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特許7612376電界紡糸装置、及び、電界紡糸ヘッドの清掃方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】電界紡糸装置、及び、電界紡糸ヘッドの清掃方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20250106BHJP
   D01D 4/04 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
D01D5/04
D01D4/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020178970
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069983
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 健一
(72)【発明者】
【氏名】都甲 昌裕
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115405(JP,A)
【文献】特開2018-145551(JP,A)
【文献】特開2017-166101(JP,A)
【文献】特開2007-303015(JP,A)
【文献】特開2020-047439(JP,A)
【文献】特表2021-522423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 5/04
D01D 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列方向に配列される複数のノズルを備え、前記複数のノズルのそれぞれに、供給された原料液を噴出可能な噴出口が形成される電界紡糸ヘッドと、
前記噴出口が開口する側から前記複数のノズルに接触可能であり、前記複数のノズルに接触する状態において、前記複数のノズルの前記配列方向に沿う回転軸を中心として回転可能な回転ブラシと、
吸引口を有し、前記吸引口が前記回転ブラシに近接可能な吸引ヘッドと、
前記吸引ヘッドの前記吸引口が前記回転ブラシに近接した状態において駆動されることにより、前記回転ブラシから前記吸引口へ向かう吸引力を作用させる吸引駆動部と、
を具備する、電界紡糸装置。
【請求項2】
駆動されることにより、前記回転ブラシを前記回転軸に対して交差する方向に移動させ、前記電界紡糸ヘッドの前記複数のノズルに接触可能な位置へ前記回転ブラシを移動させる移動駆動部をさらに具備する、請求項1の電界紡糸装置。
【請求項3】
前記電界紡糸ヘッドから離れた位置に配置され、前記回転ブラシに接触可能な接触プレートをさらに具備する、請求項1又は2の電界紡糸装置。
【請求項4】
前記電界紡糸ヘッドから離れた位置に配置され、前記回転ブラシに向かって気体を噴出する噴出ヘッドをさらに具備する、請求項1乃至のいずれか1項の電界紡糸装置。
【請求項5】
前記回転ブラシは、複数の第1の毛束列及び複数の第2の毛束列を備えるとともに、前記回転ブラシでは、前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列は、前記回転軸に沿う方向に交互に配置され、
前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列のそれぞれは、複数の毛束を備えるとともに、前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列のそれぞれでは、前記複数の毛束が前記回転軸の軸回りに所定のピッチで並んで配置され、
前記第2の毛束列では前記第1の毛束列に対して、前記複数の毛束は、前記回転軸の軸回りにずれて配置される、
請求項1乃至のいずれか1項の電界紡糸装置。
【請求項6】
配列方向に配列される複数のノズルを備え、前記複数のノズルのそれぞれに、供給された原料液を噴出可能な噴出口が形成される電界紡糸ヘッドの清掃方法であって、
前記噴出口が開口する側から前記複数のノズルに回転ブラシを接触させることと、
前記複数のノズルに前記回転ブラシが接触する状態において、前記複数のノズルの前記配列方向に沿う回転軸を中心として前記回転ブラシを回転させることと、
吸引ヘッドの吸引口を、前記回転ブラシに近接させることと、
前記吸引口が前記回転ブラシに近接した状態において吸引駆動部を駆動することにより、前記回転ブラシから前記吸引口へ向かう吸引力を作用させることと、
を具備する、清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界紡糸装置、及び、電界紡糸ヘッドの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)により、微細なファイバーを収集体又は基材の表面に堆積させ、ファイバーの膜を形成する電界紡糸装置がある。電界紡糸装置では、ノズルを備える電界紡糸ヘッドに、高分子材料を含む原料液が供給される。そして、ノズルに電圧を印加し、電界紡糸ヘッドに原料液を供給することにより、原料液を帯電させ、ノズルの噴出口から帯電した原料液を収集体又は基材の表面に向かって噴出させる。これにより、ファイバーが、収集体又は基材の表面に堆積される。
【0003】
前述のように電界紡糸装置によってファイバーの膜を形成する作業を行うと、ノズルにおいて噴出口の近傍等に、ファイバー、原料液の液滴及び原料液の高分子材料等が付着物として付着することがある。このため、ファイバーの膜を形成する作業を行った後に、ノズルへの付着物を除去する等して電界紡糸ヘッドの清掃作業が行われる。
【0004】
電界紡糸ヘッドとして、複数のノズルが配列方向に配列されたものがある。電界紡糸ヘッドの清掃作業では、複数のノズルが配列される電界紡糸ヘッドであっても、効率的かつ適切に清掃されることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6389910号公報
【文献】特開平6-246210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数のノズルが配列方向に配列された電界紡糸ヘッドを効率的かつ適切に清掃する電界紡糸装置、及び、その電界紡糸ヘッドの清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電界紡糸装置は、電界紡糸ヘッド回転ブラシ、吸引ヘッド及び吸引駆動部を備える。電界紡糸ヘッドは、配列される複数のノズルを備え、複数のノズルのそれぞれには、供給された原料液を噴出可能な噴出口が、形成される。回転ブラシは、噴出口が開口する側から複数のノズルに接触可能であり、複数のノズルに接触する状態において、複数のノズルの配列方向に沿う回転軸を中心として回転可能である。吸引ヘッドは、吸引口を有し、吸引口は、回転ブラシに近接可能である。吸引ヘッドの吸引口が回転ブラシに近接した状態において吸引駆動部が駆動されることにより、回転ブラシから吸引口へ向かう吸引力が作用する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の一例を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の電界紡糸ヘッドの1つを概略的に示す斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の電界紡糸ヘッドの1つによってファイバーの膜を形成している状態を示す概略図である。
図4】、図4は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の電界紡糸ヘッドの1つへの付着物を、清掃ユニットを用いて除去している状態を概略的に示す斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置において、吸引ヘッドが清掃ユニットに接続された状態を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の回転ブラシを、回転軸に沿う軸方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の回転ブラシを、回転軸に沿う軸方向に対して平行又は略平行な断面で概略的に示す断面図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の回転ブラシのブラシ部を概略的に示す斜視図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の回転ブラシのブラシ部を、図8とは視る方向及び示される領域等が異なる状態で概略的に示す斜視図である。
図10図10は、第1の変形例に係る電界紡糸装置の回転ブラシにおいて、ブラシ部の延設状態を概略的に示す斜視図である。
図11図11は、第1の変形例に係る電界紡糸装置の回転ブラシを、回転軸に沿う軸方向に対して平行又は略平行な断面で概略的に示す断面図である。
図12図12は、第2の変形例に係る電界紡糸装置の電界紡糸ヘッドの1つへの付着物を、清掃ユニットを用いて除去している状態を示す概略図である。
図13図13は、第2の変形例に係る電界紡糸装置において、噴出ヘッドから回転ブラシに気体が噴出されている状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置1の一例を示す。図1に示すように、電界紡糸装置1では、奥行き方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)、奥行き方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)横方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、奥行き方向及び横方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)高さ方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)が、規定される。電界紡糸装置1は、1つ以上の電界紡糸ヘッド2を備え、図1の一例では、4つの電界紡糸ヘッド2を備える。電界紡糸ヘッド2は、高さ方向に互いに対して離れて配置される。また、電界紡糸ヘッド2は、高さ方向に並んで配置される。電界紡糸装置1では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれによって、ファイバーの膜が形成される。
【0011】
図2は、電界紡糸ヘッド2の1つである電界紡糸ヘッド2Aを示す。以下、電界紡糸ヘッド2Aの構成等について、説明する。なお、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2の構成等は、電界紡糸ヘッド2Aの構成等と同様である。このため、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2の構成等については、説明を省略する。図2に示すように、電界紡糸ヘッド2Aは、ヘッド本体11、複数(本実施形態では4つ)のノズル12A、及び、複数(本実施形態では4つ)のノズル12Bを備える。ヘッド本体11(電界紡糸ヘッド2)では、中心軸が規定され、ヘッド本体11において中心軸に沿う方向が、長手方向として規定される。電界紡糸ヘッド2Aでは、長手方向が、電界紡糸装置1の横方向と一致又は略一致する。ヘッド本体11は、中心軸に沿って延設され、電界紡糸ヘッド2Aの長手方向に沿って延設される。本実施形態では、ヘッド本体11及びノズル12A,12Bのそれぞれは、導電材料から形成される。また、ヘッド本体11及びノズル12A,12Bのそれぞれは、原料液に対して耐性を有する材料から形成されることが好ましく、例えば、ステンレスから形成される。
【0012】
電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12A,12Bのそれぞれは、ヘッド本体11の外周面に設けられる。複数のノズル12A,12Bのそれぞれは、外周側へ、すなわち、ヘッド本体11の中心軸から離れる側へ、ヘッド本体11の外周面から突出する。本実施形態では、複数のノズル12Aは、ヘッド本体11の中心軸の軸回りについて、互いに対して同一又は略同一の角度位置に配置される。このため、電界紡糸ヘッド2Aでは、複数のノズル12Aは、長手方向に沿って配列され、1つのノズル列を形成する。また、本実施形態では、複数のノズル12Bは、ヘッド本体11の中心軸の軸回りについて、互いに対して同一又は略同一の角度位置に配置される。このため、電界紡糸ヘッド2Aでは、複数のノズル12Bは、長手方向に沿って配列され、1つのノズル列を形成する。電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12Aの配列方向、及び、ノズル12Bの配列方向は、電界紡糸装置1の横方向と一致又は略一致する。
【0013】
電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12Aは、周方向について、すなわち、ヘッド本体11の中心軸の軸回りについて、ノズル12Bに対して離れて配置される。このため、ノズル12Aのノズル列、及び、ノズル12Bのノズル列は、電界紡糸ヘッド2Aの周方向について互いに対して離れて配置される。電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12Aのそれぞれは、電界紡糸装置1の奥行き方向について、他のノズル12Aが突出する側へヘッド本体11から突出し、ノズル12Bのそれぞれは、電界紡糸装置1の奥行き方向について、ノズル12A及び他のノズル12Bが突出する側へヘッド本体11から突出する。また、電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12Aのそれぞれは、電界紡糸装置1の奥行き方向について、ヘッド本体11の中心軸に対して、他のノズル12Aが位置する側に位置し、ノズル12Bのそれぞれは、電界紡糸装置1の奥行き方向について、ヘッド本体11の中心軸に対して、ノズル12A及び他のノズル12Bが位置する側に位置する。
【0014】
また、電界紡糸ヘッド2Aでは、ヘッド本体11の外周面に、ノズル12A,12Bは、ジグザグ状に配置される。そして、ノズル12A及びノズル12Bは、電界紡糸ヘッド2Aの長手方向(中心軸に沿う方向)について交互に配置される。このため、電界紡糸ヘッド2Aの長手方向について隣り合うノズル(第1のノズル)12Aの間には、ノズル(第2のノズル)12Bの対応する1つが、配置される。
【0015】
電界紡糸ヘッド2Aでは、ヘッド本体11の内部に、内部空洞13が形成される。内部空洞13は、電界紡糸ヘッド2Aの長手方向(中心軸)に沿って形成される。また、電界紡糸ヘッド2Aでは、ノズル12A,12Bのそれぞれの内部に、流路15が形成される。ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ヘッド本体11からの突出方向に沿って、流路15が延設される。したがって、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、流路15の延設方向は、ヘッド本体11からの突出方向と一致又は略一致する。電界紡糸ヘッド2Aでは、流路15のそれぞれの一端(内周端)は、内部空洞13に接続される。
【0016】
電界紡糸ヘッド2Aでは、流路15のそれぞれの他端(外周端)に、噴出口16が形成される。ノズル12A,12Bのそれぞれでは、外表面に噴出口16が形成される。本実施形態では、ノズル12A,12Bのそれぞれにおいて、ヘッド本体11からの突出端(先端)に、噴出口16が形成される。流路15のそれぞれは、噴出口16において、電界紡糸ヘッド2Aの外部に対して開口する。電界紡糸ヘッド2Aでは、流路15のそれぞれは、電界紡糸装置1の奥行き方向について、他の流路15が開口する側へ噴出口16において開口する。また、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、噴出口16は、流路15を通して、ヘッド本体11の内部空洞13と連通する。このため、ノズル12A,12Bのそれぞれは、内部空洞13を通して流路15に供給された原料液を、噴出口16から噴出可能である。ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ヘッド本体11から突出する側、すなわち、噴出口16が開口する側に向かって、原料液を噴出可能である。
【0017】
また、ノズル12A,12Bのそれぞれは、ニードル部25及びノズル基部26を備える。ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ノズル基部26が、ヘッド本体11へ接続され、ヘッド本体11からの突出部分の根元を形成する。また、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ニードル部25は、ノズル基部26から電界紡糸ヘッド2の外周側へさらに突出し、ヘッド本体11からの突出端を形成する。このため、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ニードル部25に噴出口16が形成される。また、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、ニードル部25の外径は、ノズル基部26の外径より小さい。そして、ノズル12A,12Bのそれぞれでは、流路15の延設方向に垂直又は略垂直な断面において、ニードル部25の外周によって囲まれる面積は、ノズル基部26の外周によって囲まれる面積に比べて、小さい。
【0018】
図3は、電界紡糸ヘッド2の1つである電界紡糸ヘッド2Aによってファイバー20の膜を形成している状態を示す。以下、電界紡糸ヘッド2Aによるファイバー20の膜の形成について、説明する。なお、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2によっても、電界紡糸ヘッド2Aと同様にして、ファイバーの膜が形成される。このため、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2によるファイバーの膜の形成については、説明を省略する。図3に示すように、電界紡糸装置1は、電界紡糸ヘッド2に加えて、原料液の供給部3、電源4及び収集体5を備える。図1等では、供給部3、電源4及び収集体5は、省略される。
【0019】
原料液の供給部3は、原料液を電界紡糸ヘッド2Aに供給可能である。供給部3は、原料液の供給源、及び、供給源から電界紡糸ヘッド2Aへの原料液の供給経路を構成する。原料液の供給部3は、収納部31、供給駆動部32、供給調整部33及び供給配管35を備える。収納部31、供給駆動部32、供給調整部33及び供給配管35のそれぞれは、原料液に耐性を有し、ある一例では、収納部31及び供給配管35のそれぞれは、フッ素樹脂等の電気的絶縁性を有する材料から形成される。
【0020】
収納部31は、原料液を収納するタンク等である。原料液は、高分子材料を溶媒に溶解したものである。原料液に含まれる高分子、及び、高分子を溶解させる溶媒は、収集体5の表面に堆積させるファイバー20の種類等に対応させて、適宜に決定される。高分子材料は、特に限定されるものではなく、形成するファイバー20の材質に対応させて適宜に変更可能である。高分子材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリイミド及びポリアミドイミド等を用いることができる。原料液に用いられる溶媒は、高分子材料を溶解することができるものであればよい。溶媒は、溶解させる高分子材料に対応させて適宜に変更可能である。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)等を用いることができる。
【0021】
供給配管35は、収納部31と電界紡糸ヘッド2Aとの間を接続し、原料液の供給流路を形成する。供給駆動部32は、駆動等されることにより、収納部31から供給配管35を通して原料液を電界紡糸ヘッド2Aに供給する。ある一例では、供給駆動部32は、ポンプである。供給調整部33は、電界紡糸ヘッド2Aに供給される原料液の流量及び圧力等を調整する。ある一例では、供給調整部33は、原料液の流量及び圧力等を制御可能な制御弁を備える。この場合、供給調整部33は、原料液の粘度及びノズル12A,12Bの構造等に基づいて、原料液を適宜の流量及び圧力等に調整する。また、ある一例では、供給調整部33は、収納部31から電界紡糸ヘッド2Aへの原料液の供給及び供給停止を切替え可能である。この場合、供給調整部33は、例えば、切替え弁を備える。
【0022】
電源4は、電界紡糸ヘッド2Aに電圧を印加可能である。電界紡糸ヘッド2Aでは、電圧が印加されることにより、ヘッド本体11を介して、所定の極性の電圧が、ノズル12A,12Bのそれぞれに印加される。複数のノズル12A,12Bでは、互いに対して同一の極性の電圧が印加される。電源4によって電界紡糸ヘッド2Aに前述のように電圧が印加され、供給部3によって電界紡糸ヘッド2Aに原料液が供給されることにより、原料液がノズル12A,12B(電界紡糸ヘッド2A)と同一の極性に帯電する。
【0023】
なお、ある一例では、ノズル12A,12Bのそれぞれに電気的に接続される端子(図示しない)が設けられ、電源4は、端子を介してノズル12A,12Bのそれぞれに電圧を印加してもよい。この場合、ヘッド本体11を導電材料から形成する必要がなくなる。また、ノズル12A,12Bのそれぞれに印加される電圧の極性は、プラスであってもよく、マイナスであってもよい。図3等の一例では、電源4は、直流電源であり、ノズル12A,12Bのそれぞれにプラスの電圧を印加する。
【0024】
収集体5は、導電材料から形成される。また、収集体5は、原料液に対して耐性を有し、ある一例では、ステンレスから形成される。収集体5は、電界紡糸ヘッド2Aに対して、ノズル12A,12Bが突出する側に配置され、電界紡糸ヘッド2Aに対して、噴出口16が開口する側に配置される。したがって、収集体5は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、電界紡糸ヘッド2Aに対して、ノズル12A,12Bから原料液が噴出される側に配置される。図3等の一例では、収集体5は接地され、収集体5の対地電圧は0V又は略0Vになる。別のある一例では、電源4又は電源4とは別の電源によって、原料液及び電界紡糸ヘッド2A(ノズル12A,12B)とは反対の極性の電圧が、収集体5に印加される。
【0025】
本実施形態では電界紡糸ヘッド2Aに電圧が印加され、電界紡糸ヘッド2Aに原料液が供給されることにより、原料液は、電界紡糸ヘッド2Aと同一の極性に帯電する。原料液が電界紡糸ヘッド2Aと同一の極性に帯電することにより、電界紡糸ヘッド2A(ノズル12A,12B)の原料液と収集体5との間の電位差によって、原料液は、ノズル12A,12Bのそれぞれの噴出口16から収集体5に向かって噴出される。電界紡糸ヘッド2から原料液が収集体5に向かって噴出されることにより、ファイバー20が収集体5の表面に堆積され、堆積されたファイバー20によってファイバー20の膜が形成される。すなわち、電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)によって、ファイバー20の膜が形成される。なお、ノズル12A,12B(電界紡糸ヘッド2A)に印加される電圧、及び、収集体5に印加される電圧等は、原料液に含まれる高分子材料の種類及び電界紡糸ヘッド2Aの収集体5に対する距離等に対応させて、適宜の大きさに調整される。
【0026】
収集体5は、例えば、板状又はシート状に形成される。収集体5がシート状に形成される場合、ロール等の外周面に巻かれた収集体5にファイバー20を堆積させてもよい。また、収集体5は、移動可能であってもよい。ある一例では、一対の回転ドラム、及び、回転ドラムを駆動させる駆動源が設けられる。駆動源によって回転ドラムが駆動されることにより、ベルトコンベヤーと同様にして、一対の回転ドラムの間を収集体5が移動する。収集体5が移動する(搬送される)ことにより、収集体5の表面においてファイバー20が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。収集体5の表面に形成されたファイバー20の膜は、収集体5から取外される。ファイバー20の膜は、これらに限定されないが、例えば、不織布及びフィルタ等に用いられる。
【0027】
また、ある一例では、収集体5が設けられない。この場合、導電材料から形成される基材が用いられる。そして、前述のように電界紡糸ヘッド2Aに電圧が印加され、原料液が電界紡糸ヘッド2Aに供給されることにより、ノズル12A,12Bのそれぞれの噴出口16から基材に向かって原料液が噴出される。これにより、基材の表面にファイバー20が堆積され、基材の表面にファイバー20の膜が形成される。この場合、基材は、接地されていてもよく、電源4又は電源4とは別の電源によって、電界紡糸ヘッド2A(ノズル12A,12B)及び原料液とは反対の極性の電圧が基材に印加されてもよい。
【0028】
また、別のある一例では、収集体5上に基材が設置される。そして、前述のように電界紡糸ヘッド2Aに電圧が印加され、原料液が電界紡糸ヘッド2Aに供給されることにより、ノズル12A,12Bのそれぞれの噴出口16から収集体5及び基材に向かって原料液が噴出される。これにより、収集体5上に設置される基材の表面にファイバー20が堆積され、基材の表面にファイバー20の膜が形成される。この場合、基材が電気的絶縁性を有する場合でも、基材の表面にファイバー20の膜を形成可能になる。
【0029】
また、収集体5上に基材が設置される場合、基材は、収集体5上を移動可能であってもよい。ある一例では、シート状の基材が巻かれた回転ドラムと、表面にファイバー20の膜が形成された基材を巻き取る回転ドラムと、が設けられる。そして、回転ドラムのそれぞれを回転することにより、収集体5上を基材が移動する。基材が移動する(搬送される)ことにより、基材の表面においてファイバー20が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。なお、基材の表面上にファイバー20の膜を形成する例としては、これに限定されないが、例えば、電池のセパレータ一体型電極の製造が挙げられる。この場合、電極群の負極及び正極の一方が基材として用いられる。そして、基材の表面に形成されるファイバー20の膜が、負極又は正極と一体のセパレータとなる。
【0030】
図1等に示すように、電界紡糸装置1は、清掃ユニット6、ユニット移動部7及び吸引ヘッド8を備える。電界紡糸装置1では、電界紡糸ヘッド2Aを含む電界紡糸ヘッド2によって、前述のようにファイバー20の膜を形成する作業が行われる。そして、電界紡糸装置1において電界紡糸ヘッド2によってファイバー20の膜の形成を行うと、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、特に、ノズル12A,12Bのそれぞれの外表面の噴出口16の近傍等に、ファイバー20、原料液の液滴及び原料液の高分子材料等が付着物として付着することがある。このため、ファイバー20の膜を形成する作業を行った後に、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいてノズル12A,12Bへの付着物を除去する等して、電界紡糸ヘッド2のそれぞれの清掃作業が行われる。清掃ユニット6等は、電界紡糸ヘッド2の清掃作業に用いられる。
【0031】
図4は、電界紡糸ヘッド2の1つである電界紡糸ヘッド2Aへの付着物を、清掃ユニット6を用いて除去している状態を示す。図1及び図4等に示すように、清掃ユニット6は、回転ブラシ61、収納ケース62及び回転駆動部63を備える。清掃ユニット6では、収納ケース62の内部に、回転ブラシ61が収納される収納空洞65が形成される。回転ブラシ61は、回転軸Pを中心として、収納ケース62等に対して回転可能である。回転ブラシ61の回転軸Pは、複数のノズル12Aの配列方向、及び、複数のノズル12Bの配列方向に沿う。したがって、回転ブラシ61の回転軸Pは、電界紡糸装置1の横方向に沿う。好ましくは、回転ブラシ61の横方向の幅は、複数のノズル12Aの全て(の特にニードル部25)、及び、複数のノズル12Bの全て(の特にニードル部25)に当接するよう、複数のノズル12Aの一端から他端まで、及び、複数のノズル12Bの一端から他端までの全体に亘るように設けられる。
【0032】
回転駆動部63は、電動モータ等の駆動部材を備え、駆動部材は、電力が供給されることにより、駆動される。回転駆動部63の駆動部材は、回転ブラシ61に連結される。回転駆動部63の駆動部材が駆動されることにより、駆動部材からの駆動力が回転ブラシ61に伝達され、回転ブラシ61が回転軸Pを中心として回転する。また、収納ケース62の収納空洞65は、開口66において、収納ケース62の外部に対して開口する。収納ケース62の収納空洞65は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、電界紡糸ヘッド2のそれぞれのノズル12A,12Bが突出する側とは反対側へ向かって、開口66において開口する。すなわち、収納空洞65は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、電界紡糸ヘッド2のそれぞれの噴出口16が開口する側とは反対側へ向かって、開口66において開口する。
【0033】
以下、電界紡糸ヘッド2Aへの付着物の除去について、説明する。なお、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2への付着物についても、電界紡糸ヘッド2Aへの付着物と同様にして、清掃ユニット6等を用いて除去される。このため、電界紡糸ヘッド2A以外の電界紡糸ヘッド2によるファイバーの膜の形成については、説明を省略する。
【0034】
図4等に示すように、電界紡糸ヘッド2Aへの付着物の除去においては、ノズル12A,12Bに清掃ユニット6の回転ブラシ61を接触させる。ノズル12A,12Bのそれぞれでは、電界紡糸装置1の奥行き方向について噴出口16が開口する側から、回転ブラシ61が接触する。そして、電界紡糸ヘッド2Aのノズル12A,12Bに回転ブラシ61が接触する状態において、回転ブラシ61を回転させる。この際、回転ブラシ61は、ノズル12Aの配列方向及びノズル12Bの配列方向に沿う回転軸Pを中心として、回転する。これにより、電界紡糸ヘッド2Aのノズル12A,12Bのそれぞれでは、回転ブラシ61によって、ファイバー20及び原料液の液滴等の付着物が除去される。
【0035】
ユニット移動部7は、回転ブラシ61を含む清掃ユニット6を電界紡糸ヘッド2(電界紡糸ヘッド2Aを含む)等に対して移動させる機構を構成する。清掃ユニット6は、ユニット移動部7によって、電界紡糸装置1の高さ方向に移動可能である。図1等の一例では、実線で示す位置と破線に示す位置との間で、清掃ユニット6は、電界紡糸装置1の高さ方向に沿って移動可能である。このため、回転ブラシ61を含む清掃ユニット6の移動方向は、回転ブラシ61の回転軸Pに対して交差する(垂直又は略垂直である)。清掃ユニット6が前述のように移動するため、回転ブラシ61は、いずれの電界紡糸ヘッド2のノズル12A,12Bへも、接触可能となる。なお、図1の実線で示す位置では、清掃ユニット6の回転ブラシ61は、電界紡糸ヘッド2Aのノズル12A,12Bに接触する。回転ブラシ61は、回転軸Pに対して交差する方向に移動することにより、電界紡糸ヘッド2Aのノズル12A,12Bに接触可能な位置に移動する。このとき、回転ブラシ61の回転軸P方向の幅を複数のノズル12A及び12Bのそれぞれのニードル部25の全体に亘るように設定すれば、回転ブラシ61は、接触可能な位置において、1つの電界紡糸ヘッド2に設けられている全てのノズル12A、12B(の特にニードル部25)に接触する。この場合、電界紡糸ヘッド2Aの全てのノズル12A,12Bの(特にニードル部25の)それぞれに回転ブラシ61が接触する状態において、回転ブラシ61が回転軸Pを中心に回転する。
【0036】
ユニット移動部7は、移動駆動部71及び駆動力伝達部72を備える。移動駆動部71は、電動モータ等の駆動部材を備え、駆動部材は、電力が供給されることにより、駆動される。駆動力伝達部72は、移動駆動部71と清掃ユニット6との間を連結する。駆動力伝達部72は、移動駆動部71の駆動部材で発生した駆動力を清掃ユニット6に伝達することにより、清掃ユニット6を移動させる。
【0037】
また、電界紡糸装置1では、吸引ヘッド8は、いずれの電界紡糸ヘッド2からも、高さ方向に離れて位置する。図1等の一例では、吸引ヘッド8は、電界紡糸装置1の高さ方向について、電界紡糸ヘッド2のいずれに対しても、下側に位置する。また、図1等の一例では、ユニット移動部7によって、清掃ユニット6が破線で示す位置まで移動することにより、吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続される。この際、吸引ヘッド8は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、収納空洞65の開口66が開口する側から、清掃ユニット6に接続される。
【0038】
図5は、吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続された状態を示す。図5等に示すように、吸引ヘッド8の内部には、吸引空洞81が形成される。吸引空洞81は、吸引口82で吸引ヘッド8の外部に対して開口する。吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続された状態では、吸引口82は、回転ブラシ61に近接する。この際、吸引口82は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、収納空洞65の開口66が開口する側から、回転ブラシ61に近接する。
【0039】
また、電界紡糸装置1は、吸引部9を備える。吸引部9は、吸引ヘッド8の吸引口82からの吸引における吸引源、及び、吸引ヘッド8から吸引源への吸引経路を構成する。吸引部9は、吸引駆動部91、回収部92及び吸引配管93を備える。吸引駆動部91は、駆動等されることにより、吸引ヘッド8の吸引口82から吸引物を吸引させる。前述のように吸引駆動部91が駆動(吸引駆動)されることにより、吸引ヘッド8の外部から吸引口82を通して吸引空洞81へ向かう吸引力が、作用する。吸引駆動部91は、ポンプ又はブロワー等である。吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続された状態、すなわち、吸引口82が回転ブラシ61に近接した状態で吸引駆動部91を駆動することにより、回転ブラシ61及び収納空洞65から吸引ヘッド8の吸引口82に向かう吸引力が、作用する。
【0040】
回収部92は、吸引口82から吸引された吸引物が溜められるタンク等である。吸引部9では、吸引駆動部91と回収部92との間にフィルター(図示しない)等が設けられ、吸引物の吸引駆動部91への流入が防止される。吸引配管93は、吸引ヘッド8と回収部92との間を接続し、吸引物の吸引流路を形成する。また、図5等の一例の吸引ヘッド8では、吸引口82とは反対側から吸引配管93が接続される。
【0041】
また、吸引ヘッド8では、吸引空洞81に、接触プレート83が形成される。接触プレート83は、電界紡糸装置1の高さ方向について、いずれの電界紡糸ヘッド2からも離れて位置する。吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続された状態では、接触プレート83は、回転ブラシ61に接触する。この際、接触プレート83は、電界紡糸装置1の奥行き方向について、収納空洞65の開口66が開口する側から、回転ブラシ61に接触する。
【0042】
前述のように、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいてノズル12A,12Bへの付着物を回転ブラシ61によって除去すると、ノズル12A,12Bからの除去物等が、回転ブラシ61に付着する。このため、回転ブラシ61に付着した付着物を、定期的に除去する必要がある。回転ブラシ61への付着物を除去する際には、移動駆動部71を駆動する等して、吸引ヘッド8に接続可能な位置まで、清掃ユニット6を移動させる。これにより、吸引ヘッド8が清掃ユニット6に接続され、接触プレート83が回転ブラシ61に接触する。
【0043】
そして、接触プレート83が回転ブラシ61に接触する状態で、回転駆動部63を駆動させ、回転軸Pを中心として回転ブラシ61を回転させる。また、吸引駆動部91を駆動させ、回転ブラシ61及び収納空洞65から吸引口82へ向かう吸引力を作用させる。接触プレート83が回転ブラシ61に接触する状態で回転ブラシ61を回転することにより、回転ブラシ61への付着物が除去される。また、収納空洞65等から吸引口82へ向かう吸引力によって、回転ブラシ61からの除去物が、吸引口82等を通して吸引空洞81に吸引される。そして、吸引空洞81に吸引された除去物(吸引物)は、吸引配管93の内部の吸引ダクト等に流入し(図5の矢印A1)、回収部92に回収される。
【0044】
図3及び図5等に示すように、電界紡糸装置1は、制御部21及びユーザインタフェース22を備える。なお、図1及び図4等では、制御部21及びユーザインタフェース22は、省略する。制御部(コントローラ)21は、例えば、コンピュータ等である。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。制御部21は、集積回路等を1つのみ備えてもよく、集積回路等を複数備えてもよい。制御部21は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。制御部21は、供給駆動部32の駆動、供給調整部33の作動、電源4からの出力、回転駆動部63の駆動、及び、吸引駆動部91の駆動等を制御する。また、制御部21は、移動駆動部71の駆動を制御することにより、清掃ユニット6の移動を制御し、清掃ユニット6の位置を調整する。
【0045】
ユーザインタフェース22は、操作部材を備える。操作部材では、電界紡糸装置1の作動に関する操作指令が、作業者等によって入力される。操作部材としては、ボタン、ダイヤル、ディスプレイ及びタッチパネル等が挙げられる。制御部21は、操作部材で入力された操作指令に基づいて、制御を行う。また、ユーザインタフェース22は、作業者等に情報を告知する告知部を備えていてもよい。この場合、制御部21は、作業者等に告知することが必要な情報を、告知部によって告知させる。告知部は、画面表示、音の発信及びライトの点灯等によって、告知する。
【0046】
図6及び図7は、清掃ユニット6の回転ブラシ61を示す。図6及び図7に示すように、回転ブラシ61では、回転軸Pに沿う軸方向(矢印C1及び矢印C2で示す方向)、及び、回転軸Pの軸回り方向である周方向(矢印P1及び矢印P2で示す方向)が規定される。図6では、回転ブラシ61は、軸方向の一方側から視た状態で示され、図7では、回転ブラシ61は、軸方向に対して平行又は略平行な断面で示される。また、図6では、回転ブラシ61に電界紡糸ヘッド2Aのノズル12A,12Bが接触している状態が、示される。回転ブラシ61は、回転シャフト101及びブラシ部102を備える。回転シャフト101は、回転軸Pを中心軸として、軸方向に沿って延設される。
【0047】
ブラシ部102は、回転シャフト101の外周面に形成される。電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、ノズル12A,12Bのそれぞれのニードル部25に回転ブラシ61のブラシ部102を接触させた状態で回転ブラシ61を回転することにより、ノズル12A,12Bへの付着物が除去される。ブラシ部102は、多数のブラシ毛から形成される。ブラシ部102では、ブラシ毛のそれぞれは、回転シャフト101の外周面から回転ブラシ61の外周側へ向かって延設される。回転ブラシ61の外周は、ブラシ部102の外周によって、すなわち、ブラシ毛の回転シャフト101から遠位側の端によって、形成される。
【0048】
回転シャフト101は、外径D1を有し、回転ブラシ61は、外径D2を有する。回転ブラシ61の外径D2は、回転シャフト101の外径D1より大きい。図6及び図7等の一例では、ブラシ部102の外径は、回転ブラシ61の外径D2と同一又は略同一の大きさとなる。また、ブラシ部102は、回転軸Pに沿う軸方向についての寸法L1を有し、回転ブラシ61は、回転軸Pに沿う軸方向についての寸法L2を有する。回転軸Pに沿う軸方向についての回転ブラシ61の寸法L2は、回転軸Pに沿う軸方向についてのブラシ部102の寸法L1より大きい。図7等の一例では、回転軸Pに沿う軸方向についての回転シャフト101の寸法は、回転軸Pに沿う軸方向についての回転ブラシ61の寸法L2と同一又は略同一の大きさとなる。
【0049】
また、ブラシ部102を形成する多数のブラシ毛のそれぞれでは、毛径及び毛丈hが規定される。毛径は、ブラシ毛単体での太さを示すパラメータである。また、ブラシ毛のそれぞれでは、毛丈hは、回転シャフト101の外周面から回転シャフト101に対して遠位側の端までの寸法に相当する。また、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいてノズル12A,12Bへの付着物を回転ブラシ61によって除去している状態では、ノズル12A,12Bのそれぞれは、ブラシ部102の外周(回転ブラシ61の外周)からブラシ部102の内部に押込まれ、ブラシ部102の内部に挿入される。したがって、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいてノズル12A,12Bへの付着物を回転ブラシ61によって除去する作業では、回転ブラシ61へのノズル12A,12Bの押込み寸法(挿入寸法)αが、規定される。なお、ブラシ毛のそれぞれの毛丈hは、図6及び図7に示され、ノズル12A,12Bの押込み寸法αは、図6に示される。
【0050】
ここで、ノズル12A,12Bのそれぞれにおいて、ニードル部25の外径が0.6mmで、流路15の延設方向に沿ったニードル部25の寸法を5mm以上15mm以下とする。この場合、ブラシ毛のそれぞれでは、毛径が0.2mm以上0.4mm以下であり、毛丈hが15mm以上20mm以下であることが、好ましい。また、回転ブラシ61へのノズル12A,12Bの押込み寸法αは、7mm以上12mm以下であることが、好ましい。
【0051】
図8及び図9は、ブラシ部102を示す。図8及び図9では、互いに対して、視る方向及び示される領域等が異なる。図8及び図9等に示すように、ブラシ部102には、複数の毛束103が形成される。毛束103のそれぞれでは、複数のブラシ毛が束ねられる。ある一例では、10本程度のブラシ毛を束ねることにより、1つの毛束103が形成される。ブラシ部102では、毛束103のそれぞれは、回転シャフト101の外周面に植込まれる。毛束103のそれぞれは、毛束径r1を有する。毛束径r1は、毛束103の太さを示すパラメータであり、図9に示される。
【0052】
また、本実施形態では、ブラシ部102に、複数の毛束列(第1の毛束列)105A及び複数の毛束列(第2の毛束列)105Bが形成される。毛束列105Aのそれぞれでは、複数の毛束103が、回転軸Pの軸回りに所定のピッチ(第1のピッチ)δaで並んで配置される。そして、毛束列105Bのそれぞれでは、複数の毛束103が、回転軸Pの軸回りに毛束列105Aと同一の大きさの所定のピッチδaで並んで配置される。このため、毛束列105A,105Bのそれぞれは、複数の毛束103が回転ブラシ61の周方向に並んで配置される周方向毛束列となる。毛束列105A,105Bのそれぞれは、回転軸Pの軸回りについて、全周に渡って形成される。また、毛束列105Aのそれぞれにおける毛束103の数は、毛束列105Bのそれぞれにおける毛束103の数と同一である。
【0053】
また、ブラシ部102では、回転軸Pに沿う軸方向について、毛束列105A及び毛束列105Bが交互に配置される。このため、毛束列105Aのそれぞれは、回転軸Pに沿う軸方向について、毛束列105Bの対応する1つ又は2つと隣合って配置される。また、毛束列105Bでは毛束列105Aに対して、複数の毛束103が、回転軸Pの軸回り(回転ブラシ61の周方向)にずれて配置される。毛束列105Bの毛束列105Aに対する回転軸Pの軸回りの複数の毛束103のずれは、前述の所定のピッチδaより小さい。図8等の一例では、毛束列105Bにける毛束列105Aに対する複数の毛束103の回転軸Pの軸回りのずれは、前述の所定のピッチδaの半分値δa/2となる。前述のように毛束列105A,105Bが形成されるため、回転軸Pに沿う軸方向について隣合う2つの毛束列105A,105Bによって、複数の毛束103が回転軸Pの軸回りに沿ってジグザグ状に配置される配置構造が形成される。
【0054】
また、ブラシ部102には、複数の毛束列(第3の毛束列)106A及び複数の毛束列(第4の毛束列)106Bが形成される。毛束列106Aのそれぞれでは、複数の毛束103が、回転軸Pに沿う軸方向に所定のピッチ(第2のピッチ)δbで並んで配置される。そして、毛束列106Bのそれぞれでは、複数の毛束103が、回転軸Pに沿う軸方向に毛束列106Aと同一の大きさの所定のピッチδbで並んで配置される。このため、毛束列106A,106Bのそれぞれは、複数の毛束103が回転ブラシ61の軸方向に並んで配置される軸方向毛束列となる。毛束列106Aのそれぞれは、毛束列105Aを構成する毛束103から形成され、毛束列105Aと同一の数の毛束103から構成される。また、毛束列106Bのそれぞれは、毛束列105Bを構成する毛束103から形成され、毛束列105Bと同一の数の毛束103から構成される。
【0055】
ブラシ部102では、回転軸Pの軸回りについて、毛束列106A及び毛束列106Bが交互に配置される。このため、毛束列106Aのそれぞれは、回転軸Pに沿う軸方向について、毛束列106Bの対応する2つと隣合って配置される。また、毛束列106Bでは毛束列106Aに対して、複数の毛束103が、回転軸Pに沿う軸方向にずれて配置される。毛束列106Bの毛束列106Aに対する回転ブラシ61の軸方向の複数の毛束103のずれは、前述の所定のピッチδbより小さい。図9等の一例では、毛束列106Bにける毛束列106Aに対する複数の毛束103の回転軸Pに沿う軸方向のずれは、前述の所定のピッチδbの半分値δb/2となる。前述のように毛束列106A,106Bが形成されるため、回転軸Pの軸回りについて隣合う2つの毛束列106A,106Bによって、複数の毛束103が回転ブラシ61の軸方向に沿ってジグザグ状に配置される配置構造が形成される。
【0056】
本実施形態の電界紡糸装置1では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、回転ブラシ61は、複数のノズル12A,12Bに噴出口16が開口する側から接触可能である。そして、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、回転ブラシ61は、ノズル12A,12Bに接触する状態で、ノズル12Aの配列方向及びノズル12Bの配列方向に沿う回転軸Pを中心として回転可能である。このため、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、配列方向(電界紡糸装置1の横方向)に配列される複数のノズル12A、及び、配列方向に配列される複数のノズル12Bに同時に、回転ブラシ61を接触させることが可能になる。したがって、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、ノズル12A,12Bへの付着物の除去において、ノズル12Aの配列方向へ回転ブラシ61を移動させる必要はない。このため、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれへの付着物を除去する作業の短時間で行うことが可能になり、電界紡糸ヘッド2のそれぞれの清掃作業の効率が向上する。
【0057】
また、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、回転ブラシ61がノズル12A,12Bに接触する状態で回転軸Pを中心として回転ブラシ61を回転し、ノズル12A,12Bへの付着物を除去する。回転ブラシ61の回転している状態で毛束103がノズル12A,12Bのいずれかに衝突すると、毛束103は変形する。そして、変形した毛束103を元の形状に戻す力が、衝突したノズル(12A,12Bのいずれか)に作用する。このため、回転ブラシ61を用いてノズル12A,12Bへの付着物を前述のように除去することにより、毛束103を元の形状に戻す力によって、ノズル12A,12Bへの付着物が適切に除去される。したがって、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれへの付着物を除去する作業の適切に行われ、電界紡糸ヘッド2のそれぞれの清掃作業が適切に行われる。
【0058】
前述のように、本実施形態では、複数のノズル12Aが配列方向に配列され、かつ、複数のノズル12Bが配列方向に配列する電界紡糸ヘッド2であっても、効率的かつ適切に清掃される。ノズル12A,12Bへの付着物等が適切に除去されため、電界紡糸ヘッド2を清掃した後においてファイバー20の膜を形成する際に、ノズル12A,12Bのそれぞれからの原料液の噴出が安定化するまでの時間が、短くなる。これにより、電界紡糸ヘッド2のそれぞれを用いてファイバー20の膜の形成する作業における作業効率が、向上する。
【0059】
また、本実施形態では、ノズル12A,12Bへの付着物の除去に、ファイバー20及び原料液の高分子材料を溶解させる溶剤等は、用いられない。このため、電界紡糸ヘッド2の清掃後において、溶剤等がノズル12A,12Bのそれぞれの流路15に滞留することはない。したがって、電界紡糸ヘッド2を清掃した後においてファイバー20の膜を形成する際に、ノズル12A,12Bのそれぞれからの原料液の噴出が安定化するまでの時間が、さらに適切に短くなる。
【0060】
また、本実施形態では、電界紡糸ヘッド2から離れた位置に接触プレート83が設けられ、接触プレート83は、回転ブラシ61のブラシ部102に接触可能である。そして、回転ブラシ61は、接触プレート83に接触した状態において、回転軸Pを中心として回転可能である。接触プレート83が回転ブラシ61に接触する状態で回転ブラシ61を回転することにより、回転ブラシ61への付着物が適切に除去される。
【0061】
また、本実施形態では、吸引ヘッド8の吸引空洞81に接触プレート83が設けられる。そして、吸引ヘッド8の吸引口82が回転ブラシ61に近接した状態において吸引駆動部91を駆動することにより、回転ブラシ61から吸引口82へ向かう吸引力が作用する。このため、接触プレート83の回転ブラシ61への接触によって回転ブラシ61から除去された除去物が、吸引口82等を通して吸引空洞81に適切に吸引される。そして、吸引空洞81に吸引された除去物(吸引物)は、回収部92に適切に回収される。
【0062】
また、本実施形態の回転ブラシ61では、回転軸Pに沿う軸方向について、毛束列(第1の毛束列)105A及び毛束列(第2の毛束列)105Bが交互に配置される。そして、毛束列105Bでは毛束列105Aに対して、複数の毛束103が、回転軸Pの軸回り(回転ブラシ61の周方向)にずれて配置される。また、回転ブラシ61では、回転軸Pの軸回りについて隣合う2つの毛束列106A,106Bによって、複数の毛束103が回転ブラシ61の軸方向に沿ってジグザグ状に配置される配置構造が形成される。このため、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、長手方向に沿ってノズル12A,12Bがジグザグ状に配置される構成であっても、ノズル12A,12Bのそれぞれに毛束103が接触し易くなる。したがって、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、ノズル12A,12Bへの付着物がさらに適切に除去される。
【0063】
(変形例)
図10及び図11に示す第1の変形例では、チャンネル110に沿って多数の毛束103が配列された線状ブラシによって、回転ブラシ61のブラシ部102が形成される。図10は、回転ブラシ61におけるブラシ部102の延設状態を示し、図11は、回転ブラシ61を軸方向に対して平行又は略平行な断面で示す。本変形例では、線状ブラシであるブラシ部102は、回転シャフト101の外周面に、回転軸Pを中心とする螺旋状に延設される(図10の矢印A2)。本変形例でも、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、回転ブラシ61は、ノズル12A,12Bに接触する状態で、ノズル12Aの配列方向及びノズル12Bの配列方向に沿う回転軸Pを中心として回転可能である。このため、前述の実施形態等と同様に、複数のノズル12Aが配列方向に配列され、かつ、複数のノズル12Bが配列方向に配列する電界紡糸ヘッド2であっても、効率的かつ適切に清掃される。
【0064】
図12に示す第2の変形例では、2つの吸引ヘッド8A,8Bが設けられる。本変形例では、吸引ヘッド8A,8Bは、清掃ユニット6と一緒に、電界紡糸装置1の高さ方向に移動する。図12は、電界紡糸ヘッド2の1つである電界紡糸ヘッド2Aへの付着物を、清掃ユニット6を用いて除去している状態を示す。本変形例でも、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、複数のノズル12A,12Bは、収納空洞65の開口66が開口する側から、回転ブラシ61に接触する。そして、前述の実施形態等と同様に、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、複数のノズル12A,12Bが回転ブラシ61に接触する状態で回転軸Pを中心として回転ブラシ61を回転させることにより、ノズル12A,12Bへの付着物が除去される。
【0065】
本変形例では、吸引ヘッド8A,8Bが清掃ユニット6と一緒に移動するため、吸引ヘッド8A,8Bのそれぞれの吸引口82は、常時、回転ブラシ61に近接した位置に位置する。ただし、吸引ヘッド8A,8Bは、回転軸Pの軸回り(回転ブラシ61の周方向)について、収納空洞65の開口66から離れて位置する。図12等の一例では、吸引ヘッド8A,8Bは、回転軸Pの軸回りについて、開口66から180°又は略180°離れて位置する。したがって、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて複数のノズル12A,12Bが回転ブラシ61に接触する状態でも、吸引ヘッド8A,8B(吸引口82)は、回転軸Pの軸回りについて、電界紡糸ヘッド2(ノズル12A,12B)から離れて位置する。
【0066】
また、本変形例の電界紡糸装置1には、接触プレート83の代わりに噴出ヘッド10が設けられる。噴出ヘッド10は、気体を噴出可能な噴出口111を有する。噴出ヘッド10は、清掃ユニット6及び吸引ヘッド8A,8Bと一緒に、電界紡糸装置1の高さ方向に移動可能である。また、噴出ヘッド10の噴出口111は、常時、回転ブラシ61に近接した位置に位置する。ただし、噴出ヘッド10は、回転軸Pの軸回り(回転ブラシ61の周方向)について、収納空洞65の開口66から離れて位置する。図12等の一例では、噴出ヘッド10は、回転軸Pの軸回りについて、開口66から180°又は略180°離れて位置する。したがって、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて複数のノズル12A,12Bが回転ブラシ61に接触する状態でも、噴出ヘッド10(噴出口111)は、回転軸Pの軸回りについて、電界紡糸ヘッド2(ノズル12A,12B)から離れて位置する。また、噴出ヘッド10は、接触プレート83とは異なり、回転ブラシ61のブラシ部102に接触しない。
【0067】
本変形例では、電界紡糸装置1は、給気部120を備える。給気部120は、噴出ヘッド10への気体の供給源、及び、気体の供給源から噴出ヘッド10への給気経路を構成する。給気部120は、収納部121、給気駆動部122及び給気配管123を備える。収納部121は、気体を収納するタンク等である。給気配管123は、収納部121と噴出ヘッド10との間を接続し、給気流路を形成する。給気駆動部122は、駆動等されることにより、収納部121から給気配管123を通して気体を噴出ヘッド10に供給する。ある一例では、給気駆動部122は、ポンプである。また、本変形例では、また、制御部21は、給気駆動部122の駆動を制御する。
【0068】
本変形例では、給気駆動部122を駆動することにより、噴出ヘッド10に気体が供給され、噴出ヘッド10の噴出口111から回転ブラシ61に、気体が噴出される。図13は、噴出ヘッド10から回転ブラシ61に気体が噴出されている状態を示す。図13に示すように、噴出ヘッド10から回転ブラシ61の毛束103に気体が噴出されると(矢印A4)、気体が噴出された毛束103において、ブラシ毛112が互いに対して広がる。これにより、回転ブラシ61のブラシ毛112等に付着した付着物が、除去される。
【0069】
本変形例では、回転ブラシ61への付着物の除去においては、回転駆動部63を駆動させ、回転軸Pを中心として回転ブラシ61を回転させとともに、吸引駆動部91及び給気駆動部122を駆動させる。これにより、収納空洞65において、噴出ヘッド10の噴出口111から回転ブラシ61のブラシ部102を通って吸引ヘッド8A,8Bのそれぞれの吸引口82へ向かう流れが、形成される(図12の矢印A3)。噴出ヘッド10からの気体の噴出によって回転ブラシ61から除去された付着物(除去物)は、収納空洞65等から吸引口82へ向かう吸引力によって、吸引ヘッド8A,8Bのそれぞれの吸引空洞81に吸引される。そして、吸引空洞81に吸引された除去物(吸引物)は、吸引配管93の内部の吸引ダクト等に流入し、回収部92に回収される。
【0070】
本変形例でも、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、回転ブラシ61は、ノズル12A,12Bに接触する状態で、ノズル12Aの配列方向及びノズル12Bの配列方向に沿う回転軸Pを中心として回転可能である。このため、前述の実施形態等と同様に、複数のノズル12Aが配列方向に配列され、かつ、複数のノズル12Bが配列方向に配列する電界紡糸ヘッド2であっても、効率的かつ適切に清掃される。また、本変形例では、噴出ヘッド10から回転ブラシ61に気体が噴出させ、回転ブラシ61の毛束103においてブラシ毛112を互いに対して広げることにより、毛束103への付着物を回転ブラシ61から除去する。このため、回転ブラシ61への付着物がさらに適切に除去される。
【0071】
また、本変形例では、吸引ヘッド8A,8B及び噴出ヘッド10が清掃ユニット6と一緒に移動する。そして、制御部21は、ある1つの電界紡糸ヘッド2(2A)のノズル12A,12Bが回転ブラシ61に接触する状態において、回転ブラシ61を回転させると同時に、吸引駆動部91及び給気駆動部122を駆動させることが可能である。このため、本変形例では、ある1つの電界紡糸ヘッド2(2A)のノズル12A,12Bへの付着物の除去と並行して、回転ブラシ61への付着物を除去及び回転ブラシ61からの除去物の回収を行うことが可能となる。
【0072】
また、ある変形例では、図5の一例と同様に吸引ヘッド8及び接触プレート83が設けられる構成において、吸引ヘッド8及び接触プレート83が清掃ユニット6と一緒に移動可能であってもよい。この場合も、図12及び図13の変形例等と同様に、ある1つの電界紡糸ヘッド2(2A)のノズル12A,12Bへの付着物の除去と並行して、回転ブラシ61への付着物を除去及び回転ブラシ61からの除去物の回収を行うことが可能となる。
【0073】
また、ある変形例では、図12の変形例と同様に吸引ヘッド8及び噴出ヘッド10が設けられる構成において、吸引ヘッド8及び噴出ヘッド10は清掃ユニット6と一緒に移動しなくてもよい。この場合、吸引ヘッド8及び噴出ヘッド10は、いずれの電界紡糸ヘッド2からも、高さ方向に離れて位置する。そして、移動駆動部71を駆動させることにより、吸引ヘッド8が接続され、かつ、噴出ヘッド10から回転ブラシ61に気体を噴出可能な位置まで、清掃ユニット6を移動させる。
【0074】
また、ある変形例では、電界紡糸装置1は、吸引ヘッド8、接触プレート83及び噴出ヘッド10の全てを備える。この場合、吸引ヘッド8、接触プレート83及び噴出ヘッド10は、清掃ユニット6と一緒に移動可能であってもよく、清掃ユニット6と一緒に移動しなくてもよい。
【0075】
また、ノズル(12A,12B)によって形成されるノズル列の数、及び、ノズル(12A,12B)のそれぞれの形状等は、前述の実施形態等に限るものではない。ある変形例では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、ヘッド本体11の外周面に、複数のノズルが配列されるノズル列が1つのみ形成されてもよい。また、別のある変形例では、電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、ヘッド本体11の外周面に、複数のノズルが配列されるノズル列が3つ以上形成されてもよい。また、電界紡糸ヘッド2の数も、前述の実施形態等に限るものではない。
【0076】
ただし、いずれの変形例においても、電界紡糸ヘッド2は1つ以上設けられ、電界紡糸ヘッド2のそれぞれでは、複数のノズルが配列方向に配列される。そして、回転ブラシ61は、噴出口16が開口する側から配列される複数のノズルに接触する。そして、回転ブラシ61は、複数のノズルに接触した状態において、複数のノズルの配列方向に沿う回転軸Pを中心として回転可能である。
【0077】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、回転ブラシは、複数のノズルに接触する状態において、複数のノズルの配列方向に沿う回転軸を中心として回転可能である。これにより、複数のノズルが配列方向に配列された電界紡糸ヘッドを効率的かつ適切に清掃する電界紡糸装置を提供することができる。
【0078】
また、これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、複数のノズルに回転ブラシが接触する状態において、複数のノズルの配列方向に沿う回転軸を中心として回転ブラシを回転させる。これにより、複数のノズルが配列方向に配列された電界紡糸ヘッドを効率的かつ適切に清掃する電界紡糸ヘッドの清掃方法を提供することができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]配列方向に配列される複数のノズルを備え、前記複数のノズルのそれぞれに、供給された原料液を噴出可能な噴出口が形成される電界紡糸ヘッドと、
前記噴出口が開口する側から前記複数のノズルに接触可能であり、前記複数のノズルに接触する状態において、前記複数のノズルの前記配列方向に沿う回転軸を中心として回転可能な回転ブラシと、
を具備する、電界紡糸装置。
[2]吸引口を有し、前記吸引口が前記回転ブラシに近接可能な吸引ヘッドと、
前記吸引ヘッドの前記吸引口が前記回転ブラシに近接した状態において駆動されることにより、前記回転ブラシから前記吸引口へ向かう吸引力を作用させる吸引駆動部と、
をさらに具備する、[1]の電界紡糸装置。
[3]駆動されることにより、前記回転ブラシを前記回転軸に対して交差する方向に移動させ、前記電界紡糸ヘッドの前記複数のノズルに接触可能な位置へ前記回転ブラシを移動させる移動駆動部をさらに具備する、[1]又は[2]の電界紡糸装置。
[4]前記電界紡糸ヘッドから離れた位置に配置され、前記回転ブラシに接触可能な接触プレートをさらに具備する、[1]乃至[3]のいずれか1つの電界紡糸装置。
[5]前記電界紡糸ヘッドから離れた位置に配置され、前記回転ブラシに向かって気体を噴出する噴出ヘッドをさらに具備する、[1]乃至[4]のいずれか1つの電界紡糸装置。
[6]前記回転ブラシは、複数の第1の毛束列及び複数の第2の毛束列を備えるとともに、前記回転ブラシでは、前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列は、前記回転軸に沿う方向に交互に配置され、
前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列のそれぞれは、複数の毛束を備えるとともに、前記第1の毛束列及び前記第2の毛束列のそれぞれでは、前記複数の毛束が前記回転軸の軸回りに所定のピッチで並んで配置され、
前記第2の毛束列では前記第1の毛束列に対して、前記複数の毛束は、前記回転軸の軸回りにずれて配置される、
[1]乃至[5]のいずれか1つの電界紡糸装置。
[7]配列方向に配列される複数のノズルを備え、前記複数のノズルのそれぞれに、供給された原料液を噴出可能な噴出口が形成される電界紡糸ヘッドの清掃方法であって、
前記噴出口が開口する側から前記複数のノズルに回転ブラシを接触させることと、
前記複数のノズルに前記回転ブラシが接触する状態において、前記複数のノズルの前記配列方向に沿う回転軸を中心として前記回転ブラシを回転させることと、
を具備する、清掃方法。
【符号の説明】
【0080】
1…電界紡糸装置、2,2A…電界紡糸ヘッド、3…供給部、4…電源、5…収集体、6…清掃ユニット、7…ユニット移動部、8,8A,8B…吸引ヘッド、9…吸引部、10…噴出ヘッド、11…ヘッド本体、12A,12B…ノズル、15…流路、16…噴出口、21…制御部、61…回転ブラシ、62…収納ケース、63…回転駆動部、71…移動駆動部、82…吸引口、91…吸引駆動部、102…ブラシ部、103…毛束、105A,105B,106A,106B…毛束列、111…噴出口、112…ブラシ毛、120…給気部、122…給気駆動部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13