(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
E04H1/04 B
(21)【出願番号】P 2020212446
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】河合 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 満
(72)【発明者】
【氏名】立本 良
(72)【発明者】
【氏名】荒木 爲博
(72)【発明者】
【氏名】大平 眞
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295483(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226516(JP,U)
【文献】特開2010-248695(JP,A)
【文献】特開2005-213780(JP,A)
【文献】特開2006-249756(JP,A)
【文献】特開2003-020761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/04
E04B 1/00
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周の柱及び梁が、外周部の住戸外壁から外側に張り出すバルコニーの内外方向中間部に位置し、
平面視において、前記柱の前記バルコニーの内外方向の厚みがこれに直交する方向の厚みよりも小さく、
前記バルコニーには避難隔壁が設置さ
れ、
前記柱は前記バルコニーにおいて前記住戸外壁とバルコニーの外側縁とから等距離の位置にある建物。
【請求項2】
前記外周の柱及び梁の住戸側の空間に吸排気口又は竪樋を納め、外部から見えなくしてある請求項1に記載の建物。
【請求項3】
外周の柱及び梁が、外周部の住戸外壁から外側に張り出すバルコニーの内外方向中間部に位置し、
平面視において、前記柱の前記バルコニーの内外方向の厚みがこれに直交する方向の厚みよりも小さく、
前記バルコニーには避難隔壁が設置さ
れ、
前記外周の柱及び梁の住戸側の空間に吸排気口又は竪樋を納め、外部から見えなくしてある建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅、教育施設、オフィスビル、商業施設やレジャー施設、医療・福祉施設、宿泊施設等として好適な建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物として、外周部に配した住戸の外壁から外方に張り出すバルコニーを設け、ラーメン構造を採用したタワー型集合住宅が広く知られている。斯かる従来の建物では、住戸外壁(住戸内部とバルコニーとの境界)に外周の架構(柱と梁)を設置するインフレーム工法が採用されるか(例えば特許文献1参照)、あるいは、外周の架構を建物の最外周部(バルコニーの外側縁)に配し、梁は逆梁とするアウトフレーム工法が採用されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-129124号公報
【文献】特開2003-314081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者(インフレーム工法)では、外周の柱や梁部分が住戸内に現れて住戸(居室)プランの制約になる。また、後者(アウトフレーム工法)では、建物の外周面上に現れる外周の架構が外観の制約になる。
【0005】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、外周部に設ける居室プランの自由度を高めつつ、外観については架構による制約を少なくし、その向上を図ることも容易な建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る建物は、外周の柱及び梁が、外周部の住戸外壁から外側に張り出すバルコニーの内外方向中間部に位置し、平面視において、前記柱の前記バルコニーの内外方向の厚みがこれに直交する方向の厚みよりも小さく、前記バルコニーには避難隔壁が設置され、前記柱は前記バルコニーにおいて前記住戸外壁とバルコニーの外側縁とから等距離の位置にある(請求項1)。
【0007】
上記建物において、前記外周の柱及び梁の住戸側の空間に吸排気口又は竪樋を納め、外部から見えなくしてあってもよい(請求項2)。
また、本発明に係る建物は、外周の柱及び梁が、外周部の住戸外壁から外側に張り出すバルコニーの内外方向中間部に位置し、平面視において、前記柱の前記バルコニーの内外方向の厚みがこれに直交する方向の厚みよりも小さく、前記バルコニーには避難隔壁が設置され、前記外周の柱及び梁の住戸側の空間に吸排気口又は竪樋を納め、外部から見えなくしてあってもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
本願発明では、外周部に設ける居室プランの自由度を高めつつ、外観については架構による制約を少なくし、その向上を図ることも容易な建物が得られる。
【0009】
すなわち、建物外周部の居室(例えば住戸)外壁から外側に張り出すバルコニーを設ける建物において、居室外壁に外周の架構を設置するインフレーム工法では、外周の架構が外壁に接したり居室内に現れたりして居室プランが制約されるが、本願の各請求項に係る発明の建物では、外周の架構が外壁に接したり居室内に現れたりしないので居室プランが制約されず、その自由度を高めることができる。また、外周の架構を建物の最外周部(バルコニーの外側縁)に配するアウトフレーム工法では、建物の外周面上に現れる外周の架構が外観の制約になるが、本発明の建物では、外周の架構が建物の外周面上に現れないので外観が制約されず、その自由度を高めることができる。
【0010】
さらに、本発明の建物では、外周の架構の居室側の空間(あるいは居室外壁)に、吸排気口や竪樋等を納め、外部から見えなくすることで、すっきりした外観を実現することができる。
【0011】
請求項1に係る発明の建物では、バルコニーの内外方向中間部に設ける外周の柱をその内外方向に薄くすることにより、バルコニーにおける避難通路の幅を十分に確保することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る建物の説明図である。
【
図2】(A)及び(B)は、前記建物の要部の縦断面図及び平面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、比較例に係るインフレーム工法を採用した建物の要部の縦断面図及び平面図である。
【
図4】(A)及び(B)は、比較例に係るアウトフレーム工法を採用した建物の要部の縦断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0014】
図1は、本例の建物の全体構成を概念的に示す説明図(斜視図)であり、この図に示すように、本例の建物は、コア部分に設けられて上下方向に(複数階層にわたって)連続するコアウォール(連層耐震壁)1と、頂部、中間部に位置するアウトリガー耐震壁2,3とを具備する(
図1では、コアウォール1、アウトリガー耐震壁2,3を分かり易く示すため、建物の外形を一点鎖線で示している)。また、本例の建物は、ラーメン架構を有する超高層集合住宅建物として構成してあり、その平面形状が略正方形状である塔状を呈する。なお、ラーメン架構を構成する柱及び梁は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造とすることが考えられる。
【0015】
平面視略正方形状を呈するコアウォール1は地震力の大部分を負担するもので、高剛性の耐震壁として構成してある。そして、コアウォール1の内部には、エレベーターホールや階段室等の共用部を設け、コアウォール1の外部(つまり建物外周部)には、複数の住戸4(
図2(A)及び(B)参照)を設ける。
【0016】
アウトリガー耐震壁2,3は建物の浮き上がりを抑制するためのもので、例えばコアウォール1に剛接合するとともに、建物外周の架構に結合してある。本例では、各アウトリガー耐震壁2,3を、コアウォール1とで平面視略「井」の字形をなすように設けてある。また、本例では、頂部のアウトリガー耐震壁2より中間部のアウトリガー耐震壁3の上下厚みを大きくしてある。
【0017】
そして、本例では、
図2(A)及び(B)に示すように、外周の柱5及び梁6が、外周部の住戸4の外壁7から外側に張り出すバルコニー8の内外方向中間部に位置するようにしてある。すなわち、柱5はバルコニー8において外壁7からもバルコニー8の外側縁からも離間した位置(図示例では外壁7とバルコニー8の外側縁とから略等距離の位置にあるが、これより内側寄りとしても外側寄りとしてもよい)に位置し、梁6の天端はバルコニー8の床の水勾配の途中に位置する。なお、柱5及び梁6は、住戸4の開口部からの視覚的制限にならないように、かつ、バルコニー8に避難隔壁を設置する妨げにならないように、その大きさや位置、配筋の納まりを工夫してあるのが好ましい。
【0018】
ここで、建物外周部の住戸4の外壁7から外側に張り出すバルコニー8を設ける建物において、
図3(A)及び(B)に示すように、住戸外壁7に外周の架構を設置するインフレーム工法では、外周の架構が外壁7に接したり住戸4内に現れたりし、住戸プランが制約されるが、本例の建物では、外周の架構が外壁7に接したり住戸4内に現れたりしないので住戸プランが制約されず、その自由度を高めることができる。また、
図4(A)及び(B)に示すように、外周の架構を建物の最外周部(バルコニー8の外側縁)に配するアウトフレーム工法では、建物の外周面上に現れる外周の架構(柱5及び梁6)が外観の制約になるが、本例の建物では、外周の架構(柱5及び梁6)が建物の外周面上に現れないので外観が制約されず、その自由度を高めることができる。
【0019】
さらに、本例の建物では、外周の架構(柱5及び梁6)の住戸4側の空間(あるいは住戸外壁7)に、吸排気口や竪樋等を納め、外部から見えなくすることで、すっきりした外観を実現することができる。
【0020】
また、本例の建物では、
図2(B)に示すように、平面視において、バルコニー8の内外方向中間部に位置する柱8の内外方向の厚みをこれに直交する方向の厚みよりも小さい扁平柱としてある。このように、バルコニー8の内外方向中間部に設ける外周の柱5をその内外方向に薄くすることにより、バルコニー8における避難通路の幅を十分に確保することが容易となる。
【0021】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0022】
本発明は、本例の建物に限らず、外周部にバルコニー8が付随する住戸4や居室を設ける建物に広く適用可能である。すなわち、本例の建物は、コアウォール1と頂部、中間部に設けたアウトリガー耐震壁2,3とによって地震力に抵抗することにより、住戸プランの制約となる柱、梁、耐震壁の数量、メンバーを最小限に抑えることができるという利点を有するものであるが、本発明は、これに限らず、例えばコアウォール1やアウトリガー耐震壁2,3を備えない複数階層を有する建物にも適用可能である。また、本例の建物は、平面形状が略正方形状をしているが、平面形状が他の形状をしていてもよい。
【0023】
ここで、居室には、例えば、住戸のリビング・ダイニング・寝室・書斎、教育施設の教室・職員室、オフィス(事務所)の事務室・会議室・役員室・守衛室、物販店舗の売り場・事務所・休憩室、飲食店の客席、病院の病室・診察室・ナースステーション、ホテルの客室・ロビー、工場の作業室や研究所の研究室等を挙げることができる。
【0024】
本例では、バルコニー8の内外方向中間部に位置する柱8は全て、平面視におけるその内外方向の厚みがこれに直交する方向の厚みよりも小さい扁平柱としてあるが、これに限らず、当該柱8の一部または全部を、その内外方向の厚みをこれに直交する方向の厚みよりも大きくしてもよく、両厚みを同等としてもよい。
【0025】
さらに、本発明は、外周部にバルコニー8の代わりに庇が付随する住戸4や居室を設ける建物にも広く適用可能である。
【0026】
本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1 コアウォール
2 アウトリガー耐震壁
3 アウトリガー耐震壁
4 住戸
5 柱
6 梁
7 外壁
8 バルコニー