(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】直接噴射システムのための高圧燃料ポンプを制御する方法
(51)【国際特許分類】
F02M 51/00 20060101AFI20250106BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20250106BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20250106BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
F02M51/00 A
F02D45/00 372
F04B49/10 311
F04B49/06 321Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122574
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】102019000012300
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】523058504
【氏名又は名称】マレッリ ヨーロッパ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マルコ パロット
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ デ チェーザレ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ モレッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ プローディ
(72)【発明者】
【氏名】トンマーゾ カルデッリニ
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138270(WO,A1)
【文献】特開2018-021541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076711(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017207153(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第101175916(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/00-63/02
F02D 41/32-45/00
F04B 49/06-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール(3)を有する熱機関(1)の直接噴射システム用の燃料ポンプ(4)を制御する方法であって、
高圧燃料ポンプ(4)によって供給される燃料の最小流量閾値(Q
MIN)を決定するステップと、
前記コモンレール(3)内で所望の圧力(P
TARGET)を得るために、前記高圧燃料ポンプ(4)によって前記コモンレール(3)に瞬時に供給される目標燃料流量(M
ref)を計算するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref)と前記最小流量閾値(Q
MIN)とを比較するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref)と前記最小流量閾値(Q
MIN)との比較に基づいて前記高圧燃料ポンプ(4)を制御するステップと、
を備える方法において、
前記最小流量閾値(Q
MIN
)を決定するステップは以下のサブステップ、すなわち、
前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL)と前記熱機関(1)の速度(n)とに基づいて第1の寄与要素(Q
MIN-COLD)と第2の寄与要素(Q
MIN-HOT)とを決定するサブステップであって、前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD)は、前記コモンレール(3)内の前記圧力(P
RAIL)及び前記熱機関(1)の速度(n)の与えられた値に関するキャビテーション現象の発生からかけ離れた低温条件下でポンピングされる流体の最小流量閾値であり、前記第2の寄与要素(Q
MIN-HOT)は、前記コモンレール(3)内の前記圧力(P
RAIL)及び前記熱機関(1)の速度(n)の与えられた値に関するキャビテーション現象の発生に近い高温条件下でポンピングされる流体の最小流量閾値である、サブステップと、
前記高圧燃料ポンプ(4)の温度(T
PUMP)と前記高圧燃料ポンプ(4)の入口圧力(P
LOW)とに基づいて係数(K)を決定するサブステップであって、前記係数(K)は、キャビテーション現象の発生条件に対する前記高圧燃料ポンプ(4)の接近性を表す、サブステップと、
前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD)、第2の寄与要素(Q
MIN-HOT)及び前記係数(K)に基づいて前記最小流量閾値(Q
MIN)を決定するサブステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL)及び噴射された燃料の量(Q
F-INJ)に基づいてエネルギー効率を上げるための第3の寄与要素(Q
EEff)を決定するステップと、
前記高圧燃料ポンプ(4)の損傷リスクの可能性を減らすために、前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL)及び前記熱機関(1)の速度(n)に基づいて第4の寄与要素(Q
DAM)を決定するステップと、
前記第3の寄与要素(Q
EEff)及び第4の寄与要素(Q
DAM)のうちの最大値に対応する、前記最小流量閾値(Q
MIN)を決定するステップと、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の寄与要素(Q
EEff)は、前記熱機関(1)を備えた車両に対して選択された運転モード(DV)に応じて決定され、複数の可能な位置のうちのハンドレバーの位置に応じて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD)と、前記第2の寄与要素(Q
MIN-HOT)と、前記係数(K)とに基づいて、前記高圧燃料ポンプ(4)においてポンピング段階中に生成された温度変動を抑えるための第5の寄与要素(Q
TEMP)を決定するステップと、
前記第5の寄与要素(Q
TEMP)、前記第3の寄与要素(Q
EEff)、前記第4の寄与要素(Q
DAM)のうちの最大値に対応する、前記最小流量閾値(Q
MIN)を決定するステップと、
を更に備え、
前記第5の寄与要素(Q
TEMP)は、以下のように計算され、すなわち、
【数1】
ここで、
Q
TEMP 第5の寄与要素、
K 係数、
Q
MIN-COLD 第1の寄与要素、
Q
MIN-HOT 第2の寄与要素
である、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記目標燃料流量(M
ref)が前記最小流量閾値(Q
MIN)よりも大きい場合にのみ、前記目標燃料流量(M
ref)を供給するように、前記高圧燃料ポンプ(4)を制御するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref)が前記最小流量閾値(Q
MIN)よりも小さい場合に、燃料を供給しないように、前記高圧燃料ポンプ(4)を制御するステップと、
を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最小流量閾値(Q
MIN)を決定するステップは、以下のサブステップを含む、すなわち、
エネルギー指標(I)を計算するステップであって、前記エネルギー指標(I)は、圧力センサ(11)によってリアルタイムに検出された前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL)に関する信号の乱れの強さに基づいて、前記高圧燃料ポンプ(4)内のキャビテーション現象の発生に対する接近性、または該接近性の欠如を示し、前記乱れは観測時間窓内の積分によって評価される、ステップと、
前記エネルギー指標(I)が第1の閾値を超えた場合に、第2の量(ΔQ
MIN)だけ前記最小流量閾値(Q
MIN)を増加させるステップと、
を備える、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コモンレール(3)内の所望の圧力(P
TARGET)を第1の量(ΔP
TARGET)によって、及び前記エネルギー指標(I)が第1の閾値を超えた場合に第1の時間間隔だけ減少させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の量(ΔP
TARGET)が、少なくとも1MPaに等しく、前記エネルギー指標(I)と前記第1の閾値との差に依存しない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の量(ΔQ
MIN)が、少なくとも20mgに等しく、前記エネルギー指標(I)と前記第1の閾値との差に依存しない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記目標燃料流量(M
ref)が供給される場合の前記エネルギー指標(I
1)が次のように計算され、すなわち、
【数2】
ここで、
t
1、t
2 観測時間窓を定義する時間、
P
RAIL コモンレール(3)の実圧、
P
TARGET コモンレール(3)内の目標圧力、
である、請求項6~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記目標燃料流量(M
ref)が供給される場合の前記エネルギー指標(I
2)が次のように計算され、すなわち、
【数3】
ここで、
t
1、t
2 観測時間窓を定義する時間、
P
RAIL コモンレール(3)の実圧、
P
RAIL-M コモンレール(3)および観測窓内の実際の平均圧力、
である、請求項6~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギー指標(I
3)が次のように計算され、すなわち、
【数4】
ここで、
t
1、t
2 観測時間窓を定義する時間、
INT 圧力制御の閉ループの積分成分の値、
INT
M 観測窓内の圧力制御の閉ループの積分成分の平均値、
である、請求項6~9の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この特許出願は、2019年7月18日に出願されたイタリア特許出願番号102019000012300号明細書からの優先権を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、直接噴射システム用の燃料ポンプを制御する方法に関する。好ましくは(必ずしもそうではないが)、制御方法は、ガソリンまたは同様の燃料と共に作動する火花点火内燃機関における直接噴射システムに使用される。
【背景技術】
【0003】
公知のように、燃料-この特定のケースにおいてガソリン-直接噴射システムは、内燃熱機関用コモンレール式であり、複数の噴射器と、加圧された燃料を噴射器に供給するコモンレールと、コモンレールに燃料を供給し、かつ流量調整装置を備える高圧ポンプと、コモンレール内部の燃料圧力を内燃機関の運転条件によって時間的に変化する所望の値に等しくさせる制御ユニットと、燃料をタンクから供給ダクトによって高圧ポンプに供給する低圧ポンプと、を備えている。
【0004】
制御ユニットは、高圧ポンプの流量を制御するように流量調整装置に結合され、その結果、コモンレールには、コモンレール内に所望の圧力を有するのに必要な燃料の量が瞬時に供給され、特に、制御ユニットは、フィードバック変数としてコモンレール内の燃料圧力の値を使用するフィードバック制御によって高圧ポンプの流量を調整する。
【0005】
高圧ポンプの作動サイクルは、3つの段階を実質的に備える、それは、実質的に、高圧ポンプのポンプ室に流入する燃料の通路を可能にする吸気段階、それぞれの吸気バルブが開いた状態に保たれている間に、ポンプ室から低圧回路に向かって流出する燃料の通路がある還流段階、およびそれぞれの吸気バルブが閉じている間に、ポンプ室内の燃料圧力が、ポンプ室からコモンレールに向かって流出する燃料流を生じさせるような値に達するポンピング段階である。
【0006】
実験では、ポンピング段階の間、高圧ポンプの温度の顕著な上昇があることを示された。特に、20~60MPaの圧力上昇がある場合、高圧ポンプの複数のポイントでは温度変化量が30~50℃の範囲になるが、60~80MPaの圧力上昇がある場合、温度変化量は80℃の範囲ではるかに有意な値が想定される。30~50℃の範囲の温度変化は、すでにキャビテーションの問題につながる可能性がある。これにより、高圧ポンプが不安定になり、信頼性がほとんどなくなる。つまり、コモンレール内部の所望の圧力に達するために必要な燃料量で、コモンレールが瞬時に供給されることを確認することができなくなる。
【0007】
この現象は、高圧ポンプが全負荷で作動しない場合、すなわち、コモンレール内部で所望の圧力を持ち、高圧ポンプによって供給されるために必要な燃料量が、高圧ポンプによって供給され得る最大流量よりも低い場合に、悪化することが証明されている。高圧ポンプが全負荷で作動する場合(すなわち、コモンレールの内側で所望の圧力を有し、高圧ポンプによって供給される必要のある燃料量が、高圧ポンプによって供給され得る最大流量に等しい場合)、ポンピング段階中に発生する熱は、高圧ポンプから流出する燃料流量を通して除去され、ポンピング段階中に発生する熱の除去は、高圧ポンプの燃料の流量に比例する。
【0008】
さらに、高圧ポンプが全負荷で作動しないが、部分負荷では、高圧ポンプの作動は、特にエネルギー効率の点で負の効果があり、潜在的な損傷リスクがあるという特徴がある。
【0009】
特に、圧縮段階中に使用されるエネルギー(およびその結果として発生する熱)は、それぞれの吸気バルブによって捕捉される燃料の質量(調整された燃料流量と死容積の両方を考慮する)に比例するのに対して、除去される熱は、送達される唯一の流量に比例する(死容積は高圧ポンプから流れ出ず、明らかに熱は分散できないため)。その結果、送出される流量が小さいほど、熱過負荷が大きくなる。システムによって燃料に伝達される有用なエネルギーは、供給される唯一の流量にも比例する。
【0010】
一方、高圧ポンプの潜在的な損傷リスクが懸念される限り、上死点から離れ、かつ高圧ポンプの下死点から離れた吸気バルブを閉じること、すなわち、ポンプのピストンの速度がゼロ以外であり、内燃機関が高速で作動するときに、吸気バルブを閉じることは、迅速かつ重大な圧力上昇を導き、これが、結果として、潜在的な損傷リスクを伴う機械的振動を引き起こす。
【0011】
キャビテーション現象の発生あるいは高圧ポンプの損傷を避けるために、長年にわたって複数の解決策が示唆された。それは、特に、ポンピング段階中の高圧ポンプの温度上昇を制限することを目的としている。
【0012】
例えば、キャビテーション問題を解決するためには、高圧ポンプに流入する燃料の圧力を上げることも可能であるが、この解決策はエネルギー効率の面で負効果にも影響される。あるいは、高圧ポンプには燃料再循環回路を設けることができる。この燃料再循環回路は、燃料部分をポンプ室からタンクに移送する排水ダクトを設けることにより、ポンピング段階中に発生する熱が、高圧ポンプから流出する燃料の流量を通して廃棄される。しかし、この技術的解決策は、噴射システムの全体的な寸法に関して著しい欠点を有し、経済的観点からも不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、直接噴射システム用の燃料ポンプを制御する方法であって、前記した欠点を受けず、特に実施が容易で経済的であることにある、燃料ポンプを制御する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、添付の請求項に係る直接噴射システム用の燃料ポンプを制御する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、本発明を、その非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、燃料直接噴射システムの模式図であり、より明確にするために、いくつかの詳細が除去されている図である。
【
図2】
図2は、本発明による方法の動作論理の第1の変形例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法の動作論理の第2の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、符号1は、全体として、内燃熱機関用のコモンレール式の燃料、特にガソリンを燃料とする燃料直接噴射システムを示す。
【0017】
直接噴射システム1は、複数の噴射器2と、噴射器2に圧力をかけて燃料を供給するコモンレール3と、給送ダクト5によってコモンレール3に燃料を供給し、流量調整装置6を備える高圧ポンプ4と、コモンレール3内部の燃料圧力を所望の値に等しくさせる電子制御ユニット7と、一般に内燃機関の運転条件によって時間的に変化する所望の値になるようにすると共に、給送ダクト10によってタンク9から高圧ポンプ4に燃料を供給する低圧ポンプ8と、を備えている。
【0018】
電子制御ユニット7は、コモンレール3内に所望の圧力を有するのに必要な燃料の量を瞬時にコモンレール3に供給するために、高圧ポンプ4の流量を制御するように流量調整装置6に接続している。さらに、電子制御ユニット7は、コモンレール3の燃料圧力PRAILをリアルタイムに検出する圧力センサ11に接続されている。
【0019】
以下、高圧ポンプ4を制御するために電子制御ユニット7によって実施される方法について説明する。
【0020】
この方法は、
図2に従って、高圧ポンプ4の作動サイクル毎に、ポンピングされるべき燃料の最小閾値Q
MINを決定することを伴う。
【0021】
最小閾値QMINは、基本的に、圧力センサ11によって検出されるコモンレール3内の圧力PRAIL、高圧ポンプ4の温度TPUMP、高圧ポンプ4の入口圧力PLOW、熱機関1の速度n、及び内燃機関負荷Cなどの複数のパラメータに基づいて決定される。
【0022】
高圧ポンプ4の温度TPUMPは、高圧ポンプ4(TPUMP-SENSOR)に収容された専用の温度センサによって検出することも、推定モデル(TPUMP-VIRTUAL)によって推定することもできる。
【0023】
より詳しくは、電子制御ユニット7の内部には、マップ低温データが記憶されており、これは、最小閾値QMINを決定するための(開ループ)寄与要素QMIN-COLDを提供する。寄与要素QMIN-COLDは、低温条件、すなわち、コモンレール3内の圧力PRAILおよび熱機関1の速度nの所与の値に対するキャビテーション現象の発生から遠くかけ離れた条件下で、圧送される流体の最小閾値を表す。実際、マップ低温データは、入力として、コモンレール3内の圧力PRAILと熱機関1の速度nの値をそれぞれ受け取り、前記入力値に基づいて、寄与要素QMIN-COLDを提供する。
【0024】
同様に、電子制御ユニット内には、更にマップ高温データが記憶されており、これは、最小閾値QMINを決定するための(開ループ)寄与要素QMIN-HOTを提供する。寄与要素QMIN-HOTは、高温条件下、すなわち、コモンレール3内の圧力PRAILおよび熱機関1の速度nの所与の値に対するキャビテーション現象の発生に近い条件下で、ポンピングされる流体の最小閾値を表す。
【0025】
最後に、電子制御ユニット7の内部にはマップ蒸気圧データが格納されており、これは係数K(百分率で表される)を提供し、これは最小閾値QMINを決定するためにも使用される。マップ蒸気圧データは、入力として、高圧ポンプ4の入口圧力PLOW(「低圧」として知られている)及び高圧ポンプ4の温度TPUMPの値をそれぞれ受け取り、後者は、高圧ポンプ4上に収容された温度センサによって検出される温度(TPUMP-VIRTUAL)又は推定モデルによって推定される温度(TPUMP-VIRTUAL)によって表現される。前記マップ蒸気圧データは、高圧ポンプ4の温度TPUMPに応じた燃料蒸気圧の曲線を含む。高圧ポンプ4の温度TPUMPおよび高圧ポンプ4の入口圧力PLOWに基づいて、マップ蒸気圧データは、高圧ポンプ4がキャビテーション現象の発生の条件からどれだけ離れているか、又はそれにどれだけ近づいているかを(百分率で)を表す係数Kを提供する。
【0026】
したがって、最小閾値QMINは次のように計算される。
【0027】
【0028】
QMIN 最小閾値、
K 係数、
QMIN-COLD 最小閾値の「低温」寄与要素、
QMIN-HOT 最小閾値の「高温」寄与要素。
【0029】
例えば、マップ蒸気圧データによって提供される1に等しい係数Kの値は、高圧ポンプ4がキャビテーション現象の発生に近い条件下で作動していることを示していることは明らかである。一方、マップ蒸気圧データによって提供される0又は0.2に等しい係数Kの値は、高圧ポンプ4がキャビテーション現象の発生から非常に遠い条件下で作動していることを示している。
【0030】
更に、最小閾値QMINを決定するために、寄与要素QMIN-COLDを提供するマップ低温データの中と寄与要素QMIN-HOTを提供するマップ高温データの中の両方に、エネルギー効率を増加するための寄与要素と潜在的な損傷リスクを減少するための寄与要素の両方が含まれていることが指摘される。
【0031】
換言すれば、寄与要素QMIN-COLDとQMIN-HOTは、いずれも、高圧ポンプ4の温度変動を抑えるように決定され、同時に、エネルギー効率を増加させ、潜在的な損害リスクを減少させるように決定される。
【0032】
好ましい実施形態によれば、この方法は、高圧ポンプ4のキャビテーション現象の発生に対する生じやすさ-又はその欠如-の指標を与えるエネルギー指標Iを決定することを含む。エネルギー指標Iは、好ましくは、圧力センサ11によってリアルタイムで検出されるコモンレール3の圧力PRAILに関する信号の乱れの強さに基づく。この乱れは、以下に詳述するように、時刻t1とt2の間の観測時間窓内の整数によって評価される。
【0033】
第1の変形例によれば、エネルギー指標I1は以下のように表される。
【0034】
【0035】
第2の変形例によれば、エネルギー指標I2は以下のように表される。
【0036】
【0037】
第3の変形例によれば、エネルギー指標I3は以下のように表される。
【0038】
【0039】
t1、t2 観測時間窓を定義する時間、
PRAIL コモンレール3の実圧、
PTARGET コモンレール3内の目標圧力、
PRAIL-M コモンレール3および観測窓内の実際の平均圧力、
INT 圧力制御の閉ループの積分成分の値、
INTM 観測窓内の圧力制御の閉ループの積分成分の平均値。
【0040】
インデックスI1とI2は、目標燃料流量Mrefが「通常の」動作条件下(非活性化なし)で供給されるとき(以下に詳述するように)、明確に計算される。
【0041】
エネルギー指標Iは、方法を最適化することを目的とした適応機能を得るために電子制御ユニット7の内部で使用されるので、種々の生産ばらつきを有する高圧ポンプ4に適応させることができる。
【0042】
特に、適応機能は、電子制御ユニット7の内部に閾値を記憶することを伴う。閾値は、好ましくは、負荷(すなわち、噴射燃料量QF-INJ)に基づいて可変である。閾値は、熱機関の速度nに基づいても可変であることが好ましい。さらに、閾値は、噴射器2によって噴射される燃料の量QF-INJと高圧ポンプ4の実際の燃料流量との差に基づいて可変である。
【0043】
閾値は、好ましくは、実験的設定段階で決定される。負荷、熱機関の速度n、目標圧力PTARGETの静止条件下で、閾値をエネルギー指標Iと連続的に比較される。
【0044】
閾値は、エネルギー指標Iが閾値を超えると、これは、高圧ポンプ4が、キャビテーション現象の発生に近い(発生しやすい)条件下で作動していることを示すように決定される。したがって、電子制御ユニット7は、エネルギー指標Iが閾値を超えたことを検出すると、最小閾値QMINを量ΔQMINだけ増加させ、コモンレール3内の目標圧力PTARGETを量ΔPTARGETだけ減少させるように設計され、且つ所定の時間に関して設計する。
【0045】
好適な変形例によれば、量ΔPTARGETは、少なくとも1MPa(量ΔPTARGETはエネルギー指標Iとそれぞれの閾値との差に依存しない)に等しい。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より大きいままの場合、量ΔPTARGETは2MPaに増加する。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より小さい値に戻らない限り、量ΔPTARGETは1MPa増加する。
【0046】
したがって、このときの最小閾値QMINは次のように算出される。
【0047】
【0048】
QMIN 最小閾値、
K 係数、
QMIN-COLD 最小閾値の「低温」寄与要素、
QMIN-HOT 最小閾値の「高温」寄与要素、
ΔQMIN 量。
【0049】
好ましくは、量ΔQMINは可変であり、少なくとも20mg(量ΔQMINはエネルギー指標Iとそれぞれの閾値との差に依存しない)に等しい。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より大きいままの場合、量ΔQMIN量は40mgまで増加する。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より小さい値に達しない限り、量ΔQMINは20mg増加する。
【0050】
一旦、最小閾値QMINが計算されると、この方法は、高圧ポンプ4内のポンピング段階中に生成される温度変動を含め、エネルギー効率を増加させ、潜在的な損傷リスクを減少させるように、前記最小閾値QMINに基づいて高圧ポンプ4を制御することを伴う。
【0051】
図3に示されるさらなる変形によれば、本方法は、上述の説明に従って、高圧ポンプ4内のポンピング段階中に生成される温度変動を抑えるために寄与要素Q
TEMPを計算することを伴う。
【0052】
より詳しくは、電子制御ユニット7の内部には、寄与要素QTEMPを決定するために(開ループ)寄与要素QMIN-COLDを提供するマップ低温データが記憶されている。寄与要素QMIN-COLDは、低温条件、すなわち、コモンレール3内の圧力PRAILおよび熱機関1の速度nの所与の値に対するキャビテーション現象の発生から遠く離れた条件下で、圧送される流体の最小閾値を表す。実際、マップ低温データは、入力として、コモンレール3内の圧力PRAILと熱機関1の速度nの値をそれぞれ受け取り、前記入力値に基づいて、寄与要素QMIN-COLDを提供する。
【0053】
同様に、電子制御ユニット内には、さらなるマップ高温データが記憶されており、それは寄与要素QTEMPを決定するための(開ループ)寄与要素QMIN-HOTを提供する。寄与要素QMIN-HOTは、高温条件下、すなわち、コモンレール3の圧力PRAILおよび熱機関1の速度nの所与の値に対するキャビテーション現象の発生に近い条件下でポンピングされる流体の最小閾値を表す。
【0054】
最後に、電子制御ユニット7の内部には、マップ蒸気圧データが格納されており、このマップデータは、(百分率で表される)係数Kを提供し、寄与要素QTEMPを決定するためにも使用される。マップ蒸気圧データは、入力として、高圧ポンプ4の入口圧力PLOW(「低圧」として知られている)及び高圧ポンプ4の温度TPUMPの値をそれぞれ受け取り、後者は、高圧ポンプ4上に収容された温度センサによって検出される温度(TPUMP-SENSOR)又は推定モデルによって推定される温度(TPUMP-VIRTUAL)によって表現される。前記マップ蒸気圧データは、高圧ポンプ4の温度TPUMPに応じた燃料蒸気圧の曲線を含む。高圧ポンプ4の温度TPUMPおよび高圧ポンプ4の入口圧力PLOWに基づいて、マップ蒸気圧データは、高圧ポンプ4がキャビテーション現象の発生の条件からどれだけ離れているか、またはそれにどれだけ近づいているかを(百分率で)を表す係数Kを提供する。
【0055】
したがって、寄与要素QTEMPは次のように計算される。
【0056】
【0057】
QTEMP 高圧ポンプ4内のポンピング段階中に発生する温度変動を抑えるための寄与要素、
K 係数、
QMIN-COLD 最小閾値の「低音」寄与要素、
QMIN-HOT 最小閾値の「高温」寄与要素。
【0058】
また、寄与要素QTEMPは次のように計算される。
【0059】
【0060】
QTEMP 高圧ポンプ4内のポンピング段階中に発生する温度変動を抑えることへの寄与要素、
K 係数、
QMIN-COLD 最小閾値の「低温」寄与要素、
QMIN-HOT 最小閾値の「高音」寄与要素、
ΔQMIN 量。
【0061】
ここで、量ΔQMINは、上述の意味を有し、可変であり、少なくとも20mg(量ΔQMINはエネルギー指標Iとそれぞれの閾値との差に依存しない)に等しい。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より大きいままの場合、量ΔQMINは40mgまで増加する。エネルギー指標Iがそれぞれの閾値より小さい値に達しない限り、量ΔQMINは20mg増加する。
【0062】
さらに、この方法は、エネルギー効率を高めるための寄与要素QEEffと潜在的な損傷リスクを低減するためのさらなる寄与要素QDAMを計算することを含む。
【0063】
より詳しくは、電子制御ユニット7の内部にはマップデータが記憶され、マップデータは最小閾値QMINを決定するためにエネルギー効率を上げる(開ループ)寄与要素QEEffを提供する。寄与要素QEEffは、コモンレール3の圧力PRAILと噴射器2によって噴射される燃料の量QF-INJの所定の値に関してエネルギー効率を最適化するために、ポンピングされる流体の量を表す。実際、マップデータは、入力として、コモンレール3内の圧力PRAILの値と、噴射器2によって噴射されるエネルギー量QF-INJの値とをそれぞれ受け取り、前記入力値に基づいて、寄与要素QEEffを提供する。
【0064】
寄与要素QEEffは、好ましくは、熱機関1を備えた車両の運転者によって選択された運転モードDVに基づいて決定される。有利なことに、寄与要素QEEffは、複数の可能な運転/操作モードDVの中からドライバによって選択される運転/操作モードDVを識別するハンドレバーの位置に応じて決定(計量)される。例えば、可能な運転/操作モードDVは、スポーツ運転/操作モードDV(性能を強化する)、通常運転/操作モードDV、エコ運転/操作モードDV(消費の低減を高める)などからなる。可能な各運転/操作モードDVは、負荷に対応する(予備設定段階で決定)。
【0065】
さらに、電子制御ユニット7の内部には、最小閾値QMINを決定するために潜在的な損害の危険性を低減する(開ループ)寄与要素QDAMを提供するマップデータが記憶されている。寄与要素QDAMは、コモンレール3内の圧力PRAILおよび熱機関1の速度nの所与の値に対する潜在的損傷リスクを減少させるために、ポンピングされる流体の最小量を表す。実際、マップデータは、入力として、コモンレール3内の圧力PRAILと熱機関1の速度nの値をそれぞれ受け取り、前記入力値に基づいて、寄与要素QDAMを提供する。
【0066】
最後に、最小閾値QMINが計算される。好ましくは、最小閾値QMINは、高圧ポンプ4内のポンピング段階中に生成される温度変動を抑えるための寄与要素QTEMP、エネルギー効率を増加させるための寄与要素QEEffおよび潜在的損傷リスクを減少させるための寄与要素QDAMのうちで最も大きいものに対応する。あるいは、最小閾値QMINは、高圧ポンプ4内のポンピング段階中に発生する温度変動、エネルギー効率を増加させる寄与要素QEEffおよび潜在的損傷リスクを減少させる寄与要素QDAMを含むための寄与要素QTEMPの秤量平均に対応する。
【0067】
したがって、この方法は、コモンレール3の内側に所望の圧力を有するように、高圧ポンプ4によってコモンレール3に供給される目標燃料流量Mrefを瞬時に計算することを必要とする。
【0068】
次いで、電子制御ユニット7は、目標燃料流量Mrefを最小閾値Qminと比較するように設計される。
【0069】
目標燃料流量Mrefが最低閾値Qminより大きい(または等しい)場合、高圧ポンプ4は、目標燃料流量Mrefを送出するように制御される。逆に、目標燃料流量Mrefが最小閾値Qminより小さい場合には、高圧ポンプ4は、高圧ポンプ4のアイドル運転サイクルを実行する。換言すれば、目標燃料流量Mrefが最小閾値Qminより小さい場合には、高圧ポンプ4は作動しない。
【0070】
制御ユニット7は、高圧ポンプ4の流量を調節して、最小閾値Qminより大きい目標燃料流量Mrefを処理するように設計される。換言すれば、制御ユニット7は、動作サイクルの交代を制御するように設計されており、この場合、高圧ポンプ4は、最小閾値Qminよりも大きい目標燃料流量Mrefと、アイドル動作サイクルとを処理する。
【0071】
したがって、電子制御ユニット7は、フィードバック変数として、好ましくは圧力センサ11によってリアルタイムで検出される、コモンレール3内部の所望の圧力を使用するフィードバック制御と、高圧ポンプ4によってコモンレール3に瞬時に供給される目標燃料流量Mrefと上述した数式[1]又は[5]に従って計算される最小閾値QMINの比較とによって、高圧ポンプ4を作動サイクル毎に制御するように構成されている。
【0072】
高圧ポンプ4を制御するために電子制御ユニット7によって実施され、これまで説明された方法は、幾つかの利点を有する。
【0073】
特に費用面では有利であるにもかかわらず、実施も容易で安価である。特に、上述した方法は、電子制御ユニット7のための過大な計算負荷を伴わず、同時に、製造業者がキャビテーション現象の発生を回避し、高圧ポンプ4の損傷を回避し、高圧ポンプ4内のポンピング段階中に発生する温度変動を抑えるとともに、コモンレール3内の燃料圧力の目標値を維持することを可能にする。
なお、本発明の態様(構成)として以下に示すものがある。
[態様1]
コモンレール(3)を有する熱機関(1)の直接噴射システム用の燃料ポンプ(4)を制御する方法であって、
高圧ポンプ(4)によって供給される燃料の最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を決定するステップと、
前記コモンレール(3)内で所望の圧力(P
TARGET
)を得るために、前記高圧ポンプ(4)によって前記コモンレール(3)に瞬時に供給される目標燃料流量(M
ref
)を計算するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref
)と前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)とを比較するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref
)と前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)との比較に基づいて前記高圧ポンプ(4)を制御するステップと、
を備える方法において、
前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を決定するステップは以下のサブステップ、すなわち、
前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL
)と前記熱機関(1)の速度(n)とに基づいて第1の寄与要素(Q
MIN-COLD
)と第2の寄与要素(Q
MIN-HOT
)とを決定するステップであって、前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD
)は、前記コモンレール(3)内の前記圧力(P
RAIL
)及び前記熱機関(1)の速度(n)の与えられた値に関するキャビテーション現象の発生からかけ離れた低温条件下でポンピングされる流体の最小閾値であり、前記第2の寄与要素(Q
MIN-HOT
)は、前記コモンレール(3)内の前記圧力(P
RAIL
)及び前記熱機関(1)の速度(n)の与えられた値に関するキャビテーション現象の発生に近い高温条件下でポンピングされる流体の最小閾値である、ステップと、
前記高圧ポンプ(4)の温度(T
PUMP
)と前記高圧ポンプ(4)の入口圧力(P
LOW
)とに基づいて係数(K)を決定するステップであって、前記係数(K)は、キャビテーション現象の発生条件に対する前記高圧ポンプ(4)の接近性を表す、ステップと、
前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD
)、第2の寄与要素(Q
MIN-HOT
)及び前記係数(K)に基づいて前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を決定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
[態様2]
前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL
)及び噴射された燃料の量(Q
F-INJ
)に基づいてエネルギー効率を上げるための第3の寄与要素(Q
EEff
)を決定するステップと、
前記高圧ポンプ(4)の損傷リスクの可能性を減らすために、前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL
)及び前記熱機関(1)の速度(n)に基づいて第4の寄与要素(Q
DAM
)を決定するステップと、
前記第3の寄与要素(Q
EEff
)及び第4の寄与要素(Q
DAM
)に基づいて、前記最小閾値(Q
MIN
)を決定するステップと、
を更に備える、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記第3の寄与要素(Q
EEff
)は、前記熱機関(1)を備えた車両に対して選択された運転モード(DV)に応じて決定され、好ましくは、複数の可能な位置のうちのハンドレバーの位置に応じて決定される、態様2に記載の方法。
[態様4]
前記第1の寄与要素(Q
MIN-COLD
)と、前記第2の寄与要素(Q
MIN-HOT
)と、前記係数(K)とに基づいて、前記高圧ポンプ(4)においてポンピング段階中に生成された温度変動を抑えるための第5の寄与要素(Q
TEMP
)を決定するステップと、
前記第5の寄与要素(Q
TEMP
)と、前記第3の寄与要素(Q
EEff
)と、前記第4の寄与要素(Q
DAM
)との比較に基づいて、前記最小閾値(Q
MIN
)を決定するステップと、
を更に備える、態様2又は3に記載の方法。
[態様5]
前記第5の寄与要素(Q
TEMP
)は、以下のように計算され、すなわち、
ここで、
Q
TEMP
第5の寄与要素、
K 係数、
Q
MIN-COLD
第1の寄与要素、
Q
MIN-HOT
第2の寄与要素
である、態様4に記載の方法。
[態様6]
前記最小閾値(Q
MIN
)は、前記第5の寄与要素(Q
TEMP
)、前記第3の寄与要素(Q
EEff
)および前記第4の寄与要素(Q
DAM
)のうちの最大値に対応する、態様4又は5に記載の方法。
[態様7]
前記目標燃料流量(M
ref
)が前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)よりも大きい場合にのみ、前記目標燃料流量(M
ref
)を供給するように、前記高圧ポンプ(4)を制御するステップと、
前記目標燃料流量(M
ref
)が前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)よりも小さい場合に、燃料を供給しないように、前記高圧ポンプ(4)を制御するステップと、
を備える、態様1~6の何れか一項に記載の方法。
[態様8]
前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を決定するステップは、以下のサブステップを含む、すなわち、
エネルギー指標(I)を計算するステップであって、前記エネルギー指標(I)は、圧力センサ(11)によってリアルタイムに検出された前記コモンレール(3)内の圧力(P
RAIL
)に関する信号の乱れの強さに基づいて、前記高圧ポンプ(4)内のキャビテーション現象の発生に対する接近性、またはそれの欠如を示し、前記乱れは観測時間窓内の積分によって評価される、ステップと、
前記エネルギー指標(I)に基づいて前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を計算するステップと、
を備える、態様1~7の何れか一項に記載の方法。
[態様9]
前記コモンレール(3)内の所望の圧力(P
TARGET
)を第1の量(ΔP
TARGET
)によって、及び前記エネルギー指標(I)が第1の閾値を超えた場合に第1の時間間隔だけ減少させる、態様8に記載の方法。
[態様10]
前記第1の量(ΔP
TARGET
)が、少なくとも1MPaに等しく、好ましくは、前記エネルギー指標(I)と前記第1の閾値との差に依存しない、態様9に記載の方法。
[態様11]
前記エネルギー指標(I)が第1の閾値を超えた場合に、第2の量(ΔQ
MIN
)だけ前記最小閾値(Q
MIN
,Q
TEMP
)を増加させるステップを更に備える、態様8~10の何れか一項に記載の方法。
[態様12]
前記第2の量(ΔQ
MIN
)が、少なくとも20mgに等しく、好ましくは、前記エネルギー指標(I)と前記第1の閾値との差に依存しない、態様11に記載の方法。
[態様13]
前記目標燃料流量(M
ref
)が供給される場合の前記エネルギー指標(I
1
)が次のように計算され、すなわち、
ここで、
t
1
、t
2
観測時間窓を定義する時間、
P
RAIL
コモンレール(3)の実圧、
P
TARGET
コモンレール(3)内の目標圧力、
である、態様8~12の何れか一項に記載の方法。
[態様14]
前記目標燃料流量(M
ref
)が供給される場合の前記エネルギー指標(I
2
)が次のように計算され、すなわち、
ここで、
t
1
、t
2
観測時間窓を定義する時間、
P
RAIL
コモンレール(3)の実圧、
P
RAIL-M
コモンレール(3)および観測窓内の実際の平均圧力、
である、態様8~12の何れか一項に記載の方法。
[態様15]
前記エネルギー指標(I
3
)が次のように計算され、すなわち、
ここで、
t
1
、t
2
観測時間窓を定義する時間、
INT 圧力制御の閉ループの積分成分の値、
INT
M
観測窓内の圧力制御の閉ループの積分成分の平均値、
である、態様8~12の何れか一項に記載の方法。