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7612314クリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】クリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20250106BHJP
   F24F 3/167 20210101ALI20250106BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20250106BHJP
   F24F 6/04 20060101ALI20250106BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F3/167
F24F7/06 C
F24F6/04
F24F6/00 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024128982
(22)【出願日】2024-08-05
【審査請求日】2024-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】樋口 康博
(72)【発明者】
【氏名】横山 順一
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎吾
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159653(JP,A)
【文献】特開2020-159654(JP,A)
【文献】特開2014-119123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間のうち天面、側面、下面により区画される空間通路と、前記空間通路の側面に配置される加湿ユニットおよび冷却ユニットと、前記空間通路の下面または側面に配置される送風ユニットとを備え、
前記加湿ユニットは、保水体を配する加湿器と、開度を調整し得るモータダンパとを備えて対象空間から空間通路内への空気を加湿し、
前記冷却ユニットは、対象空間から空間通路内への空気を冷却し、
前記送風ユニットは、対象空間の空気を加湿ユニットおよび冷却ユニットを介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を前記対象空間へ向けて送り出し、
前記対象空間から空気通路内へ引き込まれる空気は、前記加湿器の保水体を通過し、水滴を飛散させることなく、保水体の水の気化により加湿され、
前記送風ユニットから対象空間に向かって送り出された空気は、対象空間の下方に向かいつつ床面に衝突し、床面に沿って流れた後、対象空間を上昇して空間通路に引き込まれるように構成されたことを特徴とするクリーンルームの空調システム。
【請求項2】
前記加湿ユニットは、空間通路内の空間を両側で挟み込むように両側の側面にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項3】
前記加湿ユニットと前記冷却ユニットは、空間通路の長手方向に沿って側面に交互に配置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項4】
前記側面は、両側に位置する一方向の側面と、一方向の側面と異なる方向に向かう他方向の側面とからなり、一方向の側面と他方の側面により空間通路を囲むように構成され、
前記加湿ユニットと前記冷却ユニットは、一方が一方向の側面に配置されると共に、他方が他方向の側面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項5】
前記加湿ユニットの加湿器は、空間通路の外部に位置するように側面に接続されることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項6】
前記加湿ユニットの加湿器は、対象空間側の開口から保水体まで距離を設定し、
前記距離の設定は、保水体から水が落下した際に飛び跳ねて対象空間の下方へ落下することを防止する間隔であることを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項7】
前記加湿ユニットは、保水体への水の供給調整とモータダンパの開度調整とを行い、空間通路内へ引き込む際の空気への加湿を非動力で行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項8】
対象空間のうち天面、側面、下面により区画される空間部と、前記空間部の側面に配置される加湿ユニットと、前記空間部の天面に配置される冷却ユニットと、前記空間部の下面に配置される送風ユニットとを備えると共に、床面に据置可能に構成され、
前記加湿ユニットは、保水体を配する加湿器と、開度を調整し得るモータダンパとを備えて対象空間から空間部内への空気を加湿し、
前記冷却ユニットは、対象空間から空間部内への空気を冷却し、
前記送風ユニットは、対象空間の空気を加湿ユニットおよび冷却ユニットを介して空間部内へ引き込み、浄化した空気を前記対象空間の下方へ向けて送り出し、
前記対象空間から空気通路内へ引き込まれる空気は、前記加湿器の保水体を通過し、水滴を飛散させることなく、保水体の水の気化により加湿され、
前記送風ユニットから対象空間に向かって送り出された空気は、対象空間の下方に向かいつつ床面に衝突し、床面に沿って流れた後、対象空間を上昇して空間部に引き込まれるように構成されたことを特徴とするクリーンルームの空調システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のクリーンルームの空調システムを用いる加湿ユニットの制御方法であって、
加湿要求がある場合には、モータダンパの開度を20%以上にし、保水体への水の供給を開始し、
加湿要求がない場合には、モータダンパの開度を5%~15%の範囲にし、保水体への水の供給を停止し、対象空間から空間通路への空気の引き込みに伴い保水体を乾燥させることを特徴とする加湿ユニットの制御方法。
【請求項10】
加湿要求がない場合には、所定時間経過後にモータダンパの開度を5%~15%の範囲にし、モータダンパの開度を保持することを特徴とする請求項9に記載の加湿ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近頃の工業用クリーンルームでは、生産装置内での製品が暴露される個所の局所クリーン化、工程間搬送での製品暴露箇所の局所クリーン化が進んでおり、工場の生産環境であるクリーンルームは、間仕切りの無い空間が一般化している。
【0003】
図21は、クリーンルームにおける空調システムの一例を示している。クリーンルームは、対象空間Sの下方にグレーチング床の床面1を介して床下空間2を形成し、床下空間2には、外気調和機3から空気が供給されると共に、対象空間Sから空気が流入するようにしている。またクリーンルームは、対象空間Sの上方に天井面4を介して天井空間5を形成し、天井面4には、ファンとHEPAフィルタからなるファンフィルタユニット(FFU)6を配置し、天井空間5から対象空間Sへ調整空気が供給されるようになっている。さらにクリーンルームは、側方にレタンシャフト7を形成し、床下空間2と天井空間5を連通し、床下空間2から空気が天井空間5へ向かうにしている。
【0004】
レタンシャフト7には、冷却装置8および加湿器9が配置されている。冷却装置8は、冷却コイル10と流量調整弁11からなり、空気を冷却するようにしている。また、加湿器9は、水を噴霧するノズル12と、ノズル12へ水を供給する給水配管13と、給水配管13に設置される流量制御弁14とを備え、空気に水を噴霧するようにしている。
【0005】
ここで加湿器9は、空気に対して水を微細な水滴として噴射するスプレー方式と、保水機能を有する保水体に空気を通過させる気化方式とがある。図21の一例の加湿器では、スプレー方式を採用しており、加湿器9のノズル12に二流体ノズルを用い、空気と水などの2つの流体を混合して水滴の粒径を小さくし、水を可能なかぎり蒸発させるようにしている。またスプレー方式の加湿器9は、精密な湿度管理が要求される工業用クリーンルームで、高圧水噴霧によりほぼ加湿量に見合う水量を供給し、さらに時間比例制御や空気量比例制御によって加湿量を精度よく管理し得るようにしている。
【0006】
スプレー方式の加湿器9の他例には、図22に示すようにレタンシャフト15の下方位置にノズル16を配置して空気を加湿すると共に、ノズル16の上流側及び下流側にはワッシャメディア17を配置するものもある。ワッシャメディア17は、有害物質除去を行うと同時に、クリーンルーム内へ供給される調整空気に水滴が混じらないようにしている。
【0007】
一方、気化方式の加湿器9は、図23に示すごとく、滴下により水を供給して保水する保水体18と、保水体18に対して空気を吹き付ける有圧の加湿ファン20とを組み合わせて加湿ユニット19を構築し、さらに加湿ファン20の回転数を制御できる制御装置21を備え、加湿ファン20の回転数をインバータ制御して保水体18を通過する風量を可変としている。これにより、スプレー方式の加湿器9に比べて気化冷却による省エネ効果を得ると共に、保水体18は常時湿潤状態となり、装置を通過する風量を制御して加湿量を制御し得るようになっている。
【0008】
この種のスプレー式の加湿器に関連する先行技術文献としては、下記の特許文献1、2があり、気化方式の加湿器に関連する先行技術文献としては、下記の特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4334935号公報
【文献】特開2007-178116号公報
【文献】特開2020-159653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、スプレー方式の加湿器9は、微細な水滴が飛散し、対象空間S内の機器や、その他の機器類に水滴が付着する可能性があるため、レタンシャフト内や床下等の広い空間に設置しなくてはならず、設置場所に制約があるという問題があった。またスプレー方式の加湿器9は、水を微細な水滴にするための動力源が必要になるという問題があった。
【0011】
気化方式の加湿器9は、設置場所の制約は少ない一方で設置場所に加湿ファン20の動力源とインバータ制御が必要になるという問題があった。また気化方式の加湿器9は、インバータ制御において回転数の下限(30%、15Hz)があり、それ以下の加湿要求時には加湿ファンON-OFFの時間比例制御となるため、加湿器9の制御が複雑になり、加湿としての使用条件の幅が狭いという問題があった。さらに気化式の加湿器9は、ボールルーム方式のクリーンルームのように空気の温度が低い場合に加湿効率が悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、加湿器に必要な動力源を減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げるクリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、対象空間のうち天面、側面、下面により区画される空間通路と、前記空間通路の側面に配置される加湿ユニットおよび冷却ユニットと、前記空間通路の下面または側面に配置される送風ユニットとを備え、
前記加湿ユニットは、保水体を配する加湿器と、開度を調整し得るモータダンパとを備えて対象空間から空間通路内への空気を加湿し、
前記冷却ユニットは、対象空間から空間通路内への空気を冷却し、
前記送風ユニットは、対象空間の空気を加湿ユニットおよび冷却ユニットを介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を前記対象空間へ向けて送り出し、
前記対象空間から空気通路内へ引き込まれる空気は、前記加湿器の保水体を通過し、水滴を飛散させることなく、保水体の水の気化により加湿され、
前記送風ユニットから対象空間に向かって送り出された空気は、対象空間の下方に向かいつつ床面に衝突し、床面に沿って流れた後、対象空間を上昇して空間通路に引き込まれるように構成されたことを特徴とするクリーンルームの空調システムにかかるものである。
【0014】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記加湿ユニットは、空間通路内の空間を両側で挟み込むように両側の側面にそれぞれ配置されても良い。
【0015】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記加湿ユニットと前記冷却ユニットは、空間通路の長手方向に沿って側面に交互に配置されても良い。
【0016】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記側面は、両側に位置する一方向の側面と、一方向の側面と異なる方向に向かう他方向の側面とからなり、一方向の側面と他方の側面により空間通路を囲むように構成され、
前記加湿ユニットと前記冷却ユニットは、一方が一方向の側面に配置されると共に、他方が他方向の側面に配置されても良い。
【0017】
本発明のクリーンルームの空調システムは、前記加湿ユニットの加湿器は、空間通路の外部に位置するように側面に接続されても良い。
【0018】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記加湿ユニットの加湿器は、対象空間側の開口から保水体まで距離を設定し、
前記距離の設定は、保水体から水が落下した際に飛び跳ねて対象空間の下方へ落下することを防止する間隔としても良い。
【0019】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記加湿ユニットは、保水体への水の供給調整とモータダンパの開度調整とを行い、空間通路内へ引き込む際の空気への加湿を非動力で行うように構成しても良い。
【0020】
本発明は、対象空間のうち天面、側面、下面により区画される空間部と、前記空間部の側面に配置される加湿ユニットと、前記空間部の天面に配置される冷却ユニットと、前記空間部の下面に配置される送風ユニットとを備えると共に、床面に据置可能に構成され、
前記加湿ユニットは、保水体を配する加湿器と、開度を調整し得るモータダンパとを備えて対象空間から空間部内への空気を加湿し、
前記冷却ユニットは、対象空間から空間部内への空気を冷却し、
前記送風ユニットは、対象空間の空気を加湿ユニットおよび冷却ユニットを介して空間部内へ引き込み、浄化した空気を前記対象空間の下方へ向けて送り出し、
前記対象空間から空気通路内へ引き込まれる空気は、前記加湿器の保水体を通過し、水滴を飛散させることなく、保水体の水の気化により加湿され、
前記送風ユニットから対象空間に向かって送り出された空気は、対象空間の下方に向かいつつ床面に衝突し、床面に沿って流れた後、対象空間を上昇して空間部に引き込まれるように構成されたことを特徴とするクリーンルームの空調システムにかかるものでさる。
【0021】
本発明のクリーンルームの空調システムは、上記のクリーンルームの空調システムを用いる加湿ユニットの制御方法であって、
加湿要求がある場合には、モータダンパの開度を20%以上にし、保水体への水の供給を開始し、
加湿要求がない場合には、モータダンパの開度を5%~15%の範囲にし、保水体への水の供給を停止し、対象空間から空間通路への空気の引き込みに伴い保水体を乾燥させることを特徴とする加湿ユニットの制御方法にかかるものである。
【0022】
本発明の加湿ユニットの制御方法において、加湿要求がない場合には、所定時間経過後にモータダンパの開度を5%~15%の範囲にし、モータダンパの開度を保持しても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明のクリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法によれば、加湿器に必要な動力源を減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げ得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例を示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例を示す概略平面図である。
図3】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例を示す概略平面図であって空間通路で冷却空気と加湿空気が混気する状態を示すものである。
図4】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例を示す概略正面図である。
図5】本発明の実施に用いる加湿ユニットの構成の一例を示す概略断面図である。
図6】本発明の実施による加湿ユニットの制御方法であって湿度とモータダンパ開度の比例制御を示すグラフである。
図7】本発明の実施による加湿ユニットの制御方法であってモータダンパ開度と給水電磁弁ON-OFFとの制御を示すグラフである。
図8】本発明の実施による加湿ユニットの制御方法であって加湿要求があった場合の一例を示すフロー図である。
図9】本発明の実施による加湿ユニットの制御方法であって加湿要求がない場合の一例を示すフロー図である。
図10】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例において各測定点の温湿度を測定する状態を示す概略平面図である。
図11】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例において加湿ユニットの制御性を示すパターン1のグラフである。
図12】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例において加湿ユニットの制御性を示すパターン2のグラフである。
図13】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例において加湿ユニットの制御性を示すパターン3のグラフである。
図14】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の一例において加湿ユニットの制御性を示すパターン4のグラフである。
図15】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の二例を示す概略斜視図である。
図16】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の二例を示す概略平面図であって空間通路で冷却空気と加湿空気が混気する状態を示すものである。
図17】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の三例を示す概略図である。
図18】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の三例を示す概略平面図であって空間通路で冷却空気と加湿空気が混気する状態を示すものである。
図19】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の四例を示す正面図である。
図20】本発明の実施例によるクリーンルームの空調システムの構成の四例を示す側面図である。
図21】従来のクリーンルームの空調システムの一例を示す概略図である。
図22】従来のクリーンルームの空調システムの他例を示す概略図である。
図23】従来の気化式の加湿ユニットの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の第一例を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1図4は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の第一例を示している。ここで第一例は、請求項1~3、5~6、9~10に対応するものである。
【0027】
本実施例の場合、対象空間S1の上方において天面31、側面32、下面33により空間通路C1が区画されており、空間通路C1は、平面視で、対象空間S1の壁面34から離間するように延在する複数本(図2では2本)と、対象空間S1の壁面34と平行に延在して複数本の先端側に位置する1本とを備えて形成されている。ここで空間通路C1は、1本でも良いし、3本以上でも良いし、他の配置で良い。
【0028】
空間通路C1の天面31は対象空間S1のスラブ面35と連なり、空間通路C1の側面32は両側に所定長さの板状面を配し、空間通路C1の下面33は対象空間S1の下側天井面としている。
【0029】
空間通路C1の側面32には、加湿ユニット36および冷却ユニット37が配置されている。加湿ユニット36および冷却ユニット37は、空間通路内の空間を両側で挟み込むように両方の側面32にそれぞれ配置されている。また加湿ユニット36および冷却ユニット37は、空間通路C1の長手方向に沿って側面32に交互に配置され、加湿ユニット36の両隣には間隔を介して冷却ユニット37が位置するようにしている。ここで加湿ユニット36および冷却ユニット37は、空間通路内の空間を挟んで完全な対称配置であっても良いし、図2に示すごとく長手方向にズレを有して非対称配置であっても良い。さらに加湿ユニット36および冷却ユニット37は、空間通路C1の長手方向に沿って全て交互に配置されても良いし、図2に示すごとく一部を交互に配置しても良い。
【0030】
空間通路C1の下面33には、送風ユニット38が配置されている。下面33は、平面視で格子状に組んだ天井セルにより形成されており、送風ユニット38は、下面33の格子の開口であるグリッドに適宜な位置に設置されている。ここで送風ユニット38は、下面33の全面に配置するようにしても良いし、所定の間隔を置いて配置しても良い。また送風ユニット38を配置しないグリッドには、閉鎖パネルを設置して塞ぐようにしても良い。尚、図2では、対象空間S1の壁面34から延在する空間通路C1の下面33には、長手方向(延在方向)に隙間なく送風ユニット38を配置していると共に、短手方向に4台の送風ユニット38を配置している。
【0031】
加湿ユニット36は、気化式の加湿器39と、加湿器39に隣接するモータダンパ40とを備えている。加湿器39は、空間通路C1の外部に位置するようにモータダンパ40を介して空間通路C1の側面32に接続されており、モータダンパ40は空間通路C1の側面32に固定されている。ここで加湿器39とモータダンパ40は逆の位置に配置され、加湿器39は空間通路C1の側面32に固定される共に、モータダンパ40は、空間通路C1の外部に位置するように加湿器39を介して空間通路C1の側面32に接続されても良い。また加湿ユニット36およびモータダンパ40は天井面から吊り下げ固定が好ましいが、空間通路C1の側面32に固定されても良いし、他の固定手段により固定されても良い。
【0032】
加湿器39は、図5に示すごとくモータダンパ40に固定される箱型のチャンバ41を備え、チャンバ41は、モータダンパ40と反対側に対象空間側の開口42を備えていると共に、底面にドレンパン43を備えている。チャンバ内にはモータダンパ側寄りに位置する保水体44を備えている。保水体44は保水性の素材を備えると共に外部から給水管45を介して水が供給されるようになっている。ドレンパン43は、保水体44から落下した水を受け、排水管46を介してチャンバ外へ排水するようになっている。給水管45には給水電磁弁47が配置されており、制御部48からの信号により開閉可能になっている。ここで加湿器39は、対象空間側の開口42から保水体44まで距離Lを設定し、距離Lの設定は、保水体44から水が落下した際にドレンパン43から飛び跳ねて対象空間S1の下方へ落下することを防止する間隔になっている。ここで距離Lは100mm~300mmが好ましく、特に250mmが好ましい。
【0033】
モータダンパ40は、図5に示すごとく加湿器側から空間通路C1へ空気を通す箱型の外枠部49を備え、外枠部内には、開度を調整し得る複数の羽根50を備えている。羽根50の軸部には開度調整モータ51が接続されており、開度調整モータ51は制御部48からの信号により羽根50を開閉し、モータダンパ40の開度を調整するようになっている。
【0034】
ここで加湿ユニット36は、従来例に示すような空気を吹き付ける有圧の加湿ファン20(図23参照)やインバータ制御を備えることなく、給水電磁弁47による保水体44への水の供給調整と、羽根50の開閉によるモータダンパ40の開度調整とのみを行い、空気への加湿を非動力で行うようになっている。
【0035】
冷却ユニット37は、内部に冷媒が流通するドライコイルを備え、対象空間S1から空間通路内への空気を冷却するようになっている。
【0036】
送風ユニット38は、図4に示すごとく筐体の上側にファン52を備え、下側にはHEPAフィルタ53を備えたファン・フィルタ・ユニット(FFU)であり、対象空間S1の空気を加湿ユニット36または冷却ユニット37を介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を対象空間S1の下方へ向けて送り出すようになっている。
【0037】
対象空間S1内の床面Fでは機器aが稼働している。機器aは、半導体集積回路を形成する母材のウエハや、フラットパネルディスプレイの基板、あるいはそれらの物品を複数収納できる容器等の物体(被加工物)を加工する生産装置である。対象空間S1内の天井付近には、被加工物を搬送するための天井搬送装置(図示せず)が設けられている。
【0038】
対象空間S1内では、被加工物が露出する可能性のある領域を高度清浄域とし、送風ユニット38の下方位置が高度清浄域になるように設定している。高度清浄域をさらに具体的に説明すると、搬送レールbを走行する搬送車cによって被加工物dが搬送され、搬送車cからポッドに入った被加工物dが降下され、機器aのロード・アンロード部(図示せず)との間で被加工物dの受け渡しが行われる場所、すなわち平面視で搬送レールbの周辺の領域である。そして、他の領域を非高度清浄域とし、高度清浄域と非高度清浄域との境界の上方には、空間通路C1の側面32が位置するように設定している。
【0039】
空間通路C1の側面32の下部には、高度清浄域と非高度清浄域との間に位置するように、下方へ延びる垂壁54が設置されている。垂壁54は、高度清浄域と非高度清浄域との間を両空間の下方が連通するように不完全に隔てている。また垂壁54の下端は、床における機器aの側方の作業員移動の妨げとならないよう機器aの上方に位置している。
【0040】
対象空間S1において、機器aは、図4に示す如く、前面部が搬送レール下方の高度清浄域へわずかに突出するように配置され、他の部分は排熱箇所を含めて非高度清浄域内に位置している。
【0041】
ここで対象空間S1は、塵埃の侵入を防ぐために内部を陽圧に保つ必要があり、外調機22から外気を取り込み、適当な温度と湿度に調整したうえで床下の空間へ供給するようになっている。外調機22は、外気を浄化するプレフィルタ23,外気最終フィルタ24と、取り込んだ外気を予熱するための予熱コイル25と、予熱コイル25の下流で外気を冷却する冷却コイル26と、冷却コイル26の下流で外気を加熱するための加熱コイル27と、気流を作り出す送気ファン28を備えている。また排気ファン30の作動により、対象空間S1の空気の一部が適宜外部へ排出されるようになっている。
【0042】
本発明の実施の形態の第一例について作用を説明する。
【0043】
送風ユニット38のファン52およびHEPAフィルタ53により空間通路C1から対象空間S1に向かって送り出された清浄な空気は、図4に示すごとく対象空間の下方に向かうようにダウンフローとなって高度清浄域を形成しつつ床面Fへ向かう。そして空気は、床面Fに衝突し、コアンダー効果を生じるように床面Fに沿って流れた後、機器aの排熱により温度が上がり、発生粉塵を含んだ空気となり、アップフローとなって対象空間S1を上昇する。
【0044】
上昇する空気は、対象空間S1の非高度浄化域を上昇し、上昇する空気のほぼ半分は、加湿ユニット36から空間通路C1に引き込まれ、保水体44の水の気化により加湿されて加湿空気となる。また同時に、上昇する空気の残りのほぼ半分は、冷却ユニット37から空間通路C1に引き込まれ、ドライコイルにより冷却されて冷却空気となる。加湿空気と冷却空気は、図3に示すごとく空間通路内で混気し、送風ユニット38のファン52により更に混気されつつHEPAフィルタ53により浄化され、清浄な空気となって空間通路C1から対象空間S1の床に向かって送り出される。
【0045】
以下、加湿ユニットの制御方法を説明する。
【0046】
加湿ユニット36において、湿度とモータダンパ開度の制御では、図6に示すごとくモータダンパ開度(MD開度)[%]の上限を100[%]とすると共に下限を10[%]に設定し、湿度[%RH]に湿度設定値(湿度SP)を設定し、湿度の上昇に伴ってモータダンパ開度を狭くし、湿度の下降に伴ってモータダンパ開度を広くするように比例制御の設定をしている。
【0047】
また加湿ユニット36において、モータダンパ開度と給水電磁弁ON-OFFとの制御では、図7に示すごとくモータダンパ開度(MD開度)[%]の設定開度を20[%]と15[%]に設定し、モータダンパ40の開動作によりモータダンパ開度が20[%]に到達した際に給水電磁弁47がONとなり、モータダンパ40が閉動作によりモータダンパ開度が15[%]に到達した際に給水電磁弁47がOFFとなるように、ON-OFF制御の設定をしている。また制御において給水がONからOFFに切り替わる際にはディレイタイマ60秒が設定されている。
【0048】
続いて加湿ユニット36の制御フローを示す。図8に示す如く、対象空間S1において湿度センサ等(図示せず)により加湿要求があった場合(ステップS1)には、制御部48から開度調整モータ51に開信号を送ってモータダンパ40の開動作を開始し(ステップS2)、モータダンパ40を20%以上、好ましく20%まで開く(ステップS3)。モータダンパ40の開度が20%になった後には、制御部48から給水管45の給水電磁弁47に開信号を送って給水電磁弁47を開とし(ステップS4)、保水体44に水を供給して水を保持する状態にし、空気の通過に伴い保水体44の水を気化させ空気を加湿する(ステップS5)。
【0049】
一方、図9に示す如く、対象空間S1において湿度センサ等(図示せず)により加湿要求がない場合(ステップS11)には、制御部48から開度調整モータ51に閉信号を送ってモータダンパ40の閉動作を開始し(ステップS12)、モータダンパ40を閉じ、開度を5%より大きく15%より小さい範囲(5%~15%)にする(ステップS3)。そしてハンチング防止を目的として所定の開度の継続時間が60秒を経過したことを確認した後(ステップS14)、制御部48から給水管45の給水電磁弁47に閉信号を送って給水電磁弁47を閉とし(ステップS15)、保水体44への水の供給を停止して加湿停止となり(ステップS16)、保水体44を自然乾燥させる(ステップS17)。以後、モータダンパ40の開度等を考慮して加湿要求があるか、または加湿停止(保水体の乾燥)を維持するかの判断段階に移行する。この段階では、モータダンパ40の開度が20%未満であるか否かを判断し(ステップS18)、モータダンパ40の開度が20%未満にならない場合(モータダンパ40の開度が20%以上の場合)、「加湿要求あり」と判断し(ステップS19)、図8に示す「加湿あり」の制御フローへ移行する。一方、モータダンパ40の開度が20%未満になる場合(モータダンパ40の開度が20%より小さい場合)、続けてモータダンパ40の開度が10%であるか否かを確認する(ステップS20)。モータダンパ40の開度が10%に達した場合には、モータダンパの開度10%を保持し(ステップS21)、その後、保水体44の乾燥段階(ステップS17)へ戻し、モータダンパ40の開度が20%以上で加湿要求があるか、またはモータダンパの開度10%を保持するかの判断を繰り返す。一方、モータダンパ40の開度が10%に達していない場合には、保水体44の乾燥段階(ステップS17)へ戻し、モータダンパ40の開度が20%以上で加湿要求があるか、またはモータダンパ40の開度が10%に達してモータダンパ40の開度10%を保持するかの判断を繰り返す。
【0050】
続いて加湿ユニットの制御性(加湿空気の分布確認)を確認した結果を示す。
【0051】
加湿ユニット36と冷却ユニット37は、空気が対象空間S1から空間通路C1へ引き込まれる箇所が異なり、空間通路内の加湿空気と非加湿空気(冷却空気)が送風ユニット(FFU)38で対象空間S1へ送り出される際に、適切に混気して送り出されているか、または混気せずに送りされているかを確認した。
測定方法では、加湿ユニット36のモータダンパ40を全開にし、給水電磁弁47を開にした状態で運転し、温湿度データロガーで温湿度を測定した。
図10では、加湿ユニット36と冷却ユニット37を交互に配置し、加湿ユニット36の両隣には冷却ユニット37が位置する状態を示している。また測定点(1)は加湿ユニット36の出口直近で送風ユニット(FFU)38の直下とし、測定点(2)は垂壁側の送風ユニット(FFU)38の直下とし、測定点(3)は加湿ユニット36の出口直近で送風ユニット(FFU)38の直下とし、測定点(4)は垂壁側の送風ユニット(FFU)38の直下とし、測定点(5)は垂壁側の送風ユニット(FFU)38の直下としている。
【0052】
測定結果では、表1のように、送風ユニット(FFU)38から対象空間S1へ送り出される空気の温湿度に大きなバラつきは見られず、適切に湿度空気が混気していることが明らかであった。
【表1】
【0053】
次に加湿ユニット36の制御性(モータダンパ40の比例制御、給水電磁弁47の開閉領域)を複数のパターンで確認した結果を示す。
【0054】
[パターン1]
(モータダンパ40の安定時平均開度10~20%、室内温度の設定値(SP値)を45%→48%)
図11に示すごとく室内湿度の設定値(SP値)を45%から48%に変更した後、モータダンパ40を開度20%超まで開き、給水電磁弁47を開にして保水体44に水を供給し、加湿動作に入る。そして室内湿度の設定値が48%に達し、給水電磁弁47を閉にする。一方でモータダンパ40の最小開度による風量と、加湿器39の保水体44に残る水とにより微加湿が継続し、給水電磁弁47の閉による給水停止後の温度変化は穏やかであった。また保水体44に残る水が乾燥により無くなると、湿度が低下し再度加湿動作を繰り返した。温度変化も温度許容幅の中で推移する共に、室内湿度は設定値±2%の幅の中で推移し、良好な制御性を確認できた。
【0055】
[パターン2]
(モータダンパ40の安定時平均開度15~20%、室内温度の設定値(SP値)を45%→50~54%)
図12に示すごとく室内湿度の設定値(SP値)を45%から50%に変更した後、54%まで徐々に変更して対象空間S1の湿度を上げていった。室内湿度の設定値が54%に達した後にモータダンパ40の閉動作を行い、開度15%で給水電磁弁47を閉にする。ここでハンチング防止としてモータダンパ40の開度15%以下の継続時間が60秒に達した後に給水電磁弁47を閉とするタイマーを設けているが、60秒に達する前にモータダンパ40が開き且つ給水電磁弁47が閉じない比例制御の形となった。また温度変化も温度許容幅の中で推移する共に、室内湿度は設定値±1%程度の精度の高い制御性が確認できた。
【0056】
[パターン3]
(モータダンパ40の安定時平均開度20~30%、室内温度の設定値(SP値)を48%→55%→58%)
図13に示すごとく室内湿度の設定値(SP値)を48%から55%に変更した後、モータダンパ40を開き且つ給水電磁弁47を開き、対象空間S1内の湿度が上昇し、設定値に達してモータダンパ40が比例制御で安定した。そして湿度安定後に室内湿度の設定値(SP値)を55%から58%に変更した後も、同様に対象空間S1内の湿度が上昇してモータダンパ40が比例制御で安定した。これにより室内湿度の設定変更に対する追従性が確認できた。また温度変化も温度許容幅の中で推移する共に、実測で室内湿度は設定値±2%の幅の中で推移し、良好な制御性を確認できた。
【0057】
[パターン4]
(モータダンパ40の安定時平均開度50%前後、室内温度の設定値(SP値)を54%→65%)
図14に示すごとく室内湿度の設定値(SP値)を54%から65%に変更した後、モータダンパ40を開き且つ給水電磁弁47を開き、対象空間S1内の湿度が上昇し、設定値に達してモータダンパ40が比例制御で安定した。このパターン4においても温度変化も温度許容幅の中で推移する共に、実測で室内湿度は設定値±1%程度の精度の高い制御性が確認できた。
【0058】
よって[パターン1]~[パターン4]に示すように、対象空間S1の室内湿度要求でモータダンパ40を適切に比例制御し、加湿ユニット36を通過する風量を調整し、加湿量を制御し得ることが明らかである。また対象空間S1の室内湿度要求がなく、加湿器39を使用しない場合、モータダンパの開度を最小とし且つ給水電磁弁47を閉にし、保水体44に空気を通すことにより、保水体44を乾燥させることが可能となる。
【0059】
以上のように、クリーンルームの空調システムの形態の第一例は、対象空間S1のうち天面31、側面32、下面33により区画される空間通路C1と、空間通路C1の側面32に配置される加湿ユニット36および冷却ユニット37と、空間通路C1の下面33に配置される送風ユニット38とを備え、加湿ユニット36は、保水体44を配する加湿器39と、開度を調整し得るモータダンパ40とを備えて対象空間S1から空間通路内への空気を加湿し、冷却ユニット37は、対象空間S1から空間通路内への空気を冷却し、送風ユニット38は、対象空間S1の空気を加湿ユニット36および冷却ユニット37を介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を前記対象空間S1へ向けて送り出し、送風ユニット38から対象空間S1に向かって送り出された空気は、対象空間S1の下方に向かいつつ床面Fに衝突し、床面Fに沿って流れた後、対象空間S1を上昇して空間通路C1に引き込まれるように構成されている。このようにすれば、従来必要であったスプレー式加湿器の動力源、気化式加湿器の気化用ファンの動力、インバータ制御を不要し、加湿器39に必要な動力源を減らすと共に、空間通路C1に引き込まれる空気を加湿するので、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。また加湿器39に必要な動力源を減らすので、イニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。尚、加湿ユニット36は、空間通路C1の側面32に配置せず、差圧のあるレタンシャフト内に配置することも可能である。さらに第一例は、ボールルーム方式のクリーンルームのように空気の温度が低い場合に比べて、空間通路C1と対象空間S1の間において空気を高い温度で流すので、気化式の加湿器9の加湿効率が良くすることができる。さらにまた第一例では、空気は機器aの排熱を取り込んで昇温するので、気化式の加湿器9の加湿効率を一層良くすることができる。
【0060】
また、クリーンルームの空調システムの形態の第一例において、加湿ユニット36は、空間通路内の空間を両側で挟み込むように両側の側面32にそれぞれ配置されると、空間通路内に引き込まれた加湿空気と冷却空気を送風ユニット38で容易に混気するので、加湿器39に必要な動力源を好適に減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。
【0061】
また、クリーンルームの空調システムの形態の第一例において、加湿ユニット36と前記冷却ユニット37は、空間通路C1の長手方向に沿って側面32に交互に配置されると、空間通路内に引き込まれた加湿空気と冷却空気を送風ユニット38で極めて容易に混気するので、加湿器39に必要な動力源を大幅に減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。
【0062】
また、クリーンルームの空調システムの形態の第一例において、加湿ユニット36の加湿器39は、空間通路C1の外部に位置するように側面32に接続されると、加湿器39を空間通路内やレタンシャフト内に配置された場合に比べ、外側から加湿ユニット36をメンテナンスし得るので、加湿としての使用条件の幅を広げると共にメンテナンスの容易性を高めることができる。
【0063】
また、クリーンルームの空調システムの形態の第一例において、加湿ユニット36の加湿器39は、対象空間側の開口42から保水体44まで距離Lを設定し、距離Lの設定は、保水体44から水が落下した際に飛び跳ねて対象空間S1の下方へ落下することを防止する間隔であると、下方に機器aが位置する配置であっても、他の部材を追加することなく、加湿ユニット36を通常使用し得るので、加湿としての使用条件の幅を一層広げることができる。
【0064】
また、クリーンルームの空調システムの形態の第一例において、加湿ユニット36は、保水体44への水の供給調整とモータダンパ40の開度調整とを行い、空間通路内へ引き込む際の空気への加湿を非動力で行うように構成すると、加湿器39に必要な動力源を最小限にすると共に、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。
【0065】
クリーンルームの空調システムを用いる加湿ユニット36の制御方法であって、加湿要求がある場合には、モータダンパ40の開度を20%以上にし、保水体44への水の供給を開始し、加湿要求がない場合には、モータダンパ40の開度を5%~15%の範囲にし、保水体44への水の供給を停止し、対象空間S1から空間通路C1への空気の引き込みに伴い保水体44を乾燥させるようになっている。このようにすれば、加湿ユニット36を安定的に稼働させることが可能となり、加湿器39に必要な動力源を減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。また保水体44を好適に自然乾燥させるので、長期の保水に伴う臭いやカビの発生を防止することができる。
【0066】
また加湿ユニット36の制御方法において、加湿要求がない場合には、所定時間経過後にモータダンパ40の開度を5%~15%の範囲にし、モータダンパの開度を保持すると、ハンチング防止を行い、加湿ユニット36を一層安定的に稼働させることが可能となり、加湿器39に必要な動力源を減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。
【0067】
以下、本発明の実施の形態の第二例を添付図面を参照して説明する。ここで第二例は請求項1、4~6、9~10に対応するものである。
【0068】
図15図16は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の第二例を示しており、第一例の空間通路C1の形状、加湿ユニット36、冷却ユニット37、送風ユニット38の配置を変更したものである。また第一例と同じ符号を付したものは同じ構成を備えている。
【0069】
第二例では、対象空間Sの上方において天面31、側面32、下面33により空間通路C2が区画されており、側面32は、両側に位置する一方向の側面32aと、一方向の側面から直角方向(異なる方向)に向かう他方向の側面32bとからなり、一方向の側面32aと他方の側面32bにより空間通路C2を囲むように構成されている。
【0070】
加湿ユニット36は一方の側面32aの片側に配置されていると共に、冷却ユニット37は他方の側面32bの両側に配置されている。また加湿ユニット36は一方の側面32aの両側端に位置していると共に、冷却ユニット37は、加湿ユニット36と直角の向きで隣接するように他方の側面32bに位置している。ここで加湿ユニット36と冷却ユニット37を逆に配置しても良いし、一方の側面32aに3個以上の加湿ユニット36を連続して配置しても良いし、一方の側面32aに冷却ユニット37を配置して加湿ユニット36と並べても良い。また他の側面32bに複数の冷却ユニット37を連続して配置しても良いし、他方の側面32bに加湿ユニット36を配置して冷却ユニット37と並べても良い。
【0071】
送風ユニット38は、加湿ユニット36に対して両側で向かい合うように、一方の側面32aの他の片側に配置されている。また送風ユニット38は、空間通路C2の長手方向に沿って複数配置されている。ここで送風ユニット38は、一方の側面32aの他の片側全面に配置されても良いし、所定の間隔を置いて配置されても良い。
【0072】
ここで加湿ユニット36、冷却ユニット37、送風ユニット38は、第一例と同じ構造を備え、さらに同じ制御方法を備えている。
【0073】
本発明の実施の形態の第二例について作用を説明する。
【0074】
送風ユニット38のファン52およびHEPAフィルタ53(図4参照)により空間通路C2から対象空間S1に向かって横方向に送り出された清浄な空気は、対象空間のスラブ面(天井面)や壁面により対象空間S1の横方向から下方に向かうように向きを変える。ここで横方向に送り出された清浄な空気は、スラブ面と壁面によって向きを変えるのではなく、他の風方変更板や風向変更部材(図示せず)により向きを変えても良い。
【0075】
下方に向きを変えた清浄な空気は、図4に示すごとくダウンフローとなって高度清浄域を形成しつつ床面Fへ向かう。そして空気は、床面Fに衝突し、コアンダー効果を生じるように床面Fに沿って流れた後、機器aの排熱により発生塵埃を含んだ空気となり、アップフローとなって対象空間Sを上昇する。
【0076】
上昇する空気は、対象空間Sの非高度浄化域を上昇し、上昇する空気のほぼ半分は、加湿ユニット36から空間通路C2に引き込まれ、保水体44の水の気化により加湿されて加湿空気となる。また同時に、上昇する空気の残りのほぼ半分は、冷却ユニット37から空間通路C2に引き込まれ、ドライコイルにより冷却されて冷却空気となる。加湿空気と冷却空気は、図16に示すごとく空間通路内で混気し、送風ユニット38のファン52により更に混気されつつHEPAフィルタ53(図4参照)により浄化され、清浄な空気となって空間通路C2から対象空間Sへ送り出される。
【0077】
また加湿ユニット36による加湿や制御は第一例と同様に行うようになっている。
【0078】
以上のように、クリーンルームの空調システムの形態の第二例は、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0079】
また第二例は、側面32は、両側に位置する一方向の側面32aと、一方向の側面32aと異なる方向に向かう他方向の側面32bとからなり、一方向の側面32aと他方の側面32bにより空間通路C2を囲むように構成され、加湿ユニット36と冷却ユニット37は、一方が一方向の側面32aに配置されると共に、他方が他方向の側面32bに配置されるので、加湿ユニット36からの加湿空気と、冷却ユニット37からの冷却空気が容易に混気し、加湿器に必要な動力源を減らすと共に、空間部に引き込まれる空気を加湿するので、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。
【0080】
以下、本発明の実施の形態の第三例を添付図面を参照して説明する。ここで第三例は請求項1~3、5~6、9~10に対応するものである。
【0081】
図17図18は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の第三例を示しており、第二例の加湿ユニット36、冷却ユニット37、送風ユニット38の配置を変更したものである。また第一例、第二例と同じ符号を付したものは同じ構成を備えている。
【0082】
第三例では、空間通路C3の側面32には、加湿ユニット36および冷却ユニット37が配置されている。また加湿ユニット36および冷却ユニット37は、空間通路C3の長手方向に沿って側面32に交互に配置され、加湿ユニット36の両隣には間隔を介して冷却ユニット37が位置するようにしている。
【0083】
空間通路C3の下面33には、送風ユニット38が配置されている。下面33は、平面視で格子状に組んだ天井セルにより形成されており、送風ユニット38は、下面33の格子の開口であるグリッドに適宜な位置に設置されている。ここで送風ユニット38は、下面33の全面に配置するようにしても良いし、所定の間隔を置いて配置しても良い。
【0084】
ここで加湿ユニット36、冷却ユニット37、送風ユニット38は、第一例と同じ構造を備え、さらに同じ制御方法を備えている。
【0085】
本発明の実施の形態の第三例について作用を説明する。
【0086】
送風ユニット38のファン52およびHEPAフィルタ53(図4参照)により空間通路C3から対象空間S1に向かって送り出された清浄な空気は、対象空間S1の下方に向かうようにダウンフローとなって高度清浄域を形成しつつ床面Fへ向かう。そして空気は、床面Fに衝突し、コアンダー効果を生じるように床面Fに沿って流れた後、機器aの排熱により発生塵埃を含んだ空気となり、アップフローとなって対象空間Sを上昇する。
【0087】
上昇する空気は、対象空間Sの非高度浄化域を上昇し、上昇する空気のほぼ半分は、加湿ユニット36から空間通路C3に引き込まれ、保水体44の水の気化により加湿されて加湿空気となる。また同時に、上昇する空気の残りのほぼ半分は、冷却ユニット37から空間通路C3に引き込まれ、ドライコイルにより冷却されて冷却空気となる。加湿空気と冷却空気は、図18に示すごとく空間通路内で混気し、送風ユニット38のファン52により更に混気されつつHEPAフィルタ53により浄化され、清浄な空気となって空間通路C1から対象空間Sの床に向かって送り出される。
【0088】
また加湿ユニット36による加湿や制御は第一例と同様に行うようになっている。
【0089】
以上のように、クリーンルームの空調システムの形態の第三例は、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0090】
以下、本発明の実施の形態の第四例を添付図面を参照して説明する。ここで第四例は請求項8~10に対応するものである。
【0091】
図19図20は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の第二例を示しており、図中、第一例と同一の符号を付した部分は同一物を表している。また本実施例のクリーンルームの空調システムは、第一例と同様に外調機22(図4参照)を備えている。
【0092】
本実施例の場合、対象空間Sのうち天面61、側面62、下面63により空間部C4が区画されており、空間部C4は下部にスタンドフレーム64を備えて床面Fに据置可能に構成されている。ここで空間部C4は、対象空間Sに複数備えても良いし、単独で備えても良い。また空間部C4を複数備えた場合には、配置は特に制限されるものではないが、列状に配置されることが好ましい。
【0093】
空間部C4の側面62には、加湿ユニット36が配置されている。加湿ユニット36は、空間通路内の空間を両側で挟み込むように両側の側面62にそれぞれ配置されている。また空間部C4の天面61には、冷却ユニット65が配置されている。さらに空間部C4の下面63には、送風ユニット66が配置されている。
【0094】
加湿ユニット36は、第一例と同様に気化式の加湿器39と、加湿器39に隣接するモータダンパ40とを備え、空気を加湿するようになっている。また冷却ユニット65は、内部に冷媒が流通するドライコイルを備え、対象空間Sから空間通路内への空気を冷却するようになっている。送風ユニット66は、筐体の上側にファン67を備え、下側にはHEPAフィルタ68を備えたファン・フィルタ・ユニット(FFU)等と称される装置であり、対象空間Sの空気を加湿ユニット36および冷却ユニット65を介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を対象空間Sの下方へ向けて送り出すようになっている。
【0095】
本発明の実施の形態の第四例について作用を説明する。
【0096】
送風ユニット66のファン67およびHEPAフィルタ68により空間部C4から対象空間Sの下方に向かって送り出された清浄な空気は、ダウンフローとなって床面Fへ向かう。そして空気は、床面Fに衝突し、コアンダー効果を生じるように床面Fに沿って流れた後、機器a(図1図3参照)の排熱により発生塵埃を含んだ空気となり、アップフローとなって対象空間Sを上昇する。
【0097】
上昇する空気は、対象空間Sを上昇し、上昇する空気のほぼ半分は、空間部C4の側面32に位置する加湿ユニット36から空間部C4に引き込まれ、保水体44により加湿されて加湿空気となる。また同時に、上昇する空気の残りのほぼ半分は、空間部C4の天面31に位置する冷却ユニット65から空間部C4に引き込まれ、ドライコイルにより冷却されて冷却空気となる。空間通路内において加湿空気と冷却空気は、送風ユニット66のファン67により混気されつつHEPAフィルタ68により浄化され、清浄な空気となって空間部C4から対象空間Sの床に向かって送り出される。
【0098】
また加湿ユニット36による加湿や制御は第一例と同様に行うようになっている。
【0099】
以上のように、クリーンルームの空調システムの形態の第四例は、対象空間Sのうち天面61、側面62、下面63により区画される空間部C4と、空間部C4の側面62に配置される加湿ユニット36と、空間部C4の天面61に配置される冷却ユニット65と、空間部C4の下面63に配置される送風ユニット66とを備えると共に、床面Fに据置可能に構成され、加湿ユニット36は、保水体44を配する加湿器39と、開度を調整し得るモータダンパ40とを備えて対象空間Sから空間通路内への空気を加湿し、冷却ユニット65は、対象空間Sから空間通路内への空気を冷却し、送風ユニット66は、対象空間Sの空気を加湿ユニット36および冷却ユニット65を介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を対象空間Sの下方へ向けて送り出し、送風ユニット66から対象空間Sに向かって送り出された空気は、対象空間Sの下方に向かいつつ床面Fに衝突し、床面Fに沿って流れた後、対象空間Sを上昇して空間部C4に引き込まれるように構成されている。このようにすれば、従来必要であったスプレー式加湿器の動力源、気化式加湿器の気化用ファンの動力、インバータ制御を不要し、加湿器39に必要な動力源を減らすと共に、空間部C4に引き込まれる空気を加湿するので、加湿としての使用条件の幅を広げることができる。また第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0100】
クリーンルームの空調システムの形態の第四例は、据置き式に構成されるので、配置の自由度が高いと共に配置変更が容易であるので、加湿としての使用条件の幅を好適に広げることができる。
【0101】
尚、本発明のクリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0102】
31 天面
32 側面
33 下面
34 壁面
36 加湿ユニット
37 冷却ユニット
38 送風ユニット
39 加湿器
40 モータダンパ
42 開口
44 保水体
47 給水電磁弁
61 天面
62 側面
63 下面
64 スタンドフレーム
65 冷却ユニット
66 送風ユニット
C1 空間通路
C2 空間通路
C3 空間通路
C4 空間部
F 床面
L 距離
S 対象空間
【要約】
【課題】加湿器に必要な動力源を減らすと共に、加湿としての使用条件の幅を広げるクリーンルームの空調システムおよび加湿ユニットの制御方法を提供する。
【解決手段】空間通路C1の側面32に配置される加湿ユニット36および冷却ユニット37と、空間通路C1の下面または側面に配置される送風ユニット38とを備え、
加湿ユニット36は、加湿器39と、モータダンパ40とを備えて対象空間Sから空間通路内への空気を加湿し、
送風ユニット38は、対象空間Sの空気を加湿ユニット36および冷却ユニット37を介して空間通路内へ引き込み、浄化した空気を対象空間Sへ向けて送り出し、
送風ユニット38から送り出された空気は、対象空間の下方に向かいつつ床面Fに衝突し、床面Fに沿って流れた後、対象空間Sを上昇して空間通路C1に引き込まれるように構成される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23