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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】特定の成分の組合せを含む安定な組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20250106BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K8/365
A61Q1/00
A61K8/92
A61K8/67
A61K8/37
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019226592
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095354
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和彦
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/070380(WO,A1)
【文献】Moist Lift Lotion,ID#:1880398,Mintel GNPD,2012年09月,<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1880398>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェルラ酸、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、
(c)ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、及び
(d)水
を含み、
前記親油性抗酸化剤が、トコフェロール、ヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチル、及びこれらの混合物から選択され、
組成物中の前記(a)フェルラ酸の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~8質量%の範囲であり、
組成物中の前記(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%の範囲であり、
組成物中の前記(c)ラウロイルサルコシン酸イソプロピルの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%の範囲であり、
pHが4.5以下である、組成物。
【請求項2】
組成物中の前記(a)フェルラ酸の量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%~4質量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の前記(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.005質量%~5質量%の範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の前記(c) ラウロイルサルコシン酸イソプロピルの量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~30質量%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の前記(d)水の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(e)少なくとも1種の多糖を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(e)多糖が、寒天、アルギネート、カラゲナン、及びこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の前記(e)多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%の範囲である、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
O/Wの形態である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化粧用組成物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ケラチン物質を処置するための美容方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分の組合せを含む、組成物、好ましくは化粧用又は皮膚科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ皮酸及びその誘導体、例えばフェルラ酸は、例えば化粧料の分野において有用であると知られており、その理由は、それらが、UV遮蔽剤、抗酸化剤等として機能できるためである。しかしながら、これらはいくつかの条件下で不安定な傾向がある。例えば、フェルラ酸は、アルカリ条件下で水に可溶であるが、フェルラ酸の水性溶液は急速に変色(黄色化)して、悪臭を放つことがある。
【0003】
ケイ皮酸及びその誘導体はまた、化粧用組成物中で変色し、結晶化し、悪臭を放つ傾向があるという問題を有し、これは、pHに起因するだけでなく、温度(貯蔵)条件にも起因する。しかしながら、ケイ皮酸及び誘導体を含む組成物の変色、結晶化及び悪臭を効果的に防止する技術については、依然として十分な研究がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】仏国特許第2608150号
【文献】仏国特許第2699818号
【文献】仏国特許第2706478号
【文献】仏国特許第2907339号
【文献】仏国特許第2814943号
【文献】仏国特許第2873026号
【文献】米国特許第4698360号
【文献】米国特許第6372266号
【文献】米国特許第5720956号
【文献】仏国特許第2908769号
【文献】仏国特許第2704754号
【文献】仏国特許第2877004号
【文献】仏国特許第2854160号
【文献】EP0511118
【文献】WO94/11338
【文献】仏国特許第2698095号
【文献】仏国特許第2737205号
【文献】EP0755925
【文献】仏国特許第2825920号
【文献】仏国特許第0853634号
【文献】EP-A-0955039
【文献】米国特許第2004 175338号
【非特許文献】
【0005】
【文献】C.M. Hansen、論文「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol、39巻、105頁(1967年)
【文献】Meylan and Howard、論文、Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm.Sci.、84: 83~92頁、1995年
【文献】Exploring QSAR: hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、組成物がフェルラ酸等のケイ皮酸誘導体及び水を含む場合でさえ、様々な温度条件下で安定である組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、
(a)化学式(I):
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、
Aは、
OR3基(式中、R3は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びアンモニウムイオンから選ばれる)、
及び
NHR4基(式中、R4は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、及び直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれる)
から選ばれ、
R1は、水素原子、ヒドロキシル基、C1~C6アルコキシ基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれ、
R2は、水素原子、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基から選ばれる]
により表される、少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、
(c)少なくとも1種の油、及び
(d)水
を含み、
pHが4.5以下である、組成物によって達成することができる。
【0010】
(a)ケイ皮酸誘導体は、フェルラ酸であってよい。
【0011】
本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~8質量%、好ましくは0.05質量%~4質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲であってよい。
【0012】
(b)親油性抗酸化剤は、トコフェロール、ヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチル、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0013】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~2質量%の範囲であってよい。
【0014】
(a)ケイ皮酸誘導体が(c)油に可溶であることが好ましい。
【0015】
(c)油は、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、シクロヘキサン1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0016】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~30質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲であってよい。
【0017】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは60質量%~85質量%、より好ましくは70質量%~80質量%の範囲であってよい。
【0018】
本発明による組成物は、好ましくは植物由来の多糖から選択される、より好ましくは藻類抽出物から選択される、(e)少なくとも1種の多糖を更に含んでよい。
【0019】
(e)多糖は、寒天、アルギネート、カラゲナン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0020】
本発明による組成物中の(e)多糖は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~2質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲であってよい。
【0021】
本発明による組成物は、O/Wの形態であってよく、好ましくはO/Wエマルション又はO/W分散体、より好ましくはO/Wゲルエマルション又はO/Wゲル分散体であってよい。
【0022】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはケラチン物質のための化粧用組成物、より好ましくは皮膚のための化粧用組成物であってよい。
【0023】
本発明はまた、ケラチン物質を処置する美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、組成物が、フェルラ酸等のケイ皮酸誘導体及び水を含む場合でさえ、様々な温度条件下で安定である組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0025】
本発明による組成物は、4.5以下のpH下での、
上記化学式(I)による少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、
少なくとも1種の親油性抗酸化剤、
少なくとも1種の油、及び

の組合せにより特徴づけることができる。
【0026】
そのため、本発明の一態様は、
(a)上記化学式(I)による少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、及び
(c)少なくとも1種の油、
(d)水
を含み、pHが4.5以下である組成物である。
【0027】
本発明による組成物は、様々な温度条件下で安定である。そのため、用語「安定な」は、本明細書では、温度安定性を反映し、且つ組成物の外見が、4℃、25℃、40℃及び45℃等の様々な恒温にて長期間変化しないことを意味する。
【0028】
本発明による組成物は、安定なので、長期間にわたり、例えば黄色化等の変色、結晶化及び悪臭を全く引き起こす恐れがない又はほとんど引き起こす恐れがない。
【0029】
本発明による組成物は、黄色化、結晶化及び悪臭等の変化を全く引き起こす恐れがない又はわずかしか引き起こす恐れがないため、長期間にわたり保存することができ。
【0030】
したがって、本発明による組成物は、組成物中のケイ皮酸誘導体に基づいて、経時的に安定な美容効果をもたらすことができる。
【0031】
これ以降、本発明による組成物を、より詳細に説明する。
【0032】
[ケイ皮酸誘導体]
本発明による組成物は、特定の化学構造を有する(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体を含む。2種以上の(a)ケイ皮酸誘導体が、組み合わせて使用されてよい。そのため、単一のタイプのケイ皮酸誘導体、又は異なるタイプのケイ皮酸誘導体の組合せを使用することができる。
【0033】
(a)ケイ皮酸誘導体は、化学式(I):
【0034】
【化2】
【0035】
[式中、
Aは、
OR3基(式中、R3は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及びアンモニウムイオンから選ばれる)、
及び
NHR4基(式中、R4は、水素原子、フィチル基、ベンジル基、及び直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれる)
から選ばれ、
R1は、水素原子、ヒドロキシル基、C1~C6アルコキシ基、直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基から選ばれ、
R2は、水素原子、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基から選ばれる]
により表される。
【0036】
直鎖状又は分枝状C1~C18アルキル基として、好ましくはC1~C12アルキル基として、より好ましくはC1~C6アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基及び1-エチルブチル基を挙げることができる。
【0037】
C3~C8シクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロへキシル基を挙げることができる。
【0038】
C3~C8シクロアルキル-C1~C5アルキル基として、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基を挙げることができる。
【0039】
C1~C6アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基及び1-エチルブトキシ基を挙げることができる。メトキシ基が好ましい。
【0040】
R1がヒドロキシル基であること、並びにR2が、ヒドロキシル基及びC1~C6アルコキシ基から、より好ましくはメトキシ基から選ばれることが好ましい場合がある。
【0041】
(a)ケイ皮酸誘導体として、例えば、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル、メトキシケイ皮酸ジイソプロピル、コーヒー酸、フェルラ酸を挙げることができる。コーヒー酸及びフェルラ酸が好ましい場合があり、フェルラ酸がより好ましい場合がある。
【0042】
(a)ケイ皮酸誘導体は、化粧料又は皮膚科用製品中の活性成分又は活性化合物であってよい。本明細書で用いられる用語「活性」化合物は、抗酸化作用、美白作用及びUV遮蔽作用等の、化粧用又は皮膚科用の活性特性を有する化合物を意味する。好ましくは、本発明で使用される(a)ケイ皮酸誘導体は、UV遮蔽剤であってよく、そのため、本発明による組成物は、UV防御製品として、又は皮膚等のケラチン物質をUV線から防御するための化粧用組成物として使用することができる。
【0043】
本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量が、組成物の総質量に対して0.2質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0044】
他方で、本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量は、組成物の総質量に対して、8質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量が、組成物の総質量に対して1質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0045】
本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~8質量%、好ましくは0.05質量%~4質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(a)ケイ皮酸誘導体の量が、組成物の総質量に対して0.2質量%~1質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0046】
[親油性抗酸化剤]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を含む。単一のタイプの親油性抗酸化剤を使用してもよいが、2つ以上の異なるタイプの親油性抗酸化剤を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
本発明によれば、抗酸化剤は、皮膚内に存在しうる様々なラジカル形態を除去することができる化合物又は物質であり、好ましくは、それらは、存在する全ての多様なラジカル形態を同時に除去する。
【0048】
(b)親油性抗酸化剤は、上記の化学式(I)による(a)ケイ皮酸誘導体とは異なる。
【0049】
抗酸化剤として、分子内にヒンダードフェノール構造又はセミヒンダードフェノール構造を有するフェノール性抗酸化剤を挙げることができる。そのような化合物の特定の例として、以下が挙げられる:
3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパノン酸(INCI名はヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチルである)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、モノ-又はジ-又はトリ-(α-メチルベンジル)フェノール、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、トリス[N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン-1,1ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオンイニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-tert-ブチル-6-(3'-tert-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-アクリル酸メチルフェニル、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-アクリル酸ペンチルフェニル、4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及び1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]。
【0050】
抗酸化剤として、以下を挙げることができる: BHA(ブチル化ヒドロキシルアニソール)及びBHT(ブチル化ヒドロキシルトルエン)、ビタミンE(又はトコフェロール及びトコトリエノール)及びその誘導体、例えばホスフェート誘導体、例としては昭和電工株式会社により販売されているTPNA(登録商標)、コエンザイムQ10(又はユビキノン)、イデベノン、特定のカロテノイド、例えばルテイン、アスタキサンチン、β-カロテン、ポリフェノール、フェノール酸及び誘導体(例えばクロロゲン酸)、及びポリフェノールの主なサブグループを表すフラボノイド。
【0051】
フラボノイドの中で、特に挙げることができるのは、カルコン、ヒドロキシル化カルコン及びその還元誘導体(特に仏国特許第2608150号に記載されているもの)、例としてはフロレチン、ネオヘスペリジン、フロリジン、アスパラチン等、フラバノン、例としてはヘスペレチン及びナリンジン、フラボノール、例としてはケルセチン、ルチン、フラバノール、例としてはカテキン、EGCG、フラボン、例としてはアピゲニジン、並びに最後にアントシアンである。更に挙げることができるのは、タンニンである。仏国特許第2699818号、仏国特許第2706478号、仏国特許第2907339号、仏国特許第2814943号及び仏国特許第2873026号に記載の化合物もまた更に参照することができる。
【0052】
ポリフェノール化合物は、具体的には、緑茶、リンゴ、ホップ、グアバ、ココア、又はクリ、オーク、セイヨウトチノキ若しくはハシバミ等の木の抽出物から選ばれる植物抽出物に由来してよい。例えば米国特許第4698360号、米国特許第6372266号及び米国特許第5720956号に記載の方法に従って得られるカイガンショウ樹皮の抽出物を使用することもまた可能である。そのような抽出物の例として、INCI名がフランスカイガンショウ(pinus pinaster)(樹皮抽出物)でCTFA名がマツ(フランスカイガンショウ)樹皮抽出物として参照される化合物を引用することができる。それは、具体的には、BIOLANDES AROMES firm社及び/又はHORPHAG Research社により参照名PYCNOGENOL(登録商標)で市販されているフランスカイガンショウ樹皮の抽出物であってよい。LAYN Natural Ingredients社製のマツ樹皮の抽出物(Maritime)、Blue California社からのPine Bark、更にはD.R.T.(Les Derives Resiniques et Terpeniques)社からのOligopin(登録商標)もまた、引用することができる。
【0053】
本発明の関連において、用語「ポリフェノール化合物」は、このように、これらのポリフェノール化合物に富む植物抽出物そのものもまた包含する。
【0054】
更に挙げることができる抗酸化剤には、ジチオラン、例としてはアスパラガス酸又はその誘導体、例としてはケイ質のジチオラン誘導体、特に例えば仏国特許第2908769号に記載されているものが挙げられる。
【0055】
更に挙げることができる抗酸化剤には、以下がある:
グルタチオン及びその誘導体(GSH及び/又はGSHOEt)、例えばグルタチオンアルキルエステル(例えば仏国特許第2704754号及び仏国特許第2908769号に記載されているもの)、
システイン及びその誘導体、例えばN-アセチルシステイン又はL-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸。更に参照できるのは、仏国特許第2877004号及び仏国特許第2854160号に記載されているシステイン誘導体である、
酸化ストレスから保護するための特定の酵素、例えばカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ラクトペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ及びキノンリダクターゼ、
ベンジルシクラノン、置換されているナフタレノン、ピドレート(特に特許出願EP0511118に記載されているもの)、コーヒー酸及びその誘導体、γ-オリザノール、メラトニン、スルホラファン、及びそれを含有する抽出物(クレソンを除く)、
特に特許出願WO94/11338、仏国特許第2698095号、仏国特許第2737205号又はEP0755925に記載されている、ジイソプロピルの、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸とのエステル、
仏国特許第2825920号に記載されているデフェロキサミン(又はデスフェラール)。
【0056】
使用されることが好ましい抗酸化剤は、カルコン、より詳細にはフロレチン又はネオヘスペリジン、ジイソプロピルの、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸とのエステル、又はPYCNOGENOL(登録商標)等のフランスカイガンショウ樹皮の抽出物である。
【0057】
(b)親油性抗酸化剤は、抗酸化剤の、n-ブタノールと水との間の分配係数が、>1、より好ましくは>10、更により好ましくは>100であることを意味する。
【0058】
(b)親油性抗酸化剤の例として、ヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチル、ノルジヒドログアイアレチン酸、トコフェロール、レスベラトロール、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
(b)親油性抗酸化剤が、トコフェロール、ヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチル、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0060】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して0.02質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0061】
他方で、本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して1質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0062】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%、より好ましくは0.01質量%~2質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して0.02質量%~1質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0063】
[油]
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の油を含む。2種以上の(c)油を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの油、又は異なるタイプの油の組合せを使用することができる。
【0064】
ここで、「油」は、室温(25℃)、大気圧(760mmHg)下で、液体又はペースト(非固体)の形態である、脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧料において一般的に使用されるものを、単独で、又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0065】
上記の化学式(I)による(a)ケイ皮酸誘導体が(c)油に可溶であることが好ましい。換言すると、上記の化学式(I)による(a)ケイ皮酸誘導体が可溶な(c)油を使用することが好ましい。
【0066】
(c)油に対する(a)ケイ皮酸誘導体溶解度が、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、0.5%以上、より好ましくは0.7%以上、更により好ましくは0.9%以上であることが好ましい。(c)油に対する(a)ケイ皮酸誘導体の溶解度が、室温(20~25℃、好ましくは25℃)にて、25%以下、より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下であることが好ましい場合がある。そのため、(c)油に対する(a)ケイ皮酸誘導体の溶解度は、0.5%~25%、好ましくは0.7%~20%、より好ましくは0.9%~15%であってよい。溶解度は、本明細書では、(c)油100gに可溶な(a)ケイ皮酸誘導体の量(g)を意味する。
【0067】
(c)油が極性油から選択されることが好ましい。
【0068】
用語「極性油」は、本明細書では、25℃で、分散相互作用に特徴的な溶解度パラメータδdが16を超え、極性相互作用に特徴的な溶解度パラメータδpが厳密に0を超える、任意の親油性化合物を意味する。溶解度パラメータδd及びδpは、ハンセン(Hansen)分類に従って定義される。
【0069】
ハンセン3次元溶解度空間の溶解度パラメータの定義及び計算は、C.M. Hansenによる論文、「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol、39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0070】
このハンセン空間によれば、
δDは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴づけ、
δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、更には誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴づけ、
δhは、特定の相互作用力(例えば水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴づけ、
δaは、等式δa=(δp 2h 1)1/2によって決定される。パラメータδp、δh、δd及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0071】
極性油が、植物又は動物油、例えばトリグリセリド、エステル油、エーテル油、及びこれらの混合物からなる群から、より好ましくはエステル油、エーテル油、及びこれらの混合物からなる群から、更により好ましくはエステル油から選択されることが好ましい場合がある。
【0072】
極性油は、具体的には、以下の油から選ぶことができる:
- 炭化水素系の極性油、例えばフィトステアリルエステル、例えばオレイン酸フィトステアリル、イソステアリン酸フィトステアリル及びラウロイル/オクチルドデシル/グルタミン酸フィトステアリル(味の素株式会社、Eldew PS203)、グリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリドであって、特にこの脂肪酸は、C4~C36、とりわけC18~C36の範囲の鎖長を有することができ、これらの油は、場合により直鎖状又は分枝状であり、飽和又は不飽和であり、これらの油は、とりわけヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリド、小麦胚種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油(820.6g/mol)、トウモロコシ油、アプリコット油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、甘扁桃油、パーム油、菜種油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マロー油、クロフサスグリ油、月見草油、きび油(millet oil)、オオムギ油、キノア油、ライ麦油、サフラワー油、ククイナッツ油、パッションフラワー油若しくはジャコウバラ油;シア脂;又は代替的にカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例としてはStearineries Dubois社により販売されているもの、又はDynamit Nobel社により名称Miglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)で販売されているものであってよい、
- 10~40個の炭素原子を含有する合成エーテル、例えばジカプリリルエーテル、
- 式RCOOR'(式中、RCOOは2~40個の炭素原子を含むカルボン酸残基を表し、R'は1~40個の炭素原子を含有する炭化水素系鎖を表す)の炭化水素系エステル、例えばオクタン酸セトステアリル、イソプロピルアルコールエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸若しくはイソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ヘプタン酸エステル、とりわけヘプタン酸イソステアリル、オクタン酸、デカン酸若しくはリシノール酸アルコール若しくはポリアルコール、例としてはジオクタン酸プロピレングリコール、オクタン酸セチル、オクタン酸トリデシル、4-ジヘプタン酸及びパルミチン酸2-エチルヘキシル、安息香酸アルキル、ジヘプタン酸ポリエチレングリコール、2-ジエチルヘキサン酸プロピレングリコール、並びにこれらの混合物、安息香酸C12~C15アルコール、ラウリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸エステル、例としてはネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル及びネオペンタン酸2-オクチルドデシル、イソノナン酸エステル、例としてはイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル及びイソノナン酸オクチル、エルカ酸オレイル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ステアリン酸イソセチル、ネオペンタン酸イソデシル、ベヘン酸イソステアリル及びミリスチン酸ミリスチル、
- 不飽和脂肪酸二量体及び/又は三量体とジオールとの縮合により得られるポリエステル、例えば仏国特許第0853634号に記載されているもの、具体的には、例えばジリノール酸と1,4-ブタンジオールとの縮合により得られるポリエステル。このポリマーに関しては、Biosynthis社により名称Viscoplast 14436H(INCI名:ジリノール酸/ブタンジオールコポリマー)で販売されているポリマー、又は他にポリオールと二量体化二酸とのコポリマー及びそれらのエステル、例えばHailuscent ISDAを特に挙げることができる、
- ポリオールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例としてはテトラヒドロキシステアリン酸/テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪アルコール、例としてはオクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール及びオレイルアルコール、
- C12~C22高級脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等、並びにこれらの混合物、
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪酸、例としてはオレイン酸、
- 2つのアルキル鎖が場合により同一であり又は異なる、炭酸ジアルキル、例えばCognis社により名称Cetiol CC(登録商標)で販売されている炭酸ジカプリリル、並びに
- 高分子量の、例えば400から10000g/molの間の、特定すると650から10000g/molの間の不揮発性油、例としては、
i)ビニルピロリドンコポリマー、例えばビニルピロリドン/1-ヘキサデセンコポリマー、アイエスピー・ジャパン株式会社により販売又は製造されているAntaron V-216(MW=7300 g/mol)、
ii)エステル、例えば、
a)総炭素数の範囲が35~70個である直鎖状脂肪酸エステル、例としてはテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル(MW=697.05g/mol)、
b)ヒドロキシル化エステル、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセロール-2(MW=965.58g/mol)、
c)芳香族エステル、例えばトリメリト酸トリデシル(MW=757.19g/mol)、C12~C15アルコールベンゾエート、安息香酸の2-フェニルエチルエステル及びサリチル酸ブチルオクチル、
d)C24~C28分枝状脂肪酸又は脂肪族アルコールのエステル、例えば、特許出願EP-A-0955039に記載されているもの、具体的には、クエン酸トリイソアラキジル(MW=1033.76 g/mol)、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル(MW=697.05g/mol)、トリイソステアリン酸グリセリル(MW=891.51g/mol)、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル(MW=1143.98g/mol)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(MW=1202.02g/mol)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW=1232.04g/mol)又は他にテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル(MW=1538.66 g/mol)、
e)ダイマージオールとモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル及びポリエステル、例えば、ダイマージオールと脂肪酸とのエステル及びダイマージオールとダイマージカルボン酸とのエステル、例えば、日本精化株式会社により販売されており、その内容が参照により本出願に組み込まれる米国特許第2004 175338号に記載されているLusplan DD-DA5(登録商標)及びLusplan DD-DA7(登録商標)、
- 並びにこれらの混合物。
【0073】
用語「炭化水素系極性油」は、本明細書では、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成されるか、又はこれらによって構成され、ケイ素原子又はフッ素原子を一切含有しない極性油を意味する。これは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミドの各基を含有してよい。
【0074】
(c)油が、7.0以下、より好ましくは6.5以下、更により好ましくは6.0以下のlogP値を有することが好ましい。(c)油が、1.0以上、より好ましくは1.5以上、更により好ましくは2.0以上のlogP値を有することが好ましい場合がある。そのため、(c)油が、1.0~7.0、より好ましくは1.5~6.5、更により好ましくは2.0~6.0のlogP値を有することが好ましい場合がある。
【0075】
logP値は、オクタン-1-オール/水の見掛け分配係数の10を底とする対数の値である。logP値は既知であり、オクタン-1-オール及び水の中の、(c)油の濃度を決定する標準試験により決定される。logPは、Meylan and Howardによる論文、Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm.Sci.、84: 83~92頁、1995年に記載の方法に従って算出することができる。この値は、logPを分子構造の関数として求める、多くの市販のソフトウェアパッケージを使用して算出してもよい。例として、米国環境庁からのEpiwinソフトウェアを挙げることができる。
【0076】
この値は、具体的には、ACD(Advanced Chemistry Development) Solaris software V4.67を使用して計算してよく、この値はまた、Exploring QSAR: hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)からも得ることができる。推定値を提供しているインターネットサイトもある(アドレス: http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm)。
【0077】
(c)油は、アミド結合、エステル結合、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの部分を有しうる。アミド結合は、本明細書では、-CONR-(Rは、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状C1~C18アルキル基、好ましくはメチル基を示す)を意味し、エステル結合は、本明細書では、-COO-を意味する。換言すると、(c)油は、2つ以上のアミド結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのアミド結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してよい。
【0078】
(c)油は、エーテル結合、エステル結合、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの部分を有しうる。エーテル結合は、本明細書では、-O-を意味し、エステル結合は、本明細書では、-COO-を意味する。換言すると、(c)油は、2つ以上のエーテル結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのエーテル結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してよい。
【0079】
(c)油が、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、シクロヘキサン1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0080】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して3質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0081】
他方で、本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して10質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0082】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~30質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(c)油の量が、組成物の総質量に対して3質量%~10質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0083】
本発明による組成物中の、上記の化学式(I)により表される(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体/(c)少なくとも1種の油の質量比が、0.1未満、より好ましくは0.09未満、より好ましくは0.85未満であることが好ましい場合がある。この質量比が0.1以上である場合、組成物の安定性は悪化することがあり、その理由は、比較的低温で結晶化が起きうるためである。
【0084】
(c)油は、本発明による組成物の脂肪相を形成することができる。
【0085】
本発明による組成物がO/W型の形態である場合、本発明による組成物中の(c)油は、O/W型組成物中に分散された脂肪相を形成することができる。
【0086】
[水]
本発明による組成物は、(d)水を含む。
【0087】
(d)水は、本発明による組成物の水性相を形成することができる。
【0088】
本発明による組成物がO/W型の形態である場合、本発明による組成物中の(d)水は、O/W型組成物中で連続水性相を形成することができる。
【0089】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってよい。
【0090】
他方で、本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってよい。
【0091】
本発明による組成物中の(d)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは60質量%~85質量%、より好ましくは70質量%~80質量%の範囲であってよい。
【0092】
[多糖]
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の多糖を含んでよい。単一のタイプの多糖を使用してもよいが、2つ以上の異なるタイプの多糖を組み合わせて使用することもできる。
【0093】
(e)少なくとも1種の多糖は、上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体を、好ましくは(c)少なくとも1種の油と一緒に、より好ましくは(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤及び(c)少なくとも1種の油と一緒にカプセル化することができるカプセルを形成することができる。上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体のカプセル化は、本発明による組成物の黄色化又は悪臭を更に低減することができる。そのため、カプセルは、本発明による組成物の安定性を更に増強することができる。
【0094】
上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体を含む(e)少なくとも1種の多糖のカプセルは、上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体を、(e)少なくとも1種の多糖の少なくとも1つの層又は皮膜で、周りを囲む又はコーティングすることによって、調製することができる。上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体と(c)少なくとも1種の油との混合物が、(e)少なくとも1種の多糖によって、周りを囲まれる又はコーティングされることが好ましい。上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体と(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と(c)少なくとも1種の油との混合物が、(e)少なくとも1種の多糖によって、周りを囲まれる又はコーティングされることがより好ましい。上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体が、(c)少なくとも1種の油に溶解されて、次いで、その(c)少なくとも1種の油が、(e)少なくとも1種の多糖によって、周りを囲まれる又はコーティングされることが、更により好ましい。(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤もまた、(c)少なくとも1種の油に溶解されてよい。
【0095】
周りを囲む工程は、任意の従来の方法によって実施することができる。例えば、(i)上記の化学式(I)による(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体と(c)少なくとも1種の油との混合物を、(ii)(e)多糖と一緒に共押出することが可能である。この事例では、共押出された(i)混合物はコアを形成することができ、一方で(ii)(e)多糖はシェルを形成することができる。共押出されたコア/シェル構造は、カプセルに対応するコア/シェル粒子へと変形させることができる。上記の(i)混合物はまた、(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤も含んでよい。
【0096】
カプセルの形態は限定されない。例えば、カプセルは球体の形態であってよい。
【0097】
カプセルのサイズは限定されない。カプセルのサイズ又は直径が、0.1~10mm、好ましくは0.5~5mm、より好ましくは1~3mmでありうることが可能である。
【0098】
カプセルは、本発明による組成物中で分散及び懸濁されうる。カプセルは、本発明による組成物に、ユニークな外観を付与することができる。
【0099】
(e)多糖が、植物由来の多糖から選択されることが好ましい。換言すると、(e)多糖が植物起源のものであることが好ましい。
【0100】
他方で、(e)多糖がセルロース及びその誘導体から選択されないこともまた好ましい。
【0101】
本発明によれば、用語「植物由来の多糖」は、詳細には、例えば具体的には細菌の発酵により生成されるキサンタンガムと同様に、バイオテクノロジーを介して得られる多糖の逆に植物界(植物又は藻類)から得られる多糖、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)を意味する。
【0102】
本発明に従って使用されうる植物起源の多糖の例として、具体的には以下が挙げられる:
a)藻類抽出物、例えばアルギネート、カラゲナン及び寒天、並びにこれらの混合物。挙げることができるカラゲナンの例には、Degussa社製のSatiagum UTC30(登録商標)及びUTC10(登録商標)があり、挙げることができるアルギネートは、ISP社により名称Kelcosol(登録商標)で販売されているアルギン酸ナトリウムである、
b)ガム、例えばグアーガム及びその非イオン性誘導体(ヒドロキシプロピルグアー)、アラビアガム、コンニャクガム又はマンナンガム、ガムトラガカント、ガッティガム、カラヤガム又はローカストビーンガムであり、挙げることができる例には、Rhodia社により名称Jaguar HP105(登録商標)で販売されているグアーガム、GfN社により販売されているマンナン及びコンニャクガム(登録商標)(1%グルコマンナン)がある、
c)変性又は非変性デンプン、例えば穀物から得られるもの、例としてはコムギ、トウモロコシ又はコメ、マメ科植物から得られるもの、例としてはブロンドエンドウマメ(blonde pea)、塊茎から得られるもの、例としてはジャガイモ又はキャッサバ及びタピオカデンプン、デキストリン、例えばトウモロコシデキストリンであり、特に挙げることができる例には、Remy社により販売されているコメデンプンRemy DR I(登録商標)、Roquette社からのcorn starch B(登録商標)、National Starch社により名称Structure Solanace(登録商標)で販売されている、水酸化ナトリウムで中和されている2-クロロエチルアミノジプロピオン酸で変性されたジャガイモデンプン、National Starch社により名称Tapioca pure(登録商標)で販売されているその土地固有のタピオカデンプン粉末がある、
d)デキストリン、例えばNational Starch社からの名称Index(登録商標)である、トウモロコシから抽出されたデキストリン、並びに
これらの混合物。
【0103】
好ましくは、(e)多糖は、藻類抽出物から選ばれる。
【0104】
藻類抽出物は、アルギネート、カラゲナン及び寒天、並びにこれらの混合物から選ぶことができる。好ましくは、アルギネート若しくは寒天、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0105】
本発明による組成物中の(e)多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。本発明による組成物中の(e)多糖の量が、組成物の総質量に対して0.03質量%以上であることが、更により好ましい場合がある。
【0106】
他方で、本発明による組成物中の(e)多糖の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。本発明による組成物中の(e)多糖の量が、組成物の総質量に対して0.1質量%以下であることが、更により好ましい場合がある。
【0107】
本発明による組成物中の(e)多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~2質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲であってよい。本発明による組成物中の(e)多糖の量が、組成物の総質量に対して0.03質量%~0.1質量%であることが、更により好ましい場合がある。
【0108】
[pH]
本発明による組成物のpHは、4.5以下、好ましくは4.4以下、より好ましくは4.3以下である。本発明による組成物のpHは、3.0~4.5、好ましくは3.5~4.5、より好ましくは4.0~4.5であってよい。
【0109】
4.5以下のpHにおいて、本発明による組成物は安定である。
【0110】
組成物のpHは、本発明による組成物の水性相のpHを意味する。詳細には、組成物のpHは、本発明による組成物中の(d)水のpHを意味する。
【0111】
本発明による組成物のpHは、少なくとも1種の酸性化剤及び/又は少なくとも1種の塩基性化剤(アルカリ剤)を添加することによって調整することができる。
【0112】
酸性化剤は、例えば、鉱酸又は有機酸、例としては塩酸、リン酸、カルボン酸、例としては酒石酸、クエン酸及び乳酸、又はスルホン酸とすることができる。
【0113】
酸性化剤は、組成物の総質量に対して、5質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の範囲の量で存在してよい。
【0114】
塩基性化剤、すなわちアルカリ剤は、例えば、化粧料中に一般に使用される任意の無機又は有機の塩基性剤、例えばアンモニア; アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン、イソプロパノールアミン; アルカリ金属水酸化物等の金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム); 尿素、グアニジン、及びこれらの誘導体; 並びに構造:
【0115】
【化3】
【0116】
(式中、
Rは、任意選択でヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3、及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基、又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示されうる。水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい場合がある)
で説明されるもの等のジアミンとすることができる。
【0117】
本発明による組成物は、少なくとも1種の水混和性溶媒、例えば1~5個の炭素原子を含有する低級モノアルコール、C3~C4ケトン又はC3~C4アルデヒドを含んでよい。好ましく使用することができる水混和性溶媒は、エタノールである。水混和性溶媒の含有量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、なおもより良好には1質量%~8質量%の範囲とすることができる。
【0118】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性がそれにより影響を受けないよう調節することは、当業者にとって常法である。
【0119】
[ポリオール]
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリオールを更に含んでよい。単一のタイプのポリオールを使用してもよいが、2つ以上の異なるタイプのポリオールを組み合わせて使用することもできる。
【0120】
用語「ポリオール」は、本明細書では、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖類又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体には、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及びその1つ又は複数のヒドロキシ基中の1つ又は複数の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基等の少なくとも1つの置換基で置き換えられている糖類又は糖アルコールが挙げられる。
【0121】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールであってよい。
【0122】
ポリオールは、天然又は合成のポリオールであってよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状又は環状の分子構造を有してよい。
【0123】
ポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択することができる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50のエチレンオキシド基)及びソルビトール等の糖からなる群から選択することができる。
【0124】
本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0125】
他方で、本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってよい。
【0126】
そのため、ポリオールは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、例えば0.1質量%~15質量%の範囲の量で存在してよい。
【0127】
[他の成分]
本発明による組成物は、例えば、1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のモノアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール及びヘキサノール等の、室温(25℃)で液体の形態である1種又は複数のモノアルコールを含有してよい。
【0128】
本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0129】
他方で、本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0130】
そのため、本発明による組成物中のモノアルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%の範囲であってよい。
【0131】
本発明による組成物はまた、上で説明した成分を除く、化粧用及び皮膚科用組成物中で従来使用される様々なアジュバント、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性又は双性イオン性ポリマー、アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤、親水性酸化防止剤、着色剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、香料、分散剤、コンディショニング剤、皮膜形成剤、保存剤、共保存剤、並びにこれらの混合物を含んでよい。
【0132】
[調製]
本発明による組成物は、上で説明した必須成分と、必要な場合は上で説明した任意選択の成分とを混合して調製することができる。
【0133】
上記の必須成分と任意選択の成分とを混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合して本発明による組成物を調製するために、使用することができる。
【0134】
[形態]
本発明による組成物の形態は、特に限定されず、エマルション(O/W又はW/Oの形態)、水性ゲル、水性溶液等の様々な形態をとってよい。
【0135】
本発明による組成物がO/W型の形態であることが好ましい。本発明による組成物が、連続水性相中に分散された脂肪相を含む、O/Wエマルション又はO/W分散体の形態であることがより好ましい。分散された脂肪相は、水性相中の油滴でありうる。本発明による組成物が、O/Wゲルエマルション又はO/Wゲル分散体の形態であることが、更により好ましい。
【0136】
水性相中に分散された脂肪相から構成されるO/W構築体又は構造体は外部水性相を有しており、したがって、本発明による組成物がO/W構築体又は構造体を有する場合、該組成物は、水性相が直ちに付与できる即座の新鮮な感覚のために、使用中の心地よい感覚を提供することができる。
【0137】
[方法及び使用]
本発明による組成物が、化粧用又は皮膚科用組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であることが好ましい。
【0138】
本発明による組成物は、ケラチン物質に適用することによって、皮膚、毛髪、粘膜、爪、まつ毛、眉毛及び/又は頭皮等のケラチン物質を処置するための美容方法等の非治療的方法のために使用することができる。
【0139】
そのため、本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0140】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質のための、抗酸化剤、美白製品又はUV遮蔽製品として使用することができる。特に、本発明による組成物は、皮膚の美白化粧料として使用することができる。
【0141】
本発明の別の態様は、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、
(c)少なくとも1種の油
の、
上記の化学式(I)により表される(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、及び(d)水を含む、4.5以下のpHを有する安定な組成物を製造するための、使用に関する。
【0142】
本発明の別の態様はまた、
(a)上記の化学式(I)により表される少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、及び
(d)水
を含む安定な組成物を調製する方法であって、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、及び
(c)少なくとも1種の油
を、4.5以下のpHを有する組成物に添加する工程を含む、方法にも関する。
【0143】
上記の態様では、上記の化学式(I)により表される(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体が、(e)少なくとも1種の多糖によりカプセル化されることが好ましい。
【0144】
上記の化学式(I)により表される(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体と、(c)少なくとも1種の油との混合物が、(e)少なくとも1種の多糖によりカプセル化されることが、より好ましい。
【0145】
上記の化学式(I)により表される(a)少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、及び(c)少なくとも1種の油の混合物が、(e)少なくとも1種の多糖によりカプセル化されることが、更により好ましい。
【0146】
本発明による組成物についての成分(a)~(e)及び任意選択の成分に関する上記の説明は、本発明による使用及び方法についての説明に当てはめることができる。本発明による組成物の調製及び形態に関する説明もまた、上記の使用及び方法において記載された組成物の調製及び形態に当てはめることができる。
【実施例
【0147】
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0148】
(実施例1~4及び比較例1~6)
表1に示す実施例1~4及び比較例1~6による以下の組成物を、表1に示す成分を混合して調製した。
【0149】
O/Wエマルション(実施例1及び2並びに比較例1~4)の調製を、以下の通り実施した:
(1)A相中の成分とB相中の成分とをホモジナイザを用いて75~80℃にて混合する
(2)上記工程(1)で得た混合物を室温に冷却する。
【0150】
カプセル化したO/Wゲル型分散体(実施例3及び4並びに比較例5及び6)の調製を、以下の通り実施した:
(1)A相の成分を75~80℃で混合して、A相の均一な混合物を形成する
(2)B相の成分を75~80℃で混合して、B相の均一な混合物を形成する
(3)C相の成分を80~90℃で混合して、C相の均一な混合物を形成する
(4)A相の均一な混合物とC相の均一な混合物とを共押出し、これは、前者を後者でカプセル化してカプセルを調製し、ここで、A相の均一な混合物がC相の均一な混合物でコーティングされカプセル化される
(5)該カプセルを、B相の均一な混合物に添加する、及び
(6)上記工程(5)において得た混合物を室温に冷却する。
【0151】
表1に示す成分の量の数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0152】
【表1A】
【0153】
【表1B】
【0154】
[評価]
【0155】
(安定性)
実施例1~4及び比較例1~6による組成物のそれぞれを、4つのガラスボトルに満たし、ガラスボトルのそれぞれを、それぞれ4℃、25℃、40℃及び45℃の温度条件下で、2か月間保持した。
【0156】
次いで、各ガラスボトルを、変化の程度(色、結晶化及び臭いの点で)について調べ、以下の基準によって評価した。
非常に良好: 生成時とほぼ同じ状態。
良好: 色、臭い又は外観のわずかな変化を観察した。
不良: 色、臭い又は外観の変化を明らかに観察することができた。黄色化、結晶化又は悪臭を明らかに観察することができた。
非常に不良: 色、臭い又は外観の変化を著しく認めることができた。黄色化、結晶化又は悪臭を著しく認めることができた。
【0157】
結果を表1に示す。
【0158】
実施例1及び2を比較例1~4と比較すべきであること、並びに実施例3及び4を比較例5及び6と比較すべきであることが留意されるべきである。
【0159】
実施例1及び2、並びに比較例1~4による組成物は、O/Wエマルションの形態であった。
【0160】
上で説明した全ての成分(a)~(d)を含む実施例1及び2による組成物は、安定であった。
【0161】
4.5超のpH (それぞれ5.0及び5.5)を有した比較例1及び2による組成物は、安定ではなかった。
【0162】
(c)親油性抗酸化剤を欠く比較例3及び4による組成物は、安定ではなかった。
【0163】
実施例3及び4並びに比較例5及び6による組成物は、カプセル化した水中油ゲル型分散体の形態であり、ここで、(a)油は、(e)多糖により形成されたカプセル中にカプセル化されている。複数のカプセルが、実施例3及び4並びに比較例5及び6による組成物中に存在する。
【0164】
上で説明した全ての成分(a)~(e)を含む実施例5及び6による組成物は、安定であった。
【0165】
4.5超のpH(5.0)を有した比較例5による組成物は、安定ではなかった。
【0166】
(c)親油性抗酸化剤を欠く比較例6による組成物は、安定ではなかった。