(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】チェーン格納構造
(51)【国際特許分類】
B62J 13/04 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
B62J13/04
(21)【出願番号】P 2021120189
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】521209627
【氏名又は名称】株式会社ブーンカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100148127
【氏名又は名称】小川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺未来雄
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212384(JP,U)
【文献】実公昭25-001015(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 13/00 - 13/04
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルユニットを着脱可能な自転車において、
駆動輪と一体に回転するスプロケットに噛合するチェーンと、
前記チェーン全体をスプロケットの円周に沿って巻いた状態で、前記チェーンおよび前記スプロケットを格納するチェーンケースと、
を備えた、チェーン格納構造。
【請求項2】
前記チェーンケースは、前記チェーンを収容する収容部を有する、前記自転車の側面視において半円形状に形成された一対のシェル部材を有する、請求項1に記載のチェーン格納構造。
【請求項3】
前記一対のシェル部材は、一端においてヒンジ部により互いに接合され、他端に設けられた接続部により互いに接続されることで、前記チェーンを収容した状態で円形状を形成する、請求項2に記載のチェーン格納構造。
【請求項4】
前記チェーンケースは、前記収容部が、前記半円形状の中心に近づくにつれて幅狭に設計され、収容された前記チェーンを両側面から押さえる、請求項2または3に記載のチェーン格納構造。
【請求項5】
前記チェーンケースは、前記収容部における前記半円形状の円周部分内部に設けられたスポンジ部材を有する、請求項2から4のいずれかに記載のチェーン格納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルの着脱ユニットを備えた自転車に取り付けられるチェーンを格納するチェーン格納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着脱可能なペダルの着脱ユニットを備えた練習用の自転車が開発され、使用されている。これらは、チェーンホイールおよびペダルクランクを含むユニット本体部分を自転車本体にボルト等で着脱可能とした構成であり、ボルトとナットによるペダルユニットの固定接続や固定解除を可能としている。
【0003】
ペダルの着脱ユニットを備えた自転車として、例えば、特許文献1には、ペダルクランクを軸支するブラケットユニットに突出形成した連結部を、車体の本体フレームから下方に向けて延びる筒状部に対して着脱可能とした走行練習用自転車であって、前記筒状部の下端部においてその長手方向に沿って延びるように切欠形成された縦長のスリットと、前記スリットの上方位置にて前記筒状部に形成された本体側の透孔と、前記ブラケットユニットの連結部に形成され、前記スリットに嵌め込まれて当該スリットの内側面と上下方向において長く接するように係合する突条と、前記スリットと前記突条が係合した状態において、前記本体側の透孔と一致する位置にて前記ブラケットユニットの連結部に形成されたブラケットユニット側の透孔と、を備え、前記本体側の透孔と前記ブラケットユニット側の透孔に挿通されるボルト、及びナットによって前記筒状部に対して前記ブラケットユニットの連結部を着脱可能に固定した走行練習用自転車、が開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、ペダルクランクを軸支するブラケットユニットを簡単かつ迅速に着脱でき、かつ、強度と耐久性に優れた走行練習用自転車を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の走行練習用自転車のようなペダルユニット着脱式の自転車において、ペダルユニットを取り付ける際に、併せてチェーンも取り付けるため、一度後輪をフレームから取り外す必要があり、そのためにブレーキの調整を行う必要があった。この作業は技術を要するため、一般的には自転車屋等に依頼して作業してもらう必要があり、コストや手間のかかるものであった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、後輪をフレームから取り外すことなく簡易かつ容易にペダルユニットを着脱することが可能なチェーン格納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明では、ペダルユニットを着脱可能な自転車において、駆動輪と一体に回転するスプロケットに噛合するチェーンと、前記チェーンを前記スプロケットの円周に沿って巻いた状態で、前記チェーンおよび前記スプロケットを格納するチェーンケースと、を備えた、チェーン格納構造を提供する。また、前記チェーンケースは、前記チェーンを収容する収容部を有する前記自転車の側面視において半円形状に形成された一対のシェル部材を有するものであってよい。
【0009】
また、前記一対のシェル部材は、一端においてヒンジ部により互いに接合され、他端に設けられた接続部により互いに接続されることで、前記チェーンを収容した状態で円形状を形成するものであってもよい。
【0010】
また、前記チェーンケースは、前記収容部が、前記半円形状の中心に近づくにつれて幅狭に設計され、収容された前記チェーンを両側面から押さえるものであってもよい。さらに、前記チェーンケースは、前記収容部における前記半円形状の円周部分に設けられたスポンジ部材を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、後輪をフレームから取り外すことなく簡易かつ容易にペダルユニットを着脱することが可能なチェーン格納構造を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自転車の構成例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自転車の後輪を示す拡大模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の構成例を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の構成例を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の動作例を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の動作例を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の動作例を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の動作例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されることはなく、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形、および変更が可能である。
【0014】
<自転車の構成例>
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る自転車の構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る自転車の構成例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る自転車の後輪を示す拡大模式図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る自転車10は、一例として、自転車本体11と、自転車本体11の前方上部に取り付けられたハンドル12と、自転車本体11の中央付近上部に取り付けられたサドル13と、自転車本体11の前方および後方の下部にそれぞれ回転可能に連結された前輪14および後輪15と、を備えている。
【0016】
また、自転車10は、自転車本体11の中央付近下部に取り付けられたペダル16と、リアスプロケット17と、チェーン18と、分割可能なチェーンカバー19と、ペダルを支持するクランク20と、チェーンリング21とを備えている。本実施形態では、ペダル16、チェーンカバー19、クランク20およびフロントチェーンリング21により、ペダルユニットが構成されている。自転車10は、ペダルユニットが着脱可能に構成されている。
【0017】
また、
図2に示すように、後輪15は、複数のスポークを介して後輪軸21周りに回転可能に、自転車本体11の後方下部と連結されている。なお、前輪14も、複数のスポークを介して前輪軸周りに回転可能に、自転車本体11の前方下部と連結されている。
【0018】
チェーン18は、フロントチェーンリング21と後輪軸21に取り付けられているリアスプロケット17との間に取り付けられ、ペダル16からの動力を、後輪15に伝達する。自転車10は、リアスプロケット17の周りに、チェーン18を格納するチェーンケース22を取り付けることができる。
【0019】
<チェーン格納構造の構成例>
次に、
図2から
図4を参照して、本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係るチェーン格納構造のチェーンケースの一部が開放された状態を示す模式図である。
図4は、本実施形態に係るチェーン格納構造のチェーンケースが閉じた状態を示す模式図である。
【0020】
本実施形態に係るチェーン格納構造は、ペダルユニットを着脱可能な自転車10において、駆動輪である後輪15と一体に回転するリアスプロケット17に噛合するチェーン18と、チェーン18をリアスプロケット17の円周に沿って巻いた状態で、チェーン18およびリアスプロケット17を格納するチェーンケース22と、備えている。なお、駆動輪は、後輪15に限らず、前輪14であってもよい。この場合、チェーンケースは、チェーンおよびフロントスプロケットを格納する。
【0021】
図3に示すように、チェーンケース22は、全体が円板形状に形成され、チェーン18を収容する収容部を有する自転車10の側面視において、それぞれ半円形状に形成された第1シェル部材23および第2シェル部材24の一対のシェル部材を有している。
【0022】
第1シェル部材23および第2シェル部材24は、それぞれの一端に第1接続部25および第2接続部26が形成されている。また、第1シェル部材23および第2シェル部材24は、それぞれの他端がヒンジ部27で連結されている。
【0023】
第1接続部25には、一例として、第1シェル部材23の円周方向に配列された2つのビス受けが形成されている。第2接続部26には、一例として、第2シェル部材24の円周方向に配列され、第1接続部25の各ビス受けに対応する2つのビス穴が形成されている。チェーンケース22では、ビス穴、ビス受け、およびビスによって、接続部を構成することができる。
【0024】
チェーンケース22の一端を閉じる場合には、第1接続部25および第2接続部26を重ね合わせて、各ビス受けと各ビス穴との位置を合わせてから、それぞれのビス穴にビスを通してビス受けに螺合させる。これにより、第1接続部25および第2接続部26は、2つのビスで互いにダブルロックされるため、どちらか一方のビスが緩んでしまっても、互いの連結が外れてしまうことがないので、チェーンケース22を安全に使用することができる。なお、ビス受けとビス穴は、2つずつに限らず3つ以上形成されていてもよく、第1シェル部材23および第2シェル部材24のどちらのシェル部材に形成されていてもよい。
【0025】
図3に示すように、第1シェル部材23および第2シェル部材24は、第1接続部25と第2接続部26との接合を外すことによって、互いの一端を開放させることができる。また、
図4に示すように、第1シェル部材23および第2シェル部材24は、第1接続部25および第2接続部26を接合させることによって、互いの一端を閉じさせることができる。
【0026】
このように、一対のシェル部材である第1シェル部材23および第2シェル部材24は、一端において第1接続部25および第2接続部26により互いに接合され、他端に設けられたヒンジ部27により互いに接続されることで、チェーン18を収容した状態で円形状を形成することができる。
【0027】
また、チェーンケース22は、チェーン18を収容する収容部が、第1シェル部材23および第2シェル部材24の半円形状の中心に近づくにつれて幅狭に設計され、収容されたチェーン18を両側面から押さえる構造に形成する。これにより、収容したチェーン18同士が衝突し合う音の発生を抑制することができる。
【0028】
さらに、チェーンケース22は、チェーン18を収容する収容部における半円形状の円周部分に設けられたスポンジ部材を有する。これにより、収容部内の音を吸収し、収容部からの油の漏れを防止することができる。
【0029】
<チェーン格納構造の動作例>
次に、
図5から
図8を参照して、本発明の一実施形態に係るチェーン格納構造のチェーン収容動作例について説明する。
図5から
図8は、本実施形態に係るチェーン格納構造のチェーン収容動作例を示す模式図である。
【0030】
図5に示すように、自転車10のチェーン18をチェーンケース22に格納する際には、一例として、まず、チェーン18をチェーンリング21から取り外し、後輪15のフレーム31の中心に位置するリアスプロケット17周りにチェーン18を巻き付ける。
【0031】
次に、
図6に示すように、後輪軸21周りに巻き付けたチェーン18を押さえながら、チェーン18の外周を覆うように、第1シェル部材23または第2シェル部材24の収容部をチェーン18に被せていく。
【0032】
図7に示すように、一例として、最初に第2シェル部材24の収容部をチェーン18に被せる。なお、最初に第1シェル部材23をチェーン18に被せて、その後に第2シェル部材24の収容部をチェーン18に被せる手順であってもよい。
【0033】
次に、
図8に示すように、チェーン18に被せた第2シェル部材24を押さえながら、露出している側のチェーン18に第1シェル部材23の収容部を被せる。
【0034】
そして、チェーン18に被せた第1シェル部材23および第2シェル部材24の一端に形成された第1接続部25および第2接続部26で互いにダブルロックして、第1シェル部材23および第2シェル部材24を接合する。これにより、第1シェル部材23および第2シェル部材24は、チェーン18を収容した状態で円形状を形成することができる。
【0035】
以上より、本実施形態に係るチェーン格納構造によれば、自転車10にペダルユニットを着脱する際に、後輪15を外さないで済むため、取り付けやすく、自転車10のブレーキを調整する必要もない。したがって、自転車屋等の自転車の専門家にペダルユニットの着脱を依頼する必要もない。このように、本実施形態に係るチェーン格納構造によれば、後輪をフレームから取り外すことなく簡易かつ容易にペダルユニットを着脱することが可能となる。また、チェーンの着脱のためにフレームの設計を特別に行う必要がないから、フレームのデザインの自由度が上がる。
【0036】
また、ペダルユニットを取り外したバランスバイクとしての使用時もチェーンが装着された状態で使用することができ、ペダルユニットを装着して自転車として使用する際にもチェーンを後付けする必要がないから、後輪を脱着する作業が不要となり、手間とコストを大幅に削減することができる。
【0037】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 自転車
11 自転車本体
12 ハンドル
13 サドル
14 前輪
15 後輪
16 ペダル
17 リアスプロケット
18 チェーン
19 チェーンカバー
21 後輪軸
22 チェーンケース
23 第1シェル部材
24 第2シェル部材
25 第1接続部
26 第2接続部
27 ヒンジ部