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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20250106BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250106BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/86
A61Q11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020198350
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086387
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 直樹
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002019(JP,A)
【文献】特開2018-123086(JP,A)
【文献】特開2017-119638(JP,A)
【文献】国際公開第2017/081877(WO,A1)
【文献】特開2018-197198(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104730(WO,A1)
【文献】特開2017-214347(JP,A)
【文献】特開2017-119636(JP,A)
【文献】特開2014-162725(JP,A)
【文献】特開2019-011300(JP,A)
【文献】特開2019-011301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D):
(A)グリチルレチン酸はその塩 0.01質量%以上0.2質量%以下
(B)ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン 0.02質量%以上5質量%以下
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤
(D)水
を含有し、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が0.5以上1.5以下であり、かつ25℃におけるpHが8以上11以下である液体口腔用組成物。
【請求項2】
成分(D)の含有量が、55質量%以上99.6質量%以下である請求項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の合計が、0.07~6質量%である請求項1又は2に記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
アニオン界面活性剤の含有量が0.05質量%以下であるか、或いはアニオン界面活性剤を含有しない請求項1~3のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、抗炎症性作用を有することで知られるグリチルレチン酸やその誘導体は、歯周炎や歯周病等の予防又は改善効果を発揮することが期待されることから、種々の口腔用組成物に用いられている。
例えば、特許文献1には、アルカリ性領域でありながら充分な量の香料を安定に含有し、油溶性薬効成分としてβ-グリチルレチン酸も含有し得る液体口腔用組成物が開示されている。また、特許文献2には、ノニオン界面活性剤とアルキル硫酸ナトリウム等を特定量かつ特定の質量比で含有し、β-グリチルレチン酸等の油溶性薬効成分の口腔内表面への吸着を促進しつつ、低温保存安定性を高めた泡吐出容器入り液体口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-119636号公報
【文献】特開2018-123086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載のいずれの液体口腔用組成物であっても、グリチルレチン酸等の組成物への溶解性を保持し、グリチルレチン酸等の口腔内粘膜への吸着量を高めつつ、低温域から高温域にわたる幅広い温度変化に対応し得る保存安定性をも確保するには、さらなる改善を要する状況にある。
【0005】
すなわち、本発明は、組成物中におけるグリチルレチン酸等の良好な溶解性を確保し、グリチルレチン酸等の口腔内粘膜への吸着量を一層高めるとともに、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を示す液体口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、種々検討したところ、アルカリ性領域下、特定量のグリチルレチン酸或いはその誘導体又はその塩(以下、「グリチルレチン酸等」とも称する)を含有するなか、ベタイン型両性界面活性剤と特定のノニオン界面活性剤とを特定の質量比で含有することにより、グリチルレチン酸の良好な溶解性の発現と口腔内粘膜への吸着量の増大とを両立させるとともに、幅広い温度域において優れた保存安定性を発現できる液体口腔用組成物を見出した。
【0007】
したがって、本発明は、次の成分(A)~(D):
(A)グリチルレチン酸或いはその誘導体又はその塩 0.01質量%以上0.2質量%以下
(B)ベタイン型両性界面活性剤
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤
(D)水
を含有し、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が0.5以上3以下であり、かつ25℃におけるpHが8以上11以下である液体口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体口腔用組成物によれば、グリチルレチン酸等の組成物への良好な溶解性を保持しながら、グリチルレチン酸等の口腔内粘膜への吸着量を増大させることができる。また、低温環境下であっても高温環境下であっても、優れた保存安定性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)として、グリチルレチン酸或いはその誘導体又はその塩を0.01質量%以上0.2質量%以下含有する。かかる成分(A)は、抗炎症作用、歯槽骨吸収抑制作用、ヒスタミン遊離抑制作用等をもたらす成分であり、甘草等から得ることができる。本発明の液体口腔用組成物であれば、温度変化に左右されず成分(A)を良好に溶解したまま、口腔内粘膜への吸着量を有効に高めることができる。
【0010】
成分(A)のグリチルレチン酸としては、α-グリチルレチン酸、β-グリチルレチン酸等が挙げられる。成分(A)のグリチルレチン酸の誘導体としては、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド等が挙げられる。また、成分(A)のグリチルレチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのなかでも、β-グリチルレチン酸が好ましい。
【0011】
成分(A)の含有量は、成分(A)の有効作用を充分に享受する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、成分(A)の良好な溶解性を保持する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、0.2質量%以下であって、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、0.01質量%以上0.2質量%以下であって、好ましくは0.02~0.15質量%であり、より好ましくは0.03~0.08質量%である。
【0012】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(B)として、ベタイン型両性界面活性剤を含有する。かかる成分(B)を含有し、かつ後述する特定のノニオン界面活性剤である成分(C)との間における特定の質量比((C)/(B))を有することにより、成分(A)の高い溶解性を保持しながら、成分(A)の口腔内粘膜への吸着を効果的に促進し、幅広い温度域、低温域のみならず高温域においても保存安定性を有効に高めることができる。
【0013】
成分(B)としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、低温域における析出物の発生を効果的に抑制し、かつ高温域における優れた保存安定性を有効に発現させる観点から、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン、及びアルキルスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタインから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アルキルの炭素数が2~5であるヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタインがさらに好ましく、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインがよりさらに好ましい。
【0014】
成分(B)の含有量は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着量を増大させる観点、及び、低温域における析出物の発生を効果的に抑制し、かつ高温域における優れた保存安定性を有効に発現させる観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.15質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.2質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.3質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、成分(A)の良好な溶解性を保持する観点、及び、温度変化に左右されることのない優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.45質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.02質量%以上5質量%以下であって、より好ましくは0.05~4質量%であり、さらに好ましくは0.1~3質量%であり、よりさらに好ましくは0.15~2質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~1.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.3~0.45質量%である。
【0015】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤を含有する。かかる成分(C)を含有することにより、特に高温域において加水分解しやすいノニオン界面活性剤でありながらも、上記成分(B)と相まって、成分(A)の良好な溶解性を確保しつつ口腔内粘膜への吸着を有効に促進することができ、高温域においても優れた保存安定性を確保することができる。
【0016】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20~100のものが挙げられる。なかでも、かかるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数は、成分(A)の良好な溶解性の確保と、口腔内粘膜への吸着量の増大とをともに有効に実現する観点から、より好ましくは20~60であり、成分(A)の口腔内粘膜の吸着性の観点から、好ましくは20~50であり、より好ましくは30~50である。
【0017】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンが2~20個縮合したポリグリセリンに、炭素数8~24の脂肪酸が1~4個エステル結合したものが挙げられる。なかでも、成分(A)の良好な溶解性の確保と、口腔内粘膜への吸着量の増大とをともに有効に実現する観点から、炭素数12~20の脂肪酸由来のものが好ましく、炭素数12~18の脂肪酸由来のものがより好ましく、炭素数12~14の脂肪酸由来のものがさらに好ましく、モノエステルが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの平均縮合度は、同様の観点から、好ましくは2~20であり、より好ましくは5~12である。
【0018】
成分(C)の含有量は、成分(A)の良好な溶解性の確保しつつ、口腔内粘膜への吸着量の増大を有効に図る観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、特に高温域において、成分(C)の不要な加水分解により、組成物の保存安定性が低下するのを抑制する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1.1質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.05~1.2質量%であり、より好ましくは0.1~1.1質量%であり、さらに好ましくは0.2~1質量%である。
【0019】
本発明の液体口腔用組成物において、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))は、成分(A)の良好な溶解性の発現と口腔内粘膜への吸着量の増大とを両立させる観点から、0.5以上であって、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは1.2以上である。また、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))は、幅広い温度域における優れた保存安定性の発現を確保する観点から、3以下であって、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは1.5以下である。そして、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))は、0.5以上3以下であって、好ましくは0.8~2.5であり、より好ましくは1.2~1.5である。
【0020】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の合計は、アルカリ性領域下で洗浄性能を十分に発揮しながら、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を発現させる観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.07~6質量%であり、より好ましくは0.7~3質量%であり、さらに好ましくは0.85~2.5質量%である。
【0021】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(D)として、水を含有する。本発明における成分(D)の水とは、液体口腔用組成物に配合した精製水やイオン交換水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、液体口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる成分(D)の水を含有することにより、各成分を良好に分散又は溶解させて口腔内で良好に拡散させ、成分(A)の口腔内粘膜への吸着量を有効に増大させながら、優れた保存安定性を確保することができる。
【0022】
成分(D)の含有量は、成分(A)の良好な溶解性の発現と口腔内粘膜への吸着量の増大とを両立させる観点、及び温度変化に左右されることのない優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着量を有効に増大させる観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは99.6質量%以下であり、より好ましくは99.4質量%以下であり、さらに好ましくは99.2質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは55~99.6質量%であり、より好ましくは60~99.4質量%であり、さらに好ましくは65~99.2質量%である。
【0023】
本発明の液体口腔用組成物は、上記成分のほか、25℃におけるpHを後述する所定の範囲に容易に調整して、所望の効果を有効に発揮させる観点から、pH調整剤を含有するのが好ましい。かかるpH調整剤としては、炭酸塩や重炭酸塩;水酸化カリウムや水酸化ナトリウム;クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸又はこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを含有するのがより好ましい。
【0024】
pH調整剤の含有量は、液体口腔用組成物のpHを安定化させる観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.1~2質量%であり、より好ましくは0.15~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.18~1質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~0.8質量%である。また、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを含有する場合、炭酸水素ナトリウムの含有量は、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの合計含有量中に、好ましくは40~70質量%であり、より好ましくは45~60質量%である。
【0025】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)の良好な溶解性と温度変化に左右されることのない優れた保存安定性を確保する観点から、アニオン界面活性剤の含有を制限するのが好ましい。
かかるアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、アシルグルタミン酸ナトリウムやアシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ラウリルメチルタウリンナトリウム等のN-メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、及びポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
アニオン界面活性剤の含有量は、製造直後から低温保存後に至るまで良好な安定性を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の液体口腔用組成物は、アニオン界面活性剤を実質的に含有しないのが好ましい。
【0026】
本発明の液体口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分のほか、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の湿潤剤;ソルビトール、エリスリトール、還元パラチノース、マンニトール等の糖アルコール;アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム等の粘結剤;パラオキシ安息香酸イソブチル、サリチル酸メチル等の保存剤;フッ化物;塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤;上記成分(B)以外の両性界面活性剤;上記成分(C)以外のノニオン界面活性剤;香料;顔料;色素等を適宜含有させることができる。
【0027】
本発明の液体口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(A)の口腔内粘膜への吸着量を有効に増大させつつ、高い洗浄性能を発揮させる観点、及び温度変化に左右されることのない優れた保存安定性を確保する観点から、8以上11以下であり、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは9以上であり、好ましくは10.8以下であり、より好ましくは10.5以下である。
なお、本発明の液体口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値を意味する。
【0028】
本発明の液体口腔用組成物の形態としては、洗口剤、マウススプレー、液状歯磨剤、ジェル状歯磨剤が挙げられる。
本発明の液体口腔用組成物を適用するにあたり、歯磨組成物のようにブラッシング行為を伴うことなく、口腔内に直接含嗽し、その後に水等により漱ぐのみでよい。本発明の液体口腔用組成物であれば、漱いだ後においても成分(A)を口腔内粘膜へ有効に吸着させることができる。或いは本発明の液体口腔用組成物を泡吐出容器内に充填し、吐出口から泡状の組成物として口腔内に吐出させ、適用することも可能である。
【実施例
【0029】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0030】
[実施例1~7、比較例1~7]
表1に示す処方にしたがって、液体口腔用組成物を調製した。次いで、得られた液体口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって各測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0031】
《25℃におけるpHの測定》
pH電極を用い、温度25℃にて測定した。
【0032】
《成分(A)の溶解性の評価》
製造直後の液体口腔用組成物について、得られた各液体口腔用組成物を目視により観察し、以下の基準にしたがって評価した。
A:完全に均一で透明であった
B:やや白濁していたものの、均一に溶解した状態であった
C:白濁していたものの、未溶解のものはなかった
D:未溶解のものが確認された
【0033】
《低温保存安定性の評価》
得られた各液体口腔用組成物をガラス瓶に充填し、5℃で7日間保存した後、ガラス瓶の外側から内容物の液体口腔用組成物を目視により観察し、以下の基準にしたがって評価した。
A:完全に透明で均一であった
B:多少白濁していたものの、均一であった
C:白濁していたものの、析出物までは確認されなかった
D:析出物が確認された
【0034】
《高温保存安定性の評価》
得られた各液体口腔用組成物をガラス瓶に充填し、60℃で3日間保存した後、ガラス瓶の外側から内容物の液体口腔用組成物を目視により観察し、以下の基準にしたがって評価した。
A:完全に透明で均一であった
B:多少白濁していたものの、均一であった
C:白濁していたものの、析出物までは確認されなかった
D:析出物が確認された
【0035】
《成分(A)の吸着量測定》
得られた各液体口腔用組成物を用い、口腔内粘膜のモデルとしてシリコーンシートを採用し、以下の方法にしたがって、かかるシリコーンシートへのβ-グリチルレチン酸の吸着量を測定した。
具体的には、シリコーンシート(500mm×500mm、厚さ0.1mm、タイガーズポリマー社製)上に、円柱管(横断面積7.07×10-42)を一方の開口端面をシリコーンシートの表面に密着させて載置させた。次に、試料とシリコーンシートとの接触面積が円柱管の内側横断面積と同じになるよう、各試料1.0gを円柱管の他端開の口から円柱管内に投入して、円柱管の周面に包囲された円柱管内側のシリコーンシートの表面上に適用させ、試料とシリコーンシートとを接触させたまま2分間放置した。
得られた各シリコーンシートを50mLビーカー内のイオン交換水に30秒間浸漬した後、ビーカーから取り出して、抽出液1.5mL(下記に示す移動相)を30秒間適用して成分(A)を回収し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記測定条件にしたがって、β-グリチルレチン酸(A)の定量(μmol/m2)を行った。
【0036】
<HPLC測定条件>
装置:日立高速液体クロマトグラム La chromElite
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:CAPCELL PAK SCX UG80(4.6×100mm、5μm)(資生堂(株))
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水の混液(4:1)+0.1mol/L リン酸
流量:1.0mL/分
【0037】
【表1】