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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】複数の浸漬ポンプを備える低温システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
A61B18/02
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088275
(22)【出願日】2023-05-30
(65)【公開番号】P2023177307
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】17/828,128
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521043951
【氏名又は名称】アイスキュア メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IceCure Medical Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロン ヒレリ
(72)【発明者】
【氏名】シャイ カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ナウム ムシュニク
(72)【発明者】
【氏名】ドリ ブルドナー
(72)【発明者】
【氏名】リオール ラスカー
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-500940(JP,A)
【文献】特開2021-126513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0126987(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0261671(US,A1)
【文献】特表2000-513963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0256642(US,A1)
【文献】特表2020-518305(JP,A)
【文献】米国特許第05860971(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0114344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
クライオゲンを収容するように構成された単一の断熱容器と、
第1ポンプ及び第2ポンプであって、両方が前記単一の断熱容器内に配置されており、前記クライオゲンに浸漬されている間、前記クライオゲンを前記単一の断熱容器からポンピングするように構成されている、第1ポンプ及び第2ポンプと、
第1近位端及び第1遠位端を有し、前記第1ポンプに結合されている第1プローブ及び、第2近位端及び第2遠位端を有し、前記第2ポンプに結合されている第2プローブであって、
前記第1近位端及び前記第2近位端は、前記第1ポンプによって前記第1プローブにポンピングされる前記クライオゲンと、前記第2ポンプによって前記第2プローブにポンピングされる前記クライオゲンと、を同時に受け取るように、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプにそれぞれ結合されており
前記第1遠位端は前記第1近位端を介して受け取られる前記クライオゲンによって、前記第2遠位端は前記第2近位端を介して受け取られる前記クライオゲンによって、それぞれ冷却されて、前記第1遠位端及び前記第2遠位端はそれぞれ生きた対象のボディに挿入されるように構成されている、第1プローブ及び第2プローブと、
を備えており
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、互いに物理的に独立しており、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプ及びそれらの関連するプローブは共通の要素を有しておらず、
前記第1ポンプによってポンピングされる前記クライオゲンは第1流量であり、
前記第2ポンプによってポンピングされる前記クライオゲンは第2流量であり、
前記第1及び第2流量は互いに独立している、
装置。
【請求項2】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、それぞれ、ベローズポンプ、プランジャポンプ、及びピストンポンプを含む群から選択される、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1遠位端は第1温度センサを備え、前記第2遠位端は第2温度センサを備え、
前記第1流量は、前記第1温度センサによって測定された第1温度に応答し、前記第2流量は、前記第2温度センサによって測定された第2温度に応答する、
請求項記載の装置。
【請求項4】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを動作させるように構成されたプロセッサを備える、
請求項記載の装置。
【請求項5】
クライオゲンを収容するように構成された単一の断熱容器を提供するステップと、
前記単一の断熱容器内に第1ポンプ及び第2ポンプを配置するステップと、
前記クライオゲンに浸漬されている間に前記単一の断熱容器から前記クライオゲンをポンピングするように前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを構成するステップと、
第1プローブを前記第1ポンプに結合し、第2プローブを記第2ポンプに結合するステップであって、前記第1プローブは第1近位端及び第1遠位端を有し前記第2プローブは第2近位端及び第2遠位端を有し前記第1近位端及び前記第2近位端は、前記第1ポンプによって前記第1プローブにポンピングされるクライオゲンと、前記第2ポンプによって前記第2プローブにポンピングされる前記クライオゲンと、を同時に受け取るように、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプにそれぞれ結合されており、前記第1近位端及び前記第2近位端を介して受け取られる前記クライオゲンによって冷却されて、生きた対象のボディに挿入されるように構成されたそれぞれの第1遠位端及び第2遠位端を有する、ステップと、
を含み、
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、互いに物理的に独立しており、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプ及びそれらの関連するプローブは共通の要素を有しておらず、
前記第1ポンプによってポンピングされる前記クライオゲンは第1流量であり、
前記第2ポンプによってポンピングされる前記クライオゲンは第2流量であり、
前記第1及び第2流量は互いに独立している、
方法。
【請求項6】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、それぞれ、ベローズポンプ、プランジャポンプ、及びピストンポンプを含む群から選択される、
請求項記載の方法。
【請求項7】
前記第1遠位端は第1温度センサを備え、前記第2遠位端は第2温度センサを備え、
前記第1流量は、前記第1温度センサによって測定された第1温度に応答し、前記第2流量は、前記第2温度センサによって測定された第2温度に応答する、
請求項記載の方法。
【請求項8】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを単一のプロセッサによって動作させるステップをさらに含む、
請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、低温システムに関し、特に、1つ以上のポンプを有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では多くの低温システムが知られている。いくつかのシステムの例を以下に説明する。
【0003】
Littrup他の米国特許第7,083,612号は、複数のクライオプローブを有する低温セラピーシステムを記載しており、各低温プローブは、体内への挿入に適合された閉鎖遠位端を有するシャフトを備える。
【0004】
Baust他の米国特許第7,192,426号は、プローブに冷却材(cryogen)を供給するための凍結手術システム(cryosurgical system)について記載している。このシステムは、冷却材で満たされた容器を含み、この容器は、冷却材内に浸漬されたポンプのベローズを有する。
【0005】
Mauriceの米国特許第7,422,583号及び米国特許第2004/0210212号は、冷却部分と、冷却部分の領域における導電性の第1部分とを有する低温プローブを含む冷凍手術装置を記載している。低温プローブはまた、取り外し可能なシースを有する。
【0006】
Robilotto他の米国特許第8,784,409号は、液体冷却材が供給及び戻りステージの両方に含まれる、閉又は半閉鎖システムであるデバイスを記載する。
【0007】
Mackeyの米国特許第9,316,215号は、流体タンクと、流体タンクに接続された多連ポンプ容器とを含む多連ポンプシステムを記載している。
【0008】
Baust他の米国特許第11,026,737号は、生体組織を含む対象を、過冷却された超臨界窒素と熱連通させることによって、物体を凍結温度又は低温に冷却することを記載している。
【0009】
Jankowsky他の米国特許第11,060,778号は、異なる制御機構を必要とする低温機器を単一の動作プラットフォーム上に統合するためのユニバーサルコントローラを記載している。ユニバーサルコントローラは、異なる電源要件を有する複数の低温装置を同時に駆動するように構成された電源要素を含むことができる。
【0010】
Perronの米国特許第11,266,458号は、弁入口及び弁出口を有する弁を備える外科的凍結切除システムを記載する。
弁入口は、4000psiを超える圧力の低温流体源に接続可能であり、弁出口は、低温アブレーションプローブに接続可能である。
【0011】
DeLonzor他の米国特許出願第2007/0244474号は、低圧液体チッ素供給を用いる冷凍手術システムを記載している。このシステムは、典型的な乳房病変の治療のための適切な冷却力を提供するために、0.5~15バールの圧力しか必要としないと述べられている。圧力は、デュワー内に軽く加圧された空気を供給することによって、デュワー内の窒素の小部分を加熱することによって、又は小さな低圧ポンプを用いて提供され得る。
【0012】
Vanselette他の米国特許出願第2008/0125764号は、低温アブレーション手順における処置の柔軟性を高め、シンプルにするために、個々の低温プローブの温度制御を提供する凍結手術システムについて記載する。凍結手術システムは、閉ループ冷却回路における複数のクライオプローブの個々の制御を提供する。個々の制御は、手順において複数のクライオプローブの同時使用を可能にする。
【0013】
Semenov他の米国特許出願第2015/0126987号は、低温導管を介して低温剤を有するリザーバに低温器具を接続し、低温導管を介してリザーバから低温器具に低温剤を供給することによって、低温剤を低温器具に供給する方法を記載している。
【0014】
Yu他の米国特許出願第2016/0249970号は、組織内に細長い長さ方向に連続した損傷を形成する血管内近臨界流体ベースの冷凍アブレーションカテーテルを記載している。カテーテルは、細長いシャフトと、可撓性遠位組織処置セクションと、遠位端とを備える。
【0015】
Baust他の米国特許出願第2020/0121498号は、過冷却された液体冷却材を、損傷した、罹患した、癌化した、又は他の不所望な組織の処置のために設計されたクライオプローブの種々の構成に送達するための低温医療デバイスを記載する。この装置は、液体冷却材が供給段及び戻りステージの両方に収容される閉鎖又は半閉鎖システムである。
【0016】
Tegg他の米国特許出願第2021/0177482号は、バルーン及び可動マニホールドを備えることができる医療デバイスを記載している。可動マニホールドは、複数の第1開口を備え、バルーンの内側にあり、バルーン内に流体を分配するように構成される。
【0017】
Hilleli他の米国特許出願第2021/0244457号は、管腔(a lumen)を含み、生きた対象(a living subject)の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブを記載している。温度センサは遠位端に配置されており、ポンプモータを有するポンプは管腔を通してプローブの遠位端に低温流体を送達し、プローブから戻る低温流体を受け取るように結合される。
【発明の概要】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、冷却材を収容するように構成された単一の断熱容器と、第1ポンプ及び第2ポンプであって、両方は単一の断熱容器内に配置されており、冷却材に浸漬されている間、冷却材を単一の断熱容器からポンピングするように構成されている、第1ポンプ及び第2ポンプと、第1プローブ及び第2プローブであって、第1ポンプ及び第2ポンプによってそれぞれポンピングされる冷却材を同時に受け取るように結合されたそれぞれの第1近位端及び第2近位端を有し、第1近位端及び第2近位端を介して受け取られる冷却材によって冷却されて、生きた対象のボディに挿入されるように構成されたそれぞれの第1遠位端及び第2遠位端を有する、第1プローブ及び第2プローブと、を備える装置を提供する。
【0019】
概して、第1ポンプ及び第2ポンプは、それぞれ、ベローズポンプ、プランジャポンプ、及びピストンポンプを含む群から選択される。
【0020】
開示された実施形態では、第1ポンプ及び第2ポンプは接続されていない。
【0021】
さらなる開示された実施形態では、第1ポンプによってポンピングされる冷却材は第1流量であり、第2ポンプによってポンピングされる冷却材は第2流量であり、第1及び第2流量は互いに独立している。
【0022】
概して、
第1遠位端は第1温度センサを備え、第2遠位端は第2温度センサを備え、第1流量は、第1温度センサによって測定された第1温度に応答し、第2流量は、第2温度センサによって測定された第2温度に応答する。
【0023】
さらに他の開示された実施形態では、装置は、第1ポンプ及び第2ポンプを動作させるように構成されたプロセッサを備える。
【0024】
本発明の一実施形態によれば:冷却材を収容するように構成された単一の断熱容器を提供するステップと、単一の断熱容器内に第1ポンプ及び第2ポンプを配置するステップと、冷却材に浸漬されている間に単一の断熱容器から冷却材をポンピングするようにポンプを構成するステップと、第1プローブ及び第2プローブをそれぞれ第1ポンプ及び前記第2ポンプに結合するステップであって、第1プローブ及び第2プローブは、第1ポンプ及び第2ポンプによってそれぞれポンピングされる冷却材を同時に受け取るように結合されたそれぞれの第1近位端及び第2近位端を有し、第1近位端及び第2近位端を介して受け取られる冷却材によって冷却されて、生きた対象のボディに挿入されるように構成されたそれぞれの第1遠位端及び第2遠位端を有する、ステップと、
を含む方法が提供される。
【0025】
本開示は、図面と併せて、以下のその実施形態の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態による、マルチプローブ低温手順に使用されている装置の概略図である。
図2A図2Aは、本発明の実施形態による、コンソールの構造及び動作を示す概略図である。
図2B図2Bは、本発明の実施形態による、コンソール内で動作する2つのピストンポンプの概略図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による、プロセッサがポンプの流量をどのように制御するかを示す概略ブロック図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による、図1の手順中にポンプを動作させるアルゴリズムを実行する際にプロセッサによって取られる動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
概要
患者の腫瘍を処置するための典型的な低温医療手順(cryogenic medical procedure)は、プローブの遠位端を腫瘍に挿入することを含む。プローブの近位端は、患者の外部の冷却材ポンプシステムに接続され、次いで、システムは、冷却材をプローブの遠位端の中にポンピングし、腫瘍を凍結させ、したがって死滅させる。単一プローブからの凍結は、腫瘍を包含するプローブ遠位端の周囲にほぼ球状のアイスボールを生成する。
【0028】
球状アイスボールによって包含されない腫瘍について、又はアイスボールが非腫瘍性組織(例えば、細長い腫瘍)を包含する場合、1つ以上のさらなるプローブを使用し、独立して操作することが必要であり得る。そのようなさらなるプローブは、アイスボールが腫瘍の形状に従って成形されることを可能にする。
【0029】
しかしながら、さらなるプローブの各々は、それぞれの外部冷却材ポンピングシステムを必要とし、医療手順中に複数の外部冷却材ポンピングシステムを提供することは、わずらわしく、費用がかかる。
【0030】
本発明の実施形態は、複数のポンプを備える単一のシステムを提供することによって複数のポンピングシステムの問題に対処し、ポンプの各々は、それぞれのプローブの近位端に接続されることができる。プローブの遠位端は、腫瘍内に独立して挿入され得、一旦挿入されると、遠位端は独立して冷却され得る。上記で参照する従来技術の冷却材ポンピングシステムとは対照的に、各ポンプシステムはそれ自身の断熱容器内に保持されるが、本発明の単一システムは唯一の断熱容器を使用する。1つの断熱容器、概してデュワーは、2つ以上の低温ポンプシステムを保持するように構成される。しかしながら、従来技術のシステムのように、本発明のポンプシステムの各々は、互いに独立して動作することができる。
【0031】
複数のポンプシステムに対してただ1つの断熱容器を有することは、システムからの冷却材の充填及び排出に費やされる必要がある時間を減少させる。加えて、別々の断熱容器内の複数のポンプシステムの場合、処置中に容器の1つが他の容器より先に空になる可能性があるという問題がある。これは、断熱容器が1つしかない場合には問題ではない。
【0032】
詳細な説明
以下の説明では、図面中の同様の要素は同様の符号によって識別され、必要に応じて符号に文字を付加することによって区別される。
【0033】
ここで図1を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による、マルチプローブ低温手順に使用されている装置20の概略図である。例として、以下の説明で想定される手順は、乳房腫瘍に対するものであるが、装置20は、前立腺腫瘍又は腎臓腫瘍などの他の手順に使用されることができ、そのような手順はすべて、本発明の範囲内に含まれると考えられることが理解されよう。
【0034】
手順は、患者(patient)28に対して医師(physician)24によって行われ、医師は、装置20に含まれるディスプレイ32上で手順の結果を観察することができる。医師は、キーパッド又はポインティングデバイス34を介して装置20の要素と相互作用することもできる。(概して、乳房腫瘍に対する手順は、患者28の乳房の超音波、CT(コンピュータ断層撮影)、又はMRI(磁気共鳴撮像)スキャンなどのスキャンを実行することと、スキャンの結果をディスプレイ32上に提示することとを含む。スキャンは通常、医師24以外の専門家によって実行される。スキャンの詳細は本開示に関連せず、簡単にするために専門家は図1に示されていない。)
【0035】
装置20は、以下でより詳細に説明するコンソール42を備え、装置は、装置の動作のためのソフトウェア44が記憶されているメモリ40に結合されたプロセッサ36によって制御される。プロセッサ36及びメモリ40は、概して、コンソール42にインストールされる。メモリ40内のソフトウェア44は、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされ得る。代替的又は付加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上に提供され得る。
【0036】
コンソール42は、外部ケーシング64内に、複数の実質的に同様の浸漬低温ポンプ(submerged cryogenic pumps)50を収容し、各々がコンソール内のそれぞれのコネクタ54によってそれぞれの低温プローブ58に結合可能である。本明細書では、コンソール42は、コネクタ54A、54B、54C、54Dにそれぞれ取り付けられた4つのポンプ50A、50B、50C、50Dを収容すると想定される。しかしながら、他の実施形態では、それぞれが少なくとも2つある限り、他の数のポンプ及びコネクタがあってもよいことが理解されよう。図1に示すように、医師24は、プローブ58と総称される3つのプローブ58A、58B、58Cをコネクタ54A、54B、54Cに結合すると仮定され、第4コネクタ54Dにはプローブが結合されず、したがってプラグ59が第4コネクタに挿入されて、その接続ポンプを大気から隔離する。
【0037】
各プローブ58は、近位端62及び遠位端66を有する。医師24は、それぞれのプローブの遠位端66A、66B、及び66Cを挿入し、マニピュレートして、概して上述の走査を使用して、それらが正確に位置決めされるようにする。次いで、医師は、概してデバイス34を使用して、ポンプ50A、50B、50Cを作動させ(activate)て、遠位端66A、66B、及び66Cへの低温流体の移送を開始して、遠位端に近接する組織を冷却することができる。低温流体は、最初は液体の形態でコンソール42内に貯蔵されるが、手順中に、流体は液体から液体/気体混合物に、又は完全な気体状態にさえ変化し得る。特に明記しない限り、本明細書では、低温流体は、一例として、液体窒素又は気体窒素を含むものとする。しかしながら、低温アルゴンなどの他の低温流体を装置20において使用することができ、このような低温流体の全てが本発明の範囲内に含まれるものと想定されることが理解されよう。
【0038】
ポンプ50は、当技術分野で知られている任意の種類の浸漬可能な低温ポンプ、典型的には、ベローズポンプ、プランジャポンプ、又はピストンポンプなどの往復ポンプを含むことができる。以下の説明では、コンソール42内のポンプ50は、例として、ピストンポンプであると仮定されるが、説明は、必要な変更を加えて、異なるポンプに対応するように変更されてもよい。
【0039】
上述した低温手順は、概して、2つのフェーズ:プローブ58の遠位端66の温度を、典型的には約-10℃から約-30℃の間の初期温度まで低下させる第1フェーズと、遠位端温度を初期温度よりも低い後続温度までさらに低下させる第2フェーズとで行われる。一実施形態では、後続温度は約-160±10℃である。以下でさらに説明するように、各ポンプ50は、各ポンプが手順中の任意の時点で2つの段階のうちの1つにあり得るように、独立して動作し得る。
【0040】
図2Aは、コンソール42の構造及び動作を示す概略図であり、図2Bは、本発明の実施形態による、コンソール内で動作する2つのピストンポンプの概略図である。明確にするために、図2Aでは、ポンプ50は、最小限の詳細を有する長方形として示されており、ポンプ50の詳細は、図2Bのポンプ50A、50Bの図面に示されている。
【0041】
図2Aでは、コンソール42のケーシング64が長方形として概略的に示されている。図示されるように、ポンプ50A、50B、50C、50Dは、単一の断熱容器70、典型的には2つの壁の間に真空を有する二重壁デュワー内に配置される、すなわち取り付けられる。容器70は、容器の下部領域80内に液体冷却材74を保持し、ポンプは、冷却材に浸漬されるように取り付けられる。各ポンプは、ポンプ支持体78に固定されたそれぞれのモータ68A、68B、68C、68Dによって駆動される。ポンプ支持体78はデュワーカバー82に搭載されており、以下に説明する場合を除いて、容器70は雰囲気から効果的にシールされている。密封により、容器内の冷却材を大気圧より高い圧力に、一実施形態では大気圧より約0.5気圧高い圧力に維持することが可能になる。冷却材を大気圧より高く維持することは、ポンプ50が動作するときに液体冷却材が蒸発することを防止する。
【0042】
ポンプ50は、流出管腔94によってそれぞれのコネクタ54に結合され、流出管腔94は、低温流体をポンプからコネクタに移送する。流体は、その後、プローブ58内の対応する管腔98及び遠位端66に移動する。低温流体は、プローブ58の流入管腔102、コネクタ54、及びコンソール42の管腔106を介して、遠位端66から容器70に戻る。管腔106は、概して、液体/気体セパレータ118で終端する。管腔は、概して、同心円筒又は管から形成されるが、簡略化のために、図2Aでは、管腔は、線として示される。各遠位端66は温度センサ110を有し、流出管腔も圧力センサ114を有する。センサ110によって測定されたそれぞれの温度、及びセンサ114によって測定された圧力は、プロセッサ36に提供される。明確にするために、センサ110A及び114Aからプロセッサ36への接続のみが図2Aに示されている。
【0043】
ポンプ50A、50Bについて図2Bに示すように、各ポンプ50はピストン72を備え、ピストン72は、モータ68によって作動されると、領域80から逆止弁76を介して流出ルーメン94に低温流体を排出する。
【0044】
ケーシング64は、管126に結合され、管と共に、容器70に冷却材を充填するため、又は容器から冷却材を除去するために使用されるコネクタ122を備える。液体冷却材74は気化して、容器70の上部領域84において気体冷却材130を形成し、気体冷却材は、プロセッサ36によって制御され得る弁コンプレッサアセンブリ134によって除去され得るか、又は調整された圧力で保持され得る。アセンブリ134は、チューブ138によって気体冷却材130に接続される。
【0045】
アセンブリ134は、概して、気体冷却材130の圧力が予め設定された安全限界を超えた場合に、大気に開放するリリーフ弁を備える。アセンブリは、容器から気体冷却材130を除去してその圧力を低下させることにより、コネクタ122を介して容器70を冷却材で充填するのを助けるために使用され得る。このアセンブリはまた、気体冷却材130の圧力を高めることによって、コネクタ122を介して容器70から液体冷却材を除去するのを助けるために使用されてもよい
【0046】
プロセッサ36は、温度センサ110及び圧力センサ114から信号を受信し、これらの信号に応答して、プロセッサは、それぞれのポンプ50からの冷却材の流量を決定するように、モータ68のためのそれぞれの制御信号を生成する。 プロセッサは、他のポンプとは独立して各ポンプの流量を決定する、すなわち、ポンプ50Aの流量はセンサ110A及び114Aからの信号によって決定され、ポンプ50Bの流量はセンサ110B及び114Bからの信号によって決定され、ポンプ50Cの流量はセンサ110C及び114Cからの信号によって決定され、(ポンプがプローブに接続されている場合)ポンプ50Dの流量はセンサ110D及び114Dからの信号によって決定されることが理解されるであろう。
【0047】
容器70内のポンプは互いに物理的に独立しており、すなわち、ポンプ及びそれらの関連するプローブは共通の要素を有していないことが理解されるであろう。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態による、プロセッサ36がポンプ50Aの流量をどのように制御するかを示す概略ブロック図である。この図は、ポンプ50Aに関連付けられた要素がどのように互いに接続されるかを示し、要素間での、低温流体の流れ及び信号データの転送を示す。以下の説明はポンプ50Aに適用されるが、必要な変更を加えて、実質的に同じ説明が容器70内の他のポンプに適用されることが理解されるであろう。
【0049】
プロセッサ36は、ポンプモータ制御信号をモータ68Aに提供することによってポンプ50Aの動作を制御する。作動時に、モータはポンプ50Aを作動させて、低温流体が、モータの回転速度に依存する流量で容器70から排出されるようにする。
概して、排出される低温流体の流量は、モータの回転速度に正比例し、したがって、大きい回転速度は大きい流量に対応し、小さい回転速度は小さい流量に対応する。流量は、本明細書では送達レート(rate of delivery)とも称される。
【0050】
プロセッサ36は、圧力センサ114A及び温度センサ110Aからの信号を使用して、プロセッサがポンプモータ68Aを制御する出力信号を生成することを可能にする、図4に関して以下で説明されるアルゴリズムを動作させる。ポンプモータに転送される出力信号は、モータの回転速度(revolution rate)を制御し、したがって容器70から排出される低温流体の流量を制御する。
【0051】
排出された低温流体は、逆止弁76A、流出管腔94A、プローブ58Aの管腔98Aを介して、プローブの遠位端66Aに流れる。低温流体は、遠位端66Aから、概して液体/気体混合物として、管腔102A、106A、及びセパレータ118Aを介して容器70に戻る。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態による、図1の手順の第1フェーズ中にポンプ50Aを動作させるアルゴリズムを実行する際にプロセッサ36によって取られる動作のフローチャートである。上述したように、プロセッサ36は、任意の所与のポンプ50を、他のポンプ50とは独立に、かつ同時に動作させる。したがって、プロセッサ36は、必要な変更を加えて、図4のフローチャートに従って任意の他のポンプ50を動作させ得る。代替的に又は付加的に、プロセッサ36は、遠位端の低温冷却のための当技術分野で知られている任意の方法によって、ポンプ50のいずれかを動作させて、それぞれのポンプ遠位端に冷却材を供給することができる。さらに代替的又は追加的に、ポンプのいくつかは作動されなくてもよく、すなわち、これらの非作動ポンプからの流れがない。そのような非作動ポンプは、ポンプのそれぞれのプローブが生きた対象(living subject)に挿入されているとき、又は挿入されていないときに存在し得る。
【0053】
フローチャートの説明において、プロセッサ36は、式(1)によって与えられる出力を有するPID(比例-積分-微分)コントローラを含むと仮定する:
【数1】
u(t)は、時間tにおいてプロセッサによって出力された制御信号であり、K、t、tはそれぞれ比例項、積分項、微分項の係数である。
【0054】
当業者は、過度の実験(undue experimentation)を行うことなく、必要な変更を加えて、PIDコントローラ以外のプロセッサにフローチャートの記述を適合させることが可能である。
【0055】
第1ステップ250において、ここでは上述したように、PIDコントローラを含むと仮定されるプロセッサ36のパラメータが、プロセッサに入力される。以下の説明では、PIDコントローラは、K=0.1、t=0.05、及びt=0の係数値を有すると仮定される。すなわち、プロセッサ36はPIコントローラとして動作し、当業者であれば、過度の実験なしで、この説明をK、t、tの他の値に適応させることができるであろう。
【0056】
ステップ250において、プロセッサ36は、遠位端66Aが冷却される公称温度である目標温度Tを提供される。温度Tは、概して-10℃から-50℃の範囲であるが、いくつかの実施形態では、Tはこの範囲外である。プロセッサ36にはまた、Tよりも低い温度である保護温度(guard temperature)Tが提供され、この保護温度Tは、遠位端に対する公称温度限界(nominal temperature limit)として作用する。一実施形態では、T=-20℃である場合、T=-23℃である。
【0057】
プロセッサはまた、プロセッサがポンプモータ68Aに適用する最小スピードに対応する最小流量Mを設定する。一実施形態では、最小モータ速度は224rpmに設定される。
【0058】
初期ステップ250において、プロセッサは、ポンプモータに適用されるべき最大速度に対応する最大流量Mを計算するためにプロセッサが使用する関数f(P)も提供され、すなわち
=f(P) (2)
ここで、fは、圧力センサ114Aによって測定された圧力Pの関数である。
【0059】
本発明の一実施形態では、f(P)は、Pが増加すると最大流量Mが低下し、Pが減少するとMが増加するように構成される。実施形態では、両方の導関数dM/dP及びdP/dtは負である。
【0060】
開示された実施形態では、式(2)は式(3)のように設定される:
=K・(1-P/Parb) (3)
ここで、Parbは、装置20によって使用されている低温流体の臨界圧力よりも大きくなるように設定された固定値を有するパラメトリック圧力である。Kは、式(3)の右辺の式をMの単位に変換するための比例定数である。
【0061】
式(3)から、式の一次導関数に対応する勾配(dM)/dPは式(3a)によって得られる:
dM/dP=-K/Parb (3a)
【0062】
手順初期化ステップ254において、医師24は、プローブ58Aを患者28に挿入し、ポンプ50Aを作動させて、低温流体をプローブに注入する。
【0063】
第1決定ステップ258において、プロセッサは、以下の式を評価することによって、センサ110Aによって測定された温度Tを保護温度Tと比較する。
T<T (4)
【0064】
式(4)が正を返す場合、すなわち、温度Tが保護温度T未満である場合、プロセッサは、第1流量設定ステップ262に進み、プロセッサは、流量を最小流量Mに設定する。次に、制御は決定ステップ258に戻る。
【0065】
式(4)が負を返す場合、すなわち、温度Tが保護温度以上である場合、制御は第2決定ステップ266に続く。ステップ266において、プロセッサは、以下の式を評価することによって温度Tを目標温度Ttと比較する。
T<Tt (5)
【0066】
ステップ266が正を返す場合、すなわち、温度Tが目標温度T未満である場合、流量減少ステップ268において、プロセッサは、減少した目標流量Mを計算する。
【0067】
ステップ266が負を返す場合、すなわち、温度Tが目標温度T以上である場合、流量増加ステップ270において、プロセッサは、増加した目標流量Mを計算する。
【0068】
ステップ268及び270において、プロセッサは、式(1)に従ってu(t)を評価し、式(6)に従って目標流量Mを決定する:
=K・u(t) (6)
ここで、Kはu(t)を流量の単位に変換するために使用される比例定数である。
【0069】
ステップ268及び270からの制御は、最大流量ステップ272に続く。
【0070】
ステップ272において、プロセッサは、圧力センサ114Aによって提供される圧力Pの値にアクセスし、その値を使用して、式(2)に従って最大流量Mを計算する。
【0071】
第3決定ステップ274において、プロセッサは、以下の式を評価することによって、目標流量と最大流量とを比較する。
<M (7)
【0072】
式(7)が正を返す場合、すなわち、目標流量Mが最大流量M未満である場合、プロセッサは、第2流量設定ステップ278に進み、プロセッサは、流量を目標流量に設定する。
【0073】
式(7)が負を返す場合、すなわち、流量Mが最大流量M以上である場合、プロセッサは第3流量設定ステップ282に進み、プロセッサは流量を最大流量に設定する。
【0074】
図4のフローチャートは、流量ステップ262、278、及び282から決定ステップ258に戻る制御によって繰り返される。
【0075】
図4のフローチャートの説明は、ポンプ50Aについてのものであり、したがって、ステップ250で定義されたパラメータ、ならびにステップで定義された温度、流量、及び関数f(P)は、このポンプを動作させるために適用される。上述したように、この説明は、必要な変更を加えて、容器70内の他のポンプを動作させるために適用することができ、ポンプは互いに独立して動作するので、ステップ250で定義されたパラメータ、温度、流量、及び関数f(P)のうちの1つ以上は、ポンプごとに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0076】
例えば、ポンプ50AのTは-20℃に設定されてもよく、ポンプ50BのTも-20℃に設定されてもよく、ポンプ50CのTは-25℃に設定されてもよい
【0077】
上述したように、プロセッサ36は、容器70内の全てのポンプを動作させるように構成されており、プロセッサがPIDプロセッサである場合、K、t、tの値は概して同じである。しかしながら、これは必須ではなく、値K、t、tの少なくとも1つが他のポンプの値と異なる場合もあり得る。
【0078】

上述したように、図4のフローチャートは、低温手順の第1フェーズに関するものであり、これは、任意の所与のポンプ50に適用される。第1フェーズが完了すると、手順の第2フェーズを開始することができる。ポンプ50は独立して動作されるので、手順中の任意の所与の時間において、任意の所与のポンプ50が、手順の第1フェーズ又は第2フェーズにあり得ることが理解されるであろう。
【0079】
上記の説明は、プロセッサ36が概して単一のプロセッサであると仮定しているが、各ポンプがそれ自身のプロセッサを有してもよく、当業者は、必要な変更を加えて、複数のプロセッサに対して説明を適合させることができることが理解されるであろう。
【0080】
上述の実施形態は、例として引用されたものであり、本発明は、上で特に示され説明されたものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記で説明した様々な特徴の組合せ及び部分的組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起され、先行技術に開示されていないそれらの変形形態及び修正形態を含む。
図1
図2A
図2B
図3
図4