿設されており、その位置決め孔が刷版交換装置に設けられた位置決めピンに嵌め込まれることで、刷版は版胴に対する位置合わせがされた状態で刷版交換装置にセットされる。そして、そのように刷版交換装置にセットされた刷版における長さ方向の前端である屈曲状のくわえ側先端を版胴の周面に凹設されたギャップ部に係止させた後、その版胴を刷版が巻き付けられる方向に回転させることで、版胴の周面に刷版が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-277472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の刷版交換装置は、その刷版交換装置の位置決めピンと整合する位置決め孔が穿設された刷版しか使用できず、また、位置決め孔が穿設されていたとしても穿設位置が正確でない場合には、版胴に対して刷版を位置ずれして装着してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する刷版交換装置は、輪転印刷機の版胴に装着される刷版の交換を行う刷版交換装置であって、前記版胴に装着予定の前記刷版がセットされる刷版セット部を有し、前記刷版セット部は、前記刷版を前記版胴に対して当該版胴の軸方向において位置決めするために、前記刷版セット部にセットされている前記刷版を当該刷版の長さ方向に沿う側端縁が前記版胴の一部に対して前記軸方向において接近して当接するように移動させる刷版移動部を備えている。
【0006】
この構成によれば、刷版セット部にセットされた刷版を刷版移動部の駆動により版胴の軸方向に移動させれば、その刷版の側端縁が版胴の位置決め部となる一部に当接し、版胴に対して刷版が版胴の軸方向において位置決めされる。そして、その状態において、版胴を刷版が巻き付けられる方向に回転させると、位置決め孔が穿設されていない刷版でも、版胴に対して位置決めされた状態で装着できる。
【0007】
上記刷版交換装置において、前記刷版セット部は、前記刷版を前記版胴の前記軸方向には移動が許容された状態で支持可能な刷版支持部を有していることが好ましい。
この構成によれば、刷版を刷版支持部により支持した状態のままで、当該刷版を版胴において位置決め部となる一部に当接する位置まで刷版移動部により版胴の軸方向に沿って移動させることができる。
【0008】
上記刷版交換装置において、前記刷版移動部は、前記刷版セット部にセットされた前記刷版における前記長さ方向と交差する幅方向において前記版胴での位置決め部となる前記一部が位置する一方側とは反対の他方側の前記側端縁に対して前記幅方向における前記他方側から当接した状態で前記一方側に移動可能な移動部材と、前記移動部材を前記幅方向に移動させるために駆動される駆動部と、を備えることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、刷版の幅方向で版胴の位置決め部となる一部が位置する一方側とは反対の他方側に位置する移動部材を駆動部により一方側に移動させると、その移動部材が刷版の他方側の側端縁を一方側に押すようになる。その結果、刷版を版胴の位置決め部となる一部に刷版の一方側の側端縁が当接する位置まで駆動部の駆動により移動できる。
【0010】
上記刷版交換装置において、前記刷版移動部は、前記刷版を当該刷版における前記長さ方向の前端である版頭側屈曲部が前記版胴の周面に前記軸方向に沿うように設けられた係止部に係止した状態において前記版胴の前記軸方向に移動させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、刷版の版頭側屈曲部が版胴の係止部に係止すると共に刷版の側端縁が版胴において位置決め部となる一部に当接することにより、版胴に対して刷版を版胴の周方向及び軸方向の両方向において位置決めされた状態で装着することができる。
【0012】
上記刷版交換装置において、前記刷版セット部は、前記刷版における前記長さ方向の後端である版尻側屈曲部を掛止可能として前記刷版の前記長さ方向に移動可能な掛止部材と、前記掛止部材を当該掛止部材に掛止された前記刷版の版頭側から版尻側に向かう付勢力を有して支持する付勢部材と、を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、刷版の版頭側屈曲部を版胴の係止部に係止させ且つ版尻側屈曲部を刷版支持部の掛止部材に掛止させた状態で版胴を刷版が巻き付けられる方向に回転させると、刷版を当該刷版の長さ方向に張力を付与した状態で版胴に巻き付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置決め孔が穿設されていない刷版であっても、版胴に対して位置決めされた状態で装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の刷版交換装置を備えた輪転印刷機を概略的に示す側面図。
図2】刷版の斜視図。
図3】版胴の斜視図。
図4】刷版が巻き付けられた版胴の断面図。
図5図3において矩形の破線Aで囲んだ版胴の一部を拡大して示す正面図。
図6】版胴における咥え込み切替機構を示す側面図。
図7】刷版交換装置の斜視図。
図8】刷版交換装置を図7の場合とは反対側から見た斜視図。
図9】刷版交換装置の図8における9-9線矢視の断面図。
図10】排版開始時の咥え込み切替機構の状態を示す側面図。
図11図10の状態から咥え込み切替機構が動作した状態を示す側面図。
図12】刷版の版尻側屈曲部を版胴の咥え込み部が解放した状態を示す断面図。
図13図12の状態から版胴が排版時の回転方向に回転した状態を示す断面図。
図14】刷版の版頭側屈曲部が版胴の係止部から解放された状態を示す断面図。
図15】版胴から取り外された刷版を刷版交換装置に回収する状態を示す断面図。
図16】給版開始時の刷版交換装置の作動状態を示す断面図。
図17】版胴の係止部に対する刷版の位置合わせ状態を模式的に示す正面図。
図18図17の状態から刷版移動部が作動した状態を模式的に示す正面図。
図19】版胴に対する刷版の巻き付け途中状態を示す断面図。
図20】版胴に対する刷版の巻き付け完了直前の状態を示す断面図。
図21】刷版の版尻側屈曲部が版胴の咥え込み部に咥え込まれる直前での咥え込み切替機構の状態を示す側面図。
図22】刷版の版尻側屈曲部が版胴の咥え込み部に咥え込まれた状態となるときの咥え込み切替機構の状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、輪転印刷機が備える刷版交換装置の一実施形態について図を参照して説明する。なお、図1では、輪転印刷機11が水平面上に置かれているものとし、図1における上下方向を鉛直方向Zとする。また、輪転印刷機11を図1における左側から見た場合の鉛直方向Zと直交する2つの方向のうち、図1では紙面と直交する方向を幅方向Xとし、図1における左右方向を奥行方向Yとする。幅方向Xは、図1での奥側を左側とし、図1での手前側を右側とする。そして、奥行方向Yは、図1での左側を前側とし、図1での右側を後側とする。
【0017】
図1に示すように、輪転印刷機11は、鉛直方向Zに長い箱形状の筐体12を有している。筐体12の内部には、オフセット印刷を行う印刷機構13が収容されている。印刷機構13は、インキつぼ14、種々のインキローラー群15、版胴16、ブランケット胴17及び圧胴18等から構成されている。筐体12の前側壁12aには、ウェブ19を筐体12外から筐体12内に搬入する搬入口20が設けられ、筐体12の後側壁12bには、ウェブ19を筐体12内から筐体12外に搬出する搬出口21が設けられている。搬入口20から筐体12内に搬入された長尺帯状のウェブ19は、筐体12内においてブランケット胴17と圧胴18との間を搬送方向の上流となる前側から下流となる後側に通過することで印刷がなされ、その後、搬出口21から筐体12外に搬出される。
【0018】
すなわち、この輪転印刷機11では、インキつぼ14から供給されたインキが、インキローラー群15を順次に転移する過程で適度に練られた後、版胴16の周面に装着されている刷版22に転写される。そして、刷版22に転写されたインキによる画像が、ブランケット胴17の周面に更に転写され、その後、ブランケット胴17に表面を接触させて上流から下流に通過するウェブ19へ転写されることで、印刷機構13によるウェブ19に対するオフセット印刷が完了する。
【0019】
図1に示すように、輪転印刷機11における筐体12の後側壁12bの上部には、刷版交換装置23が取り付けられている。印刷機構13の版胴16に装着される刷版22は、その装着の前に、まず刷版交換装置23にセットされる。刷版交換装置23は、図1において、実線で示す待機位置P1と、二点鎖線で示す上方に移動したメンテナンス位置P2と、同じく二点鎖線で示す前方斜め下方に傾斜した版交換位置P3との3つの位置の間で移動可能とされている。すなわち、刷版交換装置23は、筐体12の後側壁12bに鉛直方向Zに伸縮動作するように設けられたエアシリンダ24が伸張動作することで、待機位置P1から上方のメンテナンス位置P2に移動する。また、刷版交換装置23は、筐体12における後側壁12bの上端部と刷版交換装置23の側面との間をリンク部材25と共同して連結する斜め配置のエアシリンダ26が収縮動作することで、待機位置P1から前方斜め下方の版交換位置P3に移動する。
【0020】
図2に示すように、刷版22は、その長さ方向に沿う側端縁22a,22bの長さ寸法が当該刷版22の幅寸法よりも長い全体的に矩形状のシート体であり、例えばアルミ板等の可撓性を有する金属板で構成されている。刷版22の長さ方向における前端で図2では下端となる版頭27には、側面視形状がL字状となる版頭側屈曲部28が曲げ形成されている。その一方、刷版22の長さ方向における後端で図2では上端となる版尻29には、側面視形状がフック形状となる版尻側屈曲部30が曲げ形成されている。版頭側屈曲部28と版尻側屈曲部30は、刷版22が版胴16の周面に巻き付けられた場合に版胴16の周面と接触する側の面を巻き付け面31と呼称した場合に、その巻き付け面31の側に屈曲するように各々曲げ形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、版胴16は、軸32を中心にして回転する円筒体である。版胴16の周面には、刷版22の版頭側屈曲部28を係止可能な溝である係止部33と、刷版22の版尻側屈曲部30を咥え込み可能な咥え込み部34とが、版胴16の軸方向に沿って延びるように各々設けられている。係止部33と咥え込み部34とは、版胴16の周面において、刷版22の版頭27から版尻29までの長さに相当する長さだけ版胴16の周方向に互いに離れた位置に設けられている。なお、軸32の長さ方向である版胴16の軸方向は、輪転印刷機11の幅方向Xに一致すると共に、版胴16の周面に巻き付け状態にして装着された刷版22の幅方向とも一致する。また、版胴16の軸方向において、係止部33及び咥え込み部34の長さは、刷版22の幅方向の長さよりも長い。
【0022】
図4及び図5に示すように、係止部33は、版胴16の周面に軸方向に沿うように凹設された凹溝35内に刷版22の幅よりも長い棒体36を固定することで形成される。凹溝35は、版胴16の軸方向から見た場合の断面形状が、軸方向に沿う平面状の底面と当該底面に各々が直交すると共に互いに対向した状態で軸方向に平行に延びる二つの平面状の内側面とで略台形状をなすように形成されている。一方、棒体36は、その断面形状が、凹溝35の底面及び二つの内側面と各々が対面する直角に連続した3つの平面状の外面と版胴16の外周面の一部を構成する円弧面状の外面とで、凹溝35の断面形状よりも僅かに小さい略台形状をなすように形成されている。そのため、棒体36を凹溝35内に嵌め込んだ場合には、凹溝35における一つの内側面と当該内側面に対面する棒体36の一つの外側面との間に刷版22の版頭側屈曲部28を差し入れ可能な隙間状の溝が形成され、かかる溝により係止部33が構成される。
【0023】
図5に示すように、棒体36の長さ方向の端部には、止めねじ37の軸部を挿入可能な貫通孔38が形成されている。棒体36は、この貫通孔38に軸部が挿入された止めねじ37が版胴16内の図示しない雌ねじ部に螺合することで、凹溝35内に溝状の係止部33を形成した状態に固定される。棒体36の端部において貫通孔38の形成位置よりも棒体36の中央側となる位置には、ピン挿通孔39が貫通形成されている。ピン挿通孔39は、棒体36が凹溝35内に係止部33を形成して固定された場合に、その溝状の係止部33を横切る方向に延びるように棒体36に貫通形成されている。そして、そのピン挿通孔39内に挿入された位置決めピン40が版胴16内の図示しないピン穴に嵌合することにより、溝状の係止部33内には、刷版22を版胴16の軸方向において位置決め可能な位置決め部が形成される。換言すると、版胴16の一部である位置決めピン40により、版胴16には版頭側屈曲部28を溝状の係止部33に係止させた刷版22を版胴16の軸方向において位置決め可能とする位置決め部が形成される。
【0024】
図3及び図4に示すように、咥え込み部34は、版胴16の周面に軸方向に沿うように凹設された凹溝41と、その凹溝41内に版胴16の軸方向に沿う軸線を中心にして回転可能に収容された丸棒状の咥え込み回転体42とを含んで構成されている。凹溝41は、その断面形状が、咥え込み回転体42の周面と同じ曲率の円弧面状の内面部分を部分的に含んで形成されている。凹溝41の開口部43は、版胴16の周面に版胴16の軸方向に延びるように開口し、その開口幅は、刷版22の版尻側屈曲部30を差し入れ可能な幅であり且つ咥え込み回転体42の直径よりは小さく形成されている。咥え込み回転体42の周面には、刷版22の版尻側屈曲部30を差し込み可能な隙間状の溝44が軸方向に沿うように凹設されている。そして、図3に示すように、咥え込み回転体42は、その一端を版胴16の側端面16aから突出させた状態で、版胴16の軸方向に沿う軸線を中心にして回転するように構成されている。
【0025】
図6に示すように、輪転印刷機11において、版胴16における咥え込み回転体42の端部が突出した側端面16aの近傍には、咥え込み部34による刷版22の版尻側屈曲部30の咥え込み状態を切り替える咥え込み切替機構45が設けられている。咥え込み切替機構45は、版胴16の側端面16aから突出した咥え込み回転体42の端部に咥え込み回転体42と一体回転するように固定された回転レバー46と、回転レバー46を回転させるために進退移動するプッシャー47とを含んで構成されている。
【0026】
回転レバー46は、その平面形状が「く」の字形状の所謂ブーメランに似た形状をしており、その中心に咥え込み回転体42の端部が固定されている。版胴16の側端面16aにおいて軸32と咥え込み回転体42との間となる箇所には、回転レバー46と当接可能なストッパーピン48が軸方向に突設されている。すなわち、回転レバー46は、咥え込み回転体42と共に図6で時計回り方向に回転したとき、その回転レバー46の中心から一方端側に延びる一方端側アーム部49がストッパーピン48に当接する。一方、回転レバー46は、咥え込み回転体42と共に図6で反時計回り方向に回転したとき、その回転レバー46の中心から他方端側に延びる他方端側アーム部50がストッパーピン48に当接する。
【0027】
図6に示すように、回転レバー46の一方端側アーム部49には円柱状の第1凸部51が軸方向に突設される一方、回転レバー46の他方端側アーム部50には円柱状の第2凸部52が軸方向に突設されている。回転レバー46の一方端側アーム部49における第1凸部51よりも一方端側の箇所には連結ピン53が突設されている。その一方、版胴16の側端面16aにおいて、回転レバー46の一方端側アーム部49の先端が描く回動軌跡よりも版胴16の周方向で時計回り方向に少し離れた箇所には、支持ピン54がブラケット55を介して軸方向に沿うように設けられている。
【0028】
支持ピン54と連結ピン53との間には、圧縮コイルばね56が回転レバー46を常に回転させるように蓄圧された状態で配設されている。因みに、図6の状態では、圧縮コイルばね56の蓄圧によって、回転レバー46は、咥え込み回転体42を中心にして時計回り方向に回動するように付勢されている。そして、その状態において回転レバー46は、一方端側アーム部49がストッパーピン48に当接することで、その時計回り方向の回転を停止されている。なお、この図6に示す状態は、ストッパーピン48に回転レバー46の一方端側アーム部49ではなく他方端側アーム部50の方が圧縮コイルばね56の蓄圧を受けて当接している状態からプッシャー47が前進して第1凸部51を前方に押圧することで得られる。
【0029】
図6に示すように、プッシャー47は、その外形が略矩形状の板材であって、図6では左端面となる一つの端面により、回転レバー46の第1凸部51及び第2凸部52を選択的に押圧可能な平面状の押圧面57が構成されている。プッシャー47の中央には、円形の係合孔58が貫通形成されると共に、プッシャー47における係合孔58よりも上側の位置には、プッシャー47を押圧面57が鉛直方向Zに沿うように配置した場合に水平な前後方向に延びる長孔59が貫通形成されている。長孔59内には前後一対の軸材を連結片で連結して固定配置した摺動ガイド60が挿通され、プッシャー47は、長孔59の部分が摺動ガイド60に摺動することで前後方向に進退移動する。プッシャー47の下方には支軸61が版胴16の軸32と平行に延びるように設けられ、その支軸61には先端部をプッシャー47の係合孔58に先端部を摺接可能に係合させた揺動レバー62の基端部が固定されている。この揺動レバー62は、例えばエアシリンダやモータ等の図示しない駆動源から伝達される駆動力に基づき支軸61を中心にプッシャー47を前進させる方向及び後退させる方向に揺動する。
【0030】
次に、刷版交換装置23について説明する。
図7図8及び図9に示すように、刷版交換装置23は、幅方向Xにおいて刷版22の幅寸法よりも長い距離をおいて対向配置された左側板63と右側板64とを備えている。刷版交換装置23において左側板63と右側板64との間の空間領域は左側板63の内面と右側板64の内面との間に架設された仕切り板65により仕切られている。図9に示すように、刷版交換装置23において、仕切り板65よりも奥行方向Yで後側の空間領域は刷版セット部66とされ、仕切り板65よりも奥行方向Yで前側の空間領域は刷版回収部67とされている。刷版セット部66には版胴16に装着予定の新しい刷版22がセットされ、刷版回収部67には版胴16から取り外された旧い刷版22が回収される。
【0031】
刷版セット部66には、刷版22を支持する刷版支持部68と、刷版支持部68に支持されている刷版22を版胴16の軸方向に沿って移動させる刷版移動部69とが設けられている。刷版支持部68は、刷版セット部66内の上部に配置され、刷版22を吊り下げ状態にして支持可能な掛止部材70を有している。図7及び図9に示すように、掛止部材70は、その先端部となる下端部が刷版22の長さ方向の後端である版尻側屈曲部30を掛止可能なフック形状に曲げ形成された板材であり、そのフック形状の部分は刷版22の幅方向に沿う幅広となるように形成されている。そのため、刷版支持部68は、刷版22の幅方向に沿う幅広のフック形状の部分を有する掛止部材70を介して刷版22を版胴16の軸方向でもある幅方向Xには移動が許容される状態に支持している。
【0032】
刷版支持部68において、掛止部材70は、例えば傾斜した引っ張りコイルばねで構成される付勢部材71により、フック形状の部分が垂れ下がる傾斜状態に支持されている。付勢部材71は、その傾斜した伸縮方向の上端が左側板63と右側板64との間で幅方向Xに延びる固定フレーム72に支持される一方、その傾斜した伸縮方向の下端が掛止部材70の上端部に連結されている。そのため、付勢部材71は、掛止部材70に掛止された刷版22の長さ方向で版頭27側から版尻29側に向かう付勢力を有して掛止部材70を傾斜した状態に支持することになり、掛止部材70は付勢部材71の伸縮に伴い刷版22の長さ方向に移動可能とされる。
【0033】
図7及び図9に示すように、刷版移動部69は、刷版支持部68の掛止部材70に版尻側屈曲部30を掛止された状態で刷版セット部66にセットされた刷版22を幅方向Xの両側から挟んで位置する左右一対の移動部材73,74を有する。各移動部材73,74は、刷版22を上方から刷版セット部66内に挿入し易くするために各々の上端部が幅方向Xの外側に拡開した所謂テーパー形状に形成されている。そして、左右一対の移動部材73,74は、幅方向Xに架橋された連結部材75により、一体的に移動するように連結されている。
【0034】
また、刷版交換装置23の右側板64には、連結部材75で連結された左右の両移動部材73,74を幅方向Xに移動させるために駆動される駆動部の一例であるエアシリンダ76が固定され、その伸縮動作するロッドの先端が連結部材75に連結されている。すなわち、このエアシリンダ76の伸縮動作により左右の移動部材73,74が連結部材75と共に幅方向Xと一致する版胴16の軸方向に移動することで、左右の移動部材73,74の間にセットされた刷版22も版胴16の軸方向に移動することになる。換言すると、左右の移動部材73,74の間にセットされた刷版22は、その幅方向Xの何れか一方の側端縁22a,22bが左右何れか一方の移動部材73,74により幅方向Xの他方側に押されることで、幅方向Xと一致する版胴16の軸方向に移動する。本実施形態の場合、このような連結部材75で連結された左右一対の移動部材73,74とエアシリンダ76とを含んで刷版移動部69が構成されている。
【0035】
また、刷版交換装置23における左側板63と右側板64との下端部間で刷版セット部66の下方となる箇所には軸部材77が架設され、軸部材77の両端部には左右で一対の揺動アーム78が先端側を揺動自在とする態様で各々支持されている。左側の揺動アーム78と右側の揺動アーム78との先端部間には軸部材79が架設され、軸部材79の長さ方向の二箇所には押さえローラー80が回動自在に支持されている。さらに、刷版交換装置23の左側板63にはエアシリンダ81が取り付けられ、その伸縮動作するロッドの先端がリンク機構82を介して揺動アーム78の基端よりも先端側の部分に当該揺動アーム78を揺動運動させるように連結されている。
【0036】
図8及び図9に示すように、刷版交換装置23は、仕切り板65との間に所定の間隔をおいて刷版回収部67を覆う上下方向に長い矩形のカバー板83を有している。カバー板83における長さ方向の中途よりも上方側の外面には、カバー板83の長さ方向に沿って伸縮するエアシリンダ84が設けられている。エアシリンダ84の伸縮動作するロッドの先端部には、そのエアシリンダ84の伸縮に伴い、図9に示す位置と当該位置よりも斜め上方の位置との二位置間をスライドするスライダー85が取り付けられている。
【0037】
カバー板83におけるスライダー85の両側面と対応する位置には、カバー板83の長さ方向に沿う左右一対の切り込み溝86がカバー板83の上端縁から下方に延びるように切り込み形成されている。その一方、スライダー85の両側面には、引っ掛けレバー87がカバー板83の切り込み溝86内で揺動し得るように支持されている。引っ掛けレバー87は、図9に実線で示す引っ掛け位置と二点鎖線で示す通過許容位置との二位置間で揺動自在とされ、図示しない捩りコイルばねにより常には実線で示す引っ掛け位置となる方向に付勢されている。
【0038】
また、刷版交換装置23における左側板63と右側板64との下端部間でカバー板83の外面側となる箇所には回動軸88が架設され、その回動軸88の長さ方向の二箇所には押さえレバー89が固定されている。カバー板83の下部領域において押さえレバー89と対応する位置には、回動軸88の回動に伴い押さえレバー89が揺動したときに、当該押さえレバー89の先端部を刷版回収部67内に進入可能とさせる進入孔90が貫通形成されている。また、図7に示すように、刷版交換装置23の左側板63にはエアシリンダ91が取り付けられ、その伸縮動作するロッドの先端がリンク機構92を介して回動軸88に当該回動軸88を回動させるように連結されている。すなわち、押さえレバー89は、エアシリンダ91の収縮に伴い回動軸88が回動したときに当該押さえレバー89の先端が進入孔90を介して刷版回収部67内に進入し、刷版回収部67内に位置する刷版22を仕切り板65に向けて押さえるようになっている。
【0039】
次に、刷版交換装置23の作用について説明する。
まず、図10図15を参照して、印刷に使用済みの旧い刷版22を版胴16から取り外す場合について説明する。
【0040】
さて、図10に示すように、版胴16から旧い刷版22を取り外すとき、版胴16は、回転レバー46の第2凸部52が咥え込み切替機構45のプッシャー47の押圧面57と水平方向で対向する回転角度位置となるように回転され、その位置で回転を停止される。このとき版胴16の周面に装着されている使用済みの旧い刷版22は、例えば図4に示すように、その版頭側屈曲部28が版胴16の係止部33に係止されると共に、その版尻側屈曲部30が版胴16の咥え込み部34に咥え込まれている。そこで先ず、咥え込み切替機構45により、版胴16の咥え込み部34による刷版22の版尻側屈曲部30に対する咥え込み状態が切り替えられる。
【0041】
すなわち、図11に示すように、咥え込み切替機構45のプッシャー47が図10での後退位置から同図における左方である前方へ移動し、その前面の押圧面57で回転レバー46の第2凸部52を前方に押圧する。すると、回転レバー46が、咥え込み回転体42と共に、咥え込み状態を解放する方向である図10及び図11での反時計回り方向に回転される。この場合、図10の状態での回転レバー46は、圧縮コイルばね56の付勢力で咥え込み回転体42を中心として時計回り方向に回転付勢されている。そのため、プッシャー47は、この圧縮コイルばね56の付勢力に抗しながら第2凸部52を押圧して回転レバー46を反時計回り方向に回転させる。
【0042】
そして、回転レバー46は、第2凸部52をプッシャー47に押されて反時計回り方向に回転し始めてからの回転角度位置が図10に示す回転角度位置と図11に示す回転角度位置との中間の回転角度位置を過ぎると、一気に反時計回り方向に回転する。この場合、回転レバー46は、中間の回転角度位置を過ぎるまでは圧縮コイルばね56により時計回り方向に回転付勢されていたのが、その中間の回転角度位置を過ぎると、圧縮コイルばね56により反時計回り方向に回転付勢されるようになる。この点で、圧縮コイルばね56は、回転レバー46が回転付勢される方向を所定の回転角度位置を境として時計回り方向及び反時計回り方向に切り替える、所謂トグルばねとして機能する。そして、反時計回り方向に回転付勢された回転レバー46は、他方端側アーム部50がストッパーピン48に当接することで、図11に示す回転角度位置で回転が停止される。
【0043】
すると、図12に示すように、版胴16の周面に設けられた咥え込み部34の咥え込み回転体42が、回転レバー46の反時計回り方向への回転に伴い同様に反時計回り方向に回転し、その回転角度位置で回転が停止される。すると、その時点まで例えば図4に示すように咥え込み回転体42の隙間状の溝44に先端が差し込まれた状態で咥え込み部34に咥え込まれていた刷版22の版尻側屈曲部30が、刷版22自身の弾性力で咥え込み部34から離れる方向に変形する。すなわち、刷版22の版尻側屈曲部30が、図12に二点鎖線で示す曲面形状の位置状態から実線で示す平面形状の位置状態へと弾性復帰する。そして、刷版22の弾性復帰した版尻側屈曲部30は仕切り板65の下端部65aに押し当たる。
【0044】
すると、図13に示すように、次には版胴16が刷版22を排版する方向に回転させられる。すなわち、図13に矢印で示す反時計回り方向に版胴16が回転される。すると、版尻側屈曲部30を仕切り板65の下端部65aに載置させた状態で長さ方向の大部分を未だ版胴16の周面に巻き付けた状態にある刷版22は、仕切り板65の上面を前方斜め下方から後方斜め上方に向けて摺動する。このとき、仕切り板65の上面に沿って上方に移動する刷版22は、刷版回収部67の上部で引っ掛け位置に垂れている引っ掛けレバー87を付勢力に抗して通過許容位置側に版尻側屈曲部30により押し退けながら後方斜め上方に移動する。そして、版胴16が図13に示す回転角度位置まで回転したとき、刷版22は、その版頭側屈曲部28を係止部33に係止させた状態で、その長さ方向の大部分が刷版回収部67内に移動される。
【0045】
すると、図14に示すように、次にはエアシリンダ91の駆動により押さえレバー89が揺動して先端を刷版回収部67内に進入させ、仕切り板65の上面に載っている刷版22を押さえつける。すると、刷版22は、押さえレバー89の押さえ力により、仕切り板65の上面に沿っての移動が抑制された状態になる。そして、その状態から図14に矢印で示す方向に版胴16が回転されると、刷版22の版頭側屈曲部28が版胴16の溝状の係止部33から外れる。なお、その時点では未だ刷版22の版頭側屈曲部28は版胴16の周面に接触した状態にある。
【0046】
すると、図15に示すように、次にはエアシリンダ91が図14の場合と逆方向に駆動され、押さえレバー89が、その先端を刷版回収部67内から刷版回収部67外へと退避させるように揺動する。すると、その時点まで刷版回収部67内で仕切り板65に向けて押さえレバー89に押さえつけられていた刷版22は、フリーの状態となるため仕切り板65上を前方斜め下方に向けて摺動し、引っ掛け位置にある引っ掛けレバー87に版尻側屈曲部30が引っ掛かる。そして、その状態から、エアシリンダ84の駆動によりスライダー85が後方斜め上方にスライド移動すると、刷版22は、版頭側屈曲部28が版胴16の周面から離れ、その全体が刷版回収部67内に回収される。
【0047】
次に、図16図22を参照して、印刷に使用予定の新しい刷版22を版胴16の周面に装着する場合について説明する。
さて、図16に示すように、版胴16に新しい刷版22を装着するとき、版胴16は、その周面上の係止部33が刷版交換装置23の下端に位置する押さえローラー80と対向する回転角度位置となるように回転され、その位置で回転を停止される。このとき、装着予定の新しい刷版22は、刷版セット部66内で版尻側屈曲部30が刷版支持部68の掛止部材70に掛止されて吊り下げられたセット状態にある。そして、かかるセット状態において、エアシリンダ81の駆動により揺動アーム78が図16で反時計回り方向に揺動する。
【0048】
すると、図16に示すように、揺動アーム78の揺動に伴い押さえローラー80が刷版22の版頭側屈曲部28の近傍を版胴16の周面に向けて押さえるため、刷版22の版頭側屈曲部28は基端側が撓み変形しながら先端が版胴16の周面に接触する。すなわち、版胴16の周面において係止部33よりも時計方向側に少しずれた位置に刷版22の版頭側屈曲部28の先端は接触する。そして、その状態から版胴16が図16において時計回り方向に回転すると、刷版22は撓み変形していた版頭側屈曲部28の基端側が弾性復帰し、その先端が版胴16の周面を摺動した後、溝状の係止部33内に落ち込んで係止した状態となる。
【0049】
すなわち、図17に示すように、刷版22は、その長さ方向と交差する幅方向Xにおいて一方側の側端縁22aが係止部33内の位置決めピン40よりも他方側に位置した態様で、版頭側屈曲部28の先端が溝状の係止部33内に差し入れられた状態となる。なお、図17及び次の図18は、図16における版胴16及び刷版交換装置23の下半分を同図の白抜き矢印方向に矢視した場合の図であるが、便宜上、軸部材77,79、揺動アーム78及び押さえローラー80等の部材の図示を省略している。そして、この場合において刷版22を幅方向Xの両側から挟んだ状態となる左右の各移動部材73,74と刷版22の各側端縁22a,22bとの間には、図17に示すように、所定の隙間が確保される。そして、その状態からエアシリンダ76が収縮方向に駆動される。
【0050】
すると、図18に示すように、連結部材75と共に左右の移動部材73,74が幅方向Xにおいて版胴16の位置決めピン40に接近する方向に移動する。そのため、図18において右側の移動部材73が、刷版22における幅方向Xで位置決めピン40が位置する一方側とは反対の他方側の側端縁22bに対して幅方向Xの他方側から接近して当接した後、その当接した状態を維持しながら幅方向Xの一方側に移動する。その結果、刷版22は、その幅方向Xで一方側の側端縁22aが位置決めピン40に接近して当接し、これにより、版胴16の軸方向における位置決めがされる。また、その際において、刷版22は版尻側屈曲部30が刷版支持部68の掛止部材70に掛止された状態のままで幅方向Xの一方側に移動させられる。
【0051】
そして次には、図19に示すように、係止部33に刷版22の版頭側屈曲部28を係止させた状態の版胴16が、刷版22を巻き付ける方向である同図での時計回り方向に回転させられる。すると、刷版22が刷版セット部66内で前方斜め下方に移動し、その刷版22の版尻側屈曲部30が掛止した掛止部材70も当該掛止部材70を支持している付勢部材71を伸長させて前方斜め下方に移動する。そして、版胴16が図19に示す回転角度位置よりも更に時計回り方向に回転すると、刷版22は、版尻側屈曲部30が掛止部材70から外れ、その長さ方向の大部分が版胴16の周面に巻き付けられる。
【0052】
すなわち、図20に示すように、刷版22は、その長さ方向の後端の版尻側屈曲部30が版胴16の周面上の咥え込み部34と向き合う状態となるまで版胴16の周面に対して巻き付けられる。そして、図20の状態から更に版胴16が時計回り方向に回転すると、刷版22は、版尻側屈曲部30に至るまでの部分が押さえローラー80により版胴16の周面に向けて押し付けられる。そのため、刷版22は、版尻側屈曲部30の先端が咥え込み回転体42の隙間状の溝44内に押し込まれる。そして、そのように刷版22の版尻側屈曲部30の先端が咥え込み回転体42の溝44内に押し込まれると、版胴16の回転が停止される。
【0053】
この場合、図21に示すように、咥え込み切替機構45は、プッシャー47が後退位置にあり、版胴16は、回転レバー46の第1凸部51がプッシャー47の押圧面57と水平方向で対向する回転角度位置で回転を停止している。また、咥え込み回転体42と一体的に回転する回転レバー46は、圧縮コイルばね56の付勢力により他方端側アーム部50がストッパーピン48に当接するように回動付勢されている。そして、この状態から咥え込み切替機構45が駆動され、版胴16の咥え込み部34による刷版22の版尻側屈曲部30に対する咥え込み状態が切り替えられる。
【0054】
すなわち、図22に示すように、咥え込み切替機構45のプッシャー47が図21での後退位置から同図における左方である前方へ移動し、その前面の押圧面57で回転レバー46の第1凸部51を前方に押圧する。すると、回転レバー46が、咥え込み回転体42と共に、咥え込み状態となる方向である図22での時計回り方向に圧縮コイルばね56の付勢力に抗しながら回転される。そして、回転レバー46は、第1凸部51をプッシャー47に押されて時計回り方向に回転し始めてからの回転角度位置が図21に示す回転角度位置と図22に示す回転角度位置との中間の回転角度位置を過ぎると、一気に時計回り方向に回転する。そして、時計回り方向に回転付勢された回転レバー46は、一方端側アーム部49がストッパーピン48に当接することで、図22に示す回転角度位置で回転が停止される。
【0055】
すると、版胴16の周面に設けられた咥え込み部34の咥え込み回転体42が、回転レバー46の時計回り方向への回転に伴い同様に時計回り方向に回転し、その回転角度位置で回転が停止される。すると、その時点まで例えば図12に二点鎖線で示すように咥え込み回転体42の溝44内に先端が差し込まれているだけで未だ非咥え込み状態だった刷版22の版尻側屈曲部30が時計回り方向に回転した咥え込み回転体42に咥え込まれる。その結果、版胴16の周面に対する新しい刷版22の装着作業が完了し、輪転印刷機11の駆動により新しい刷版22を使用した印刷が行われるようになる。
【0056】
次に、刷版交換装置23の効果について説明する。
(1)刷版セット部66にセットされた刷版22を刷版移動部69の駆動により版胴16の軸方向に移動させれば、その刷版22の側端縁22aが版胴16の位置決めピン40に当接し、版胴16に対して刷版22が版胴16の軸方向において位置決めされる。そして、その状態において、版胴16を刷版22が巻き付けられる方向に回転させると、位置決め孔が穿設されていない刷版22でも、版胴16に対して位置決めされた状態で装着できる。
【0057】
(2)刷版22を刷版支持部68により支持した状態のままで、刷版22を版胴16において位置決め部となる位置決めピン40に当接する位置まで刷版移動部69により版胴16の軸方向に沿って移動させることができる。
【0058】
(3)刷版22の幅方向Xで版胴16の位置決めピン40が位置する一方側とは反対の他方側に位置する移動部材73をエアシリンダ76の駆動により一方側に移動させると、その移動部材73が刷版22の他方側の側端縁22bを一方側に押すようになる。その結果、刷版22を版胴16の位置決め部となる位置決めピン40に刷版22の他方側の側端縁22aが当接する位置までエアシリンダ76の駆動により移動できる。
【0059】
(4)刷版22の版頭側屈曲部28が版胴16の係止部33に係止すると共に刷版22の側端縁22aが版胴16における位置決めピン40に当接することで、版胴16に対して刷版22を版胴16の周方向及び軸方向の両方向において位置決め状態で装着できる。
【0060】
(5)刷版22の版頭側屈曲部28を版胴16の係止部33に係止させ且つ版尻側屈曲部30を刷版支持部68の掛止部材70に掛止させた状態で版胴16を刷版22の巻き付け方向に回転させると、刷版22を版胴16に張力を付与した状態で巻き付けできる。
【0061】
なお、上記の実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0062】
・固定フレーム72に掛止部材70を支持して伸縮する付勢部材71は、引っ張りコイルばね以外に、例えばゴム紐等の伸縮性を有した部材で構成してもよい。
・掛止部材70は、フック形状の先端部よりも基端側の部分が伸縮性を有するゴム等の材質で構成され、そのようにゴム等の材質で構成した部分が付勢部材71の機能を果たす用にしてもよい。
【0063】
・刷版移動部69の移動部材73,74を移動させる駆動部はエアシリンダ76以外に例えばモータ等で構成してもよい。この場合、モータの駆動力で回転するピニオンに噛合するラックを移動部材73,74と一体的に刷版22の幅方向Xに移動するように設けることが好ましい。
【0064】
・刷版移動部69の移動部材73,74は、移動時に刷版22の他方側の側端縁22bを一方側に押す片側の移動部材73だけであってもよい。
・刷版移動部69は、片側の移動部材73が移動時に刷版22の他方側の側端縁22bを一方側に押す構成に限らず、刷版22を厚さ方向の両側から挟持した状態で、一方側に刷版22を引っ張って移動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
11…輪転印刷機
16…版胴
22…刷版
22a…側端縁
22b…側端縁
23…刷版交換装置
27…版頭
28…版頭側屈曲部
29…版尻
30…版尻側屈曲部
33…係止部
66…刷版セット部
68…刷版支持部
69…刷版移動部
70…掛止部材
71…付勢部材
73…移動部材
74…移動部材
76…駆動部の一例であるエアシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図22