(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】活性ガス生成装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2024535491
(86)(22)【出願日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2024001258
【審査請求日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/039462
(32)【優先日】2023-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】有田 廉
(72)【発明者】
【氏名】小野 祐司
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186660(JP,A)
【文献】特開2009-233535(JP,A)
【文献】特表2016-507255(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138456(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204014246(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間に供給された原料ガスを活性化して活性ガスを生成する電極ユニットを有する活性ガス生成装置であって、
前記電極ユニットは、
第1の電極構成部と、
前記第1の電極構成部の下方に設けられる第2の電極構成部とを備え、
前記第1の電極構成部は、第1の電極用誘電体膜と前記第1の電極用誘電体膜の上面上に設けられる第1の電極用導電膜と、
前記第2の電極構成部は、第2の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜の下面上に設けられる第2の電極用導電膜とを含み、
前記第1の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜との間に誘電体空間が設けられ、
前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記第1及び第2の電極用導電膜が平面視して重複する領域である主要放電空間を含み、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜及び前記第2の電極用誘電体膜のうち少なくとも一つである保護対象誘電体膜に対し前記誘電体空間側に設けられる誘電体保護部材
と、
前記誘電体保護部材と前記保護対象誘電体膜との間に設けられる、保護部材空間及び電極補強導電膜のうち少なくとも一つとをさらに備え、
前記誘電体保護部材の構成材料は、前記放電空間における誘電体バリア放電の発生時において、前記誘電体バリア放電によって生じるイオンの前記保護対象誘電体膜への照射を遮断し、かつ、前記イオンと化学反応しない保護特性を有することを特徴とする、
活性ガス生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極用誘電体膜の下面上に設けられる
前記電極補強導電膜をさらに備え、
前記誘電体保護部材は前記電極補強導電膜の全てを覆い、かつ、前記第1の電極用誘電体膜の下面上に設けられ、前記第1の電極用誘電体膜、前記電極補強導電膜及び前記誘電体保護部材の順で隙間なく積層構造が設けられ、
前記誘電体保護部材と前記第2の電極用誘電体膜とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第1の電極用誘電体膜であり、
前記第1の電極構成部は前記誘電体保護部材及び前記電極補強導電膜をさらに含み、
前記活性ガス生成装置は、
前記第1の電極構成部の前記第1の電極用導電膜と前記第2の電極構成部の前記第2の電極用導電膜と間に印加電圧を印加する電源をさらに備え、
前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、
前記電極補強導電膜は、平面視して前記第1の電極用導電膜より広く、平面視して前記第1の電極用誘電体膜より狭い平面形状を有し、前記第2の電極用導電膜は平面視して前記電極補強導電膜を含み、
前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記電極補強導電膜と前記第2の電極用導電膜とが平面視して重複する拡張主要放電空間を含む、
活性ガス生成装置。
【請求項3】
放電空間に供給された原料ガスを活性化して活性ガスを生成する電極ユニットを有する活性ガス生成装置であって、
前記電極ユニットは、
第1の電極構成部と、
前記第1の電極構成部の下方に設けられる第2の電極構成部とを備え、
前記第1の電極構成部は、第1の電極用誘電体膜と前記第1の電極用誘電体膜の上面上に設けられる第1の電極用導電膜と、
前記第2の電極構成部は、第2の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜の下面上に設けられる第2の電極用導電膜とを含み、
前記第1の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜との間に誘電体空間が設けられ、
前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記第1及び第2の電極用導電膜が平面視して重複する領域である主要放電空間を含み、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜及び前記第2の電極用誘電体膜のうち少なくとも一つである保護対象誘電体膜に対し前記誘電体空間側に設けられる誘電体保護部材をさらに備え、
前記誘電体保護部材の構成材料は、前記放電空間における誘電体バリア放電の発生時において、前記誘電体バリア放電によって生じるイオンの前記保護対象誘電体膜への照射を遮断し、かつ、前記イオンと化学反応しない保護特性を有することを特徴とし、
前記誘電体保護部材は前記保護対象誘電体膜と密着して隙間無く設けられ、
前記誘電体保護部材は前記第1の電極用誘電体膜の下面上に密着して設けられ、前記誘電体保護部材と前記第2の電極用誘電体膜とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第1の電極用誘電体膜であり、
前記第1の電極構成部は前記誘電体保護部材をさらに含み、
前記活性ガス生成装置は、
前記第1の電極構成部の前記第1の電極用導電膜と前記第2の電極構成部の前記第2の電極用導電膜と間に印加電圧を印加する電源をさらに備え、
前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、
前記第1の電極用誘電体膜の下面は凹部底面と、前記凹部底面の周辺に設けられる凸部底面とを有し、前記凸部底面は前記凹部底面より高さ方向における形成位置が高く、前記凹部底面上に前記誘電体保護部材が設けられ、前記凸部底面上には前記誘電体保護部材が設けられず、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜の前記凸部底面を下方から支持する誘電体支持面を有する誘電体膜支持部材と、
前記第1の電極用誘電体膜を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材とをさらに備え、前記誘電体膜抑圧部材は平面視して前記第1の電極用導電膜と重複せず、
前記誘電体膜支持部材は、前記凹部底面上に設けられた前記誘電体保護部材の下方に配置された保護部材固定補助面をさらに有し、
前記電極ユニットは、
前記保護部材固定補助面と前記誘電体保護部材の下面との間に挿入される弾性部材をさらに備え、前記弾性部材の弾性力によって前記第1の電極用誘電体膜の前記凹部底面と前記誘電体保護部材の上面とが密着状態に設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項4】
請求項
2記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極用誘電体膜の下面は凹部底面と、前記凹部底面の周辺に設けられる凸部底面とを有し、前記凸部底面は前記凹部底面より高さ方向における形成位置が高く、前記凹部底面上に前記電極補強導電膜及び前記誘電体保護部材が設けられ、前記凸部底面上には前記電極補強導電膜及び前記誘電体保護部材が設けられず、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜の前記凸部底面を下方から支持する誘電体支持面を有する誘電体膜支持部材と、
前記第1の電極用誘電体膜を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材とをさらに備え、前記誘電体膜抑圧部材は平面視して前記第1の電極用導電膜と重複せず、
前記誘電体膜支持部材は、前記凹部底面上に設けられた前記誘電体保護部材の下方に配置された保護部材固定補助面をさらに有し、
前記保護部材固定補助面と平面視して重複する領域には前記電極補強導電膜は形成されておらず、
前記電極ユニットは、
前記保護部材固定補助面と前記誘電体保護部材の下面との間に挿入される弾性部材をさらに備え、前記弾性部材の弾性力によって前記第1の電極用誘電体膜の前記凹部底面と前記誘電体保護部材の上面とが密着状態に設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項5】
請求項
3または請求項
4に記載の活性ガス生成装置であって、
前記凹部底面は平面視して円状に形成され、
前記凸部底面は平面視して前記凹部底面の周辺に円環状に形成され、
前記誘電体膜支持部材の前記保護部材固定補助面は平面視して円環状に形成され、
前記誘電体膜支持部材は、
前記保護部材固定補助面内に平面視して円環状に設けられた溝部と、
前記溝部内に設けられ、平面視して円環状のOリングとを含み、
前記弾性部材はOリングである、
活性ガス生成装置。
【請求項6】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極構成部の前記第1の電極用導電膜と前記第2の電極構成部の前記第2の電極用導電膜と間に印加電圧を印加する電源をさらに備え、
前記誘電体保護部材は前記保護対象誘電体膜との間に
前記保護部材空間を有して設けられ、
前記印加電圧、前記放電空間及び前記保護部材空間は、前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、前記保護部材空間に前記誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項7】
請求項
6記載の活性ガス生成装置であって、
前記誘電体保護部材は前記第1の電極用誘電体膜の下面との間に前記保護部材空間を有し、前記誘電体保護部材と前記第2の電極用誘電体膜とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第1の電極用誘電体膜であり、
前記第1の電極構成部は前記誘電体保護部材をさらに含む、
活性ガス生成装置。
【請求項8】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極用誘電体膜の下面上に密着して設けられる
前記電極補強導電膜をさらに備え、
前記誘電体保護部材は前記電極補強導電膜の下方に設けられ、前記誘電体保護部材は平面視して前記電極補強導電膜の全てを含み、前記誘電体保護部材と前記電極補強導電膜との間に
前記保護部材空間が設けられ、
前記誘電体保護部材と前記第2の電極用誘電体膜とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第1の電極用誘電体膜であり、
前記第1の電極構成部は前記誘電体保護部材及び前記電極補強導電膜をさらに含み、
前記活性ガス生成装置は、
前記第1の電極構成部の前記第1の電極用導電膜と前記第2の電極構成部の前記第2の電極用導電膜と間に印加電圧を印加する電源をさらに備え、
前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、
前記電極補強導電膜は、平面視して前記第1の電極用導電膜より広く、平面視して前記第1の電極用誘電体膜より狭い平面形状を有し、前記第2の電極用導電膜は平面視して前記電極補強導電膜を含み、
前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記電極補強導電膜と前記第2の電極用導電膜とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含み、
前記印加電圧、前記放電空間及び前記保護部材空間は、前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、前記保護部材空間に前記誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項9】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記誘電体保護部材の上面上に密着して設けられる
前記電極補強導電膜をさらに備え、前記誘電体保護部材は平面視して前記電極補強導電膜の全てを含み、
前記電極補強導電膜と前記第1の電極用誘電体膜との間に
前記保護部材空間が設けられ、
前記誘電体保護部材と前記第2の電極用誘電体膜とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第1の電極用誘電体膜であり、
前記第1の電極構成部は前記誘電体保護部材及び前記電極補強導電膜をさらに含み、
前記活性ガス生成装置は、
前記第1の電極構成部の前記第1の電極用導電膜と前記第2の電極構成部の前記第2の電極用導電膜と間に印加電圧を印加する電源をさらに備え、
前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、
前記電極補強導電膜は、平面視して前記第1の電極用導電膜より広く、平面視して前記第1の電極用誘電体膜より狭い平面形状を有し、前記第2の電極用導電膜は平面視して前記電極補強導電膜を含み、
前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記電極補強導電膜と前記第2の電極用導電膜とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含み、
前記印加電圧、前記放電空間及び前記保護部材空間は、前記印加電圧の印加時に前記放電空間に前記誘電体バリア放電が発生し、前記保護部材空間に前記誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項10】
請求項
7記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極用誘電体膜の下面は凹部底面と前記凹部底面の周辺に設けられる凸部底面とを有し、前記凸部底面は前記凹部底面より高さ方向における形成位置が高く、前記凹部底面は平面視して前記誘電体保護部材と重複し、前記凸部底面は平面視して前記誘電体保護部材と重複せず、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜の前記凸部底面を下方から支持する誘電体支持面を有する誘電体膜支持部材と、
前記第1の電極用誘電体膜を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材とをさらに備え、前記誘電体膜抑圧部材は平面視して前記第1の電極用導電膜と重複せず、
前記誘電体膜支持部材は、前記誘電体保護部材を下方から支持する保護部材支持面をさらに有し、
前記誘電体支持面は前記保護部材支持面よりも高さ方向における形成位置が高く、前記誘電体支持面と前記保護部材支持面との高さ方向の差分値は、前記第1の電極用誘電体膜の下面と前記誘電体保護部材の上面との間に前記保護部材空間が形成されるように設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項11】
請求項
8または請求項
9に記載の活性ガス生成装置であって、
前記第1の電極用誘電体膜の下面は凹部底面と前記凹部底面の周辺に設けられる凸部底面とを有し、前記凸部底面は前記凹部底面より高さ方向における形成位置が高く、前記凹部底面は平面視して前記誘電体保護部材及び前記電極補強導電膜と重複し、前記凸部底面は平面視して前記誘電体保護部材及び前記電極補強導電膜と重複せず、
前記電極ユニットは、
前記第1の電極用誘電体膜の前記凸部底面を下方から支持する誘電体支持面を有する誘電体膜支持部材と、
前記第1の電極用誘電体膜を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材とをさらに備え、前記誘電体膜抑圧部材は平面視して前記第1の電極用導電膜と重複せず、
前記誘電体膜支持部材は、前記誘電体保護部材を下方から支持する保護部材支持面をさらに有し、
前記誘電体支持面は前記保護部材支持面よりも高さ方向における形成位置が高く、前記誘電体支持面と前記保護部材支持面との高さ方向の差分値は、前記第1の電極用誘電体膜の下面と前記誘電体保護部材の上面との間の一部に前記保護部材空間が形成されるように設定される、
活性ガス生成装置。
【請求項12】
請求項
6記載の活性ガス生成装置であって、
前記誘電体保護部材は前記第2の電極用誘電体膜の上面との間に前記保護部材空間を有し、前記第1の電極用誘電体膜と前記誘電体保護部材とが対向する空間が前記誘電体空間となり、
前記保護対象誘電体膜は前記第2の電極用誘電体膜であり、
前記第2の電極構成部は前記誘電体保護部材をさらに含む、
活性ガス生成装置。
【請求項13】
請求項
2から請求項
4、請求項
7から請求項
10のいずれか1項に記載の活性ガス生成装置であって、
筐体内空間に前記電極ユニットを収容し、導電性を有する筐体をさらに備え、
前記筐体は、平坦面と前記平坦面から深さ方向に凹んだ導体収容空間とを含む筐体底部を有し、
前記電極ユニットは、
前記第2の電極構成部の下方に設けられ、前記導体収容空間内に収容される基準電位導体をさらに備え、
前記基準電位導体は、上部に活性ガス用バッファ空間を有し、前記第2の電極構成部は前記活性ガス用バッファ空間を塞いで配置され、
前記第2の電極用誘電体膜は平面視して前記活性ガス用バッファ空間と重複する領域に、前記第2の電極用誘電体膜を貫通する誘電体貫通口を有し、前記第2の電極用導電膜は平面視して前記活性ガス用バッファ空間と重複する領域に導電膜開口部を有し、前記導電膜開口部は平面視して前記誘電体貫通口と重複し、
前記活性ガス生成装置は、
各々が前記活性ガス用バッファ空間の底面から前記基準電位導体を貫通して設けられる複数のガス噴出口をさらに備え、前記複数のガス噴出口は平面視して前記誘電体貫通口と重複せず、
前記放電空間は、前記主要放電空間に加え、前記誘電体貫通口、及び前記活性ガス用バッファ空間の一部を含む補助放電空間を有し、
前記複数のガス噴出口から出力される活性ガスが複数の部分活性ガスとして規定され、
前記筐体の前記筐体底部は、前記活性ガス用バッファ空間と平面視して重複する領域に筐体開口部を有し、前記複数の部分活性ガスは前記筐体開口部を介して下方に導かれ、
前記筐体開口部は下方に向かうに従い開口面積が広くなるテーパー形状のテーパー領域を含み、
前記複数のガス噴出口は、前記複数の部分活性ガスが衝突領域にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、前記衝突領域は前記テーパー領域内または前記テーパー領域より上方に存在することを特徴とする、
活性ガス生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平行平板方式の電極構造を有し、誘電体バリア放電を利用して活性ガスを生成する活性ガス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平行平板方式の電極構造を有し、誘電体バリア放電を採用した従来の活性ガス生成装置は、互いに対向する金属電極(電極用導電膜)と誘電体膜(電極用誘電体膜)との空隙、または、互いに対向する誘電体膜同士の空隙が放電空間となる。
【0003】
従来の活性ガス生成装置は、放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、この放電空間に投入された原料ガスを活性化して活性ガスを生成するという、平行平板方式誘電体バリア放電を採用している。
【0004】
平行平板方式誘電体バリア放電を採用した活性ガス生成装置として、例えば、特許文献1で開示された活性ガス生成装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の活性ガス生成装置は放電空間に誘電体バリア放電を発生させている。このため、原料ガスの種類と誘電体膜の材質によっては、誘電体バリア放電によって発生するイオンと誘電体膜が化学反応を引き起こし、誘電体膜から誘電体膜を構成する元素またはその化合物が放出される誘電体膜反応現象が生じる可能性がある。
【0007】
誘電体膜反応現象が生じると、放出された元素またはその化合物は活性ガスに混じることとなり、これは活性ガスに不純物が混入することを意味している。このような誘電体膜反応現象を防ぐためには、誘電体膜の材質を化学反応しない材質に変更することで理論上は対処可能となる。
【0008】
しかしながら、変更後の材質の加工性が悪い場合、誘電体膜の形状が複雑な形状の場合、複雑な形状の誘電体膜を形成するための製造工程が複雑化するという問題点がある。
【0009】
このように、従来の活性ガス生成装置は、上述した誘電体膜反応現象を抑制しておらず、製造工程を複雑化することなく高純度な活性ガスを生成することができていないという問題点があった。
【0010】
本開示では、上記のような問題点を解決し、製造工程を複雑化することなく高純度な活性ガスを供給することができる活性ガス生成装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る活性ガス生成装置は、放電空間に供給された原料ガスを活性化して活性ガスを生成する電極ユニットを有する活性ガス生成装置であって、前記電極ユニットは、第1の電極構成部と、前記第1の電極構成部の下方に設けられる第2の電極構成部とを備え、前記第1の電極構成部は、第1の電極用誘電体膜と前記第1の電極用誘電体膜の上面上に設けられる第1の電極用導電膜と、前記第2の電極構成部は、第2の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜の下面上に設けられる第2の電極用導電膜とを含み、前記第1の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜との間に誘電体空間が設けられ、前記放電空間は、前記誘電体空間内において前記第1及び第2の電極用導電膜が平面視して重複する領域である主要放電空間を含み、前記電極ユニットは、前記第1の電極用誘電体膜及び前記第2の電極用誘電体膜のうち少なくとも一つである保護対象誘電体膜に対し前記誘電体空間側に設けられる誘電体保護部材をさらに備え、前記誘電体保護部材の構成材料は、前記放電空間における誘電体バリア放電の発生時において、前記誘電体バリア放電によって生じるイオンの前記保護対象誘電体膜への照射を遮断し、かつ、前記イオンと化学反応しない保護特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の活性ガス生成装置において、放電空間を含む誘電体空間と保護対象誘電体膜との間に上述した保護特性を有する誘電体保護部材が存在するため、放電空間における誘電体バリア放電の発生時に保護対象誘電体膜がイオンと反応する誘電体膜反応現象を抑制することができる。
【0013】
その結果、本開示の活性ガス生成装置は、誘電体膜反応現象に伴う保護対象誘電体膜の元素等の放電空間内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスを生成することができる。
【0014】
加えて、電極ユニットは、第1及び第2の電極用誘電体膜の構成材料を従前から変更する必要はなく、誘電体保護部材を追加するのみで構成することができるため、電極ユニットの製造工程が複雑化することはない。
【0015】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施の形態1である活性ガス生成装置の平面構造を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1のA-A断面の断面構造を示す断面図である。
【
図3】電極ユニットの平面構造を模式的に示す説明図(その1)である。
【
図4】
図3のB-B断面の断面構造を示す説明図である。
【
図5】電極ユニットの平面構造を模式的に示す説明図(その2)である。
【
図6】
図5のC-C断面の断面構造を示す説明図である。
【
図7】筐体の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図8】筐体の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図9】高圧側誘電体膜の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図10】高圧側誘電体膜の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図11】接地側誘電体膜の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図12】接地側誘電体膜の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図13】給電体の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図14】給電体の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図15】接地導体の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図16】接地導体の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図18】カバー誘電体膜の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図19】カバー誘電体膜の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図20】接地側電極構成部の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図21】接地側電極構成部の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図22】シールド誘電体膜の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図23】シールド誘電体膜の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図24】誘電体膜支持部材の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図25】誘電体膜支持部材の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図26】誘電体膜抑圧部材の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図27】誘電体膜抑圧部材の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図29】押圧部材の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図30】押圧部材の断面構造を模式的に示す説明図である。
【
図31】実施の形態1の活性ガス生成装置における電極ユニットの活性ガスの噴出形態を模式的に示す説明図である。
【
図32】実施の形態1の電極ユニットにおいて理想とする活性ガスの噴出形態を模式的に示す説明図である。
【
図33】実施の形態2の活性ガス生成装置における電極ユニットの断面構造を示す説明図である。
【
図34】実施の形態2の接地導体の構造を模式的に示す説明図(その1)である。
【
図35】実施の形態2の接地導体の構造を模式的に示す説明図(その2)である。
【
図36】実施の形態2における複数のガス噴出口の断面構造を模式的に示す説明図(その1)である。
【
図37】実施の形態2における複数のガス噴出口の断面構造を模式的に示す説明図(その2)である。
【
図38】実施の形態2の電極ユニットの筐体開口部内における活性ガスの噴出形態を示す説明図(その1)である。
【
図39】実施の形態2の電極ユニットの筐体開口部内における活性ガスの噴出形態を示す説明図(その2)である。
【
図40】実施の形態2の電極ユニットの筐体開口部内における活性ガスの噴出形態を示す説明図(その3)である。
【
図41】実施の形態2の電極ユニットの筐体開口部内における活性ガスの噴出形態を示す説明図(その4)である。
【
図42】実施の形態3の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの基本態様を模式的に示す説明図である。
【
図43】実施の形態3の第2の態様の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの概念を示す説明図である。
【
図44】実施の形態3の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット811の断面構造を示す説明図である。
【
図45】
図44で示した誘電体膜支持部材の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図46】実施の形態4の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの基本態様を模式的に示す説明図である。
【
図47】実施の形態5の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの基本態様を模式的に示す説明図である。
【
図48】実施の形態5の第2の態様の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット830の概念を模式的に示す説明図である。
【
図49】実施の形態5の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット831の断面構造を示す説明図である。
【
図50】
図49の着目領域の詳細構造を模式的に示す説明図である。
【
図51】
図49で示した誘電体膜支持部材の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図52】実施の形態6の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの基本態様を模式的に示す説明図である。
【
図53】実施の形態7の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの基本態様を模式的に示す説明図である。
【
図54】実施の形態7の活性ガス生成装置の効果を示すための説明図(その1)である。
【
図55】実施の形態7の活性ガス生成装置の効果を示すための説明図(その2)である。
【
図56】実施の形態7の活性ガス生成装置の効果を示すための説明図(その3)である。
【
図57】実施の形態7の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニットの断面構造を示す説明図である。
【
図59】実施の形態8の第1及び第2の態様となる活性ガス生成装置の断面構造を示す説明図である。
【
図60】実施の形態8の第1の態様における
図59の着目領域の詳細構造を示す説明図である。
【
図61】実施の形態8の第2の態様における
図59の着目領域の詳細構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
図1は本開示の実施の形態1である活性ガス生成装置71の平面構造を模式的に示す平面図である。
【0018】
同図に示すように、活性ガス生成装置71において、筐体1内に3つの電極ユニット51~53が収容されている。電極ユニット51~53それぞれにガス流路21を介して原料ガスG1が供給される。そして、電極ユニット51~53それぞれは、放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成している。
【0019】
図2は
図1のA-A断面の断面構造を示す断面図である。
図3~
図6は電極ユニット50の構造を部分的に説明する説明図である。なお、電極ユニット50は電極ユニット51~53のいずれかに相当する。なお、電極ユニット51~53は互いに同一構造を呈している。
【0020】
図3は電極ユニット50の平面構造を模式的に示す説明図である。
図4は
図3のB-B断面の断面構造を示す説明図である。
図3及び
図4は接地導体6及びその周辺の構造を示す第1の説明図となる。
【0021】
図5は電極ユニット50の平面構造を模式的に示す説明図である。
図6は
図5のC-C断面の断面構造を示す説明図である。
図5及び
図6は接地導体6及びその周辺の詳細構造を示す第2の説明図となる。
【0022】
図7~
図30は、電極ユニット50の構成部品の詳細を示す説明図である。
図7及び
図8は筐体1の構造を模式的に示す説明図である。
図7は筐体1の平面構造を示しており、
図8は筐体1の断面構造を示している。
【0023】
図9及び
図10はそれぞれ高圧側誘電体膜2の構造を模式的に示す説明図である。
図9は高圧側誘電体膜2の平面構造を示しており、
図10は高圧側誘電体膜2の断面構造を示している。
【0024】
図11及び
図12はそれぞれ接地側誘電体膜3の構造を模式的に示す説明図である。
図11は接地側誘電体膜3の平面構造を示しており、
図12は接地側誘電体膜3の断面構造を示している。
【0025】
図13及び
図14はそれぞれ給電体5の構造を模式的に示す説明図である。
図13は給電体5の平面構造を示しており、
図14は給電体5の断面構造を示している。
【0026】
図15~
図17はそれぞれ接地導体6の構造を模式的に示す説明図である。
図15は接地導体6の平面構造を示しており、
図16は接地導体6の断面構造を示しており、
図17は
図16の着目領域R1における詳細を示している。
【0027】
図18及び
図19はそれぞれカバー誘電体膜8の構造を模式的に示す説明図である。
図18はカバー誘電体膜8の平面構造を示しており、
図19はカバー誘電体膜8の断面構造を示している。
【0028】
図20及び
図21はそれぞれ接地側電極構成部E2の構造を模式的に示す説明図である。
図20は接地側電極構成部E2の平面構造を示しており、
図21は接地側電極構成部E2の断面構造を示している。接地側電極構成部E2は接地側誘電体膜3、導電膜7及びカバー誘電体膜8の組合せ構造を含んでいる。
【0029】
図22及び
図23はそれぞれシールド誘電体膜9の構造を模式的に示す説明図である。
図22はシールド誘電体膜9の平面構造を示しており、
図23はシールド誘電体膜9の断面構造を示している。
【0030】
図24及び
図25はそれぞれ誘電体膜支持部材10の構造を模式的に示す説明図である。
図24は誘電体膜支持部材10の平面構造を示しており、
図25は誘電体膜支持部材10の断面構造を示している。
【0031】
図26~
図28はそれぞれ誘電体膜抑圧部材11の構造を模式的に示す説明図である。
図26は誘電体膜抑圧部材11の平面構造を示しており、
図27は誘電体膜抑圧部材11の断面構造を示しており、
図28は
図27の着目領域R2における詳細を示している。
【0032】
図29及び
図30はそれぞれ押圧部材12の構造を模式的に示す説明図である。
図29は押圧部材12の平面構造を示しており、
図30は押圧部材12の断面構造を示している。
【0033】
なお、
図1~
図30はそれぞれ活性ガス生成装置71、電極ユニット50または電極ユニット50の構成部品を模式的に示しており、縮尺を含む形状は
図1~
図30間で必ずしも一致しない。また、
図1~
図30それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0034】
以下、上述した
図1~
図30を適宜参照して、実施の形態1の活性ガス生成装置71について説明する。
【0035】
(全体構造)
図1に示すように、活性ガス生成装置71は、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0036】
図2及び
図7に示すように、筐体1は、平坦面1Fと平坦面1Fから深さ方向に凹んだ導体収容空間6Sとを含む筐体底部1aを有している。
【0037】
図8に示すように、筐体1は筐体底部1a、筐体側部1b及び筐体上部1cを有し、筐体底部1a、筐体側部1b及び筐体上部1cによって、電極ユニット51~53を内部に収容する筐体内空間S1を形成している。
【0038】
電極ユニット51~53はそれぞれ接地導体6が導体収容空間6S内に配置される態様で筐体1の筐体内空間S1内に収容される。
図7に示すように、外部により供給される原料ガスG1は、筐体底部1a内に設けられたガス流路21を介して導体収容空間6S内に配置された接地導体6の下面及び側面に設けられる原料ガス用流通空間に供給される。
【0039】
電極ユニット51(50)は、第1の電極構成部である高圧側電極構成部E1と、高圧側電極構成部E1の下方に設けられる第2の電極構成部である接地側電極構成部E2とを備えている。
【0040】
電極ユニット51は、第2の電極構成部である接地側電極構成部E2の下方に設けられ、導体収容空間6S内に収容される基準電位導体である接地導体6をさらに備えている。接地導体6は金属等の導電体を構成材料としている。
【0041】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E1は第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2と高圧側誘電体膜2の上面上に形成される第1の電極用導電膜である給電体5とを含んでいる。なお、第1の電極用導電膜である給電体5は、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2の中央に設けられた給電体配置用凹部28上に設けられる。
【0042】
高圧側誘電体膜2は誘電体を構成材料としており、給電体5は金属等の導電体を構成材料としている。例えば、給電体5は金属製で構成される。
【0043】
接地側電極構成部E2は、第2の電極用誘電体膜である接地側誘電体膜3と接地側誘電体膜3の下面上に形成される第2の電極用導電膜である導電膜7とを含んでいる。なお、導電膜7の膜厚は薄いため、
図2等では図示が省略され、
図20及び
図21で導電膜7の形成領域が示されている。
【0044】
接地側誘電体膜3は誘電体を構成材料としており、導電膜7は金属等の導電体を構成材料としている。
【0045】
基準電位導体である接地導体6は、上部に非貫通の活性ガス用バッファ空間68を有し、接地側電極構成部E2は活性ガス用バッファ空間68を塞いで配置される。したがって、活性ガス用バッファ空間68外において、導電膜7の下面と接地導体6の上面とが接触関係を有する。
【0046】
第2の電極用誘電体膜である接地側誘電体膜3は平面視して活性ガス用バッファ空間68と重複する領域に、接地側誘電体膜3を貫通する誘電体貫通口3hを有し、第2の電極用導電膜である導電膜7は平面視して活性ガス用バッファ空間68と重複する領域に導電膜開口部7hを有し、導電膜開口部7hは平面視して誘電体貫通口3hと重複している。
【0047】
筐体1の筐体底部1aは外部から原料ガスG1を受けるガス流路21を有し、接地導体6と筐体1の導体収容空間6Sとの間に原料ガス用流通空間が設けられる。原料ガス用流通空間は後述するように、原料ガスバッファ空間61、スリット空間62及び側面空間63を含んでいる。
【0048】
原料ガスG1はガス流路21及び上記原料ガス用流通空間を介して、放電空間4の主要放電空間に導かれる。なお、主要放電空間は、後述するように、高圧側誘電体膜2と接地側誘電体膜3との間の誘電体空間18内における放電空間4を意味する。
【0049】
交流電源15から印加される交流電圧は、電気配線や導入端子等の電気的接続手段を介して、第1の電極用導電膜である給電体5に印加される。なお、電気的接続手段を示す図示は
図2等では省略している。
【0050】
一方、筐体1は基準電位である接地電位に設定される。したがって、筐体1及び接地導体6を介して第2の電極用導電膜である導電膜7が接地電位に設定される。
【0051】
電極ユニット51(50)は、さらに誘電体膜支持部材10、誘電体膜抑圧部材11及び押圧部材12等の補助部材を備えている。
【0052】
(高圧側誘電体膜2の固定)
誘電体膜支持部材10の段差部102は、筐体1の平坦面1F上に設けられ、高圧側誘電体膜2を下方から支持する支持面10Fとなる上面を有している。この際、誘電体膜支持部材10の側面と筐体1の筐体底部1aの導体収容空間6Sの側面とが一致するように、誘電体膜支持部材10は平坦面1F上に配置される。
【0053】
誘電体膜抑圧部材11は、高圧側誘電体膜2を上方から抑圧するための部材であり、平面視して給電体5と重複しない。すなわち、高圧側誘電体膜2の上面に、誘電体膜抑圧部材11及び給電体5が形成されていない露出領域EX2が存在する。
【0054】
図6、
図27及び
図28に示すように、誘電体膜抑圧部材11の下面は、高圧側誘電体膜2の上面と接触する誘電体接触領域112と高圧側誘電体膜2の上面と接触しない誘電体非接触領域111と有している。誘電体接触領域112は高圧側誘電体膜2と接して荷重を加える領域となり、誘電体非接触領域111は高圧側誘電体膜2とは接触関係を有することなく、高圧側誘電体膜2の上面上で給電体5側にせり出す領域となる。
【0055】
誘電体接触領域112は平面視して高圧側誘電体膜2の周辺領域及び誘電体膜支持部材10の支持面10Fと重複し、誘電体非接触領域111は平面視して高圧側誘電体膜2の周辺領域より内側の中間領域と重複している。すなわち、中間領域は高圧側誘電体膜2の周辺領域から給電体5側に隣接する領域となる。
【0056】
誘電体膜抑圧部材11は金属等で構成され、導電性を有し、筐体1、取付用ボルト31、及び押圧部材12を介して基準電位である接地電位に設定される。取付用ボルト31及び押圧部材12も導電性を有している。
【0057】
したがって、高圧側誘電体膜2は、誘電体接触領域112において上方から誘電体膜抑圧部材11によって抑圧される。以下、誘電体膜支持部材10、誘電体膜抑圧部材11及び押圧部材12の組合せ構造について詳述する。
【0058】
図2に示すように、誘電体膜支持部材10の上面上に押圧部材12が配置され、取付用ボルト31によって押圧部材12及び誘電体膜支持部材10が筐体1の筐体底部1a上に固定される。
【0059】
図24及び
図25に示すように、誘電体膜支持部材10は平面視して中央に中央開口部100を有する円状を呈している。中央開口部100の周辺に段差部102と周辺部上面101とからなる段差構造が円環状に設けられる。段差部102の上面が支持面10Fとなる。段差部102(支持面10F)の外周側の周辺部上面101に複数の貫通口10hが離散して円状に設けられる。
【0060】
一方、
図9及び
図10に示すように、高圧側誘電体膜2は平面視して中央に給電体配置用凹部28を有する円状を呈している。給電体配置用凹部28の周辺に円環状に周辺表面領域27が設けられる。また、高圧側誘電体膜2は平面視して円状の凹部底面26を有し、凹部底面26の周辺の底面が平面視して円環状の凸部底面23となる。
【0061】
図13及び
図14に示すように、給電体5は円柱形状を有している。給電体5の底面が高圧側誘電体膜2の給電体配置用凹部28上に位置する態様で、給電体5は高圧側誘電体膜2の上面上に配置される。
【0062】
第1の電極用導電膜である給電体5には交流電源15より交流電圧が印加される。なお、
図5に示すように、給電体配置用凹部28は平面視して給電体5を含み、給電体5より少し広い平面形状を有している。
【0063】
高圧側誘電体膜2は誘電体膜支持部材10の支持面10Fと高圧側誘電体膜2の凸部底面23とが接触する態様で、高圧側誘電体膜2は誘電体膜支持部材10上に配置される。高圧側誘電体膜2と誘電体膜支持部材10とは、図示しないOリング等のシール材を介して接触させている。
【0064】
また、
図26及び
図27に示すように、誘電体膜抑圧部材11は平面視して中央に中央開口部110を有する円状を呈している。中央開口部110の外周側に設けられる円環状の下面領域が誘電体非接触領域111となり、誘電体非接触領域111の外周側に設けられる円環状の下面領域が誘電体接触領域112となる。
【0065】
図28に示すように、誘電体接触領域112は誘電体非接触領域111より下方(-Z方向)に突出しており、高圧側誘電体膜2の上面U2と接触関係を有する。一方、誘電体非接触領域111は高圧側誘電体膜2の上面U2との間に隙間SP11が存在するため、高圧側誘電体膜2の上面U2と非接触となる。
【0066】
図29及び
図30に示すように、押圧部材12は平面視して中央に中央開口部120を有する円状を呈している。中央開口部120の外周側の外周領域125に複数の内側貫通口121hが離散して円状に設けられ、複数の内側貫通口121hの外周側に複数の外側貫通口122hが離散して円状に設けられる。
【0067】
このように、押圧部材12の外周領域125に複数の内側貫通口121hと複数の外側貫通口122hとが設けられる。なお、複数の内側貫通口121hはそれぞれタップを切った貫通口となる。
【0068】
上述した構造の押圧部材12の外周領域125の一部が誘電体膜支持部材10上に載置され、複数の取付用ボルト31によって、誘電体膜支持部材10及び押圧部材12は筐体1の筐体底部1aに固定される。複数の取付用ボルト31のねじ部は複数の外側貫通口122h及び複数の貫通口10hを貫通し、筐体底部1aに取り付けられる。
【0069】
図2~
図6に示すように、押圧部材12は、平面視して誘電体膜支持部材10及び誘電体膜抑圧部材11と重複する領域に配置されている。
【0070】
一方、押圧部材12の複数の内側貫通口121hを貫通させる態様で複数の抑圧補助部材32を押圧部材12に取り付けている。抑圧補助部材32としてボルトや止めねじ等を考えられる。複数の抑圧補助部材32によって誘電体膜抑圧部材11を押圧するように、複数の抑圧補助部材32が複数の内側貫通口121h内に取り付けられる。複数の抑圧補助部材32は平面視して誘電体膜抑圧部材11の誘電体接触領域112と高圧側誘電体膜2の凸部底面23と重複する位置に設けられる。
【0071】
したがって、複数の抑圧補助部材32の押圧力を受ける誘電体膜抑圧部材11によって、上方の誘電体接触領域112から高圧側誘電体膜2が抑圧される。
【0072】
上述したように、実施の形態1の活性ガス生成装置71の電極ユニット50において、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2は、複数の抑圧補助部材32の押圧力を受ける誘電体膜抑圧部材11によって、上方の誘電体接触領域112から抑圧される。このため、誘電体膜抑圧部材11によって高圧側誘電体膜2に荷重がかかる領域は誘電体接触領域112の下方領域のみに制限することができる。
【0073】
その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置71は、高圧側誘電体膜2に不要な曲げ応力を与えることなく、誘電体膜抑圧部材11の誘電体接触領域112と誘電体膜支持部材10の支持面10Fとの間で高圧側誘電体膜2を安定性良く固定することができる。
【0074】
誘電体膜抑圧部材11は、基準電位である接地電位に設定され、導電性を有している。誘電体膜抑圧部材11の誘電体非接触領域111は、平面視して高圧側誘電体膜2の中間領域と重複している。
【0075】
したがって、電極ユニット50は、誘電体非接触領域111を有する誘電体膜抑圧部材11によって給電体5の電界強度を緩和して高圧側誘電体膜2の中間領域の電位を低下させることができるため、高圧側誘電体膜2と接地側誘電体膜3との外径方向の電位を低下させることができる。
【0076】
その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置71における電極ユニット50は、高圧側誘電体膜2と誘電体膜支持部材10との空隙20における絶縁破壊を確実に防止することができる。
【0077】
(接地導体6)
図15~
図17に示すように、筐体1の導体収容空間6S内に収容される接地導体6は、平面視して円状を呈しており、底面の端部領域に原料ガスバッファ空間61及びスリット空間62を有している。
【0078】
原料ガスバッファ空間61は平面して円環状に形成されており、
図2に示すように、ガス流路21と繋がっており、外部から供給される原料ガスG1をガス流路21を介して原料ガスバッファ空間61内に取り込むことができる。
【0079】
原料ガスバッファ空間61の周辺に複数のスリット空間62が離散して設けられる。
図17に示すように、複数のスリット空間62はそれぞれ原料ガスバッファ空間61と繋がっており、原料ガスバッファ空間61からスリット空間62にかけて原料ガスG1を流通されることができる。
【0080】
図6及び
図17に示すように、側面空間63は導体収容空間6Sの内周側面と接地導体6の外周側面との間の隙間空間であり、平面視して円環状に設けられる。
【0081】
誘電体膜支持部材10と接地導体6とは、
図3及び
図4に示すような位置関係を有するため、側面空間63を通過した原料ガスG1は誘電体膜支持部材10の下方側面領域R10に供給される。
【0082】
このように、原料ガスバッファ空間61は、接地導体6の下面側に設けられ、ガス流路21介して原料ガスG1を受けている。複数のスリット空間62はそれぞれ、接地導体6の下面側に設けられ、原料ガスバッファ空間61に繋がっている。
【0083】
側面空間63は、接地導体6の側面側に設けられ、複数のスリット空間62に繋がっている。上述したように、原料ガス用流通空間は、原料ガスバッファ空間61、複数のスリット空間62及び側面空間63を含んでいる。
【0084】
したがって、外部からガス流路21に供給される原料ガスG1は、原料ガスバッファ空間61、スリット空間62及び側面空間63を経由して、放電空間4に導かれる。
【0085】
複数のスリット空間62はそれぞれ、原料ガスG1が原料ガスバッファ空間61で一時的に滞留した後、複数のスリット空間62それぞれに流れるように、原料ガスバッファ空間61と比較的して原料ガスが流れにくい狭い空間に設定される。すなわち、複数のスリット空間62は、原料ガスバッファ空間61や側面空間63と比較して原料ガスG1の流れ易さを表す係数であるコンダクタンスを小さくしている。
【0086】
その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置71は、放電空間4へ原料ガスG1を空間的に均一に供給することができる。すなわち、平面視して円状の誘電体空間18の周辺部から中心の放電空間4に向かって均一に原料ガスG1が供給される。
【0087】
スリット空間62のコンダクタンスを下げることによって、原料ガスバッファ空間61と側面空間63との差圧が大きくなり、複数のスリット空間62それぞれを流れる原料ガスG1の流量のばらつきが低減化される。したがって、原料ガスG1は放電空間4に向けて均一に供給される。なお、原料ガスG1の流量は、例えば、ガス流路21の上流に設けられたマスフローコントローラー(MFC)等よって調整される。
【0088】
したがって、一般的な活性ガス生成装置は、原料ガスG1が均一に供給されないと、原料ガスG1が放電空間4を通過する時間が変わる結果、活性ガスG2の生成効率が悪化する不具合が生じる。実施の形態1の活性ガス生成装置71は、原料ガスG1を均一に供給することができるため、上記した不具合は生じない。
【0089】
(接地側電極構成部E2と活性ガス用バッファ空間68)
上述したように、第2の電極構成部である接地側電極構成部E2は接地側誘電体膜3及び導電膜7を含んでいる。
【0090】
図11及び
図12に示すように、接地側誘電体膜3は平面視して円状を呈しており、中央に円状の誘電体貫通口3hを有している。
【0091】
図18及び
図19に示すように、カバー誘電体膜8は平面視して円状を呈しており、中央に円状のカバー貫通口8hを有している。なお、カバー誘電体膜8は接地側誘電体膜3と同じ構成材料を用いることが望ましい。これは、カバー誘電体膜8と接地側誘電体膜3との間で熱膨張係数が異なる場合に、歪が生じることを防ぐためである。また、熱膨張係数が近い材料を、カバー誘電体膜8及び接地側誘電体膜3それぞれの材料として選択しても良い。
【0092】
図20及び
図21に示すように、導電膜7は平面視して円状を呈しており、中央に平面視して円状の導電膜開口部7hを有している。
【0093】
誘電体貫通口3h及び導電膜開口部7hはそれぞれ平面視して活性ガス用バッファ空間68と重複しており、
図21に示すように、導電膜開口部7hは平面視して誘電体貫通口3hを含み、誘電体貫通口3hより広い形状を呈している。
【0094】
接地側誘電体膜3及び導電膜7それぞれの中心位置を一致させた態様で接地側誘電体膜3の下面上に導電膜7が設けられる。導電膜7の径は接地側誘電体膜3の径と同程度に設定されるが、中央に誘電体貫通口3hより広い導電膜開口部7hが設けられている分、導電膜7の形成面積は接地側誘電体膜3の形成面積より狭い。
【0095】
導電膜開口部7hの円周状の外周線となる導電膜内側境界7eは、導電膜7における誘電体貫通口3h側の端部となり、導電膜内側境界7eより内側の領域には導電膜7が形成されていない。導電膜内側境界7eが導電膜7の電極境界線となる。したがって、
図21に示すように、接地側誘電体膜3の下面上における導電膜7の形成領域A7は、接地側誘電体膜3の外周位置から導電膜内側境界7eに至る領域となる。
【0096】
図20及び
図21に示すように、カバー誘電体膜8は接地側誘電体膜3の下面上から導電膜内側境界7eを含んで導電膜7の下面上にかけて円状に設けられる。ただし、カバー誘電体膜8は中心にカバー貫通口8hを有している。すなわち、導電膜7の導電膜開口部7hの外径は、カバー誘電体膜8の外径より短くなる寸法関係となる。
【0097】
カバー貫通口8hは誘電体貫通口3hと同程度の形状を有し、カバー貫通口8hは導電膜開口部7hに含まれ、導電膜開口部7hより狭い形状を有している。したがって、カバー誘電体膜8は導電膜7の導電膜内側境界7e(電極境界線)を覆っている。そして、カバー誘電体膜8が覆われていない導電膜7の下面と接地導体6の上面とが接触関係を有することになる。
【0098】
図15及び
図16に示すように、接地導体6の上部に設けられる活性ガス用バッファ空間68は平面視して円状を呈しており、活性ガス用バッファ空間68の底面65の周辺に複数のガス噴出口69が設けられる。
【0099】
図15及び
図16にカバー誘電体膜8の形成領域も併せて示している。これらの図に示すように、カバー誘電体膜8の外周線は活性ガス用バッファ空間68の外周線とほぼ同じになる。
【0100】
図2及び
図16に示すように、活性ガス用バッファ空間68の底面65上にシールド誘電体膜9が設けられる。
【0101】
図22及び
図23に示すようにシールド誘電体膜9は所定の膜厚で平面視して円状に形成されている。
【0102】
シールド誘電体膜9は、活性ガス用バッファ空間68及びシールド誘電体膜9それぞれの中心位置を一致させた態様で活性ガス用バッファ空間68の底面65上に設けられる。
【0103】
図15及び
図16に示すように、複数のガス噴出口69は平面視してカバー誘電体膜8と重複し、かつ、平面視して誘電体貫通口3h及びカバー貫通口8hとは重複しない。
【0104】
図16に示すように、活性ガス用バッファ空間68の底面65の周辺に接地導体6を貫通して複数のガス噴出口69が設けられる。すなわち、平面視してシールド誘電体膜9の周辺領域に複数のガス噴出口69が設けられる。
【0105】
このような構造の実施の形態1の活性ガス生成装置71において、原料ガスG1は金属筐体1の外部から、前述したように、ガス流路21及び原料ガス用流通空間を経由して放電空間4に供給される。
【0106】
誘電体バリア放電が発生している放電空間4に原料ガスG1が供給されると、原料ガスG1は活性化され活性ガスG2となり、誘電体貫通口3h及びカバー貫通口8hを通過して活性ガス用バッファ空間68に導入される。活性ガス用バッファ空間68内に入った活性ガスG2は、活性ガス用バッファ空間68の底面に設けられた複数のガス噴出口69を通過して後段の処理空間に供給される。
【0107】
このような構成の実施の形態1の活性ガス生成装置71において、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2と、第2の電極用誘電体膜である接地側誘電体膜3とが対向する主要誘電体空間が誘電体空間18となる。誘電体空間18は平面視して円状を呈している。また、高圧側誘電体膜2とシールド誘電体膜9とが対向する空間が補助誘電体空間として規定される。放電空間4は、誘電体空間18内において給電体5と導電膜7とが平面視して重複する主要放電空間を含んでいる。
【0108】
上記主要放電空間を形成するために、高圧側誘電体膜2と接地側誘電体膜3とが高さ方向(Z方向)に一定の距離となるように対応して設置されており、高圧側誘電体膜2と接地側誘電体膜3との間の誘電体空間18内に放電空間4の上記主要放電空間が存在している。
【0109】
放電空間4は、さらに、上記補助誘電体空間内において誘電体貫通口3h、カバー貫通口8h、及びシールド誘電体膜9上の活性ガス用バッファ空間68の一部からなる補助放電空間44を含んでいる。
【0110】
接地導体6において底面65下の底面領域を接地電位に設定された接地電極用導電膜として用い、交流電源15より交流電圧を受ける給電体5と上記接地電極用導電膜との間に放電電圧を印加することにより、補助放電空間44を生成することができる。
【0111】
前述したように、補助放電空間44は誘電体貫通口3h、カバー貫通口8h及び活性ガス用バッファ空間68の一部を含んでいる。このように、実施の形態1で形成される放電空間4は、誘電体空間18内の主要放電空間及び補助放電空間44を含んでいる。
【0112】
実施の形態1の活性ガス生成装置71において、補助放電空間44から複数のガス噴出口69それぞれに至る経路が活性ガス流通経路として規定される。
【0113】
実施の形態1の活性ガス生成装置71において、放電空間4の一部である補助放電空間44は誘電体貫通口3hとカバー貫通口8hと活性ガス用バッファ空間68の一部とを含んでいるため、補助放電空間44から複数のガス噴出口69に至る活性ガス流通経路を必要最小限の体積に抑えて活性ガスG2の失活量を抑制することができる。
【0114】
さらに、電極ユニット50の接地側電極構成部E2におけるカバー誘電体膜8は、活性ガス用バッファ空間68内において導電膜7の電極境界線である導電膜内側境界7eを覆い、かつ、平面視して複数のガス噴出口69と重複しているため、活性ガスG2が導電膜7に衝突することに伴い活性ガスG2が消失する表面失活現象を抑制することができる。
【0115】
その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置71は、高濃度な活性ガスG2を複数のガス噴出口69から後段の処理空間に供給することができる。
【0116】
実施の形態1の電極ユニット50は、上記述した構造を有することにより、放電空間4に面する部分は絶縁体である誘電体を構成材料とした部品(高圧側誘電体膜2,接地側誘電体膜3,カバー誘電体膜8及びシールド誘電体膜9)のみとなる。金属材料が放電に面すると容易にイオン化し、ガス中に金属イオンが含まれることとなり、コンタミネーションの原因となる。
【0117】
(筐体開口部41)
図2に示すように、筐体1の筐体底部1aは筐体開口部41を有している。筐体開口部41は活性ガス用バッファ空間68と平面視して重複する領域に設けられ、筐体底部1aを貫通している。
【0118】
したがって、複数のガス噴出口69噴出される活性ガスG2は、筐体開口部41を介して下方の処理空間に導かれる。
【0119】
図2に示すように、筐体底部1aに設けられた筐体開口部41は、下方に向かうに従い開口面積が広くなり、
図2及び
図7に示すように、最下外周縁41Lを有するテーパー形状を有している。
【0120】
実施の形態1の活性ガス生成装置71において、筐体1の筐体底部1aに設けられる筐体開口部41は下方に向かうに従い開口面積が広くなるテーパー形状を有している。
【0121】
このため、実施の形態1の活性ガス生成装置71は、複数のガス噴出口69から噴出される活性ガスG2が筐体底部1aに衝突することによる損失を最小限に抑え、高濃度な活性ガスG2を下方の処理空間に供給することができる。
【0122】
<実施の形態2>
(実施の形態1の課題)
上述した実施の形態1の活性ガス生成装置71では、活性ガス用バッファ空間68から複数のガス噴出口69を経由して、下方に存在する後段の処理空間へ活性ガスG2を供給している。以下、複数のガス噴出口69から活性ガスG2を複数の部分活性ガスと規定して説明する。
【0123】
図31は実施の形態1の活性ガス生成装置71における電極ユニット50(51~53)の活性ガスG2の噴出形態を模式的に示す説明図である。
図32は電極ユニット50において理想とする活性ガスG2の噴出形態を模式的に示す説明図である。
図31及び
図32は例えば
図1のA-A断面に相当する。
図31及び
図32それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0124】
図31に示すように、実施の形態1の活性ガス生成装置71が備える電極ユニット50(51~53)において、複数のガス噴出口69は、複数の部分活性ガス間で衝突が生じないように、下方に向かうに従い互いに遠ざかる態様で設けられている。
【0125】
しかし、活性ガス用バッファ空間68の空間圧力p0と後段の処理空間の空間圧力p1とが大きく異なる場合、例えば、{(p1/p0)<0.5}となる場合、複数のガス噴出口69から噴出される複数の部分活性ガスは、
図31のガスの流れFGXに示すように、チョーク流れと呼ばれる1方向のみの流れとなり、複数の部分活性ガスはそれぞれ拡散することなく直線上に進む。
【0126】
実施の形態1の活性ガス生成装置71は、後段の処理空間に均一な活性ガスG2を供給するために、電極ユニット50単位に複数のガス噴出口69を設け、さらに、比較的広い領域を有する処理空間に対し活性ガスG2を供給するために、電極ユニット50を電極ユニット51~53として複数設ける構造を採用している。
【0127】
しかしながら、各電極ユニット50から噴出される複数の部分活性ガスはそれぞれ、
図31で示す直線状のガスの流れFGXで処理空間に供給されており、
図32で示す多方向に拡散したガスの流れFGYになっていない。
【0128】
このように、電極ユニット50の複数のガス噴出口69それぞれから噴出される部分活性ガスは基本的に1つの方向性のみ有している。このため、実施の形態1の活性ガス生成装置71は、処理空間に均一な活性ガスG2を供給できていないという課題を有している。
【0129】
以下で述べる実施の形態2の活性ガス生成装置75では、均一な活性ガスG2を供給することを目的としている。
【0130】
(実施の形態2の構造)
図33は実施の形態2の活性ガス生成装置75における電極ユニット55の断面構造を示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0131】
活性ガス生成装置75の全体構成は
図1で示した活性ガス生成装置71と同様な構成である。したがって、
図33で示す電極ユニット55は、
図1で示す全体構成の活性ガス生成装置75における電極ユニット51~53のいずれかに対応する。
【0132】
すなわち、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0133】
実施の形態2の電極ユニット55は、実施の形態1の電極ユニット50の接地導体6を接地導体60に置き換えたことを特徴としている。
【0134】
以下、実施の形態1の電極ユニット50と同一の構成部分は同一符号を付して、実施の形態2の電極ユニット55の特徴部分を中心に説明する。
【0135】
図33に示すように、電極ユニット55は、接地側誘電体膜3を含む接地側電極構成部E2の下方に設けられ、導体収容空間6S内に収容される基準電位導体である接地導体60を備えている。接地導体60は金属等の導電体を構成材料としている。
【0136】
実施の形態2の電極ユニット55は、接地導体60が導体収容空間6S内に配置される態様で筐体1の筐体内空間S1内に収容される。外部により供給される原料ガスG1は、筐体底部1a内に設けられたガス流路21を介して導体収容空間6S内に配置された接地導体60の下面及び側面に設けられる原料ガス用流通空間に供給される。
【0137】
(接地導体60)
図34及び
図35はそれぞれ接地導体60の構造を模式的に示す説明図である。
図34は接地導体60の平面構造を示しており、
図35は接地導体60の断面構造を示している。
図34及び
図35それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0138】
基準電位導体である接地導体60は、上部に非貫通の活性ガス用バッファ空間68を有し、接地側誘電体膜3を含む接地側電極構成部E2は活性ガス用バッファ空間68を塞いで配置される。したがって、活性ガス用バッファ空間68外において、導電膜7の下面と接地導体60の上面とが接触関係を有する。
【0139】
実施の形態1と同様、筐体1は基準電位である接地電位に設定される。したがって、筐体1及び接地導体60を介して導電膜7が接地電位に設定される。
【0140】
筐体1の導体収容空間6S内に収容される接地導体60は、
図34に示すように、平面視して円状を呈しており、底面の端部領域に原料ガスバッファ空間61及びスリット空間62を有している。
【0141】
実施の形態1の接地導体6に対するのと同様、接地導体60に対し、原料ガスバッファ空間61、複数のスリット空間62及び側面空間63を含む原料ガス用流通空間が設けられる。
【0142】
したがって、外部からガス流路21に供給される原料ガスG1は、原料ガスバッファ空間61、スリット空間62及び側面空間63を経由して、放電空間4に導かれる。
【0143】
このため、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、放電空間4へ原料ガスG1を空間的に均一に供給することができる。
【0144】
図34及び
図35に示すように、接地導体60の上部に設けられる活性ガス用バッファ空間68は平面視して円状を呈しており、活性ガス用バッファ空間68の底面65の周辺に複数のガス噴出口70が設けられる。
【0145】
複数のガス噴出口70は、実施の形態1の複数のガス噴出口69と同様、平面視してカバー誘電体膜8と重複し、かつ、平面視して誘電体貫通口3h及びカバー貫通口8hとは重複しない。
【0146】
図33~
図35に示すように、活性ガス用バッファ空間68の底面65の周辺に接地導体60を貫通して複数のガス噴出口70が設けられる。すなわち、平面視してシールド誘電体膜9の周辺領域に複数のガス噴出口70が設けられる。
【0147】
誘電体バリア放電が発生している放電空間4に原料ガスG1が供給されると、原料ガスG1は活性化され活性ガスG2となり、誘電体貫通口3h及びカバー貫通口8hを通過して活性ガス用バッファ空間68に導入される。活性ガス用バッファ空間68内に入った活性ガスG2は、活性ガス用バッファ空間68の底面に設けられた複数のガス噴出口70を通過して後段の処理空間に供給される。
【0148】
実施の形態2の活性ガス生成装置75において、補助放電空間44から複数のガス噴出口70それぞれに至る経路が活性ガス流通経路として規定される。
【0149】
実施の形態2の活性ガス生成装置75において、放電空間4の一部である補助放電空間44は誘電体貫通口3hとカバー貫通口8hと活性ガス用バッファ空間68の一部とを含んでいるため、補助放電空間44から複数のガス噴出口70に至る活性ガス流通経路を必要最小限の体積に抑えて活性ガスG2の失活量を抑制することができる。
【0150】
さらに、電極ユニット55の接地側電極構成部E2におけるカバー誘電体膜8は、活性ガス用バッファ空間68内において導電膜7の電極境界線である導電膜内側境界7eを覆い、かつ、平面視して複数のガス噴出口70と重複しているため、活性ガスG2が導電膜7に衝突することに伴い活性ガスG2が消失する表面失活現象を抑制することができる。
【0151】
その結果、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、実施の形態1と同様、高濃度な活性ガスG2を複数のガス噴出口70から後段の処理空間に供給することができる。
【0152】
筐体1の筐体底部1aは、活性ガス用バッファ空間68と平面視して重複する領域に筐体開口部41を有し、複数のガス噴出口70から噴出される活性ガスG2は、筐体開口部41を介して下方の処理空間に導かれる。
【0153】
実施の形態2の活性ガス生成装置75において、筐体1の筐体底部1aに設けられる筐体開口部41は下方に向かうに従い開口面積が広くなるテーパー形状を有している。
【0154】
このため、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、実施の形態1と同様、複数のガス噴出口70から噴出される活性ガスG2が筐体底部1aに衝突することによる損失を抑制し、比較的高濃度な活性ガスG2を下方の処理空間に供給することができる。
【0155】
(複数のガス噴出口70)
実施の形態2の電極ユニット55で設けられる複数のガス噴出口70から噴出される活性ガスG2が、下方に存在する後段の処理空間に供給される。ここで、複数のガス噴出口70から噴出される活性ガスを複数の部分活性ガスとして規定する。
【0156】
実施の形態2の電極ユニット55において、複数のガス噴出口70から噴出された複数の部分活性ガスは筐体開口部41を介して下方に導かれる。
【0157】
【0158】
図36及び
図37に示すように、筐体開口部41は、高さ方向(Z方向)における開口面積が一定の上方領域41aと、下方に向かうに従い開口面積が広くなるテーパー形状のテーパー領域である下方テーパー領域41tとを含んでいる。筐体開口部41において、下方テーパー領域41tは上方領域41aより下方に設けられるテーパー領域となる。
【0159】
図37では、上方領域41aと下方テーパー領域41tとの境界線の中心位置から少し低い座標位置を衝突点P80として示している。衝突点P80は後述する衝突領域80内に存在し、衝突領域80の中心となる。
【0160】
実施の形態1の電極ユニット55において、複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突点P80で衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられる。
【0161】
以下、複数のガス噴出口70の構造について詳述する。
図36及び
図37では2つのガス噴出口70を図示しているが、
図34に示すように、複数のガス噴出口70の個数が“3”以上設けられている。
【0162】
以下では、
図36及び
図37それぞれで図示される2つのガス噴出口70のうち、図中右側(+X方向側)のガス噴出口70をガス噴出口70(1)と標記し、図中左側(-X方向側)のガス噴出口70をガス噴出口70(2)と標記する。
【0163】
前述したように、複数のガス噴出口70は平面視して円状に互いに離散して配置されている。以下、複数のガス噴出口70の中心を結ぶ円状の仮想線を「仮想ガス噴出口円」と称する。
【0164】
ガス噴出口70(1)及び70(2)は、上記仮想ガス噴出口円において直径方向に対向する1対のガス噴出口70,70に相当する。ここで、ガス噴出口70(1)から噴出される部分活性ガスを部分活性ガスg2(1)と標記し、ガス噴出口70(2)から噴出される部分活性ガスを部分活性ガスg2(2)と標記する。
【0165】
ガス噴出口70(1)は基準方向である水平方向(X方向)に対し“0”を超え、90°未満の一定の噴出口傾斜度A71を有している。噴出口傾斜度A71はガス噴出口70(1)から噴出される部分活性ガスg2(1)が衝突点P80に向かう方向に設定される。
【0166】
ガス噴出口70(2)はガス噴出口70(1)と同様、水平方向に対し“0”を超え、90°未満の一定の噴出口傾斜度A72を有している。噴出口傾斜度A72はガス噴出口70(2)から噴出される部分活性ガスg2(2)が衝突点P80に向かう方向に設定される。
【0167】
噴出口傾斜度A71及びA72は互いに同一角度であり、例えば、45°に設定される。
【0168】
ガス噴出口70(1)及び70(2)が設けられる、活性ガス用バッファ空間68下の接地導体60の残存膜厚T6は例えば3mmに設定される。最上部におけるガス噴出口70(1)及び70(2)の中心位置間の形成間隔R70は例えば16.4mmに設定される。形成間隔R70は仮想ガス噴出口円の直径Φの長さに一致する。
【0169】
一方、筐体開口部41のZ方向に沿った全体深さDTAは例えば18.5mmに設定され、筐体開口部41のうち上方領域41aのZ方向に沿った上方深さDT1は例えば5.0mmに設定される。
【0170】
また、筐体開口部41のテーパー領域となる下方テーパー領域41tの側面はテーパー傾斜度A41に沿って円錐状に拡がっている。テーパー傾斜度A41は例えば45°に設定される。
【0171】
上述した構造の接地導体60において、ガス噴出口70(1)及び70(2)から部分活性ガスg2(1)及びg2(2)が噴出されると、部分活性ガスg2(1)と部分活性ガスg2(2)とは衝突点P80で衝突する。
図37に示すように、衝突点P80の接地導体60の表面からの形成深さが衝突深さDTXとなる。
【0172】
なお、ガス噴出口70の総数が“3”以上であっても、各ガス噴出口70が形成間隔R70を直径とした仮想ガス噴出口円に沿って配置され、かつ、衝突点P80に向かう方向に同一値となる噴出口傾斜度A70を設定することにより、同一の衝突点P80で3以上の複数の部分活性ガスを衝突させることができる。なお、噴出口傾斜度A70は噴出口傾斜度A71及びA72等の総称である。
【0173】
上述した噴出口傾斜度A71及びA72、形成間隔R70、残存膜厚T6、及び上方深さDT1の設定例では、衝突点P80の衝突深さDTXは5.2mmとなる。
【0174】
ガス噴出口70(1)及び70(2)の口径等を考慮すると、複数の部分活性ガスは衝突点P80を中心として拡がりを有する衝突領域80にて衝突すると考えられる。したがって、上述した例では、下方テーパー領域41tの上部領域から上方領域41aの下部領域にかけて衝突領域80が形成されることになる。すなわち、衝突領域80は下方テーパー領域41t内または下方テーパー領域41tより上方の上方領域41a内に存在する。
【0175】
(活性ガスG2の噴出形態)
図38~
図41はそれぞれ実施の形態2の電極ユニット55の筐体開口部41内における活性ガスG2の噴出形態を模式的に示す説明図である。
図38~
図41はそれぞれ
図34のD-D断面の一部に相当する。
図38~
図41それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0176】
以下、ガス噴出口70(1)から噴出される部分活性ガスg2(1)の噴出方向を部分活性ガス噴出方向V7(1)と規定し、ガス噴出口70(2)から噴出される部分活性ガスg2(2)の噴出方向を部分活性ガス噴出方向V7(2)と規定する。
【0177】
図38に示すように、部分活性ガスg2(1)は衝突点P80に達するように部分活性ガス噴出方向V7(1)に沿って噴出され、部分活性ガスg2(2)は衝突点P80に達するように部分活性ガス噴出方向V7(2)に沿って噴出される。
【0178】
すなわち、部分活性ガスg2(1)の流れの向きは部分活性ガス噴出方向V7(1)の1方向のみであり、部分活性ガスg2(2)の流れの向きは部分活性ガス噴出方向V7(2)の1方向のみとなっている。
【0179】
その後、
図39に示すように、衝突点P80を含む衝突領域80にて部分活性ガスg2(1)と部分活性ガスg2(2)とが衝突して、部分活性ガスg2(1)及びg2(2)は複数の拡散方向DKに拡散する。
【0180】
すなわち、部分活性ガスg2(1)の流れの向きが1つの部分活性ガス噴出方向V7(1)から複数の拡散方向DKに分散し、部分活性ガスg2(2)の流れの向きが1つの部分活性ガス噴出方向V7(2)から複数の拡散方向DKに分散する。このように、衝突領域80において複数の部分活性ガスそれぞれ流れの向きが1方向から複数の拡散方向に分散する。
【0181】
そして、
図40に示すように、複数の部分活性ガスの中間供給方向DR1は、下方テーパー領域41tの側面の影響を受け、テーパー傾斜度A41に近づくように規制される。
【0182】
このように、衝突領域80は下方テーパー領域41t及び下方テーパー領域41tより上方の上方領域41aに存在するため、各々が拡散した複数の部分活性ガスが下方に向かうに従い、下方テーパー領域41tの側面のテーパー形状に沿った方向に流れる。
【0183】
その後、
図41に示すように、複数の部分活性ガスはテーパー傾斜度A41に沿った拡がりの最終供給方向DR2に沿って下方に位置する後段の処理空間に供給される。
【0184】
(効果)
このような構造の実施の形態2の活性ガス生成装置75は、実施の形態1と同様な効果を有し、さらに、以下の実施の形態2に固有の効果を奏する。
【0185】
実施の形態2の活性ガス生成装置75は上述した接地導体60を有する電極ユニット55を筐体1の筐体内空間1S内に収容している。実施の形態2の電極ユニット55の接地導体60に設けられる複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突点P80を含む衝突領域80にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、衝突領域80は下方テーパー領域41t内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。
【0186】
このため、
図39に示すように、衝突領域80にて複数の部分活性ガスが衝突することにより、複数の部分活性ガスそれぞれの流れの向きが1方向から複数の拡散方向DKに分散する。
【0187】
衝突領域80は下方テーパー領域41t内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。このため、各々が拡散した複数の部分活性ガスが下方に向かうに従い、下方テーパー領域41tの側面のテーパー形状に沿った方向、すなわち、
図40で示す中間供給方向DR1に流れる。
【0188】
その後、複数の部分活性ガスを含む活性ガスG2は、下方テーパー領域41tから下方の処理空間に向けて、下方テーパー領域41tの側面のテーパー形状に沿った方向、すなわち、
図41で示す最終供給方向DR2に沿って拡散しつつ流れる。
【0189】
このように、複数のガス噴出口70から噴出された複数の部分活性ガスは、
図38~
図41で示したように筐体開口部41内を流れる。
【0190】
その結果、活性ガス用バッファ空間68の空間圧力p0と後段の処理空間の空間圧力p1とが大きく異なっていても、実施の形態1の活性ガス生成装置75は、均一な活性ガスG2を後段の処理空間に供給することができる。
【0191】
実施の形態2の電極ユニット55に設けた複数のガス噴出口70はそれぞれ下方に向かうに従い衝突点P80を含む衝突領域80に近づく方向に傾いて形成され、複数のガス噴出口70それぞれの基準方向となる水平方向に対する形成傾きである噴出口傾斜度A70は同一値に設定される。
【0192】
このため、ガス噴出口70の個数が“3”以上であっても、複数のガス噴出口70から噴出される複数の部分活性ガスを同一の衝突領域80内で衝突させることができる。
【0193】
その結果、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、1つの衝突領域80にて複数の部分活性ガスをそれぞれ複数の拡散方向に分散させることにより、より均一な活性ガスG2を後段の処理空間に向けて供給することができる。
【0194】
さらに、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、
図1に示すように、電極ユニット55を電極ユニット51~53として複数設ける構造を採用している。
【0195】
このため、実施の形態2の活性ガス生成装置75は、各々が電極ユニット55と同様な構造を有する複数の電極ユニット51~53それぞれから複数の部分活性ガスを噴出させることにより、比較的広い領域を有する後段の処理空間に対し均一に活性ガスG2を供給することができる。
【0196】
<実施の形態3>
(基本態様)
図42は実施の形態3の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット81の基本態様を模式的に示す説明図である。実施の形態3の活性ガス生成装置は放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成する電極ユニット81を有している。
【0197】
同図に示すように、電極ユニット81は、第1の電極構成部となる高圧側電極構成部E11と、高圧側電極構成部E11の下方に設けられる第2の電極構成部となる接地側電極構成部E20とを備えている。
【0198】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E11は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2と誘電体膜F2の上面上に設けられる第1の電極用導電膜である高圧電極F5とを含んでいる。
【0199】
第2の電極構成部である接地側電極構成部E20は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3と誘電体膜F3の下面上に設けられる第2の電極用導電膜である接地電極F6とを含んでいる。
【0200】
実施の形態3の電極ユニット81は、誘電体膜F2の下面上に密着して隙間無く誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2が設けられる構造を特徴としている。すなわち、実施の形態3の電極ユニット81における高圧側電極構成部E11は、誘電体膜F2、高圧電極F5及び誘電体保護膜FC2を含んで構成される。
【0201】
誘電体保護膜FC2を介して、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間に誘電体空間18が形成される。具体的には、誘電体保護膜FC2と誘電体膜F3とが対向する空間が誘電体空間18となる。放電空間4は、誘電体空間18内において高圧電極F5と接地電極F6とが平面視して重複する領域である主要放電空間を含んでいる。
【0202】
このように、実施の形態3の電極ユニット81では、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、誘電体膜F2が保護対象誘電体膜となり、保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2に対し誘電体空間18側に誘電体保護膜FC2が設けられる。
【0203】
誘電体保護膜FC2の構成材料は、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時において、誘電体バリア放電によって生じるイオンの保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2への照射を遮断し、かつ、イオンと化学反応しない保護特性を有している。
【0204】
誘電体保護膜FC2の構成材料として例えば半絶縁性を有する炭化ケイ素が考えられる。ここで、半絶縁性とは1×105Ωcm以上、絶縁耐力1kV/mm以上を有することを意味する。
【0205】
誘電体保護膜FC2は上述した半絶縁性を有するため、放電空間4で発生する誘電体バリア放電に寄与することができる。この点は、後述する実施の形態4~実施の形態8における誘電体保護膜FC3~FC5についても同様である。
【0206】
電極ユニット81は、高圧側電極構成部E11の高圧電極F5と接地側電極構成部E20の接地電極F6との間に印加電圧として交流電圧を印加する交流電源15をさらに備えている。具体的には高圧電極F5に交流電圧が印加され、接地電極F6は基準電位である接地電位に設定される。
【0207】
実施の形態3の基本態様である電極ユニット81は、交流電源15から印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生する。
【0208】
図42で示す基本態様の電極ユニット81では、原料ガスG1の放電空間4への供給形態、活性ガスG2の噴出形態は特に限定していない。例えば、
図42において、図中左側から原料ガスG1を供給し、図中右側から活性ガスG2を噴出するようにしても良い。
【0209】
基本態様となる電極ユニット81を有する実施の形態3の活性ガス生成装置において、放電空間4を含む誘電体空間18と保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2との間に上述した保護特性を有する誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2が存在している。このため、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時に誘電体膜F2がイオンと反応する誘電体膜反応現象を抑制することができる。
【0210】
その結果、実施の形態3の基本態様となる活性ガス生成装置は、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F2の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0211】
加えて、電極ユニット81は、誘電体膜F2及びF3の構成材料を従前から変更する必要はなく、誘電体保護膜FC2を追加するのみで構成することができるため、電極ユニット81の製造工程が複雑化することはない。
【0212】
実施の形態3の基本態様の活性ガス生成装置において、誘電体保護膜FC2は保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2の下面上に密着して隙間なく設けられるため、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間において、放電空間4以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0213】
電極ユニット81の高圧側電極構成部E11は誘電体保護膜FC2を含んでいる。この電極ユニット81を有する実施の形態3の基本態様の活性ガス生成装置は、高圧電極F5及び接地電極F6間に交流電源15より印加電圧として交流電圧を印加することにより、誘電体空間18内の放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0214】
(第2の態様)
図43は実施の形態3の第2の態様の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット810の概念を示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0215】
図43で示す電極ユニット810は、
図42で示した基本態様の電極ユニット81を、実施の形態2の電極ユニット55に適用した概念構造である。電極ユニット810において、誘電体膜F2として高圧側誘電体膜2が用いられ、誘電体膜F3として接地側誘電体膜3が用いられ、高圧電極F5として給電体5が用いられている。なお、接地電極F6として図示しない導電膜7(
図20,
図21)が用いられる。
【0216】
同図に示すように、第2の態様の概念を示す電極ユニット810では、高圧側誘電体膜2の下面上に誘電体保護膜FC2を密着して設けている。電極ユニット810では誘電体保護膜FC2の形成方法は問わない。電極ユニット810を実使用構造で実現したのが以下で述べる電極ユニット811である。
【0217】
図44は実施の形態3の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット811の断面構造を示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0218】
図44で示す電極ユニット811は、
図42で示した基本態様の電極ユニット81を、実施の形態2の電極ユニット55に適用した実使用構造である。電極ユニット811において、誘電体膜F2として高圧側誘電体膜2が用いられ、誘電体膜F3として接地側誘電体膜3が用いられ、高圧電極F5として給電体5が用いられている。なお、接地電極F6として図示しない導電膜7(
図20,
図21)が用いられる。
【0219】
このように実施の形態3の第2の態様における実使用構造の活性ガス生成装置は電極ユニット811を有する活性ガス生成装置となる。
【0220】
実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様の全体構成は
図1で示した活性ガス生成装置71と同様な構成である。したがって、
図44で示す電極ユニット811は、
図1で示す全体構成の活性ガス生成装置75における電極ユニット51~53のいずれかに対応する。
【0221】
すなわち、実施の形態3の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0222】
以下、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様な構造、または、実施の形態2の電極ユニット55と同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット811の特徴部分を中心に説明する。
【0223】
図44に示すように、電極ユニット811は、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様、高圧側誘電体膜2の下面は凹部底面26と、凹部底面の周辺に設けられる凸部底面23とを有している。凸部底面23は凹部底面26より+Z方向に沿った高さ方向における形成位置が高く設定されている。凹部底面26上に誘電体保護膜FC2が設けられ、凸部底面23上には誘電体保護膜FC2が設けられていない。
【0224】
電極ユニット811は、高圧側誘電体膜2の凸部底面23を下方から支持する誘電体支持面となる支持面10Fを有する誘電体膜支持部材10Bを備えている。
【0225】
図45は誘電体膜支持部材10Bの平面構造を模式的に示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。なお、
図45では後述する溝部16及びOリング17の図示を省略している。
【0226】
図45に示すように、誘電体膜支持部材10Bは平面視して中央に中央開口部100を有する円状を呈している。中央開口部100の周辺に段差部103と段差部102と周辺部上面101とからなる段差構造が円環状に設けられる。段差部103の上面が固定補助面10XFとなり、段差部102の上面が支持面10Fとなる。段差部103(10XF)の外周側に段差部102(支持面10F)が位置し、段差部102の外周側の周辺部上面101に複数の貫通口10hが離散して円状に設けられる。
【0227】
固定補助面10XFは中央開口部100の外周に沿って円環状に設けられ、支持面10Fは固定補助面10XFの外周に沿って円環状に設けられる。
【0228】
一方、実施の形態1において
図9及び
図10を参照して説明したように、高圧側誘電体膜2は平面視して円状の凹部底面26と、凹部底面26の周辺の底面が平面視して円環状の凸部底面23とを有している。
【0229】
図44及び
図45に示すように、誘電体膜支持部材10Bは、高圧側誘電体膜2の凹部底面26上に設けられた誘電体保護膜FC2の周辺領域の下方に配置される保護部材固定補助面となる固定補助面10XFをさらに有している。
【0230】
電極ユニット811は、電極ユニット50及び55と同様、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材11を備えており、誘電体膜抑圧部材11は平面視して給電体5と重複していない。
【0231】
誘電体膜支持部材10Bにおいて、保護部材固定補助面となる固定補助面10XFと誘電体保護膜FC2の下面との間に弾性部材として機能するOリング17が挿入されている。Oリング17の弾性力によって高圧側誘電体膜2の凹部底面26と誘電体保護膜FC2の上面とが密着状態に設定される。以下、この点について詳述する。
【0232】
誘電体膜支持部材10Bは、固定補助面10XF内に平面視して円環状に設けられた溝部16を有している。そして、溝部16内に平面視して円環状のOリング17が設けられる。このように、電極ユニット811は溝部16を有する誘電体膜支持部材10BとOリング17とを含んでいる。
【0233】
溝部16に設けられるOリング17は、通常はガス等の流体を密封するシール材として用いられる。電極ユニット811ではOリング17を弾性部材として用いている。具体的には、Oリング17が変形した際に生じる弾性力を利用している。
【0234】
図44において、Oリング17は、誘電体膜支持部材10Bと高圧側誘電体膜2との間において、誘電体保護膜FC2を介して挟まれることによって変形する。弾性部材として機能するOリング17の弾性力により、誘電体保護膜FC2の上面は高圧側誘電体膜2の下面に対して密着する。
【0235】
実施の形態3の第2の態様で用いられる電極ユニット811は、基本態様と同様、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F2の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0236】
加えて、電極ユニット811は、高圧側誘電体膜2及び接地側誘電体膜3の構成材料を従前から変更する必要はなく、電極ユニット55からの主な変更点は、誘電体膜支持部材10から誘電体膜支持部材10Bへの改良、及び誘電体保護膜FC2の追加程度となる。このため、電極ユニット811の製造工程が複雑化することはない。
【0237】
例えば、電極ユニット55の構造で、誘電体保護膜FC2を設けることなく、高圧側誘電体膜2の構成材料として上記保護特性を有する構成材料を用いた場合を考える。ここで、上記保護特性を有する構成材料を用いた高圧側誘電体膜2を「高圧側誘電体膜2X」とする。高圧側誘電体膜2Xは給電体配置用凹部28、凸部底面23及び凹部底面26を有する比較的複雑な構造を呈しているため、上記保護特性を有する構成材料の加工性が悪い場合、高圧側誘電体膜2Xを得るための加工処理は比較的複雑な加工処理となる。
【0238】
一方、電極ユニット811における誘電体保護膜FC2は比較的単純な平板構造であり、誘電体保護膜FC2をOリング17を介して誘電体膜支持部材10Bの固定補助面10XF上に配置する比較的簡単な製造工程が追加されるにすぎない。したがって、電極ユニット811の製造工程は複雑化することはない。
【0239】
また、電極ユニット811では貫通口が設けられていない高圧側誘電体膜2の下面上に誘電体保護膜FC2を設けているため、誘電体保護膜FC2によって、放電空間4における誘電体バリア放電から高圧側誘電体膜2を完全に保護することができる。
【0240】
このような電極ユニット811を有する実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様は、電極ユニット81を有する活性ガス生成装置の基本態様と同様な効果を奏し、以下の固有の効果をさらに奏する。
【0241】
実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様において、電極ユニット811の誘電体膜支持部材10Bは、誘電体支持面となる支持面10Fにて接地側誘電体膜3の凸部底面23を下方から支持している。さらに、弾性部材として機能するOリング17の弾性力によって高圧側誘電体膜2の凹部底面26と誘電体保護膜FC2の上面とが密着状態に設定される。
【0242】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様は、誘電体膜支持部材10B及びOリング17を設けるという比較的簡単な構造で、高圧側誘電体膜2と密着する誘電体保護膜FC2を安定性良く固定することができる。
【0243】
加えて、実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様は、Oリング17の弾性力を利用することにより、比較的簡単な構造で、高圧側誘電体膜2の凹部底面26と誘電体保護膜FC2の上面との密着精度の向上を図ることができる。
【0244】
さらに、
図44及び
図45で示した電極ユニット811を有する実施の形態3の活性ガス生成装置の第2の態様において、複数のガス噴出口70は、実施の形態2の電極ユニット55と同様の特徴を有している。すなわち、複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突領域80にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、衝突領域80は下方テーパー領域41t(
図36及び
図37参照)内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。
【0245】
このため、実施の形態3の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態2の活性ガス生成装置と同様、均一な活性ガスG2を後段の処理空間に供給することができる。
【0246】
実施の形態3では、電極ユニット810を実現する実構造の一例としてOリング17を用いた電極ユニット811を示したが、他の構造で電極ユニット810を実現しても良い。例えば、以下で述べる第1及び第2の変形例が考えられる。
【0247】
第1の変形例として、誘電体膜支持部材10Bの固定補助面10XFと誘電体保護膜FC2との間に、Oリング17に替えて一般的なスプリングばねで密着させる構造が考えられる。
【0248】
第2の変形例として、誘電体保護膜FC2の端部に鉄などの磁性体を構成材料として磁性薄膜領域を設け、誘電体保護膜FC2の磁性薄膜領域の上方に設けられた磁石の磁力で磁性薄膜領域を引きつけて誘電体保護膜FC2を保持する構造が考えられる。磁性薄膜領域はスパッタ法等を用いて成膜することができる。第2の変形例を実現すべく、
図44で示した電極ユニット811の誘電体膜抑圧部材11や押圧部材12において、固定補助面10XFと平面視して重複領域に磁石を設ける等の態様が考えられる。
【0249】
また、磁性薄膜領域は、放電空間4に面する側でも面しない側のいずれに設けてもよいが、誘電体バリア放電で生じたイオン・電子類が衝突しない位置に設けることが望ましい。
【0250】
<実施の形態4>
図46は実施の形態4の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット82の基本態様を模式的に示す説明図である。実施の形態4の活性ガス生成装置は放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成する電極ユニット82を有している。
【0251】
同図に示すように、電極ユニット82は、第1の電極構成部となる高圧側電極構成部E10と、高圧側電極構成部E10の下方に設けられる第2の電極構成部となる接地側電極構成部E21とを備えている。
【0252】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E10は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2と誘電体膜F2の上面上に設けられる第1の電極用導電膜である高圧電極F5とを含んでいる。
【0253】
第2の電極構成部である接地側電極構成部E21は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3と誘電体膜F3の下面上に設けられる第2の電極用導電膜である接地電極F6とを含んでいる。
【0254】
実施の形態4の電極ユニット82は、誘電体膜F3の上面上に密着して隙間無く誘電体保護部材である誘電体保護膜FC3が設けられる構造を特徴としている。すなわち、実施の形態4の電極ユニット82における接地側電極構成部E21は、誘電体膜F3、接地電極F6及び誘電体保護膜FC3を含んで構成される。
【0255】
誘電体保護膜FC3を介して、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間に誘電体空間18が設けられる。具体的には、電極ユニット82において、誘電体保護膜FC3は誘電体膜F3の上面上に密着して設けられ、誘電体膜F2と誘電体保護膜FC3とが対向する空間が誘電体空間18となる。この誘電体空間18内において、高圧電極F5及び接地電極F6が平面視して重複する領域である主要放電空間を含む放電空間4が形成される。
【0256】
このように、実施の形態4の電極ユニット82では、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、誘電体膜F3が保護対象誘電体膜となり、保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3に対し誘電体空間18側に誘電体保護膜FC3が設けられる。
【0257】
誘電体保護膜FC3の構成材料は、誘電体保護膜FC2と同様、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時において、誘電体バリア放電によって生じるイオンの保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3への照射を遮断し、かつ、イオンと化学反応しない保護特性を有している。
【0258】
電極ユニット82は、高圧側電極構成部E10の高圧電極F5と接地側電極構成部E21の接地電極F6と間に印加電圧として交流電圧を印加する交流電源15をさらに備えている。具体的には高圧電極F5に交流電圧が印加され、接地電極F6は基準電位である接地電位に設定される。
【0259】
実施の形態4の基本態様である電極ユニット82は、交流電源15から印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生する。
【0260】
図46で示す基本態様の電極ユニット82では、原料ガスG1の放電空間4への供給形態、活性ガスG2の噴出形態は特に限定していない。例えば、
図46において、図中左側から原料ガスG1を供給し、図中右側から活性ガスG2を噴出するようにしても良い。
【0261】
電極ユニット82を有する実施の形態4の活性ガス生成装置において、放電空間4を含む誘電体空間18と保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3との間に上述した保護特性を有する誘電体保護部材である誘電体保護膜FC3が存在している。このため、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時に誘電体膜F3がイオンと反応する誘電体膜反応現象を抑制することができる。
【0262】
その結果、実施の形態4の基本態様となる活性ガス生成装置は、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F3の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0263】
加えて、電極ユニット82は、誘電体膜F2及びF3の構成材料を従前から変更する必要はなく、誘電体保護膜FC3を追加するのみで構成することができるため、電極ユニット82の製造工程が複雑化することはない。
【0264】
実施の形態4の基本態様の活性ガス生成装置において、誘電体保護膜FC3は保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3の上面上に密着して隙間なく設けられるため、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間において、放電空間4以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0265】
電極ユニット82の接地側電極構成部E21は誘電体保護膜FC3を含んでいる。この電極ユニット82を有する実施の形態4の活性ガス生成装置は、高圧電極F5及び接地電極F6間に印加電圧を印加することにより、誘電体空間18内の放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0266】
なお、誘電体保護膜FC3に代表される誘電体保護部材は、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、少なくとも一つである保護対象誘電体膜に対し誘電体空間18側に設ければ、上述した効果を発揮することができる。
【0267】
したがって、電極ユニット82を拡張して、誘電体膜F2の下面上にさらに誘電体保護膜FC2を設けても良い。同様に、実施の形態3の電極ユニット81を拡張して、誘電体膜F3の上面上にさらに誘電体保護膜FC3を設けても良い。
【0268】
<実施の形態5>
(基本態様)
図47は実施の形態5の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット83の基本態様を模式的に示す説明図である。実施の形態5の活性ガス生成装置は放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成する電極ユニット83を有している。
【0269】
以下、実施の形態3の電極ユニット81と同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット83の特徴部分を中心に説明する。
【0270】
同図に示すように、電極ユニット83は、第1の電極構成部となる高圧側電極構成部E12と、高圧側電極構成部E12の下方に設けられる第2の電極構成部となる接地側電極構成部E20とを備えている。
【0271】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E12は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2と誘電体膜F2の上面上に設けられる第1の電極用導電膜である高圧電極F5とを含んでいる。
【0272】
第2の電極構成部である接地側電極構成部E20は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3と誘電体膜F3の下面上に設けられる第2の電極用導電膜である接地電極F6とを含んでいる。
【0273】
実施の形態5の電極ユニット83は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2の下方に保護部材空間40を介して誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4を設けた構造を特徴としている。
【0274】
このように、実施の形態5の電極ユニット83における高圧側電極構成部E12は、誘電体膜F2、高圧電極F5及び誘電体保護膜FC4を含んで構成され、誘電体保護膜FC4は、保護対象誘電体膜である誘電体膜F2との間に微小な隙間となる保護部材空間40を有して設けられる。
【0275】
誘電体保護膜FC4を介して、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間に誘電体空間18が設けられる。具体的には、誘電体保護膜FC4と誘電体膜F3とが対向する空間が誘電体空間18となる。この誘電体空間18内において、高圧電極F5及び接地電極F6が平面視して重複する領域である主要放電空間を含む放電空間4が形成される。
【0276】
このように、実施の形態5の電極ユニット83では、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、誘電体膜F2が保護対象誘電体膜となり、保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2に対し誘電体空間18側に誘電体保護膜FC4が設けられる。
【0277】
誘電体保護膜FC4の構成材料は、実施の形態3の誘電体保護膜FC2や実施の形態4の誘電体保護膜FC3と同様、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時において、誘電体バリア放電によって生じるイオンの保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2への照射を遮断し、かつ、イオンと化学反応しない保護特性を有している。
【0278】
実施の形態5の基本態様である電極ユニット83は、交流電源15から印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生する。
【0279】
この際、印加電圧、放電空間4及び保護部材空間40は、印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生し、保護部材空間40に誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される。以下、放電発生要件について説明する。
【0280】
一般に、誘電体バリア放電においては放電が発生するために必要な電圧は、圧力・ガス種が一定であれば放電距離(ギャップ長)が長くなるに従い高い電圧を必要とする性質がある。この性質はパッシェンの法則と呼ばれる。
【0281】
例えば、圧力400Torrの窒素ガスにおいて、パッシェンの法則によると放電距離が1mmの時の放電開始電圧は2900V程度であり、放電距離が2.5mmの場合の放電開始電圧6600V程度となる。一方、放電が開始する電界強度に関しては前者が2900V/mmと後者が2640V/mmとなり、放電距離が長くなるにつれて放電に必要な電界強度は小さくなるという特徴がある。
【0282】
電極ユニット83が採用している誘電体バリア放電は平行平板方式と呼ばれており、保護部材空間40と放電空間4とに与えられる電界強度は同じ値となる特徴がある。この特徴から、保護部材空間40の放電距離(ギャップ長)を短くすることによって放電開始電界強度を意図的に高くして、放電が生じる部分を選択的に放電空間4のみとすることが可能となる。
【0283】
ここで、印加電圧VPを交流電源15から印加される印加電圧とし、ギャップ長Δ4を放電空間4のギャップ長とし、ギャップ長Δ40を保護部材空間40のギャップ長とする。さらに、放電開始電界強度E4を放電空間4に誘電体バリア放電が発生開始するために必要な電界強度とし、放電開始電界強度E40を保護部材空間40に誘電体バリア放電が発生開始するために必要な電界強度とし、電界強度EXを放電空間4及び保護部材空間40に共通の同一値となる電界強度とする。
【0284】
この場合、電界強度EX、放電開始電界強度E4、及び放電開始電界強度E40間において、{EX<E40}かつ{EX≧E4}が放電発生要件となる。この放電発生要件を満足すれば、放電空間4に誘電体バリア放電が発生し、かつ、保護部材空間40に誘電体バリア放電は発生しない。
【0285】
ギャップ長Δ40をギャップ長Δ4より十分短く設定することにより、{E40>>E4}に設定することできる。したがって、上述した放電発生要件({EX<E40}かつ{EX≧E4})を満足する、印加電圧VP、ギャップ長Δ4、ギャップ長Δ40を比較的容易に設定することができる。
【0286】
図47で示す基本態様の電極ユニット83では、原料ガスG1の放電空間4への供給形態、活性ガスG2の噴出形態は特に限定していない。例えば、
図47において、図中左側から原料ガスG1を供給し、図中右側から活性ガスG2を噴出するようにしても良い。
【0287】
基本態様となる電極ユニット83を有する実施の形態5の活性ガス生成装置において、放電空間4を含む誘電体空間18と保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2との間に、上述した保護特性を有する誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4が存在している。このため、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時に誘電体膜F2がイオンと反応する誘電体膜反応現象を抑制することができる。
【0288】
その結果、実施の形態5の基本態様となる活性ガス生成装置は、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F2の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0289】
加えて、電極ユニット83は、誘電体膜F2及びF3の構成材料を従前から変更する必要はなく、誘電体保護膜FC4を追加するのみで構成することができるため、電極ユニット83の製造工程が複雑化することはない。
【0290】
実施の形態5の活性ガス生成装置の基本態様において、誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4は保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2との間に保護部材空間40を有するため、誘電体保護膜FC4と誘電体膜F2とを密着させる必要がない分、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0291】
また、保護部材空間40のギャップ長Δ40を、放電空間4のギャップ長Δ4と比較して十分短い長さに設定することにより、上記放電発生要件を満足する、印加電圧、放電空間4及び保護部材空間40を比較的容易に設定することができる。
【0292】
その結果、実施の形態5の活性ガス生成装置は、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間において、放電空間4以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0293】
電極ユニット83の高圧側電極構成部E12は誘電体保護膜FC4を含んでおり、電極ユニット83は、誘電体膜F2及びF3間に印加する印加電圧は上記放電発生要件を満足している。このため、電極ユニット83を有する実施の形態5の活性ガス生成装置は、誘電体膜F2と誘電体保護膜FC4との間に形成される保護部材空間40に誘電体バリア放電を発生させることなく、誘電体保護膜FC4と誘電体膜F3との間に形成される主要放電空間を含む放電空間4に誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0294】
その結果、実施の形態5の活性ガス生成装置は、放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0295】
(第2の態様)
図48は実施の形態5の第2の態様の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット830の概念を模式的に示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0296】
電極ユニット830は、
図47で示した基本態様の電極ユニット83を、実施の形態2の電極ユニット55に適用した概念構造の特徴部分を示している。
【0297】
同図に示すように、第2の態様の概念の特徴部分を示す電極ユニット830では、高圧側誘電体膜2の下面側に微小な隙間となる保護部材空間40を介して誘電体保護膜FC4を設けている。
【0298】
電極ユニット830は、誘電体膜F2の周辺領域を下方から支持する誘電体支持面となる支持面10Fと、誘電体保護膜FC4の周辺領域を下方から支持する保護部材支持面となる支持面10YFとを有する誘電体膜支持部材M10を備えている。
【0299】
図48で示す電極ユニット830を実使用構造で実現したのが以下で述べる電極ユニット831である。
【0300】
図49は実施の形態5の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット831の断面構造を示す説明図である。
図50は
図49の着目領域R3の詳細構造を模式的に示す説明図である。
図49及び
図50それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0301】
図49で示す電極ユニット831は、
図47で示した基本態様の電極ユニット83を、実施の形態2の電極ユニット55に適用した実使用構造である。電極ユニット831において、誘電体膜F2として高圧側誘電体膜2が用いられ、誘電体膜F3として接地側誘電体膜3が用いられ、高圧電極F5として給電体5が用いられ、誘電体膜支持部材M10として誘電体膜支持部材10Cが用いられている。なお、接地電極F6として図示しない導電膜7(
図20,
図21)が用いられる。
【0302】
このように実施の形態5の第2の態様の活性ガス生成装置は電極ユニット831を有する活性ガス生成装置となる。
【0303】
実施の形態5の活性ガス生成装置の第2の態様の全体構成は
図1で示した活性ガス生成装置71と同様な構成である。したがって、
図49で示す電極ユニット831は、
図1で示す全体構成の活性ガス生成装置75における電極ユニット51~53のいずれかに対応する。
【0304】
すなわち、実施の形態5の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0305】
以下、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様な構造、または、実施の形態2の電極ユニット55と同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット831の特徴部分を中心に説明する。
【0306】
図49に示すように、電極ユニット831は、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様、高圧側誘電体膜2の下面は凹部底面26と、凹部底面の周辺に設けられる凸部底面23とを有している。凸部底面23は凹部底面26より+Z方向に沿った高さ方向における形成位置が高く設定されている。凹部底面26の下方に誘電体保護膜FC4が保護部材空間40を介して設けられ(
図50参照)、凸部底面23上に誘電体保護膜FC4は設けられない。
【0307】
電極ユニット831における誘電体保護膜FC4の構造を平板状とし、誘電体保護膜FC4のXY平面における平面形状を
図9及び
図10で示した凹部底面26より少し広い円状に設定している。
【0308】
図50では導電膜7の図示を省略している。接地導体60上に図示しない導電膜7を介して接地側誘電体膜3が設けられる。
【0309】
図50に示すように、高圧側誘電体膜2の下面側に微小なギャップ長Δ40を有する保護部材空間40を介して誘電体保護膜FC4が配置されている。そして、誘電体保護膜FC4と接地側誘電体膜3との間がギャップ長Δ4の放電空間4となる。なお、高圧側誘電体膜2の上面上に給電体5が設けられ、接地側誘電体膜3の下面側に接地導体60が設けられる。
【0310】
電極ユニット831では、上述した放電発生要件を満足させるべく、放電空間4の放電距離となるギャップ長Δ4と比較して、保護部材空間40の放電距離となるギャップ長Δ40を十分短くなるように設定している。
【0311】
電極ユニット831は、高圧側誘電体膜2の凸部底面23を下方から支持する誘電体支持面となる支持面10Fを有する誘電体膜支持部材10Cを備えている。
【0312】
図51は誘電体膜支持部材10Cの平面構造を模式的に示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。
【0313】
図51に示すように、誘電体膜支持部材10Cは平面視して中央に中央開口部100を有する円状を呈している。中央開口部100の周辺に段差部104と段差部102と周辺部上面101とからなる段差構造が円環状に設けられる。段差部104の上面が支持面10YFとなり、段差部102の上面が支持面10Fとなる。段差部104(10YF)の外周側に段差部102(支持面10F)が位置し、段差部102の外周側の周辺部上面101に複数の貫通口10hが離散して円状に設けられる。
【0314】
支持面10YFは中央開口部100の外周に沿って円環状に設けられ、支持面10Fは支持面10YFの外周に沿って円環状に設けられる。
【0315】
図49及び
図51に示すように、誘電体膜支持部材10Cは、誘電体保護膜FC4の周辺領域を下方から支持する保護部材支持面となる支持面10YFをさらに有している。
【0316】
したがって、誘電体保護膜FC4の周辺領域を支持面10YFによって下方から支持することにより、誘電体保護膜FC4のZ方向に沿った高さ方向の位置を固定することができる。
【0317】
加えて、段差部102の内径を、平面形状が円状の誘電体保護膜FC4の半径よりもわずかに広く設定することにより、誘電体保護膜FC4のXY平面における動きを高精度に制限することができる。
【0318】
電極ユニット831は、電極ユニット50及び55と同様、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材11を備えており、誘電体膜抑圧部材11は平面視して給電体5と重複しない。
【0319】
誘電体膜支持部材10Cにおいて、誘電体支持面である支持面10Fは保護部材支持面である支持面10YFよりも高さ方向における形成位置が高く、支持面10Fと支持面10YFとの高さ方向の差分値Δdは、高圧側誘電体膜2の下面と誘電体保護膜FC4の上面との間にギャップ長Δ40の保護部材空間40が形成されるように設定される。
【0320】
例えば、誘電体保護膜FC4が均一な膜厚dC4を有し、凹部底面26の凸部底面23から-Z方向となる深さ方向の長さを突出長t26とすると、差分値Δdは、{Δd=dC4+t26+Δ40}を満足する長さに設定される。この際、保護部材空間40のギャップ長Δ40が上記した放電発生要件を満足するように、放電空間4のギャップ長Δ4より十分短く設定することが必要とされる。なお、上述した誘電体保護膜FC4を含む誘電体保護膜FC2~FC5の膜厚は1mm以下に設定される。
【0321】
実施の形態5の第2の態様で用いられる電極ユニット831は、基本態様と同様、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F2の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0322】
加えて、電極ユニット831は、高圧側誘電体膜2及び接地側誘電体膜3の構成材料を従前から変更する必要はなく、電極ユニット55からの主な変更点は、誘電体膜支持部材10から誘電体膜支持部材10Cへの改良、及び誘電体保護膜FC4の追加程度となる。このため、電極ユニット811の製造工程と同様、電極ユニット831の製造工程が複雑化することはない。
【0323】
また、電極ユニット831では貫通口が設けられていない高圧側誘電体膜2の下方に誘電体保護膜FC4を設けているため、誘電体保護膜FC4によって、放電空間4における誘電体バリア放電から高圧側誘電体膜2を完全に保護することができる。
【0324】
このような電極ユニット831を有する実施の形態5の活性ガス生成装置の第2の態様は、電極ユニット83を有する活性ガス生成装置の基本態様と同様な効果を奏し、以下の固有の効果をさらに奏する。
【0325】
実施の形態5の第2の態様となる活性ガス生成装置の電極ユニット831において、誘電体膜支持部材10Cは、誘電体支持面である支持面10Fにて高圧側誘電体膜2の周辺領域を下方から支持し、かつ、保護部材支持面である支持面10YFにて誘電体保護膜FC4の周辺領域を下方から支持している。
【0326】
さらに、電極ユニット831において、支持面10Fと支持面10YFとの差分値Δdは、高圧側誘電体膜2の下面と誘電体保護膜FC4の上面との間にギャップ長Δ40の保護部材空間40が形成されるように設定される。
【0327】
したがって、実施の形態5の第2の態様となる活性ガス生成装置は、高圧側誘電体膜2との間に保護部材空間40を有する誘電体保護膜FC4を安定性良く固定することができる。
【0328】
さらに、
図49~
図51で示した電極ユニット831を有する実施の形態5の活性ガス生成装置の第2の態様における複数のガス噴出口70は、実施の形態2の電極ユニット55と同様の特徴を有している。すなわち、複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突領域80にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、衝突領域80は下方テーパー領域41t(
図36及び
図37参照)内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。
【0329】
その結果、実施の形態5の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態2の電極ユニット55及び実施の形態3の第2の態様である電極ユニット811と同様、均一な活性ガスG2を後段の処理空間に供給することができる。
【0330】
実施の形態5では、電極ユニット830を実現する実使用構造の一例として電極ユニット831を示したが、他の構造で電極ユニット830を実現しても良い。
【0331】
<実施の形態6>
図52は実施の形態6の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット84の基本態様を模式的に示す説明図である。実施の形態6の活性ガス生成装置は放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成する電極ユニット84を有している。
【0332】
同図に示すように、電極ユニット84は、第1の電極構成部となる高圧側電極構成部E10と、高圧側電極構成部E10の下方に設けられる第2の電極構成部となる接地側電極構成部E22とを備えている。
【0333】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E10は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2と誘電体膜F2の上面上に設けられる第1の電極用導電膜である高圧電極F5とを含んでいる。
【0334】
第2の電極構成部である接地側電極構成部E22は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3と誘電体膜F3の下面上に設けられる第2の電極用導電膜である接地電極F6とを含んでいる。
【0335】
実施の形態6の電極ユニット84は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3の上方に微小な隙間となる保護部材空間40を介して誘電体保護部材である誘電体保護膜FC5を設けた構造を特徴としている。すなわち、実施の形態6の電極ユニット84における接地側電極構成部E22は、誘電体膜F3接地電極F6及び誘電体保護膜FC5を含んで構成される。
【0336】
保護部材空間40及び誘電体保護膜FC5を介して、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間に誘電体空間18が設けられる。具体的には、誘電体膜F2と誘電体保護膜FC5とが対向する空間が誘電体空間18となる。この誘電体空間18内において、高圧電極F5及び接地電極F6が平面視して重複する領域である主要放電空間を含む放電空間4が形成される。
【0337】
このように、実施の形態6の電極ユニット84では、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、誘電体膜F3が保護対象誘電体膜となり、保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3に対し誘電体空間18側に誘電体保護膜FC5が設けられる。
【0338】
誘電体保護膜FC5の構成材料は、誘電体保護膜FC2~FC4と同様、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時において、誘電体バリア放電によって生じるイオンの保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3への照射を遮断し、かつ、イオンと化学反応しない保護特性を有している。
【0339】
電極ユニット84は、高圧側電極構成部E10の高圧電極F5と接地側電極構成部E22の接地電極F6と間に印加電圧として交流電圧を印加する交流電源15をさらに備えている。具体的には高圧電極F5に交流電圧が印加され、接地電極F6は基準電位である接地電位に設定される。
【0340】
実施の形態6の基本態様である電極ユニット84は、交流電源15から印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生する。
【0341】
図52で示す基本態様の電極ユニット84では、原料ガスG1の放電空間4への供給形態、活性ガスG2の噴出形態は特に限定していない。例えば、
図52において、図中左側から原料ガスG1を供給し、図中右側から活性ガスG2を噴出するようにしても良い。
【0342】
電極ユニット84を有する実施の形態6の活性ガス生成装置において、放電空間4を含む誘電体空間18と保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3との間に上述した保護特性を有する誘電体保護部材である誘電体保護膜FC5が存在している。このため、放電空間4における誘電体バリア放電の発生時に誘電体膜F3がイオンと反応する誘電体膜反応現象を抑制することができる。
【0343】
その結果、実施の形態6の基本態様となる活性ガス生成装置は、誘電体膜反応現象に伴う誘電体膜F3の元素等の放電空間4内への混入を確実に回避することにより、高純度の活性ガスG2を生成することができる。
【0344】
加えて、電極ユニット84は、誘電体膜F2及びF3の構成材料を従前から変更する必要はなく、誘電体保護膜FC5を追加するのみで構成することができるため、電極ユニット84の製造工程が複雑化することはない。
【0345】
実施の形態6の活性ガス生成装置の基本態様において、誘電体保護部材である誘電体保護膜FC5は保護対象誘電体膜となる誘電体膜F3との間に保護部材空間40を有するため、誘電体保護膜FC5と誘電体膜F3とを密着させる必要がない分、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0346】
また、保護部材空間40のギャップ長Δ40を、放電空間4のギャップ長Δ4と比較して十分短い長さに設定することにより、上記放電発生要件を満足する、交流電源15からの印加電圧、放電空間4及び保護部材空間40を比較的容易に設定することができる。
【0347】
その結果、実施の形態6の活性ガス生成装置は、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間において、放電空間4以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0348】
電極ユニット84の接地側電極構成部E22は誘電体保護膜FC5を含んでいる。この電極ユニット84を有する実施の形態5の活性ガス生成装置は、誘電体膜F2及び誘電体膜F3間に印加電圧を印加することにより、誘電体保護部材となる誘電体保護膜FC5と誘電体膜F3との間に形成される保護部材空間40に誘電体バリア放電を発生させることなく、放電空間4に誘電体バリア放電を発生させる。
【0349】
その結果、実施の形態6の活性ガス生成装置は、放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0350】
なお、誘電体保護膜FC5に相当する誘電体保護部材は、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、少なくとも一つである保護対象誘電体膜に対し誘電体空間18側に設ければ、上述した効果を発揮することができる。
【0351】
したがって、電極ユニット84を拡張して、誘電体膜F2の下面側に保護部材空間40を介して誘電体保護膜FC4をさらに設けても良い。同様に、実施の形態5の電極ユニット83を拡張して、誘電体膜F3の上面側に保護部材空間40を介して誘電体保護膜FC5をさらに設けても良い。
【0352】
この場合、保護部材空間40は、誘電体膜F2の下面側と誘電体膜F3の上面側に2つ形成されることになる。2つの保護部材空間40それぞれのギャップ長Δ40は上記放電発生要件を満足するように放電空間4のギャップ長Δ4と比較して十分短くなるように設定される。
【0353】
<実施の形態7>
(基本態様)
図53は実施の形態7の活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット91の基本態様を模式的に示す説明図である。実施の形態7の活性ガス生成装置は放電空間4に供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成する電極ユニット91を有している。
【0354】
同図に示すように、電極ユニット91は、第1の電極構成部となる高圧側電極構成部E13と、高圧側電極構成部E13の下方に設けられる第2の電極構成部となる接地側電極構成部E20とを備えている。
【0355】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E13は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2と誘電体膜F2の上面上に設けられる第1の電極用導電膜である高圧電極F5とを含んでいる。
【0356】
第2の電極構成部である接地側電極構成部E20は、第2の電極用誘電体膜である誘電体膜F3と誘電体膜F3の下面上に設けられる第2の電極用導電膜である接地電極F6とを含んでいる。
【0357】
実施の形態7の電極ユニット91における高圧側電極構成部E13は電極補強導電膜である導体膜F7と誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2とをさらに備えることを特徴としている。なお、誘電体保護膜FC2の膜厚は1mm以下に設定される。
【0358】
電極補強導電膜である導体膜F7は、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2の下面上に密着して設けられる。導体膜F7として例えば金属製の薄膜が考えられ、導体膜F7の膜厚は例えば500nm以下に設定される。
【0359】
誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2は導体膜F7の全てを覆い、かつ、高圧電極F5の下面上に設けられる。したがって、高圧側電極構成部E13は、誘電体膜F2、導体膜F7及び誘電体保護膜FC2の順で積層される積層構造である導体膜内蔵積層構造を有している。導体膜内蔵積層構造において、誘電体膜F2,導体膜F7間、導体膜F7,誘電体保護膜FC2及び誘電体膜F2,誘電体保護膜FC2間に隙間は存在しない。導体膜内蔵積層構造内の導体膜F7は電気的にフローティング状態に設定されている。
【0360】
このように、実施の形態7の電極ユニット91における高圧側電極構成部E13は、誘電体膜F2、高圧電極F5、導体膜F7及び誘電体保護膜FC2を含んで構成される。
【0361】
導体膜F7及び誘電体保護膜FC2を介して、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間に誘電体空間18が形成される。具体的には、誘電体保護膜FC2と誘電体膜F3とが対向する空間が誘電体空間18となる。
【0362】
このように、実施の形態7の電極ユニット91では、誘電体膜F2及び誘電体膜F3のうち、誘電体膜F2が保護対象誘電体膜となり、保護対象誘電体膜となる誘電体膜F2に対し誘電体空間18側に誘電体保護膜FC2が設けられる。
【0363】
以下、
図42で示した実施の形態3の電極ユニット81の同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット91の特徴部分を中心に説明する。
【0364】
誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2は電極補強導電膜である導体膜F7の全てを覆い、かつ、第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2の下面上に設けられる。前述したように、高圧側電極構成部E13は、誘電体膜F2、導体膜F7及び誘電体保護膜FCを含む積層構造である導体膜内蔵積層構造を有している。導体膜内蔵積層構造内において、誘電体膜F2、導体膜F7及び誘電体保護膜FC間に隙間は生じていない。
【0365】
そして、誘電体保護膜FC2と誘電体膜F3とが対向する空間が誘電体空間18となり、実施の形態7では、保護対象誘電体膜は誘電体膜F2となる。
【0366】
導体膜F7は、平面視して高圧電極F5より広く、平面視して誘電体膜F2及び誘電体保護膜FC2より狭い平面形状をする。また、接地電極F6は平面視して導体膜F7を含んでいる。
【0367】
誘電体空間18内において、導体膜F7と接地電極F6とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含むことにより、比較的広い放電空間4eが形成される。すなわち、実施の形態7の電極ユニット91における主要放電空間は、導体膜F7によって拡張主要放電空間に拡張される。ここで、拡張主要放電空間は、誘電体空間18内において導体膜F7と接地電極F6とが平面視して重複する領域となる。
【0368】
電極ユニット91は、高圧側電極構成部E13の高圧電極F5と接地側電極構成部E20の接地電極F6との間に印加電圧として交流電圧を印加する交流電源15をさらに備えている。具体的には高圧電極F5に交流電圧が印加され、接地電極F6は基準電位である接地電位に設定される。
【0369】
実施の形態7の基本態様である電極ユニット91は、交流電源15から印加電圧の印加時に放電空間4に誘電体バリア放電が発生する。
【0370】
図53で示す基本態様の電極ユニット91では、原料ガスG1の放電空間4への供給形態、活性ガスG2の噴出形態は特に限定していない。例えば、
図53において、図中左側から原料ガスG1を供給し、図中右側から活性ガスG2を噴出するようにしても良い。
【0371】
基本態様となる電極ユニット91を有する実施の形態7の活性ガス生成装置は、電極ユニット81を有する実施の形態3の活性ガス生成装置と同様な効果を奏し、さらに以下に述べる固有の効果を奏する。
【0372】
図54~
図56は実施の形態7の活性ガス生成装置の効果を示すための説明図である。
図54は実施の形態3の基本態様である電極ユニット81の放電空間4を示す説明図であり、
図55は実施の形態7の基本態様である電極ユニット91の放電空間4eを示す説明図であり、
図56は電極ユニット81を拡張した電極ユニット81Xの放電空間4eを示す説明図である。
【0373】
電極ユニット81及び電極ユニット91間で高圧電極F5の形成面積を同一に設定している。また、電極ユニット91及び電極ユニット81X間で導体膜F7の形成面積と拡張高圧電極F5eの形成面積とを同一に設定している。
【0374】
図56で示す電極ユニット81Xにおける高圧側電極構成部E11Xは、拡張高圧電極F5e、誘電体膜F2及び誘電体保護膜FC2を含んでいる。また、電極ユニット81、電極ユニット91及び電極ユニット81Xそれぞれにおいて、接地電極F6は平面視して高圧電極F5、導体膜F7及び拡張高圧電極F5eを含んでいる。
【0375】
図55で示す電極ユニット91における放電空間4eは、誘電体空間18内において導体膜F7と接地電極F6とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含んでいる。
【0376】
実施の形態7の基本態様である活性ガス生成装置は、誘電体保護部材である誘電体保護膜FC2と第1の電極用誘電体膜である誘電体膜F2との間に電極補強導電膜である導体膜F7を介挿させている。導体膜F7は、平面視して高圧電極F5より広いという形状特性を有している。
【0377】
例えば、高圧電極F5及び導体膜F7の平面形状が共に円状である場合、高圧電極F5の直径をdA(mm)とした場合、導体膜F7の直径は(dA+20mm)に設定される。このように、高圧電極F5は導体膜F7と比較して形成面積が小さい形状特性を有している。
【0378】
このため、実施の形態7の活性ガス生成装置の基本態様は、高圧電極F5と比較して導体膜F7の形成面積を広げた分、比較的広い体積の拡張主要放電空間を含む放電空間4eを得ることができる。
【0379】
以下、この点を詳述する。
図54で示すように、電極ユニット81は、誘電体空間18内において高圧電極F5と接地電極F6とが平面視して重複する領域である主要放電空間を含んで放電空間4が形成される。
【0380】
一方、
図55で示すように、実施の形態7の電極ユニット91は、高圧電極F5と比較して導体膜F7の形成面積を広げている。
【0381】
導電性を有する電極補強導電膜である導体膜F7は内部抵抗が十分小さく内部電位を同一にする性質があるため、導体膜F7から放電を発生させる電場を生じさせることができる。したがって、電極ユニット91は、誘電体空間18内において導体膜F7と接地電極F6とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含む比較的広い放電空間4eを形成することができる。
【0382】
なお、導体膜F7の膜厚は例えば50nmに設定される。導体膜F7の膜厚は低抵抗化を妨げることなく、導体膜内蔵積層構造内の誘電体膜F2、導体膜F7及び誘電体保護膜FC2間に隙間が生じなように設定することが望ましい。
【0383】
一方、
図56で示す電極ユニット81Xは、拡張高圧電極F5eの形成面積を広げることにより、導体膜F7を設けることなく電極ユニット91と同等の放電空間4eを形成している。
【0384】
しかしながら、拡張高圧電極F5eは外部に露出しているため、高圧電極F5より形成面積を広げた分、誘電体膜支持部材M10との電極余裕距離ΔF5が短くなる。このため、電極ユニット81Xは、拡張高圧電極F5eと誘電体膜支持部材M10との間で不具合が発生する可能性が高くなる。
【0385】
例えば、誘電体膜支持部材M10が導体で接地レベルに設定されている場合、拡張高圧電極F5eと誘電体膜支持部材M10との電極余裕距離ΔF5が短いと、沿面放電を経由して誘電体膜支持部材M10と拡張高圧電極F5eとが短絡されてしまう恐れがある。
【0386】
一方、実施の形態7の基本態様となる活性ガス生成装置は、導体膜F7を導体膜内蔵積層構造内に設けているため、導体膜F7が誘電体膜支持部材M10等の外部構成部材と電気的に接続される可能性は“0”となる。
【0387】
したがって、実施の形態7の基本態様となる活性ガス生成装置は、高圧電極F5の形成面積を必要最小限にして高圧電極F5と誘電体膜支持部材M10との電極余裕距離ΔF5を十分長い距離に設定することにより、上述した短絡等の不具合が発生する可能性を十分に抑制することができる。
【0388】
このように、実施の形態7の基本態様となる活性ガス生成装置は、高圧電極F5の形成面積を必要最小限に抑え、かつ、比較的広い(拡張)主要放電空間を含む放電空間4eに誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0389】
実施の形態7の基本態様の活性ガス生成装置において、導体膜内蔵積層構造の内部において誘電体膜F2、導体膜F7及び誘電体保護膜FC2間に隙間を生じさせていないため、誘電体膜F2と誘電体膜F3との間において、放電空間4e以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0390】
電極ユニット91の高圧側電極構成部E13は導体膜F7及び誘電体保護膜FC2を含んでいる。この電極ユニット91を有する実施の形態7の基本態様の活性ガス生成装置は、高圧電極F5及び接地電極F6間に交流電源15より印加電圧として交流電圧を印加することにより、誘電体空間18内の放電空間4eに供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0391】
(第2の態様)
図57は実施の形態7の第2の態様となる活性ガス生成装置に用いられる電極ユニット911の断面構造を示す説明図である。
図58は
図57の着目領域R4の詳細を示す説明図である。
図57及び
図58それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0392】
図57で示す電極ユニット911は、
図53で示した基本態様の電極ユニット91を、実施の形態2の電極ユニット55に適用した実使用構造である。電極ユニット911において、誘電体膜F2として高圧側誘電体膜2が用いられ、誘電体膜F3として接地側誘電体膜3が用いられ、高圧電極F5として給電体5が用いられ、導体膜F7として導体膜F71が用いられている。なお、接地電極F6として図示しない導電膜7(
図20,
図21)が用いられる。
【0393】
このように実施の形態7の第2の態様における実使用構造の活性ガス生成装置は電極ユニット911を有する活性ガス生成装置となる。
【0394】
実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様の全体構成は
図1で示した活性ガス生成装置71と同様な構成である。したがって、
図57で示す電極ユニット911は、
図1で示す全体構成の活性ガス生成装置75における電極ユニット51~53のいずれかに対応する。
【0395】
すなわち、実施の形態7の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0396】
以下、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様な構造、実施の形態2の電極ユニット55と同様な構造、または実施の形態5の電極ユニット831と同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット911の特徴部分を中心に説明する。
【0397】
図57に示すように、電極ユニット911は、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様、高圧側誘電体膜2の下面は凹部底面26と、凹部底面の周辺に設けられる凸部底面23とを有している。凸部底面23は凹部底面26より+Z方向に沿った高さ方向における形成位置が高く設定されている。凹部底面26上に導体膜F7及び誘電体保護膜FC2が設けられ、凸部底面23上には導体膜F7及び誘電体保護膜FC2が設けられていない。
【0398】
電極ユニット911は、高圧側誘電体膜2の凸部底面23を下方から支持する誘電体支持面となる支持面10Fを有する誘電体膜支持部材10Bを備えている。
【0399】
図57に示すように、誘電体膜支持部材10Bは、高圧側誘電体膜2の凹部底面26上に設けられた誘電体保護膜FC2の周辺領域の下方に配置される保護部材固定補助面となる固定補助面10XFをさらに有している。
【0400】
電極ユニット911は、電極ユニット50及び55と同様、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2を上方から抑圧する誘電体膜抑圧部材11を備えており、誘電体膜抑圧部材11は平面視して給電体5と重複しない。
【0401】
誘電体膜支持部材10Bにおいて、保護部材固定補助面となる固定補助面10XFと誘電体保護膜FC2の下面との間に弾性部材として機能するOリング17が挿入されている。なお、固定補助面10XFと平面視重複する領域には導体膜F71は形成されていない。したがって、Oリング17の弾性力によって高圧側誘電体膜2の凹部底面26と、誘電体保護膜FC2の上面とが密着状態に設定される。以下、この点について詳述する。
【0402】
図57において、Oリング17は、誘電体膜支持部材10Bと高圧側誘電体膜2との間において、誘電体保護膜FC2を介して挟まれることによって変形する。弾性部材として機能するOリング17の弾性力により、誘電体保護膜FC2の上面は、導体膜F71が形成されていない高圧側誘電体膜2の下面に対して密着する。
【0403】
実施の形態7の第2の態様で用いられる電極ユニット911は、実施の形態3の第2の態様及び実施の形態7の基本態様と同様の効果を奏する。さらに、以下で述べる固有の効果を奏する。
【0404】
なお、高圧側誘電体膜2(誘電体膜F2)、導体膜F71(導体膜F7)及び誘電体保護膜FC2からなる導体膜内蔵積層構造は例えば以下の第1及び第2の製法によって得ることができる。
【0405】
第1の製法はステップS11~S14を含む製法であり、以下にステップS11~S14を示す。
【0406】
S11…誘電体保護膜FC2の上面上に導体膜F71を成膜して、
図58で示す導体膜付誘電体保護膜FCE(誘電体保護膜FC2と導体膜F71との組合せ構造)を得る。なお、誘電体保護膜FC2への導体膜F7の成膜方法としてスパッタ法やイオンプレーティング技術が用いられる。
【0407】
S12…導体膜付誘電体保護膜FCEを、Oリング17を介して誘電体膜支持部材10Bの固定補助面10XF上に配置する。導体膜付誘電体保護膜FCEにおいて、固定補助面10XFの上方には導体膜F7は形成されていない。
【0408】
S13…誘電体膜支持部材10Bの支持面10F上に高圧側誘電体膜2を配置する。
【0409】
S14…高圧側誘電体膜2を上方から抑圧するための誘電体膜抑圧部材11を設ける。
【0410】
ステップS14の実行後、弾性部材として機能するOリング17の弾性力により、導体膜F71の上面及び(導体膜F71が設けられていない)誘電体保護膜FC2の上面が、高圧側誘電体膜2の下面に対して密着する。
【0411】
このように、ステップS11~S14を含む第1の製法によって、内部に隙間を生じさせることなく導体膜内蔵積層構造を得ることができる。なお、ステップS11の導体膜F71の成膜を精度良く行うべく、研磨等により誘電体保護膜FC2における上面の平面度を高めることが望ましい。例えば、導体膜F71の膜厚を20nmに設定した場合、誘電体保護膜FC2の上面の面粗さを20nm以下にすることが望ましい。
【0412】
第2の製法はステップS21~S24を含む製法であり、以下にステップS21~S24を示す。
【0413】
S21…高圧側誘電体膜2の下面上に導体膜F7を成膜して、
図58で示す導体膜付誘電体膜F2E(誘電体膜F2と導体膜F7との組合せ構造)を得る。なお、高圧側誘電体膜2への導体膜F7の成膜方法としてスパッタ法やイオンプレーティング技術が用いられる。
【0414】
S22…誘電体保護膜FC2を、Oリング17を介して誘電体膜支持部材10Bの固定補助面10XF上に配置する。導体膜付誘電体膜F2Eにおいて、固定補助面10XFの上方には導体膜F7は形成されていない。
【0415】
S23…誘電体膜支持部材10Bの支持面10F上に導体膜付誘電体膜F2Eを配置する。支持面10F上に配置される導体膜付誘電体膜F2Eの下面には導体膜F7は形成されていない。
【0416】
S24…導体膜付誘電体膜F2Eを上方から抑圧するための誘電体膜抑圧部材11を設ける。
【0417】
ステップS24の実行後、弾性部材として機能するOリング17の弾性力により、誘電体保護膜FC2の上面が、導体膜F7の下面及び(導体膜F7が設けられていない)高圧側誘電体膜2の下面に対して密着する。
【0418】
このように、ステップS21~S24を含む第2の製法によって、内部に隙間を生じさせることなく導体膜内蔵積層構造を得ることができる。なお、ステップS21の導体膜F7の成膜を精度良く行うべく、研磨等により高圧側誘電体膜2の下面の平面度を高めることが望ましい。例えば、導体膜F71の膜厚を20nmに設定した場合、高圧側誘電体膜2の下面の面粗さを20nm以下にすることが望ましい。
【0419】
電極ユニット911は、高圧側誘電体膜2及び接地側誘電体膜3の構成材料を従前から変更する必要はなく、電極ユニット55からの主な変更点は、誘電体膜支持部材10から誘電体膜支持部材10Bへの改良、導体膜F7及び誘電体保護膜FC2の追加程度となる。このため、上述した第1の製法または第2の製法を含む電極ユニット911の製造工程が複雑化することはない。
【0420】
実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様において、電極ユニット911の誘電体膜支持部材10Bは、誘電体支持面となる支持面10Fにて接地側誘電体膜3の凸部底面23を下方から支持している。さらに、弾性部材として機能するOリング17の弾性力によって高圧側誘電体膜2の凹部底面26と誘電体保護膜FC2の上面とが密着状態に設定される。
【0421】
したがって、実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様は、誘電体膜支持部材10B及びOリング17を設けるという比較的簡単な構造で、導体膜内蔵積層構造を安定性良く固定することができる。
【0422】
加えて、第1の電極用導電膜となる給電体5の面積を必要最小限に抑えることにより、誘電体膜抑圧部材11との間に十分な絶縁距離を確保することができる。
【0423】
したがって、実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様は、給電体5と誘電体膜抑圧部材11との間で生じ可能性がある不具合を確実に回避する構造を得ることができる。
【0424】
加えて、実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様は、Oリング17の弾性力を利用することにより、比較的簡単な構造で、高圧側誘電体膜2の凹部底面26と誘電体保護膜FC2の上面との密着精度の向上を図ることができる。
【0425】
さらに、
図57で示した電極ユニット911を有する実施の形態7の活性ガス生成装置の第2の態様において、複数のガス噴出口70は、実施の形態2の電極ユニット55及び実施の形態3の第2の態様である電極ユニット811と同様の特徴を有している。すなわち、複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突領域80にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、衝突領域80は下方テーパー領域41t(
図36及び
図37参照)内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。
【0426】
このため、実施の形態7の活性ガス生成装置における第2の態様は、実施の形態2の活性ガス生成装置及び実施の形態3の第2の態様と同様、均一な活性ガスG2を後段の処理空間に供給することができる。
【0427】
<実施の形態8>
図59は実施の形態8の第1及び第2の態様となる活性ガス生成装置の断面構造を示す説明図である。
図60は実施の形態8の第1の態様における
図59の着目領域R5の詳細構造を示す説明図である。
図61は実施の形態8の第2の態様における
図59の着目領域R5の詳細構造を示す説明図である。
図59~
図61それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0428】
図59で示す電極ユニット931は、
図49で示した実施の形態5の電極ユニット831に対応する実使用構造である。
【0429】
なお、第1の態様に対応する実施の形態8の基本態様は、
図47で示した電極ユニット83において、誘電体膜F2の下面に導体膜F7に設け、導体膜F7の下面と誘電体保護膜FC4の上面との間に保護部材空間40を設けた構造となる。
【0430】
また、第2の態様に対応する実施の形態8の基本態様は、
図47で示した電極ユニット83において、誘電体保護膜FC4の上面に導体膜F7に設け、導体膜F7の上面と誘電体膜F2の下面との間に保護部材空間40を設けた構造となる。
【0431】
電極ユニット931において、誘電体膜F2として高圧側誘電体膜2が用いられ、誘電体膜F3として接地側誘電体膜3が用いられ、高圧電極F5として給電体5が用いられ、導体膜F7として導体膜F72(第1の態様)または導体膜F73(第2の態様)が用いられ、
図48で示した誘電体膜支持部材M10として誘電体膜支持部材10Cが用いられている。なお、接地電極F6として図示しない導電膜7(
図20,
図21)が用いられる。なお、
図59では導体膜F72が示されている。
【0432】
このように実施の形態8の第1及び第2の態様の活性ガス生成装置は電極ユニット931を有する活性ガス生成装置となる。
【0433】
実施の形態8の活性ガス生成装置の第1及び第2の態様の全体構成は
図1で示した活性ガス生成装置71と同様な構成である。したがって、
図59で示す電極ユニット931は、
図1で示す全体構成の活性ガス生成装置75における電極ユニット51~53のいずれかに対応する。
【0434】
すなわち、実施の形態8の活性ガス生成装置における第1及び第2の態様は、実施の形態1の活性ガス生成装置71と同様、複数の電極ユニットとして電極ユニット51~53と、筐体内空間S1(
図8参照)に電極ユニット51~53を収容し、導電性を有する筐体1とを備えている。
【0435】
以下、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様な構造、実施の形態2の電極ユニット55、または実施の形態5の電極ユニット831と同様な構造は、同一符号を付して説明を適宜省略し、電極ユニット931の特徴部分を中心に説明する。
【0436】
図59に示すように、電極ユニット931は、実施の形態1の電極ユニット50(51~53)と同様、高圧側誘電体膜2の下面は凹部底面26と、凹部底面の周辺に設けられる凸部底面23とを有している。凸部底面23は凹部底面26より+Z方向に沿った高さ方向における形成位置が高く設定されている。
【0437】
図60で示す第1の態様では、凹部底面26の下面上に導体膜F72が設けられ、導体膜F72の下方に誘電体保護膜FC4が保護部材空間40を介して設けられ、凸部底面23上に導体膜F72及び誘電体保護膜FC4は設けられない。
【0438】
このように、
図60に示す第1の態様では、高圧側誘電体膜2及び導体膜F72の下面側に微小なギャップ長Δ40を有する保護部材空間40を介して誘電体保護膜FC4が配置されている。
【0439】
したがって、電極ユニット931の第1の態様における高圧側電極構成部E14は、高さ方向(+Z方向)に沿って、誘電体保護膜FC4、保護部材空間40、導体膜F72、高圧側誘電体膜2及び給電体5の順に配置される。
【0440】
一方、
図61で示す第2の態様では、凹部底面26の下方に導体膜F73及び誘電体保護膜FC4の組合せ構造となる導体膜付誘電体保護膜FCEが保護部材空間40を介して設けられ、凸部底面23上に導体膜F73及び誘電体保護膜FC4は設けられない。
【0441】
このように、
図61に示す第2の態様では、高圧側誘電体膜2の下面側に微小なギャップ長Δ40を有する保護部材空間40を介して、導体膜F73及び誘電体保護膜FC4の組合せ構造となる導体膜付誘電体保護膜FCEが配置されている。
【0442】
したがって、電極ユニット931の第2の態様における高圧側電極構成部E15は、高さ方向(+Z方向)に沿って、誘電体保護膜FC4、導体膜F73、保護部材空間40、高圧側誘電体膜2及び給電体5の順に配置される。
【0443】
以下、
図60で示す第1の態様と
図61で示す第2の態様とを総称する場合、「実施の形態8の実構造」または単に「実施の形態8」と称する場合がある。
【0444】
実施の形態8の実構造において、誘電体保護膜FC4と接地側誘電体膜3との間がギャップ長Δ4の放電空間4eとなる。なお、高圧側誘電体膜2の上面上に給電体5が設けられ、接地側誘電体膜3の下面側に接地導体60が設けられる。
【0445】
図59及び
図60で示した実施の形態8の第1の態様となる活性ガス生成装置は以下の特徴を有している。
【0446】
電極補強導電膜である導体膜F72は、第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2の下面上に密着して設けられる。
【0447】
誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4は導体膜F72の下方に設けられ、誘電体保護膜FC4は平面視して導体膜F72の全てを含み、誘電体保護膜FC4と導体膜F72との間に保護部材空間40が設けられる。なお、導体膜F72が形成されていない保護部材空間40の一部は誘電体保護膜FC4と高圧側誘電体膜2との間の空間となる。
【0448】
誘電体保護膜FC4と第2の電極用誘電体膜である接地側誘電体膜3とが対向する空間が誘電体空間18となり、保護対象誘電体膜は高圧側誘電体膜2である。
【0449】
第1の電極構成部である高圧側電極構成部E14は誘電体保護膜FC4及び導体膜F72をさらに含む特徴を有している。
【0450】
高圧側電極構成部E14の給電体5と接地側電極構成部E20の接地導体6と間に印加電圧VPを印加する交流電源15をさらに備え、交流電源15からの印加電圧の印加時に放電空間4eに誘電体バリア放電が発生する。
【0451】
導体膜F72は、平面視して給電体5より広く、平面視して高圧側誘電体膜2より狭い平面形状を有し、接地導体6は平面視して導体膜F72を含む。
【0452】
放電空間4eは、誘電体空間18内において導体膜F72と接地導体6とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含む。
【0453】
交流電源15からの印加電圧、放電空間4e及び保護部材空間40は、印加電圧の印加時に放電空間4eに誘電体バリア放電が発生し、保護部材空間40に誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される。
【0454】
一方、
図59及び
図61で示した実施の形態8の第2の態様となる活性ガス生成装置は以下の特徴を有している。
【0455】
電極補強導電膜である導体膜F73は、誘電体保護膜FC4の上面上に密着して設けられ、誘電体保護膜FC4は平面視して導体膜F73の全てを含んでいる。
【0456】
導体膜F73と高圧側誘電体膜2との間に保護部材空間40が設けられる。なお、導体膜F73が形成されていない保護部材空間40の一部は誘電体保護膜FC4と高圧側誘電体膜2との間の空間となる。
【0457】
また、誘電体保護膜FC4と接地側誘電体膜3とが対向する空間が誘電体空間18となり、保護対象誘電体膜は高圧側誘電体膜2である。
【0458】
高圧側電極構成部E15は誘電体保護膜FC4及び導体膜F73をさらに含む特徴を有している。
【0459】
高圧側電極構成部E15の給電体5と接地側電極構成部E20の接地導体6と間に印加電圧を印加する交流電源15をさらに備え、交流電源15の印加電圧の印加時に放電空間4eに誘電体バリア放電が発生する。
【0460】
導体膜F73は、平面視して給電体5より広く、平面視して高圧側誘電体膜2及び誘電体保護膜FC4より狭い平面形状を有し、接地導体6は平面視して導体膜F73を含んでいる。
【0461】
誘電体空間18において導体膜F73と接地導体6とが平面視して重複する領域である拡張主要放電空間を含んで放電空間4eが形成される。
【0462】
交流電源15の印加電圧、放電空間4e及び保護部材空間40は、印加電圧の印加時に放電空間4eに誘電体バリア放電が発生し、保護部材空間40に誘電体バリア放電が発生しない放電発生要件を満足するように設定される。
【0463】
実施の形態8の電極ユニット931は、上述した放電発生要件を満足させるべく、放電空間4eの放電距離となるギャップ長Δ4と比較して、保護部材空間40の放電距離となるギャップ長Δ40を十分短くなるように設定している。この特徴は第1及び第2の態様で共通している。
【0464】
図59に示すように、誘電体膜支持部材10Cは、誘電体保護膜FC4の周辺領域を下方から支持する保護部材支持面となる支持面10YFをさらに有している。
【0465】
したがって、誘電体保護膜FC4の周辺領域を支持面10YFによって下方から支持することにより、誘電体保護膜FC4のZ方向に沿った高さ方向の位置を固定することができる。
【0466】
なお、
図61で示す第2の態様の場合、導体膜F73及び誘電体保護膜FC4の組合せ構造である導体膜付誘電体保護膜FCEの周辺領域を支持面10YFによって下方から支持することになる。
【0467】
誘電体膜支持部材10Cにおいて、誘電体支持面である支持面10Fは保護部材支持面である支持面10YFよりも高さ方向における形成位置が高く、支持面10Fと支持面10YFとの高さ方向の差分値Δdは、高圧側誘電体膜2の下面と誘電体保護膜FC4の上面との間にギャップ長Δ40の保護部材空間40が形成されるように設定される。
【0468】
例えば、誘電体保護膜FC4が均一な膜厚dC4を有し、導体膜F72及びF73が共に均一な膜厚d7を有し、凹部底面26の凸部底面23から-Z方向となる深さ方向の長さを突出長t26とすると、差分値Δdは、{Δd=dC4+d7+t26+Δ40}を満足する長さに設定される。この際、保護部材空間40のギャップ長Δ40が上記した放電発生要件を満足するように、放電空間4のギャップ長Δ4より十分短く設定することが必要とされる。なお、導体膜F72及びF73の膜厚d7は十分薄いため、保護部材空間40の一部を形成する誘電体保護膜FC4と高圧側誘電体膜2とのギャップ長もギャップ長Δ40と同程度となる。
【0469】
図59及び
図60で示す電極ユニット931の第1の態様は、例えば以下の第3の製法によって得ることができる。第3の製法は以下に示すステップS31~S34を含む製法である。
【0470】
S31…高圧側誘電体膜2の下面上に導体膜F72を成膜して、
図60に示すように導体膜付誘電体膜F2Eを得る。
【0471】
S32…誘電体保護膜FC2を誘電体膜支持部材10Cの支持面10YF上に配置する。支持面10F上に配置される導体膜付誘電体膜F2Eの下面には導体膜F7は形成されていない。
【0472】
S33…誘電体膜支持部材10Cの支持面10F上に導体膜付誘電体膜F2Eを配置する。支持面10F上に配置される導体膜付誘電体膜F2Eの下面には導体膜F72は形成されていない。
【0473】
S34…導体膜付誘電体膜F2Eを上方から抑圧するための誘電体膜抑圧部材11を設ける。
【0474】
ステップS34の実行後、誘電体保護膜FC4の上面と、導体膜F72の下面及び(導体膜F72が設けられていない)高圧側誘電体膜2の下面との間に、保護部材空間40が形成される。
【0475】
このように、ステップS31~S34を含む第3の製法によって高圧側電極構成部E14を有する電極ユニット931の第1の態様を得ることができる。
【0476】
図59及び
図61で示す電極ユニット931の第2の態様は、例えば以下の第4の製法によって得ることができる。第4の製法は以下に示すステップS41~S44を含む製法である。
【0477】
S41…誘電体保護膜FC2の上面上に導体膜F73を成膜して、
図61に示すように導体膜付誘電体保護膜FCEを得る。
【0478】
S42…導体膜付誘電体保護膜FCEを誘電体膜支持部材10Cの支持面10YF上に配置する。導体膜付誘電体保護膜FCEにおいて、支持面10YFの上方には導体膜F7は形成されていない。
【0479】
S43…誘電体膜支持部材10Cの支持面10F上に高圧側誘電体膜2を配置する。
【0480】
S44…高圧側誘電体膜2を上方から抑圧するための誘電体膜抑圧部材11を設ける。
【0481】
ステップS44の実行後、導体膜付誘電体保護膜FCEの導体膜F73の上面及び(導体膜F73が設けられていない)誘電体保護膜FC2の上面と、高圧側誘電体膜2との間に保護部材空間40が形成される。
【0482】
実施の形態8の実構造である電極ユニット931を有する活性ガス生成装置は、
図47~
図51で示した実施の形態5の活性ガス生成装置と同様な効果を奏し、さらに、以下で述べる固有の効果を奏する。
【0483】
実施の形態8の活性ガス生成装置は、誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4と第1の電極用誘電体膜である高圧側誘電体膜2(誘電体膜F2)との間に電極補強導電膜である導体膜F72または導体膜F73を設けている。導体膜F72または導体膜F73は、平面視して第1の電極用導電膜である給電体5(高圧電極F5)より広いという形状特性を有している。
【0484】
このため、実施の形態8の活性ガス生成装置は、給電体5より導体膜F72または導体膜F73の形成面積を広げた分、より広い体積の拡張主要放電空間を含む放電空間4eを得ることができる。
【0485】
したがって、実施の形態8の活性ガス生成装置において、給電体5の形成面積を必要最小限に抑え、かつ、拡張主要放電空間を含む比較的広い放電空間4eに誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0486】
実施の形態8の活性ガス生成装置の第1の態様において、誘電体保護部材である誘電体保護膜FC4は電極補強導電膜となる導体膜F72との間に保護部材空間40を有するため、誘電体保護膜FC4と導体膜F72または高圧側誘電体膜2とを密着させる必要がない分、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0487】
一方、実施の形態8の活性ガス生成装置の第2の態様において、導体膜F73と高圧側誘電体膜2との間に保護部材空間40を有するため、誘電体保護膜FC4と高圧側誘電体膜2とを密着させる必要がない分、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0488】
また、実施の形態8の活性ガス生成装置において、保護部材空間40のギャップ長Δ40を、放電空間4eのギャップ長Δ4と比較して十分短い長さに設定することにより、上記放電発生要件を満足する、印加電圧、放電空間4及び保護部材空間40を比較的容易に設定することができる。
【0489】
その結果、実施の形態8の活性ガス生成装置は、誘電体膜2(F2)と誘電体膜3(F3)との間において、放電空間4e以外に放電現象が発生する空間を生じさせるとなく精度良く活性ガスG2を得ることができる。
【0490】
電極ユニット931の第1の態様における高圧側電極構成部E14は、誘電体保護膜FC4を含んでおり、電極ユニット931において、誘電体膜F2及びF3間に印加する印加電圧は上記放電発生要件を満足している。
【0491】
このため、電極ユニット931を有する実施の形態8の活性ガス生成装置の第1の態様は、誘電体保護膜FC4と導体膜F72との間に形成される保護部材空間40に誘電体バリア放電を発生させることなく、誘電体保護膜FC4と誘電体膜3(F3)との間に拡張主要放電空間を含む比較的広い放電空間4eに誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0492】
一方、電極ユニット931の第2の態様における高圧側電極構成部E15は、誘電体保護膜FC4を含んでおり、電極ユニット931において、誘電体膜F2及びF3間に印加する印加電圧は上記放電発生要件を満足している。
【0493】
このため、実施の形態8の活性ガス生成装置の第2の態様は、高圧側誘電体膜2と導体膜F73との間に形成される保護部材空間40に誘電体バリア放電を発生させることなく、誘電体保護膜FC4と誘電体膜3(F3)との間に拡張主要放電空間を含む比較的広い放電空間4eに誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0494】
その結果、実施の形態8の活性ガス生成装置は、比較的広い放電空間4eに供給された原料ガスG1を活性化して活性ガスG2を生成することができる。
【0495】
さらに、実施の形態8の活性ガス生成装置の電極ユニット931において、誘電体膜支持部材10Cは、誘電体支持面である支持面10Fにて高圧側誘電体膜2の周辺領域を下方から支持し、かつ、保護部材支持面である支持面10YFにて誘電体保護膜FC4の周辺領域を下方から支持している。
【0496】
加えて、電極ユニット931において、支持面10Fと支持面10YFとの差分値Δdは、高圧側誘電体膜2の下面と誘電体保護膜FC4の上面との間の一部にギャップ長Δ40の保護部材空間40が形成されるように設定される。
【0497】
したがって、実施の形態8の活性ガス生成装置は、高圧側誘電体膜2との間に保護部材空間40を有する誘電体保護膜FC4または導体膜付誘電体保護膜FCE(導体膜F73及び誘電体保護膜FC4の組合せ構造)を安定性良く固定することができる。
【0498】
さらに、
図59~
図61で示した電極ユニット931を有する実施の形態8の活性ガス生成装置における複数のガス噴出口70は、実施の形態2の電極ユニット55、または実施の形態5の電極ユニット831と同様の特徴を有している。すなわち、複数のガス噴出口70は、複数の部分活性ガスが衝突領域80にて衝突するように、下方に向かうに従い互いに接近する態様で設けられ、かつ、衝突領域80は下方テーパー領域41t(
図36及び
図37参照)内または下方テーパー領域41tより上方に存在する。
【0499】
その結果、実施の形態8の活性ガス生成装置は、実施の形態2の電極ユニット55及び実施の形態5の電極ユニット831と同様、均一な活性ガスG2を後段の処理空間に供給することができる。
【0500】
<その他>
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0501】
例えば、実施の形態2では1つの衝突領域80にて複数の部分活性ガスを衝突させたが、2つ以上の複数の衝突領域にて複数の部分活性ガスを選択的に衝突させても良い。
【0502】
また、実施の形態3~実施の形態6に関し、以下の第1及び第2の改良電極ユニットを有する活性ガス生成装置が考えられる。
【0503】
第1の改良電極ユニットは、電極ユニット81と電極ユニット84との組合せ構造として、実施の形態3の誘電体保護膜FC2と実施の形態6の誘電体保護膜FC5とを有する構造となる。
【0504】
第2の改良電極ユニットは、電極ユニット82と電極ユニット83との組合せ構造として、実施の形態4の誘電体保護膜FC3と実施の形態5の誘電体保護膜FC4とを有する構造となる。
【0505】
このように、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0506】
1 筐体
2 高圧側誘電体膜
3 接地側誘電体膜
4,4e 放電空間
5 給電体
6,60 接地導体
7 導電膜
8 カバー誘電体膜
9 シールド誘電体膜
10,10B,10C,M10 誘電体膜支持部材
11 誘電体膜抑圧部材
12 押圧部材
13 バッファ導体
15 交流電源
21 ガス流路
22 冷却路
40 保護部材空間
41 筐体開口部
41a 上方領域
41t 下方テーパー領域
50,51~53,55,81~84,91,810,811,830,831,911,931 電極ユニット
61 原料ガスバッファ空間
62 スリット空間
63 側面空間
68 活性ガス用バッファ空間
69,70 ガス噴出口
71,75 活性ガス生成装置
80 衝突領域
E1,E10~E15 高圧側電極構成部
E2,E20~E22 接地側電極構成部
F2,F3 誘電体膜
F5,F6 高圧電極
F7,F71~F73 導体膜
FC2~FC5 誘電体保護膜
【要約】
本開示は、製造工程を複雑化することなく高純度な活性ガスを供給することができる活性ガス生成装置の構造を提供することを目的とする。電極ユニット(81)は、誘電体膜(F2)及び(F3)のうち、誘電体膜(F2)を保護対象誘電体膜とし、誘電体膜F2の下面上に密着して誘電体保護膜(FC2)を有している。誘電体保護膜(FC2)と誘電体膜(F3)とが対向する空間である誘電体空間(18)内において高圧電極(F5)と接地電極(F6)とが平面視して重複する領域を含んで放電空間(4)が設けられる。誘電体保護膜(FC2)の構成材料は、放電空間(4)における誘電体バリア放電の発生時において、誘電体バリア放電によって生じるイオンの誘電体膜(F2)への照射を遮断し、かつ、イオンと化学反応しない保護特性を有している。