(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】量子鍵配送のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04L 9/12 20060101AFI20250106BHJP
G02B 6/036 20060101ALN20250106BHJP
【FI】
H04L9/12
G02B6/036
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023104711
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-11-16
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】キルサーノフ・ニキータ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロヴィコフ・ミハイル
【審査官】金沢 史明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0399810(US,A1)
【文献】特開2003-14968(JP,A)
【文献】特表2014-506433(JP,A)
【文献】特開2022-61486(JP,A)
【文献】KODUKHOV, A. D. et al.,Boosting quantum key distribution via the end-to-end physical control,arXiv [online],2109.05575v1,pp. 1-14,[2024年11月22日検索], インターネット<URL: https://arxiv.org/abs/2109.05575v1>, <DOI: 10.48550/arXiv.2109.05575>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/08, 9/12
H04B 10/70,10/80
G02B 6/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子鍵配送のためのシステムであって、
第1データ処理装置(10)と、
第2データ処理装置(11)と、
前記第1データ処理装置(10)と前記第2データ処理装置(11)との間の伝送線路(12)とを備え、
前記伝送線路(12)は、
内部光ファイバ(20)と、
前記内部光ファイバ(20)を取り囲むシールド層(21)と、
前記シールド層(21)を取り囲む外部光ファイバ(22)とを含み、
前記第1データ処理装置(10)及び前記第2データ処理装置(11)は、前記内部光ファイバ(20)に沿った量子信号を介した量子鍵配送によって共有鍵を決定し、
前記システムは、前記外部光ファイバ(22)に沿った外部信号損失を決定する
システム。
【請求項2】
前記内部光ファイバ(20)、前記シールド層(21)、及び前記外部光ファイバ(22)は、同心円状に配置されている
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シールド層(21)は、前記内部光ファイバ(20)内の信号を横方向に遮蔽する
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記シールド層(21)は、金属からなるか、又は、濃度が10
15cm
-3~10
18cm
-3のシールド層ドーパント材料を含む
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記内部光ファイバ(20)及び/又は前記外部光ファイバ(22)は、濃度が10
12cm
-3~10
14cm
-3の光ファイバ・ドーパント材料を含む
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、前記伝送線路(12)内の位置に応じて前記外部信号損失を決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記内部光ファイバ(20)に沿った内部信号損失を決定し、好ましくは、前記内部損失に基づいて前記侵入イベントをさらに決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、前記外部信号損失を繰り返し決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記共有鍵の決定中に前記外部信号損失を決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、前記外部光ファイバ(22)に沿った初期外部信号損失を決定し、且つ/又は前記内部光ファイバ(20)に沿った初期内部信号損失を決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1データ処理装置(10)及び/又は前記第2データ処理装置(11)は、
前記伝送線路(12)を介して複数の試験信号を送信し、
前記複数の試験信号の後方散乱試験信号成分から前記外部信号損失を決定する
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、さらに、前記複数の試験パルスの送信成分から前記外部信号損失を決定する
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、前記外部信号損失に基づいて侵入イベントを決定し、且つ/又は、前記外部信号損失に基づいて前記共有鍵の決定を中止する
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記伝送線路(12)は、前記外部光ファイバ(22)を取り囲む第2シールド層と、前記第2シールド層を取り囲む第2外部光ファイバとを含む
請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
システムにおいて実施可能な、量子鍵配送のための方法であって、
前記システムは、
第1データ処理装置(10)と、
第2データ処理装置(11)と、
前記第1データ処理装置(10)と前記第2データ処理装置(11)との間の伝送線路(12)とを備え、
前記伝送線路(12)は、
内部光ファイバ(20)と、
前記内部光ファイバ(20)を取り囲むシールド層(21)と、
前記シールド層(21)を取り囲む外部光ファイバ(22)とを含み、
前記方法は、
前記内部光ファイバ(20)に沿った量子信号を介した量子鍵配送によって、前記第1データ処理装置(10)と前記第2データ処理装置(11)との間の共有鍵を決定するステップと、
前記外部光ファイバ(22)に沿った外部信号損失を決定するステップとを含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子鍵配送のためのシステムに関する。さらに、量子鍵配送のための方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
量子鍵配送(QKD)によって共有鍵を確立するための量子情報チャネルとして光ファイバを利用する場合、一般に、現われ得る2種類の損失、すなわち、自然信号損失と、局所的(場合によっては人為的)漏洩とがある。前者は、不純物での光散乱及び光ファイバの密度のばらつきにより生じ、光ファイバ全体にわたって均質に広がり、一方、後者は、盗聴者によって、故意に局所的にもたらされ得る。
【0003】
一般に、主に2つの理由により、盗聴者が自然信号損失を利用することは難しいであろう。第一に、そのような損失の傍受には、光ファイバ線のかなりの部分を覆う大きいアンテナが一般に必要と考えられ、これは、気付かれずに設けるのは困難であり、現在入手可能な測定装置では、光ファイバ線のせいぜい約1センチメートルしか覆わないであろう。第二に、散乱により、送信波パッケージの位相及び形状などのパラメータが根本的に変化する。したがって、散乱信号を解読するためには、盗聴者は、傍受された光子の状態を変換する必要があると考えられ、その変換は、実行する難しさに関して、マクスウェルの悪魔の演算に匹敵するものとして見なされ得る。
【0004】
それでもなお、盗聴者が、標準光ファイバからの自然信号損失を傍受及び解読し得るリスクは残る。
【0005】
特許文献1は、同心円状に配置されたコアを備える光ファイバであって、当該コアは、光をトラップし、且つコア間の漏話を防ぐためのクラッド層によって分離されている光ファイバに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、特に、光ファイバを介して送信された信号を上手く傍受するリスクを低減するために、量子鍵配送を介してセキュアにデータを送信するための改善された技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その課題を解決するために、独立請求項に記載の量子鍵配送のためのシステム及び方法が提供される。さらなる実施の形態が従属請求項に開示される。
【0009】
一態様によれば、第1データ処理装置と、第2データ処理装置と、第1データ処理装置と第2データ処理装置との間の伝送線路とを備える、量子鍵配送のためのシステムが提供される。伝送線路は、内部光ファイバと、内部光ファイバを取り囲むシールド層と、シールド層を取り囲む外部光ファイバとを含む。第1データ処理装置及び第2データ処理装置は、内部光ファイバに沿った量子信号を介した量子鍵配送によって共有鍵を決定する。本システムは、外部光ファイバに沿った外部信号損失を決定する。
【0010】
別の態様によれば、量子鍵配送のための方法が提供される。本方法は、第1データ処理装置と、第2データ処理装置と、第1データ処理装置と第2データ処理装置との間の伝送線路とを備えるシステムであって、伝送線路は、内部光ファイバと、内部光ファイバを取り囲むシールド層と、シールド層を取り囲む外部光ファイバとを含むシステムにおいて、実施可能である。本方法は、内部光ファイバに沿った量子信号を介した量子鍵配送によって、第1データ処理装置と第2データ処理装置との間の共有鍵を決定するステップと、外部光ファイバに沿った外部信号損失を決定するステップとを含む。
【0011】
クレームに記載のシステム及び方法は、外部光ファイバ又は内部光ファイバに加えられたずれ及び/又は損傷を決定するステップを可能にしてもよい。通常の光ファイバとは対照的に、伝送線路の特定の設計により、散乱損失が検出されずに傍受される可能性が大幅に低下し得る。一般に、いかなる局所的侵入も、盗聴者には、ごくわずかな数の散乱光子しか与えない可能性がある。十分な量の散乱損失を傍受するためには、盗聴者は、制御された外部光ファイバの大部分を突破する必要があるだろう。そのような突破が有効に実行され得るであろう前に、(例えば、正規ユーザに対応する第1データ処理装置及び第2データ処理装置によって)プロトコルを終了してもよい。外部光ファイバに沿った外部信号損失を決定するステップによって、セキュリティのさらなる層が設けられてもよい。したがって、クレームに記載のシステムは、チャネル突破イベント/侵入イベントが検出されるとすぐに鍵交換を直ちに終了する必要なく、かなりの信号漏洩率にも耐え得る。
【0012】
本開示において、ファイバを取り囲む層とは、(径方向/横方向に沿った)ファイバの外側面を取り囲む層の内側面として理解されるべきである。それに対応して、層を取り囲むファイバは、層の外側面を取り囲むファイバの内側面として理解されるべきである。取り囲むとは、側面の全周囲に沿って取り囲むことを含んでもよい。
【0013】
内部光ファイバは、シールド層と物理的に接触してもよい。シールド層は、内部光ファイバ及び/又は外部光ファイバと物理的に接触してもよい。外部光ファイバは、外部ジャケットと物理的に接触してもよい。特に、内部光ファイバの外側面は、好ましくは全周囲に沿って、シールド層の内側面と物理的に接触してもよい。シールド層の外側面は、好ましくは全周囲に沿って、外部光ファイバの内側面と物理的に接触してもよい。外部光ファイバの外側面は、好ましくは全周囲に沿って、外部ジャケットの内側面と物理的に接触してもよい。
【0014】
内部光ファイバは、内部ファイバコアと、好ましくは内部クラッド層とを含んでもよい。内部ファイバコアと内部クラッド層とは、物理的に接触してもよい。外部光ファイバは、外部ファイバコアと、好ましくは2つの外部クラッド層とを含んでもよい。外部ファイバコアは、外部クラッド層と物理的に接触してもよい。外部光ファイバは、第1外部クラッド層を取り囲んでもよい。外部光ファイバは、第2外部クラッド層が取り囲んでもよい。
【0015】
クラッド層は各々、ファイバコアの各ファイバコア材料より屈折率が低いクラッド層材料を含んでもよい。ファイバコア材料及び/又はクラッド層材料は、例えば、シリカであってもよい。
【0016】
量子鍵配送は、外部光ファイバを介して実行されないことが規定されてもよい。言い換えれば、共有鍵は、内部光ファイバを介してのみ決定されることが規定されてもよい。この場合、外部光ファイバは、(外部)信号損失及び/又は侵入イベントを決定する働きしかしなくてもよい。
【0017】
伝送線路は、光増幅器、好ましくはエルビウム・ドープ・ファイバ増幅器又はラマン増幅器を含んでもよい。伝送線路は、複数の光増幅器を含んでもよい。隣接する2つの増幅器間の増幅器距離は、30km~200km、好ましくは30km~60kmであることが規定されてもよい。複数の光増幅器は、伝送線路に沿って等間隔に配置されてもよい。
【0018】
本システムがステップを実行する/量を決定する場合、第1データ処理装置、第2データ処理装置、及び第3データ処理装置のうちの少なくとも1つにおいて、そのようなステップが実行され/そのような量が決定されてもよい。
【0019】
内部光ファイバ及び外部光ファイバは、同心円状に配置されてもよい。内部光ファイバ、シールド層、及び外部光ファイバは、同心円状に配置されることが好ましい。特に、内部ファイバコア、内部クラッド層、シールド層、第1外部クラッド層、外部ファイバコア、第2外部クラッド層、及び外部ジャケットのうちの少なくとも2つ、好ましくは各々は、同心円状に配置されてもよい。
【0020】
シールド層は、内部光ファイバ内の信号を横方向に遮蔽してもよい。言い換えれば、シールド層は、内部光ファイバに沿った信号が横方向に逃げないようにしてもよい。
【0021】
特に、シールド層は、金属からなってもよい。金属は、例えば、銅、アルミニウム、銅、金、ニッケル、銀、青銅、及びニクロムのうちの1つであってもよい。
【0022】
一般に、シールド層は、導電性材料を含むか、又は導電性材料からなってもよい。
【0023】
あるいは、シールド層は、石英からなってもよく、且つ/又は、濃度が1015cm-3~1018cm-3、又は0.75ppm~75ppmのシールド層ドーパント材料を含んでもよい。シールド層ドーパント材料は、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、及びツリウム(Tm)のうちの1つであってもよい。シールド層ドーパント材料濃度は、伝送線路の長さ及び/又はシールド層の周囲に沿って略一定であってもよい。シールド層ドーパント材料濃度は、また、伝送線路の長さ及び/又はシールド層の周囲に沿って変化してもよい。
【0024】
シールド層は、外部光ファイバ厚さの10%~300%、好ましくは25%~200%、より好ましくは50%~100%のシールド層厚さを有してもよい。内部ファイバコア厚さ及び/又は外部ファイバコア厚さは、5μm~10μmであってもよい。内部クラッド厚さ及び/又は外部クラッド厚さは、100μm~250μmであってもよい。シールド層厚さは、伝送線路の長さ及び/又はシールド層の周囲に沿って略一定であってもよい。
【0025】
内部光ファイバ及び/又は外部光ファイバは、濃度が1012cm-3~1014cm-3の光ファイバ・ドーパント材料を含んでもよい。内部光ファイバ(特に、内部ファイバコア)は、濃度が1012cm-3~1014cm-3の内部光ファイバ・ドーパント材料を含んでもよい。さらに、外部光ファイバ(特に、外部ファイバコア)は、濃度が1012cm-3~1014cm-3の外部光ファイバ・ドーパント材料を含んでもよい。内部光ファイバ・ドーパント材料及び外部光ファイバ・ドーパント材料は、異なってもよい。
【0026】
(内部及び/又は外部)光ファイバ・ドーパント材料は、Al、P、N、及びGeのうちの1つであってもよい。(内部及び/又は外部)光ファイバ・ドーパント材料濃度は、伝送線路の長さ及び/又は(内部/外部)光ファイバの周囲に沿って略一定であってもよい。(内部及び/又は外部)光ファイバ・ドーパント材料濃度は、また、伝送線路の長さ及び/又は(内部/外部)光ファイバの周囲に沿って変化してもよい。
【0027】
内部光ファイバ及び/又は外部光ファイバは、また、光ファイバ・ドーパント材料を含まなくてもよい。
【0028】
本システムは、伝送線路内の位置に応じて外部信号損失を決定してもよい。言い換えれば、外部信号損失は、伝送線路に沿った位置の関数として決定されてもよい。特に、伝送線路に沿った位置ごとに、対応する外部信号損失が決定されてもよい。したがって、外部信号損失は、(外部)信号損失プロファイルに対応してもよい。
【0029】
本システムは、内部光ファイバに沿った内部信号損失を決定し、好ましくは、内部損失に基づいて侵入イベントをさらに決定してもよい。内部信号損失は、伝送線路内の位置に応じて決定されてもよい。
【0030】
内部信号損失及び/又は外部信号損失は、第1データ処理装置、第2データ処理装置、及び第3データ処理装置のうちの少なくとも1つによって決定されてもよい。
【0031】
本システムは、外部信号損失及び/又は内部信号損失を繰り返し決定してもよい。例えば、外部信号損失及び/又は内部信号損失は、1ms~50s、好ましくは20ms~10s、特に、10ms~100ms、50ms~500ms、100ms~1000ms、0.5s~5s、及び5s~10sのうちの1つの時間間隔で繰り返し決定されてもよい。時間間隔は、伝送線路の長さに依存してもよい。時間間隔は、伝送線路の長さと共に増加してもよい。
【0032】
本システムは、共有鍵の決定中に外部信号損失及び/又は内部信号損失を決定してもよい。外部信号損失及び/又は内部信号損失は、特に、共有鍵を決定するための鍵信号パルスの送信中に/送信と一時的に関連して決定されてもよい。
【0033】
外部信号損失及び/又は内部信号損失は、さらに、共有鍵の決定後に決定されてもよい。
【0034】
本システムは、外部光ファイバに沿った初期外部信号損失を決定し、且つ/又は内部光ファイバに沿った初期内部信号損失を決定してもよい。
【0035】
初期外部信号損失及び/又は初期内部信号損失は、共有鍵の決定前に、特に共有鍵を決定するための鍵信号パルスを送信する前に決定されてもよい。
【0036】
第1データ処理装置及び/又は第2データ処理装置は、伝送線路、好ましくは内部光ファイバ及び/又は外部光ファイバを介して複数の試験信号を送信し、複数の試験信号の後方散乱試験信号成分から外部信号損失及び/又は内部信号損失を決定してもよい。
【0037】
特に、第1データ処理装置及び/又は第2データ処理装置は、内部光ファイバを介して複数の内部試験信号を送信し、複数の内部試験信号の後方散乱内部試験信号成分から内部信号損失を決定してもよい。さらに、第1データ処理装置及び/又は第2データ処理装置は、外部光ファイバを介して複数の外部試験信号を送信し、複数の外部試験信号の後方散乱外部試験信号成分から外部信号損失を決定してもよい。
【0038】
(内部及び/又は外部)試験信号は、例えば、試験パルス、特にコヒーレント光パルスであってもよい。試験パルスの平均試験パルス強度は、鍵信号パルスの平均鍵信号パルス強度より、例えば103~1010倍、好ましくは105~108倍大きくてもよい。鍵信号パルスの各々は、102~105の光子を含んでもよい。試験パルスの各々は、108~1012の光子を含んでもよい。
【0039】
第1データ処理装置及び/又は第2データ処理装置は、後方散乱試験信号成分、特に後方散乱内部試験信号成分及び/又は後方散乱外部試験信号成分を受信してもよい。
【0040】
外部試験パルスは、鍵信号パルスの送信前、送信中、及び/又は送信後に送信されてもよい。内部試験パルスは、鍵信号パルスの送信前、送信と交互に、及び/又は送信後に送信されてもよい。
【0041】
内部信号損失及び/又は外部信号損失は、光時間領域リフレクトメトリによって決定されてもよい。外部信号損失は、(外部光ファイバ)リフレクトグラムを含んでもよい。内部信号損失は、内部光ファイバ・リフレクトグラムを含んでもよい。
【0042】
後方散乱試験パルス成分から内部/外部信号損失を決定することに加えて、又はその代替として、本システムは、また、複数の試験パルスの送信成分から外部信号損失及び/また内部信号損失を決定してもよい。
【0043】
特に、本システムは、複数の試験パルスの送信外部試験信号成分から外部信号損失を決定してもよい。本システムは、また、複数の試験パルスの送信内部試験信号成分から内部信号損失を決定してもよい。
【0044】
内部信号損失及び/又は外部信号損失は、トランスミットメトリによって、すなわち、送信された信号パルス及び/又は試験パルスから内部/外部信号損失を決定することによって決定されてもよい。特に、内部信号損失及び/又は外部信号損失は、入力強度を、伝送線路全体を通って送信された試験パルスの出力強度と比較することによって決定されてもよい。
【0045】
本システムは、外部信号損失に基づいて侵入イベントを決定し、且つ/又は、外部信号損失に基づいて共有鍵の決定を中止(終了)してもよい。追加として、又は代替として、本システムは、内部信号損失に基づいて侵入イベントを決定し、且つ/又は内部信号損失に基づいて共有鍵の決定を中止してもよい。
【0046】
本システムは、内部信号損失及び/又は外部信号損失に基づいて、共有鍵を破棄してもよい。
【0047】
侵入イベントを決定するステップは、さらに、(伝送線路位置に応じた)信号損失タイプによって、(伝送線路位置に応じた)内部信号損失及び/又は外部信号損失を分類するステップを含んでもよい。信号損失タイプは、パワーの指数関数的な減衰の偏差、低品質スプライス、物理コネクタ、角度がついた物理コネクタ、及びファイバ曲げのうちの少なくとも1つであってもよい。分類するステップは、例えば、機械学習法、例えば人工ニューラルネットワークを介して実行されてもよい。分類するステップは、第1データ処理装置、第2データ処理装置、及び第3データ処理装置のうちの少なくとも1つにおいて実行されてもよい。内部信号損失及び/又は外部信号損失は、リフレクトグラム特徴部及び/又はトランスミットメトリからのトランスミットグラム特徴部に対応してもよい。
【0048】
侵入イベントを決定するステップは、さらに、伝送線路に沿った信号損失タイプの長さを示す信号損失タイプ長を決定するステップを含んでもよい。侵入イベントを決定するステップは、信号損失タイプ、好ましくは、信号損失タイプ長が閾値を上回ることに基づいてもよい。閾値は、例えば、1m~10km、好ましくは100m~2km、より好ましくは0.5km~1.5kmであってもよい。
【0049】
したがって、侵入イベントを決定するステップは、信号損失タイプ及び/又は信号損失タイプ長に基づいてもよい。
【0050】
侵入イベントを決定するステップは、さらに、初期信号損失タイプ、好ましくは、伝送線路に沿った初期信号損失タイプの長さを示す初期信号損失タイプ長を決定するステップを含んでもよい。侵入イベントを決定するステップは、さらに、伝送線路位置/領域における信号損失タイプと初期信号損失タイプとの(及び/又は、信号損失タイプ長と初期信号損失タイプ長との)決定された差異に基づいてもよい。
【0051】
本システムは、侵入イベントの深刻度指数を決定してもよい。深刻度指数を決定するステップは、情報漏洩の大きさ及び/又は確率を決定するステップを含んでもよい。
【0052】
侵入イベント、特に侵入イベントの深刻度指数の決定に応答して、共有鍵の決定が中止されることが規定されてもよい。
【0053】
内部ファイバコアからの損失の総量(自然散乱損失及び局所的漏洩を含む)が所定限度を越えたという決定に基づいて、プロトコルが終了してもよい。所定限度は、目標鍵配送レート、伝送線路の長さ、2つの光増幅器間の距離、光増幅器の数、及び光増幅器増幅率のうちの1つに依存してもよい。
【0054】
伝送線路は、外部光ファイバを取り囲む第2シールド層と、第2シールド層を取り囲む第2外部光ファイバとを含んでもよい。
【0055】
シールド層及び外部光ファイバに関する特性は、第2シールド層及び/又は第2外部光ファイバに準用されてもよい。内部光ファイバ、シールド層、及び外部光ファイバ、第2シールド層及び第2外部光学層は、同心円状に配置されてもよい。本システムは、第2外部光ファイバに沿った第2外部信号損失を決定してもよい。侵入イベントを決定するステップは、(追加として、又は代替として)第2外部信号損失に基づいてもよい。
【0056】
量子鍵配送は、第2外部光ファイバを介して実行されないことが規定されてもよい。言い換えれば、共有鍵は、内部光ファイバ及び(第1)外部光ファイバを介してのみ決定されることが規定されてもよい。あるいは、量子鍵配送は、(第1)外部光ファイバ及び第2外部光ファイバを介して実行されないことが規定されてもよい。言い換えれば、共有鍵は、内部光ファイバを介してのみ決定されることが規定されてもよい。
【0057】
そのような設計により、内部光ファイバ及び(第1)外部光ファイバを使用する量子鍵配送の場合、盗聴に対する高いセキュリティを保持しつつ、高い鍵配送レートが可能になり得る。量子鍵配送に内部光ファイバのみが使用される場合は、セキュリティがさらに高まる。
【0058】
伝送線路は、また、外部光ファイバの周りに交互に配置された、複数の第2シールド層と複数の第2外部光ファイバとを含んでもよい。
【0059】
量子鍵配送のためのシステムと関連する前述の実施の形態は、量子鍵配送のための方法に対応して提供することができ、その逆も同様である。
【0060】
以下では、例示として、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、量子鍵配送のためのシステム及び盗聴装置の配置を示すグラフィカル図である。
【
図2】
図2は、伝送線路のセグメントを示すグラフィカル図である。
【
図3】
図3は、量子鍵配送のための方法を示すグラフィカル図である。
【
図5】
図5は、リフレクトグラムを示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、量子鍵配送のためのシステム及び盗聴装置13(「イブ」)の配置のグラフィカル図を示す。本システムは、第1データ処理装置10(「アリス」)と、第2データ処理装置11(「ボブ」)とを備える。第1データ処理装置10は、第1プロセッサ10a及び第1メモリ10bを含んでもよく、第2データ処理装置11は、第2プロセッサ11a及び第2メモリ11bを含んでもよい。
【0063】
第1データ処理装置10及び第2データ処理装置11は、例えば伝送線路12を介して、古典信号及び/又は量子信号を交換することができる。このために、第1データ処理装置10及び第2データ処理装置11は、伝送線路12に接続される。伝送線路12は、量子信号を伝える量子チャネルを含んでもよい。さらに、古典信号を伝える古典チャネルが設けられてもよい。古典チャネルは、伝送線路12内に、又は別に設けられてもよい。伝送線路12は、さらに、複数の光増幅器(図示せず)を含んでもよい。光増幅器は、例えば増幅器間隔が30km~200km、好ましくは30km~100km、より好ましくは30km~60kmで、伝送線路12に沿って等間隔に設けられてもよい。
【0064】
本システムは、複数のさらなるデータ処理装置、特に、第3プロセッサ及び第3メモリを有する第3データ処理装置(図示せず)を含んでもよい。第3データ処理装置は、伝送線路12に接続されてもよい。追加として、又は代替として、第3データ処理装置は、さらなる通信チャンネルを介して、第1データ処理装置10及び/又は第2データ処理装置11と、古典信号及び/又は量子信号を交換することができる。本システムがステップを実行する場合、そのようなステップは、第1データ処理装置10、第2データ処理装置11、及び第3データ処理装置のうちの少なくとも1つにおいて実行されてもよい。
【0065】
盗聴プロセッサ13a及び盗聴メモリ13bを有する盗聴装置13は、伝送線路12にアクセスし得る、システム外部の装置を表す。盗聴装置13は、伝送線路12を介して送信された古典信号及び/又は量子信号のうちの少なくとも1以上が盗聴装置13によって受信及び/又は再送信されるように、伝送線路12に配置され得る。盗聴装置13は、また、さらなる通信チャンネルにアクセスする可能性がある。
【0066】
第1メモリ10b、第2メモリ11b、第3メモリ、及び盗聴メモリ13bは各々、量子信号を記憶する量子メモリと、古典信号を記憶する古典メモリとを含んでもよい。量子メモリは、光遅延線、制御された可逆な不均一広がり(CRIB)、Duan-Lukin-Cirac-Zoller(DLCZ)型方式、エコー抑制による再生(ROSE)、及び/又はハイブリッド光子エコーリフェージング(HYPER)を用いて設けられてもよい。
【0067】
第1データ処理装置10、第2データ処理装置11、第3データ処理装置、及び盗聴処理装置13は各々、量子状態を送信及び/又は受信する手段を含んでもよい。
【0068】
図2は、伝送線路12のセグメントのグラフィカル図を示す。伝送線路12は、内部光ファイバ20と、内部光ファイバ20を取り囲むシールド層21と、シールド層21を取り囲む外部光ファイバ22とを含む。このように、外部光ファイバ20は、中空光ファイバを表す。さらに、外部ジャケット23(好ましくは、コーティング層及び/又は強化層を含む)は、外部光ファイバ22を取り囲んでもよい。強化層は、樹脂層、ポリマー緩衝層、及びプラスチック層のうちの少なくとも1つを含んでもよい。強化層は、光ファイバの強度を高め、且つ/又は環境からの分離をもたらしてもよい。
【0069】
したがって、伝送線路12は、(内側から外側に向かって)内部光ファイバ20、シールド層21、外部光ファイバ22、及び外部ジャケット23の径方向順に伝送線路セグメントを含む。
【0070】
内部光ファイバ20は、内部ファイバコア20aと、内部クラッド層20bとを含む。さらに、外部光ファイバ22は、外部ファイバコア22aと、2つの外部クラッド層22b、22cとを含み、外部クラッド層22bと22cとの間に、外部ファイバコア22aが径方向に配置されている。クラッド層20b、22b、22cは、ファイバコア20a、22aのファイバコア材料より屈折率が低いクラッド層材料を含む。
【0071】
したがって、伝送線路12は、(内側から外側に向かって)内部ファイバコア20a、内部クラッド層20b、シールド層21、第1外部クラッド層22b、外部ファイバコア22a、第2外部クラッド層22c、及び外部ジャケット23の径方向順に伝送線路セグメントを含む。
【0072】
伝送線路12は、さらに、外部光ファイバ22を取り囲む第2シールド層と、第2シールド層を取り囲む第2外部光ファイバとを含んでもよく、一方、外部ジャケット23は、第2外部光ファイバ(図示せず)を取り囲む。
【0073】
シールド層21は、金属から作ることができる。あるいは、シールド層21は、石英からなってもよく、さらに、例えばエルビウムで、高濃度にドープされてもよい。したがって、シールド層21は、散乱光波が非弾性二次散乱を受けて熱に変換されるため、内部光ファイバ20から逃げる散乱損失を遮蔽する。基本的に、生じる放熱損失は、内部光ファイバ20内の信号からのいずれの情報も含まないため、解読することはできない。
【0074】
(例えば、散乱損失を傍受するために、又は内部ファイバコア20aからの人為的漏洩を生じさせるために)シールド層21を除去するためには、盗聴者は、まず外部ファイバコア22aを通過する必要があるだろう。しかしながら、そのような行為は、気付かれずに進むことはないと考えられ、また、光ファイバ22に沿った外部信号損失、特に、外部光ファイバ22及び/又は外部ファイバコア22aの外部(信号)損失プロファイルが常に更新されるため(物理的損失制御)、侵入イベントは検出されるであろう。
【0075】
重要なことには、内部ファイバコア20も、物理的損失制御を受けてもよく、すなわち、内部信号損失が決定され、さらに侵入検出に用いられてもよい。物理的損失制御により、外部ファイバコア22又は内部ファイバコア20に加えられた損傷の定量的推定及び位置特定が可能になり得る。
【0076】
図3は、量子鍵配送のための方法のグラフィカル図を示す。本方法は、第1データ処理装置10と、第2データ処理装置11と、それらの間の伝送線路12とを備えるシステムで実現されてもよい。第1データ処理装置10と第2データ処理装置11とは、認証済み(公開)古典チャネルを介して接続され、伝送線路12の(内部)光ファイバ20は、量子チャネルとして働く。
【0077】
最初のステップ30において、内部光ファイバ20(特にファイバコア20a)の初期内部損失プロファイルと、外部光ファイバ22(特にファイバコア22a)の初期外部信号損失プロファイルが決定され、それらの損失プロファイルは、本質的に伝送線路12の自然信号損失を表す。この予備ステップでは、盗聴者が伝送線路12にアクセスしていないことが確実でなければならない。初期損失プロファイルは、認証済み古典通信チャンネルを介して第1データ処理装置10と第2データ処理装置11との間で共有されてもよい。
【0078】
第1ステップ31では、(第1データ処理装置10及び第2データ処理装置11によって)内部ファイバコア20aの物理的損失制御が実行される。特に、内部損失プロファイルが決定され、好ましくは、古典チャネルを介して第1データ処理装置10と第2データ処理装置11との間で共有される。
【0079】
このように更新された内部損失プロファイルを初期内部損失プロファイルと比較することによって、盗聴者によって捕捉された可能性のある信号の割合rEが決定されてもよい。例えば、伝送線路12における光増幅器を含まないセクションにおいて、このセクションの自然信号損失をr0で表し、盗聴者が信号の傍受率rEを傍受した場合、傍受率rEは、以下の関係によって総損失rtから導き出すことができる。
【0080】
(1-rt)=(1-rE)(1-r0) (1)
【0081】
傍受率rEが大きくなりすぎて、その結果、正規ユーザが盗聴者に対して情報優位性を失う場合、プロトコルは終了する。プロトコルの終了は、伝送線路の長さと、光増幅器の2つの間の距離とに依存する。プロトコルは、特に、有効鍵レートが目標鍵レート値未満である場合に終了してもよい。
【0082】
第2ステップ32では、乱数生成器を使用して、第1データ処理装置10においてシーケンス長Lのビットシーケンスが決定される。
【0083】
第3ステップ33では、ビットシーケンスは、一連のL個の鍵信号パルス(コヒーレント光パルス)を含む量子信号に符号化され、その鍵信号パルスは、(内部光ファイバ20を介して)第2データ処理装置11に送信される。信号ビット0及び1は、それぞれコヒーレント状態|γ0>及び|γ1>に対応する。0及び1の信号ビットをコヒーレント状態|γ0>及び|γ1>のパラメータに符号化する特定の方法は、異なってもよい。例えば、信号ビットは、異なる強度で同じ位相のコヒーレント光パルス、あるいは同じ強度で異なる位相のコヒーレント光パルスに符号化されてもよい。
【0084】
コヒーレント状態の複素振幅は、盗聴者によって傍受された信号の決定された割合rEに基づいて最適化される。したがって、量子チャネル内の所与の損失に対する最大鍵生成速度に対応する最適化されたコヒーレント状態が、第1データ処理装置10によって送信されることは可能である。
【0085】
第4ステップ34では、量子信号/コヒーレント光パルスは、伝送線路12に沿って設けられた複数の光増幅器によって増幅される。光増幅器は、伝送線路に沿って等間隔に設けられてもよい。複数の光増幅器の各光増幅器は、前の光増幅器からそれぞれの光増幅器までの伝送線路12に沿った自然信号損失を補償する。その結果、第2データ処理装置11での出力信号強度は、第1データ処理装置10によって準備されたような初期信号強度と等しい。そのような信号増幅は人為的損失を補償しないが、人為的損失が数パーセントしか占めず、そうでなければプロトコルが終了するのであれば、正規ユーザの情報優位性は通常確保されるため、人為的損失は比較的小さい。
【0086】
第5ステップ35では、量子信号は、第2データ処理装置11によって受信及び測定される。対応する受信されたビットシーケンスは、第2データ処理装置11において決定される。決定されたすべての人為的損失が信号の傍受率rEを表すとみなされてもよい。
【0087】
第6ステップ36では、不確定として決定された、第2データ処理装置11における量子測定に対応する不確定な信号ビットが、第1データ処理装置10におけるビットシーケンス及び第2データ処理装置11における受信されたビットシーケンスから破棄される。このために、不確定な信号ビットのビット位置が、古典チャネルを介して第2データ処理装置11から第1データ処理装置10に送信される。
【0088】
第7ステップ37では、古典チャネルを介してビットシーケンス及び/又は受信されたビットシーケンスの一部を開示することによって、誤り率が決定されてもよく、第1データ処理装置10及び第2データ処理装置11によって、それぞれビットシーケンス及び受信されたビットシーケンスに対して誤り訂正が行われてもよい。誤り訂正は、例えば低密度パリティ検査(LDPC)符号を利用して、実行されてもよい。その結果、第1データ処理装置10及び第2データ処理装置11において、誤り訂正されたビットシーケンスが決定される。
【0089】
第8ステップ38では、プライバシー増幅を用いて、誤り訂正されたビットシーケンスから、増幅された鍵シーケンスが決定される。増幅された鍵シーケンスは、誤り訂正されたビットシーケンスより短く、いずれの潜在的盗聴者も、増幅された鍵シーケンスに関する情報を有しないか、又は無視できるほどの小さい情報しか有しない。増幅された鍵シーケンスは、量子鍵配送の結果、第1データ処理装置10と第2データ処理装置11との間の共有鍵シーケンスを表す。
【0090】
第1ステップ31から第8ステップ38までのステップは、繰り返されてもよく(矢印39)、増幅された鍵シーケンスは、共有鍵の全長が現在のアプリケーションが必要とする長さになるまで、総共有鍵に連結されてもよい。
【0091】
すべてのステップ31~38の間、外部光ファイバは、連続的に制御される、30a。すなわち、外部信号損失プロファイルが決定され、好ましくは、古典チャネルを介して第1データ処理装置10と第2データ処理装置11との間で共有される。外部ファイバコア22aの完全性が、盗聴者が散乱損失を解読すると思われる相当なリスクの程度まで損なわれる場合、すなわち、損傷した伝送線路セグメントの全長が1kmオーダである場合、プロトコルは終了してもよい。
【0092】
内部ファイバコア20aの物理的損失制御(ステップ31)は、また、共有鍵シーケンスの量子信号の送信と交互に実行されてもよい。例えば、(共有鍵シーケンスの)鍵信号パルスは、物理的損失制御のための試験(信号)パルスと交互に送信されてもよい。
【0093】
パラメータの符号化及び測定の選択と、プロトコルが終了するべきかどうかの選択とは、線路の損失プロファイルの評価に基づき、外部ファイバコア22a及び内部ファイバコア20aは、別々に監視されている。
【0094】
物理的損失制御は、光ファイバ20、22を通って送信された試験(信号)パルスの散乱成分の分析に基づく。試験パルスは、比較的高い強度を有する。
【0095】
光時間領域リフレクトメトリを用いて、試験パルスの時系列における後方散乱試験パルス成分が測定される。後方散乱試験パルス成分の応答遅延は、特定のファイバ不連続部の距離/伝送線路位置に対応し、一方、その大きさは、それぞれの信号損失を反映している。
【0096】
図4は、光時間領域リフレクトメトリから得られた例示的リフレクトグラムを示す。パワーが100mW未満の2μs、1550nmのパルスレーザを用いて基本的な測定を行った。実験データは、16000回の測定を平均化した。
【0097】
リフレクトグラムは、後方散乱試験パルス成分の対数パワーを、反射率計と、対応する不連続部との距離の関数として示す。反射率計は、第1データ処理装置10又は第2データ処理装置11の内部、又はそれに近接して配置されてもよい。
【0098】
伝送線路12に沿った自然信号損失は、均一散乱によるものであり、直線領域40に対応したパワーの指数関数的な減衰が生じる。リフレクトグラム曲線の指数関数的な減衰からの偏差を含むリフレクトグラム特徴部41~44、特にリフレクトグラム曲線の鋭いピーク及び/又は低下により、伝送線路12の対応する位置における信号損失を分類することができる。これは、鍵交換中に、決定された損失と比較するために局所的損失の特定及び緩和が重要である最初のステップ30で特に有用である。
【0099】
リフレクトグラム特徴部41~44は、一般に、伝送線路12の欠陥部に対応し、低品質スプライス、曲げ、及び様々なコネクタを表してもよい。そのような領域からの散乱損失は、伝送線路12に対して位置特定される。リフレクトグラム特徴部41~44のピークは、物理コネクタの場合、フレネル反射を受ける試験パルスによる過度の散乱から生じ得る。リフレクトグラムの右側におけるノイズのある領域45は、後方散乱信号の終了を表す。
【0100】
図5は、それぞれのリフレクトグラム特徴部41~44を表すリフレクトグラムの詳細図を示す。リフレクトグラム特徴部41は、光ファイバ20、22の低品質スプライスに対応し、リフレクトグラム特徴部42は、光ファイバ20、22の角度がついた物理コネクタに対応し、リフレクトグラム特徴部43は、光ファイバ20、22の曲げに対応し、リフレクトグラム特徴部44は、その他の物理コネクタに対応する。
【0101】
追加として、又は代替として、物理的損失制御(伝送線路制御)は、トランスミットメトリを含んでもよく、すなわち、第1データ処理装置10によって送信され、第2データ処理装置11によって受信された試験パルスの強度が、伝送線路12のそれぞれの位置における信号損失を分類するために分析される。第2データ処理装置11で受信された試験パルスの分析による分類も、第2データ処理装置11にて実行されてもよい。第1データ処理装置10もまた、特に、後方散乱試験パルス成分の測定と、第2データ処理装置11で受信された試験パルスの測定とを組み合わせることによって、分類を実行してもよい。
【0102】
内部損失プロファイル、外部信号損失プロファイル、初期内部損失プロファイル、及び初期外部信号損失プロファイルの各々は、それぞれのリフレクトグラム及び/又はトランスミットグラムを含んでもよい。
【0103】
固有信号損失と、人為的信号損失とを区別するために、初期内部/外部信号損失プロファイルが基準として用いられる。伝送線路12の再生不可能なプロファイル、すなわち物理的にクローン化不可能な構造体を提供するために、ファイバコア20a、22aは、例えばAl、P、N又はGeで、わずかにドープされてもよい。最も一般的な盗聴攻撃は、伝播信号と、補助システムとを含む複合システムの量子状態のユニタリ変換に対応する。しかしながら、光子の方向を変える唯一の方法は、光ファイバ媒体に著しい変化を導入することであり、これにより、必然的に(初期)リフレクトグラムからの変化が生じ、ひいては検出可能になるであろう。
【0104】
好ましくは、物理的損失制御は、連続的に行われ、量子鍵配送の休止中でも停止しない。例えば、10ns~50msの試験パルス長により、線路へのいずれのリアルタイム機械的干渉も直ちに検出可能になることが予想される。
【0105】
例えば、試験パルス間の分離時間は、10msより短く、特に、1ms、100μs、及び10μsのうちの1つより短くてもよい。試験パルス間の分離時間は、伝送線路、特に光ファイバ及び光接続部を通過する各試験パルスの往復時間より短くてもよい。
【0106】
外部ファイバコア22aの外部信号損失偏差が、内部ファイバコア20aの内部損失偏差が決定されるのと同じ伝送線路位置で決定された場合、侵入イベントが決定される。この場合、その損失は、盗聴者によって傍受されたとみなされ得る。そのような内部/外部信号損失偏差は、スプライス又はファイバ曲げとして分類されていた可能性がある。
【0107】
伝送線路長が20000kmの場合、効率的な信号送信には光増幅が必要である。しかしながら、物理的損失制御の精度は、以下の理由により、光増幅器を利用することでは阻害されない。むしろ、試験パルスは、量子鍵配送用の鍵信号パルスと同様にフェードアウトしないようにされてもよい。
【0108】
光増幅器が、それぞれ2つの光増幅器間の増幅器距離d=50kmで、伝送線路12に沿って等間隔に配置されている場合、光強度は、約10分の1に低下する(送信確率T=0.1に対応する)。したがって、単一の増幅器の必要な増幅率は、G=10である。
【0109】
試験パルスが、第1データ処理装置10から送信されるときに初期光子数
【数1】
の光子を有する場合、伝送線路位置50kmにおける光子数は、
【数2】
に減少する。50kmでの光増幅器は、光子数を
【数3】
に戻すが、ノイズが加わる。光子はポアソン統計に従うため、増幅器の手前の変動は、
【数4】
である。その変動は、同様に増幅率Gで増幅され、
【数5】
になる。
【0110】
各々が独立してさらなる変動を加える一連のM個の増幅器を通過して、総変動は、
【数6】
倍に増加し、伝送線路長20000kmに対して400個の増幅器では、20倍の変動増加となる。したがって、第2データ処理装置11における変動は、
【数7】
である。これは、
【数8】
の比に対応する。それに対応して、最小検出可能漏洩は、
【数9】
である。
【0111】
本明細書、図及び/又は特許請求の範囲に開示された特徴は、単独で又はそれらの様々な組み合わせで、様々な実施の形態を実現するための材料になり得る。