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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】毛髪用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20250106BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250106BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/44
A61K8/86
A61K8/81
A61Q5/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020185200
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022076494
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】595064854
【氏名又は名称】カネダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昌希
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-187811(JP,A)
【文献】特開2021-143156(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038496(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/038495(WO,A1)
【文献】特開2020-083771(JP,A)
【文献】特開2013-071924(JP,A)
【文献】特開2019-156727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:両性界面活性剤と、
(C)成分:HLBが8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、
(P)成分:下記一般式(am)で表される官能基、及びアミド結合を側鎖に有するアクリル系高分子化合物と、
を含有する毛髪用洗浄剤であって、
前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分との比率は、前記(C)成分の含有量に対する、前記(A)成分と前記(B)成分との合計の含有量が、
((A)+(B))/(C)で表される質量比として、3~10であり、
前記(P)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量に対して0.10~1.5質量%であり、
前記(P)成分と前記(C)成分との比率は、前記(P)成分の含有量に対する、前記(C)成分の含有量が、(C)/(P)で表される質量比として、5~10であり、
前記(P)成分が、下記一般式(u1)で表される構成単位(u1)を有する高分子化合物(P1)を含む、毛髪用洗浄剤。
【化1】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基又は水素原子を表す。Rは、アルキル基もしくは水素原子であるか、又はアルキレン基であって高分子主鎖と結合してもよい。Zは、対アニオンを表す。*は結合手を表す。]
【化2】
[式中、R 00 は、-NH-を表す。R 01 は、メチル基又は水素原子を表す。R 02 は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。R 03 、R 04 及びR 05 は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。Z は、対アニオンを表す。]
【請求項2】
前記高分子化合物(P1)は、さらに、下記一般式(u2)で表される構成単位(u2)を有する共重合体である、請求項に記載の毛髪用洗浄剤。
【化3】
[式中、R06は、メチル基又は水素原子を表す。R07及びR08は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。]
【請求項3】
前記(C)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量に対して0.5~15質量%である、請求項1又は2に記載の毛髪用洗浄剤。
【請求項4】
前記高分子化合物(P1)中の前記構成単位(u1)の割合は、該高分子化合物(P1)を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して20モル%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【請求項5】
前記(A)成分と前記(B)成分との比率は、(A)/(B)で表される質量比として、1/2~2/1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪用洗浄剤には、頭髪及び頭皮の汚れを除去する洗浄力に加え、すすぎ性能が求められる。特に、髪の長い女性においては、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触が好まれる。
【0003】
毛髪用洗浄剤は、一般に、洗浄成分とコンディショニング成分とを含有している。
洗浄成分としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩などのアニオン界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤が用いられている。コンディショニング成分としては、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムなどのカチオン性高分子化合物が用いられている。
これらの洗浄成分とコンディショニング成分とを適宜組み合わせることにより、洗浄力とすすぎ性能とのバランスを取ることができる。
【0004】
例えば、洗浄力を重視した毛髪用洗浄剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ベタイン型両性界面活性剤、糖骨格を有するカチオン化ポリマー、無機塩、及びHLBが12以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、透明なジェル状の組成物が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の組成物によれば、頭皮の余分な皮脂や汚れをより除去することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-081415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された組成物のように、コンディショニング成分として糖骨格を有するカチオン化ポリマーを含有する従来の毛髪用洗浄剤は、髪が長く、カラーリングが施されたようなダメージ毛に対して、指の通りが良いすすぎ性能を発現し得る。
その一方で、長さが短めの毛髪、又はそれほど傷んでいない毛髪(以下これらをまとめて「ノーマル毛」という。)に対して、従来の毛髪用洗浄剤を用いると、すすぎ後、毛髪用洗浄剤由来の成分が毛髪に過剰に残存して、感触が悪くなる等の不具合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、すすぎ後の感触がより高められた毛髪用洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
洗浄成分とコンディショニング成分とを含有する毛髪用洗浄剤は、水に濡れた頭髪上で泡立てることにより、水で希釈される。その際、洗浄成分とコンディショニング成分との複合体が生成する(コアセルベーション)。この複合体の生成により、すすぎ性能が発現している。
本発明者らは、検討により、頭皮の皮脂除去性を高めた洗浄成分に、汎用のカチオン化セルロース又はカチオン化グアーガムに代えて、特定のアクリル系高分子化合物を組み合わせることで、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用した。
【0009】
[1] (A)成分:アニオン界面活性剤と、(B)成分:両性界面活性剤と、(C)成分:HLBが8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、(P)成分:下記一般式(am)で表される官能基、及びアミド結合を側鎖に有するアクリル系高分子化合物と、を含有することを特徴とする、毛髪用洗浄剤。
【0010】
【化1】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基又は水素原子を表す。Rは、アルキル基もしくは水素原子であるか、又はアルキレン基であって高分子主鎖と結合してもよい。Zは、対アニオンを表す。*は結合手を表す。]
【0011】
[2] 前記(P)成分が、下記一般式(u1)で表される構成単位(u1)を有する高分子化合物(P1)を含む、[1]に記載の毛髪用洗浄剤。
【0012】
【化2】
[式中、R00は、-NH-又は-O-を表す。R01は、メチル基又は水素原子を表す。R02は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。R03、R04及びR05は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。Zは、対アニオンを表す。]
【0013】
[3] 前記高分子化合物(P1)は、さらに、下記一般式(u2)で表される構成単位(u2)を有する共重合体である、[2]に記載の毛髪用洗浄剤。
【0014】
【化3】
[式中、R06は、メチル基又は水素原子を表す。R07及びR08は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。]
【0015】
[4] 前記(P)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量に対して0.10~1.5質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【0016】
[5] 前記(C)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量に対して0.5~15質量%である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、すすぎ後の感触がより高められた毛髪用洗浄剤を提供することができる。
【0018】
また、本発明の毛髪用洗浄剤によれば、頭皮の余分な皮脂や汚れをより除去することができるとともに、すすぎ後の感触、特にノーマル毛に対して指の通りが良好な感触が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ノーマル毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定結果を示すグラフである。
図2】ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(毛髪用洗浄剤)
本発明の一実施形態に係る毛髪用洗浄剤は、(A)成分:アニオン界面活性剤と、(B)成分:両性界面活性剤と、(C)成分:HLBが8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、(P)成分:一般式(am)で表される官能基、及びアミド結合を側鎖に有するアクリル系高分子化合物と、必要に応じてその他成分とを含有する。
【0021】
本発明において「毛髪用洗浄剤」とは、いわゆるシャンプーであり、頭髪及び頭皮を洗浄するためのものをいう。
【0022】
<(A)成分:アニオン界面活性剤>
(A)成分としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アシル化アミノ酸塩、N-アシル-N-メチルタウリン塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、脂肪酸石ケン、アルキルリン酸エステル塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩、N-パルミトイルグルタミン酸塩、N-ラウロイル-N-エチルグリシン塩、N-ラウロイルザルコシン塩、N-ミリストイル-β-アラニン塩等が挙げられる。
塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(A)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して4~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。
(A)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、泡立ちがより良好となり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、毛髪用洗浄剤の粘度が高くなりすぎるのを抑えやすくなる。
【0024】
<(B)成分:両性界面活性剤>
(B)成分としては、例えば、アルキルベタイン系界面活性剤、アミドベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、ヒドロキシスルホベタイン系界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤、アミドスルホベタイン系界面活性剤、ホスホベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
アルキルベタイン系界面活性剤としては、N-デシルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
アミドベタイン系界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドメチルベタイン、ミリスチン酸アミドメチルベタイン、パルミチン酸アミドメチルベタイン、ステアリン酸アミドメチルベタイン等が挙げられる。
スルホベタイン系界面活性剤としては、ヤシ油アルキルジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油アルキルアミノメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ミリスチルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン等が挙げられる。
ヒドロキシスルホベタイン系界面活性剤としては、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルアミノメチル-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-スルホプロピルベタイン等が挙げられる。
イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤としては、2-ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0026】
(B)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(B)成分の中でも、アルキルベタイン系界面活性剤、アミドベタイン系界面活性剤が好ましく、アミドベタイン系界面活性剤がより好ましく、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(B)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して3~15質量%が好ましく、4~12質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。
(B)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、洗浄力及び泡立ちがより良好となり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、すすぎ性能が向上しやすくなり、また、毛髪用洗浄剤の粘度が高くなりすぎるのを抑えやすくなる。
【0027】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(A)成分と(B)成分との比率は、(A)/(B)で表される質量比として、1/2~4/1が好ましく、1/2~2/1がより好ましい。この質量比の範囲内であれば、毛髪用洗浄剤の粘度を高められやすく、また、洗浄力及び泡立ちがより向上する。
【0028】
<(C)成分:HLBが8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル>
(C)成分のHLBは、8以上であり、8~18が好ましく、10~16がより好ましく、11~16がさらに好ましい。
(C)成分のHLBが、前記の下限値以上であれば、頭髪及び頭皮の汚れを除去する洗浄力が高められる。前記の好ましい上限値以下であると、皮脂汚れの除去性がより良好となる。
【0029】
ここでいう「HLB」とは、有機概念図におけるIOB×10で示される。
有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。全ての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環などにそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値及び無機性値を求める。そして、これらの値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸とした図上にプロットしていくものである。
【0030】
(C)成分としては、例えば、モノラウリン酸テトラグリセリル(HLB10.4)、モノラウリン酸ヘキサグリセリル(HLB14.1)、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB15.2)、モノミリスチン酸デカグリセリル(HLB14.9~16.7)、モノステアリン酸デカグリセリル(HLB17.5)、モノオレイン酸デカグリセリル(HLB13.0~15.9)、モノカプリン酸ヘキサグリセリル(HLB14.6)等が挙げられる。
【0031】
(C)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(C)成分の中でも、皮脂汚れの除去性及び溶解性の点から、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリルが好ましく、さらに防腐力の向上の点から、モノラウリン酸デカグリセリルが特に好ましい。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(C)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して0.5~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
(C)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、頭髪及び頭皮の汚れを除去する洗浄力がより高められやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、すすぎ性能が向上しやすくなる。
【0032】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の、(A)成分と(B)成分と(C)成分との比率は、例えば、(C)成分の含有量に対する、(A)成分と(B)成分との合計の含有量が、((A)+(B))/(C)で表される質量比として、3~10が好ましく、3.5~8がより好ましく、4~6がさらに好ましい。
この質量比の範囲内であれば、(P)成分と組み合わせた際に、より良好な洗浄力、及びすすぎ後の感触が発現しやすくなる。
【0033】
<(P)成分:アクリル系高分子化合物>
本実施形態における(P)成分は、下記一般式(am)で表される官能基、及びアミド結合を側鎖に有するアクリル系高分子化合物である。
【0034】
ここでいう「アクリル系高分子化合物」とは、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルに加え、HC=CR-C(=O)-*[Rは、例えばメチル基又は水素原子を表す。*は結合手を表す。]という構造を含むモノマーに由来する構成単位を有する重合体を広く包含するものとする。
「アミド結合」とは、カルボニル基と窒素との結合をいう。
【0035】
【化4】
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基又は水素原子を表す。Rは、アルキル基もしくは水素原子であるか、又はアルキレン基であって高分子主鎖と結合してもよい。Zは、対アニオンを表す。*は結合手を表す。]
【0036】
前記式(am)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基又は水素原子を表す。R及びRにおけるアルキル基は、それぞれ、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0037】
前記式(am)中、Rは、アルキル基もしくは水素原子であるか、又はアルキレン基であって高分子主鎖と結合してもよい。
におけるアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
また、Rは、アルキレン基であって高分子主鎖と結合してもよい。この場合、Rは、高分子主鎖とNと共に環構造を形成してもよい。
【0038】
前記式(am)中、Zは、対アニオンを表す。Zにおける対アニオンとしては、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等が挙げられる。
【0039】
≪高分子化合物(P1)≫
好ましい(P)成分としては、例えば、下記一般式(u1)で表される構成単位(u1)を有する高分子化合物(P1)(以下「(P1)成分」ともいう。)が挙げられる。
【0040】
【化5】
[式中、R00は、-NH-又は-O-を表す。R01は、メチル基又は水素原子を表す。R02は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。R03、R04及びR05は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。Zは、対アニオンを表す。]
【0041】
[構成単位(u1)]
前記式(u1)中、R00は、-NH-又は-O-を表す。
前記式(u1)中、R01は、メチル基又は水素原子を表す。
前記式(u1)中、R02は、炭素数1~6のアルキレン基を表す。R02におけるアルキレン基は、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数3のアルキレン基がより好ましい。
前記式(u1)中、R03、R04及びR05は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。R03、R04及びR05におけるアルキル基は、それぞれ、炭素数1~5のアルキル基であり、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0042】
前記式(u1)中、Zは、対アニオンを表す。Zにおける対アニオンとしては、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等が挙げられ、塩化物イオンが好ましい。
【0043】
以下に、構成単位(u1)の具体例を示す。
以下の各式中、R01は、メチル基又は水素原子を表す。
【0044】
【化6】
【0045】
(P1)成分が有する構成単位(u1)は、1種単独でもよいし2種以上であってもよい。
(P1)成分中の構成単位(u1)の割合は、該(P1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、100モル%(すなわちホモポリマー)であってもよい。
【0046】
(P1)成分が構成単位(u1)を有する共重合体である場合、(P1)成分中の構成単位(u1)の割合は、該(P1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して20~80モル%であることが好ましく、30~75モル%であることがより好ましく、35~70モル%であることがさらに好ましい。
【0047】
(P1)成分中の構成単位(u1)の割合が、前記の好ましい範囲内であると、すすぎ後の感触がより高められやすくなる。
【0048】
[構成単位(u2)]
(P1)成分が構成単位(u1)を有する共重合体である場合、(P1)成分は、前記構成単位(u1)に加えて、さらに、下記一般式(u2)で表される構成単位(u2)を有する共重合体であることが好ましい。
【0049】
【化7】
[式中、R06は、メチル基又は水素原子を表す。R07及びR08は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。]
【0050】
前記式(u2)中、R06は、メチル基又は水素原子を表す。
前記式(u2)中、R07及びR08は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基又は水素原子を表す。
07及びR08におけるアルキル基は、それぞれ、炭素数1~5のアルキル基であり、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0051】
以下に、構成単位(u2)の具体例を示す。
以下の各式中、R06は、メチル基又は水素原子を表す。
【0052】
【化8】
【0053】
(P1)成分が有する構成単位(u2)は、1種単独でもよいし2種以上であってもよい。
(P1)成分中の構成単位(u2)の割合は、該(P1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して20~80モル%であることが好ましく、25~70モル%であることがより好ましく、30~65モル%であることがさらに好ましい。
【0054】
(P1)成分中の構成単位(u2)の割合が、前記の好ましい範囲内であると、特にノーマル毛に対して、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触が発現しやすくなる。
【0055】
本実施形態の毛髪用洗浄剤において、好適な(P1)成分としては、上記構成単位(u1)(R00が-NH-である場合)の繰り返し構造からなるホモポリマー;上記構成単位(u1)(R00が-NH-である場合)と、上記構成単位(u2)(R07及びR08がいずれも水素原子である場合)との共重合体;上記構成単位(u1)(R00が-O-である場合)と、上記構成単位(u1)(R00が-NH-である場合)と、上記構成単位(u2)(R07及びR08がいずれもメチル基である場合)との共重合体が挙げられる。
【0056】
(P1)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されないが、例えば5万以上70万以下が好ましく、10万以上50万以下がより好ましい。
【0057】
≪高分子化合物(P2)≫
また、好ましい(P)成分としては、例えば、アリルアンモニウム塩由来の構成単位と、アミド結合を持つモノマー由来の構成単位と、を有する高分子化合物(P2)(以下「(P2)成分」ともいう。)が挙げられる。
アリルアンモニウム塩としては、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらの中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
アミド結合を持つモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
(P2)成分は、アリルアンモニウム塩由来の構成単位、及びアミド結合を持つモノマー由来の構成単位に加えて、さらに、その他構成単位を有してもよい。
その他構成単位としては、例えば、アクリル酸由来の構成単位、メタクリル酸由来の構成単位等が挙げられる。
【0059】
本実施形態の毛髪用洗浄剤において、好適な(P2)成分としては、アリルアンモニウム塩由来の構成単位と、アミド結合を持つモノマー由来の構成単位と、を有する二元共重合体;アリルアンモニウム塩由来の構成単位と、アミド結合を持つモノマー由来の構成単位と、アクリル酸又はメタクリル酸由来の構成単位と、を有する三元共重合体が挙げられる。
【0060】
(P2)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されないが、例えば25万以上100万以下が好ましく、30万以上80万以下がより好ましい。
【0061】
本実施形態の毛髪用洗浄剤において、(P)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(P)成分の中でも、すすぎ後の感触、具体的には、毛髪用洗浄剤由来の成分が毛髪に残存しにくいこと、及び特にノーマル毛に対して指の通りが良いことから、(P1)成分が好ましい。
【0062】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(P)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して0.10~1.5質量%が好ましく、0.20~1.0質量%がより好ましく、0.30~0.80質量%がさらに好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、すすぎ性能がより向上しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、すすぎ後、毛髪用洗浄剤由来の成分が毛髪に過剰に残存しにくくなる。
【0063】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の、(P)成分と(C)成分との比率は、例えば、(P)成分の含有量に対する、(C)成分の含有量が、(C)/(P)で表される質量比として、2~30が好ましく、5~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
この質量比の範囲内であれば、より良好な洗浄力、及びすすぎ後の感触の両立が図られやすくなる。
【0064】
<その他成分>
本実施形態の毛髪用洗浄剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(P)成分に加えて、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
その他成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪洗浄剤に配合される成分を適宜用いることができる。かかるその他成分としては、例えば、溶剤、カチオン界面活性剤、(C)成分以外のノニオン界面活性剤、(P)成分以外のポリマー、香料、保湿剤、pH調整剤、可溶化剤、粘度調整剤、殺菌剤、防腐剤、色素、各種訴求成分などが挙げられる。
【0065】
本実施形態の毛髪用洗浄剤は、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(P)成分と、その他成分と、残部の溶剤と、を混合して、各成分を溶剤に溶解することにより製造することができる。
【0066】
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(P)成分を溶剤に溶解した溶液の25℃におけるpHが、例えば3.5~7.0の範囲であるものが好ましく、pHが4.0~6.0の範囲であるものがより好ましく、pHが4.5~5.5の範囲であるものがさらに好ましい。
なお、毛髪用洗浄剤のpHは、化粧品原料基準(第2版)の一般試験法に定められた方法を用い、毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
【0067】
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(P)成分を溶剤に溶解した溶液の25℃における粘度が、例えば500~3000mPa・sの範囲であるものが好ましく、粘度が1000~2000mPa・sの範囲であるものがより好ましい。
なお、毛髪用洗浄剤の粘度は、化粧品原料基準第2法に従い、BM型粘度計にてローターNo.4(粘度の低いものはNo.3)を用い、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出する。
【0068】
以上説明した本実施形態の毛髪用洗浄剤は、洗浄成分として(A)成分と(B)成分と(C)成分とを組み合わせて用い、かつ、コンディショニング成分として特定のアクリル系高分子化合物を採用している。
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(C)成分を含む3成分を組み合わせた洗浄成分により、頭皮の皮脂除去性が高められている。
加えて、汎用のカチオン化セルロース又はカチオン化グアーガムに代えて、特定のアクリル系高分子化合物の採用により、すすぎ性能が改質している。すなわち、すすぎ後、毛髪用洗浄剤由来の成分(洗浄成分とコンディショニング成分との複合体)が毛髪に残存しにくくなり、すすぎ後の感触がより高められている。
【0069】
さらに、特定のアクリル系高分子化合物の種類を選択することで、流水中のすすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触が発現しやすくなり、特にノーマル毛に対して前記感触を付与することができる。
【0070】
かかる本実施形態の毛髪用洗浄剤による効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
従来汎用のカチオン化セルロース又はカチオン化グアーガムをコンディショニング成分とした複合体の場合、流水中のすすぎの際、毛髪表面との間で、疎水性相互作用が働くことにより、複合体が毛髪表面に吸着すると考えられる。また、生成する複合体は、凝集しやすく、そのサイズが後述の複合体に比べて相対的に大きい。
本実施形態で採用する、特定のアクリル系高分子化合物をコンディショニング成分とした複合体の場合、流水中のすすぎの際、毛髪表面との間で、疎水性相互作用と、水素結合力とが働くことにより、複合体が毛髪表面に吸着すると考えられる。また、生成する複合体は、凝集しにくく、そのサイズが前者に比べて相対的に小さい。
このような両者の違いによって、本実施形態の毛髪用洗浄剤によれば、すすぎ後の感触がより高められる、と推測される。
【実施例
【0071】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0072】
<使用した成分>
実施例及び比較例では、以下に示す成分を用いた。
【0073】
(A)成分:アニオン界面活性剤
A-1:ラウレス硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、商品名「エマールE-27C」、花王株式会社製
【0074】
(B)成分:両性界面活性剤
B-1:ラウラミドプロピルベタイン、商品名「ソフタゾリンLPB-R」、川研ファインケミカル株式会社製
【0075】
(C)成分:HLBが8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル
C-1:ラウリン酸ポリグリセリル-10(モノラウリン酸ポリグリセリル)、商品名「グリサーフS-10ML」、青木油脂工業株式会社製;HLB15.2
【0076】
(P)成分:アクリル系高分子化合物
P-1:ポリクオタニウム-39(アクリル酸/ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸アミド共重合体)、商品名「DOCQUAT 39H」、DOC Japan株式会社製
【0077】
P-2:ポリアクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、商品名「N-DurHance A-1000」、Ashland製;重量平均分子量(Mw)20万、純分21質量%
【0078】
P-3:アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、商品名「AA-2000」、Ashland株式会社製;重量平均分子量(Mw)25万、純分20質量%
【0079】
P-4:ポリクオタニウム-73、商品名「ダイヤスリーク C-802」、三菱ケミカル株式会社製;重量平均分子量(Mw)40万、純分20質量%
【0080】
(P’)成分:(P)成分の比較成分
P’-1:ポリクオタニウム-10(カチオン化セルロース;塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース)、商品名「カチナールHC-100」、東邦化学工業株式会社製;純分100質量%
【0081】
P’-2:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(カチオン化グアーガム)、商品名「ジャガー C-13S」、三晶株式会社製;純分100質量%
【0082】
その他成分
保湿剤:ブチレングリコール、商品名「1,3-ブチレングリコールUK」、株式会社ダイセル製
保湿剤:プロピレングリコール、商品名「プロピレングリコール」、ダウ・ケミカル日本株式会社製
保湿剤:ソルビトール、商品名「ソルビトール」、花王株式会社製
pH調整剤:クエン酸、商品名「クエン酸」、昭和化工株式会社製
可溶化剤:PEG-20水添ヒマシ油、商品名「ペグノールHC-20」、東邦化学工業株式会社製
粘度調整剤:塩化ナトリウム、商品名「塩化ナトリウム」、富田製薬株式会社製
溶剤:水、商品名「精製水(局方)」、小堺製薬株式会社製
【0083】
<毛髪用洗浄剤の調製>
(実施例1~4、比較例1~2)
下記の表1に示す組成及び含有量となるように、各例の毛髪用洗浄剤を以下のようにして調製した。なお、実施例1については参考例扱いとする。
具体的には、溶剤である水に、(P)成分又は(P’)成分を加温しながら分散し、80℃にて(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他成分を順次、添加しながら混合溶解することにより、各例の毛髪用洗浄剤を得た。
【0084】
表1中、各成分の数値は、毛髪用洗浄剤中の各成分の含有量を示し、毛髪用洗浄剤の総質量に対する割合(質量%;純分換算)を意味する。
毛髪用洗浄剤のpHは、pHメーター(製品名HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定した。
毛髪用洗浄剤の粘度は、BM型粘度計にてローターNo.4を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤に対し、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出した。
【0085】
【表1】
【0086】
<評価>
各例の毛髪用洗浄剤を用いて毛束を洗髪し、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定することにより、すすぎ後の感触について評価した。具体的には以下のようにして評価を行った。
【0087】
[毛束の準備]
ノーダメージの毛束として購入した、長さ10cmの毛束1gを、ノーマル毛用の毛束として使用した。
また、ノーダメージの毛束として購入した、長さ10cmの毛束1gを、市販のブリーチ剤(株式会社マンダム製)で、その取り扱い説明書の処理時間の2倍の時間にて処理して水洗し、さらに乾燥してから、ダメージ毛用の毛束として使用した。
【0088】
[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の湿潤状態の場合]
手順(1):ノーマル毛用及びダメージ毛用のそれぞれの長さ10cmの毛束1gを、40℃の温水により濡らして軽く絞り、試料である毛髪用洗浄剤0.1gを、この濡れた毛束の全体に延ばすように塗布した。
手順(2):試料を塗布した毛束を、40℃の温水10mLに浸漬してすすぐ操作を2回行い、この後、水がしたたり落ちないように軽く絞った。
手順(3):軽く絞った後の毛束に、櫛入れを5回行ってから、櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定を開始した。
手順(4):少なくとも8回の櫛入れの際の引張強度を測定した。
引張強度の測定機器には、イマダ製のフォースゲージZTA/ZTSシリーズ型式DST-2Nを使用した。
引張強度の測定は、前記フォースゲージを固定し、毛束を吊り下げて、櫛通しを行いながら行った。すなわち、櫛を、毛束の長さ方向に対して垂直に保ちつつ、重力方向の下方へまっすぐに通したときの最大荷重を測定した。
また、引張強度の測定は、櫛入れ最初の1~2回目の測定値、及び毛束にたまたま櫛が引っかかってしまったような場合の異常値をいずれも除外した後の、複数の測定値の平均値を採用した。
【0089】
[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の乾燥状態の場合]
上記の手順(1)及び手順(2)を同様にして行った。
手順(2)の後、軽く絞った後の毛束を、室温(25℃)で24時間自然乾燥した。
この後、自然乾燥した毛束に、櫛入れを5回行ってから、櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定を開始した。そして、上記の手順(4)を同様にして行い、櫛入れの際の引張強度を測定した。
【0090】
各例の毛髪洗浄剤について、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定した結果を、図1及び図2に示した。
尚、縦軸は、櫛入れの際の引張強度(単位:N(ニュートン))を示している。
【0091】
図1は、ノーマル毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定結果を示すグラフである。
図2は、ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態及び乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定結果を示すグラフである。
【0092】
図1に示す結果から、本発明を適用した実施例1~4の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1~2の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重が低く抑えられていることが確認できる。
これは、実施例1~4の毛髪用洗浄剤を用いた場合には、ノーマル毛用の毛束において、すすぎ後、毛髪用洗浄剤由来の成分が毛髪に残存しにくいこと、が考えられる。
【0093】
また、実施例2~3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1~2の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、さらに、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重も低く抑えられていることが確認できる。
これより、実施例2~3の毛髪用洗浄剤を用いた場合には、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触が発現しやすいことが考えられる。
【0094】
図2に示す結果から、本発明を適用した実施例1、2、4の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1~2の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重が低く抑えられていることが確認できる。
これは、実施例1、2、4の毛髪用洗浄剤を用いた場合には、ダメージ毛用の毛束において、すすぎ後、毛髪用洗浄剤由来の成分が毛髪に余分に残存しにくいことが考えられる。
図1
図2