(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】アームホールにおける被覆材の取付け構造、アームホール及びグローブボックス
(51)【国際特許分類】
B25J 21/02 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
B25J21/02
(21)【出願番号】P 2021103580
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592041306
【氏名又は名称】株式会社美和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江頭 哲也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015840(JP,A)
【文献】特開平11-210948(JP,A)
【文献】特開2017-042185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、
前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、
前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、
を備え、
前記アームホールは、
前記ボックス本体から突き出た円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、
を有
し、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記内突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている内突片、
又は、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記外突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている外突片、
を有する、
アームホールにおける被覆材の取付け構造。
【請求項2】
ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、
前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、
前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、
を備え、
前記アームホールは、
前記ボックス本体から突き出た円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、
を有し、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片と、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片と、
を有し、
前記内突片及び前記外突片は、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、
前記内突片、前記外突片及び前記円筒体で断面T字状に形成されている
、
アームホールにおける被覆材の取付け構造。
【請求項3】
ボックス本体に対して取り付けられ、その外周面に手袋が取り付けられると共に、その先端部に被覆材が取り付けられるアームホールであって、
前記ボックス本体に取り付けられる取付け部が基端部に設けられた円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、
を備え
、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記内突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている内突片、
又は、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記外突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている外突片、
を有する、
アームホール。
【請求項4】
ボックス本体に対して取り付けられ、その外周面に手袋が取り付けられると共に、その先端部に被覆材が取り付けられるアームホールであって、
前記ボックス本体に取り付けられる取付け部が基端部に設けられた円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、
を備え、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片と、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片と、
を有し、
前記内突片及び前記外突片は、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、
前記内突片、前記外突片及び前記円筒体で断面T字状に形成されている、
アームホール。
【請求項5】
ボックス本体と、
前記ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、
前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、
前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、
を備え、
前記アームホールは、
前記ボックス本体から突き出た円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、
を有
し、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記内突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている内突片、
又は、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片であり、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、前記外突片及び前記円筒体で断面L字状に形成されている外突片、
を有する、
グローブボックス。
【請求項6】
ボックス本体と、
前記ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、
前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、
前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、
を備え、
前記アームホールは、
前記ボックス本体から突き出た円筒体と、
前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、を有し、
前記外れ止め片は、
前記円筒体から径方向の中央側に向かって突き出る内突片と、
前記円筒体から径方向の外側に向かって突き出る外突片と、
を有し、
前記内突片及び前記外突片は、前記円筒体の先端面に沿って形成されており、
前記内突片、前記外突片及び前記円筒体で断面T字状に形成されている、
グローブボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームホールにおける被覆材の取付け構造、アームホール及びグローブボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のグローブボックスが開示されている。特許文献1記載のグローブボックスは、ボックス本体(特許文献1では「本体ボックス」)に対し、ボックス本体の内部に通じるアームホール(特許文献1では筒状体)が取り付けられている。アームホールには、アームホールに被せるようにして、手袋が取り付けられている。手袋は、アームホールの外周面に形成された環状溝に対して、Oリングを嵌め込むことで、アームホールに固定されている。
【0003】
グローブボックスの不使用時には、手袋をアームホールから引っ張り出した状態にするか、手袋をボックス本体内に入れたまま蓋を閉めておく。このため、手袋がアームホールの先端に接触して破れたり、ピンホールが開いたりするのを防ぐために、アームホールの先端部には被覆材(特許文献1では「パッキン」)が取り付けられている。
【0004】
特許文献1記載のグローブボックスでは、アームホールの先端部は、アームホールの中心軸方向に沿って真っ直ぐに形成されており、被覆材は、アームホールの先端部を覆うようにして取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のグローブボックスでは、手袋が破れたり、ピンホールが開いたりした場合のほか、手袋が劣化した場合等に、手袋を交換することが行われる。また、手袋は、上述した通り、常にアームホールからボックス本体内に入れておくのではなく、不使用時等、必要に応じて、アームホールから本対ボックスの外に引っ張り出しておくことがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のグローブボックスでは、アームホールの先端部がアームホールの中心軸方向に沿って真っ直ぐに形成されている。このため、アームホールの先端部に取り付けられた被覆材は、例えば、手袋の交換の際、Oリングを外した時にOリングが被覆材に当たったり、手袋をアームホールから引っ張り出した際、手袋が被覆材を擦ったりして、被覆材が、アームホールの先端部から外れることがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、アームホールの先端部から被覆材が外れることを抑制することができるアームホールにおける被覆材の取付け構造、アームホール及びグローブボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様のアームホールにおける被覆材の取付け構造は、ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、を備え、前記アームホールは、前記ボックス本体から突き出た円筒体と、前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、を有する。
【0010】
本発明に係る一態様のアームホールは、ボックス本体に対して取り付けられ、その外周面に手袋が取り付けられると共に、その先端部に被覆材が取り付けられるアームホールであって、前記ボックス本体に取り付けられる取付け部が基端部に設けられた円筒体と、前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、を備える。
【0011】
本発明に係る一態様のグローブボックスは、ボックス本体と、前記ボックス本体に設けられ、前記ボックス本体の内部に通じる円筒状のアームホールと、前記アームホールの先端部に取り付けられた被覆材と、前記アームホールの外周面において前記被覆材よりも基端部側に取り付けられた手袋と、を備える。前記アームホールは、前記ボックス本体から突き出た円筒体と、前記円筒体の先端部に設けられ、前記円筒体から径方向の少なくとも一方に突き出ており、前記被覆材の外れを妨げる外れ止め片と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記態様のアームホールにおける被覆材の取付け構造、アームホール及びグローブボックスは、アームホールの先端部から被覆材が外れることを抑制することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態のグローブボックスの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるアームホールと被覆材周辺の拡大図である。
【
図4】
図4(A)は、変形例1に係る被覆材周辺の拡大図である。
図4(B)は、変形例2に係る被覆材周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
(1)全体
本実施形態に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造(以下、「被覆材5の取付け構造」という)は、複数のアームホール4を有するグローブボックス1に適用されている。ここでは、
図1に示すように、二つのアームホール4を有するグローブボックス1を一例に説明するが、本発明では、三つ以上のアームホール4を有するグローブボックス1であってもよいし、一つのアームホール4を有するグローブボックス1であってもよい。
【0015】
グローブボックス1は、外気と遮断された容器内で、手袋6によって作業できるように構成された密閉容器である。グローブボックス1としては、真空式と、ガス置換式(パージ式)とのいずれが用いられてもよいが、本実施形態では、パージ式のグローブボックス1を一例に挙げて説明する。グローブボックス1は、
図1に示すように、ボックス本体2と、サイドボックス3と、複数のアームホール4と、各アームホール4に取り付けられた複数の被覆材5(
図2)と、複数の手袋6と、を備える。
【0016】
以下では、説明の便宜上、グローブボックス1から作業者に向かい、かつ水平面に沿う方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」とし、前方向及び後方向に平行な2方向を合わせて「前後方向」として定義する。また、前後方向に直交しかつ水平面に沿う方向を「左右方向」として定義する。
【0017】
(2)ボックス本体
ボックス本体2は、内部に作業空間を有する気密容器であり、作業空間を気密状に区画する。ボックス本体2の形状は、内部に作業空間を有していれば特に制限はなく、例えば、直方体状、立方体状、側面視台形状、円筒状等が挙げられる。また、ボックス本体2の材質としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、ガラス、合成樹脂等、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0018】
ボックス本体2は、窓部21を有する。作業者は、窓部21を通して、ボックス本体2内を視認することができる。窓部21は、ボックス本体2の前面の少なくとも一部に形成されている。本実施形態に係るグローブボックス1は、ボックス本体2の前面の略全体が窓部21であるが、グローブボックス1の前面の上部にのみ形成された窓部21であってもよい。窓部21の材質としては、例えば、強化ガラス、合わせガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0019】
ボックス本体2には、水分計、酸素計、真空計等の種々の計器や、電流導入端子(D-SUB、LAN、USB等)、電源コンセント等が設けられるが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0020】
(3)サイドボックス
サイドボックス3は、スライドテーブルを有しており、ボックス本体2に対し、処理物や容器等の対象物の出し入れを行う。サイドボックス3は、ボックス本体2の側面に取り付けられている。サイドボックス3は、左右方向を中心軸とする角筒状に形成されており、中心軸方向の両端面に開口面を有する。サイドボックス3の中心軸方向の一方の開口面は、サイドボックス3の側面を貫通する貫通穴(不図示)に対向しており、サイドボックス3は、貫通穴を通してボックス本体2の内部に通じている。サイドボックス3の中心軸方向の一方の開口面は、内側ハッチ扉(不図示)によって開閉可能に閉じられる。また、サイドボックス3の中心軸方向の他方の開口面は、ハッチ扉31によって開閉可能に閉じられている。
【0021】
(4)アームホール、被覆材
アームホール4は、手袋6が取り付けられ、手袋6を装着した作業者の手を、アームホール4を通して、ボックス本体2の作業空間内に入れることができる。アームホール4は、ボックス本体2の前面(本実施形態では、前面パネル)に設けられており、ボックス本体2の内部に通じている。
【0022】
アームホール4は、中心軸方向の両端面に開口面を有する略円筒状に形成されている。アームホール4の中心軸方向は、水平面に沿っていてもよいが、前方向に進むに従って上方向に進むように、水平面に対して傾斜していることが好ましい。複数のアームホール4の中心軸は、左右方向に並んで互いに略平行である。
【0023】
アームホール4の材質としては、特に制限はないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、ガラス、合成樹脂等が挙げられる。
【0024】
アームホール4は、
図2に示すように、円筒体41と、外れ止め片43と、取付け部42と、を備える。外れ止め片43及び取付け部42は、円筒体41に対して一体に成形されている。
【0025】
円筒体41は、アームホール4において円筒状をなす部分であり、アームホール4がボックス本体2に取り付けられると、ボックス本体2の外面(前面)から突き出る。円筒体41には、
図2に示すように、円筒体41に被さるようにして、手袋6が取り付けられる。円筒体41の外周面には、
図3にしめすように、円筒体41の中心軸方向に沿って間隔をおいて形成された複数の取付け溝411,412が形成されている。複数の取付け溝のうち、円筒体41の中心軸方向のボックス本体2側の端部(「基端部」という場合がある)に形成された取付け溝を「第一取付け溝411」とし、第一取付け溝411よりも円筒体41の中心軸方向のボックス本体2とは反対側の端部(「先端部」という場合がある)側に形成された溝を「第二取付け溝412」とする。
【0026】
第一取付け溝411には、手袋6の開口縁部が嵌まり込む。第一取付け溝411は、アームホール4の外周全長に亘って形成されている。第一取付け溝411は、円筒体41の基端部に形成されているが、取付け部42よりも先端部側に形成されている。第二取付け溝412は、第一取付け溝411と円筒体41の先端部との間に形成されている。第二取付け溝412は、第一取付け溝411よりも幅が広くかつ深く形成されており、手袋6と、手袋6の外側に配置されたOリング7とが嵌まり込むように構成されている。本実施形態に係る第二取付け溝412は、一つのみ形成されているが、円筒体41の中心軸方向に間隔をおいて複数形成されてもよい。
【0027】
手袋6は、手袋6の開口縁部にアームホール4を通し、手袋6の開口縁部を第一取付け溝411に嵌め込んだ後、第二取付け溝412に対して手袋6の外側からOリング7を嵌め込むことで、アームホール4に取り付けられる。これによって、アームホール4の外周面と手袋6とが密着し、アームホール4に対して手袋6の端部が気密状に取り付けられる。
【0028】
取付け部42は、アームホール4をボックス本体2に取り付ける部分である。取付け部42は、本実施形態では、フランジで構成されている。取付け部42は、円筒体41の基端に設けられており、ボックス本体2の内側に配置された円環状のバックアップ材B1に対してボルト止めされる。
【0029】
取付け部42は、ここでは、一例としてフランジを挙げて説明しているが、本発明では、フランジに限られない。取付け部42としては、フランジのほか、例えば、溶接により接合するための端部、ねじ止めのための穴、嵌め込み部、スナップフィット構造部等が挙げられる。また、取付け部42はなくてもよく、アームホール4は、ボックス本体2に対して、プレス加工・樹脂成形等により一体に成形されてもよい。したがって、アームホール4がボックス本体2に「設けられる」とは、アームホール4とボックス本体2とが別部材で構成されることのほか、アームホール4とボックス本体2とが一体であることも含むこととする。
【0030】
円筒体41の先端部には、外れ止め片43が設けられている。ここで、円筒体41の先端部には、
図3に示すように、被覆材5が取り付けられている。被覆材5は、リング状に形成されており、アームホール4の先端のエッジが手袋6を傷付けたり穴を開けたりすることを防ぐ部材である。被覆材5は、円筒体41の先端部に設けられた外れ止め片43を覆うようにして取り付けられている。
【0031】
外れ止め片43は、円筒体41の先端部から径方向の少なくとも一方に突き出ており、被覆材5が外れるのを防ぐことができる。ここでいう「突き出る」とは、円筒体41における被覆材5が取り付けられる領域(すなわち、先端部)において、被覆材5が中心軸方向の先端部側へ移動するのを妨げることができる程度に他の部分よりも突出することを意味する。外れ止め片43は、内突片431と、外突片432と、を備えており、円筒体41、内突片431及び外突片432で、断面略T字状に形成されている。
【0032】
内突片431は、円筒体41の先端部の内周面から径方向の中央側に向かって突き出る部分である。内突片431は、円筒体41の内周面の全長に亘って形成されている。内突片431は、円筒体41の内周面の周方向において、断続的又は部分的に設けられてもよいが、本実施形態では、円筒体41の内周面の周方向において連続的に形成されており、円環状に形成されている。
【0033】
内突片431の突出寸法H1は、被覆材5の外れを妨げることができれば、特に制限はないが、例えば、1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5mm以上3mm以下である。内突片431の突出寸法H1は、被覆材5のサイズや剛性等に対応して、変化し得る。
【0034】
内突片431における、アームホール4の中心軸方向の基端部側の面(これを「内規制面4311」という)は、円筒体41の中心軸に対して略直交している。ただし、内規制面4311としては、径方向の中央側に進むに従って基端部側に進むように、円筒体41の内周面に対して傾斜していてもよい。また、内規制面4311は、平面であるが、凸曲面又は凹曲面であってもよい。
【0035】
円筒体41に内突片431が設けられることで、アームホール4から作業空間に向かって手を挿し入れたり、作業空間から手を引き抜いたりする際、手袋6が被覆材5に接触しても、被覆材5を外れにくくすることができる。
【0036】
外突片432は、円筒体41の先端部の外周面から径方向の外側に向かって突き出る部分である。外突片432は、円筒体41の外周面の全長に亘って形成されている。外突片432は、内突片431と同様、円筒体41の外周面の周方向において、断続的又は部分的に設けられてもよいが、本実施形態では、円筒体41の外周面の周方向において連続的に形成されており、円環状に形成されている。
【0037】
外突片432の突出寸法H2は、被覆材5の外れを妨げることができれば、特に制限はないが、例えば、1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5mm以上3mm以下である。外突片432の突出寸法H2は、内突片431と同様、被覆材5のサイズや剛性等に対応して、変化し得る。
【0038】
外突片432における、アームホール4の中心軸方向の基端部側の面(これを「外規制面4321」という)は、円筒体41の中心軸に対して略直交している。ただし、外規制面4321は、径方向の外側に進むに従って基端部側に進むように、円筒体41の外周面に対して傾斜していてもよい。また、外規制面4321は、平面であるが、凸曲面又は凹曲面であってもよい。
【0039】
円筒体41に外突片432が設けられることで、例えば、手袋6を交換する際、Oリング7を外す必要があるが、このときOリング7が被覆材5に当たっても被覆材5を外れにくくできるし、手袋6を引き抜いた際に手袋6が被覆材5に接触しても、被覆材5を外れにくくすることができる。
【0040】
被覆材5の材質としては、特に制限はないが、例えば、エラストマ、軟質合成樹脂、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR;Nitrile butadiene rubber)、ブチルゴム、バイトン(登録商標)等の弾性体が用いられることが好ましい。ただし、手袋6を損傷しないような滑らかな外形を有していれば、弾性体でなくてもよく、例えば、硬質合成樹脂、布、パルプ、金属等であってもよい。本実施形態に係る被覆材5は、クロロプレンゴムによって構成されている。
【0041】
被覆材5は、アームホール4の先端部に対して、嵌め込みによって取り付けられている。被覆材5には、円筒体41の先端部を差し込むスリット51と、スリット51の奥側の端部に形成された内溝52及び外溝53とが形成されている。内溝52には内突片431が嵌まり込み、外溝53には外突片432が嵌まり込む。内溝52及び外溝53は、スリット51に対して直交している。本実施形態では、グローブボックス1の性質上、作業空間内に異物が混入するのを防ぐために、被覆材5は、接着剤を用いることなく取り付けられることが好ましい。
【0042】
(5)手袋
手袋6は、アームホール4を塞ぐようにして、ボックス本体2の気密性を保つようにして取り付けられており、使用時には、アームホール4からボックス本体2内に挿し入れられ、不使用時にはアームホール4から外部に出され得る。手袋6は、アームホール4の外周面において被覆材5よりも基端部側に取り付けられる。
【0043】
手袋6の材料としては、特に制限はないが、例えば、バイトン(登録商標)、ブチル、ネオプレン(登録商標)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;Chlorosulfonated polyethylene)、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR;Nitrile butadiene rubber)、シリコーン、クロロプレン、ポリウレタン等が挙げられる。このなかでも、耐薬品性、耐油性の観点から、アクリロニトリルブタジエンゴムが用いられることが好ましく、あるいは、耐ガス透過性の観点から、ブチルゴムが用いられることが好ましい。本実施形態では、ブチルゴムが用いられる。
【0044】
手袋6は、
図1にしめすように、作業者の手指に装着される手部61と、前腕を覆う前腕部62と、上腕を覆う上腕部63と、アームホール4に固定される固定部64と、を備える。手部61、前腕部62、上腕部63及び固定部64は一体に形成されている。固定部64は一端が開口しており、アームホール4に対して、固定部64が取り付けられる。
【0045】
このように、本実施形態に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造は、アームホール4の先端部に形成された外れ止め片43を有するため、被覆材5がアームホール4から外れにくい。このため、手袋6をアームホール4から出し入れしたり、手袋6を交換したりする際、被覆材5が外れることが防止される。
【0046】
特に、手袋6を交換する際、ボックス本体2内の作業空間に異物が入り込まないようにするために、迅速な交換作業を要するが、被覆材5が外れにくくなることで、迅速な作業を実現しやすい。その上、手袋6を交換する際、交換に慣れていない作業者が手袋6の交換を行うと、被覆材5が外れやすいが、本実施形態に係るアームホール4によれば、交換に慣れていない作業者であっても、被覆材5を外すことなく、手袋6の交換作業を行うことができる。この結果、手袋6の交換時に生じ得るボックス本体2内の大気曝露の時間をできる限り抑制することができる。
【0047】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0048】
(1)変形例1
上記実施形態に係るアームホール4では、外れ止め片43が、内突片431と外突片432との両方を備えたが、本発明では、
図4(A)に示すように、外れ止め片43は、外突片432を備えることなく、内突片431のみを備えてもよい。変形例1に係るアームホール4でも、被覆材5が外れにくい効果を得ることができる。とりわけ、変形例1に係るアームホール4では、アームホール4から手袋6を出す際に、手袋6が被覆材5に接触しても、被覆材5が外れることを効果的に防止できる。
【0049】
(2)変形例2
上記実施形態に係るアームホール4では、外れ止め片43が、内突片431と外突片432との両方を備えたが、本発明では、
図4(B)に示すように、外れ止め片43は、内突片431を備えることなく、外突片432のみを備えてもよい。変形例2に係るアームホール4でも、被覆材5が外れにくい効果を得ることができる。とりわけ、変形例2に係るアームホール4では、手袋6を交換する際の被覆材5の外れを効果的に防止することができる。
【0050】
(3)その他の変形例
以下、実施形態の変形例を列挙する。
【0051】
上記実施形態に係るアームホール4は、グローブボックス1に対して適用したが、本発明では、グローブボックス1に限らず、例えば、アイソレータ、エンクロージャ、ドライボックス、無菌チャンバ、鉄セル等に適用されてもよい。
【0052】
上記実施形態に係るアームホール4では、被覆材5は、接着剤を用いることなく取り付けられたが、本発明では、被覆材5は、外れ止め片43に加えて、接着剤が用いられてもよい。
【0053】
上記実施形態に係るアームホール4では、外れ止め片43は、円筒体41の先端部の端面に沿って形成されたが、本発明では、先端部の端面よりも基端部側に位置する部分から突き出てもよい。
【0054】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0055】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0056】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造は、ボックス本体2に設けられ、ボックス本体2の内部に通じる円筒状のアームホール4と、アームホール4の先端部に取り付けられた被覆材5と、アームホール4の外周面において被覆材5よりも基端部側に取り付けられた手袋6と、を備える。アームホール4は、ボックス本体2から突き出た円筒体41と、円筒体41の先端部に設けられ、円筒体41から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、被覆材5の外れを妨げる外れ止め片43と、を有する。
【0057】
この態様によれば、外れ止め片43が被覆材5の移動を妨げるため、仮に被覆材5に対して、アームホール4の中心軸方向の先端部側へ向かう外力が加わっても、アームホール4から被覆材5が外れにくい。このため、アームホール4の先端部から被覆材5が外れることを抑制することができる。
【0058】
第2の態様に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造では、第1の態様において、外れ止め片43は、円筒体41から径方向の中央側に向かって突き出る内突片431を有する。
【0059】
この態様によれば、例えば、アームホール4を通して、ボックス本体2の作業空間から手袋6を引っ張り出す際に、手袋6が被覆材5に接触しても、アームホール4から被覆材5が外れにくい。特に、円筒体41の内側は作業者から視認しにくい場所であるが、内突片431によって被覆材5がアームホール4から外れにくいために、作業者は注意を払うことなく、アームホール4を通して、ボックス本体2の作業空間から手袋6を引っ張り出すことができ、作業性を向上することができる。
【0060】
第3の態様に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造では、第1又は第2の態様において、外れ止め片43は、円筒体41から径方向の外側に向かって突き出る外突片432を有する。
【0061】
この態様によれば、例えば、手袋6を交換する際に、手袋6の開口縁やOリング7が被覆材5に接触しても、アームホール4から被覆材5が外れにくい。
【0062】
第4の態様に係るアームホール4における被覆材5の取付け構造では、第1~3のいずれか1つの態様において、内突片431及び外突片432は、円筒体41の先端面に沿って形成されており、内突片431、外突片432及び円筒体41で断面T字状に形成されている。
【0063】
この態様によれば、より一層、アームホール4の先端部から被覆材5が外れることを抑制することができる。
【0064】
第5の態様に係るアームホール4は、ボックス本体2に対して取り付けられ、その外周面に手袋6が取り付けられると共に、その先端部に被覆材5が取り付けられるアームホール4である。アームホール4は、ボックス本体2に取り付けられる取付け部42が基端部に設けられた円筒体41と、円筒体41の先端部に設けられ、円筒体41から径方向の中央側と外側とのうちの少なくとも一方に突き出ており、被覆材5の外れを妨げる外れ止め片43と、を備える。
【0065】
この態様によれば、アームホール4の先端部から被覆材5が外れることを抑制することができる。
【0066】
第6の態様に係るグローブボックス1は、ボックス本体2と、ボックス本体2に設けられ、ボックス本体2の内部に通じる円筒状のアームホール4と、アームホール4の先端部に取り付けられた被覆材5と、アームホール4の外周面において被覆材5よりも基端部側に取り付けられた手袋6と、を備える。アームホール4は、ボックス本体2から突き出た円筒体41と、円筒体41の先端部に設けられ、円筒体41から径方向の少なくとも一方に突き出ており、被覆材5の外れを妨げる外れ止め片43と、を有する。
【0067】
この態様によれば、アームホール4の先端部から被覆材5が外れることを抑制できるグローブボックス1を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 グローブボックス
2 ボックス本体
4 アームホール
41 円筒体
43 外れ止め片
431 内突片
432 外突片
5 被覆材
6 手袋