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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 1/68 20250101AFI20250106BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20250106BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20250106BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20250106BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20250106BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 547
H01L21/88 J
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020183656
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073584
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0057814(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221678(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0036051(US,A1)
【文献】国際公開第2020/080291(WO,A1)
【文献】特開2008-218522(JP,A)
【文献】特開2014-138093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224852(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371883(US,A1)
【文献】特開2011-245761(JP,A)
【文献】特開2018-006418(JP,A)
【文献】特開2012-099718(JP,A)
【文献】特開平07-263775(JP,A)
【文献】特開昭63-015442(JP,A)
【文献】特開2007-074727(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/33
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 21/822
H01L 23/522
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された溝と、基板の内部に形成された、前記溝につながる空洞と、を有する前記基板と、
前記溝及び前記空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
前記少なくとも1層の導電層及び前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続されていない前記導電層または前記第1電極に電気的に接続されていない前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、
を備え
前記第1主面に垂直な方向から見た時に、前記溝及び前記空洞は、ストライプ模様をそれぞれ形成し、
前記第1主面に垂直な方向から見た時に、前記溝の長手方向と前記空洞の長手方向は交差している
コンデンサ。
【請求項2】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された溝と、基板の内部に形成された、前記溝につながる空洞と、を有する前記基板と、
前記溝及び前記空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
前記少なくとも1層の導電層及び前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続されていない前記導電層または前記第1電極に電気的に接続されていない前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、
を備え、
前記空洞の一部が前記第2主面に表出している
コンデンサ。
【請求項3】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された溝と、基板の内部に形成された、前記溝につながる空洞と、を有する前記基板と、
前記溝及び前記空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
前記少なくとも1層の導電層及び前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続されていない前記導電層または前記第1電極に電気的に接続されていない前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、
を備え、
前記基板が絶縁体である
コンデンサ。
【請求項4】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された溝と、基板の内部に形成された、前記溝につながる空洞と、を有する前記基板と、
前記溝及び前記空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
前記少なくとも1層の導電層及び前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続されていない前記導電層または前記第1電極に電気的に接続されていない前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、
を備え、
前記溝又は空洞の表面が(110)面又は(111)面と等価な面である
コンデンサ。
【請求項5】
前記第1主面に垂直な方向から見た時に、前記溝又は前記空洞は、円形のドットの繰り返し模様を形成している請求項1~4のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記第1主面に垂直な方向から見た時に、前記溝及び前記空洞は、ストライプ模様をそれぞれ形成している請求項2~4のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記溝及び前記空洞の少なくとも一方の幅であって、前記第1主面に平行な方向の前記幅は、前記第1主面から前記第2主面へ近づくほど、広くなっている請求項1~のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記溝及び前記空洞の少なくとも一方の幅であって、前記第1主面に平行な方向の前記幅は、前記第1主面から前記第2主面へ近づくほど、狭くなっている請求項1~のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項9】
全ての前記空洞と前記溝が連結されている請求項1~のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記溝及び前記空洞の表面に、複数の誘電層及び複数の導電層が交互に積層されている請求項1~のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記誘電層にシリコン酸化膜が用いられている請求項1~10のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記誘電層にシリコン窒化膜が用いられている請求項1~11のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記導電層にポリシリコン膜が用いられている請求項1~12のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項14】
前記導電層に金属が用いられている請求項1~12のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項15】
前記基板が導電体である請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項16】
前記基板がシリコン基板である請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項17】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された溝と、基板の内部に形成された、前記溝につながる空洞と、を有する前記基板と、
前記溝及び前記空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
前記少なくとも1層の導電層及び前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続されていない前記導電層または前記第1電極に電気的に接続されていない前記基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、
を備えるコンデンサを製造する方法であって、
前記溝が形成された第1基板と前記空洞が形成された第2基板を接合して前記基板を形成するコンデンサの製造方法。
【請求項18】
前記第1基板と前記第2基板を熱拡散接合によって接合する請求項17に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項19】
前記第1基板と前記第2基板を接着剤を用いて接合する請求項17に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項20】
前記溝及び前記空洞をドライエッチングで形成する請求項17~19のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項21】
前記溝及び前記空洞をウェットエッチングで形成する請求項17~19のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項22】
前記誘電層を減圧CVD法で形成する請求項17~21のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項23】
前記誘電層を原子層堆積法で形成する請求項17~21のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項24】
前記導電層を原子層堆積法で形成する請求項17~23のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項25】
前記導電層を有機金属気相成長法で形成する請求項17~23のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項26】
前記導電層をメッキ成長で形成する請求項17~23のいずれか一項に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の表面に互いに平行な複数の第1の溝を形成し、半導体基板の裏面に互いに平行な複数の第2の溝を形成し、第1の溝及び第2の溝の内部に導電体膜と誘電体膜を交互に積層して成るコンデンサ構造体が知られている(特許文献1参照)。第1の溝の長手方向と第2の溝の長手方向は平面視で交差し、第1の溝の底部と第2の溝の底部は連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-4819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、半導体基板の表裏面に形成された第1及び第2の溝の内部に導電体膜と誘電体膜を積層させた構造である。このため、半導体基板の表裏面の面積には限りがあるため、導電体膜と誘電体膜を積層させる部位の表面積にも限りが生じ、コンデンサの容量密度を増大させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、容量密度を増大させることができるコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の一態様に係るコンデンサは、
(1)主面に形成された溝と、その内部に形成された、溝につながる空洞とを有する基板と、
(2)溝及び空洞の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層及び少なくとも1層の導電層と、
(3)少なくとも1層の導電層及び基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第1電極と、
(4)第1電極に電気的に接続されていない導電層または第1電極に電気的に接続されていない基板のうち少なくとも一方に電気的に接続された第2電極と、を備え
(5)主面に垂直な方向から見た時に、溝及び空洞は、ストライプ模様をそれぞれ形成し、
(6)主面に垂直な方向から見た時に、溝の長手方向と空洞の長手方向は交差している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンデンサの容量密度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2A図2Aは、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その1)。
図2B図2Bは、図2Aに示す工程を示す斜視図である。
図3A図3Aは、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その2)。
図3B図3Bは、図3Aに示す工程を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その3)。
図5A図5Aは、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その4)。
図5B図5Bは、図5Aに示す工程を示す斜視図である。
図6図6は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その5)。
図7図7は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その6)。
図8図8は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その7)。
図9図9は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その8)。
図10図10は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その9)。
図11図11は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その10)。
図12図12は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その11)。
図13図13は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その12)。
図14図14は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図15A図15Aは、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その1)。
図15B図15Bは、図15Aに示す工程を示す斜視図である。
図15C図15Cは、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その2)。
図15D図15Dは、図15Cに示す工程を示す斜視図である。
図16A図16Aは、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その3)。
図16B図16Bは、図16Aに示す工程を示す斜視図である。
図17図17は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その4)。
図18図18は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その5)。
図19図19は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その6)。
図20図20は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その7)。
図21図21は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その8)。
図22図22は、図14に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その9)。
図23図23は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図24A図24Aは、図23に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その1)。
図24B図24Bは、図24Aに示す工程を示す斜視図である。
図25A図25Aは、図23に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その2)。
図25B図25Bは、図25Aに示す工程を示す斜視図である。
図26図26は、図23に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その3)。
図27A図27Aは、その他の実施形態に係る基板71の構造を示す斜視図である。
図27B図27Bは、図27Aに示した4枚の基板(71~74)の重ね合わせ構造を示す斜視図である。
図27C図27Cは、図27Bに示した4枚の基板(71~74)を接合した接合基板81の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する。第1の実施形態に係る半導体装置は、基板(1a、1b)を備える。基板(1a、1b)は、互いに対向する第1主面1F(表面)及び第2主面1R(裏面)を有する。基板(1a、1b)の第1主面1Fには、溝3(groove)が形成されている。基板(1a、1b)の内部には、溝3につながる空洞5(cavity)が形成されている。図1に示す例では、第1主面1Fに2つの溝3が形成され、第1主面1Fに平行な方向に広がる空洞5が基板(1a、1b)の内部に形成されている。全ての溝3と空洞5が連結されている。基板は、半導体基板であり、例えば、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、又は酸化ガリウム(Ga2O3)からなる単結晶基板である。空洞5よりも第1主面1F側の部分を基板1aと呼び、空洞5よりも第2主面1R側の部分を基板1bと呼ぶ。
【0011】
半導体装置は、溝3及び空洞5の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層(6a、6b、6c、6d)及び少なくとも1層の導電層(7a、7b、7c、7d)と、少なくとも1層の導電層(7a~7d)及び基板(1a、1b)のうち少なくとも一方に電気的に接続された高電位電極(16、18)(第1電極)と、高電位電極(16、18)に電気的に接続されていない導電層(7a~7d)または高電位電極(16、18)に電気的に接続されていない基板(1a、1b)のうち少なくとも一方に電気的に接続された低電位電極(17、19)(第2電極)とを更に備えるコンデンサである。
【0012】
図1に示す例では、溝3及び空洞5の内部に、4層の誘電層(6a~6d)及び4層の導電層(7a~7d)が積層されている。全ての溝3と空洞5がつながっているので、誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)の各々は、溝3及び空洞5の内部において連結されている。なお、第1主面1F及び第2主面1R上にも5層の誘電層(6a~6d、6e)及び4層の導電層(7a~7d)が積層されている。第1主面1F上及び溝3の内部に配置された誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)の各々は連結されている。第2主面1R上の誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)の各々は、半導体装置の側端部において、空洞5の内部に配置された誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)の各々と連結している。なお、層の数は4に限らず、溝3及び空洞5の内部に1層~3層の誘電層及び1層~3層の導電層を配置しても、あるいは、5層以上の誘電層及び導電層を配置しても構わない。
【0013】
高電位電極(16、18)は、2層の導電層(7a、7c)に電気的に接続され、基板(1a、1b)及び2層の導電層(7b、7d)から電気的に絶縁されている。一方、低電位電極(17、19)は、基板(1a、1b)及び2層の導電層(7b、7d)に電気的に接続され、2層の導電層(7a、7c)から電気的に絶縁されている。
【0014】
なお、溝3及び空洞5の内部に1層の誘電層7a及び1層の導電層6aのみが配置されている場合、高電位電極(16、18)は導電層7aに電気的に接続され、低電位電極(17、19)は基板(1a、1b)に電気的に接続される。実施形態では、高電位電極が第1電極に対応し、低電位電極が第2電極に対応する場合を示すが、逆であっても構わない。
【0015】
高電位電極(16、18)は、第1主面1F上に配置された高電位表面電極16と、第2主面1R上に配置された高電位裏面電極18とを有する。高電位表面電極16の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(6b~6e)及び導電層(7b~7d)を貫通するコンタクトホール8a内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。これにより、高電位表面電極16は、コンタクトホール8aの底面に露出する導電層7aに電気的に接続され、層間絶縁膜12によって導電層(7b~7d)から電気的に絶縁されている。高電位表面電極16の他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(6d、6e)及び導電層7dを貫通するコンタクトホール8b内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。これにより、高電位表面電極16は、コンタクトホール8bの底面に露出する導電層7cに電気的に接続され、層間絶縁膜12によって導電層7dから電気的に絶縁されている。
【0016】
高電位表面電極16と同様にして、高電位裏面電極18の一部は、第2主面1R上に形成されたコンタクトホール(10a、10b)内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。よって、高電位裏面電極18は、コンタクトホール(10a、10b)の底面に露出する導電層(7a、7c)にそれぞれ電気的に接続され、層間絶縁膜12によって他の導電層(7b、7d)から電気的に絶縁されている。
【0017】
低電位電極(17、19)は、第1主面1F側に配置された低電位表面電極17と、第2主面1R側に配置された低電位裏面電極19とを有する。低電位表面電極17の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(6a~6e)及び導電層(7a~7d)を貫通するコンタクトホール9a内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極17は、コンタクトホール9aの底面に露出する基板1aに電気的に接続され、層間絶縁膜12によって導電層(7a~7d)から電気的に絶縁されている。低電位表面電極17の他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(6c~6e)及び導電層(7c、7d)を貫通するコンタクトホール9b内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極17は、コンタクトホール9bの底面に露出する導電層7bに電気的に接続され、層間絶縁膜12によって導電層(7c、7d)から電気的に絶縁されている。低電位表面電極17の更に他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層6eを貫通するコンタクトホール9c内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極17は、コンタクトホール9cの底面に露出する導電層7dに電気的に接続されている。
【0018】
低電位表面電極17と同様にして、低電位裏面電極19の一部は、第2主面1R上に形成されたコンタクトホール(11a、11b、11c)内に層間絶縁膜12を介して埋設されている。よって、低電位裏面電極19は、コンタクトホール(11a~11c)の底面に露出する基板1b及び導電層(7b、7d)にそれぞれ電気的に接続され、層間絶縁膜12によって他の導電層(7a、7c)から電気的に絶縁されている。
【0019】
図1に示すコンデンサの基本的な動作について説明する。高電位電極(16、18)に正の電圧を印加し、低電位電極(17、19)に負の電圧を印加する。これにより、高電位電極(16、18)に電気的に接続された導電層(7a、7c)に正電荷が充電され、低電位電極(17、19)に電気的に接続された基板(1a、1b)及び導電層(7b、7d)に負電荷が充電される。この時、誘電層(6a~6d)の内部で分極が起こり、静電容量が発生する。
【0020】
前述したように、溝3の内部、空洞5の内部、第1主面1F上、及び第2主面1R上に配置された誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)の各々は連結している。従って、溝3の内部、空洞5の内部、第1主面1F上、及び第2主面1R上に積層された4層のコンデンサが並列接続された構造になり、半導体基板の第1主面1Fの単位面積当たりのコンデンサの容量密度を向上させることができる。
【0021】
第1主面1Fに垂直な方向から見た時に、溝3及び空洞5は、多角形又は円形のドットの繰り返し模様を形成している。これにより、機械的強度の高い基板(1a、1b)の形状を作製することができる。
【0022】
全ての空洞5と溝3が連結されている。これにより、全ての空洞5及び溝3の領域に沿って誘電層(6a~6d)の各々及び導電層(7a~7d)を成長させ、容量密度を向上させることができる。
【0023】
溝3及び空洞5の表面に、複数層の誘電層(6a~6d)及び複数層の導電層(7a~7d)が交互に積層されている。これにより、容量密度を向上させることができる。
【0024】
誘電層(6a~6d)にシリコン酸化膜が用いられているので、高電圧での動作が可能となる。
【0025】
誘電層(6a~6d)に誘電率の高いシリコン窒化膜を用いてもよい。これにより、容量密度を向上させることができる。各誘電層(6a~6d)としてシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜を用いてもよい。
【0026】
導電層(7a~7d)にポリシリコン膜が用いられている。これにより、低圧CVD法を用いて、溝3及び空洞5の表面に沿って導電層(7a~7d)を均一に成長させることができる。
【0027】
導電層(7a~7d)に金属が用いてもよい。この場合、導電層(7a~7d)の等価直列抵抗(ESR)を低減することができる。
【0028】
実施形態では基板(1a、1b)が半導体である場合を説明したが、基板(1a、1b)は、絶縁体であっても、導電体であっても構わない。基板(1a、1b)が絶縁体であることで素子分離が容易になる。基板(1a、1b)が導電体であることで基板(1a、1b)を電極として使用することができる。
【0029】
基板(1a、1b)がシリコン基板である場合、基板(1a、1b)を安価に作製することができる。
【0030】
溝3又は空洞5の表面が(110)面又は(111)面と等価な面であることが望ましい。これにより、ウェットエッチングによる異方性エッチングにより、溝3及び空洞5を作製することができる。
【0031】
以下に、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。
【0032】
先ず、図2A及び図2Bに示すように、基板1の第1主面1Fから基板1の一部をエッチングすることにより溝3を形成する。基板1は、基板1aと基板1bに分離される前の状態を示す。具体的には、まず、基板1の第1主面にマスク材2を形成する。マスク材2としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。次に、マスク材2上にレジストをパターニングする。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィ法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材2をエッチングする。マスク材2は、図2A及び図2Bに示すように、溝3が形成される部分に開口を有する。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。次に、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。このようにして形成したマスク材2を用いてドライエッチングによって、マスク材2の開口から表出する基板1をエッチングし、溝3を形成する。
【0033】
次に、図3A及び図3Bに示すように、基板1の第1主面1Fに沿ってマスク材4を堆積する。マスク材4としてはシリコン酸化膜を用いることができる、堆積方法としては例として熱CVD法を用いることができる。また熱CVD法を用いる際は常圧条件にすることによって溝3の開口部からある一定の深さまでの溝3の側壁だけを覆うようにシリコン酸化膜(マスク材4)を堆積できる。
【0034】
次に、図4に示すように、等方的なドライエッチングによって基板1をエッチングし基板1の内部に水平方向に広がる空洞5を形成する。基板1の表面のうち、マスク材4で覆われた部分はエッチングされず、マスク材4が形成されずに露出した部分、つまり、溝3の内部の側面だけが選択的にエッチングされる。エッチング時間によって空洞5を任意の形状に形成できる。ここでは、例えば、図5A及び図5Bに示すように、長時間のエッチングにより隣接する空洞5が水平方向につながった形状とすることができる。これにより、第1主面1Fに平行な方向に広がる空洞5が基板1の内部に形成され、全ての溝3と空洞5を連結させることができる。そして、図5Aに示す断面において、基板1が、空洞5よりも第1主面1F側の部分(基板1a)と、空洞5よりも第2主面1R側の部分(基板1b)に分離させることができる。ただし、図5Bに示すように、基板1aと基板1bは、図5Aの紙面の奥側にて互いに連結されている。
【0035】
次に、図6に示すように、溝3及び空洞5の内面及び第1主面1F及び第2主面1Rを含む基板(1a,1b)の表面に、基板(1a、1b)を覆うように誘電層(第1誘電層6a)を堆積する。誘電層としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱酸化法、熱CVD法を用いることができる。また熱CVD法を用いる際は減圧条件にすることによって溝3及び空洞5が深く複雑な形状である場合にもカバレッジ良くシリコン酸化膜を堆積できる。
【0036】
次に、図7に示すように、溝3及び空洞5の内面及び第1主面1F及び第2主面1Rを含む基板(1a,1b)の表面に、第1誘電層6aを覆うように導電層(第1導電層7a)を堆積する。ここでは導電層の例としてポリシリコンを用いる。ポリシリコン膜の堆積後に、950℃でPOCL3中にてアニール処理を施すことで、N型のポリシリコンが形成され、導電層に導電性を持たせる。ここでは導電層の例としてポリシリコンを用いるが、他にチタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属および金属のシリサイド膜を用いることもできる。ポリシリコンの堆積方法としては減圧CVD法を用いてもよい。以上の工程により、基板(1a、1b)の表面に、第1誘電層6aと第1導電層7aが順番に積層される。
【0037】
次に、図6に示した誘電層の堆積及び図7に示した導電層の堆積を3回交互に繰り返す。本実施形態では、図8に示すように、合計で4層の誘電層(6a~6d)と4層の導電層(7a~7d)によって溝3及び空洞5の内部が埋め戻られる。この時に成膜された誘電層を、第2誘電層6b、第3誘電層6c、第4誘電層6dと呼ぶ。一方、この時に成膜された導電層を、第2導電層7b、第3導電層7c、第4導電層7dと呼ぶ。第4導電層7dを堆積した後、基板1aの第1主面1Fの上方、基板1bの第2主面1Rの下方に、それぞれ誘電層(第5誘電層6e)を積層する。
【0038】
次に、図9に示すように、基板1aの第1主面1F及び第2主面1Rの各々の第5誘電層6eを、それぞれ部分的に覆うようにマスク材(図示せず)を形成する。マスク材は、コンタクトホール(8a、10a)が形成される領域に開口を有する。マスク材を介して、第2誘電層6b、第3誘電層6c、第4誘電層6d、第2導電層7b、第3導電層7c、第4導電層7dをドライエッチングする。これにより、高電位電極(16、18)が埋設されるコンタクトホール(8a、10a)が形成される。同様に、高電位電極(16、18)が埋設されるコンタクトホール(8b、10b)、低電位電極(17、19)が埋設されるコンタクトホール(9a~9c、11a~11c)についても、マスク材を介して、図1に示した所望の深さまで誘電層及び導電層をエッチングすることにより形成する。
【0039】
次に、図10に示すように、基板1aの第1主面1F及び第2主面1Rの各々の第5誘電層6eの上、及び全てのコンタクトホール(8a、8b、9a、9b、9c、10a、10b、11a、11b、11c)の側面及び底面に、層間膜12を堆積する。層間膜12はシリコン酸化膜を用いることができる。なお、層間膜12の膜厚は、コンタクトホール(8a~11c)が層間膜12により埋め戻らない程度に薄く、コンタクトホール(8a~11b)の幅は、コンタクトホール(8a~11c)が層間膜12により埋め戻らない程度に広い。
【0040】
次に、図11に示すように、パターニングしたマスク材13を用いて、コンタクトホール(8a~11c)の底面上の層間膜12をエッチングする。各コンタクトホールの底面には、対応する基板1a又は導電層(7a~7d)がそれぞれ露出する。各コンタクトホールの側面には層間膜12が残されている。
【0041】
次に、図12に示すように、基板(1a、1b)の第1主面1F及び第2主面1Rを覆うように、表面電極14及び裏面電極15を堆積する。この時、コンタクトホール(8a~11c)の内部は、表面電極14又は裏面電極15で埋め戻され、表面電極14及び裏面電極15は、コンタクトホール(8a~11c)の底面に露出した、基板1a又は導電層(7a~7d)に電気的に接続される。表面電極14及び裏面電極15の電極材料としては金属が一般的である。具体的には、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)を用いることができる。また、表面電極14及び裏面電極15はTi/Ni/銀(Ag)などの積層膜でもよい。金属膜の形成方法はスパッタ法、又は電子ビーム(EB)蒸着を用いることができる。なお、表面電極14は、分割される前の高電位表面電極16及び低電位表面電極17に相当し、裏面電極15は、分割される前の高電位裏面電極18及び低電位裏面電極19に相当する。
【0042】
次に、図13に示すように、一般的なフォトリソグラフィ法によってマスク材20をパターニングし、ドライエッチングにより表面電極14及び裏面電極15の一部をエッチングする。これにより、表面電極14は、高電位表面電極16及び低電位表面電極17に分割され、裏面電極15は、高電位裏面電極18及び低電位裏面電極19に分割される。
【0043】
マスク材20を除去することにより、図1に示した第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0044】
溝3及び空洞5をドライエッチングで形成することにより、高アスペクト比の溝3及び空洞5を形成することができる。
【0045】
溝3及び空洞5をウェットエッチングで形成してもよい。これにより、低コストで溝3及び空洞5を形成することができる。
【0046】
誘電層(6a~6d)を減圧CVD法で形成することができる。これにより、溝3及び空洞5の表面に沿って均一に誘電層(6a~6d)を成長させることができる。
【0047】
誘電層(6a~6d)を原子層堆積法(ALD)で形成してもよい。これにより、溝3及び空洞5の表面に沿って均一に誘電層(6a~6d)を成長させることができる。
【0048】
導電層(7a~7d)を原子層堆積法(ALD)で形成することができる。これにより、溝3及び空洞5の表面に沿って均一に導電層(7a~7d)を成長させることができる。
【0049】
導電層(7a~7d)を有機金属気相成長法(MOCVD法)で形成してもよい。これにより、溝3及び空洞5の表面に沿って均一に導電層(7a~7d)を成長させることができる。
【0050】
導電層(7a~7d)をメッキ成長で形成してもよい。これにより、等価直列抵抗(ESR)を低減させることができる。
【0051】
(第2実施形態)
図14を参照して、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する。第2の実施形態に係る半導体装置は、基板26を備える。基板26は、互いに対向する第1主面1F(表面)及び第2主面1R(裏面)を有する。基板26の第1主面1Fには、溝3が形成されている。基板26の内部には、溝3につながる空洞5が形成されている。基板26は、溝23が形成された第1基板と空洞25が形成された第2基板を接合して成る接合基板である。接合方法の詳細は後述する。
【0052】
図14に示す例では、第1主面1Fに2つの溝3が形成され、第1主面1Fに平行な方向に広がる空洞5が基板26の内部に形成されている。全ての溝3と空洞5が連結されている。第2実施形態では、空洞5の一部が基板26の第2主面1Rに表出している。これにより、基板26の表面から裏面まで貫通した穴(溝3及び空洞5)を形成することができるので、基板26の表面と裏面の両面に配線電極を形成することができる。
【0053】
半導体装置は、溝3及び空洞5の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層(28a、28b、28c、28d)及び少なくとも1層の導電層(29a、29b、29c、29d)と、少なくとも1層の導電層(29a~29d)及び基板26のうち少なくとも一方に電気的に接続された高電位電極(38、40)(第1電極)と、高電位電極(38、40)に電気的に接続されていない導電層(29a~29d)及び基板26に電気的に接続された低電位電極(39、41)(第2電極)とを更に備えるコンデンサである。
【0054】
図14に示す例では、溝23及び空洞25の内部に、4層の誘電層(28a~28d)及び4層の導電層(29a~29d)が積層されている。全ての溝23と空洞25がつながっているので、誘電層(28a~28d)の各々及び導電層(29a~29d)の各々は、溝23及び空洞25の内部において連結されている。なお、第1主面1F及び第2主面1R上にも5層の誘電層(28a~28e)及び4層の導電層(29a~29d)が積層されている。第1主面1F上、第2主面1R上、溝23及び空洞25の内部に配置された誘電層(28a~28d)の各々及び導電層(29a~29d)の各々は連結されている。なお、層の数は4に限らず、溝23及び空洞25の内部に1層~3層の誘電層及び1層~3層の導電層を配置しても、あるいは、5層以上の誘電層及び導電層を配置しても構わない。
【0055】
高電位電極(38、40)は、第1主面1F上に配置された高電位表面電極38と、第2主面1R上に配置された高電位裏面電極40とを有する。高電位表面電極38の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(28b~28e)及び導電層(29b~29d)を貫通するコンタクトホール30a内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。これにより、高電位表面電極38は、コンタクトホール30aの底面に露出する導電層29aに電気的に接続され、層間絶縁膜34によって導電層(29b~29d)から電気的に絶縁されている。高電位表面電極38の他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(28d、28e)及び導電層29dを貫通するコンタクトホール30b内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。これにより、高電位表面電極38は、コンタクトホール30bの底面に露出する導電層29cに電気的に接続され、層間絶縁膜34によって導電層29dから電気的に絶縁されている。
【0056】
高電位表面電極38と同様にして、高電位裏面電極40の一部は、第2主面1R上に形成されたコンタクトホール(32a、32b)内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。よって、高電位裏面電極40は、コンタクトホール(32a、32b)の底面に露出する導電層(29a、29c)にそれぞれ電気的に接続され、層間絶縁膜34によって他の導電層(29b、29d)から電気的に絶縁されている。
【0057】
低電位電極(39、41)は、第1主面1F側に配置された低電位表面電極39と、第2主面1R側に配置された低電位裏面電極41とを有する。低電位表面電極39の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(28a~28e)及び導電層(29a~29d)を貫通するコンタクトホール31a内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極39は、コンタクトホール31aの底面に露出する基板26に電気的に接続され、層間絶縁膜34によって導電層(29a~29d)から電気的に絶縁されている。低電位表面電極39の他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層(28c~28e)及び導電層(29c、29d)を貫通するコンタクトホール31b内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極39は、コンタクトホール31bの底面に露出する導電層29bに電気的に接続され、層間絶縁膜34によって導電層(29c、29d)から電気的に絶縁されている。低電位表面電極39の更に他の一部は、第1主面1F上に堆積された誘電層28eを貫通するコンタクトホール31c内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。これにより、低電位表面電極39は、コンタクトホール31cの底面に露出する導電層29dに電気的に接続されている。
【0058】
低電位表面電極39と同様にして、低電位裏面電極41の一部は、第2主面1R上に形成されたコンタクトホール(33a、33b、33c)内に層間絶縁膜34を介して埋設されている。よって、低電位裏面電極41は、コンタクトホール(33a~33c)の底面に露出する基板26及び導電層(29b、29d)にそれぞれ電気的に接続され、層間絶縁膜34によって他の導電層(29a、29c)から電気的に絶縁されている。
【0059】
図14に示すコンデンサの基本的な動作について説明する。高電位電極(38、40)に正の電圧を印加し、低電位電極(39、41)に負の電圧を印加する。これにより、高電位電極(38、40)に電気的に接続された導電層(29a、29c)に正電荷が充電され、低電位電極(39、41)に電気的に接続された基板26及び導電層(29b、29d)に負電荷が充電される。この時、誘電層(28a~28d)の内部で分極が起こり、静電容量が発生する。
【0060】
以下に、図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。
【0061】
先ず、図15A及び図15Bに示すように、マスク材22を第1基板21の表面にパターニングし、マスク材22を用いて第1基板21の一部をエッチングすることにより、第1基板21の表裏面を貫通する複数の溝23を形成する。図15Aの断面図において、溝23は、紙面に垂直な方向に延びている。第1基板21をその表面に垂直な方向から見た時、溝23はストライプ形状を成している。また、図15C及び図15Dに示すように、マスク材22を第2基板24の表面にパターニングし、マスク材22を用いて第2基板24の一部をエッチングすることにより、第2基板24の表裏面を貫通する複数の空洞25を形成する。図15Cの断面図において、空洞25は、紙面に平行な方向に延びている。第2基板24をその表裏面に垂直な方向から見た時に、空洞25はストライプ形状を成している。第1基板21及び第2基板24のエッチング方法は、ドライエッチング及びウェットエッチングのいずれの方法を用いてもよい。
【0062】
次に、図16A及び図16Bに示すように、第1基板21および第2基板24を接合して接合基板26を作製する。接合後は、第1基板21上の溝23および第2基板24上の空洞25が連結される。これにより、溝23及び空洞25は接合基板26の深さ方向および水平方向に広がる穴27を成す。ここでは接合方法の一例として、第1基板21及び第2基板24の表面を洗浄した後に、基板同士を張り合わせ400℃以上の高温でアニールすることにより接合する「熱拡散接合」を用いる。しかし、第1基板21と第2基板24の間に接合剤を設置して基板同士を接合しても構わない。なお、接合後に、接合基板26をその第1主面に垂直な方向から見た時に、溝23の長手方向と空洞25の長手方向は交差している。
【0063】
次に、図17に示すように、溝23及び空洞25の内面及び第1主面1F及び第2主面1Rを含む接合基板26の表面に、接合基板26を覆うように誘電層(第1誘電層28a)を堆積する。次に、接合基板26の表面に、第1誘電層28aを覆うように導電層(第1導電層29a)を堆積する。
【0064】
次に、同様にして、誘電層の堆積及び導電層の堆積を3回交互に繰り返す。本実施形態では、図17に示すように、合計で4層の誘電層(28a~28d)と4層の導電層(29a~29d)によって溝23及び空洞25の内部が埋め戻られる。この時に成膜された誘電層を、第2誘電層28b、第3誘電層28c、第4誘電層28dと呼ぶ。一方、この時に成膜された導電層を、第2導電層29b、第3導電層29c、第4導電層29dと呼ぶ。第4導電層29dを堆積した後、基板26の第1主面1Fの上方、基板26の第2主面1Rの下方に、それぞれ誘電層(第5誘電層28e)を積層する。
【0065】
次に、図18に示すように、マスク材を用いて誘電層(28a~28e)及び導電層(29a~29d)をエッチングすることにより、複数のコンタクトホール(30a、30b、31a、31b、31c、32a、32b、33a、33b、33c)を形成する。深さの等しいコンタクトホール、例えば、コンタクトホール(30a、32a)は同じマスク材を用いて同時に形成できるが、深さの異なるコンタクトホールは、異なるマスク材を用いて個別に形成される。
【0066】
次に、図19に示すように、基板26の第1主面1F及び第2主面1Rの各々の第5誘電層28eの上、及び全てのコンタクトホール(30a~33c)の側面及び底面に、層間膜34を堆積する。層間膜34はシリコン酸化膜を用いることができる。なお、層間膜34の膜厚は、コンタクトホール(30a~33c)が層間膜34により埋め戻らない程度に薄く、コンタクトホール(30a~33c)の幅は、コンタクトホール(30a~33c)が層間膜34により埋め戻らない程度に広い。
【0067】
次に、図20に示すように、パターニングしたマスク材35を用いて、コンタクトホール(30a~33c)の底面上の層間膜34をエッチングする。各コンタクトホールの底面には、対応する基板26又は導電層(29a~29d)がそれぞれ露出する。各コンタクトホールの側面には層間膜34が残されている。
【0068】
次に、図21に示すように、基板26の第1主面1F及び第2主面1Rを覆うように、表面電極36及び裏面電極37を堆積する。この時、コンタクトホール(30a~33c)の内部は、表面電極36又は裏面電極37で埋め戻され、表面電極36及び裏面電極37は、コンタクトホール(30a~33c)の底面に露出した、基板26又は導電層(29a~29d)に電気的に接続される。表面電極36及び裏面電極37の電極材料としては金属が一般的である。具体的には、Ti、Ni、Moを用いることができる。また、表面電極36及び裏面電極37はTi/Ni/Agなどの積層膜でもよい。金属膜の形成方法はスパッタ法、又は電子ビーム(EB)蒸着を用いることができる。なお、表面電極36は、分割される前の高電位表面電極38及び低電位表面電極39に相当し、裏面電極37は、分割される前の高電位裏面電極40及び低電位裏面電極41に相当する。
【0069】
次に、図22に示すように、一般的なフォトリソグラフィ法によってマスク材42をパターニングし、ドライエッチングにより表面電極36及び裏面電極37の一部をエッチングする。これにより、表面電極36は、高電位表面電極38及び低電位表面電極39に分割され、裏面電極37は、高電位裏面電極40及び低電位裏面電極41に分割される。
【0070】
マスク材42を除去することにより、図14に示した第2実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0071】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な作用効果が得られるとともに、更に以下に示す作用効果も得られる。
【0072】
第1基板21及び第2基板24をその表裏面に垂直な方向から見た時に、溝23及び空洞25は、ストライプ模様をそれぞれ形成している。これにより、誘電層(28a~28d)と導電層(29a~29d)の多層構造にした際の容量低下を防ぐことができる。
【0073】
接合後に接合基板26をその第1主面に垂直な方向から見た時に、溝23の長手方向と空洞25の長手方向は交差している。交差したストライプ状の穴27(溝23及び空洞25)を形成することで穴27のアスペクト比を単一のストライプ形状と比較して高くすることができる。
【0074】
溝23が形成された第1基板21と空洞25が形成された第2基板24を接合して基板(接合基板26)を形成している。これにより、アスペクト比が高い穴27を持つ基板26を形成することができる。よって、基板26の単位面積当たりの容量密度が高いキャパシタを作製することができる。
【0075】
第1基板21と第2基板24を熱拡散接合によって接合する。これにより、接合する基板同士を強固な結合で接合することができる。
【0076】
第1基板21と第2基板24を接着剤を用いて接合してもよい。これにより、短時間で基板を接合することができる。
【0077】
(第3実施形態)
図23を参照して、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する。第3の実施形態に係る半導体装置は、基板47を備える。基板47は、互いに対向する第1主面1F(表面)及び第2主面1R(裏面)を有する。基板47の第1主面1Fには、溝51が形成されている。基板47の内部には、溝51につながる空洞48が形成されている。
【0078】
図23に示す第3実施形態では、全ての溝51と空洞48が連結され、空洞48の一部が基板47の第2主面1Rに表出している。これにより、基板47の表面から裏面まで貫通した穴(溝51及び空洞48)を形成することができるので、基板47の表面と裏面の両面に配線電極を形成することができる。
【0079】
図23に示す基板47は、図14に示した2枚の基板26の表裏面を重ね合わせて接合した接合基板に相当する。すなわち、基板47は、溝51が形成された第1基板と空洞25が形成された第2基板乃至第4基板とから成る計4枚の基板を接合して成る接合基板である。接合方法は、第2実施形態と同じであり説明を割愛する。
【0080】
第3実施形態に係る半導体装置は、第2実施形態と同様にして、溝51及び空洞48の表面に交互に積層された少なくとも1層の誘電層(28a、28b、28c、28d)及び少なくとも1層の導電層(29a、29b、29c、29d)と、少なくとも1層の導電層(29a~29d)及び基板47のうち少なくとも一方に電気的に接続された高電位電極(38、40)(第1電極)と、高電位電極(38、40)に電気的に接続されていない導電層(29a~29d)及び基板26に電気的に接続された低電位電極(39、41)(第2電極)とを更に備えるコンデンサである。誘電層(28a~28d)、導電層(29a~29d)、高電位電極(38、40)、低電位電極(39、41)、及びコンデンサの動作の詳細は、第2実施形態と同じであり、説明を割愛する。
【0081】
以下に、図面を参照して、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。第2実施形態と同じ部分については説明を割愛する。
【0082】
先ず、図24A及び図24Bに示すように、マスク材を用いて第1基板43、第2基板44、第3基板45、及び第4基板46の一部をそれぞれエッチングすることにより、第1基板43、第2基板44、第3基板45、及び第4基板46の表裏面を貫通する複数の溝51又は空洞(52、53、54)を形成する。図24Aの断面図において、溝51及び空洞53は、紙面に垂直な方向に延びている。図24Aの断面図において、空洞(52、54)は、紙面に平行な方向に延びている。第1基板43、第2基板44、第3基板45、及び第4基板46をその表面に垂直な方向から見た時、溝51及び空洞(52、53、54)はそれぞれストライプ形状を成している。
【0083】
次に、図25A及び図25Bに示すように、第1基板43乃至第4基板46をその表裏面を重ね合わせて接合することにより接合基板47を作製する。接合後は、第1基板43上の溝51、第2基板44上の空洞52、第3基板45上の空洞53、及び第4基板46上の空洞54が全て連結される。これにより、溝51及び空洞(52~54)は接合基板47の深さ方向および水平方向に広がる穴を成す。なお、接合後に、接合基板47をその第1主面1Fに垂直な方向から見た時に、溝23及び空洞53の長手方向と空洞(52、54)の長手方向は交差している。
【0084】
次に、第2実施形態と同様にして、誘電層の堆積及び導電層の堆積を4回交互に繰り返す。第4導電層29dを堆積した後、基板47の第1主面1Fの上方、基板47の第2主面1Rの下方に、それぞれ誘電層(第5誘電層28e)を積層する。
【0085】
以下、第2実施形態と同様な工程を実施して、コンタクトホール(30a~33c)、高電位電極(38、40)、及び低電位電極(39、41)を形成することにより、図23に示した第3実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0086】
第3実施形態によれば、第2実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0087】
(その他の実施形態)
例えば、図27Aに示すように、その表裏面にストライプ形状の溝(61a~61c、62a~62d)がそれぞれ形成された基板71を用意する。図27Bに示すように、同様な基板を複数(71~74)用意する。図27Cに示すように、これらの基板(71~74)を、その表裏面を重ね合わせて接合することにより、1つの接合基板81(基板)を形成してもよい。
【0088】
接合基板81の表面(第1主面)には、基板71の溝(61a~61c)が形成されている。接合基板81の内部には、基板71の溝(61a~61c)につながる空洞が形成されている。ここで、図27Cにおける「空洞」には、基板71の溝(62a~62d)及び基板(72~74)の溝(61a~61c、62a~62d)が含まれている。基板71の全ての溝(61a~61c)と「空洞」とは連結され、接合基板81の裏面には、「空洞」の一部、すなわち基板74の溝(62a~62d)が表出している。
【0089】
第1~第3実施形態では、溝及び空洞の幅であって、第1主面1Fに平行な方向の幅が一定である場合を説明した。しかし、溝及び空洞の幅を溝及び空洞の深さに応じて変化させてもよい。具体的には、溝及び空洞の少なくとも一方の幅であって、第1主面1Fに平行な方向の幅は、第1主面1Fから第2主面1Rへ近づくほど、広くなっていてもよい。或いは、溝及び空洞の少なくとも一方の幅であって、第1主面1Fに平行な方向の幅は、第1主面1Fから第2主面1Rへ近づくほど、狭くなっていてもよい。基板の深さ方向に沿って溝及び空洞の幅を変えるによって、溝及び空洞を誘電層及び導電層で埋め込みやすくすることができる。また、溝及び空洞の内部の表面積を増やすことができるので、容量密度を更に高めることができる。
【0090】
上述の実施形態は、本発明を実施する形態の例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、これ以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
1、1a、1b、26、47、81 基板
1F 第1主面
1R 第2主面
3、23、51、61a~61c 溝
5、25、48、52、53、54、62a~62d 空洞
6a~6e、28a~28e 誘電層
7a~7d、29a~29d 導電層
16、18、38、40 第1電極(高電位電極)
17、19、39、41 第2電極(低電位電極)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図26
図27A
図27B
図27C