(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
G04B 15/12 20060101AFI20250106BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20250106BHJP
【FI】
G04B15/12
G04G21/00 304P
(21)【出願番号】P 2020151759
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-28
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520294217
【氏名又は名称】フレクシャス メカニズムス イー ペー ベー. ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーケ、シブレン レナード
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-10670(JP,A)
【文献】特開2009-122107(JP,A)
【文献】特開2013-120189(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115014(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
G04G 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、時計の動作を制御するホイールなどの調速機(3)を前記ケーシングの内部において支持するフレーム(2)とを備えた時計であって、この時計は、調速機(3)を制御するためのレバー(10)を有し、前記ケーシングにはレバー(10)を動作させるためのボタン(A)が設けられ、レバー(10)は少なくとも1つの中間可撓体(12、13)によってフレーム(2)に接続され、少なくとも1つの中間可撓体(12、13)は、選択された位置を有し、レバー(10)が、前記選択された位置から撓んだ後に自動的に元に戻るように構成されたものにおいて、レバー(10)と、少なくとも1つの可撓体(12、13)と、フレーム(2)とが単一部品を形成していることを特徴とする時計。
【請求項2】
レバー(10)が少なくとも2つの中間可撓体(12、13)に
よってフレーム(2)に接続されていることを特徴とする請求項1記載の時計。
【請求項3】
2つの中間可撓体(12、13)が面内に設けられていることを特徴とする、請求項2記載の時計。
【請求項4】
調速機(3)がフレーム(2)に接続され、調速機(3)はフレーム(2)に関して少なくとも2つの安定位置を備えており、調速機(3)は、レバー(10)の操作によって前記少なくとも2つの安定
位置の間を移動可能であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の時計。
【請求項5】
調速機(3)とフレーム(2)とレバー(10)との少なくとも1つが単一部品(1)
を形成するか、またはこれらの要素の置換物が一緒に単一部品を形成していることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の時計。
【請求項6】
調速機(3)とフレーム(2)とレバー(10)とが面内に設けられることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の時計。
【請求項7】
調速機(3)が、フレーム(2)に接続された弾性支持ビーム(6、7)と協働するように構成されたスロット(8a、8b、9a、9b)を備えることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の時計。
【請求項8】
レバー(10)が、このレバー(10)の操作によって長手方向に変位可能なビーム(11)に、このビーム(11)を駆動するように接続しており、前記ビーム(11)は、前記レバー(10)の操作時に、前記ホイールを移動させるために調速機(3)の接触面に連結するものであることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の時計。
【請求項9】
レバー(10)の操作により、ビーム(11)が調速機(3)を第1の安定位置から第2の安定位置へ、またはその逆に移動させるものであることを特徴とする請求項8記載の時計。
【請求項10】
調速機(3)がコラムホイールであることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の時計。
【請求項11】
調速機(3)は、使用時に水平クラッチ(25)として動作するものであることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の時計。
【請求項12】
調速機(3)は、使用時にブレーキレバー(24)として動作するものであることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調速機を支持するフレームを備えた時計に関する。調速機は、通常は(柱状の)輪体であって、時計の動作を司る。この時計は、調速機を制御するためのレバーをさらに備える。そして時計は、(プッシュ)ボタン付きのケーシングを備えており、ボタンを押すとレバーが作動する。
【背景技術】
【0002】
調速機は、時計における任意の部分であって、時計の特定の操作を管理する。特に、ストップウォッチ(クロノグラフ時計)のスタート/ストップ/リセット、標準時についての特定のタイムゾーンの時刻の修正、日付の調整、特定のGPS位置に基づく時計の同期などを行う。
【0003】
そのような時計の例として、たとえば、何十年も知られているクロノグラフ時計が挙げられる。その構造の非常に詳細な説明が、非特許文献1によって示されている。
【0004】
従来のクロノグラフ時計では、コラムホイールは、多層ホイールであって、クロノグラフにおける他のすべての部品の位置と動きを決定する。これは、ボタンを押すことによって作動する。このボタンを押すことにより、ラチェットラッチが下方に引っ張られ、それによってコラムホイールが回転する。回転すると、コラムホイールの歯が、外側に移動する最初のレバーと接触する(この最初のレバーは、水平クラッチで、秒針用歯車とクロノグラフギヤとをかみ合わせる)。同時に、コラムホイールの回転により、2番目のレバーが内側に倒れる(この2番目のレバーは、ブレーキレバーであり、クロノグラフの針が動き始めるように解放される)。
【0005】
最後に、フック付きのスプリングを使用して、コラムホイールが前後に動くのを防止する。基本的に、この構造によって、コラムホイールに安定した位置を提供する。
【0006】
クロノグラフの作動を停止するには、ボタンをもう一度押す必要がある。これにより、ラッチが下に移動し、コラムホイールがさらに回転して、水平クラッチが外れかつブレーキレバーに作用する。
【0007】
従来のクロノグラフ時計にはいくつかの欠点がある。特に、機構部は多くの部品(>20)で構成されており、組み立てが必要である。さらに、コラムホイールは多層部品であり、製造が困難である。最後に、組み立てられた状態でコラムホイールとフレームとレバーとを備えたシステムが非平面的であるため、クロノグラフ時計の厚みが比較的大きくなる。
【0008】
時計で可能な他の操作、およびレバーに作用する押しボタンで開始または停止する操作が、同様の問題を引き起こす。その操作は、ストップウォッチ(クロノグラフ時計)をスタート/ストップ/リセットする機能、標準時についての特定のタイムゾーンの時刻を修正する機能、日付調整機能、特定のGPS位置に基づいて時計を同期させる機能などに関するものである。
【0009】
特許文献1は、ケーシングと、ケーシング内のフレームであって、時計の動作を管理するホイールなどの調速機を支持するフレームとを備える時計を開示している。この時計は、調速機を制御するためのレバーをさらに含む。ケーシングには、レバーを作動させるためのボタンが設けられており、レバーは少なくとも1つの中間可撓体によってフレームと接続し、この少なくとも1つの中間可撓体は、レバーが偏向された後に自動的に戻る優先位置を有するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】https://www.watchprosite.com/a.-lange-and-s%C3%B6hne/how-column-wheel-chronographs-work-notably-the-lange-l951-movements-/10.1026673.7293393/
【発明の概要】
【0012】
本発明によれば、添付の請求項の1つまたは複数に関する特徴を有する時計が提案される。
【0013】
本発明の時計の第1の態様は、レバーと、少なくとも1つの可撓体と、フレームとが単一部品を形成しているという特徴を有する。これは、時計の製造および組立ての観点から有利である。
【0014】
好ましくは、レバーは、少なくとも2つの中間可撓体によってフレームに接続されている。これにより、衝撃や振動に耐える、より頑丈な構造が提供される。少なくとも2つの中間可撓体は、そのまわりでレバーが回転できる仮想軸受を創成することができる。
【0015】
好ましくは、2つの中間可撓体は面内に設けられる。
【0016】
本発明の別の態様では、調速機は、フレームに接続されるとともに、フレームに関して少なくとも2つの安定位置が設けられ、そして調速機は、レバーの操作によって前記少なくとも2つの安定位置の間で移動可能である。そのような調速機は、クロノグラフ時計における従来のコラムホイールの機能を果たすことができ、その構造を大幅に簡素化する。調速機は、たとえば、時計における非作動位置から作動位置へギヤを動かすために使用されてもよい。
【0017】
一般に、調速機が少なくとも2つの可撓体によってフレームに接続されることが有利である。この少なくとも2つの可撓体は、第1の位置および第2の位置に配置され、第1の位置および第2の位置は、調速機についての少なくとも2つの安定位置に対応する。
【0018】
本発明の時計の1つの適切な実施形態では、第1の位置にあるときに、少なくとも2つの可撓体は緩められており、第2の位置にあるときに、少なくとも2つの可撓体には曲がりが発生している。
【0019】
本発明の時計の別の適切な実施形態では、少なくとも2つの可撓体は第1の位置にあるときに第1の方向の曲がりが発生し、この少なくとも2つの可撓体は、第2の位置にあるときに、第1の方向と反対の第2の方向に曲がりが発生する。
【0020】
本発明の別の態様では、調速機とフレームとレバーとの少なくとも1つが単一部品を形成するか、またはこれらの要素が一緒に単一部品を形成する。これにより、時計の組み立てが、より煩雑でなくなるか、より費用がかからなくなる。また、時計の信頼性と精度も向上する。
【0021】
本発明のさらなる態様では、調速機とフレームとレバーとが面内に設けられる。これにより、超薄型の時計を組み立てて提供することが可能になる。
【0022】
さらに好ましい特徴は、調速機が、フレームに接続された弾性支持ビームと協働するように構成されたスロットを備えることにある。これにより、調速機についてのそれぞれの安定位置を確保することができる。
【0023】
別の注目すべき特徴は、レバーが、このレバーの操作によって長手方向に変位可能なビームに、このビームを駆動するように接続しており、ビームは、レバーの操作時に調速機の接触面に連結して、この調速機を移動させることにある。これによれば、レバーの操作によって、ビームが調速機を第1の安定位置から第2の安定位置へ、またはその逆に移動させることが可能になる。
【0024】
さらに好ましい特徴においては、
-調速機はクロノグラフ時計のコラムホイールである。
-調速機が使用中に水平クラッチとして動作する。
-調速機が使用中にブレーキレバーとして動作する。
-調速機が使用中に水平クラッチおよびブレーキレバーとして動作する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明にもとづくクロノグラフを示す図である。
【
図2.1】ホイール、フレーム、レバーを備えた本発明のクロノグラフ時計の実施形態の上面図である。
【
図2.2】ホイール、フレーム、レバーを備えた本発明のクロノグラフ時計の他の実施形態の上面図である。
【
図3】フレーム内における特にホイールのサスペンションについての第1の実施例を示す図である。
【
図4】フレーム内における特にホイールのサスペンションについての第2の実施例を示す図である。
【
図5】ホイールがコラムホイールと水平クラッチとブレーキとの機能を一緒に備えているシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の特許請求の範囲を限定するものではない、本発明によるクロノグラフ時計の例示的な実施形態の図面を参照して、本発明をさらに説明する。ただし、以下で説明するクロノグラフ時計の特定の例は、特許請求の範囲の一般性をこれらの例のみに限定するものではないことに注意すべきである。特許請求の範囲は、少なくとも1つ以上の添付の請求項の機能を持ちかつさまざまな機能に対処する時計に、適用される。このさまざまな機能として、ストップウォッチ(クロノグラフ時計)をスタート/ストップ/リセットする機能、標準時についての特定のタイムゾーンの時刻を通常の時計において修正する機能、通常の時計における日付調整機能、特定のGPS位置に基づいて通常の時計を同期させる機能などが挙げられる。
【0027】
図において、同じ参照符号が付されるときはいつでも、これらの符号は同じ部材を指す。
【0028】
図1と
図2.1および2.2とを参照して、
図1に示されるクロノグラフ時計の基本的な動作を、本発明に関連する限りにおいて説明する。クロノグラフ時計において動作に必要な残りの部材のすべては、図示されていない。それらは、従来技術の(クロノグラフ)時計の構造と一致しているためであるか、または完全に一致している可能性を有するためである。そのため、それらの部材は、本発明を理解するためには必要とされない。
【0029】
図1は、同時計が、
図2.1および2.2に示されるレバー10を作動させるための押しボタンAを備えたケーシングを有することを示す。
【0030】
ケーシングは、ホイール3と、フレーム2と、レバー10とを有し、これらは、
図2.1および2.2に示すように、単一部品1として完成されている。ホイール3のみ、フレーム2のみ、またはレバー10のみを、一部品として構成することも可能である。これらの要素を組み合わせて1つの部品とすることも可能である。
【0031】
図1の右上のボタンAを押すと、レバー10(
図2.1および2.2を参照)が左下に押し下げられ、
図2.1の単一の可撓体12と
図2.2の可撓体12、13とがレバー10をフレーム2に接続しているため、レバー10はその中心軸を中心に反時計方向に回転する。この動きによってレバー10は、ビーム11をホイール3の接触面に向かって長手方向に押す。ビーム11がホイール3と連動すると、ホイール3は、反時計回りに回転して、第1の安定位置(
図2.1および2.2に示す)から第2の安定位置へとスナップする。この点は、当業者であれば、図示の構造から想像することができる。
【0032】
可撓体12、13の剛性によって、レバー10は、右上のボタンAが押されていない限り、その元の位置に戻る。右上のボタンAをもう一度押すと、同じシーケンスが実現する。このときにおいてのみ、ビーム11は、ホイール3と連動していることで、ホイール3を時計方向に回転させて、第2の安定位置から
図2.1および2.2に示す位置である第1の安定位置にスナップ戻しする。
【0033】
図3は、ホイール3が少なくとも2つの可撓体4、5によってフレーム2に接続されている実施形態を示す。前記した少なくとも2つの可撓体4、5は、ホイール3の少なくとも2つの安定位置に対応した第1の位置および第2の位置をとるように配置される。第1の位置では、少なくとも2つの可撓体4、5が緩められる(図の左側の部分を参照)。第2の位置では、少なくとも2つの可撓体4、5に曲がりが発生している(図の右側の部分を参照)。
【0034】
図4は、ホイール3がこの場合は4つの可撓体14~17によってフレーム2に接続される別の実施形態を示す。前記した4つの可撓体14~17は、ホイール3の少なくとも2つの安定位置に対応した第1の位置および第2の位置をとるように配置される。第1の位置では、4つの可撓体には第1の方向の曲がりが発生し(図の左側の部分を参照)、第2の位置では、4つの可撓体14~17には、第1の方向とは反対の第2の方向の曲がりが発生している(図の右側の部分を参照)。
【0035】
図5は他の実施形態を示し、ここでは、ホイール3が水平クラッチ25およびブレーキレバー24の位置を設定するだけでなく、これらの2つのレバーは、ホイール3に組み込まれている。この実施形態におけるホイール3は、また、少なくとも2つの安定位置を有して、稼働ギヤトレイン21、23のギヤを、クロノグラフの別のギヤトレイン22とかみ合わせることを可能とし、またクロノグラフ側22についてのブレーキレバー24を解放することを可能にする。
【0036】
図2.1および2.2に戻ると、ホイール3にはスロット8a、8b、9a、9bが設けられており、これらのスロット8a、8b、9a、9bは、フレーム2に接続された弾性支持ビーム6、7に設けられた突起と協働するように構成されている。
図2は、支持ビーム6、7上の前記突起がスロット8aおよび9aにはまり込んでホイール3を第1の安定位置に確保することを示している。ホイール3が第2の安定位置に移動すると、支持ビーム6、7の突起がスロット8bおよび9bにはまり込んで、第2の安定位置に確保する。
【0037】
以上、本発明のクロノグラフ時計の例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、これらの特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく多くの方法で変更することができる。したがって、上記において説明された例示的な実施形態は、これにもとづいて添付の特許請求の範囲を厳密に解釈するためには、使用されるべきではない。逆に、上記した実施形態は、特許請求の範囲をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図せずに、添付の特許請求の範囲の文言を説明することのみを意図したものである。したがって、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるべきであり、特許請求の範囲の文言において起こり得る曖昧さは、これらの例示的な実施形態を使用して解決されるものとする。