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  • 特許-外装構造および建物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】外装構造および建物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
E04F13/08 101N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020128416
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025536
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小西 智士
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183575(JP,A)
【文献】特開2005-002747(JP,A)
【文献】特開2016-211364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00 - 13/30
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁下地に設けられた開口部に該開口部の輪郭に沿って配置された開口部材と、
前記壁下地の室外側の表面と前記開口部材の表面とを跨いで配置された、JIS A 6909の透水試験A法により測定される透水性が10.0mm以下である防水性能を有する表面保護層とを有し、
前記壁下地と前記表面保護層との間に断熱材が設けられており、前記表面保護層は前記断熱材の表面に配置されており、
前記表面保護層は、前記開口部材の表面に沿って延在する部分を有することを特徴とする外装構造。
【請求項2】
前記開口部材は窓枠であり、前記断熱材は、その側面が前記窓枠に当接するように配置されている、請求項に記載の外装構造。
【請求項3】
前記表面保護層は表面保護材を塗布して乾燥させてなり、
前記表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含む、請求項1または2に記載の外装構造。
【請求項4】
前記合成樹脂エマルジョンを構成する共重合体粒子がコア部とシェル部とを有する多層構造を有する、請求項に記載の外装構造。
【請求項5】
前記合成樹脂エマルジョンが、95質量%以上の疎水性単量体と、0.1質量%以上1.0質量%未満のアルコキシシラン基含有単量体と、反応性界面活性剤とを含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含む、請求項に記載の外装構造。
【請求項6】
前記表面保護材のpHが10以下である、請求項のいずれか一項に記載の外装構造。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の外装構造を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装構造および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の室外側表面に設けられる外装材と、窓枠などの、建物の下地材に設けられた開口部の輪郭に沿って配置された開口部材との間のジョイント部には、下地材側の防水ラインと開口部材側の防水ラインとを接続して外壁の防水性を確保するために、シーリング材を用いたシーリングを施工するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来の外張り断熱方式の外装構造の一例の横断面図を示している。なお、図1には、シーリング付近の一部の構造のみが示されている。図1に示した外装構造100においては、サッシ(障子)10が、枠体11内にガラス板12が納められた縦すべり窓として構成されている。サッシ10は、下地壁としての構造用面材17の開口部Aの輪郭に沿って配置された、開口部材としての窓枠13に取付けられている。
【0004】
窓枠13は、上辺を構成する上枠と、下辺を構成する下枠と、左右の縦辺をそれぞれ構成する2本の縦枠とで構成されており、図1には、2本の縦枠の左側の1本のみが示されている。また、構造用面材17の開口部Aの室内側の周囲には、上辺を構成するまぐさ、下辺を構成する窓台、左右の縦辺をそれぞれ構成する2本の柱が設けられており、図1には、左側の柱14のみが示されている。サッシ10を構成する枠体11および窓枠13は、まぐさ、窓台および2本の柱に取付固定されている。
【0005】
構造用面材17の室内側表面には、柱14に隣接して2層構造のパネル状の充填断熱材(第1の断熱材)15が配設されている。また、充填断熱材15の見付け面および柱14の見込み面、見付け面には、無機ボード材16が設けられている。
【0006】
また、構造用面材17の室外側表面には、パネル状の外張り断熱材(第2の断熱材)18が配設されており、外張り断熱材18の室外側表面には、ベースコートである下地調整材19aとトップコートである仕上げ塗材19bとで構成された外装材19が対向配置されている。このように、建物の断熱構造としては、建築駆体の室外側に外張り断熱材18が配設された外張り断熱構造を有している。
【0007】
そして、窓枠13と外装材19との間の隙間にシーリング材20が充填されており、外装材19側の防水ラインと窓枠13側の防水ラインとが接続され、建物の外壁の防水性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-320760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1に示した外装構造100においては、建物の外壁の防水性を確保するために、上述のようにシーリング材20を用いたシーリング工程が必要である上、シーリング材20は、経年による体積変化によって劣化するため、シーリング材20を所定の期間(例えば、10年~15年)毎に充填し直す必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シーリング材を用いたシーリングを行うことなく、建物の外壁の防水性を確保することができる外装構造および建物を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
【0012】
[1]建築物の壁下地に設けられた開口部に該開口部の輪郭に沿って配置された開口部材と、
前記壁下地の室外側の表面と前記開口部材の表面とを跨いで配置された、JISA 6909の透水試験A法の規格を満足する防水性能を有する表面保護層とを有することを特徴とする外装構造。
【0013】
[2]前記壁下地と前記表面保護層との間に断熱材が設けられており、前記表面保護層は前記断熱材の表面に配置されている、前記[1]に記載の外装構造。
【0014】
[3]前記開口部材は窓枠であり、前記断熱材は、その側面が前記窓枠に当接するように配置されている、前記[2]に記載の外装構造。
【0015】
[4]前記表面保護層は表面保護材を塗布して乾燥させてなり、
前記表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含み、前記合成樹脂エマルジョンを構成する共重合体粒子がコア部とシェル部とを有する多層構造を有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の外装構造。
【0016】
[5]前記表面保護層は表面保護材を塗布して乾燥させてなり、
前記表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含み、前記合成樹脂エマルジョンが、95質量%以上の疎水性単量体と、0.1質量%以上1.0質量%未満のアルコキシシラン基含有単量体と、反応性界面活性剤とを含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含む、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の外装構造。
【0017】
[6]前記表面保護材のpHが10以下である、前記[4]または[5]に記載の外装構造。
【0018】
[7]前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の外装構造を備える建物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シーリング材を用いたシーリングを行うことなく、建物の外壁の防水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の外張り断熱方式の外装構造の一例を示す図である。
図2】本発明による外装構造の好適な一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(外装構造)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明による外装構造は、建築物の壁下地に設けられた開口部に該開口部の輪郭に沿って配置された開口部材と、上記壁下地の室外側の表面と前記開口部材の表面とを跨いで配置された、JISA 6909の透水試験A法の規格を満足する防水性能を有する表面保護層とを有することを特徴とする。
【0022】
図2は、本発明による外装構造の好適な一例を示している。なお、図2において、図1に示した外装構造100と同じ構成には、同じ符号が付されている。図2に示した外装構造1と、図1に示した外装構造100との相違点は、図2に示した外装構造1においては、外装材19と窓枠13との間のジョイント部にシーリング材20が充填されておらず、代わりに、外装材29のベースコートが、JISA 6909の透水試験A法の規格を満足する防水性能を有する表面保護層29aで構成されており、構造用面材17室外側の表面と窓枠13の表面に跨いで配置されている点である。
【0023】
上述のように、図1に示した従来の外装構造100においては、シーリング材20を用いて外装材19と窓枠13との間のジョイント部をシーリングする必要があるうえ、シーリング材20の経年変化による劣化のために、シーリング材20を所定の期間毎に充填し直す必要があった。
【0024】
上記シーリング材20を用いたシーリングを行うことなく、外装材19側の防水ラインと窓枠13側の防水ラインとを接続するためには、外装材19を設ける前の段階で、構造用面材17側の防水ラインと、窓枠13側の防水ラインとが連続的に接続されている必要がある。そのために、本発明者らは、外装材19のベースコートを構成する下地調整材19aに着目した。
【0025】
従来の下地調整材19aとしては、例えば、コストの点でメリットがあるため、セメントを基材としたものを塗布して乾燥させたものが用いられてきた(例えば、特開2002-235386号公報参照)。しかしながら、上述のように得られる下地調整材19aは、親水性で水を含みやすい。また、可撓性(弾性)がなく、経年変化等で発生する下地の伸縮変化に追従できないため、下地調整材19aにひび割れが発生して防水層が切れる。そのため、セメント基材の下地調整材19aは、建物の外壁の防水材料としては不向きである。
【0026】
そこで、本発明者は、外装材19のベースコートに高い防水性を持たせるべく、ベースコートの基剤について鋭意検討を行った。その結果、従来のセメント系の基剤に代えて、樹脂系の基剤を用いることによって、ベースコートが、JISA 6909:2014 7.12透水試験A法の規格を満足する高い防水性を有する表面保護層29aとして機能することが判明した。そして、上記樹脂系の基剤を有する表面保護層29aを下地壁としての構造用面材17の室外側の表面と、開口部材としての窓枠13の表面とに跨いで設けることによって、シーリング材20を用いたシーリングを行うことなく、外装材29側の防水ラインと窓枠13側の防水ラインとを接続して、建物の外壁の防水性を確保できることを見出し、本発明を完成させたのである。以下、本発明による外装構造1の各構成について説明する。
【0027】
-表面保護層-
本発明による表面保護層29aは、JISA 6909の透水試験A法の規格を満足する防水性を有する層で構成する。この表面保護層29aは、下記の表面保護材を用いて構成することができる。表面保護層29aは、より高い防水性を示す、JISA 6909の透水試験B法の規格を満足する防水性を有する層で構成することが好ましい。これらの規格を満足する表面保護層29aは、下記の表面保護材を用いて形成することができる。
【0028】
--表面保護材--
表面保護材は、合成樹脂エマルジョンと、骨材とを含むことが好ましい。これにより、
表面保護材に防水性を付与することができる。
【0029】
表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含む場合に、合成樹脂エマルジョンは、95質量%以上の疎水性単量体と、0.1質量%以上1.0質量%未満のアルコキシシラン基含有単量体と、反応性界面活性剤とを含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含むことが好ましい。これにより、表面保護材の防水性を向上させることができる。上記合成樹脂エマルジョンとしては、例えばアクリル樹脂エマルジョンを使用することができる。なお、本発明において、「疎水性単量体」とは、水溶解度が0.5g/水100g未満の単量体をいう。
【0030】
疎水性単量体としては、スチレン(0.03g)、メタクリル酸シクロヘキシル(0.01g以下)、メタクリル酸n-ブチル(0.04g)、メタクリル酸t-ブチル(0.05g)、メタクリル酸i-ブチル(0.04g)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(0.01以下)、メタクリル酸ラウリル(0.01g以下)、アクリル酸n-ブチル(0.20g)、アクリル酸2-エチルヘキシル(0.01g)などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。耐水性および種々の耐薬品性の観点から、単量体としては、スチレンまたはメタクリル酸シクロヘキシルを含むものが好ましく、スチレンまたはメタクリル酸シクロヘキシルとアクリル酸2-エチルヘキシルの双方を含むものがより好ましい。
【0031】
単量体混合物100質量%に対するスチレンまたはメタクリル酸シクロヘキシルの含有量は、耐水性の観点から、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。さらに、成膜性の観点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
アルコキシシラン基含有単量体を含有させることにより、重合した樹脂の架橋度を適度な範囲に調整することができ成膜性が良好となる。したがって、表面保護層29a中に欠陥ができることを防止することができるため、表面保護層29aの防水性に優れる。
【0033】
乳化重合に用いられる単量体混合物の総量(100質量%)に対する、アルコキシシラン基含有単量体の含有割合は、表面保護層29aの耐水性、耐硫酸性の観点から、0.1~2.0質量%が好ましく、0.2~1.5質量%がより好ましく、0.3~1.2質量%であることが最も好ましい。
【0034】
アルコキシシラン基含有単量体としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも好ましくは、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランである。これらの中でより好ましくは、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランである。
【0035】
本実施形態において、単量体混合物は、疎水性単量体やアルコキシシラン基含有重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体を含んでいてもよい。他の重合性単量体としては、以下のものに限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有重合性単量体、カルボン酸基含有重合性単量体、これら以外の重合性単量体が挙げられる。
【0036】
合成樹脂エマルジョンの重合時には、反応性界面活性剤を用いることが好ましい。反応性界面活性剤を用いることにより、表面保護層29aに高い防水性能を与えることができる。反応性界面活性剤としては、重合活性を有する界面活性剤であれば特に限定されず、例えば、反応性アニオン性界面活性剤、反応性ノニオン性界面活性剤を使用できる。反応性アニオン性界面活性剤の具体例としては、以下に限定されないが、「アデカリアソープSE-1025A」、「アデカリアソープSR-1025」、「アデカリアソープSR-3025」(ADEKA社製)、「アクアロンKH-1025」、「アクアロンHS-1025」、「アクアロンBC-1025」、「アクアロンBC-2020」(第一工業製薬社製)、「ラテムルPD-104」(花王社製)、「エレミノールJS-20」、「エレミノールRS-3000」(三洋化成社製)などが挙げられる。反応性ノニオン性界面活性剤の具体例としては、以下に限定されないが、「アデカリアソープER-10」、「アデカリアソープER-20」、「アデカリアソープER-30」、「アデカリアソープER-40」、「アデカリアソープNE-10」、「アデカリアソープNE-20」、「アデカリアソープNE-30」(ADEKA社製)、「アクアロンRN-20」、「アクアロンRN-30」、「アクアロンRN-50」(第一工業製薬社製)などが挙げられる。
【0037】
合成樹脂エマルジョンの計算ガラス転移温度は、好ましくは0~-30℃、より好ましくは-10~-20℃である。計算ガラス転移温度は、上記式(1)により計算することができる。
【0038】
表1に代表的な単量体の水溶解度とホモ重合体のガラス転移温度(Tg)を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
合成樹脂エマルジョンの共重合体粒子同士の融着を制御することにより、本来は相反するはずの表面保護層29aの防水性と水蒸気透過性とを両立させることができる。上記制御の方法としては、乳化重合の際に架橋させる(アルコキシシラン基含有単量体を含有させる)方法と、共重合体粒子をコア部とシェル部を有する多層構造にする方法とがある。
【0041】
乳化重合の際に架橋させる(アルコキシシラン基含有単量体を含有させる)場合には、共重合体粒子が単層構造の場合には、アルコキシシラン基含有単量体の含有量は0.7~1.5質量%であることが好ましく、0.8~1.2質量%であることがより好ましい。共重合体粒子を多層構造にする場合には、コア部のアルコキシシラン基含有単量体の含有量は0.1~0.5質量%が好ましく、0.2~0.4質量%がより好ましい。
【0042】
共重合体粒子を多層構造にする場合には、コア部を構成する共重合粒子の計算ガラス転移温度は、-10℃以下が好ましく、-15℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。シェル部を構成する共重合樹脂の計算ガラス転移温度は、30~120℃が好ましく、40~100℃がより好ましく、50~85℃がさらに好ましい。
【0043】
合成樹脂エマルジョンのコア部の質量比は、60~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。
【0044】
また、骨材としては、例えば、寒水砂や珪砂、炭酸カルシウム等を用いることができる。骨材の平均粒子径は50~150μmが好ましく、70~110μmがより好ましい。
【0045】
表面保護材は、合成樹脂エマルジョンおよび骨材の他に、例えば短繊維、造膜助剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等を含んでいてもよい。
【0046】
上記短繊維としては、例えばナイロン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、炭素繊維等が挙げられる。また、pH調整剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水溶性アミン等が挙げられる。
【0047】
表面保護材を着色することにより、表面保護層29aに意匠性を付与してもよい。また、表面保護材に着色珪砂を混合することにより、表面保護層29aに意匠性を付与してもよい。
【0048】
また、本発明による外装構造1においては、表面保護層29aは、壁下地としての構造用面材17の表面に設けてもよいが、図2に示すように、構造用面材17と表面保護層29aとの間に外張り断熱材18を設け、表面保護層29aを外張り断熱材18の表面に設けてもよい。これにより、外張り断熱方式の外装構造1を構成することができる。
【0049】
また、壁下地と表面保護層29aとの間に外張り断熱材18を設け、開口部材が窓枠13である場合、外張り断熱材18は、その側面が窓枠13に当接するように配置されていることが好ましい。これにより、図1に示した従来の外装構造100においては、シーリング材20が配置されていた部分に外張り断熱材18が配置されることになり、開口部Aの断熱性能を高めることができる。
【0050】
表面保護層29aを構成する表面保護材は、pH10が以下であることが好ましく、pH6以上9以下であることがより好ましい。pHが10以下であれば、耐アルカリ性の低い断熱材に表面保護材や壁下地に塗布する場合にも、断熱材や壁下地を構成する材料の劣化を抑制することができる。
【0051】
ここで、外装構造1の施工方法について説明する。まず、表面保護材を施工する。具体的には、外張り断熱材18表面保護材を規定された塗布量の半分を下地調整1回目として左官する。コテを用いて均一に塗り付ける。塗り付け後、乾燥する前にガラス繊維入りメッシュ張りを行う。コテを用いて張り付ける。表面保護材がメッシュ表面に浮き上がってくるように表面をならす。下地調整2回目として残りの表面保護材を左官する。コテを用いて均一に塗り付ける。
その際、上記表面保護材を、構造用面材17の室外側の表面と窓枠13の表面とを跨ぐように連続して塗布し、所定の期間(例えば、1日)放置して乾燥させる。これにより、表面保護層29aを形成することができる。続いて、表面保護層29aの表面に、仕上げ塗材19bを設ける。こうして、外装材29側の防水ラインと窓枠13側の防水ラインとが接続され、建物の外壁の防水性が確保された外装構造1を構成することができる。
【0052】
なお、図2においては、構造用面材17に設けられた開口部Aの輪郭に沿って配置された開口部材が窓枠13である場合を例に、本発明による外装構造1について説明したが、それに限定されない。開口部材は、例えば、樹脂製の配管などとすることができる。これにより、表面保護層29aと配管との接着性を向上させることができる。
【0053】
中でも、配管が塩化ビニル製であり、表面保護層29aが、表面保護材を塗布して乾燥させてなり、(1)表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含み、合成樹脂エマルジョンを構成する共重合体粒子がコア部とシェル部とを有する多層構造を有する場合、または(2)表面保護材が合成樹脂エマルジョンと骨材とを含み、合成樹脂エマルジョンが、95質量%以上の疎水性単量体と、0.1質量%以上1.0質量%未満のアルコキシシラン基含有単量体と、反応性界面活性剤とを含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含む場合に、配管と表面保護層29aとの付着性が高い。
【0054】
(建物)
次に、本発明による建物について説明する。本発明による建物は、上述した本発明による外装構造1を備える建物である。上述のように、本発明による外装構造1においては、外装材のベースコートがJISA 6909の透水試験A法の規格を満足する防水性能を有する表面保護層で構成されている。これにより、シーリング材を用いたシーリングを行うことなく、外装材側の防水ラインと開口部材側の防水ラインとを接続して、建物の外壁の防水性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、シーリング材を用いたシーリングを行うことなく、建物の外壁の防水性を確保することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,100 外装構造
10 サッシ
11 枠体
12 ガラス板
13 窓枠(開口部材)
14 柱
15 充填断熱材
16 無機ボード
17 構造用面材(壁下地)
18 外張り断熱材
19,29 外装材
19a 下地調整材
19b 仕上げ塗材
20 シーリング材
29a 表面保護層
A 開口部
図1
図2