(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】DNA試料のメチル化変化を検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20250106BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20250106BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/6886 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021555800
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 IL2020050314
(87)【国際公開番号】W WO2020188561
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517435261
【氏名又は名称】ニュークレイクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フルムキン,ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッサストロム,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ニルシュ,レヴィタル
(72)【発明者】
【氏名】サヴィン,オルナ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043497(WO,A1)
【文献】特表2018-518959(JP,A)
【文献】特表2021-511028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00- 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA試料中のメチル化変化を感度よく検出する方法であって、
(a)DNA試料を提供することであって、前記DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、提供することと、
(b)前記DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、前記消化されたDNAから、単一反応混合物中、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率を、少なくとも1つの基準比率と比較することによって、前記DNA試料をメチル化比率分析にかけ、
これにより、少なくとも1:100の検出感度で前記DNA試料のメチル化変化を検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記DNA
試料が、血漿、血清および尿から選択された生体液試料から抽出された無細胞DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA試料が、1%未満のssDNAを含むか、
前記DNA試料が、0.1%未満のssDNAを含むか、または
前記DNA試料が、0.01%未満のssDNAを含むか、もしくはssDNAを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メチル化変化が、少なくとも1:500の検出感度で前記試料において検出されるか、
メチル化変化が、少なくとも1:1,000の検出感度で前記試料において検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
メチル化変化の検出が、前記DNA試料が正常なDNA
試料または疾患のDNA試料であるかどうかを決定することを
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メチル化変化の検出が、前記DNA試料が正常なDNA試料またはがんのDNA試料であるかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)のメチル化比率分析が、リアルタイムPCRを使用して実施されるか、または
前記ステップ(b)のメチル化比率分析が、次世代シーケンシング(NGS)を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)において、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された複数の制限遺伝子座と、単一の対照遺伝子座と、を増幅することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)で使用される少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼは、複数のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは複数のメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記DNA試料をエキソヌクレアーゼI酵素で処理することを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DNA試料は、非変性条件下でおよび/または非変性試薬を使用して、試験された生物学的試料からDNAを抽出することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記DNAの抽出は、60℃以下の温度で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1Iである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
DNA試料中のメチル化変化を検出するためのシステムであって、
(a)DNA試料であって、前記DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、DNA試料と、
(b)メチル化比率分析を実施するための構成要素であって、(i)前記DNA試料を消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼと、(ii)消化後の前記DNA試料からの単一の反応混合物中で複数のゲノム遺伝子座を同時増幅するための複数のプライマー対であって、前記複数のゲノム遺伝子座が、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを含む、複数のプライマー対と、(iii)非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、前記コンピュータソフトウェアが、増幅後の前記制限遺伝子座と前記対照遺伝子座のシグナル強度の比率と基準比率との比較に基づいて、前記DNA試料中のメチル化変化を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する、コンピュータソフトウェアと、を含む構成要素と、を含み、
前記メチル化変化が、少なくとも1:100の検出感度で決定される、システム。
【請求項15】
前記DNA
試料が、血漿、血清および尿から選択された生体液試料から抽出された無細胞DNAである、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記DNA試料が、1%未満のssDNAを含むか、
前記DNA試料が、0.1%未満のssDNAを含むか、または
前記DNA試料が、0.01%未満のssDNAを含むか、もしくはssDNAを含まない、請求項
14に記載のシステム。
【請求項17】
前記メチル化変化が、少なくとも1:500の検出感度で決定されるか、または
前記メチル化変化が、少なくとも1:1,000の検出感度で決定される、請求項
14に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の
ゲノム遺伝子座が、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された複数の制限遺伝子座と、単一の対照遺伝子座とを含む、請求項
14に記載のシステム。
【請求項19】
前記メチル化変化が、以下のステップ:前記制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を計算することと、前記増幅産物のシグナル強度の間の比率を計算することと、前記計算された比率を、既知の供給源のDNA試料から取得された1つ以上の基準比率と比較することと、を実施することによって決定される、請求項
14に記載のシステム。
【請求項20】
前記DNA試料中のメチル化変化の決定が、前記DNA試料が正常なDNAまたは疾患のDNA試料であるかどうかの指標を提供することを
含む、請求項
14に記載のシステム。
【請求項21】
前記DNA試料中のメチル化変化の決定が、前記DNA試料が正常なDNA試料またはがんのDNA試料であるかどうかの指標を提供することを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムは、前記DNA試料をエキソヌクレアーゼI酵素で処理することを含まない、請求項14に記載のシステム。
【請求項23】
前記DNA試料は、非変性条件下でおよび/または非変性試薬を使用して、試験された生物学的試料からDNAを抽出することによって得られる、請求項14に記載のシステム。
【請求項24】
前記DNAの抽出は、60℃以下の温度で実行される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1Iである、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA試料、特に血漿および尿などの生体液から得られたDNA試料におけるメチル化変化を高感度に検出するための方法およびシステムに関する。システムおよび方法は、疾患の診断に役立つ。
【背景技術】
【0002】
DNAメチル化変化は、多くの種類のがんで発生することが知られており、孤立したCpGの低メチル化や、主にCpGアイランドで発生する高メチル化などを含む。具体的には、遺伝子サイレンシングにつながる、腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドの高メチル化は、広く研究されており、様々な種類のがんで実証されている。
【0003】
腫瘍はDNA断片または「無細胞DNA」を生体液に放出するため、結果として、血漿や尿などの生体液から得られる「液体生検」において、腫瘍由来のDNA分子のメチル化変化が検出できる。従来の生検とは対照的に、液体生検は非侵襲的であり、腫瘍サブクローンの完全な遺伝的スペクトルをより適切に表す可能性がある。その結果、液体生検におけるがんに関連するメチル化変化の検出は、早期発見、予後、および治療的監視に大きな期待を抱くものである。ただし、液体生検で腫瘍由来のDNAを検出するには、正常なDNAのバックグラウンドが大きいのに関連して、腫瘍DNAが非常に少量しか存在しない可能性があるため、超高感度の生化学的手法が必要である。
【0004】
DNAの亜硫酸水素ナトリウム処理とそれに続く定量的PCRに基づいて、液体生検でメチル化分子を検出するためのいくつかの技術が開発されており、分析感度は最大1:10,000である(Cottrell et al.,Nucleic Acids Res.,2004,32(1):e10;Kristensen and Hansen,Clin Chem.,2009,55(8):1471-83;Zou et al.,Clin Chem.,2012,58(2):375-83)。これらのアッセイに基づいて、血液および便中の結腸直腸癌の検出、および尿中の膀胱癌の検出のための市販の製品が導入された(Young et al.Cancer Med.,2016,5(10):2763-72;Imperiale et al.,N Engl J Med.,2014,370(14):1287-97;Van Kessel et al.,J Urol.,2016,195(3):601-7))。その人気にもかかわらず、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの変換は厄介なアッセイであり、鋳型DNAの分解や、その後のPCRでのメチル化または非メチル化DNAの好ましい増幅を含む欠点がある。
【0005】
バイサルファイトシーケンシングに基づく別の研究は、Moss et al.,Nature Communications,vol.9,Article number:5068(2018)に記載されており、そこでは、血漿試料中の無細胞DNAがバイサルファイト変換および市販のメチル化アレイを使用して分析された。Moss et al.は、血漿メチル化パターンを使用して、健康および病的状態の細胞型特異的cfDNAを同定した。Moss et al.は、特に、混合実験を実施することにより、逆重畳積分を使用してがん検出の精度を評価した、結腸癌を有する患者からの血漿を健康なドナーの血漿と様々な比率で混合し、得られた混合物のメチロームを逆重畳積分した。アルゴリズムは、混合物中の結腸DNAの存在を、正しい比率で、3%まで正しく識別した(元のがん血漿試料の33倍希釈)。
【0006】
DNAメチル化分析のためのバイサルファイトに基づかない方法には、親和性/抗体濃縮またはメチル化感受性および/または依存性制限が含まれる。メチル化依存性制限に基づく方法には、示差的メチル化ハイブリダイゼーション、メチル化CpGアイランド増幅およびマイクロアレイ、ライゲーション媒介PCRによるHpaII小さなフラグメント濃縮、複合重亜硫酸塩制限分析、およびメチル化特異的多重ライゲーション依存性プローブ増幅が含まれる。これらのバイサルファイトに基づかない方法は、主にゲノムワイド解析に使用される。
【0007】
特定の遺伝子座の分析のために、メチル化感受性および/または依存性制限酵素を利用するいくつかの方法が開発された。例えば、メチル化感受性制限、メチル化依存制限、二重消化および模擬消化を、その後の定量的PCRと組み合わせた方法が開発された(Oakes et al.,Epigenetics.,2006,1(3):146-52)が、分析された遺伝子座ごとに4つの別々の制限および増幅反応を実行する必要があるため、アッセイが複雑になり、入力DNAの量が限られている試料での適用が制限される。同様であるがより単純なアプローチは、メチル化依存性制限反応とそれに続く定量的リアルタイムPCR、および模擬消化およびPCR増幅された同じDNA試料との比較を採用している(Hashimoto et al.,Epigenetics.,2007,2(2):86-95))。このアプローチは、肝細胞癌のメチル化レベルの定量分析のために別のチームによっても使用された(Huang et al.,Exp Mol Pathol.,2011,91(3):702-7)。より単純であるが、このアプローチでもなお、分析された遺伝子座ごとに2つの別々の消化とPCRを実行する必要がある。この一般的な技法の別の変形法が、最近、肺癌、肺線維症、およびCOPD患者のメチル化サインを検出するために採用された(Wielscher et al.,EBioMedicine.,2015,2(8):929-36)。この変形法では、メチル化感受性酵素を使用して単一の制限反応を実施した後、2ラウンド連続してPCR増幅を行った(高度に多重化された最初のラウンドとそれに続く単一遺伝子座PCRのラウンド)。各遺伝子座のメチル化のレベルは、その遺伝子座から得られたシグナルを、別々のウェルで増幅された対照遺伝子座から得られたシグナルと比較することによって決定された。このアプローチでは単一の制限反応しか使用しなかったが、2ラウンドの連続したPCR増幅を使用すると、かなり複雑なアッセイになる。さらに、前述の制限とそれに続くメチル化分析の増幅ベースのアッセイは、異なるPCRウェルからのシグナルの比較に依存しており、アッセイが適切に実施された場合でも、各ウェルはわずかに異なる試薬濃度と熱条件を有するため、高レベルのノイズが発生する可能性がある。
【0008】
メチル化感受性および/または依存性制限酵素に基づくメチル化分析のための別の方法は、本発明の出願人に譲渡されたWO2011/070441に開示されている。より具体的には、WO2011/070441は、メチル化の差異に基づいてDNA試料を分類するための方法を開示し、この方法は、(A)メチル化感受性および/またはメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼでDNA試料を消化することと、(B)消化されたDNAに対してPCRを実行して、少なくとも2つのゲノム遺伝子座を同時増幅することであって、そのうちの少なくとも1つは、異なるDNAカテゴリー間で異なってメチル化された制限遺伝子座である、増幅することと、(C)各増幅産物のシグナルの強度を決定することと、(D)遺伝子座によって生成されたシグナルの強度間のシグナル比率を計算することと、(E)シグナル比率を、DNAの異なるカテゴリーに対応する基準値と比較することであって、ここで、基準値がシグナル比率に最もよく対応するカテゴリーが、DNA試料のカテゴリーであると決定される、比較することと、を含む。DNA試料のカテゴリーには、例えば、異なる組織および/または生理学的/病理学的状態からのDNAが含まれる。
【0009】
本発明の出願人に譲渡されたWO2017/006317およびWO2019/142193は、選択されたゲノム遺伝子座におけるDNAメチル化変化に基づいて、膀胱癌を同定するための方法および肺癌を同定するための方法をそれぞれ開示している。方法は、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後に検査DNA試料から同時増幅された選択された遺伝子座間のシグナル強度比率を計算することと、これらの比率を、1つ以上の基準比率と比較することと、を含む。
【0010】
DNA試料のメチル化変化を検出するための改善された方法が必要であるが、これは、既存の方法よりも感度が高く、しかも正確である。例えば、非メチル化DNAの大きなバックグラウンド内での少量のメチル化DNA分子の検出を改善する必要がある。このような方法は、疾患診断、特に腫瘍由来の循環DNAに基づくがん診断の分野で非常に望まれている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、改善された感度でDNA試料のメチル化変化を検出するための方法およびシステムを提供する。
【0012】
本発明の発明者らは、DNA試料中の遺伝子座間のメチル化比に対応するシグナル比率の計算に基づくメチル化変化を検出するための方法を以前に開発した。特に、この方法は、いくつかの実施形態によれば、メチル化感受性またはメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼでDNA試料を消化することと、消化されたDNAから少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座(制限遺伝子座は、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を含み、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている)を同時増幅することと、各遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、制限遺伝子座と対照遺伝子座のシグナル強度の比率を計算することと、を含む。シグナル比率は、単一の反応混合物中、同じDNA試料(同じ鋳型)から一緒に増幅された制限遺伝子座と対照遺伝子座との間で計算される。シグナル比率は、メチル化変化を検出し、DNA試料が正常であるか、腫瘍細胞などの疾患細胞に由来するかを判断するために、既知供給源のDNAの同じ制限および対照遺伝子座に対して決定された1つ以上の基準比率と比較できる。
【0013】
本発明は、メチル化されたDNA分子を検出する際に著しく高い感度をもたらす、上記の方法に対する改善を開示する。本明細書に開示されるように、高感度は、分析されたDNA試料(すなわち、生物学的試料からの抽出後のDNA試料)が実質的に一本鎖DNAを欠いている場合に得られる。以下に例示するように、ssDNAの存在は、アッセイで使用されるメチル化感受性/依存性制限酵素による試料の消化効率を損なう。したがって、メチル化変化を正確に検出するアッセイの能力が損なわれる。本明細書に開示される改善された方法を使用して達成できる感度は、メチル化および非メチル化DNA分子が異なる比率で混合された分析設定において以下に例示されている。この方法は、1:200,000という低いメチル化検出感度、つまり、200,000個の非メチル化分子のバックグラウンドでの単一のメチル化DNA分子の検出を実証した。そのような感度はこれまで説明されていなかった。
【0014】
したがって、本明細書に開示される改善は、腫瘍由来の循環DNAの分析など、少量のメチル化DNAの分析を必要とする臨床応用に特に好適で有益な方法をもたらす。
【0015】
いくつかの実施形態では、実質的にssDNAを欠くDNA試料は、非変性条件下で試験された生物学的試料からDNAを抽出し、非変性試薬を使用することによって得ることができる。
【0016】
本発明の方法およびシステムによれば、DNAは、生物学的試料、例えば、血漿試料から抽出されて、実質的にssDNAを欠くDNAを得る。次に、DNAはメチル化比率分析にかけられ、ここで、DNAは、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素または少なくとも1つのメチル化依存性制限酵素で消化され、続いて、消化されたDNAからの制限および対照遺伝子座の同時増幅が行われる。本発明による制限遺伝子座は、消化ステップで使用され、したがってそれらのメチル化レベルに従って切断(消化)される少なくとも1つの制限酵素の認識配列を含む。例えば、メチル化されていない場合にのみ認識配列を切断するメチル化感受性制限酵素の場合、低メチル化のDNA試料と比較して、高メチル化のDNA試料がより低い程度で消化されるが、これは、試料を構成するDNA分子の集団内でより少ない認識配列が消化されるからである。
【0017】
本発明による制限遺伝子座は、正常DNAおよび疾患DNAの間、例えば正常なDNAおよびがんのDNAの間で異なってメチル化されている。したがって、健康な対象からのDNA試料は、がん患者からのDNA試料とは異なる程度に切断される。消化効率の違いにより、後続の増幅および定量化ステップで異なる増幅パターンが確立される。増幅パターンの差異により、健康な対象のDNAと、がん患者などの患者のDNAとを区別できる。
【0018】
本発明の方法およびキットによる増幅および定量化ステップは、消化されたDNAからの少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅を含む。対照遺伝子座は、消化ステップで使用される制限酵素によって切断されない遺伝子座であり得る。次に、増幅された遺伝子座のシグナル強度が決定され、各制限遺伝子座および対照遺伝子座のシグナル強度の間の比率が計算される。健常者からのDNAと、がん患者などの患者からのDNAについて、明確なシグナル比率が生成される。
【0019】
試験対象からのDNAについて計算されたシグナル比率は、既知の供給源、すなわち健常者または患者、例えばがん患者からのDNA試料中の同じ制限および対照遺伝子座について決定された1つ以上の基準比率と比較することができる。この比較に基づいて、検査試料はがん患者または健常者に由来するものとして識別される。本発明の方法およびシステムは、個々の遺伝子座それ自体のメチル化レベルの決定を必要としない点に注意すべきである。
【0020】
一態様によれば、本発明は、DNA試料中のメチル化変化を感度よく検出するための方法を提供し、この方法は、
(a)DNA試料を提供することであって、DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、提供することと、
(b)DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、消化されたDNAから、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率を、少なくとも1つの基準比率と比較することによって、DNA試料をメチル化比率分析にかけ、
これにより、少なくとも1:100の検出感度でDNA試料のメチル化の変化を検出することと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、DNAは、生体液試料から抽出された無細胞DNAである。
【0022】
いくつかの実施形態では、生体液試料は、血漿、血清、または尿である。
【0023】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、1%未満のssDNAを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.1%未満のssDNAを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.01%未満のssDNAを含むか、またはssDNAを含まない。
【0026】
いくつかの実施形態では、メチル化変化は、少なくとも1:500の検出感度で試料において検出される。
【0027】
追加の実施形態では、メチル化変化は、少なくとも1:1,000の検出感度で試料において検出される。
【0028】
いくつかの実施形態では、メチル化変化の検出は、DNA試料が正常なDNAまたは疾患DNA試料であるかどうかを決定することを含む。いくつかの特定の実施形態では、メチル化変化の検出は、DNA試料が正常なDNA試料またはがんのDNA試料であるかを決定することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)のメチル化比率分析は、リアルタイムPCRを使用して実施される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)のメチル化比率分析は、次世代シーケンシング(NGS)を使用して実施される。
【0031】
いくつかの実施形態では、方法は、ステップ(b)において、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された複数の制限遺伝子座と、単一の対照遺伝子座とを増幅することを含む。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、ヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定するための方法を提供し、この方法は、
(a)ヒト対象からのDNA試料を提供することであって、DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、提供することと、
(b)DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、消化されたDNAから、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、非一時的なメモリに格納され、コンピュータプロセッサで実行されるソフトウェアを用いて、当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することによって、DNA試料をメチル化比率分析にかけ、
それにより、少なくとも1:100のメチル化検出感度で、ヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定することと、を含む。
【0033】
さらなる態様によれば、本発明は、DNA試料中のメチル化変化を検出するためのシステムを提供し、このシステムは、
(a)DNA試料であって、DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、DNA試料と、
(b)メチル化比率分析を実施するための構成要素であって、(i)DNA試料を消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼと、(ii)消化後のDNA試料からの複数のゲノム遺伝子座を同時増幅するための複数のプライマー対であって、複数のゲノム遺伝子座が、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを含む、複数のプライマー対と、(iii)非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、コンピュータソフトウェアが、増幅後の制限遺伝子座と対照遺伝子座のシグナル強度の比率と基準比率との比較に基づいて、DNA試料中のメチル化変化を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する、コンピュータソフトウェアと、を含む構成要素と、を含み、
メチル化変化は、少なくとも1:100の検出感度で決定される。
【0034】
いくつかの実施形態では、DNAは、生体液試料から抽出された無細胞DNAである。
【0035】
いくつかの実施形態では、生体液試料は、血漿、血清、または尿である。
【0036】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、1%未満のssDNAを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.1%未満のssDNAを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.01%未満のssDNAを含むか、またはssDNAを含まない。
【0039】
いくつかの実施形態では、メチル化変化は、少なくとも1:500の検出感度で決定される。
【0040】
追加の実施形態では、メチル化変化は、少なくとも1:1,000の検出感度で決定される。
【0041】
いくつかの実施形態では、複数の遺伝子座は、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された複数の制限遺伝子座と、単一の対照遺伝子座とを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、メチル化変化は、以下のステップ:制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を計算することと、増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することと、計算された比率を、既知の供給源のDNA試料から取得された1つ以上の基準比率と比較することと、を実施することによって決定される。
【0043】
いくつかの実施形態では、DNA試料中のメチル化変化の決定は、DNA試料が正常なDNAまたは疾患のDNA試料であるかどうかの指標を提供することを含む。いくつかの特定の実施形態では、DNA試料中のメチル化変化の決定は、DNA試料が正常なDNA試料またはがんのDNA試料であるかどうかの指標を提供することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、メチル化比率分析を実施するための構成要素は、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数の蛍光プローブをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、メチル化比率分析を実施するための成分は、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数の蛍光プローブをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、システムは、生物学的試料からDNAを抽出するためのDNA抽出試薬をさらに含み、抽出されたDNAは5%未満のssDNAを含む。
【0047】
本発明のこれらのおよびさらなる態様および特徴は、以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図2A】HCT-15(メチル化)およびプラスミド(非メチル化)DNA試料の試験遺伝子座のバイサルファイトシーケンシング。アッセイで使用されるエンドヌクレアーゼの認識部位が示されている。
【
図2B】メチル化および非メチル化DNAの混合物の増幅プロット。6つの別々のPCR反応のプロットが重ね合わされている。内部基準(「対照」)は、すべての反応でほぼ同じサイクルで増幅される。これは主に、4,000,000個の非メチル化DNA鋳型分子からの増幅を反映している。メチル化されたDNAの量が減少すると、試験遺伝子座(「対照」)は、対照遺伝子座と比較してΔCQが増加するように増幅される。
【
図3】試験および内部基準遺伝子座の間の予想されるΔCQと計算されたΔCQの線形回帰適合。
【
図4】1:200,000メチル化:非メチル化DNA試料(A)および純粋な非メチル化DNA試料(B)の増幅プロット。34回の反復PCRのプロットが重ね合わされている。
【
図5】NGSに基づくアッセイを使用した8つの対照試料および9つのがん試料における4つのがんメチル化マーカーの相対的コピー数およびKRAS変異状態。Con=対照、CRC=結腸直腸癌、Ovar=卵巣癌、Pan=膵臓癌、AML=急性骨髄性白血病、Uter=子宮癌、Lung=肺癌
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、高感度でDNA試料中のメチル化変化を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「メチル化変化の検出」は、試験されたDNA試料が基準DNA試料と比較してメチル化変化を含むかどうかを検出することと、DNA試料が選択されたゲノム遺伝子座での異なるメチル化プロファイル(本明細書では、遺伝子座の間のシグナル比率により表される)によって特徴付けられるかどうかを検出することと、および/またはDNA試料のメチル化プロファイル(本明細書では、選択されたゲノム遺伝子座の間のシグナル比率により表される)が正常であるか、または疾患の存在の指標となるメチル化変化を含むかどうかを決定することと、を指す。
【0051】
本発明の方法およびシステムは、著しく高い検出感度でメチル化(およびその後のメチル化変化)を検出する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「感度」または「検出感度」は、メチル化検出を指す場合、メチル化および非メチル化DNA分子の両方を含む試料内でメチル化DNA分子を検出(同定)する能力を示す。検出感度は、メチル化分子の非メチル化分子に対する数の比率として表される。例えば、1:1,000の検出感度は、1,000個の非メチル化DNA分子のバックグラウンドで1個のメチル化DNA分子を検出する能力を示す。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の方法およびシステムの検出感度は、少なくとも1:100、好ましくは少なくとも1:500、より好ましくは少なくとも1:1,000である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0054】
以下の実施例3は、分析設定における検出感度(分析感度)を決定するための例示的なアッセイを示し、ここで、目的の選択されたゲノム遺伝子座でメチル化されたDNA分子は、異なる比率で非メチル化DNA分子と混合され、メチル化されたDNA分子を検出する能力が試験される。メチル化されたDNA分子は、例えば、選択されたゲノム遺伝子座がメチル化されている細胞株から得ることができる。非メチル化DNA分子は、完全に非メチル化である人工DNA分子、例えば、選択されたゲノム遺伝子座をプラスミドにクローニングすることによって得られたDNA分子であり得る。
【0055】
以下に例示するように、本発明による方法は、1:200,000もの低い検出感度でメチル化DNAを検出することができ、すなわち、200,000個の非メチル化分子のバックグラウンドで単一のメチル化DNA分子の検出が可能であった。
【0056】
いくつかの実施形態では、メチル化DNA分子を検出する際の本発明の方法およびシステムの分析感度(例えば、以下の実施例3に記載されるようなアッセイにおいて決定される)は、少なくとも1:50,000、好ましくは少なくとも1:100,000、より好ましくは少なくとも1:200,000である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0057】
本発明によれば、一本鎖DNAを実質的に欠く分析用のDNA試料を提供することにより、著しく高い感度が得られる。
【0058】
本発明によって得られた高感度は、例えば、腫瘍由来の循環DNAを含む液体生検試料を分析するために価値があり、腫瘍DNAは通常、正常なDNAのバックグラウンドと比較して非常に少量で存在する。高い分析感度は、実際の臨床試験を行うときだけでなく、潜在的なバイオマーカーを探すときの開発段階でも重要である。正常な対象と病気の対象からの試料のメチル化レベルに関する最新の公開データは、ゲノムカバレッジは高いが分析感度が比較的低い方法を使用して取得された。その結果、メチル化レベルが非常に低いゲノム遺伝子座を選び出すことができない。したがって、本明細書に開示される方法およびシステムは、従来のメチル化アッセイの「レーダー下では身を潜めていた」バイオマーカーを同定するためのバイオマーカー開発にも有用である。
【0059】
本発明の方法およびシステムは、非侵襲的で使用者に依存しないがんなどの様々な疾患をスクリーニングおよび/または診断するための非常に高感度で特異的な手段を提供するので、特に有益である。
【0060】
さらに、腫瘍由来DNAと正常なDNAとを区別するためのメチル化分析を利用して、特定のゲノム遺伝子座で実際のメチル化レベルを決定する必要がある従来の方法とは異なり、本明細書に記載される方法では絶対メチル化レベルを評価することを必要としない。したがって、本明細書に開示される方法は、メチル化レベルそれ自体の決定に関与する標準曲線および/または追加の面倒なステップの必要性を排除し、それにより、単純で費用効果の高い手順を提供する。メチル化を分析するための既知のアプローチに対する追加の利点は、本発明の方法によって得られるシグナル比率によって与えられ、それは同じ反応混合物中の同じDNA鋳型から(すなわち、同じ反応条件下で)増幅された遺伝子座間で計算される。これにより、鋳型DNA濃度の変化、PCR条件、阻害剤の存在など、様々な「ノイズ」要因の影響を受けなくなる。このようなノイズは、別個の増幅反応からのシグナルを比較することにより遺伝子座のメチル化レベルを定量化することに基づく既存の方法に内在する。
【0061】
ヒトゲノムのメチル化は、5-メチルシトシンの形で発生し、CpGジヌクレオチドとも呼ばれるCG配列の一部であるシトシン残基に限定される(他の配列の一部であるシトシン残基はメチル化されていない)。ヒトゲノムのCGジヌクレオチドにはメチル化されているものとそうでないものがある。さらに、メチル化は細胞と組織に特異的であるため、特定のCGジヌクレオチドは、特定の細胞でメチル化され、同時に別の細胞ではメチル化されないか、特定の組織でメチル化され、同時に別の組織でメチル化されないことがあり得る。DNAメチル化は、遺伝子転写の重要な調節因子である。
【0062】
「~からのDNA」、「~由来のDNA」などの用語は交換可能であり、試料、例えば血漿試料から得られた(例えば、抽出または単離された)DNAを指す。
【0063】
本発明によれば、DNAは、生検の必要なしに、入手可能な試料から得られる。いくつかの実施形態では、DNAは血漿または血清から得られる。
【0064】
本明細書で使用される「対象において疾患(例えば、がん)を同定する」という用語は、対象において、疾患についてのスクリーニングを行うこと、疾患の存在を検出すること、疾患の再発を検出すること、疾患に対する感受性を検出すること、治療に対する応答を検出すること、治療の有効性を決定すること、疾患の病期(重症度)を決定すること、疾患の予後および早期診断を決定すること、のいずれか1つ以上を包含する。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0065】
本明細書で使用される「対象」という用語は、「個体」と互いに置換可能であり、ヒト対象を指す。対象は、特定の疾患を疑われている可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、例えば、疾患の以前の病歴、遺伝的素因、および/または家族歴に基づいて、および/または疾患の疑わしい臨床徴候を示す対象は、疾患を発症する危険性があり得る。いくつかの実施形態では、対象は、疾患の少なくとも1つの症状または特徴を示し得る。他の実施形態では、対象は無症候性であり得る。
【0066】
本明細書で使用される「複数」という用語は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を指す。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書において、DNA試料中でメチル化変化を高感度検出するための方法が提供され、この方法は、(a)DNA試料を提供することであって、DNA試料は、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む、提供することと、(b)DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、消化されたDNAから、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、非一時的なメモリに格納され、コンピュータプロセッサで実行されるソフトウェアを用いて、当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率を比較し、それにより、少なくとも1:100の検出感度でDNA試料中のメチル化変化を検出することにより、メチル化比率分析にかけることと、を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書において、メチル化比率分析を用いてDNA試料中のメチル化変化を検出するための方法が提供され、この方法は、DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、消化されたDNAから、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率を、少なくとも1つの基準比率と比較することを含み、DNA試料が5%未満のssDNAを含み、検出感度が少なくとも1:100であることを特徴とする。
【0069】
血漿試料の収集
「血漿」という用語は、全血試料が血球を除去するための分離プロセスを受けた後に残る液体を指す。血漿試料は、例えば遠心分離および/または濾過によるものを含む、任意の分離方法を使用して全血から分離された試料であり得る。血漿試料は、従来の収集容器またはチューブを使用して収集することができる。
【0070】
DNA抽出
本発明によれば、メチル化分析が実施されるDNA試料は、実質的にssDNAを含まない。本明細書で使用される場合、「実質的にssDNAを含まない」または「実質的にssDNAを欠く」は、7%未満のDNAがssDNAであり、好ましくは5%未満のDNAがssDNAであり、より好ましくは1%未満のDNAがssDNAである(つまり、DNAの少なくとも99%は二本鎖である)、DNA試料を示す。いくつかの実施形態では、DNA試料は、1%未満のssDNAを含む。いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.1%未満のssDNAを含む。いくつかの実施形態では、DNA試料は、0.01%未満のssDNAを含む。いくつかの実施形態では、DNA試料は、ssDNAを全く含まない(ssDNAを含まない)。試料中の一本鎖DNAを定量するための市販のキットが利用可能である。一例として、Promega QuantiFluor(登録商標)キットがある。
【0071】
いくつかの実施形態では、DNA試料は、それが実質的にssDNAを欠くように抽出されたDNA試料である。いくつかの実施形態では、一本鎖DNAを回避するために、抽出手順は、DNAを変性させるおよび/またはDNAを変性させる条件下で実施される試薬を含むべきではない。DNA変性試薬の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびホルムアミドが含まれる。DNAを変性させる条件には、化学的(例えば、過酷なアルカリ処理)、物理的(例えば、超音波処理)、および熱的(例えば、60℃を超える温度)が含まれる。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、実質的にssDNAを欠くDNA試料は、非変性条件下で試験された生物学的試料からDNAを抽出し、非変性試薬を使用することによって得ることができる。例示的な方法は、本明細書の以下の実施例のセクションに提供されている。
【0073】
本明細書で使用される場合、「非変性」は、DNA、すなわち、DNAに対して非変性である試薬および/または条件を指す。
【0074】
ssDNAを実質的に欠いているDNA試料を得るために採用できる別の戦略は、抽出されたDNAの一本鎖を排除することである。これは、例えば、抽出されたDNAを、一本鎖DNAを消化するエキソヌクレアーゼI酵素で処理することによって実施され得る。
【0075】
DNA消化
本発明によれば、抽出に続いて、DNAは、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ、または少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼによる消化を受ける。例えば、1つ、2つ、または3つのメチル化感受性またはメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼを使用することができる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0076】
いくつかの実施形態では、抽出されたDNA全体が消化ステップで使用される。いくつかの実施形態では、DNAは、消化を受ける前に定量されない。他の実施形態では、DNAは、その消化の前に定量化され得る。
【0077】
本明細書で「制限酵素」と互いに置換可能に使用される「制限エンドヌクレアーゼ」は、制限部位として知られる、特定の認識ヌクレオチド配列またはその近くでDNAを切断する酵素を指す。
【0078】
「メチル化感受性」の制限エンドヌクレアーゼは、メチル化されていない場合にのみ、その認識配列を切断する制限エンドヌクレアーゼである(メチル化された部位は無傷のままである)。したがって、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによるDNA試料の消化の程度は、メチル化レベルに依存し、メチル化レベルが高いほど、切断から保護され、したがって消化が少なくなる。
【0079】
「メチル化依存性」の制限エンドヌクレアーゼは、メチル化されている場合にのみ、その認識配列を切断する制限エンドヌクレアーゼである(非メチル化部位は無傷のままである)。したがって、メチル化依存性制限エンドヌクレアーゼによるDNA試料の消化の程度は、メチル化レベルに依存し、メチル化レベルが高いほど、より広範な消化がもたらされる。
【0080】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、AatII、Acc65I、AccI、Acil、ACII、Afel、Agel、Apal、ApaLI、AscI、AsiSI、Aval、AvaII、BaeI、BanI、BbeI、BceAI、BcgI、BfuCI、BglI、BmgBI、BsaAI、BsaBI、BsaHI、BsaI、BseYI、BsiEI、BsiWI、BslI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspDI、BsrBI、BsrFI、BssHII、BssKI、BstAPI、BstBI、BstUI、BstZl7I、Cac8I、ClaI、DpnI、DrdI、EaeI、EagI、Eagl-HF、EciI、EcoRI、EcoRI-HF、FauI、Fnu4HI、FseI、FspI、HaeII、HgaI、HhaI、HincII、HincII、Hinfl、HinPlI、HpaI、HpaII、Hpyl66ii、Hpyl88iii、Hpy99I、HpyCH4IV、KasI、MluI、MmeI、MspAlI、MwoI、NaeI、NacI、NgoNIV、Nhe-HFI、NheI、NlaIV、NotI、NotI-HF、NruI、Nt.BbvCI、Nt.BsmAI、Nt.CviPII、PaeR7I、PleI、PmeI、PmlI、PshAI、PspOMI、PvuI、RsaI、RsrII、SacII、Sall、SalI-HF、Sau3AI、Sau96I、ScrFI、SfiI、SfoI、SgrAI、SmaI、SnaBI、TfiI、TscI、TseI、TspMIおよびZraIからなる群から選択され得る。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1Iを含む。追加の特定の実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HhaIを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼは、McrBC、McrA、およびMrrAからなる群から選択され得る。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0082】
いくつかの実施形態では、DNAは、単一のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化を受ける。いくつかの特定の実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1Iである。追加の特定の実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HhaIであり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、DNA消化は、完全に消化するまで実施され得る。いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはHinP1Iであり得、完全な消化は37℃での酵素との1~2時間のインキュベーション後に達成され得る。追加の実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはHhaIであり得、完全な消化は37℃での酵素との1~2時間のインキュベーション後に達成され得る。
【0084】
ゲノム遺伝子座の増幅
本明細書で使用される「ゲノム遺伝子座」または「遺伝子座」という用語は互いに置換可能であり、染色体上の特定の位置にあるDNA配列を指す。特定の位置は、分子の位置によって、つまり染色体上の開始および終了塩基対の数によって同定できる。本明細書で使用される場合、これらの用語はまた、特定の位置のDNA配列を、5’および/または3’フランキング配列とともに包含し、当該DNA配列のすぐ上流および/または下流の約50塩基までである。
【0085】
いくつかの実施形態では、5’フランキング配列は、1~50塩基を含み得る。追加の実施形態では、5’フランキング配列は10~40塩基の間である。例えば、5’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ上流に最大10塩基、最大15塩基、最大20塩基、最大25塩基、最大30塩基、最大35塩基、最大40塩基、最大45塩基、または最大50塩基を含むことができる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0086】
いくつかの実施形態では、3’フランキング配列は、1~50塩基を含み得る。追加の実施形態では、3’フランキング配列は10~40塩基の間である。例えば、3’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ下流に最大10塩基、最大15塩基、最大20塩基、最大25塩基、最大30塩基、最大35塩基、最大40塩基、最大45塩基、または最大50塩基を含むことができる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0087】
所与のゲノム位置にあるDNA配列のバリアントは、対立遺伝子と呼ばれる。遺伝子座の対立遺伝子は、相同染色体の同一部位に位置する。遺伝子座には、遺伝子配列ならびに他の遺伝的要素(遺伝子間配列など)が含まれる。
【0088】
「制限遺伝子座」は、本明細書では、少なくとも1つの制限部位、すなわち、消化ステップで適用される少なくとも1つの制限酵素の認識配列を有する少なくとも1つの部位を含む遺伝子座を説明するために使用される。本発明による制限遺伝子座は、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されるが、これは、分析が行われる所与の疾患、例えば、特定のタイプのがんについて、制限遺伝子座が、正常なDNAおよびがん細胞由来のDNAの間でメチル化レベルが異なることを意味する。例えば、がん細胞からのDNAは、正常な非がん性DNAと比較して、制限遺伝子座でのメチル化レベルが増加している可能性がある。より具体的には、制限遺伝子座は、正常な非がん性DNAと比較してがんのDNAでよりメチル化されているCGジヌクレオチドを含有する。本発明によれば、異なってメチル化されたCGジヌクレオチドは、消化ステップで適用される少なくとも1つの制限酵素の認識部位内に位置する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明による制限遺伝子座は、メチル化感受性制限酵素の少なくとも1つの制限部位を含み得、CGジヌクレオチドは、健常者の血漿からのDNAよりも特定のタイプのがんを有する患者の血漿からのDNAにおいてよりメチル化されており、これは、がん患者の血漿では、健常者の血漿と比較して、この位置でより多くのDNA分子がメチル化されていることを意味する。メチル化感受性制限酵素は、メチル化されていない場合にのみ、その認識配列を切断する。したがって、制限部位のCGジヌクレオチドがメチル化されているDNA分子の割合が高いDNA試料は、CGジヌクレオチドがメチル化されていないDNA分子の割合が高いDNA試料と比較して、消化の程度がより低くなる。メチル化感受性制限酵素によるDNA消化は、正常(健常)者からのDNAと比較して、がん患者の血漿試料からのDNAについてはそれほど広範囲ではない。消化効率の違いにより、その後の増幅および定量ステップで異なる増幅パターンが確立され、がん患者のDNAと健常者のDNAを区別できることが判明した。
【0090】
本発明による制限遺伝子座は、追加のCGジヌクレオチドを含有することができ、そのメチル化状態はアッセイに関連性または影響を及ぼさず-消化ステップで適用される制限酵素の認識配列におけるメチル化のみが関連する。
【0091】
「対照遺伝子座」および「内部基準遺伝子座」は、互換的であり、遺伝子座を説明するために本明細書で使用され、消化ステップで適用される制限酵素によるその消化は、メチル化の存在または不在に依存しない。いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、消化ステップで適用される少なくとも1つの制限酵素の認識配列を欠く遺伝子座であり、対照遺伝子座の配列は、DNA試料が消化されるときのメチル化状態に関係なく無傷のままである。したがって、対照遺伝子座の配列は、正常なDNAおよび疾患DNAで同じ消化および増幅のパターンを示す。有利には、対照遺伝子座は、内部遺伝子座、すなわち、分析されたDNA試料内の遺伝子座であり、したがって、外部/追加の対照試料の必要性を排除する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、DNA試料の消化後に少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座を増幅することを含む。本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの(制限/対照)遺伝子座」は、単一の遺伝子座または複数の別個の遺伝子座を包含し得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の制限遺伝子座(すなわち、少なくとも2つの制限遺伝子座)および単一の対照遺伝子座を増幅することを含む。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「増幅」とは、関心のある1つ以上の特定の核酸標的のコピー数の増加を指す。増幅は、典型的に、当該技術分野で既知の、DNA鋳型、ポリメラーゼ(通常、Taqポリメラーゼ)、dNTP、プライマーおよびプローブ(必要に応じて)を補充した好適なバッファーを含み得るPCR反応混合物の存在下で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの多量体型、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体が含まれる。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、典型的には最大100塩基までの長さのヌクレオチドの多量体型が含まれる。
【0096】
「増幅産物」は、増幅反応において生成および蓄積される特定の標的配列の核酸分子を集合的に指す。この用語は一般に、所与の一連の増幅プライマーを使用してPCRによって生成された核酸分子を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、標的配列へのアニーリング(標的配列とのハイブリダイズ)することができ、それにより好適な条件下でDNA合成の開始点となり得る二本鎖領域を作製するオリゴヌクレオチドを定義する。「プライマー対」という用語は、本明細書では、いくつかのタイプの増幅プロセスのうちの1つ、好ましくはPCRによって、選択した核酸配列を増幅する際に一緒に使用されるように選択される、一対のオリゴヌクレオチドを指す。当技術分野で一般に知られているように、プライマーは、選択された条件下で相補的配列に結合するように設計することができる。
【0098】
プライマーは、特定のアッセイ形式および特定のニーズに応じて、任意の好適な長さであり得る。いくつかの実施形態では、プライマーは、少なくとも15ヌクレオチド長、好ましくは19~25ヌクレオチド長を含み得る。プライマーは、選択された核酸増幅システムに特に適するように適合させることができる。当技術分野で一般に知られているように、オリゴヌクレオチドプライマーは、それらの標的配列とのハイブリダイゼーションの融点を考慮して設計することができる(Sambrook et al、前掲文献)。
【0099】
いくつかの実施形態では、制限および対照遺伝子座は、各遺伝子座を特異的に増幅するために当技術分野で知られているように設計されたリバースおよびフォワードプライマーの対を使用して同じDNA試料(消化された試料)から増幅させることができる。いくつかの実施形態では、プライマーは、その5’および3’フランキング配列とともに遺伝子座を増幅するように設計され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、5’フランキング配列は、1~60塩基を含み得る。追加の実施形態では、5’フランキング配列は10~50塩基の間である。例えば、5’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ上流に10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、または50塩基を含むことができる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0101】
いくつかの実施形態では、3’フランキング配列は、1~60塩基を含み得る。追加の実施形態では、3’フランキング配列は10~50塩基の間である。例えば、3’フランキング配列は、遺伝子座のすぐ下流に10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、または50塩基を含むことができる。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0102】
いくつかの実施形態では、プライマーは、長さが60~150bpの増幅産物を生成するように設計されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、プライマーは、長さが70~140bpの増幅産物を生成するように設計されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、同じ反応混合物で2つ以上の標的配列(少なくとも1つの制限遺伝子座および1つの対照遺伝子座)の同時増幅である、多重増幅または同時増幅として知られるプロセスを含む。このプロセスでは、複数のプライマー対の同時使用を必要とする。当技術分野で周知のように、プライマーは、増幅中に同じアニーリング温度で機能できるように設計することができる。いくつかの実施形態では、類似の融解温度(Tm)を有するプライマーが、本明細書で開示している方法で使用される。約3~5℃のTm変動は、プールで使用されるプライマーに許容可能であるとみなされる。
【0104】
いくつかの実施形態では、すべての制限遺伝子座および対照遺伝子座は、単一の反応混合物中で増幅され得る。他の実施形態では、例えば特定の機械の技術的制限のため、消化されたDNA試料はいくつかのアリコートに分割することができ、各々は、1つ以上の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅のためのプライマー対が補充される。したがって、DNA試料がいくつかのアリコートに分割されている場合でも、対照遺伝子座は各アリコートで増幅され、シグナル比率の計算は、一緒に、すなわち同じアリコートから増幅された対照遺伝子座および制限遺伝子座について実行される。
【0105】
いくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座の増幅は、定量的PCR(qPCR)としても知られるリアルタイムPCR(RT-PCR)を使用して実施されてもよく、増幅産物の増幅および検出が同時に行われる。
【0106】
いくつかの実施形態では、RT-PCRにおける増幅産物の検出は、ポリヌクレオチドプローブ、一般的には蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブを使用して達成され得る。
【0107】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチドプローブ」または「オリゴヌクレオチドプローブ」は互いに置換可能であり、関心のある遺伝子座の核酸配列内、例えば制限遺伝子座または対照遺伝子座の配列内の特異的な部分配列に相補的な標識化ポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、検出は、レポーター分子とクエンチャー分子の組み合わせ(Roche Molecular Systems Inc.)に基づくTaqManアッセイを使用することによって達成される。そのようなアッセイにおいて、ポリヌクレオチドプローブは、それらの5’末端に結合された蛍光部分(フルオロフォア)と、その3’末端に結合されたクエンチャーを有する。PCR増幅中、ポリヌクレオチドプローブは鋳型上の標的配列に選択的にハイブリダイズし、ポリメラーゼが鋳型を複製するときに、ポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼの活性によりポリヌクレオチドプローブも切断する。ポリヌクレオチドプローブが無傷である場合、クエンチャーと蛍光部分の間のごく近い接近は通常、低レベルのバックグラウンド蛍光をもたらす。ポリヌクレオチドプローブが切断されると、クエンチャーは蛍光部分から切り離され、蛍光強度が増加する。蛍光シグナルは増幅産物の量と相関し、すなわち増幅産物が蓄積するにつれてシグナルは増加する。
【0108】
本明細書で使用される場合、「選択的にハイブリダイズする」(ならびに「選択的ハイブリダイゼーション」、「特異的にハイブリダイズする」、および「特異的ハイブリダイゼーション」)は、ストリンジェントな条件下で核酸分子(プライマーまたはプローブなど)が、特定の相補的ヌクレオチド配列に優先的に結合する、二重化する(duplexing)、またはハイブリダイズすることを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、核酸分子がその標的配列に優先的にハイブリダイズし、他の非標的配列には、それよりも少ない程度でのみまたは全くハイブリダイズしない条件を指す。当該技術分野で周知であるように、核酸ハイブリダイゼーションに関連する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、配列依存的であり、異なる条件下では異なる。
【0109】
ポリヌクレオチドプローブは長さが変化してよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、15~30塩基を含み得る。追加の実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、25~30塩基を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、20~30塩基、例えば、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基を含み得る。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0110】
ポリヌクレオチドプローブは、鋳型のいずれかの鎖に結合するように設計できる。追加の考慮事項には、ポリヌクレオチドプローブのTmが含まれ、これは好ましくはプライマーのTmと適合性があるべきである。プライマーおよびプローブを設計するためにコンピュータソフトウェアを使用することができる。
【0111】
上記のように、本明細書で開示される方法は、同じ反応混合物中で2つ以上の標的配列(少なくとも1つの制限遺伝子座および1つの対照遺伝子座)の同時増幅を含み得る。並行して増幅される複数の標的配列を区別するために、異なる蛍光色で標識されたポリヌクレオチドプローブを使用することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、当技術分野で周知のフルオロフォア/クエンチャー対を形成し、例えば、FAM-TAMRA、FAM-BHQ1、Yakima Yellow-BHQ1、ATTO550-BHQ2およびROX-BHQ2が含まれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、色素の組み合わせは、選択したRT-PCRサーモサイクラーに適合し得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、蛍光は各PCRサイクルの間にモニターされてもよく、サイクル数の関数としてプローブからの蛍光シグナルの変化を示す増幅プロットを提供する。
【0115】
リアルタイムPCRに関しては、次の用語が使用される。
「定量化サイクル」(「Cq」)は、ソフトウェアによって自動的に、または使用者が手動で設定した、蛍光が閾値を超えて増加するサイクル数を指す。いくつかの実施形態では、閾値は、すべての遺伝子座について一定であってもよく、増幅および検出を実施する前に、事前に設定されてもよい。他の実施形態では、閾値は、増幅サイクル中にこの遺伝子座について検出された最大蛍光レベルに基づいて、実行後の各遺伝子座について別々に定義されてもよい。
【0116】
「閾値」とは、Cq測定に使用される蛍光の値を指す。いくつかの実施形態では、閾値は、ベースライン蛍光を超える値、および/またはバックグラウンドノイズを超える値であり得、増幅プロットの指数増殖期内にある値であり得る。
【0117】
「ベースライン」とは、蛍光の変化がほとんどないか全くないPCRの初期サイクルを指す。
【0118】
コンピュータソフトウェアを使用して、増幅プロットを分析し、ベースライン、閾値、Cqを決定できる。
【0119】
いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限酵素を使用する場合、制限酵素による消化後、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されている遺伝子座は、DNA分子が消化から保護されているため、高効率で増幅される。検出可能な増幅産物は、比較的少ない(低い)増幅サイクル数の後に示されるため、結果は比較的低いCq値である。反対に、酵素の認識部位にあるCGジヌクレオチドがメチル化されていない遺伝子座は、消化ステップ中に広範囲に切断されるため、増幅および定量ステップでCq値が高くなる(すなわち、比較的多数の増幅サイクルの後に検出可能な増幅産物が示される)。
【0120】
他の実施形態では、増幅産物の増幅および検出は、蛍光標識プライマーを使用する従来のPCRと、それに続く増幅産物のキャピラリー電気泳動によって実施することができる。いくつかの実施形態では、増幅後、増幅産物はキャピラリー電気泳動によって分離され、蛍光シグナルが定量化される。いくつかの実施形態では、サイズ(bp)または注入からの時間の関数として蛍光シグナルの変化をプロットする電気泳動図を生成することができ、電気泳動図の各ピークは単一の遺伝子座の増幅産物に対応する。ピークの高さ(例えば、「相対蛍光単位」、rFUを使用して提供される)は、増幅された遺伝子座からのシグナルの強度を表すことができる。コンピュータソフトウェアを使用して、ピークを検出し、その増幅産物がキャピラリー電気泳動装置で実行された一連の遺伝子座の蛍光強度(ピーク高さ)を計算し、その後、シグナル強度間の比率を計算することができる。
【0121】
メチル化感受性制限酵素で消化されたDNA試料に対し、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されている遺伝子座は、電気泳動図で比較的強いシグナル(高いピーク)を生成する。反対に、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されていない遺伝子座では、電気泳動図で比較的弱いシグナル(低いピーク)が生成される。
【0122】
いくつかの実施形態では、プライマーの蛍光標識は、フルオレセイン、FAM、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX、JOE、HEX、NED、VICおよびROXのうちの任意の1つを含む。
【0123】
追加の代替の実施形態では、増幅産物の増幅および検出は、次世代シーケンシング(NGS)技術を使用して実施され得る。
【0124】
次世代シーケンシング(NGS)とは、深く、ハイスループットの、並列DNAシーケンシングテクノロジーを指す。NGSテクノロジーは、以前のサンガーシーケンス手法とは異なり、複数の試料からの超並列分析を、かなりのハイスループットで、大幅に削減された費用で提供する。次世代シーケンシングには、一般に3つの基本的なステップ:DNA/RNAの断片化とアダプタ配列の追加(ライゲーションまたはPCRなど)によるライブラリーの調製、シーケンシング、およびデータ分析が含まれる。Illumina、Life Technologies、Rocheなどが現在採用している並列化された合成によるシーケンシングまたはライゲーションによるシーケンシングのプラットフォーム。NGS法には、ナノポアシーケンシング法、または電子検出に基づく方法、例えば、Life Technologiesが商品化したIon Torrentテクノロジーも含まれ得る。
【0125】
NGSを使用してメチル化比率分析を実施するために、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素でDNA試料を消化した後、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子に対応するDNAフラグメントを濃縮し、これらのDNAフラグメントにNGSアダプタ配列を導入することによって、シーケンシングライブラリーを調製する。「NGSアダプタ配列」は、シーケンシングライブラリーの各DNAフラグメントの5’および3’末端にあるオリゴヌクレオチドである。アダプタには通常、特定のシーケンサーによるフラグメント認識のためのプラットフォーム固有の配列、例えば、ライブラリーフラグメントをIlluminaプラットフォームのフローセルに結合可能にする配列が含まれる。各NGS機器プロバイダーは通常、この目的のために特定の配列セットを使用する。
【0126】
いくつかの実施形態によるNGSアダプタ配列は、試料インデックスをさらに含む。「試料インデックス」は、複数の試料を同じ機器フローセルまたはチップ上で一緒にシーケンス(つまり多重化)できるようにする配列である。各試料インデックス(通常は6~10塩基)は、特定の試料ライブラリーに固有であり、データ分析中に逆多重化して個々の配列読み取りを正確な試料に割り当てるために使用される。アダプタには、組み合わせるライブラリーの数と所望の精度のレベルに応じて、シングルまたはデュアルの試料インデックスが含まれ得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、NGSアダプタ配列は、2ステップPCRを使用して導入され、第1のPCRは、NGSアダプタ配列の第1の部分を導入する遺伝子座特異的配列およびオーバーハング配列を含むプライマーを使用して実施され、第2のPCRは、NGSアダプタ配列の第2の部分と任意選択で試料インデックスとを導入するプライマーを使用して実施される。
【0128】
遺伝子座特異的プライマーは、少なくとも1つの制限遺伝子座のそれぞれに特異的なプライマーおよび対照遺伝子座に特異的なプライマーを含む。
【0129】
第2のPCRの増幅産物を精製し、次に、得られたライブラリーをNGS機器を使用して(例えば、Illuminaの機器を使用して)シーケンシングにかけて、制限および制御遺伝子座に対応する配列読み取りを生成することができる。各遺伝子座についての読み取り数(本明細書では「コピー数」とも呼ばれる)は、遺伝子座のシグナル強度を表す。
【0130】
いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限酵素が使用される場合、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されている遺伝子座が切断から保護され、その結果、これらの遺伝子座のコピー数が比較的高くなる。逆に、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されていない遺伝子座は、消化ステップ中にさらに広範囲に切断されるため、コピー数が少なくなる。
【0131】
コンピュータソフトウェアを使用して、配列読み取りを分析し、それらを標的遺伝子座に割り当て、読み取りの数(コピー数)を定量化することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、DNA試料中のメチル化変化を検出するための方法が提供され、以下のステップ:
(a)DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼでの消化にかけ、それによって、制限エンドヌクレアーゼで処理されたDNAを得ることと、
(b)制限エンドヌクレアーゼで処理されたDNAからNGSシーケンシングライブラリーを生成することであって、このライブラリーは、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座に対応するDNAフラグメントを含む、生成することと、
(c)NGSシーケンシングライブラリーを次世代シーケンシングにかけ、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれのコピー数を決定することと、
(d)当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれのコピー数の間の比率を少なくとも1つの基準比率と比較し、
それにより、DNA試料中のメチル化変化を検出することと、を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、DNA試料中のメチル化変化を高感度で検出するための方法が提供され、この方法は、
(a)一本鎖DNA(ssDNA)を実質的に欠いているDNA試料を提供することと、
(b)DNA試料を少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼで消化し、消化されたDNAからNGSシーケンシングライブラリーを生成し、このライブラリーは、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化されている少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とに対応するDNAフラグメントを含み、当該少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれのコピー数の間の比率を、少なくとも1つの基準比率と比較することによって、DNA試料をメチル化比率分析にかけ、
これにより、少なくとも1:100の検出感度でDNA試料のメチル化の変化を検出することと、を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、NGS配列決定ライブラリーは、(i)NGSアダプタ配列の第1の部分を導入する5’オーバーハング配列を含む遺伝子座特異的プライマーを使用して、単一の反応混合物中、消化されたDNAから、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを同時増幅し、(ii)増幅産物を精製し、(iii)NGSアダプタ(例えば、Illuminaアダプタ)および任意選択で試料インデックスを導入する第2のPCRを実施することにより、生成される。
【0135】
いくつかの実施形態では、DNAは、消化と増幅ステップとの間で精製されない。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるNGSに基づくアッセイは、すべて1つの単一のアッセイにて、変異検出と組み合わせたメチル化変化の検出を組み合わせる。このアッセイは、単一のアッセイで少量のDNAの組み合わせ分析を有利に可能にする。
【0137】
組み合わせたメチル化および変異分析のために、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性またはメチル化依存性制限酵素でDNA試料を消化した後、少なくとも1つの制限遺伝子座、対照遺伝子、および変異分析が所望される1つ以上の遺伝子座に対応するDNAフラグメントを濃縮し、上記の2ステップのPCRを用いて、これらのDNAフラグメントにNGSアダプタ配列を導入することによって、ポリヌクレオチドのライブラリーを調製する。
【0138】
遺伝子座特異的プライマーには、少なくとも1つの制限遺伝子座に特異的なプライマー、対照遺伝子座に特異的なプライマー、および変異分析が所望される少なくとも1つの目的の遺伝子座に特異的なプライマーが含まれる。
【0139】
第2のPCRの増幅産物を精製し、次に、得られたライブラリーをNGS機器を使用して(例えば、Illuminaの機器を使用して)シーケンシングにかけて、少なくとも1つの制限遺伝子座、対照遺伝子座、および変異分析が所望される目的の少なくとも1つの遺伝子座に対応する配列読み取りを生成することができる。目的の遺伝子座に1つ以上の変異を含む配列読み取りを検出するために、コンピュータソフトウェアを使用することができる。
【0140】
シグナル比率
本明細書で使用される場合、「比率」または「シグナル比率」という用語は、(同じ反応混合物中の)単一のDNA試料における一対のゲノム遺伝子座の同時増幅、特に制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅から得られるシグナルの強度間の比率を指す。
【0141】
本明細書で使用される「シグナル強度」という用語は、遺伝子座の無傷なコピーの初期量に対応する遺伝子座特異的増幅産物の量を反映する尺度を指す。ただし、シグナル強度は、増幅産物/無傷な遺伝子座の実際の量を示さなくてもよく、増幅産物/無傷な遺伝子座の絶対量の計算を含まなくてもよい。したがって、増幅産物シグナルの比率を計算する場合、実際のDNA濃度またはDNAメチル化レベル自体を計算する必要がないため、標準曲線や基準DNAを必要としなくてもよい。
【0142】
いくつかの例示的な実施形態では、増幅産物の増幅および検出はRT-PCRによって実施され、特定の遺伝子座のシグナル強度がこの遺伝子座について計算されたCqによって表され得る。この場合のシグナル比率は、次の計算で表すことができる:2(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)。
【0143】
追加の例示的な実施形態では、増幅産物の検出は、特定の遺伝子座のシグナル強度がその対応するピークの相対蛍光単位(rfus)の数であるキャピラリー電気泳動によって実施される。シグナル比率は、各制限遺伝子座のピークの高さを対照遺伝子座のピークの高さで割ることによって計算することができる。
【0144】
追加の例示的な実施形態では、増幅産物の増幅および検出は、次世代シーケンシング(NGS)によって実施され、特定の遺伝子座のシグナル強度は、この遺伝子座について計算された読み取りの数(コピー数)によって表すことができる。この場合のシグナル比率は、次の計算で表すことができる:
制限遺伝子座の読み取り数/対照遺伝子座の読み取り数
【0145】
いくつかの実施形態では、DNA試料中の制限遺伝子座と対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することは、(i)制限遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、(ii)対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、(iii)2つのシグナル強度の間の比率を計算することと、を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、DNA試料中の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することは、各遺伝子座のCqを決定することと、対照遺伝子座のCqと制限遺伝子座のCqとの差を計算することを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、以下の式を適用することをさらに含む:2^(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)。
【0147】
追加の実施形態では、DNA試料中の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することは、各遺伝子座についての読み取りの数(コピー数)を決定することと、対照遺伝子座の読み取りの数と制限遺伝子座の読み取りのコピー数との間の比率を計算することを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、各制限遺伝子座および対照遺伝子座との間の複数のシグナル比率を計算することであり得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、増幅産物のシグナル強度間の比率を計算するためにコンピュータソフトウェアが使用され得る。
【0150】
基準比率
「基準比率」または「基準シグナル比率」という用語は互いに置換可能に使用され、既知の供給源からのDNAで決定されたシグナル強度比率を指す。制限遺伝子座および対照遺伝子座の所与の対の基準比率は、いくつかの方法で表すことができる。いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、単一の比率であってよい。いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、統計値、例えば、既知の供給源からの大量の一連のDNA試料から得られた大量の一連の基準比率の平均値、例えばがん患者の大規模な群において決定された平均値、または健常者の大規模な群において決定された平均値、であってもよい。
【0151】
他の実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、既知の供給源からの大量の一連のDNA試料におけるこの対の遺伝子座について決定された比率の分布のような、複数の比率であってよい。いくつかの実施形態では、基準比率は基準スケールであり得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準スケールは、同じ基準供給源からの複数のDNA試料におけるこの対の遺伝子座について測定されたシグナル比率を含み得る。例えば、基準がん患者の基準スケールまたは基準健常者の基準スケール。他の実施形態では、所与の遺伝子座対の基準スケールは、健常者と病人の両方からのシグナル比率、すなわち、両方の供給源からの基準比率を組み合わせた単一のスケールを含み得る。一般に、単一のスケールが使用される場合、健常者からの値がスケールの一方の端に、例えばカットオフ値より下になるように、患者からの値はスケールのもう一方の端に、例えばカットオフ値より上になるように、値は分布される。いくつかの実施形態では、未知の供給源の検査DNA試料について計算されたシグナル比率は、健康および/または疾患の基準比率の基準スケールと比較することができ、スコアは、スケール内の相対位置に基づいて計算されたシグナル比率に割り当てることができる。いくつかの実施形態では、計算されたシグナル比率の値が高いほど、それに割り当てられるスコアが高くなる。
【0153】
「疾患基準比率」(例えば、「がん基準比率」)または「疾患DNAにおける基準比率」(例えば、「がんのDNAにおける基準比率」)という用語は、分析が行われる疾患を有する対象、例えば、特定のタイプのがんを有する対象の試料(例えば、血漿試料)からのDNAにおける所与の制限遺伝子座と所与の対照遺伝子座との間で測定されたシグナル強度比率を互換的に指す。疾患基準比率は、疾患DNA、すなわち疾患を有する対象の試料からのDNAにおけるシグナル強度比率を表す。疾患基準比率は、上で詳述したように、単一の比率、統計値、または複数の比率(例えば、分布)であり得る。
【0154】
用語「健康基準比率」、「正常基準比率」または健康な/正常なDNAの基準比率」は、互いに置換可能で、正常人からの血漿試料中の所与の制限遺伝子座および所与の対照遺伝子座の間で測定されるシグナル強度比率を指す。「正常」または「健康」は、分析が実行される特定の疾患に関して定義される。「健康な」または「正常な」個人は、本明細書では、従来の診断方法によって決定される、検出可能な症状、および/または疾患の病理学的知見のない個人として定義される。健康基準比率は、正常なDNA、すなわち健康な対象の試料からのDNAにおけるシグナル強度比率を表す。健康基準比率は、上で詳述したように、単一の比率、統計値、または複数の比率(例えば、分布)であり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、疾患DNAからの基準比率の事前決定を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、正常なDNAからの基準比率の事前決定を含む。
【0156】
上記のように、シグナル比率は、例えば、キャピラリー電気泳動後にピークを測定すること、RT-PCR後にCqを計算すること、またはNGS語にコピー数を計算することを含む、様々な方法によって決定することができる。特定の疾患の存在を決定するために、基準比率および未知の供給源の検査試料について測定された比率は、本明細書に開示される方法を使用して得られることを理解するべきである。
【0157】
疾患診断
いくつかの実施形態では、本発明によるメチル化変化を検出する方法は、基準比率と比較した対象からの生物学的試料からのDNAについて計算されたシグナル比率を評価することに基づいて、対象における特定の疾患の存在を同定することを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、DNA試料の細胞供給源または組織供給源を同定するための方法が提供される(例えば、DNAが正常なまたは疾患の細胞/組織に由来するかどうかを同定する)。
【0159】
当業者は、検査試料について計算されたシグナル比率と対応する基準シグナル比率との比較が、様々な統計的手段を使用して、いくつかの方法で実行され得ることを理解するであろう。
【0160】
いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対について計算された検査シグナル比率を基準シグナル比率と比較することは、検査シグナル比率を単一の基準値と比較することを含む。単一の基準値は、健常者または分析が実施される疾患を有する対象の大集団から基準シグナル比率について得られた平均値に対応し得る。他の実施形態では、所与の遺伝子座対について計算された検査シグナル比率を基準シグナル比率と比較することは、検査シグナル比率を、複数の基準シグナル比率の分布またはスケールと比較することを含む。
【0161】
既知の統計的手段は、所与の制限遺伝子座および対照遺伝子座との間で計算されたシグナル比率が疾患基準比率または正常基準比率に対応するかどうかを決定するために、使用することができる。いくつかの実施形態では、計算された比率と疾患基準比率とのごく近い近似値を検出することにより、対象が疾患を有する対象として同定される。反対に、いくつかの実施形態では、計算された比率と正常基準比率とのごく近似値を検出することにより、対象が疾患を患っていない対象として同定される。
【0162】
いくつかの実施形態では、本発明による診断は、検査DNA試料のシグナル比率が疾患比率であるかどうか、すなわち、問題となっている疾患を示すかどうかの分析に基づく。いくつかの実施形態では、この方法は、計算されたシグナル比率をその対応する健康基準比率(すなわち、健常者の同じ遺伝子座対について決定されたシグナル比率)と比較して、計算されたシグナル比率が疾患比率である可能性を反映するスコア(確率スコア)を取得することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、計算されたシグナル比率をその対応する疾患基準比率(すなわち、問題となっている疾患を有する対象における遺伝子座の同じペアについて決定されたシグナル比率)と比較して、計算されたシグナル比率が疾患比率である可能性を反映するスコアを取得することを含む。計算されたシグナル比率と疾患基準比率の近似が良いほど、スコア(確率スコア)が高くなり、計算されたシグナル比率が疾患比率である可能性が高くなる。いくつかの実施形態では、確率スコアは、疾患基準比率の分布内での計算されたシグナル比率の相対的位置に基づく。
【0163】
いくつかの実施形態では、本方法は、対照遺伝子座に関して複数の制限遺伝子座について計算された複数のシグナル比率を、それらの対応する健康および/または疾患基準比率と比較することを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、シグナル比率のパターンは、統計的手段およびコンピュータ化されたアルゴリズムを使用して分析され、それが問題となっている疾患のパターンまたは正常で健康なパターンを表すかどうかを決定し得る。例示的なアルゴリズムは、例えば、本発明の出願人に譲渡されたWO2011/070441に開示されている。アルゴリズムには、機械学習およびパターン認識アルゴリズムが含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの例示的な実施形態において、計算された各比率(制限および対照遺伝子座の各対に対する)は、がん患者、がんに罹患していない個人、またはその両方からの大量の一連の血漿試料のからこの対について生成された基準比率のスケールと比較され得る。このスケールは、がん患者および/または正常人からの多数の試料における、制限遺伝子座および対照遺伝子座の対の間で計算されたシグナル比率を表すことができる。スケールは、閾値を示してもよく、以下「カットオフ」または「事前に定義された閾値」とも呼ばれ、それを超えるとがんに対応する基準比率であり、それ以下は健常者に対応する基準比率であり、またはその逆順である。
【0166】
いくつかの実施形態では、スケールの下部および/またはカットオフより下のより低い比率は、正常人(健康、すなわち、問題となっているがんに罹患していない)の試料からのものであり得、スケールの上部および/または所定のカットオフを超えるより高い比率は、がん患者からのものであり得る。(各制限遺伝子座および対照遺伝子座との間の)各比率に対して、スケール内のその相対位置に基づいてスコアを与えることができ、(各遺伝子座の)個々のスコアを組み合わせて単一のスコアを与える。いくつかの実施形態では、個々のスコアを合計して単一のスコアを与えることができる。他の実施形態では、個々のスコアを平均して単一のスコアを与えることができる。いくつかの実施形態では、単一のスコアは、対象が問題となっているがんを有しているかどうかを決定するために使用することができ、所定の閾値を超えるスコアは、がんを示す。
【0167】
いくつかの実施形態では、スコアは、計算されたシグナル比率ががん比率である確率を反映する0~100の間の数であり、0は最も低い確率であり、100は最も高い確率である。いくつかの実施形態では、閾値スコアが決定され、それに等しいまたそれを超えるスコアはがんを示す。閾値は、例えば、60、70または80であり得る。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0168】
追加の例示的な実施形態では、計算された各比率(各制限遺伝子座および対照遺伝子座との間の)について、それががんのDNAを表す確率は、対応するがん基準比率および/または正常基準比率との比較に基づいて決定されてもよく、スコア(確率スコア)を割り当てられてもよい。その結果、各比率(各遺伝子座の)に対して計算された個々の確率スコアが組み合わされて(合計または平均化されて)、複合スコアを与える。複合スコアは、対象ががんを有しているかどうかを決定するために使用することができ、所定の閾値を超える複合スコアは、がんを示す。
【0169】
したがって、いくつかの実施形態では、閾値またはカットオフスコアが決定され、それを上回る(または下回る)対象は、問題となっている疾患、例えば、問題となっているがんのタイプを有するものとして同定される。閾値スコアは、健常者の母集団と非健常者の母集団を区別する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、閾値スコアを提供することを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、閾値スコアを決定することは、健康であるかまたは問題となっている疾患を有している対象の大集団におけるシグナル比率を測定することを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、閾値は統計的に有意な値である。多くの場合、統計的有意性は、2つ以上の母集団を比較し、信頼区間(CI)および/またはp値を決定することによって決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な値は、約90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%および99.99%の信頼区間(CI)を指し、好ましいp値は約0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001未満または0.0001未満である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、閾値スコアのp値は最大で0.05である。
【0173】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、測定可能な値を指す場合、規定値から+/-10%、より好ましくは+/-5%、さらにより好ましくは+/-1%、よりさらに好ましくは+/-0.1%の変動を包含することを意味する。
【0174】
いくつかの実施形態では、方法は、所与の制限遺伝子座および対照遺伝子座との間で計算されたシグナル比率をその対応する正常/健康基準比率と比較して確率スコアを取得することをさらに含み、対応する健康基準比率に関して当該比率について低確率スコアを検出することは、対象が分析が実施された疾患を有していることを示す。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法の診断感度は、少なくとも約75%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断感度は、少なくとも約80%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断感度は、少なくとも約85%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断感度は、少なくとも約90%であり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される診断アッセイの「診断感度」は、陽性であると診断された病人のパーセンテージ(「真の陽性」のパーセント)を指す。したがって、アッセイによって検出されない病人は「偽陰性」である。罹患しておらず、かつアッセイで陰性と判定された対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は、1から偽陽性率を差し引いたものであり、「偽陽性」率は、陽性と診断された疾患のないものの割合として定義される。特定の診断方法は状態の確定診断を提供できないが、この方法が診断に役立つ陽性の指標を提供する場合はそれで十分である。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法の診断特異度は、少なくとも約65%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断特異度は少なくとも約70%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断特異度は少なくとも約75%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の診断特異度は少なくとも約80%であり得る。
【0178】
確定診断
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って問題となっている疾患を同定した後、対象は、その疾患の確定診断を受けることができる。確定診断は、例えば、生検によって実施することができる。
【0179】
処理
いくつかの実施形態では、本発明の方法に従って問題となっている疾患を同定した後、対象は、その疾患に好適な治療を受けることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法に従ってヒト対象の疾患を同定することと、当該対象に好適な治療を施すことと、を含む治療方法が提供される。
【0180】
システムおよびキット
いくつかの実施形態では、DNA試料におけるメチル化変化を検出するためのシステムが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、DNA試料におけるメチル化変化を検出するためのキットが本明細書に提供される。
【0181】
いくつかの実施形態では、システムおよびキットは、本発明の方法によれば、DNA試料中でメチル化変化を検出するためのものである。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステムは、(a)DNA試料であって、DNA試料は、実質的にssDNAを欠いている(例えば、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)、例えば、1%未満のssDNAを含む)、DNA試料と、(b)メチル化比率分析を実施するため構成要素と、を含む。
【0183】
本明細書で使用される場合、メチル化比率分析を実施するための「構成要素」は、生化学的構成要素(例えば、酵素、プライマー、ヌクレオチド)、化学的構成要素(例えば、緩衝液、プローブ)、および技術的構成要素(例えば、PCRシステム、機器、例えば、チューブ、バイアル、プレート、ピペット、およびコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェア、コンピュータプロセッサなど)を包含する。
【0184】
いくつかの実施形態では、メチル化比率分析を実施するための構成要素は、(i)DNA試料を消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼと、(ii)消化後のDNA試料からの複数のゲノム遺伝子座を同時増幅するための複数のプライマー対であって、複数のゲノム遺伝子座が、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを含む、複数のプライマー対と、(iii)非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、コンピュータソフトウェアが、増幅後の制限遺伝子座と対照遺伝子座のシグナル強度の比率と基準比率との比較に基づいて、DNA試料中のメチル化変化を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する、コンピュータソフトウェアと、を含む構成要素と、を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、メチル化比率分析を実施するための構成要素は、PCR機器(例えば、リアルタイムPCR機器)および/またはNGS機器などの、増幅および検出ステップを実施するための機械を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、メチル化比率分析を実施するための構成要素は、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数のポリヌクレオチドプローブを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、システムは、以下:増幅後の前記制限遺伝子座と前記対照遺伝子座のシグナル強度の比率と基準比率との比較に基づいてDNA試料におけるメチル化変化を決定すること、を実施するように構成されたプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、プロセッサは、複数の基準比率を格納する記憶装置に結合されている。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステムは、(a)DNA試料を消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは少なくとも1つのメチル化依存性制限エンドヌクレアーゼであって、ここで、DNA試料は実質的にssDNAを欠いている(例えば、5%未満の一本鎖DNA(ssDNA)を含む)、制限エンドヌクレアーゼと、(b)(a)の制限エンドヌレアーゼによる消化後のDNA試料から複数のゲノム遺伝子座を同時増幅するための複数のプライマー対であって、複数のゲノム遺伝子座が、正常なDNAおよび疾患DNAの間で異なってメチル化された少なくとも1つの制限遺伝子座と、少なくとも1つの対照遺伝子座とを含む、複数のプライマー対と、(c)非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、コンピュータソフトウェアが、増幅後の制限遺伝子座と対照遺伝子座のシグナル強度の比率と基準比率との比較に基づいて、DNA試料中のメチル化変化を決定するようにコンピュータプロセッサに指示し、メチル化変化が少なくとも1:100の検出感度で決定されるものである、コンピュータソフトウェアと、を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、抽出されたDNAが実質的にssDNAを欠くように、例えば5%未満のssDNA、例えば1%未満のssDNAを含むように、生物学的試料からDNAを抽出するためのDNA抽出試薬を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、制限酵素に加えて、1つ以上の緩衝液などの、DNA消化に必要な成分を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、プライマーに加えて、遺伝子座の増幅に必要な成分、例えば、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド混合物、および緩衝液を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、ポリヌクレオチドプローブ、例えば、蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブなどの増幅産物の検出に必要な成分を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本発明によるキットまたはシステムは、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアを使用してメチル化変化の検出を実施するための命令をさらに含み、コンピュータソフトウェアは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が正常なDNA試料かまたは腫瘍細胞などの疾患細胞に由来するDNA試料かを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する
【0194】
いくつかの実施形態では、キットまたはシステムは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が正常なDNA試料かまたは腫瘍細胞などの疾患細胞に由来するDNA試料かを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示するコンピュータソフトウェアを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体を、さらに含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、本発明によるコンピュータソフトウェアは、リアルタイムPCR実行の入力パラメータまたは生データを受け取る。いくつかの実施形態では、コンピュータソフトウェアは、リアルタイムPCRの実行を分析してシグナル強度およびシグナル比率を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明によるコンピュータソフトウェアは、入力としてNGS実行の配列読み取りを受け取る。いくつかの実施形態では、コンピュータソフトウェアは、NGSの実行を分析してシグナル強度およびシグナル比率を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する。
【0197】
コンピュータソフトウェアは、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されるプロセッサ実行可能命令を含む。コンピュータソフトウェアはまた、格納データを含み得る。コンピュータ可読媒体は、コンパクトディスク(CD)、磁気記憶装置、光学記憶装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、または任意の他の有形的表現媒体などの有形的コンピュータ可読媒体である。
【0198】
本明細書に記載のコンピュータ関連の方法、ステップ、プロセスは、実行されたときに、指示を実行するように構成されているか、またはそれをコンピュータプロセッサもしくはコンピュータに指示する不揮発性または非一時的コンピュータ可読命令に格納されたソフトウェアを使用して実施されることが理解される。
【0199】
本明細書に記載のシステム、サーバー、コンピュータデバイス、およびコンピュータのそれぞれは、1つ以上のコンピュータシステムに実装でき、ネットワークを介して通信するように構成できる。それらはすべて、単一のコンピュータシステムに実装することもできる。一実施形態では、コンピュータシステムは、情報を通信するためのバスまたは他の通信メカニズム、および情報を処理するためのバスと結合されたハードウェアプロセッサを含む。
【0200】
コンピュータシステムはまた、プロセッサによって実行される情報および命令を記憶するためにバスに結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置などのメインメモリを含む。メインメモリは、プロセッサによって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を格納するために使用することもできる。このような命令は、プロセッサがアクセスできる非一時的な記憶媒体に格納されると、コンピュータシステムを、命令で指定された操作を実行するようにカスタマイズされた専用の機器にレンダリングする。
【0201】
コンピュータシステムはさらに、静的情報およびプロセッサへの命令を格納するためにバスに結合された読み取り専用メモリ(ROM)または他の静的記憶装置を含む。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置が提供され、情報および命令を記憶するためにバスに結合される。
【0202】
コンピュータシステムは、コンピュータユーザに情報を表示するために、バスを介してディスプレイに結合することができる。
【0203】
英数字およびその他のキーを含む入力デバイスは、情報およびコマンド選択をプロセッサに通信するためにバスに結合される。別のタイプのユーザー入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサに伝達し、ディスプレイ上のカーソルの動きを制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御である。
【0204】
一実施形態によれば、本明細書の技術は、メインメモリに含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサに応答して、コンピュータシステムによって実行される。そのような命令は、記憶装置などの別の記憶媒体からメインメモリに読み込むことができる。メインメモリに含まれる一連の命令を実行すると、プロセッサは、本明細書に記載のプロセスステップを実行する。代替の実施形態では、ハードワイヤー回路を、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用することができる。
【0205】
本明細書で使用される記憶媒体という用語は、機械を特定の方法で動作させるデータおよび/または命令を記憶する任意の非一時的な媒体を指す。記憶媒体の一般的な形式には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、または任意の他の磁気データ記憶媒体、CD-ROM、任意の他の光データ記憶媒体、穴パターンを伴う任意の物理的媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、NVRAM、任意の他のメモリチップ、またはカートリッジが含まれる。
【0206】
記憶媒体は、伝送媒体とは異なるが、伝送媒体と組み合わせて使用できる。伝送媒体は、記憶媒体との間の情報転送に関与する。例えば、伝送媒体には、バスを構成する線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバーが含まれる。
【0207】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形および修正を容易に考案することができる。
【実施例】
【0208】
実施例1-一本鎖DNAが消化効率に及ぼす影響
本発明によるメチル化変化の検出は、DNAのメチル化感受性またはメチル化依存性酵素消化、それに続く標的遺伝子座の増幅、および増幅シグナルの分析に基づく。次の実験では、二本鎖DNA試料に可変量の一本鎖DNAを添加した場合の消化効率の変動を試験した。消化効率は、リアルタイムPCRを使用して、試験遺伝子座と対照遺伝子座との間のΔCqに対する様々な量の一本鎖DNAの影響によって評価した。消化効率は、メチル化変化を正確に検出するアッセイの能力を反映している。
【0209】
実験手順
A-673細胞株からの二本鎖DNAを、以下の肺癌関連ゲノム遺伝子座に対応する合成一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの割合を増やしてスパイクした。
【表1】
【0210】
この肺癌試験遺伝子座は、本発明の出願人に譲渡されたWO2019/142193に以前に開示されていた。これは、メチル化感受性制限酵素HhaIの認識配列を含む。A-673細胞株からのDNAはこの試験遺伝子座でメチル化されていないため、この細胞株からのDNAは試験遺伝子座でHhaIによって広範囲に切断されると予想される。
【0211】
スパイクされた試料、ならびに純粋な一本鎖DNAの試料(「100%の一本鎖DNA」)、およびssDNAでスパイクされていないA-673細胞からのDNAの試料(「100%の二本鎖DNA」)を、メチル化感受性な酵素消化にかけた。酵素消化は37℃で2時間行い、続いて酵素を65℃で20分間熱失活させた。
【0212】
次に、消化された試料に対してリアルタイムPCRを実施し、各試料で、上記に詳述されている試験遺伝子座と、以下に示されている対照遺伝子座とを増幅した。
【表2】
【0213】
対照遺伝子座は、HhaIの認識配列を含まない遺伝子座であり、メチル化の状態に関係なく、DNA試料がHhaIで消化された場合、無傷なままである。
【0214】
消化後、消化された各試料には、試験遺伝子座と対照遺伝子座を増幅するためのプライマーペアが追加された。各増幅反応(総量25マイクロリットル)には、dNTP、DNAポリメラーゼ、および反応バッファーがさらに含まれていた。増幅中の増幅産物の検出を可能にするために、蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブ(各遺伝子座に1つ)を反応に加えた。リアルタイムPCR反応は、ABI 7500 FastDx機器で次のPCRプログラムを使用して実施された:95℃、10分->45X(95℃、15秒)->60℃、1分。
【0215】
増幅に続いて、サイクル数の関数としてのプローブからの蛍光シグナルのレベルに関するデータを分析して、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)とΔCq、すなわち、試験遺伝子座のCqと対照遺伝子座のCqの差を計算した。
【0216】
結果
結果は、表1および
図1に要約されている。100%一本鎖DNA試料中の試験遺伝子座と対照遺伝子座の間のΔCqは7.51サイクルだったが、一方、100%二本鎖DNA試料中の試験遺伝子座には、目に見える増幅はなかった。これは、試験遺伝子座と対照遺伝子座の間の18サイクルを超えるΔCqに対応する。試料中の一本鎖DNAの割合が減少するにつれて、試験遺伝子座と対照遺伝子座の間のΔCqは増加した。
【0217】
ΔCqの増加は、ssDNAの存在が少ない場合に試験遺伝子座のより効率的な消化を反映している。より少ないssDNAが存在する場合、より多くのDNAが消化され、対照遺伝子座のCqと比較して試験遺伝子座のCqが増加した(検出可能な増幅産物が対照遺伝子座について現れたサイクル数と比較して、試験遺伝子座の検出可能な増幅産物がアッセイ中に現れたサイクル数が増大している)。
【0218】
【0219】
この実験は、試料中の一本鎖DNAの存在が消化効率を損なうことを示している。消化効率は、メチル化変化を正確に検出するアッセイの能力を反映している。この効果は、試料中の一本鎖DNAの量に比例する。この効果は、試料中の一本鎖DNAの6.25%から観察できる。
【0220】
実施例2-肺癌関連ゲノム遺伝子座でのメチル化変化の検出
次の実験では、DNA試料中のssDNAの存在が、本明細書に記載されているメチル化比率分析によって肺癌関連ゲノム遺伝子座でのメチル化変化を検出する能力に及ぼす影響を試験する。本発明の出願人に譲渡された、WO2019/142193に以前に開示された肺癌関連制限遺伝子座は、配列番号1~6として以下に記載される配列を含む。
【0221】
【0222】
血漿試料は、肺癌のない対象から採取される。肺癌のない対象からの血漿試料中のDNAは、上記の6つの制限遺伝子座でほとんどメチル化されていない。QIAamp(登録商標)Circulating Nucleic Acid Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を使用して血漿試料からDNAを抽出する。この抽出手順は、60℃以下の温度で、非変性試薬を使用して実行される。
【0223】
抽出されたDNAはアリコートに分割され、以下のように、それぞれが上記の制限遺伝子座のそれぞれに対応する合成一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの異なるパーセンテージ:「0 ssDNA」(ssDNAなし)、0.1%、1%、10%のssDNAでスパイクされる次に、各アリコートは、次のようにメチル化比率分析にかけられる。
各アリコートは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼHhaIで消化される。消化反応(総量100マイクロリットル)には、80マイクロリットルの抽出DNA(定量されていない)と消化緩衝液中のHhaIが含まれる。消化は37℃で2時間実施する。
【0224】
次に、消化されたアリコートに対してリアルタイムPCRを実施し、各アリコートで、上記で詳述されている6つの制限遺伝子座と、配列番号7に示されている対照遺伝子座を増幅する。
【表5】
【0225】
対照遺伝子座は、HhaIの認識配列を含まない遺伝子座であり、メチル化の状態に関係なく、DNA試料が制限酵素で消化された場合、無傷なままである。
【0226】
消化後、消化された各アリコートは、12マイクロリットルを含む3つのサブアリコートに分割される。各サブアリコートには、6つのうち2つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を増幅するためのプライマー対が補充される(対照遺伝子座はすべてのサブアリコートで増幅される)。77~139塩基のアンプリコンが増幅される。各増幅反応(総量30マイクロリットル)には、dNTPと反応バッファーがさらに含まれる。増幅中の増幅産物の検出を可能にするために、蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブ(各遺伝子座に1つ)を反応に加える。以下の蛍光標識を使用する:FAM、JOE、ROX。リアルタイムPCR反応は、ABI 7500 FastDx機器で次のPCRプログラムを使用して実施する:95℃、10分->45X(95℃、15秒)->60℃、1分。
【0227】
増幅に続いて、サイクル数の関数としてのプローブからの蛍光シグナルのレベルに関するデータを分析して、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)と各制限遺伝子座のΔCq(制限遺伝子座のCqと対照遺伝子座のCqとの間の差)を計算する。
【0228】
各試料について、下記のように、制限遺伝子座1~6(配列番号1~6)の各々のシグナル強度と対照遺伝子座(配列番号7)のシグナル強度の間の比率を計算する:Cqを各制限遺伝子座および対照遺伝子座について決定する。Cq値を、次の式で使用する。
2(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)。
【0229】
対照遺伝子座に関し各制限遺伝子座について得られた数値は、この制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率(メチル化比率を反映する)を表す。全体として、6つのシグナル比率が各試料について計算された。
【0230】
次に、各試料の各遺伝子座のスコアを計算する。このスコアは、最高のシグナル比率が「100」、最低のシグナル比率が「0」となるように、基準比率に対して正規化されたシグナル比率である。各試料で得られた6つのスコアを、0~100の数であり、6つの制限遺伝子座のパネルでの試料の全体的な相対メチル化レベルを反映する「EpiScore」と呼ばれる1つのスコアに結合する。EpiScoreが70(以前の一連の試料からの情報に基づいて決定された閾値)以上の場合、試料は「肺癌」として分類され、EpiScoreが70未満の場合、「健康」として分類される。
【0231】
「0 ssDNA」試料に対して計算されたEpiScoreは、抽出後の元のDNA試料のスコアを表す。この試料は上記の制限遺伝子座でほとんどメチル化されていないため、EpiScoreは非常に低くなっている。「0 ssDNA」試料に対して計算されたEpiScoreは、一本鎖DNAでスパイクした試料に対して計算されたEpiScoreと比較され、EpiScoreの精度に対して、したがって健康なDNAおよび疾患DNAの間(この場合は肺癌のDNA)を正しく区別するためアッセイの能力に対して、DNA試料中にssDNAが含まれていることの影響を示している。
【0232】
実施例3-分析感度
アッセイの分析感度は、メチル化および非メチル化DNA種の混合物で試験された。
【0233】
材料および方法
非メチル化DNA
非メチル化DNAには2つのDNAフラグメント(試験遺伝子座と内部基準、対照遺伝子座)が含まれ、それぞれがヒト細胞株HCT-15 DNAからPCRによって増幅され、pGEM-T Easyベクター(Promega)に別々にクローン化された。QIAGENプラスミドミニキットを使用してプラスミドDNAを抽出し、一本鎖DNA(ssDNA)を本質的に含まないDNA試料を取得し、NanoDropを使用して定量した。挿入された配列を確認するために、精製したプラスミドDNAの配列を決定した。実験で使用される非メチル化DNAの試料を作成するために、等モル量の両方のプラスミド種を組み合わせた。
【0234】
メチル化DNA
メチル化DNAは、HCT-15細胞株から抽出されたDNAで構成されていた。細胞はSigma-Aldrichから購入し、収穫前に38世代培養した。Wizard Genomic DNA精製用キット(Promega)を使用してDNAを抽出し、本質的にssDNAを含まないDNA試料を取得した。抽出されたDNAはNanoDropを使用して定量化された。
【0235】
バイサルファイトシーケンシング
EpiTect Bisulfiteキット(QIAGEN)を使用して、メチル化および非メチル化DNA試料の両方を亜硫酸水素ナトリウムで処理した。バイサルファイト変換に続いて、試験遺伝子座を両方のDNA種から増幅した。次に、QIAquick PCR精製用キット(QIAGEN)を使用してPCR産物を精製し、配列を決定した。
【0236】
メチル化および非メチル化DNAの混合物
混合物は、所望のモル比を作り出すために、適切な量のメチル化および非メチル化DNAを加えることによって構築された。
【0237】
DNA消化
各DNA試料80μlを、5μlのHinP1I(New England Biolabs)、10μlのCutSmartバッファー(New England Biolabs)、および5μlのDDWを伴う総量100μlで消化した。消化は37℃で2時間行い、続いて65℃で20分間熱失活させた。
【0238】
リアルタイムPCR
各PCRウェルには、0.6μlのAmpliTaq Gold(Thermo Fisher)、3μlのバッファーI(Thermo Fisher)、0.6μlの10mMのdNTPミックス(Sigma-Aldrich)、0.2μMの各プライマー(試験遺伝子座フォワード、試験遺伝子座リバース、内部基準フォワード、内部基準リバース)、0.4μMの試験プローブ、0.2μMの内部基準プローブ、および12μlの消化されたDNA試料を伴う合計30μlが含まれた。PCRは、7500 Fast DxリアルタイムPCR装置(Thermo Fisher)で、次のPCRプログラム:95℃で10分、続いて95℃で15秒、および60℃で1分の45サイクルを使用して実行した。
【0239】
シグナル分析
リアルタイムPCR装置から出力されたsdsファイルの蛍光データを専用ソフトウェアで解析した。各遺伝子座について、遺伝子座の蛍光データが50,000蛍光単位の閾値を超えたサイクルに等しいCq(定量サイクル)値が計算された。各ウェルについて、試験遺伝子座のCqから内部基準遺伝子座のCqを引いたものに等しいΔCq値が計算された。
【0240】
結果
アッセイの説明
このアッセイには、消化、増幅、およびお分析の3つの連続したステップが含まれる。第1のステップでは、ssDNAを実質的に含まないDNA試料をメチル化感受性制限酵素で消化する。次に、消化されたDNAのアリコートは、2つのゲノム遺伝子座が同時増幅されるリアルタイムPCR増幅にかけられる。メチル化レベルが分析される第1の遺伝子座は「試験遺伝子座」または「制限遺伝子座」と呼ばれ、消化ステップで使用された制限酵素の認識配列が少なくとも1つが含まれている。第2の遺伝子座は、本明細書で「内部基準」と呼ばれる対照遺伝子座であり、消化ステップで使用される制限酵素の認識配列を含まない。消化ステップでの試験遺伝子座の消化の程度は、そのメチル化レベルに依存するものであり、メチル化の結果のレベルが高いほど、消化は少なくなる。したがって、メチル化のレベルが高いと、リアルタイムPCRの鋳型が多くなり、その結果、Cq値が低くなる(比較的少ない増幅サイクル数の後に、検出可能な増幅産物が見られる)。対照的に、メチル化レベルが低いと、消化が広範囲になり、リアルタイムPCRの鋳型が少なくなり、Cq値が高くなる(より多くの増幅サイクル数の後に、検出可能な増幅産物が見られる)。内部基準は制限酵素によって認識されないため、メチル化レベルに関係なくそのまま残る。2つの遺伝子座の増幅シグナル(Cq値)は、PCR中にそれぞれのプローブに異なるフルオロフォアを使用することによって区別される。第3のステップでは、シグナルは専用のソフトウェアによって分析される。このソフトウェアは、試験遺伝子座と内部基準遺伝子座の間のΔCqを決定する。
【0241】
現在の実験では、試験遺伝子座は5番染色体上のヒトゲノム遺伝子座であり、ここでは、肺癌組織と正常な肺組織の間で異なってメチル化されており、正常なヒト血漿ではほとんどメチル化されていない。
AGTAGCGCCCACTGAGCGGTTTTTCAGTTGCTGCACCGTTCTTAGCGCCCAACGGAACGTTTCCCGTACGCGGAGTCCATAAGTT(配列番号1)
【0242】
ヒト7番染色体上の遺伝子座を内部基準として使用した:
AGACTAACTTTTCTCTTGTACAGAATCATCAGGCTAAATTTTTGGCATTATTTCAGTCCT(配列番号7)
【0243】
アッセイの分析感度
アッセイの分析感度を決定するために、異なる比率のメチル化および非メチル化DNA試料の混合物を分析した。ヒト細胞株HCT-15からのDNAは、バイサルファイトシーケンシングによって決定されるように、試験遺伝子座でメチル化されているため、メチル化DNA試料の供給源として使用された(
図2A、上のパネル)。
【0244】
非メチル化DNA試料は、2つの細菌プラスミドDNA試料の混合物から構築され、挿入物として試験遺伝子座と内部基準遺伝子座が含まれている。プラスミドDNAの生成に使用された大腸菌E.coliがCpGメチルトランスフェラーゼを欠いているという事実は、バイサルファイトシーケンシングによって検証されるように、プラスミドDNAが試験遺伝子座で完全にメチル化されていないことを保証する(
図2A、下のパネル)。次に、メチル化および非メチル化DNA種を、1:8、1:64、1:512、1:4096、1:32768、および1:200,000のメチル化:非メチル化DNAのモル比で混合し、これらの混合物を上記のアッセイを用いて分析した。各PCRウェルでは、非メチル化DNA鋳型分子の数は4,000,000であり、メチル化DNA分子の数は1:8混合物の500,000から1:200,000の20分子まで変化した。
【0245】
図2Bは、DNA混合物の増幅プロットを示している。モル比が1:8のDNAの混合物の場合、試験遺伝子座と内部基準遺伝子座の間のΔCqは約3サイクルである。メチル化DNA試料と非メチル化DNA試料との間の比率が大きくなると、ΔCqも大きくなり、1:200,000混合物では18.75サイクルにまで達する。計算されたΔCqsが期待されるΔCqs(メチル化レベルについての期待されるΔCq x=-log2(x))に対してプロットされ、試験遺伝子座と内部基準遺伝子座の両方で100%のPCR効率が想定され、最小二乗法を使用して線形回帰が実行され、得られたフィットは、0.9966のR
2値を有し(
図3)、実際のメチル化レベルがΔCqsから決定することができることを実証する。
【0246】
次のステップでは、アッセイが非メチル化分子のバックグラウンドを持つメチル化分子を1:200,000の比率で一貫して検出できることを示すために、この比率のDNA試料の混合物を34の別々のPCR反応(複製)で試験した。各ウェルには10個のメチル化(HCT-15から)および2,000,000個の非メチル化(プラスミドDNAから)の試験遺伝子座鋳型分子が含まれ、シグナルは、任意のメチル化DNA鋳型分子を含まないウェル当たり2,000,000個の非メチル化DNA分子のみを含む34個のPCR反応と比較された。
図4A~Bは、この実験の増幅プロットを示している。メチル化および非メチル化DNA試料の混合物を含む34の複製すべてで、試験遺伝子座は首尾よく増幅されたが(
図4A)、非メチル化DNAのみを含む34の複製すべてでは、試験遺伝子座の増幅は観察されなかった(
図4B)。
【0247】
全体の検出率は100.0%(68/68)だった。片側の正確な二項95%信頼区間(CI)の下限は95.69%だった。これは真の全体的な検出率が95.69%より高い95%の信頼度を意味する。陽性および陰性の検出率は両方とも100.0%(34/34)だった。片側の正確な二項95%CIの下限は91.57%だった。これは、真の陽性および陰性の検出率が91.5%より高い95%の信頼度を意味する。
【0248】
この作業では、1:200,000という低いメチル化レベルを検出できるシンプルで超高感度のアッセイについて説明する。このような高感度は、腫瘍DNAがたいてい正常なDNAからなるバックグラウンドに比べて非常に少量でしか存在しない液体生検試料について役立つ可能性がある。極端な感度を持つメチル化アッセイの臨床的有用性は、分析できる入力DNAの量、バックグラウンドの生物学的ノイズのレベル(つまり、対照試料から得られるメチル化の典型的なレベル)、および生物学的シグナルのレベル(つまり、腫瘍に異常なメチル化パターンを示す患者の割合)によっても制限される。入力DNAの量は、アッセイで達成できる実際の感度の上限を設定する。例えば、10mlの静脈血の典型的な試料は、通常、3~4mlの血漿から約35ngの無細胞DNAしか生成せず、これは約10,000の一倍体ゲノムコピーに相当する。本発明のアッセイに従って各ウェルで分析されるゲノムコピーの平均数は約1,000であり、この構成で達成できる最高レベルの感度を約1:1000、または0.1%に設定する。
【0249】
実施例4-DNA抽出および肺癌関連ゲノム遺伝子座でのメチル化変化の検出
血漿試料から抽出されたDNA試料中の肺癌関連ゲノム遺伝子座でのメチル化変化の検出は、実施例1に記載されているように実施される。血漿試料からのDNAの抽出は、有機DNA抽出によって実行され、次のように1%未満のssDNAを含有するDNA試料が取得される:
- 1mlの血漿をチューブ(15mlまたは50mlチューブ)に入れる。
- チューブに500μlの抽出バッファー(300mMのTris pH 8.0、30mMのEDTA、300mMのNaCl、6%のSDS)、30μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)、および15μlの390nMのDTTを追加する。
- チューブを密封し(パラフィルムなどで)、56℃で2時間インキュベートする。
- 化学フード内で、2~8℃に一晩平衡化したフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)の混合物1.5mlを追加する。
- チューブを密封し(パラフィルムなどで)、30秒間振とう(ボルテックス)する。
- 相を分離する(遠心分離機で、3分、10,000g)。
- 化学フード内で、水相を別のチューブに移し、等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)の混合物を加える。
- チューブを密封し(パラフィルムなどで)、30秒間振とう(ボルテックス)する。
- 相を分離する(遠心分離機で、3分、10,000g)。
- 水相を別のチューブに移し、0.1容量の3MのNaAcと2~2.4容量のエタノール(無水)を追加する。
- チューブを-20℃で20分間インキュベートする。
- DNAの沈殿させる(遠心分離機で、20分、17,000g、4℃)。
- エタノール/NaAc溶液を廃棄し、残りの試料をエタノール(70%)で洗浄する。
- DNAをペレット化する(遠心分離機で、15分、17,000g、4℃)。
- エタノールを廃棄し、ペレットを乾燥させ、
ペレットをddH2Oまたは0.04%のNaN3溶液中で再懸濁する。
【0250】
実施例5-次世代シーケンシング(NGS)に基づくアッセイ
材料および方法
NGSライブラリー調製用のプライマー設計-第1のPCR
NGSに基づくアッセイのためにがんマーカー遺伝子座を増幅するために、遺伝子座特異的配列に加えて以下のオーバーハングアダプタ配列を含むプライマーが設計された。
フォワードプライマーオーバーハング:
5’TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG’3(配列番号8)
リバースプライマーオーバーハング:
5’GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG’3(配列番号9)
【0251】
オーバーハングアダプタ配列は、遺伝子座特異的配列の5’だった。
【0252】
オーバーハングアダプタと遺伝子座特異的配列の間に、0、1、2、または3Nのヌクレオチドのいずれかが付加された。この付加は、各シーケンスサイクルで4つの塩基すべてが均一に分布することを保証するために行われた。これらのNヌクレオチドの付加は、フォワードプライマーとリバースプライマーの両方で行った。全体として、各遺伝子座には4つのフォワードプライマーと4つのリバースプライマーがあった。
【0253】
この実験では、4つのがんメチル化マーカー遺伝子座、対照遺伝子座、およびKRASエクソン2遺伝子座を使用した。
【0254】
4つのがんメチル化マーカー遺伝子座は次のとおりである。
【表6】
【0255】
これらの遺伝子座には、メチル化感受性制限酵素HhaIの認識部位が少なくとも1つ含まれている。
【0256】
対照遺伝子座は、上記の配列番号7に記載の遺伝子座であった。この遺伝子座には、HhaIの認識部位は含まれていない。
【0257】
KRAS遺伝子座についてのプライマーは次のとおりである。
KRAS f:5’TTAAAACAAGATTTACCTCTATTG’3(配列番号10)
KRAS r:5’AAATGACTGAATATAAACTTGTGG’3(配列番号11)
【0258】
試料の選択および血漿の調製
この実験では、8つの健康な対照血漿試料と9つのがん患者血漿試料を使用した。
【0259】
EDTA血液チューブ(Becton Dickinson)で各患者から10mlの血液を採取した。各血液チューブは、ブレーキなしで室温で10分間、1500xgでスイングバケットローターで遠心分離された。次に、プラズマ層を新しい15mlチューブに移し、ブレーキなしで室温で10分間1500xgで再度遠心分離した。リンパ球の溶解(無細胞DNAを汚染する)を回避するために、採血後4時間まで遠心分離を行った。
【0260】
DNA抽出
血漿試料からのDNA抽出は、抽出手順で最小の一本鎖DNA、つまり5%未満のssDNAを生成する抽出キット(QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit-Qiagen)を使用して実行された。
【0261】
血漿分離試験
消化に進む前に、抽出されたDNAは、本発明の出願人に譲渡された同時係属中の出願、WO2019/162941に記載されるように、血漿分離アッセイを用いて、リンパ球DNAによる汚染について試験された。このような汚染は、腫瘍細胞を含まないDNAのシグナルを妨げる可能性がある。血漿分離アッセイに合格した試料のみがライブラリーの調製に進んだ。
【0262】
DNA消化
抽出された無細胞DNAは、37℃で2時間メチル化感受性消化を受けた。65℃で20分間インキュベートすることにより反応を停止させた。
【0263】
NGS分析のためのライブラリー調製
第1のPCR-遺伝子座特異的:
上記の5’オーバーハングアダプタおよび遺伝子座特異的配列と5’オーバーハングアダプタ配列の間の0~3個のNヌクレオチドを含む遺伝子座特異的プライマーを用いて、上記の4つのがんメチル化マーカー遺伝子座、対照遺伝子座、およびKRAS遺伝子座を、消化されたDNA試料から2つのマルチプレックス(各マルチプレックスに3つの遺伝子座と各マルチプレックスで増幅された対照遺伝子座)にて増幅した。10μlの消化されたDNAは、高い忠実度のDNAポリメラーゼを使用した25サイクルのPCR反応で増幅された。
【0264】
本実験で消化されたDNAには、高濃度のマグネシウムが含まれている。マグネシウムは通常、忠実度の高いDNAポリメラーゼのPCR反応バッファー中にも存在する。PCR反応を阻害する可能性のある過剰なマグネシウムを避けるために、増幅反応におけるそのマグネシウム濃度は、使用されるDNAポリメラーゼに従って調整される。
【0265】
PCR精製:
遺伝子座特異的なPCRの後、AMPure XPビーズ(Beckman Coulter Genomics)を使用してPCR産物を精製した。精製後、各試料についての2つのマルチプレックスのPCR産物を混合した
【0266】
第2のPCR-Illuminaアダプタと試料インデックスの付加:
Illuminaアダプタと試料インデックスを付加するために、Nextera NTインデックスキット(Illumina)のプライマーを使用して第2のPCRを行った。
【0267】
2つのマルチプレックスのPCR産物の混合物から5μlを8サイクルのPCR反応に使用した。これには、各Nexteraプライマー(N7およびS5)からの5μlと25μlのKAPA HiFi HotStart Ready Mix(KAPA Biosystems)も含まれている。
【0268】
PCR精製:
2回目のPCRの後、AMPure XPビーズ(Beckman Coulter Genomics)を使用してPCR産物を精製した。
【0269】
定量化、希釈、およびライブラリープールの調製:
精製産物は、Qubit 3.0蛍光光度計とdsDNA高感度アッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。PCR精製産物を1nMに希釈した。
【0270】
各希釈精製産物からの5μlを一緒にポーリングして、ポーリングされたライブラリー試料を作成した。
【0271】
NGS実行
DNAライブラリーは、iSeq100試薬キットを使用してiSeq100システム(Illumina)で配列決定された。
【0272】
45pMのポーリングされたライブラリー試料+20%のPhiXライブラリー(Illumina)をiSeq100フローセルに挿入した。
【0273】
配列読み取りの分析
各試料について、読み取りファイルは次のようにソフトウェアを使用して分析された。
【0274】
標的の割り当て:
各読み取りの最初の10文字で、標的の1つに完全に一致するものが検索された。そのような一致が見つかった場合、読み取りの標的スコアは1だけ増加した。
【0275】
検索アクションは、読み取りにおいて5文字をシフトし、次の10文字で、標的の1つに完全に一致するものを検索することによって繰り返された。そのような一致が見つかった場合、読み取りの標的スコアは1だけ増加した。このプロセスは、読み取りが終了するまで繰り返される。
【0276】
最高スコア(最小スコア=2を伴う)の標的が、読み取り用に選択された標的である。
【0277】
遺伝子座の決定:
遺伝子座の割り当て後、ソフトウェアは読み取りを調べ、標的に完全に一致する読み取り、または最大1つの点突然変異、または最大3つの連続するヌクレオチドの挿入/削除を検出する。これらの読み取りは、最大「1つの変異」のフォルダに移動する。この標的遺伝子座に割り当てられた他のすべての読み取りは、「2つ以上の変異」フォルダに移動する。
【0278】
変異分析:
この実験では、「最大1つの変異」ファイルの読み取りの1%以上にヌクレオチド置換が含まれている場合に、KRAS遺伝子座のヌクレオチド置換を「変異」と定義した。
【0279】
相対的コピー数の計算:
各試料中の各遺伝子座(「最大1つの変異」フォルダから)の相対コピー数は、次のように計算された:
相対コピー数=遺伝子座Xの読み取り数/対照遺伝子座の読み取り数。
【0280】
結果
NGSに基づくメチル化アッセイは、非がん患者とがん患者を区別することができる
8つの健康な対照血漿試料と9つのがん患者の血漿試料を、4つのがんメチル化マーカーを使用してメチル化について分析し、NGSに基づくアッセイでKRAS変異(G12、G13)について分析した。結果は
図5に要約されている。メチル化レベルは、各マーカーの相対コピー数(各試料中の各メチル化マーカーの読み取り数と試料中の対照遺伝子座の読み取り数の比率)で表される。
図5は、対照試料とがん試料の間の4つのマーカーの相対コピー数の有意差(メチル化レベルの有意差に対応)を示している。KRASの変異は、1つの膵臓癌試料(G12->R)で検出された。対照試料ではKRAS変異は検出されなかった。
【0281】
結果は、本明細書に記載のNGSに基づくアッセイが、変異分析と組み合わせて、がんの指標となるメチル化変化を検出するために使用できることを示している。
【0282】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することにより、過度の実験なしに、および一般的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態の様々な用途に容易に修正および/または適合でき、したがって、そのような適合および変更は、開示された実施形態の均等物の意味および範囲内で理解されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。開示された様々な化学構造および機能を実施するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態をとることができる。
【配列表】