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特許7612258大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20250106BHJP
   C30B 15/10 20060101ALI20250106BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/10
C03B20/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023566539
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2022084523
(87)【国際公開番号】W WO2023184384
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202210324084.9
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523406521
【氏名又は名称】錦州佑▲シン▼石英科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINZHOU YOUXIN QUARTZ TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】West Sea Industry Park,Eco&Tech Development District Jinzhou,Liaoning 121007,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 宗輝
(72)【発明者】
【氏名】陳 曼
(72)【発明者】
【氏名】王 也
(72)【発明者】
【氏名】王 震
(72)【発明者】
【氏名】張 志強
(72)【発明者】
【氏名】孫 興旺
(72)【発明者】
【氏名】馬 力
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147688(JP,A)
【文献】特開2010-76949(JP,A)
【文献】特開2012-148961(JP,A)
【文献】中国実用新案第201981110(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104926086(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/10
C03B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法であって、
高純度石英砂原料をルツボ型に投入して、成形装置によって石英砂原料を型の内面に均一に成形して、ルツボブランクを成形し、2N+1(Nは2以上の整数)個の電極からなる電極束を用いて高温アークを放出してルツボブランクを溶融し、最後に急冷して石英ルツボ初品を形成する真空アーク法であり、前記2N+1個の電極は、1つの中央主電極と、2N個の補助電極と、を含み、前記2N個の補助電極は、該中央主電極を円心とする円周上に等間隔に分布しており、前記中央主電極はルツボ型の軸心線に合わせており、
前記2N個の補助電極は、工業用3相電力のうちの2相の電力に接続され、2相の電力が補助電極上に交互に配列され、前記中央主電極は、工業用3相電力のうちの残りの一相に接続され、ルツボブランクを溶融する過程で、前記2N個の補助電極のうち隣接する2つの補助電極の間で放電が行われて高温アークが発生するとともに、前記2N個の補助電極と前記中央主電極との間でも放電が行われて高温アークが発生する、ことを特徴とする大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法。
【請求項2】
N=2~4であり、すなわち、前記電極束における電極の本数が5、7又は9本である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記中央主電極の断面積が、単一の前記補助電極の断面積よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記中央主電極の断面積をS1、単一の前記補助電極の断面積をS2とし、S1及びS2は、1.5S2≦S1≦3.8S2を満たす、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記補助電極の直径が55~65mmであり、前記中央主電極の直径が68mm~125mmである、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記中央主電極及び2N個の補助電極の下端面が同一平面にあり、かつ、前記中央主電極及び2N個の補助電極は、電極の損耗に伴い下へ移動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記2N個の補助電極の下端面の中心点で計算すると、前記2N個の補助電極が所在する円周の半径が溶融対象ルツボの外半径の1/4~3/4である、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記中央主電極は径方向に固定されたままであり、前記2N個の補助電極は、該中央主電極に対して開閉運動が可能となるように調整され得る、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記2N個の補助電極の下端面の中心点で計算すると、前記2N個の補助電極の開閉運動の範囲は、前記2N個の補助電極が所在する円周の半径が溶融対象ルツボの外半径の1/4~2/4となるようにされる、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記中央主電極及び2N個の補助電極はそれぞれ銅棒にも接続され、前記中央主電極が接続する銅棒は固定ブラケットの中央位置に固定され、前記2N個の補助電極が接続する銅棒のトップはそれぞれ挟持機構によって固定され、挟持機構の数は前記補助電極の数に対応して2N個であり、前記挟持機構はそれぞれ、その中央部位にある枢着点をもって固定ブラケットに回転可能に接続され、前記挟持機構の一端がリンクを介してナットに接続され、ナットはスクリューに嵌め込まれ、該スクリューの底端と前記固定ブラケットは組み合わせられたものであり、前記スクリューは回転部材であり、前記スクリューを回転することによってナットがスクリューを昇降移動するようにし、ナットが前記2N個の挟持機構を引き上げて開閉運動させ、さらに前記2N個の補助電極が該中央主電極に対して開閉運動するように駆動する、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造の技術分野に関し、特に、大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶はシリコン系半導体材料、太陽電池セルを製造する最も主要な原材料の1種である。シリコン単結晶は、主にCZチョクラルスキー法により製造される。CZチョクラルスキー法では、多結晶シリコン原料を石英ルツボに入れて加熱溶融して、シリコン融液にし、引き上げロッドによって種結晶を下降させてシリコン融液に接触させた後、種結晶を上に緩やかに引き上げてシリコン単結晶棒を形成する。石英ルツボは一般的に2層構造で、内壁が気泡を含まない透明層、外壁が気泡を多く含む不透明層となっている。内壁はシリコン融液と接触しているため、高温状態で内壁に気泡が存在するとシリコン融液の浸食により気泡が破裂し、破片がシリコン融液に溶解するとシリコン単結晶の歩留まりや品質に影響を与える。外壁はヒーターからの熱を均一に放散させる必要があるので、シリコン融液を均一に加熱するために所定数と大きさの気泡が必要である。シリコン溶液と接触する唯一の材料である石英ルツボの品質は、シリコン単結晶の品質に大きく影響する。例えば石英ルツボの内壁の気泡含有量、石英ルツボの純度、石英ルツボの耐高温変形性などである。
【0003】
石英ルツボの作製には真空アーク法が一般的に使用される。この方法を使用する場合、高純度石英砂原料を黒鉛型や金型に投入して、成形装置によって石英砂原料を型の内面に均一に成形した後、高温アーク(一般的には3相アーク炉の3本の黒鉛電極、場合によっては銅電極が用いられる)により石英砂を3000℃以上の高温で溶融させ、最後に急冷して石英(ガラス)ルツボを形成する。真空アーク法で石英ルツボを製作する過程で、アークの温度は石英ルツボの品質に大きな影響を与え、主要な影響はルツボの内壁の気泡含有量、純度(不純物含有量)、耐高温変形性能、ガラス化程度などを含むため、如何にしてアークの制御を最適化するかは非常に重要である。
【0004】
半導体と太陽エネルギー業界の発展に伴い、シリコン単結晶のサイズは従来の4インチ、6インチ、8インチから現在の8インチ、12インチに急速に移行し、使用される石英ルツボのサイズも従来の16インチ、18インチ、24インチから現在の24インチ、28インチ、32インチ、36インチ(すべてルツボの外径を指す)に移行している。業界では通常28インチ以上のルツボは大型ルツボとされ、大型ルツボの深さは一般的に500~750mmの間である。小型石英ルツボと比べて、大型石英ルツボでは、ルツボの外径が大きくて、壁が厚くて、正常なプロセスで溶融する時、3本の電極に通電してアーチを放電することによって、22インチ~24インチルツボを生産する場合に要求される温度を満たすことができる点は明らかに異なり、しかし、大型石英ルツボを生産する時に3本の電極による温度は、大型の型内で型の内面の原料を十分に融解することができず、温度の流失が大きいので、溶融時間が長くなり、エネルギー消費が大きくなり、効果が明らかではなく、その結果として、石英ルツボの外形寸法を形成しにくく、内面のガラス化程度もその分低下するため、ルツボの品質が低下し、単結晶を引き上げる過程で、石英ルツボには、崩壊や結晶化などの多くの問題が起こりやすい。
【0005】
大型ルツボの製作のニーズに対応するため、業界内の研究者は、電極の本数を増やす方法を提案しており、例えばCN104926086Aは、6本の黒鉛電極を採用し、ルツボ型の軸心線を円心とする円周上に等間隔に設置し、6本の電極を連結してちょうど正六角形を構成することを提案している。US6853673B2及びUS7905112B2は、同じくルツボ型の軸心線を円心とする円周上に等間隔に分布して正六角形または正九角形を構成する、2相4本の電極または3相6本または9本の黒鉛電極を提案している。電極の本数を増やすことで確かに製造温度を上げることができるが、以上のような電極配置では、アークのアーク範囲が広がるものの、いずれも隣接する電極間で放電するため、アーク中心温度が低下し、石英ルツボの中央底部の品質が悪い(気孔があり、不純物含有量が高いなど)。これは、主に、大型ルツボの深さが大きく、電極を6本や9本に増やすと、ルツボ周壁には配慮できるが、ルツボ底部までは配慮しにくいこと、ルツボの底部の温度が十分でないこと、研磨の程度が不十分であること、気化した不純物ダストの一部が温度のやや低い底部に落ちて除去することができないことなどが原因である。これに対して、日本JP2015147688Aは6本の黒鉛電極を提案し、ルツボ型の軸心線を円心とする同心円周上に分布し、内外の2つの正三角形を構成し、内外では2つの3相電力からなり、それによって、ルツボブランクの底部の加熱温度を高める。しかし、この方法には、以下の問題が残っている。(1)黒鉛電極の中心に空隙があり、中心温度がまだ十分ではない。(2)装置は、極めて復雑で、製作設計が面倒で、高温アーク環境下で、操作が困難でかつ制御が困難である。(3)使用時に、システムは多くの問題に直面しているため、実際には使用されていない。(4)内円と外円の間でも放電する可能性があり、2つの3相電力は生産システムと電力網に大きな衝撃を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の上記の欠陥及び欠点に対して、本発明は、電極の本数や電極の分布位置をより合理的に設計することによって、電極がアークを放出するときの中心の温度を上げ、石英ルツボブランクの底部の溶融温度を上げ、ルツボの底部の研磨度合を向上させ、ルツボの底部の品質を向上させて、大型石英ルツボの製作ニーズに対応する、大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明に使用される主な技術的解決手段は以下の通りである。
【0008】
本発明は、高純度石英砂原料をルツボ型に投入して、成形装置によって石英砂原料を型の内面に均一に成形して、ルツボブランクを成形し、2N+1(Nは2以上の整数)個の電極からなる電極束を用いて高温アークを放出してルツボブランクを溶融し、最後に急冷して石英ルツボ初品を形成する真空アーク法であり、前記2N+1個の電極は、1つの中央主電極と、2N個の補助電極と、を含み、前記2N個の補助電極は、該中央主電極を円心とする円周上に等間隔に分布しており、前記中央主電極はルツボ型の軸心線に合わせており、
前記2N個の補助電極は、工業用3相電力のうちの2相の電力に接続され、2相の電力が補助電極上に交互に配列され、前記中央主電極は、工業用3相電力のうちの残りの一相に接続され、ルツボブランクを溶融する過程で、前記2N個の補助電極のうち隣接する2つの補助電極の間で放電が行われて高温アークが発生するとともに、前記2N個の補助電極と前記中央主電極との間でも放電が行われて高温アークが発生する大外径チョクラルスキー単結晶用石英ルツボの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の好適な実施例によれば、N=2~4であり、すなわち、前記電極束における電極の本数が5、7又は9本である。
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、前記中央主電極の断面積が、単一の前記補助電極の断面積よりも大きい。
【0011】
本発明の好適な実施例によれば、前記中央主電極の断面積をS1、単一の前記補助電極の断面積をS2とし、S1及びS2は、1.5S2≦S1≦3.8S2を満たす。中央主電極はその周囲の単一の補助電極よりも若干太くなっているが、上記の要件を満たすのが好ましく、そうではなければ、3相電力の間には、不平衡であるため、給電システムに衝撃を与える問題が存在する可能性がある。好ましくは、S1=2S2である。
【0012】
本発明の好適な実施例によれば、前記補助電極の直径が55~65mmであり、前記中央主電極の直径が68mm~125mmである。
【0013】
本発明の好適な実施例によれば、前記2N個の補助電極の下端面の中心点で計算すると、前記2N個の補助電極が所在する円周の半径が溶融対象ルツボの外半径の1/4~3/4である。
【0014】
本発明の好適な実施例によれば、前記中央主電極及び2N個の補助電極の下端面が同一平面にあり、かつ、前記中央主電極及び2N個の補助電極は、電極の損耗に伴い下へ移動可能である。
【0015】
本発明の好適な実施例によれば、前記中央主電極は径方向に固定されたままであり、前記2N個の補助電極は、該中央主電極に対して開閉運動が可能となるように調整され得る。
【0016】
本発明の好適な実施例によれば、前記2N個の補助電極の下端面の中心点で計算すると、前記2N個の補助電極の開閉運動の範囲は、前記2N個の補助電極が所在する円周の半径が溶融対象ルツボの外半径の1/4~2/4となるようにされる。
【0017】
本発明の好適な実施例によれば、前記中央主電極及び2N個の補助電極はそれぞれ銅棒にも接続され、前記中央主電極が接続する銅棒は固定ブラケットの中央位置に固定され、前記2N個の補助電極が接続する銅棒のトップはそれぞれ挟持機構によって固定され、挟持機構の数は前記補助電極の数に対応して2N個であり、前記挟持機構はそれぞれ、その中央部位にある枢着点をもって固定ブラケットに回転可能に接続され、前記挟持機構の一端がリンクを介してナットに接続され、ナットはスクリューに嵌め込まれ、該スクリューの底端と前記固定ブラケットは組み合わせられたものであり、前記スクリューは回転部材であり、前記スクリューを回転することによってナットがスクリューを昇降移動するようにし、ナットが前記2N個の挟持機構を引き上げて開閉運動させ、さらに前記2N個の補助電極が該中央主電極に対して開閉運動するように駆動する。
【0018】
本発明の好適な実施例によれば、溶融過程全体にわたって、真空度は-0.093Mpa~-0.1Mpaに制御され、真空システムに接続されると、溶融によるガスなどの不純物が適時に排出され、ルツボ製品の純度が確保され、電極のパワーは1000~2000KWである。
【0019】
本発明の好適な実施例によれば、外径28インチの石英ルツボを溶融する場合、電極のパワーは1000~1100KWであり、外径32インチの石英ルツボを溶融する場合、電極のパワーは1300~1400KWであり、外径36インチの石英ルツボを溶融する場合、電極のパワーは1500~1600KWである。
【0020】
本発明の好適な実施例によれば、製作された石英ルツボ初品に対して切断、検査、洗浄、乾燥、包装・庫入れを順次行う。
【発明の効果】
【0021】
従来技術から容易に分かるように、石英ルツボの製作には工業用3相電力を使用するため、現在、従来技術では、電極の本数はいずれも3の倍数であり、業界内の製造者及び設計者は2N+1個の電極を採用し、かつ、1つの中央主電極を中心位置に配置して1相電力に接続し、残りの2N個の補助電極を円周上に等間隔に配置して2相電力に交互に接続するような電極配置方式を考えることは難しい。上記の配置方法により、円周上の2N個の補助電極のうち2つずつの隣接する電極間に高温アークが発生するとともに、円周上にあるすべての2N個の補助電極と中心位置にある主電極が放電して高温アークが発生するので、アーク中心の温度も非常に高く、円周上にある補助電極は、主としてルツボブランクの周壁を溶融して高温研磨(ガラス化度を高め、不純物をガス化して揮発させて純度を向上させる)するために使用されるが、アーク中心は、主として大型ルツボの底部を高温研磨し、それによって、気孔がより少なく、ガラス化度がより高く、不純物の含有量がより少ない石英ルツボ製品を製造し、ルツボ製造の歩留まりを向上させる。さらに、中央主電極がその周囲にある補助電極よりも若干太くなっており、中央主電極と補助電極の焼損酸化速度がほぼ一致しているため、アークによる加熱効果がさらに高まる。
【0022】
以上のように、本発明の製造方法は、中央主電極を1本配置して1相電力に接続することにより、その周囲にある2N個の補助電極を相対的に大きく開くことができ、このように、円周の隣接する補助電極間の距離を大きくすることができ、さらに加熱範囲を広くすることができ、大型ルツボの内径が大きく周壁が加熱されにくいという問題を考慮するだけでなく、ルツボの底部の温度が十分でなく、研磨程度が不十分であるという問題も同時に解決することができる。本発明の製造方法は、特に大型ルツボを製造し、ルツボの底部の品質を向上させるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】石英ルツボの構造概略図である。
図2】電極による溶融により石英ルツボを生産するときの概略図である。
図3】従来技術において3本の3相黒鉛電極による溶融により石英ルツボを生産するときの概略図である。
図4】従来技術において6本の3相黒鉛電極による溶融により石英ルツボを生産する概略図である。
図5】本発明の実施例1の5本の3相電極の配置の概略図である。
図6】本発明の実施例2の7本の3相電極の配置の概略図である。
図7】本発明の実施例3の9本の3相電極の配置の概略図である。
図8】本発明において中央主電極に対する周囲の補助電極の開閉運動を可能にする構造である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明をより良く説明して理解を容易にするするために、以下では、図面を参照して、具体的な実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【0025】
図1には、石英ルツボの概略図が示されており、この石英ルツボは、内側の透明層1と、外側の不透明層2と、を含む。その中で、透明層1はシリコン融液に直接接触する。透明層1は、直壁面Hと、湾曲移行面Lと、底部Wと、を含む。
【0026】
図2~3には、従来技術において3本の3相黒鉛電極による高温アーク溶融により石英ルツボを生産するときの概略図が示されている。ここで、3本の3相黒鉛電極3は、ルツボ型の軸心線を円心とする円周上に等間隔に分布しており、正三角形を形成し得る。3本の3相黒鉛電極3は、それぞれ、U相、W相、及びV相に接続される。アークはU相とW相、W相とV相、V相とU相の間で放電して発生したものであり、それによる熱源面積が小さく、大型石英ルツボの生産に適していない。
【0027】
図4には、従来技術において6本の3相黒鉛電極による高温アーク溶融により石英ルツボを生産するときの概略図が示されている。ここで、6本の3相黒鉛電極3は、ルツボ型の軸心線を円心とする円周上に等間隔に分布しており、正六角形を形成し得る。6本の黒鉛電極3は、それぞれ、U相、W相、V相、U相、W相、V相に順次接続される。アークは、U相とW相、W相とV相、V相とU相、U相とW相、W相とV相、V相とU相の間で放電して発生したものであり、それによる熱源面積が図3の3本の3相電極による熱源面積よりも大きいものの、アークの中心位置での温度が低く、ルツボの底部の溶融程度が不十分で、特に大型石英ルツボの生産に適していない。
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例1~3は、図5~7に対応している。
【実施例1】
【0029】
図5には、本発明の好適な実施例1が示されており、本実施例は、外径28インチの石英ルツボを製作するためのものであり、製造方法において、高純度石英砂原料をルツボ型10に投入して、成形装置によって石英砂原料をルツボ型10の内面に均一に成形して、ルツボブランク20を成形し、5個の黒鉛電極からなる電極束30を用いて高温アークを放出してルツボブランクを溶融し、最後に急冷して石英ルツボ初品を形成することを含み、溶融過程全体にわたって、真空度は-0.093Mpa~-0.1Mpa(真空システムに接続して、溶融によるガスなどの不純物を排出する)に制御され、電極のパワーは1000KWである。製作完了後、石英ルツボ初品に対して切断、検査、洗浄、乾燥、包装・庫入れを順次行う。
【0030】
電極束30は、1つの太い中央主電極300と、4本の細い補助電極301、302、303、及び304と、を含む。中央主電極300の直径は100mmであり、補助電極301、302、303、及び304の直径は、それぞれ、約60±0.5mmである。中央主電極300はルツボ型の軸心線に合わせており、4個の補助電極301、302、303、及び304は、この中心電極を円心とする円周上に等間隔に分布しており、正方形として接続され得る。各補助電極の中心点で計算すると、4個の補助電極301、302、303、及び304が所在する円周の半径は、溶融対象ルツボの外半径の1/4である。中央主電極300は、工業用3相交流電力のU相に接続され、一方、4個の補助電極301、302、303、及び304は、工業用3相交流電力のW相、V相、W相、V相に順次接続される。中央主電極300、及び4個の補助電極301、302、303、及び304の下端面が同一平面上にあり、かつ、中央主電極300及び4個の補助電極301、302、303、及び304は、電極の損耗に伴い下へ移動可能である。ルツボブランクを溶融する過程で、4本の補助電極301、302、303、及び304のうち隣接する2つの補助電極の間で放電が行われて高温アークが発生するとともに、これらの補助電極301、302、303、及び304のそれぞれと中央主電極300との間でも放電が行われて高温アークが発生する。
【実施例2】
【0031】
図6には、本発明の好適な実施例2が示されており、本実施例は外径32インチの石英ルツボを製作するためのものであり、製造方法において、高純度石英砂原料(高純度石英砂≧99.99%)をルツボ型10に投入して、成形装置によって石英砂原料をルツボ型10の内面に均一に成形して、ルツボブランク20を成形し、7個の黒鉛電極からなる電極束40を用いて高温アークを放出してルツボブランクを溶融し、最後に急冷して石英ルツボ初品を形成することを含み、電極は電極束の下端のルツボの底部から550mm離れた箇所に位置し、溶融過程全体にわたって、真空度は-0.093Mpa~-0.1Mpaに制御され、電極のパワーは1400KWである。製作後、石英ルツボ初品に対して切断、検査、洗浄、乾燥、包装・庫入れを順次行う。
【0032】
電極束40は、1つの太い中央主電極400と、6本の細い助電極401、402、403、404、405、及び406と、を含む。中央主電極400の直径は110mmであり、6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406の直径は、それぞれ約60±0.5mmである。中央主電極400はルツボ型の軸心線に合わせており、6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406は、この中心電極を円心とする円周上に等間隔に分布しており、正六角形として接続され得る。各補助電極の中心点で計算すると、6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406が所在する円周の半径は、溶融対象ルツボの外半径の3/4である。中央主電極400は、工業用3相交流電力のU相に接続され、一方、6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406は、工業用3相交流電力のW相、V相、W相、V相、W相、V相に順次接続される。中央主電極400、及び6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406の下端面が同一平面上にあり、かつ、中央主電極400及び6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406は電極の損耗に伴い下へ移動可能である。ルツボブランクを溶融する過程で、6本の補助電極401、402、403、404、405、及び406のうち隣接する2つの補助電極の間で放電が行われて高温アークが発生するとともに、これらの補助電極401、402、403、404、405、及び406のそれぞれと中央主電極400との間でも放電が行われて高温アークが発生する。
【実施例3】
【0033】
図7には、本発明の好適な実施例3が示されており、本実施例は、外径36インチの石英ルツボを製作するためのものであり、製造方法において、高純度石英砂原料(高純度石英砂≧99.99%)をルツボ型10に投入して、成形装置によって石英砂原料をルツボ型10の内面に均一に成形して、ルツボブランク20を成形し、9個の黒鉛電極からなる電極束50を用いて高温アークを放出してルツボブランクを溶融し、最後に急冷して石英ルツボ初品を形成することを含み、電極は、電極束の下端のルツボの底部から550mm離れた箇所に位置し、溶融過程全体にわたって、真空度は-0.093Mpa~-0.1Mpaに制御され、電極のパワーは1600KWである。製作後、石英ルツボ初品に対して切断、検査、洗浄、乾燥、包装・庫入れを順次行う。
【0034】
電極束50は、1つの太い中央主電極500と、8本の細い補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508と、を含む。中央主電極500の直径は110mmであり、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508の直径は、それぞれ約58mmである。中央主電極500はルツボ型の軸心線に合わせており、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508はこの中心電極を円心とする円周上に等間隔に分布しており、正八角形として接続され得る。各補助電極の中心点で計算すると、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508が所在する円周の半径は、溶融対象ルツボの外半径の2/4である。中央主電極500は、工業用3相交流電力のU相に接続され、一方、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508は、工業用3相交流電力のW相、V相、W相、V相、W相、V相、W相、V相に順次接続される。中央主電極500、及び8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508の下端面が同一平面上にあり、かつ中央主電極500、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508は、電極の損耗に伴い下へ移動可能である。ルツボブランクを溶融する過程で、8本の補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508のうち隣接する2つの補助電極の間で放電が行われて高温アークが発生するとともに、これらの補助電極501、502、503、504、505、506、507、及び508のそれぞれと中央主電極500との間でも放電が行われて高温アークが発生する。
【0035】
以上の実施例1~3では、中央主電極300、400又は500は、径方向に固定されたままであり、残りの補助電極も径方向に固定されたままである。好ましくは、補助電極の中心点で計算すると、すべての補助電極が所在する円周の半径は、溶融対象ルツボの外半径の1/4~3/4である。
【0036】
また、他の実施例では、補助電極が所在する円周の半径を調整可能な電極束が設けられてもよい。例えば、中央主電極300、400、又は500は径方向に固定されたままであり、残りの補助電極は、該中央主電極300、400又は500に対して開閉運動が可能となるように調整され得、すなわち、残りの補助電極(各補助電極の下端面の中心点で計算する)が所在する円周の半径は変化可能であり、かつ、変化可能な幅は好ましくは溶融対象ルツボの外半径の1/4~2/4である(調整の範囲が大きすぎると、すべての電極の下端面に高さの明らかな差が出てしまう可能性があり、アークの発生に不利である)。この場合、中央主電極と残りの補助電極の下端面はできるだけ同一平面上に維持され、かつ、中央主電極及び補助電極は、電極の損耗に伴い下へ移動可能である。
【0037】
上記の実施形態は、図8に示す構造によって実現され得る。中央主電極300、及び4本の補助電極301、302、303、及び304はまた、それぞれ銅棒に接続される。中央主電極300が接続する銅棒は、固定ブラケット60の中央位置に固定され、残りの4本の補助電極301、302、303、及び304が接続する銅棒のトップは、それぞれ挟持機構601によって固定され、挟持機構601の数も4つである。挟持構造601は、シーソー構造であって、その中央部位が固定ブラケットに回転可能に接続される。挟持機構601の一端がリンク602を介してナット603に接続され、ナット603はスクリュー604に嵌め込まれる。該スクリュー604の底端と固定ブラケットは組み合わせられたものであるが、固定ブラケット60に対して回転可能である。スクリュー604を回転させることによって、スクリュー604が高さ方向に移動不能であるので、ナット603はスクリュー604に沿って上下移動し、それによって、リンク602が駆動され、リンク602は、挟持構造601の一端を駆動して挟持構造601の角度を変えることで、4本の補助電極301、302、303、及び304が中央主電極300に対して開閉運動するように駆動し、それによって、様々なサイズの石英ルツボの溶融に対応できるように、その熱源面の面積が調整される。
【0038】
実施例1で製造されたルツボと、図3(従来技術1)及び図4(従来技術2)に示される6本の電極を用いて生産された28インチのルツボとを比較した結果、黒鉛電極のパワーが1000KW、真空度が-0.093Mpa~-0.1Mpa、(補助)電極が所在する円周の半径が、溶融対象ルツボの外半径の1/4である場合、同じ電極位置(電極の下端がルツボの底部から380mm離れる)でルツボを溶融する。ルツボの原料は同一ロットの石英原料であり、高純度石英砂の純度は99.99%以上である。
【0039】
原子吸光法を用いて実施例1と従来技術1~2で生産されたルツボの周壁と底部の不純物含有量の平均値を検出した結果を、次の表1(位置ごとに2つのテスト値を取り、平均を取り、テスト深さは内面から20μmとする)(単位:wt.ppb)に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
以上の表から分かるように、従来技術2で製造されたルツボの内層の純度は従来技術1よりも優れているが、本発明の実施例1で製造されたルツボの内層の純度は従来技術2よりも優れている。一部の元素の含有量は従来技術と同等または若干上回るが、全体的には、本発明の実施例1で製造された石英ルツボは、内層周壁および底部の各種の不純物元素の合計含有量の平均値が従来技術1および従来技術2よりも大幅に低い。このことは、本発明が確かに高品質の石英ルツボの製造に適用することを示唆した。
【0042】
同様に、実施例2~3で生産された32インチと36インチの石英ルツボの周壁と底部の不純物含有量の平均値を検出した結果を、次の表2(位置ごとに2つのテスト値を取り、平均を取り、テスト深さは内面から20μmとする)(単位:wt.ppb)に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
以上の比較から、製造された32インチと36インチの石英ルツボの品質は、実施例1の28インチの石英ルツボと同等であることが分かった。このことは、本発明の製造方法が32インチ以上の大型ルツボの生産に非常に適しており、ルツボ内層の純度を確保できることを示唆した。
【0045】
以上のように、本発明の実施例1~3で製造された石英ルツボは、内層表面の不純物含有量が少なく、より清浄であり、結晶引上げによるシリコン単結晶の生産工程における不純物の導入を低減し、シリコン単結晶の生産品質を確保することができる。また、実施例1~3で生産された石英ガラスルツボについて検出した結果、表面に割れや窪みがなく、肉眼で見ても気泡や凸状の箇所がなかった。本発明の技術案は、すでに当企業の内部で試験生産を行っており、その結果、システムの運行が安定して、製品の品質が信頼できる。
【0046】
なお、上記の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定するものではなく、前述の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、前述の各実施例に記載された技術的解決手段を修正したり、その一部若しくは全部の技術的特徴を均等に置換したりすることができることを理解すべきであり、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8