(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】樹脂封止電気部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 531
(21)【出願番号】P 2021035250
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
(72)【発明者】
【氏名】石原 友佳
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-085273(JP,A)
【文献】特開2018-147909(JP,A)
【文献】特開2020-136428(JP,A)
【文献】特開2003-100547(JP,A)
【文献】特開2020-031117(JP,A)
【文献】実開昭61-039982(JP,U)
【文献】特開2003-100546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
電子部品を収容する、上方に開口を有するケースと、
ケース内に充填される樹脂と、
一端側が樹脂に埋設され、他端側がケースの側壁部を跨いでケース外に延出される延出部を備えた板状体と、
延出部の下面を伝ってのケース外への樹脂漏れを抑制する弾性部材とを備え、
弾性部材が、
ケースの側壁部よりも上に突出し、板状体を上方からケース内に収容することで延出部の下面に当接する当接部を備えて
おり、
当接部が、素材自体が弾性を備える弾性材料からなる、樹脂封止電気部品。
【請求項2】
電子部品と、
電子部品を収容する、上方に開口を有するケースと、
ケース内に充填される樹脂と、
一端側が樹脂に埋設され、他端側がケースの側壁部を跨いでケース外に延出される延出部を備えた板状体と、
延出部の下面を伝ってのケース外への樹脂漏れを抑制する弾性部材とを備え、
弾性部材が、板状体を上方からケース内に収容することで延出部の下面に当接する当接部を備えて
おり、
当接部が、延出部の下面に向かって反発するばね性を備えるようにして曲げられている、樹脂封止電気部品。
【請求項3】
弾性部材が、ケースに取り付けられる本体部を備え、当接部が本体部よりも肉薄とされている、請求項1
又は2記載の樹脂封止電気部品。
【請求項4】
弾性部材とケースとの間に、弾性部材の上方からの取り付けによって嵌合する凹凸嵌合部が形成されている、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂封止電気部品。
【請求項5】
1つの弾性部材が、複数の延出部の下面と当接している、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂封止電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケースの側壁部を跨いでケース外に延出された延出部を備える樹脂封止電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ケースの側壁部を跨いでケース外に延出される例えば外部接続端子等の延出部を備えた樹脂封止電気部品では、製造時に、延出部を伝っての樹脂漏れが問題となることがある。具体的には、延出部がケースの内面と近接して配置されることで、毛細管現象により延出部とケースの内面との間に樹脂の這い上がりが生じ、這い上がった樹脂が延出部の下面を伝ってケース外に漏れ出すのである。
【0003】
特許文献1には、ケースの側壁部のうち、外部接続端子と対向する部分を他の部分よりも上に突出させることで、この突出部の上面と外部接続端子の下面との間にまで樹脂が這い上がるのを抑制することが開示されている。また、特許文献2には、外部接続端子と対向するケース上端部の内面側を切り欠くことで外部接続端子とケース内面との間の間隔を広げ、樹脂の這い上がりを抑制することが開示されている。また、特許文献3には、ケース上端部を二重壁とすることで上方に開口する樹脂だまりを形成し、這い上がってきた樹脂を樹脂だまり内に流れ込ませることで、ケース外への漏れ出しを抑制することが開示されている。また、特許文献4には、樹脂面下に設けられた貫通孔から外部接続端子を引き出すにあたって、貫通孔と外部接続端子との間にゴム材からなる環状のシール部材(封止部材)を介在させ、両者間の隙間を塞ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-85273号公報
【文献】特開2003-100547号公報
【文献】特開2010-129573号公報
【文献】特開2016-058688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、特許文献1は、樹脂の表面張力や、ケースや外部接続端子のぬれやすさ等の条件の変化によって、突出部の高さが十分ではなくなる場合があり、また、仮に突出部の上面と外部接続端子の下面との間にまで樹脂が這い上がった場合、樹脂漏れを防ぐことができない。また、特許文献2は、外部接続端子とケース内面との間に所定の間隔が形成されるようにケースを精度良く製造しなければならず、手間がかかる。特許文献3においても、所定の間隔をもった樹脂だまりを設けるためにケースを精度良く製造しなければならず、手間がかかる。特許文献4は、樹脂面下から外部接続端子を延出させる場合には有効であるが、樹脂面外であるケース上方の開口から外部接続端子を引き出す場合には過剰な方法であり、また組み立ても煩雑なことから適切な方法とは言えない。
【0006】
本発明は、製造や組み立てが簡単で樹脂漏れを抑制することができる樹脂封止電気部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂封止電気部品1は、電子部品4と、電子部品4を収容する、上方に開口23を有するケース2と、ケース2内に充填される樹脂8と、一端側が樹脂8に埋設され、他端側がケース2の側壁部22を跨いでケース2外に延出される延出部62(72)を備えた板状体5と、延出部62(72)の下面を伝ってのケース2外への樹脂漏れを抑制する弾性部材3とを備え、弾性部材3が、板状体5を上方からケース2内に収容することで延出部62(72)の下面に当接する当接部32を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記樹脂封止電気部品においては、弾性部材3が、ケース2に取り付けられる本体部31を備え、当接部32が本体部31よりも肉薄とされていることが好ましい。
【0009】
また、当接部32が、延出部62(72)の下面に向かって反発するばね性を備えるようにして曲げられていることが好ましい。
【0010】
さらに、弾性部材3とケース2との間に、弾性部材3の上方からの取り付けによって嵌合する凹凸嵌合部9が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、1つの弾性部材3が、複数の延出部62(72)の下面と当接していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂封止電気部品は、延出部の下面に弾性部材の当接部が当接しているため、延出部の下面を伝ってのケース外への樹脂漏れを抑制することができる。また、ケースと別部材である弾性部材によって樹脂漏れを抑制するため、樹脂漏れを抑制するためにケースを精度良く製造する必要がない。また、板状体を上方からケース内に収容するだけで延出部の下面が当接部と当接するため、組み立ても簡単である。
【0013】
弾性部材が、ケースに取り付けられる本体部を備え、当接部が本体部よりも肉薄とされている場合、当接部がたわみやすくなり、製造誤差等によって延出部が上下方向にずれたとしても、延出部の下面と当接部との当接状態を維持することができる。
【0014】
当接部が、延出部の下面に向かって反発するばね性を備えるようにして曲げられている場合も、当接部がたわみやすくなり、製造誤差等によって延出部が上下方向にずれたとしても、延出部の下面と当接部との当接状態を維持することができる。
【0015】
弾性部材とケースとの間に、弾性部材の上方からの取り付けによって嵌合する凹凸嵌合部が形成されている場合、弾性部材のケースへの取り付けが簡単である。
【0016】
1つの弾性部材が、複数の延出部の下面と当接している場合、延出部ごとに弾性部材を取り付ける必要がなく、組み立てが簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一実施形態に係る樹脂封止電気部品を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の樹脂封止電気部品1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の樹脂封止電気部品1は、
図1及び
図2に示すように、ケース2と、ケース2に取り付けられる弾性部材3と、ケース2内に収容される電子部品4と、ケース2内に収容される板状体5と、ケース2内に充填される樹脂8とを備えている。以下、上記各部品について説明するが、「上下」の概念は、製造時、より具体的には樹脂充填時におけるものであって、必ずしも使用時の上下を規定するものではない。
【0019】
[ケース]
ケース2は、
図1に示すように、平面視略矩形状の底面21と、底面21の4つの辺からそれぞれ上方に向かって立ち上がる側壁部22とを備えている。ケース2の上方には開口23が設けられており、この開口23を通じて電子部品4や板状体5が上方からケース2内に収容される。4つの側壁部22のうち、底面21の長辺に位置する2つの側壁部22には、弾性部材3を取り付けるための取り付け部24が設けられている。
【0020】
取り付け部24は、側壁部22の上部を略U字状に切り欠くとともに、切り欠き25の内周面(底部25aと一対の側部25bと)から、弾性部材3が備える凹部33に挿し込み可能な凸部26を延出させることで形成されている。
【0021】
凸部26は、平面視、側壁部22の内面よりも外側に位置している。これは、取り付け部24に弾性部材3を取り付けた際、側壁部22の内面と、後述する弾性部材3の本体部31の内面とが同一平面上に位置する(面一となる)ようにするためである。なお、凸部26を側壁部22よりも外面に位置させるための張り出し部27は、
図5に示すように弾性部材3の本体部31の下面全体を下から支えられるように、凸部26を超えて横方向に延出されていてもよい。また、凸部26は側面視略U字状に連続している。凸部26の突出長さは、
図3に示すように、切り欠き25の底部25aでは一様であり、切り欠き25の側部25bでは異なっている。具体的には、側部25bに設けられた凸部26は、上に向かうにしたがって突出長さが短くなっている。ただ、上端近傍には、元の長さと同じ程度の突出長さとなった突出部26aが設けられており、全体として側面視略鉤状となっている。
【0022】
上記構成のケース2は、合成樹脂製等の非導電性材料からなる。ただし、金属製等の導電性材料を用いたものであってもよい。
【0023】
[弾性部材]
弾性部材3は、本体部31と、本体部31の上面から上方に向かって延出された当接部32とを備えている。
【0024】
本体部31は、側面から見たときの形状や大きさ(上下方向の高さ、横方向の幅)が、ケースの切り欠きの形状や大きさと略同じである。本体部31には、
図3に示すように、ケース2の切り欠き25の内周面と対向する面、具体的には、下面31aと長手方向の両端面31bとに、凸部26と嵌合する凹部33が設けられている。この凹部33についても、凸部26と同様に側面視略U字状に連続している。そのため、凸部26に弾性部材3の凹部33を嵌合させることで形成される凹凸嵌合部9(
図5参照)は、側面視略U字状に連続する。凹部33の溝深さは、下面では一様である。端面では、上に向かうにしたがって溝深さが短くなっているが、上端部近傍では元の深さと同じ程度の溝深さになっており、段差33aが形成されている。そして、この段差33aと、凸部26の突出部26aの下面とが係合するようになっている。
【0025】
本体部31の上面は、ケース2の凸部26と本体部31の凹部33を嵌合させた状態で、樹脂面と同じもしくはそれよりも高い位置、例えば側壁部22の上端面と同じになるように設定されている。そのため、側壁部22に設けられた切り欠き25は、
図2及び
図5に示すように本体部31によって塞がれることになる。換言すれば、弾性部材3の本体部31が側壁部22の一部として機能し、切り欠き25からの樹脂8の流出を防止する。また、凹凸嵌合によってラビリンスが形成されているため、凹凸嵌合部9からの樹脂漏れは生じにくい。
【0026】
当接部32は、本体部31の上面から上方に向かって突出している。当接部32の上端の形状は、延出部62、72の下面と隙間なく密着できるよう、延出部62、72の下面と同じ形状(平坦)とされている。なお、平坦である以外にも同じ形状であればよい。この当接部32は、本体部31よりも肉薄とされている。厚みとしては、後述する板状体5の延出部62、72が上方から当接してきた場合に、変形しつつも元の形状に戻ろうとする反発力をもって延出部62、72の下面に当接し続けられる厚みであれば、特に限定されない。当接部32の上方への突出長さは、板状体5を上方からケース2内に収容することで自然に当接するに十分な長さとされている。当接部32の長さ(横方向の幅)は、例えば
図1に示すように、延出部62、72の幅よりも大とされており、組み立てた際に、当接部32が延出部62、72の側縁からはみ出すようになっている。また、1つの当接部32につき1つの延出部62、72が当接するように設けること、換言すれば、延出部62、72ごとに縁切り32aを設けることが好ましい。これにより延出部62、72同士の高さが異なっていても、当接部32を確実に延出部62、72の下面に当接させることができる。
【0027】
上記構成の弾性部材3は、例えば合成ゴムからなる。ただ、シリコーン樹脂や天然ゴム等、素材自体が弾性を備える種々の弾性材料を用いることができる。また、弾性部材3全体が同一材料である必要はなく、例えば、本体部31を合成樹脂とし、当接部32を合成ゴムとしてもよい。要は、当接部32が弾性を備えていればよい。さらに、素材自体が弾性を有しなくても、形状で弾性を備えるように、具体的には、延出部62、72の下面に向かって反発するばね性を備えるように、例えば
図4Aに示すように略く字状に曲げたもの、
図4Bに示すように略C字状に曲げたもの、
図4Cに示すように根元を曲げることで全体的に斜めに傾けたものを当接部32として使用することができる。曲げる方向は、ケースに対して内向きでも外向きでも良い。この場合、当接部32の素材としては合成ゴムやシリコーン樹脂のような軟質材料に限らず、合成樹脂や金属等の硬質材料でもよい。
【0028】
[電子部品]
電子部品4は、例えば絶縁性のフィルム上に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回することでなるコンデンサ素子(フィルムコンデンサ)であって、
図1に示すように、軸方向両端面に金属を溶射してなる電極部4a、4bがそれぞれ形成されている。このコンデンサ素子4は、軸方向から見ると俵状、具体的には、4つのコーナー部にR(アール)が設けられており、電極部4a、4b間(周囲面)に平坦部4cと曲面部4dとからなる側面を有している。そして、電極部4a、4bを上下方向に向けるとともに、平坦部4c同士を互いに対向させるようにして複数(図においては5個)並設されている。なお、コンデンサ素子4としてはフィルムコンデンサに限らず、セラミックコンデンサなど種々のコンデンサ素子を用いても良い。また、電子部品はコンデンサに限るものでもなく、抵抗やコイルなど種々の電子部品を用いても良い。形状についても円柱状や角柱状など種々の形状を採用し得る。個数においても適宜変更可能である。
【0029】
[板状体]
板状体5は、例えば電子部品4の電極部4a、4bに接続される正負一対の電極板6、7である。
【0030】
第1電極板(例えば正極側)6は、電子部品4の上面に重なる基板部61と、基板部61の外縁から延出される延出部62とを備えている。
【0031】
基板部61は平面視略矩形状であって、電子部品4の上側の電極部4aと接続するための舌状の接続部61aを備えている。
【0032】
延出部62は、基板部61から上方に立ち上がる立ち上がり部62aと、立ち上がり部62aの上端から横方向に延びる水平部62bとを備えている。立ち上がり部62aはケース2の側壁部22や弾性部材3の本体部31の内面に沿っており、且つ近接対向する。この延出部62は、略矩形状とされた基板部61の2つの長辺からそれぞれ延出されている。具体的には、一方の長辺から1つ延出され、他方の長辺から3つ延出されており、外部機器(図示しない)との接続に供される外部接続端子として機能する。
【0033】
第2電極板(例えば負極側)7は、電子部品4の下側に重なる基板部71と、基板部71の外縁から延出される延出部72とを備えている。
【0034】
基板部71は平面視略矩形状であって、電子部品4の下側の電極部4bと接続するための舌状の接続部71aを備えている。
【0035】
延出部72は、基板部71から上方に立ち上がる立ち上がり部72aと、立ち上がり部72aの上端から横方向に延びる水平部72bとを備えている。立ち上がり部72aはケース2の側壁部22や弾性部材3の本体部31の内面に沿っており、且つ近接対向する。この延出部72は、略矩形状とされた基板部71の2つの長辺からそれぞれ延出されている。具体的には、一方の長辺から1つ延出され、他方の長辺から3つ延出されており、外部機器(図示しない)との接続に供される外部接続端子として機能する。なお、他方の長辺から延出された3つの延出部の立ち上がり部72aについては、電子部品4の上端近傍まで一体化されている。ただ、はじめから3つに分かれていてもよい。また、延出位置は、第1電極板6の延出部72とは横方向にずれており、平面視において水平部62b、72b同士は重なり合っていない。
【0036】
上記構成の板状体5は、アルミニウムや銅等の導電性の金属板を所定形状に切り抜き、適宜折曲加工することで形成されている。なお、板状体5としては電極板に限らず、電子部品4の熱をケース2外へと放出するための放熱板や、電極板や外部機器との絶縁を確保するための絶縁板であってもよい。この場合、熱伝導性材料や絶縁材料等、その設置目的に適した材質とする。
【0037】
[樹脂]
ケース2内に充填される樹脂8は、例えばエポキシ樹脂である。ただ、これに限らず、ウレタン樹脂等の公知の種々の樹脂を使用可能である。なお、耐湿性に優れた樹脂や熱伝導性の高い樹脂を採用することが好ましい。また、用いる樹脂の種類や特性に応じて樹脂厚(樹脂表面から電子部品までの距離)を変更することは、設計上、当然に考慮されるべきことである。
【0038】
[製造方法]
次に、樹脂封止電気部品1の組み立てについて説明する。まず、ケース2に弾性部材3を取り付ける。具体的には、ケース2の取り付け部24の凸部26が弾性部材3の凹部33に挿し込まれるように弾性部材3を上方から押し下げる。これにより、ケース2の切り欠き25が弾性部材3の本体部31によって塞がれる。また、ケース2と弾性部材3との間に、弾性部材3の上方からの取り付けによって嵌合する凹凸嵌合部9が形成される。当接部32は、ケース2の側壁部22よりも上に突出する。
【0039】
続いて、第1電極板6の基板部61と、コンデンサ素子4の上側の電極部4aとを接続するとともに、第2電極板7の基板部71と、コンデンサ素子4の下側の電極部4bとを接続して、コンデンサ素子4と、第1電極板6と、第2電極板7とを一体化したコンデンサモジュールを形成する。この際、第1電極板6の延出部62と、第2電極板7の延出部72とがともに上方に位置するようにして取り付ける。
【0040】
続いて、コンデンサモジュールを上方からケース2内に収容する。この際、延出部62、72の水平部62b、72bがケース2の側壁部22の上端を跨いでケース2外に延出されるように、延出部62、72を上にして収容する。そしてコンデンサ素子4を所定の位置まで下ろし、延出部62、72の水平部62b、72bの下面に当接部32の上端を当接させる。そして、ケース2内に樹脂8を充填し、コンデンサ素子4を封止することで樹脂封止電気部品1の製造を完了する。
【0041】
樹脂充填後の延出部62、72は、
図5に示すように、その一端側(立ち上がり部の一部)が樹脂8に埋設される。他端側は、ケース2の側壁部22に沿って立ち上がって樹脂8から突出し、ケース2の側壁部22を跨いでケース2外に延出されている。図に示すように、立ち上がり部62a、72aと、ケース2の側壁部22の内面(具体的には、側壁部22の一部として機能する弾性部材3の本体部31の内面)とが近接しているため、毛細管現象によって樹脂8が両者間を這い上がることがある。ただ、仮に樹脂8が這い上がったとしても、立ち上がり部62a、72aと連続する水平部62b、72bの下面に当接部32が隙間なく当接しているため、樹脂8は当接部32によってせき止められ、水平部62b、72bの下面を伝ってケース2外に漏れ出すことはない。また、延出部62、72の下面に当接部32を当接させるにあたっては、板状体5をケース2内に上方から収容するだけでよく、環状のシール部材を延出部62、72に通す等の特別な動作を必要としない。さらに、製造誤差や組み立て誤差により、延出部62、72の上下位置が多少ずれたとしても、当接部32が弾性変形することによって当接状態が維持されるため、製造および組み立てを簡単に行うことができる。
【0042】
また、1つの弾性部材3が複数の延出部62、72の下面と当接している、すなわち、1つの弾性部材3が複数の延出部62、72の下面に対応できる長さとされているため、延出部62、72ごとに弾性部材3を設ける場合に比べて弾性部材3の設置も簡単である。
【0043】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態では、切り欠き25に弾性部材3を取り付けていたが、切り欠き25を設けていない側壁部22に弾性部材3を取り付けてもよい。取り付け方としては、例えば弾性部材3の下部に凹部を設け、凹部に側壁部22の上部を差し込むことが考えられるが、弾性部材3をケース2に固定できる方法であれば種々の方法を採用し得る。また、上記実施形態では、ケース2に凸部26を設け、弾性部材3に凹部33を設けていたが、ケースに凹部を設け、弾性部材に凸部を設けてもよい。この場合でも両者間に凹凸嵌合部9が形成される。また、必ずしも連続する凸部と連続する凹部の嵌合である必要は無く、1つ又は複数の凸部と孔部とによる嵌合であってもよい。また、凹凸嵌合に限らず、段差による係合や、平面同士の当接であってもよい。固定に際しては適宜接着剤などを用いてもよい。また、弾性部材3の長さや、当接する延出部62、72の数は適宜変更可能である。延出部62、72の水平部62b、72bは、横方向に延びるものの他に、先端側を下方に折り曲げてもよい。また、電極板が基板部61、71を備えていたが、必ずしも基板部61、71を備える必要はない。特に、板状体5として放熱板や絶縁板を採用している場合、必ずしも電子部品と当接している必要はない。
【符号の説明】
【0044】
1 樹脂封止電気部品
2 ケース
21 底面部
22 側壁部
23 開口
24 取り付け部
25 切り欠き
25a 底部
25b 側部
26 凸部
26a 突出部
27 張り出し部
3 弾性部材
31 本体部
31a 下面
31b 端面
33 凹部
33a 段差
32 当接部
32a 縁切り
4 電子部品(コンデンサ素子)
4a 上側の電極部
4b 下側の電極部
4c 平坦部
4d 曲面部
5 板状体
6 第1電極板
61 基板部
61a 接続部
62 延出部
62a 立ち上がり部
62b 水平部
7 第2電極板
71 基板部
71a 接続部
72 延出部
72a 立ち上がり部
72b 水平部
8 樹脂
9 凹凸嵌合部