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特許7612282表面状態推定方法及び表面状態推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】表面状態推定方法及び表面状態推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20250106BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20250106BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G01B11/30 102Z
B23Q17/24 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021009224
(22)【出願日】2021-01-24
(65)【公開番号】P2022113177
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若園 賀生
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一朗
(72)【発明者】
【氏名】岩井 英樹
【審査官】村山 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/194065(WO,A1)
【文献】特開2020-114614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G06T 1/00-5/94
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G01N 21/84-21/958
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定方法であって、
前記加工面の全体を撮像した画像に対して評価領域を設定し、
前記画像を形成する複数のピクセルのうち前記評価領域を隣接する複数の前記ピクセルから形成される複数のエリアに分割し、
各々の前記エリアにおいて、隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出し、
各々の前記エリアにおいて、隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度と前記輝度平均値との差分を表す輝度差分値を算出し、
前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出し、
前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する、表面状態推定方法。
【請求項2】
前記画像の第一方向において前記画像を形成する複数のピクセルの輝度の変化に基づいて前記第一方向における第一中央位置を決定し、
前記第一方向とは異なる第二方向において前記ピクセルの前記輝度の変化に基づいて前記第二方向における第二中央位置を決定し、
前記第一中央位置と前記第二中央位置とに基づいて、前記評価領域の中心を決定し、
前記中心に基づいて前記評価領域を設定する、請求項に記載の表面状態推定方法。
【請求項3】
前記第一方向と前記第二方向とが互いに直交する場合、
前記中心は、前記第一方向に直交し且つ前記第一中央位置を通る直線と、前記第二方向に直交し且つ前記第二中央位置を通る直線との交点である、請求項に記載の表面状態推定方法。
【請求項4】
前記第一中央位置及び前記第二中央位置は、
前記輝度の変化において予め設定された前記輝度の閾値に対して小さな前記輝度から大きな前記輝度に変化する下限点と、前記閾値に対して大きな前記輝度から小さな前記輝度に変化する上限点との中央値に基づいて決定される、請求項2又は3に記載の表面状態推定方法。
【請求項5】
前記相関関係は、前記指標値を説明変数とし、前記加工面の表面状態を目的変数とし、前記説明変数及び前記目的変数を含む訓練用データセットを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルであり、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と前記学習済みモデルとを用いて推定される、請求項1-の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項6】
前記相関関係は、直線近似式により表されるものであり、
前記直線近似式の傾きは前記画像を形成する複数の前記ピクセルの平均輝度が大きくなるにつれて大きくなり、前記直線近似式の切片は前記平均輝度が大きくなるにつれて小さくなる関係を有し、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記平均輝度に基づいて決定される前記傾き及び前記切片を有する前記直線近似式とを用いて推定される、請求項1-の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項7】
工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定方法であって、
前記加工面を撮像した画像を形成する複数のピクセルのうち隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出し、
隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度と前記輝度平均値との差分を表す輝度差分値を算出し、
前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出し、
前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定し、
前記相関関係は、直線近似式により表されるものであり、
前記直線近似式の傾きは、前記画像を形成する複数の前記ピクセルの平均輝度が大きくなるにつれて大きくなり、前記直線近似式の切片は前記平均輝度が大きくなるにつれて小さくなる関係を有し、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記平均輝度に基づいて決定される前記傾き及び前記切片を有する前記直線近似式とを用いて推定される、表面状態推定方法。
【請求項8】
複数の前記平均輝度について、前記平均輝度ごとの前記直線近似式の前記傾き及び前記切片に基づいて、前記平均輝度に対する前記傾きの線形近似及び前記平均輝度に対する前記切片の線形近似を求め、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記画像における前記平均輝度に対応して前記傾きの線形近似から求められた前記傾き、及び、前記画像における前記平均輝度に対応して前記切片の線形近似から求められた前記切片と、を用いて推定される、請求項6又は7に記載の表面状態推定方法。
【請求項9】
推定された前記加工面の表面状態に基づいて、前記工具を修正するタイミングを設定する、又は、前記工作機械が前記工具を用いて前記工作物を加工する加工条件を変更する、請求項1-8の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項10】
隣接する複数の前記ピクセルは、互いに隣接する4つ以上の前記ピクセルである、請求項1-9の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項11】
前記工作機械は、前記工具としての砥石を有し、前記砥石により前記工作物を研削加工する研削装置である、請求項1-10の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項12】
前記加工面の表面状態は、表面粗さである、請求項1-11の何れか一項に記載の表面状態推定方法。
【請求項13】
工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定システムであって、
前記加工面を撮像し、撮像した画像を出力する撮像装置と、
前記画像に対して評価領域を設定する評価領域設定部、前記画像を形成する複数のピクセルのうち前記評価領域を隣接する複数の前記ピクセルから形成される複数のエリアに分割するエリア分割部、各々の前記エリアにおいて隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出する輝度平均値算出部、各々の前記エリアにおいて前記輝度平均値算出部によって算出された前記輝度平均値と隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度との差分を表す輝度差分値を算出する輝度差分値算出部、及び、前記輝度差分値算出部によって算出された前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出する指標値算出部と、を有する画像評価装置と、
前記画像評価装置によって算出された前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する推定部を有する推定演算装置と、
を備えた、表面状態推定システム。
【請求項14】
工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定システムであって、
前記加工面を撮像し、撮像した画像を出力する撮像装置と、
前記撮像装置から出力された前記画像を形成する複数のピクセルのうち隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出する輝度平均値算出部、前記輝度平均値算出部によって算出された前記輝度平均値と隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度との差分を表す輝度差分値を算出する輝度差分値算出部、及び、前記輝度差分値算出部によって算出された前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出する指標値算出部と、を有する画像評価装置と、
前記画像評価装置によって算出された前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する推定部を有する推定演算装置と、
を備え、
前記相関関係は、直線近似式により表されるものであり、
前記直線近似式の傾きは、前記画像を形成する複数の前記ピクセルの平均輝度が大きくなるにつれて大きくなり、前記直線近似式の切片は前記平均輝度が大きくなるにつれて小さくなる関係を有し、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記平均輝度に基づいて決定される前記傾き及び前記切片を有する前記直線近似式とを用いて推定される、表面状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面状態推定方法及び表面状態推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工作機械の工具を用いて工作物を加工する場合、工具に摩耗等の劣化が生じて加工精度の低下が生じる虞がある。従って、工具の劣化を管理し、工具の修正を適宜行うことにより、工作物の加工精度を維持することは極めて肝要である。このため、従来から、特許文献1及び特許文献2には、工作物の評価領域における画像を取得し、工具によって加工される工作物の表面粗さを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-162558号公報
【文献】特開2018-40599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工具の修正を行う場合、頻繁に修正を行うことにより、常に工作物に対する加工精度を良好に維持することができる。しかしながら、工具の修正を行う場合には、工具の修正に要する時間が必要であると共に、工具の修正に要するコストが必要になる。このため、工具を修正するタイミングを適切に設定することは、修正に要する時間の短縮が可能になると共に、修正に要するコストを低減することが可能になるため、極めて有効である。上述した従来の技術によれば、推定される表面粗さに基づいて工具を修正するタイミングを設定することは可能であるが、工作物の表面状態をより精度良く推定することによって精度良く工具を修正するタイミングが設定できることが望まれる。
【0005】
本発明は、工作物の表面状態を精度良く推定することができる表面状態推定方法及び表面状態推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(表面状態推定方法)
本発明の一態様は、工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定方法であって、
前記加工面の全体を撮像した画像に対して評価領域を設定し、
前記画像を形成する複数のピクセルのうち前記評価領域を隣接する複数の前記ピクセルから形成される複数のエリアに分割し、
各々の前記エリアにおいて、隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出し、
各々の前記エリアにおいて、隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度と前記輝度平均値との差分を表す輝度差分値を算出し、
前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出し、
前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する、表面状態推定方法。
本発明の他の態様は、工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定方法であって、
前記加工面を撮像した画像を形成する複数のピクセルのうち隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出し、
隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度と前記輝度平均値との差分を表す輝度差分値を算出し、
前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出し、
前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定し、
前記相関関係は、直線近似式により表されるものであり、
前記直線近似式の傾きは、前記画像を形成する複数の前記ピクセルの平均輝度が大きくなるにつれて大きくなり、前記直線近似式の切片は前記平均輝度が大きくなるにつれて小さくなる関係を有し、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記平均輝度に基づいて決定される前記傾き及び前記切片を有する前記直線近似式とを用いて推定される、表面状態推定方法にある。
【0007】
(表面状態推定システム)
本発明の他の態様は、工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定システムであって、
前記加工面を撮像し、撮像した画像を出力する撮像装置と、
前記画像に対して評価領域を設定する評価領域設定部、前記画像を形成する複数のピクセルのうち前記評価領域を隣接する複数の前記ピクセルから形成される複数のエリアに分割するエリア分割部、各々の前記エリアにおいて隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出する輝度平均値算出部、各々の前記エリアにおいて前記輝度平均値算出部によって算出された前記輝度平均値と隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度との差分を表す輝度差分値を算出する輝度差分値算出部、及び、前記輝度差分値算出部によって算出された前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出する指標値算出部と、を有する画像評価装置と、
前記画像評価装置によって算出された前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する推定部を有する推定演算装置と、
を備えた、表面状態推定システムにある。
本発明の他の態様は、工具によって工作物を加工する工作機械に適用され、前記工具及び前記工作物における加工面の表面状態を推定する表面状態推定システムであって、
前記加工面を撮像し、撮像した画像を出力する撮像装置と、
前記撮像装置から出力された前記画像を形成する複数のピクセルのうち隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの輝度を用いて輝度平均値を算出する輝度平均値算出部、前記輝度平均値算出部によって算出された前記輝度平均値と隣接する複数の前記ピクセルのそれぞれの前記輝度との差分を表す輝度差分値を算出する輝度差分値算出部、及び、前記輝度差分値算出部によって算出された前記輝度差分値の二乗総和平方根を指標値として算出する指標値算出部と、を有する画像評価装置と、
前記画像評価装置によって算出された前記指標値を用いて、前記指標値と相関関係にある前記加工面の表面状態を推定する推定部を有する推定演算装置と、
を備え、
前記相関関係は、直線近似式により表されるものであり、
前記直線近似式の傾きは、前記画像を形成する複数の前記ピクセルの平均輝度が大きくなるにつれて大きくなり、前記直線近似式の切片は前記平均輝度が大きくなるにつれて小さくなる関係を有し、
前記加工面の表面状態は、前記指標値と、前記平均輝度に基づいて決定される前記傾き及び前記切片を有する前記直線近似式とを用いて推定される、表面状態推定システムにある。
【0008】
これらによれば、工作物の加工面における輝度に起因する指標値を用いて、工作物の加工面における表面状態を精度良く推定することができる。又、表面状態推定システムは、推定された工作物の加工面の表面状態を用いて、工作物を加工する工作機械の工具の状態も精度良く推定することができる。これにより、工作機械においては、良好な加工精度を維持することができると共に、適切なタイミングにおいて工具を修正したり、加工条件を変更したりすることができる。
【0009】
従って、工作機械の工具を過度に修正したり、修正が遅れたりすることを防止することができる。これにより、工具を修正するために要する修正時間を短縮することができると共に、工具を修正するためのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】表面状態推定システムの構成を示す図である。
図2図1の工作機械の一例である研削装置の構成を示す図である。
図3図2の画像取得装置の一例であるカメラの構成を示す図である。物品(生産物)の一例であるラックバーを示す正面図である。
図4図1の画像評価装置の機能ブロック構成を示す図である。
図5図3のカメラによって撮像された全体画像及び図4の画像評価装置によって設定される評価領域を説明するための図である。
図6図4の画像評価装置によって設定されるエリアを説明するための図である。
図7】エリアを構成するピクセルの番号を説明するための図である。
図8】工作物の周方向における輝度の変化を説明するための図である。
図9】輝度差分値を説明するための図である。
図10】表面状態推定システムの機能ブロック構成を示す図である。
図11】指標値と表面粗さとの相関関係を説明するための図である。
図12】第一別例に係り、直線近似式に対する平均輝度の影響を説明するための図である。
図13】第一別例に係り、輝度平均の変化に対する直線近似式の傾き及び切片の変化を説明するための図である。
図14】第二別例に係り、第一方向における輝度の取得を説明するための図である。
図15】第二別例に係り、第一方向における輝度の中央位置の決定を説明するための図である。
図16】第二別例に係り、第二方向における輝度の取得を説明するための図である。
図17】第二別例に係り、第二方向における輝度の中央位置の決定を説明するための図である。
図18】第二別例に係り、評価領域の中央位置の決定を説明するための図である。
図19】第二別例に係り、中央位置がずれた場合の評価領域の設定を説明するための図である。
図20】第二別例に係り、中央位置がずれた場合の評価領域の設定を説明するための図である。
図21】第二別例に係り、評価領域の設定を説明するための図である。
図22】第二別例に係り、評価領域の設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.表面状態推定システムの適用対象の工作機械)
表面状態推定システムは、工作機械によって加工された工作物の加工面の表面状態を推定する。工作物を加工する工作機械としては、切削加工を行う各種切削装置(例えば、歯車加工装置やマシニングセンタ等)、研削加工を行う各種研削装置(例えば、円筒研削盤やカム研削盤、平面研削盤等)を挙げることができる。
【0012】
本例においては、工作機械として、粗研削、精研削、微研削、スパークアウト等の研削加工を経て工作物を研削する研削装置を例示する。ここで、研削装置によって研削加工される工作物としては、例えば、単純軸状部材や、クランクシャフト、カムシャフト、平板等を挙げることができる。尚、本例の工作物としては、後述するように、円筒研削盤によって断面円形の単純軸状部材が研削加工される場合を例示する。
【0013】
(2.表面状態推定システム1の構成の概要)
次に、表面状態推定システム1の構成の概要について、図1を参照して説明する。表面状態推定システム1は、少なくとも1台の研削装置10と、画像評価装置20と、少なくとも1つの演算装置(30,40)とを備える。研削装置10は、1台を対象としても良いし、図1に示すように、複数台を対象としても良い。
【0014】
本例の表面状態推定システム1は、複数台の研削装置10を備える場合を例示する。そして、本例の表面状態推定システム1は、各々の研削装置10に画像評価装置20が設けられると共に、1つの演算装置30と研削装置10の各々に設けられた複数の演算装置40を備える場合を例に挙げる。
【0015】
研削装置10は、粗研削、精研削、微研削、スパークアウト等の研削加工を経て工作物Wを研削加工する。研削装置10には、少なくとも、工作物Wの研削加工中において観測可能な研削加工面W1を撮像する撮像装置としてのカメラ13が設けられている。
【0016】
カメラ13は、研削装置10により研削加工される工作物Wの研削加工面W1を撮像するものである。カメラ13は、工作物Wに対する研削加工毎の研削加工面W1の全体を撮像した全体画像を表す全体画像データを出力する。尚、本例においては、カメラ13を画像取得装置として用いて、工作物Wの研削加工面W1、例えば、外周表面を撮像する。しかし、画像取得装置としては、カメラ13のように工作物Wの研削加工面W1を撮像して全体画像を得ることに限られず、例えば、研削加工面W1の凹凸を全体画像として取得可能な3Dスキャナ装置等を用いることも可能である。
【0017】
画像評価装置20は、カメラ13から出力された全体画像(全体画像データ)を取得する。そして、画像評価装置20は、全体画像(全体画像データ)のうち、表面状態を推定する評価領域の表面状態に対応して変化する輝度を表す指標値を出力する。
【0018】
本例の画像評価装置20は、撮像された評価領域について、互いに隣接するピクセルを含む複数のエリアごとのエリア指標値を算出し、全エリア指標値を二乗総和平方根することにより、評価領域の指標値を算出する。ここで、本例の画像評価装置20は、エリア指標値として、エリアを構成する各々のピクセルの輝度(例えば、0-255までの256段階で表される輝度)とエリアにおける輝度の平均値との差分を、エリア指標値として算出する。
【0019】
演算装置(30,40)は、本例においては、画像評価装置20から出力された指標値を用いた機械学習を適用することにより、指標値と相関関係を有する工作物Wの研削加工面W1における表面状態としての表面粗さを推定する。尚、機械学習を適用することによって得られる相関関係は、画像評価装置20から得られる指標値と、粗さ計2により実測された工作物Wの研削加工面W1の表面粗さ(実粗さ値)との相関を表す。
【0020】
ここで、本例においては、図1に示すように、演算装置(30,40)は、学習処理装置30と推定演算装置40とにより構成する。尚、学習処理装置30と推定演算装置40とは、独立した構成として示すが、1つの装置とすることもできる。又、演算装置(30,40)の一部又は全部は、複数台の研削装置10を含んで構成される生産ラインへの組込みシステムとすることもできる。
【0021】
本例では、学習処理装置30は、所謂、サーバ機能を有しており、複数台の研削装置10の各々に設けられた複数の推定演算装置40と通信可能に接続されている。又、推定演算装置40は、各々の研削装置10に一対一で設けられて、所謂、エッジコンピュータとして機能し、高速演算処理を実現可能としている。
【0022】
(3.表面状態推定システム1の構成の詳細)
表面状態推定システム1の構成について、図1を参照して、より詳細に説明する。表面状態推定システム1は、複数台(本例においては、2台)の研削装置10、各々の研削装置10に設けられた画像評価装置20、演算装置の一部として機能する1台の学習処理装置30、演算装置の他の一部として機能して各々の研削装置10に設けられた推定演算装置40を備える。
【0023】
研削装置10は、砥石Tを用いて工作物Wの研削加工面W1の研削加工を行う研削盤11と、研削盤11を制御する制御装置12と、画像取得装置としてのカメラ13と、インターフェース14とを主に備える。
【0024】
本例においては、研削盤11として、図2に示すように、砥石台トラバース型の円筒研削盤50を例に挙げる。尚、研削盤11は、テーブルトラバース型を用いることもできる。
【0025】
円筒研削盤50は、軸状部材である工作物Wの外周面即ち研削加工面W1を研削するための工作機械である。円筒研削盤50は、図2に示すように、主としてベッド51、主軸台52、心押台53、トラバースベース54、砥石台55、砥石車56(砥石T)、定寸装置57、及び、砥石車修正装置58を備える。
【0026】
ベッド51は、設置面上に固定されている。主軸台52は、ベッド51の上面において、X軸方向の手前側(図2の下側)且つZ軸方向の一端側(図2の左側)に設けられている。主軸台52は、工作物WをZ軸回りに回転可能に支持する。工作物Wは、主軸台52に設けられたモータ52aの駆動により回転される。
【0027】
心押台53は、ベッド51の上面において、主軸台52に対してZ軸方向に対向する位置、即ち、X軸方向の手前側(図2の下側)且つZ軸方向の他端側(図2の右側)に設けられている。これにより、工作物Wは、主軸台52及び心押台53によって回転可能に両端支持される。
【0028】
トラバースベース54は、ベッド51の上面において、Z軸方向に移動可能に設けられている。トラバースベース54は、ベッド51に設けられたモータ54aの駆動により移動する。砥石台55は、トラバースベース54の上面において、X軸方向に移動可能に設けられている。砥石台55は、トラバースベース54に設けられたモータ55aの駆動により移動する。砥石車56(工具T)は、砥石台55に回転可能に支持されている。砥石車56は、砥石台55に設けられたモータ56aの駆動により回転する。砥石車56は、複数の砥粒がボンド材により固定されて構成されている。
【0029】
定寸装置57は、工作物Wの寸法(径)を測定する。定寸装置57は、ベッド51の上面において、Z軸方向に移動可能に設けられている。定寸装置57は、ベッド51に設けられた送り機構57aによりZ軸方向の位置が制御される。
【0030】
砥石車修正装置58は、砥石車56の形状を修正する。即ち、砥石車修正装置58は、砥石車56のツルーイングやドレッシングを行う装置である。ここで、ツルーイングは、形直し作業であり、研削加工によって砥石車56に劣化、例えば、摩耗や摩滅、砥粒の脱落、或いは、砥粒の破砕等が生じた場合に工作物Wの形状に合わせて砥石車56を成形する作業、偏摩耗による砥石車56の振れを取り除く作業である。ドレッシングは、砥石車56の目直し(目立て)作業であり、砥粒の突き出し量を調整する作業、砥粒の切れ刃を創成する作業である。つまり、ドレッシングは、目つぶれや、目詰まり、目こぼれ等を修正する作業であり、通常、ツルーイング後に行われる。
【0031】
制御装置12は、CNC装置及びPLC装置等を含み、図2に示すように、本例においては円筒研削盤50(研削盤11)に設けられる。制御装置12は、工作物Wの形状、加工条件、砥石車56(工具T)の形状、クーラントの供給タイミング情報等の作動指令データに基づいて生成されたNCプログラムに従い、円筒研削盤50における各モータ52a,54a,55a,56a等を制御する。即ち、制御装置12は、動作指令データが入力されることにより、動作指令データに基づいてNCプログラムを生成する。
【0032】
これにより、制御装置12は、円筒研削盤50(研削盤11)の作動を制御して、工作物Wの研削加工面W1の研削加工を行う。ここで、制御装置12は、定寸装置57により測定される工作物Wの寸法(径)に基づいて、工作物Wの研削加工面W1が仕上形状となるまで研削加工を行う。このため、制御装置12が生成するNCプログラムは、研削加工内容、即ち、粗研削、精研削、微研削及びスパークアウト等に応じて生成される。
【0033】
又、制御装置12は、ベッド51に設けられており、インターフェース14を介して推定演算装置40と通信可能とされている(図1を参照)。これにより、本例の制御装置12は、砥石車56を修正するタイミングとして、推定演算装置40から出力される修正信号Rを取得したタイミングにおいて、各モータ52a,54a,55a,56a及び砥石車修正装置58等を制御することにより、砥石車56の修正(ツルーイング又は/及びドレッシング)を行う。ここで、本例の推定演算装置40は、後述するように、推定した研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さに基づいて、修正信号Rを制御装置12に対して出力する。
【0034】
カメラ13は、図2に示すように、トラバースベース54に設けられており、工作物Wの研削加工面W1に撮像用の光が照射された状態で、研削加工面W1の画像を撮像する。このため、カメラ13には、図3に示すように、例えば、カメラ13のレンズ(図示省略)と同心円状に配置されて環状の撮像用の光を照射する照明装置13aが設けられる。そして、カメラ13は、撮像用の光を反射した研削加工面W1を撮像した全体画像を表す全体画像データZを、例えば、制御装置12のインターフェース14を介して、画像評価装置20に出力する(図1を参照)。
【0035】
画像評価装置20は、図4に示すように、評価領域設定部21、エリア分割部22、輝度取得部23、指標値算出部24を備える。画像評価装置20は、図5に示すように、カメラ13によって撮像された研削加工面W1の全体画像を表す全体画像データZを取得する。ここで、上述したように、カメラ13は、環状の撮像用の光を照射する。このため、工作物Wの研削加工面W1を撮像した全体画像データZにおいては、光を強く反射する第一部位(図5において、白色で示す)と、反射した光が弱い第二部位(図5において、梨地で示す)とが存在する。尚、本例においては、全体画像データZにおいて、光を強く反射する第一部位が二箇所存在する場合を例示する。
【0036】
評価領域設定部21は、カメラ13から出力された全体画像データZを取得し、全体画像データZによって表される研削加工面W1のうち、表面状態即ち表面粗さを評価する評価領域HRを設定する。本例においては、図5にて太実線により示すように、評価領域設定部21は、二箇所の第一部位が含まれるように、評価領域HRを設定する。
【0037】
エリア分割部22は、図6に示すように、評価領域HRを構成する各ピクセル(図6にて小さい正方形によって示す)のうち、互いに隣接する4つのピクセルをエリアAとして設定し、評価領域HRの全体をn個のエリアAに分割する。ここで、本例においては、エリアAを4つのピクセルを有するようにするが、エリアAを構成するピクセルの数については、これに限定されない。又、本例においては、図6に示すように、評価領域HRが、2×2個のピクセルから構成される場合を例示する。
【0038】
この場合、各ピクセルには、それぞれ、識別するための番号が割り当てられ、例えば、図6に示すように、評価領域HRの左上のピクセルに「0」が割り当てられ、ピクセル「0」の右隣りに隣接するピクセルには「1」が割り当てられ、評価領域HRの第一列の最後のピクセルには「2-1」が割り当てられる。同様に、評価領域HRのピクセル「0」の直下に隣接するピクセルには「2」が割り当てられ、ピクセル「2」の右隣りに隣接するピクセルには「2+1」が割り当てられ、評価領域HRの第二列の最後のピクセルには「2×2-1」が割り当てられる。同様に、評価領域HRのピクセル「2」の直下に隣接するピクセルには「2×2」が割り当てられ、評価領域HRの第M列の最初のピクセルには「(2-1)×2」が割り当てられ、第M列の最後のピクセルには「2(M+N)-1」が割り当てられる。
【0039】
これにより、図6にて梨地で示す第m番目のエリアAmを構成する4つのピクセルに割り当てられる番号は、図7に示すように、エリアAmの左上に位置する第一ピクセルP1には「2i+2j×2」、第一ピクセルP1に対して右隣りに隣接する第二ピクセルP2には「2i+2j×2+1」がそれぞれ割り当てられる。又、エリアAmにおいて、第一ピクセルP1に対して直下に隣接する第三ピクセルP3には「2i+2+2j×2」、第三ピクセルP3に対して右隣りに隣接する(即ち、第二ピクセルP2に対して直下に隣接する)第四ピクセルP4には「2i+2+2j×2+1」がそれぞれ割り当てられる。ここで、「i」は「0」から「2N-1-1」まで変化する値であり、「j」は「0」から「2M-1-1」まで変化する値である。
【0040】
そして、エリア分割部22は、n個に分割した各々のエリアAを構成する4つの第一ピクセルP1、第二ピクセルP2、第三ピクセルP3及び第四ピクセルP4について、それぞれの輝度φ即ちエリアAを構成する第一ピクセルP1の輝度φ、第二ピクセルP2の輝度φ、第三ピクセルP3の輝度φ及び第四ピクセルP4の輝度φを含む輝度データSP(n)を輝度取得部23に出力する。ここで、本例において、輝度データSP(n)は、それぞれの輝度φを、例えば、0-255までの256段階によって表したデータである。
【0041】
尚、輝度φは、「0」に近づくほど輝度が小さい(暗い)ことを表し、「255」に近づくほど輝度が大きい(明るい)ことを表す。このため、評価領域HRの全体について、各々のピクセルの輝度φを番号順に並べた場合、図8に示すように、例えば、図5にて矢印で示すように、工作物Wの研削加工面W1の周方向に沿って輝度φが変化する。特に、全体画像データZの第一部位に対応するピクセルについては、輝度φが「255」で一定になる。即ち、第一部位に対応するピクセルついては、所謂、「白飛び」になる。
【0042】
ここで、輝度φの評価領域HRにおける分布は、研削加工面W1の表面状態、具体的には、表面粗さに応じて変化する。つまり、照明装置13aから照射された光が研削加工面W1に当たったとき、面の微視的な傾斜角に応じた正反射光と散乱光による反射光が発生するが、表面粗さが大きくなるに従い微視的に急峻な変化が起こることから、大きな明暗差を生じる箇所が発生する。これにより、輝度φの分布の変化は、研削加工面W1の表面粗さ(実粗さ値JS)が粗くなる(大きくなる)につれて大きくなり、表面粗さ(実粗さ値JS)が滑らかになる(小さくなる)につれて小さくなる傾向を有する。
【0043】
輝度取得部23は、エリア分割部22から出力されたn個のエリアごとの輝度データSP(n)を取得する。ここで、輝度取得部23が取得する輝度データSP(n)は、第一ピクセルP1の輝度φ、第二ピクセルP2の輝度φ、第三ピクセルP3の輝度φ及び第四ピクセルP4の輝度φを用いて、SP(n)=(φ,φ,φ,φ)で表されるデータである。輝度取得部23は、図4に示すように、輝度平均値算出部231及び輝度差分値算出部232を備える。
【0044】
輝度平均値算出部231は、エリアAを構成する第一ピクセルP1、第二ピクセルP2、第三ピクセルP3及び第四ピクセルP4のそれぞれの輝度(φ,φ,φ,φ)を用いて輝度平均値φ(n)を算出する。即ち、輝度平均値算出部231は、下記式1に従って、輝度平均値φ(n)を算出する。
【数1】
【0045】
輝度差分値算出部232は、エリアAを構成する第一ピクセルP1、第二ピクセルP2、第三ピクセルP3及び第四ピクセルP4のそれぞれの輝度(φ,φ,φ,φ)と、輝度平均値算出部231によって算出された輝度平均値φ(n)との輝度差分値Δφ(n)を算出する。即ち、輝度差分値算出部232は、下記式2-5に従って輝度差分値Δφ(n)を算出する。ここで、輝度差分値Δφ(n)は、φ(n)と第一ピクセルP1の輝度φとの輝度差分値Δφ、φ(n)と第二ピクセルP2の輝度φとの輝度差分値Δφ、φ(n)と第三ピクセルP3の輝度φとの輝度差分値Δφ、φ(n)と第四ピクセルP4の輝度φとの輝度差分値Δφを用いて、輝度差分値Δφ(n)=(Δφ,Δφ,Δφ,Δφ)で表される。
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】
【0046】
ここで、輝度差分値算出部232によって算出された輝度差分値Δφ(n)について、図8に対応させて図9に示すように、研削加工面W1の第一部位に対応する白飛びしたピクセルの輝度差分値Δφ(n)は、「0」になる。即ち、ピクセルが白飛びする状態は、輝度の上限(例えば、「255」)を超えた輝度を有する場合であり、工作物Wの研削加工面W1の表面状態(表面粗さ)を正確に反映していない。従って、輝度差分値Δφ(n)を算出することにより、白飛びしたピクセルの表面状態(表面粗さ)の推定に対する影響を排除することができ、その結果、後述する研削加工面W1の表面状態(表面粗さ)を正確に推定することが可能となる。
【0047】
尚、本例においては、輝度差分値算出部232は、輝度差分値Δφ(n)=(Δφ,Δφ,Δφ,Δφ)を算出すると、エリアAについて各々の輝度差分値(Δφ,Δφ,Δφ,Δφ)を二乗合算した輝度差分二乗総和値Δφg(n)を算出することができる。即ち、輝度差分値算出部232は、下記式6に従って、エリアAごとの輝度差分二乗総和値Δφg(n)を算出することができる。
【数6】

そして、輝度差分値算出部232は、n個のエリアAの各々について輝度合算値Δφg(n)を算出すると、算出した輝度差分二乗総和値Δφg(n)(又は、輝度差分値Δφ(n))を指標値算出部24に出力する。
【0048】
指標値算出部24は、n個のエリアAの全てについて、輝度差分値算出部232によって算出された輝度差分二乗総和値Δφg(n)(又は、輝度差分値Δφ(n))を用いて、二乗総和平均値を算出することによって指標値KIを算出する。即ち指標値算出部24は、下記式7に従って、全エリアAの輝度差分二乗総和値Δφg(n)(又は、輝度差分値Δφ(n))の二乗総和平均値を指標値KIとして算出する。
【数7】

尚、前記式7における右辺の分母「4n」は、本例のエリアAが2×2のピクセルを有するためである。例えば、エリアAが4×4のピクセルを有する場合には、前記式7における右辺の分母は「16n」になる。そして、指標値算出部24は、指標値KIを算出すると、学習処理装置30及び推定演算装置40に指標値KIを出力する。
【0049】
学習処理装置30は、図1に示すように、プロセッサ31、記憶装置32、インターフェース33等を備えて構成される。又、学習処理装置30は、サーバ機能を有しており、複数台の研削装置10即ち研削盤11であって円筒研削盤50の各々に設けられた画像評価装置20(或いは、離間した他の工場にて稼働する円筒研削盤50に設けられた画像評価装置20を含む)と通信可能に接続されている。
【0050】
学習処理装置30は、画像評価装置20から出力された指標値KIと、インターフェース33を介して接続された粗さ計2から出力された工作物Wの研削加工面W1の表面状態に対応する実粗さ値JSとに基づいて、機械学習を行う。そして、学習処理装置30は、工作物Wの研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さを推定するための学習済みモデルを生成する。
【0051】
それぞれの推定演算装置40は、図1に示すように、プロセッサ41、記憶装置42、インターフェース43等を備えて構成される。又、推定演算装置40は、サーバとしての学習処理装置30及び対応する画像評価装置20と通信可能に接続されている。
【0052】
推定演算装置40は、それぞれの研削装置10の制御装置12と通信可能に設置されており、エッジコンピュータとして機能する。推定演算装置40は、学習処理装置30により生成された学習済みモデルを用いて、工作物Wの研削加工中(又は、研削加工後でも良い)に画像評価装置20から特徴量として取得した指標値KIに基づいて、工作物Wの研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さを推定する。
【0053】
(4.表面状態推定システム1の機能ブロック構成)
表面状態推定システム1の機能ブロックについて、図10を参照して説明する。表面状態推定システム1は、上述したように、研削装置10に設けられたカメラ、画像評価装置20、学習処理装置30及び推定演算装置40を備える。
【0054】
学習処理装置30は、画像評価装置20から出力された指標値KIと、粗さ計2(図1を参照)によって測定された研削加工面W1の表面粗さを表す実粗さ値JSとに基づいて、研削加工面W1の表面粗さを推定するための学習済みモデルを生成する。学習処理装置30は、訓練用データセット取得部61、訓練用データセット記憶部62、モデル生成部63を備える。
【0055】
訓練用データセット取得部61は、機械学習を行うための訓練用データセットを取得する。訓練用データセット取得部61は、指標値取得部61aと、実粗さ値取得部61bとを備える。指標値取得部61aは、画像評価装置20から指標値KIを訓練用データセットとして取得する。実粗さ値取得部61bは、粗さ計2から実粗さ値JSを訓練用データセットとして取得する。
【0056】
訓練用データセット記憶部62は、訓練用データセット取得部61によって取得された指標値KIと実粗さ値JSとを関連付けて訓練用データセットとして記憶する。即ち、訓練用データセット記憶部62は、工作物Wの研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さに依存して変化する指標値KIと、実際に計測された研削加工面W1の表面粗さ(実粗さ値)とを関連付けて記憶する。
【0057】
モデル生成部63は、訓練用データセット記憶部62に記憶された訓練用データセットを用いて機械学習を行う。具体的には、モデル生成部63は、訓練用データセット記憶部62に互いに関連付けて記憶されている指標値KIを説明変数とし、表面粗さ(実粗さ値)を目的変数とした機械学習を行う。そして、モデル生成部63は、指標値KIと表面粗さJS(実粗さ値)との間の相関関係を表す学習済みモデルを生成する。
【0058】
ここで、モデル生成部63によって生成される学習済みモデルを例示する。モデル生成部63は、機械学習を行うに当たり、複数の工作物Wの研削加工面W1についての指標値KI及び表面粗さJSを用いる。尚、表面粗さJSについては、1つの工作物Wの研削加工面W1において、複数の研削点(例えば、7箇所)にて計測される。この場合、図11に示すように、例えば、8つの工作物W即ち工作物Wa,Wb,Wc,Wd,We,Wf,Wg,Whの各々について、複数の研削点に対応する指標値KIと表面粗さJSとをプロットすることができる。尚、工作物Wの研削加工時期について、工作物Waが最初に研削加工され、工作物Whが最後に研削加工されるものとする。
【0059】
これによれば、研削加工時期が最初の工作物Wa(図11にて白抜きの丸で示す)は、指標値KI及び表面粗さJSが共に小さく、研削加工時期が最後の工作物Wh(図11にて黒のひし形で示す)は、指標値KI及び表面粗さJSが共に大きくなる。即ち、指標値KIについては、工作物Wb(図11にて黒の丸で示す)は工作物Waよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wc(図11にて白抜きの三角で示す)は工作物Wbよりも大きくなる傾向を有する。同様に、指標値KIについて、工作物Wd(図11にて黒の三角で示す)は工作物Wcより大きくなる傾向を有し、工作物We(図11にて白抜きの四角で示す)は工作物Wdよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wf(図11にて黒の四角で示す)は工作物Weよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wg(図11にて白抜きのひし形で示す)は工作物Wfよりも大きく且つ工作物Whよりも小さくなる傾向を有する。
【0060】
又、表面粗さJSについては、工作物Wbは工作物Waよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wcは工作物Wbよりも大きくなる傾向を有する。同様に、表面粗さJSについて、工作物Wdは工作物Wcより大きくなる傾向を有し、工作物Weは工作物Wdよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wfは工作物Weよりも大きくなる傾向を有し、工作物Wgは工作物Wfよりも大きく且つ工作物Whよりも小さくなる傾向を有する。
【0061】
これら指標値KIと表面粗さJSの変化の傾向について、各々の工作物Wの平均値(図11にて二重丸で示す)をプロットすると、図11にて太実線により示すように、平均値は直線近似式により近似することができる。即ち、指標値KIと表面粗さJSとの相関関係は、本例においては、直線近似式により表すことができる。従って、本例のモデル生成部63は、機械学習を行うことにより、指標値KIと表面粗さJSとの相関関係を表す直線近似式を学習済みモデルとして生成する。
【0062】
推定演算装置40は、学習処理装置30によって生成された学習済みモデルと、画像評価装置20から取得した指標値KIとを用いて工作物Wの研削加工面W1の表面粗さSSを推定し、推定した表面粗さSSに基づいて円筒研削盤50の砥石車56(工具T)の修正の要否を判定する。そして、推定演算装置40は、砥石車56(工具T)の修正が必要である場合には、制御装置12に対して修正信号Rを出力する。このため、推定演算装置40は、図10に示すように、モデル記憶部71、指標値取得部72、表面粗さ推定部73、判定部74、出力部75を備える。
【0063】
モデル記憶部71は、モデル生成部63が生成した学習済みモデル(例えば、指標値KIと表面粗さJSとの相関関係を表す直線近似式)を記憶する。指標値取得部72は、画像評価装置20から指標値KIを取得する。ここで、指標値取得部72は、訓練用データセット取得部61の指標値取得部61aと同様の処理を行う。
【0064】
尚、本例においては、指標値取得部72は、訓練用データセット取得部61の指標値取得部61aとは別要素として説明する。但し、訓練用データセット取得部61の指標値取得部61aを、指標値取得部72と兼用することも可能である。即ち、学習処理装置30における要素61aの機能が、推定演算装置40の一部の機能と兼用される。
【0065】
表面粗さ推定部73は、モデル記憶部71に記憶された学習済みモデルを取得する。又、表面粗さ推定部73は、指標値取得部72によって取得された指標値KIを取得する。これにより、表面粗さ推定部73は、学習済みモデルと、指標値KIとに基づいて、工作物Wの研削加工面W1における表面粗さSSを推定する。
【0066】
判定部74は、表面粗さ推定部73によって推定された研削加工面W1の表面粗さSSが、研削加工工程(即ち、粗研削、精研削、微研削及びスパークアウト)ごとに研削加工面W1について予め設定された基準表面粗さSR以上であるか否かを判定する。そして、判定部74は、表面粗さSSが基準表面粗さSR以上であれば、円筒研削盤50(研削盤11)の砥石車56(工具T)の劣化が進んでおり、研削加工面W1を適切に研削加工することができない、即ち、修正が必要であると判定する。一方、判定部74は、表面粗さSSが基準表面粗さSR未満であれば、円筒研削盤50(研削盤11)の砥石車56(工具T)の劣化が進んでおらず、研削加工面W1を適切に研削加工することができる、即ち、修正が不要であると判定する。
【0067】
出力部75は、判定部74による判定結果に応じて、修正信号Rを制御装置12に対して出力する。即ち、出力部75は、判定部74によって砥石車56(工具T)の修正が必要であると判定された場合、修正信号Rを制御装置12に対して出力する。又、出力部75は、判定部74によって砥石車56(工具T)の修正が不要であると判定された場合、修正信号Rを制御装置12に対して出力しない。
【0068】
これにより、円筒研削盤50(研削盤11)の制御装置12においては、砥石車56(工具T)の劣化が進んだ場合、即ち、砥石車56(工具T)の修正が必要な場合には、インターフェース14を介して推定演算装置40の出力部75から修正信号Rを取得する。そして、制御装置12は、砥石車修正装置58を制御して、砥石車56の修正を行う。即ち、砥石車修正装置58は、砥石車56に対して、ツルーイング又は/及びドレッシングを行う。これにより、適切なタイミングにより、且つ、適切な回数だけ、砥石車56の修正を行うことができる。従って、修正に要する時間を短縮することができると共に、修正に要するコストも低減することができる。
【0069】
以上の説明からも理解できるように、本例の表面状態推定システム1によれば、工作物Wの研削加工面W1における輝度に起因する指標値KIを用いて、工作物Wの研削加工面W1における表面状態である表面粗さSSを精度良く推定することができる。そして、表面状態推定システム1は、推定された表面粗さSSを用いて、研削加工面W1を研削加工する研削装置10である円筒研削盤50(研削盤11)の砥石車56(工具T)の劣化の進行具合を判定して、修正信号Rを出力することができる。これにより、研削装置10の制御装置12は、修正信号Rを取得したタイミングにおいて、砥石車修正装置58を制御し、砥石車56をツルーイング又は/及びドレッシングして修正することができる。
【0070】
従って、円筒研削盤50(研削盤11)の砥石車56(工具T)を過度に修正したり、修正が遅れたりすることを防止することができる。これにより、砥石車56を修正するために要する修正時間を短縮することができると共に、砥石車56を修正するためのコストを低減することができる。
【0071】
(5.第一別例)
上述した本例においては、推定演算装置40が学習処理装置30によって生成された学習済みモデルと、画像評価装置20から取得した指標値KIとを用いて工作物Wの研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さSSを推定するようにした。ところで、指標値KIは、上述したように、研削加工面W1の表面粗さに起因して変化する輝度φに関連する値である。このため、指標値KIを用いて表面粗さSSを推定する場合には、研削加工面W1の全体即ち評価領域HRの全体における平均輝度を揃える必要がある。換言すれば、平均輝度が同一或いは平均輝度の変化の影響を排除することができれば、指標値KIから表面粗さSSに変換することが可能となる。
【0072】
ここで、図12に示すように、例えば、上述した本例において推定演算装置40が用いる学習済みモデル、即ち、指標値KIと表面粗さSSの相関関係(相関関数)を表す直線近似式は、平均輝度が大きくなる(明るくなる)に連れて、傾きの値が大きくなる一方で切片の値が小さくなる傾向を有する。逆に、直線近似式は、平均輝度が小さくなる(暗くなる)に連れて、傾きの値が小さくなる一方で切片の値が大きくなる傾向を有する。
【0073】
即ち、研削加工面W1(評価領域HR)における平均輝度φiの変化に対する直線近似式の傾きk(φi)の線形近似関係、及び、平均輝度φiの変化に対する直線近似式の切片b(φi)の線形近似関係は、図13に示すようになる。尚、図13において、白抜きの丸は直線近似式(即ち、二乗総和平均値線)における傾きを表し、白抜きの三角は直線近似式(即ち、二乗総和平均値線)における切片を表す。これらの線形近似関係に従えば、例えば、画像評価装置20から評価領域HRにおける平均輝度φi(=2(N+M)個のピクセルの輝度φの総和をピクセルの数2×2個で除した値)を取得することにより、平均輝度φiに対応する傾きk(φi)及び切片b(φi)を決定することができる。
【0074】
従って、推定演算装置40が指標値KI及び直線近似式(学習済みモデル)を用いて、表面粗さSSを演算して推定する場合においては、KI=k(φi)×SS+b(φi)が成立するため、平均輝度φiに応じた傾きk(φi)及び切片b(φi)を用いたSS=(KI-B(φi))/k(φi)に従って表面粗さSSを演算して推定することができる。即ち、この場合には、平均輝度φiに応じた傾きk(φi)及び切片b(φi)を用いることにより、正規化されており、指標値KIを直接的に表面粗さSSに変換することができる。
【0075】
従って、第一別例においては、より容易に指標値KIから表面粗さSSを演算により推定することが可能となる。又、第一別例においては、正規化することにより、研削加工面W1(評価領域HR)における平均輝度φiの差の影響を排除することができるため、より正確に表面粗さSSを演算して推定することができる。
【0076】
(6.第二別例)
上述した本例及び第一別例においては、画像評価装置20は、例えば、研削加工面W1に存在する第一部位及び第二部位が含まれるように評価領域HRを設定するようにした。ところで、研削装置10においては、順次供給される複数の工作物Wの研削加工面W1について研削加工を行う。この場合、個々の工作物Wにおいては、例えば、加工位置誤差や研削加工ロットの前半又は後半の加工時期差により、研削加工面W1の状態が変化する。この場合、予め設定された同一の位置に基づいて評価領域HRを設定すると、各々の工作物Wについて設定される評価領域HRにずれが生じ、その結果、表面粗さSSの推定精度が低下する可能性がある。
【0077】
そこで、第二別例においては、異なる工作物Wの間で、画像評価装置20の評価領域設定部21がずれを生じさせないように評価領域HRを設定できるようにする。具体的に、評価領域設定部21は、カメラ13から出力された全体画像データZにおいて、各ピクセルの輝度φを、例えば、工作物Wの周方向に対応する第一方向と工作物Wの軸方向に対応する即ち第一方向に対して直交する第二方向とで取得する。そして、第一方向に沿って取得した輝度φの変化に基づいて全体画像データZの第一方向における中央位置を特定すると共に、第二方向に沿って取得した輝度φの変化に基づいて全体画像データZの第二方向における中央位置を特定する。
【0078】
そして、第一方向における中央位置を通る直線と第二方向における中央位置を通る直線との交点を評価領域HRの中心として設定し、予め設定された大きさの評価領域HRを設定する。これにより、異なる工作物Wであっても、評価領域HRを適切に設定することができる。以下、この第二別例を詳細に説明する。
【0079】
第二別例の評価領域設定部21は、カメラ13から出力された全体画像データZを取得する。評価領域設定部21は、図14にて矢印を示すように、全体画像データZにおいて、工作物W(研削加工面W1)の周方向に対応する第一方向に沿って複数のピクセルの輝度φを取得し、取得した複数の輝度φを平均処理して輝度総和平均値φsa1を算出する。そして、評価領域設定部21は、第一方向における輝度総和平均値φsa1を、工作物W(研削加工面W1)の軸方向(即ち第二方向)に沿って複数列だけ算出する。これにより、図15に示すように、第一方向における輝度総和平均値φsa1の変化を取得することができる。
【0080】
評価領域設定部21は、取得した輝度総和平均値φsa1の変化において、輝度総和平均値φsa1が予め設定された閾値L1(図15にて破線により示す)を小さな値から大きな値になって超える点を下限点Q11として設定し、輝度総和平均値φsa1が閾値L1を大きな値から小さな値になって超える点を上限点Q12として設定する。そして、評価領域設定部21は、下限点Q11と上限点Q12との中央値を、図15にて一点鎖線により示すように、第一方向における中央位置Q13として設定する。
【0081】
又、評価領域設定部21は、図16にて矢印を示すように、全体画像データZにおいて、工作物W(研削加工面W1)の軸方向に対応する第二方向に沿って複数のピクセルの輝度φを取得し、取得した複数の輝度φを平均処理して輝度総和平均値φsa2を算出する。そして、評価領域設定部21は、第二方向における輝度総和平均値φsa2を、工作物W(研削加工面W1)の周方向(即ち第一方向)に沿って複数列だけ算出する。これにより、図17に示すように、第二方向における輝度総和平均値φsa2の変化を取得することができる。
【0082】
評価領域設定部21は、取得した輝度総和平均値φsa2の変化において、輝度総和平均値φsa2が予め設定された閾値L2(図17にて破線により示す)を小さな値から大きな値になって超える点を下限点Q21として設定し、輝度総和平均値φsa2が閾値L2を大きな値から小さな値になって超える点を上限点Q22として設定する。そして、評価領域設定部21は、下限点Q21と上限点Q22との中央値を、図17にて一点鎖線により示すように、第二方向における中央位置Q23として設定する。
【0083】
次に、評価領域設定部21は、図18に示すように、第一方向における中央位置Q13を通る直線と、第二方向における中央位置Q23を通る直線との交点を、評価領域HRの中心RCとして設定する。そして、評価領域設定部21は、予め評価領域HRを決定するために設定されている点RP1及び点RP2(図18においては、評価領域HRの左上に対応する点RP1及び評価領域HRの右下に対応する点RP2)を用いて、最終的に評価領域HRを決定する。
【0084】
これにより、例えば、図19に示すように、全体画像データZにおいて研削加工面W1が画像中央からずれた場合(図19においては、研削加工面W1が左方向にずれた場合を例示)にも、評価領域設定部21は、このずれに対応して適切に評価領域HRを決定することができる。同様に、例えば、図20に示すように、全体画像データZにおいて研削加工面W1の周方向における頂部が画像中央からずれた場合(図20においては、研削加工面W1の頂部が上方向にずれた場合を例示)にも、評価領域設定部21は、このずれに対応して適切に評価領域HRを決定することができる。
【0085】
尚、図21に示すように、全体画像データZの全体が研削加工面W1である場合であっても、評価領域設定部21は、上述した場合と同様に、下限点Q11及び上限点Q12を決定すると共に、第一方向における中央位置Q13を通る直線と第二方向における中央位置Q13を通る直線との交点を評価領域HRの中心RCとして設定することにより、評価領域HRを決定することができる。又、図22に示すように、上述した本例の場合と同様に第一部位が二箇所存在する場合であっても、評価領域設定部21は、上述した場合と同様に、下限点Q11及び上限点Q12を決定すると共に、第一方向における中央位置Q13を通る直線と第二方向における中央位置Q13を通る直線との交点を評価領域HRの中心RCとして設定することにより、評価領域HRを決定することができる。
【0086】
(7.その他の別例)
上述した本例、第一別例及び第二別例においては、学習処理装置30が機械学習を行うことによって学習済みモデル、即ち、指標値KIと表面粗さSSとの相関関係を生成するようにした。これにより、推定演算装置40は、学習処理装置30によって生成された学習済みモデルを用いて、工作物Wの研削加工面W1における表面粗さSSを推定するようにした。
【0087】
しかしながら、表面状態推定システム1は、機械学習を行う学習処理装置30を必ずしも備える必要はない。この場合、推定演算装置40は、例えば、画像評価装置20から取得した指標値KIと、予め粗さ計2から取得した研削加工面W1の表面粗さJSとを用いた重回帰分析を行い、表面粗さSSを推定するために用いる相関関係を求めることも可能である。この場合、推定演算装置40は、重回帰分析によって得られた相関関係に基づき、画像評価装置20から得られた指標値KIを用いて、表面粗さSSを精度良く推定することができる。従って、この場合においても、上述した本例、第一別例及び第二別例と同様の効果が得られる。
【0088】
又、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、表面状態推定システム1は、研削装置10が研削盤11としての円筒研削盤50を備えるようにした。そして、表面状態推定システム1は、円筒研削盤50によって研削加工される軸状部材である工作物Wの研削加工面W1の表面状態即ち表面粗さSSを推定するようにした。
【0089】
しかしながら、表面状態推定システム1は、円筒研削盤50によって研削加工された研削加工面W1の表面粗さSSを推定することには限られない。例えば、研削装置10が研削盤11として、カム旋盤や平面研削盤を備え、表面状態推定システム1が研削加工されたカム面や平面の表面状態即ち表面粗さSSを推定することも可能である。
【0090】
又、表面状態推定システム1は、研削加工された研削加工面W1の表面状態を推定することに限定されず、例えば、切削装置によって切削加工された工作物(例えば、歯車等)の切削加工面の表面状態を推定することも可能である。この場合においても、上述した本例、第一別例及び第二別例の場合と同様に、画像評価装置20から取得した指標値KIを用いて、切削加工面の表面状態、例えば、表面粗さを推定することができる。従って、この場合においても、上述した本例、第一別例及び第二別例と同様の効果が得られる。
【0091】
又、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、推定演算装置40は、推定した表面粗さSSに基づいて、工具Tを修正するための修正信号Rを出力するようにした。しかしながら、推定演算装置40は、推定した表面粗さSSに基づいて、工作機械が工具Tを用いて工作物Wを加工する加工条件を適正に変更するための信号を出力することもできる。これにより、工作機械においては、出力された信号を取得することにより、加工条件を適正に変更して工作物Wを精度良く加工することができる。
【0092】
更に、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、研削加工面W1の表面状態として表面粗さSSを推定するようにした。しかし、推定可能な表面状態としては、表面粗さSSに限られない。表面状態推定システム1は、例えば、工具Tが工作物Wに接触することによって形成される加工面の形状(外形線や内形線、段差等)についても、画像評価装置20から取得した指標値KIを用いて、表面状態として加工面の形状を正確に推定することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…表面状態推定システム、2…粗さ計、10…研削装置、11…研削盤、12…制御装置、13…カメラ、13a…照明装置、14…インターフェース、20…画像評価装置、21…評価領域設定部、22…エリア分割部、23…輝度取得部、231…輝度平均値算出部、232…輝度差分値算出部、24…指標値算出部、30…学習処理装置(演算装置)、31…プロセッサ、32…記憶装置、33…インターフェース、40…推定演算装置(演算装置)、41…プロセッサ、42…記憶装置、43…インターフェース、50…円筒研削盤、51…ベッド、52…主軸台、52a…モータ、53…心押台、54…トラバースベース、54a…モータ、55…砥石台、55a…モータ、56…砥石車、56a…モータ、57…定寸装置、57a…送り機構、58…砥石車修正装置、61…訓練用データセット取得部、61a…指標値取得部、61b…実粗さ値取得部、62…訓練用データセット記憶部、63…モデル生成部、71…モデル記憶部、72…指標値取得部、73…推定部、74…判定部、75…出力部、A…エリア、Am…エリア、HR…評価領域、JS…実粗さ値、KI…指標値、P1…第一ピクセル、P2…第二ピクセル、P3…第三ピクセル、P4…第四ピクセル、L1…閾値、L2…閾値、Q11…下限点、Q12…上限点、Q13…中央位置、Q21…下限点、Q22…上限点、Q23…中央位置、R…修正信号、RC…中心、RP1,RP2…点、SP…輝度データ、SS…(推定された)表面粗さ(表面状態)、T…工具、W…工作物、W1…研削加工面、Z…全体画像データ、b…切片、k…傾き、Δφ(n)…輝度差分値、Δφg(n)…輝度差分二乗総和値、φ…輝度、φa…輝度平均値、φi…平均輝度、φsa1…輝度総和平均値、φsa2…輝度総和平均値
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