(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】線材送り装置
(51)【国際特許分類】
B21F 23/00 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
B21F23/00 C
(21)【出願番号】P 2021011748
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 赴仁
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-122204(JP,A)
【文献】特開2002-160152(JP,A)
【文献】特開平09-300199(JP,A)
【文献】特開昭62-222975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールの線材束から繰り出された線材の線材加工装置への供給経路において前記線材を送る送りロールと、
前記供給経路の前記線材のうち前記リール及び前記送りロール間の繰り出し側線材部分が掛け渡され、前記繰り出し側線材部分の弛み量の変化により変位して前記繰り出し側線材部分への接触を維持する繰り出し側可動ロールと、
前記線材加工装置における前記線材の送り速度の情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて、前記送りロールによる前記線材の送り速度を前記線材加工装置における前記線材の送り速度に追従させるための、前記送りロールの回転速度の制御量を決定する送り制御量決定部と、
前記送り制御量決定部が決定した制御量で前記送りロールの回転速度を制御する送り制御部と、
前記線材束の直径が短いほど速い速度に前記リールの回転速度を制御するリール制御部と、
前記供給経路の前記線材のうち前記送りロール及び前記線材加工装置間の送り側線材部分が掛け渡され、前記送り側線材部分の弛み量の変化により変位して前記送り側線材部分への接触を維持する送り側可動ロールと、
を備え
、
前記繰り出し側可動ロールは前記送り側可動ロールよりも大きい範囲で変位可能とされ、
前記送り制御量決定部は、前記送り側可動ロールの変位量に基づいて前記送りロールの回転速度の制御量を決定する線材送り装置。
【請求項2】
前記リール制御部は、前記繰り出し側可動ロールの変位量に基づいて前記リールの回転速度を制御する請求項1に記載の線材送り装置。
【請求項3】
前記送り制御量決定部が決定した制御量に基づいて、前記リールの回転速度の制御量を決定するリール制御量決定部をさらに備え、前記リール制御部は、前記リール制御量決定部が決定した制御量で前記リールの回転速度を制御する請求項2に記載の線材送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材送り装置は、リールの線材を線材加工装置に送り込む。線材加工装置では、加工部における線材の加工工程の進行に応じて、加工部に対する線材の送りが間欠的に停止される。線材送り装置が線材加工装置に追従して線材の送りを停止させると、送りの停止後にリールが惰性でしばらく回転する間に線材束の巻きが緩み、線材がリールの周りにだぶついてしまう。
【0003】
特許文献1には、リールの回転速度を制御して、リールから繰り出される線材の送り速度を線材加工装置の加工部に対する線材の送り速度に追従させる技術が記載されている。この技術では、リールから線材加工装置に送り込まれる線材を、2つの定位置ローラ間の可動ローラにループさせる。リールと線材加工装置との送り速度差による線材のループ長さの変化量を演算し、この変化量を考慮して推定したリールの線材束の直径に応じて、リールの回転速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、線材加工装置における線材の送り速度の変化を線材のループ長さの変化により緩和させて、線材加工装置の線材の送り速度に対するリールが繰り出す線材の送り速度の追従性を下げている。このため、線材加工装置が送り速度を急激に増加させると、追従性の低いリール側では線材の送り速度の増加が追いつかなくなる可能性がある。線材加工装置における線材の送り速度の増加にリール側が追いつかないと、線材加工装置に供給される線材に過剰な張力が加わる。
【0006】
線材加工装置に供給された線材に過剰な張力が加わった場合、線材加工装置の加工部に線材を送るフィードローラによる線材のニップ力が低いと、フィードローラが線材の送り速度よりも早く回転して空回りする。この空回りにより、フィードローラが線材を必要な速度で加工部に送ることができなくなってしまう。空回りを回避するためにフィードローラのニップ力を高くすると、ニップ力により線材の断面形状が変形し、線材を加工した製品の表面に本来は存在しない凹凸ができてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様に係る線材送り装置は、
リールの線材束から繰り出された線材の線材加工装置への供給経路において前記線材を送る送りロールと、
前記供給経路の前記線材のうち前記リール及び前記送りロール間の繰り出し側線材部分が掛け渡され、前記繰り出し側線材部分の弛み量の変化により変位して前記繰り出し側線材部分への接触を維持する繰り出し側可動ロールと、
前記線材加工装置における前記線材の送り速度の情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて、前記送りロールによる前記線材の送り速度を前記線材加工装置における前記線材の送り速度に追従させるための、前記送りロールの回転速度の制御量を決定する送り制御量決定部と、
前記送り制御量決定部が決定した制御量で前記送りロールの回転速度を制御する送り制御部と、
前記線材束の直径が短いほど速い速度に前記リールの回転速度を制御するリール制御部と、
前記供給経路の前記線材のうち前記送りロール及び前記線材加工装置間の送り側線材部分が掛け渡され、前記送り側線材部分の弛み量の変化により変位して前記送り側線材部分への接触を維持する送り側可動ロールと、
を備え、
前記繰り出し側可動ロールは前記送り側可動ロールよりも大きい範囲で変位可能とされ、
前記送り制御量決定部は、前記送り側可動ロールの変位量に基づいて前記送りロールの回転速度の制御量を決定する。
【0008】
本発明の1つの態様に係る線材送り装置では、リールと線材加工装置との間の送りロールが、線材加工装置における線材の送り速度に追従して、リールから繰り出された線材を線材加工装置に送り出す。このため、送りロールは、線材加工装置に必要な速度で線材を送り込むことができる。リールは、リール制御部の制御により、リールの線材束の直径が短いほど速い速度で回転する。このため、リールは、線材束の線材を一定の繰り出し速度で送りロールに繰り出す。
【0009】
線材を一定の速度で繰り出すリールと、線材加工装置に追従して線材を送り出す送りロールとの間には、線材の送り速度の差が生じる。この速度差は、リール及び送りロール間の繰り出し側可動ロールに掛け渡したリール及び送りロール間の繰り出し側線材部分の弛み量の増減によって吸収される。線材加工装置における線材の送り速度に追従して、送りロールによる線材の送り速度が変動しても、その速度変動が伝わって、リールからの線材の繰り出し速度が変動することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1つの態様に係る線材送り装置によれば、線材加工装置における線材の送り速度の変化に起因する、リールの線材束の緩み、線材加工装置に対する線材の供給速度不足、線材の断面形状の変形を、総合的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る線材送り装置により加工機に供給する線材の供給経路を示す説明図である。
【
図2C】
図2Cは、
図1の第1ダンサロール及び第2ダンサロールのロール位置検出ユニットを示すブロック図である。
【
図2D】
図2Dは、
図1のマスタロールの速度検出ユニットを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の線材送り装置において実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一あるいは同等の部位、又は構成要素には、同一の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものである。この発明の技術的思想は、各構成要素の材質、形状、構造、配置、機能等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る線材送り装置により加工機に供給する線材の供給経路を示す説明図である。
図1に示す本実施形態の線材送り装置100は、送りロール120と、繰り出し側可動ロール130と、情報取得部190と、送り制御量決定部163と、送り制御部163と、リール制御部153とを備える。
【0015】
送りロール120は、リール110の線材束310から繰り出された線材300の線材加工装置200への供給経路において線材300を送る。繰り出し側可動ロール130は、供給経路の線材300のうちリール110及び送りロール120間の繰り出し側線材部分320が掛け渡され、繰り出し側線材部分320の弛みにより変位して繰り出し側線材部分320への接触を維持する。情報取得部190は、線材加工装置200における線材300の送り速度の情報を取得する。
【0016】
送り制御部163は、情報取得部190が取得した情報に基づいて、送りロール120による線材300の送り速度を線材加工装置200における線材300の送り速度に追従させるための、送りロール120の回転速度の制御量を決定する。送り制御部163は、送り制御量決定部163が決定した制御量で送りロール120の回転速度を制御する。リール制御部153は、線材束310の直径に対応する速度にリール110の回転速度を制御する。
【0017】
以下、線材送り装置100の詳細な内容について説明する。線材送り装置100は、線材加工装置である加工機200のマスタロール210に対して線材300を供給する。線材送り装置100は、リール110、送りロール120、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140を有している。線材送り装置100は、リール110に巻回された線材束310から繰り出された線材300の加工機200への供給経路において、送りロール120が、一対のロール間にニップした線材300をマスタロール210に送る。マスタロール210は、一対のロール間にニップした線材300を、加工機200による加工内容に応じた速度で加工機200の内部に送り込む。
【0018】
リール110及び送りロール120間の線材300の搬送経路上では、両者間に位置する線材300の繰り出し側線材部分320に弛みが持たされる。繰り出し側線材部分320は、第1ダンサロール130(繰り出し側可動ロール)に掛け渡される。第1ダンサロール130は、繰り出し側線材部分320の弛み量の変化により変位して、繰り出し側線材部分320への接触を常時維持する。第1ダンサロール130の変位方向は、例えば、重力方向の成分を含む方向とすることができる。第1ダンサロール130は、繰り出し側線材部分320への接触を常時維持することで、繰り出し側線材部分320に一定の大きさの張力を常時付与する。
【0019】
送りロール120及びマスタロール210間の線材300の搬送経路上では、両者間に位置する線材300の送り側線材部分330に、繰り出し側線材部分320よりも少ない弛みが持たされる。送り側線材部分330は、第2ダンサロール140(送り側可動ロール)に掛け渡される。第2ダンサロール140は、送り側線材部分330の弛み量の変化により変位して、送り側線材部分330への接触を常時維持する。第2ダンサロール140の変位方向は、例えば、重力方向の成分を含む方向とすることができる。第2ダンサロール140は、送り側線材部分330への接触を常時維持することで、送り側線材部分330に一定の大きさの張力を常時付与する。
【0020】
図2Aは、
図1のリールの駆動ユニットを示すブロック図である。
図2Bは、
図1の送りロールの駆動ユニットを示すブロック図である。
図2Cは、
図1の第1ダンサロール及び第2ダンサロールのロール位置検出ユニットを示すブロック図である。
図2Dは、
図1のマスタロールの速度検出ユニットを示すブロック図である。
【0021】
線材送り装置100は、
図2A及び
図2Bにそれぞれ示す、リール110及び送りロール120の各駆動ユニット150,160と、
図2Cに示す、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の各ロール位置検出ユニット170,180とを有している。線材送り装置100は、
図2Dに示すマスタ速度検出ユニット190をさらに有している。マスタ速度検出ユニット190は、マスタロール210による線材300の搬送速度(以下、「マスタ軸速度」と称する。)を検出する。
【0022】
図2Aのリール110の駆動ユニット150は、リール110の回転速度を制御する。リール110の回転速度は、送りロール120による線材300の搬送速度(以下、「送り軸速度」と称する。)と、ロール位置検出ユニット180が検出する第1ダンサロール130の位置とに基づいて、制御することができる。線材300の送り軸速度は、送りロール120の駆動ユニット160から駆動ユニット150に入力される。
【0023】
図2Bの送りロール120の駆動ユニット160は、リール110の回転速度を制御する。リール110の回転速度は、マスタ速度検出ユニット190が検出する線材300のマスタ軸速度と、ロール位置検出ユニット170が検出する第2ダンサロール140の位置とに基づいて、制御することができる。
【0024】
図2Dのマスタ速度検出ユニット190は、加工機200のコントローラ220に接続されている。
【0025】
コントローラ220は、マスタ軸速度に応じた周期の駆動パルスをアンプ221に出力する。アンプ221は、入力された駆動パルスに応じた制御信号を、マスタロール210を回転させるモータ222に出力する。コントローラ220は、アンプ221がモータ222に出力する制御信号により、モータ222の動作を制御する。コントローラ220の制御によりモータ222は、マスタロール210がマスタ軸速度で線材300を搬送する速度で回転することができる。モータ222は、内蔵する不図示のグレイコードエンコーダユニットから、駆動軸の回転方向及び回転速度に応じた周期のエンコーダパルスを出力してもよい。エンコーダパルスは、アンプ221を介してマスタ速度検出ユニット190に入力することができる。
【0026】
マスタ速度検出ユニット190は、パルス速度入力部191、単位変換部192及び移動平均フィルタ部193を有している。マスタ速度検出ユニット190は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マスタ速度検出ユニット190は、マイクロコンピュータをマスタ速度検出ユニット190として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、マスタ速度検出ユニット190が備える各部(191~193)として機能させることができる。
【0027】
ここでは、マスタ速度検出ユニット190が備える各部(191~193)をソフトウェアによって実現する例を示す。しかし、勿論、各部の処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、マスタ速度検出ユニット190を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0028】
パルス速度入力部191には、コントローラ220がアンプ221に出力した駆動パルスの分周信号が入力される。パルス速度入力部191は、分周信号に基づいて、単位時間当たりの分周信号のパルス数を検出し、単位変換部192に出力する。パルス速度入力部191は、アンプ221からエンコーダパルス信号を入力させ、このエンコーダパルス信号に基づいて、単位時間当たりのエンコーダパルス信号のパルス数を検出し、単位変換部192に出力してもよい。
【0029】
単位変換部192は、パルス速度入力部191が単位時間当たりのパルス数を検出する度に、マスタ軸速度の基礎値を求める。単位変換部192は、パルス速度入力部191が検出したパルス数と、1パルス当たりにマスタロール210が回転する角度(回転分解能)と、マスタロール210の直径とに基づいて、マスタ軸速度の基礎値を求めることができる。
【0030】
移動平均フィルタ部193は、単位変換部192がマスタ軸速度の基礎値を求める度に、直近の複数回に亘るマスタ軸速度の基礎値の移動平均値を算出する。移動平均フィルタ部193は、算出した移動平均値を、マスタ軸速度の確定値としてマスタ速度検出ユニット190の外部に出力する。
【0031】
図2Cに示すように、ロール位置検出ユニット170,180は、共通の構成とすることができる。ロール位置検出ユニット170は、ポテンショメータ171及び信号処理部172を有している。ロール位置検出ユニット180は、ポテンショメータ181及び信号処理部182を有している。
【0032】
ポテンショメータ171は、第1ダンサロール130の変位方向における位置に応じた信号を出力する。ポテンショメータ181は、第2ダンサロール140の変位方向における位置に応じた信号を出力する。例えば、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140は、揺動可能な支持アーム173,183にそれぞれ支持させて、変位方向に変位させることができる。各ポテンショメータ171,181は、例えば、各支持アーム173,183の揺動角度に応じた信号をそれぞれ出力するものとすることができる。
【0033】
信号処理部172は、A/D変換部174、単位変換部175、移動平均フィルタ部176及び偏差出力部177を有している。信号処理部182は、A/D変換部184、単位変換部185、移動平均フィルタ部186及び偏差出力部187を有している。
【0034】
各信号処理部172,182は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いてそれぞれ実現可能である。各信号処理部172,182は、マイクロコンピュータを各信号処理部172,182としてそれぞれ機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、各信号処理部172,182がそれぞれ備える各部(174~177,184~187)として機能させることができる。
【0035】
ここでは、各信号処理部172,182がそれぞれ備える各部(174~177,184~187)をソフトウェアによって実現する例を示す。しかし、勿論、各部の処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、各信号処理部172,182をそれぞれ構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0036】
各A/D変換部174,184は、各ポテンショメータ171,181が出力する信号をそれぞれデジタル変換して、各支持アーム173,183の揺動角度に応じたビット数のデジタル信号を各単位変換部175,185にそれぞれ出力する。
【0037】
各単位変換部175,185は、所定のサンプリング周期毎に、各A/D変換部174,184からそれぞれ入力されたデジタル信号のビット数に基づいて、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の変位方向における現在位置をそれぞれ求める。所定のサンプリング周期は、例えば、マスタ速度検出ユニット190のパルス速度入力部191に入力される分周信号の周期とすることができる。
【0038】
第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の現在位置は、例えば、各支持アーム173,183の揺動角度でそれぞれ表すことができる。各単位変換部175,185は、各支持アーム173,183の揺動範囲の最大及び最小角度値と、それらの角度値で各A/D変換部174,184が出力するデジタル信号のビット数とを用いて、各支持アーム173,183の揺動角度を求めることができる。
【0039】
各移動平均フィルタ部176,186は、各単位変換部175,185が第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の変位方向における現在位置をそれぞれ求める度に、直近の複数回に亘る現在位置の移動平均値を算出する。各移動平均フィルタ部176,186は、算出した各移動平均値を、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の変位方向における現在位置の確定値としてそれぞれ出力する。第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140がそれぞれの目標位置に対して重力方向の上側に位置する場合と下側に位置する場合とでは、現在位置の確定値の符号が逆になる。
【0040】
各偏差出力部177,187は、第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の変位方向における目標位置と現在位置との偏差をそれぞれ算出する。各偏差出力部177,187は、算出した第1ダンサロール130及び第2ダンサロール140の偏差値を、各ロール位置検出ユニット170,180の外部にそれぞれ出力する。
【0041】
図2Bに示すように、送りロール120の駆動ユニット160は、アンプ161、モータ162及びコントローラ163を有している。
【0042】
コントローラ163は、送り軸速度に応じた周期の駆動パルスをアンプ161に出力する。アンプ161は、入力された駆動パルスに応じた制御信号を、送りロール120を回転させるモータ162に出力する。コントローラ163は、アンプ161がモータ162に出力する制御信号により、モータ162の動作を制御する。コントローラ163の制御によりモータ162は、送りロール120が送り軸速度で線材300を搬送する速度で回転することができる。
【0043】
コントローラ163は、補正値算出部164、指令速度設定部165、フィルタ部166、パラメータ設定部167及び速度指令部168を有している。コントローラ163は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。コントローラ163は、マイクロコンピュータをコントローラ163として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、コントローラ163が備える各部(164~168)として機能させることができる。
【0044】
ここでは、コントローラ163が備える各部(164~168)をソフトウェアによって実現する例を示す。しかし、勿論、各部の処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、コントローラ163を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0045】
補正値算出部164には、ロール位置検出ユニット180の偏差出力部187が出力した第2ダンサロール140の偏差値が入力される。補正値算出部164は、入力された第2ダンサロール140の偏差値から、例えば、PI(比例積分)制御による送り軸速度の補正値を算出する。補正値算出部164が積分制御に用いる伝達関数(ゲイン)は、送り軸速度をマスタ軸速度に追従させるのに適した値に設定される。
【0046】
指令速度設定部165には、マスタ速度検出ユニット190の移動平均フィルタ部193が出力したマスタ軸速度の確定値が入力される。マスタ軸速度の確定値は、マスタロール210の手前で測定した、加工機200に送り込まれる線材300の実際の送り速度の測定値に代えてもよい。指令速度設定部165は、所定のサンプリング周期毎に、入力されたマスタ軸速度の確定値と、補正値算出部164が算出した送り軸速度の補正値との偏差を、送り軸速度の基礎値として求める。所定のサンプリング周期は、ロール位置検出ユニット170,180の単位変換部175,185と同じく、例えば、マスタ速度検出ユニット190のパルス速度入力部191に入力される分周信号の周期とすることができる。
【0047】
フィルタ部166は、モータ162が脱調した場合に、指令速度設定部165が求めた送り軸速度の基礎値にフィルタをかけて、送り軸速度の確定値を決定し、決定した確定値を出力する。フィルタ部166が出力する送り軸速度の確定値は、モータ162の回転速度が増加するにつれて、送り軸速度の基礎値に近づく。フィルタ部166が送り軸速度の基礎値にフィルタをかけて確定値とすることで、脱調したモータ162を確実に復調させることができる。モータ162が脱調を起こさず正常に回転している場合は、フィルタ部166は、送り軸速度の基礎値をそのまま確定値として出力する。
【0048】
パラメータ設定部167は、送り軸速度の確定値に応じた周期の駆動パルスを速度指令部168が生成するのに必要なパラメータを設定する。パラメータ設定部167は、例えば、送りロール120の直径、送りロール120の回転による線材300の送り速度、送りロール120の1回転当たりの線材300の送り量等を、パラメータとして設定することができる。
【0049】
速度指令部168は、フィルタ部166が出力した送り軸速度の確定値に基づいて、パラメータ設定部167で設定されたパラメータを用いて、送り軸速度の確定値に応じた周期の駆動パルスを生成し、アンプ161に出力する。
【0050】
図2Aに示すように、リール110の駆動ユニット150は、アンプ151、モータユニット152及びコントローラ153を有している。
【0051】
コントローラ153は、リール110からの線材300の繰り出し速度に応じた周期の駆動パルスをアンプ151に出力する。アンプ151は、入力された駆動パルスに応じた制御信号を、モータユニット152に出力する。モータユニット152は、アンプ151からの制御信号によって回転されるモータ152aと、モータ152aの回転を減速してリール110に伝達する減速機構152bとを有している。コントローラ153は、アンプ151がモータユニット152に出力する制御信号により、モータユニット152の動作を制御する。コントローラ153の制御によりモータユニット152のモータ152aは、リール110が繰り出し速度で線材300を繰り出す速度で回転することができる。
【0052】
コントローラ153は、補正値算出部154、指令速度設定部155、フィルタ部156、径補正計算部157、パラメータ設定部158及び速度指令部159を有している。コントローラ153は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。コントローラ153は、マイクロコンピュータをコントローラ153として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、コントローラ153が備える各部(154~159)として機能させることができる。
【0053】
ここでは、コントローラ153が備える各部(154~159)をソフトウェアによって実現する例を示す。しかし、勿論、各部の処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、コントローラ153を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0054】
補正値算出部154には、ロール位置検出ユニット170の偏差出力部177が出力した第1ダンサロール130の偏差値が入力される。補正値算出部154は、入力された第1ダンサロール130の偏差値から、例えば、PI(比例積分)制御による線材300の繰り出し速度の補正値を算出する。補正値算出部154が積分制御に用いる伝達関数(ゲイン)は、マスタ軸速度又は送り軸速度が変動しても、リール110からの線材300の繰り出し速度が一定の速度に保たれるようにするのに適した値に設定される。
【0055】
指令速度設定部155には、送りロール120の駆動ユニット160のフィルタ部166が出力した送り軸速度の確定値が入力される。指令速度設定部155は、所定のサンプリング周期毎に、入力された送り軸速度の確定値と、補正値算出部154が算出した線材300の繰り出し速度の補正値との偏差を、繰り出し速度の基礎値として求める。所定のサンプリング周期は、ロール位置検出ユニット170,180の単位変換部175,185と同じく、例えば、マスタ速度検出ユニット190のパルス速度入力部191に入力される分周信号の周期とすることができる。
【0056】
フィルタ部156は、指令速度設定部155が求めた繰り出し速度の基礎値にフィルタをかけて、繰り出し速度の確定値を決定し、決定した確定値を出力する。フィルタ部156が出力する繰り出し速度の確定値は、繰り出し速度の基礎値よりも現在の繰り出し速度に近い値となる。フィルタ部156が繰り出し速度の基礎値にフィルタをかけて確定値とすることで、リール110からの線材300の繰り出し速度が大きく変動することが抑制される。
【0057】
径補正計算部157は、リール110に巻回された線材束310の直径を計算する。リール110の線材束310の最外周から線材300を繰り出し続けると、線材束310の直径が徐々に短くなる。線材束310の直径が短くなると、リール110が1回転する間に線材束310から繰り出される線材300の長さが減り、リール110からの線材300の繰り出し速度が低下する。線材300の繰り出し速度を一定に保つには、線材束310の直径が減るにつれてリール110の回転速度を増やす必要がある。
【0058】
径補正計算部157は、例えば、線材束310からの線材300の繰り出しを開始してからのリール110の累積回転量に基づいて、線材束310の現在の直径を計算することができる。径補正計算部157は、線材束310の径補正値として、例えば、計算した線材束310の現在の直径と基準の直径との差分を出力する。線材束310の基準の直径は、例えば、リール110から線材300を繰り出す前の線材束310の直径とすることができる。
【0059】
パラメータ設定部158は、径補正計算部157が出力する線材束310の径補正値に基づいて、フィルタ部156が出力する繰り出し速度の確定値に応じた周期の駆動パルスを速度指令部159が生成するのに必要なパラメータを設定する。パラメータ設定部158は、例えば、線材束310の現在の直径、リール110の回転による線材300の送り速度、リール110の1回転当たりの線材300の送り量等を、パラメータとして設定することができる。
【0060】
速度指令部159は、パラメータ設定部158で設定されたパラメータを用いて、繰り出し軸速度の確定値に応じた周期の駆動パルスを生成し、アンプ151に出力する。
【0061】
図3は、
図1の線材送り装置において実行される処理の手順を示すフローチャートである。以上に説明した本実施形態の線材送り装置100では、
図3のフローチャートに示す手順の処理が繰り返し実行される。マスタ速度検出ユニット190(情報取得部)によって、加工機200のマスタロール210による線材300送り速度の情報が取得される(ステップS1)。マスタ速度検出ユニット190は、加工機200における線材300の送り速度の情報として、マスタ軸速度の確定値を取得することができる。
【0062】
線材送り装置100では、駆動ユニット160のコントローラ163によって、送りロール120の回転速度の制御量(送り軸速度の確定値)が決定される(ステップS3)。コントローラ163(送り制御量決定部)は、送りロール120の回転速度の制御量として、線材300の送り軸速度をマスタ軸速度に追従させるための、送り軸速度の確定値を決定する。このとき、コントローラ163は、第2ダンサロール140の目標位置と現在位置との偏差に基づいて、送り軸速度の確定値を決定することができる。
【0063】
線材送り装置100では、コントローラ163が、決定した送り軸速度の確定値に応じて駆動パルスを出力し、アンプ161が、駆動パルスに応じた制御信号をモータ162に出力する。これにより、送りロール120が、送り軸速度の確定値に応じた速度で回転するように、コントローラ163(送り制御部)によって制御される(ステップS5)。
【0064】
線材送り装置100では、駆動ユニット150のコントローラ153によって、リール110の回転速度の制御量(繰り出し速度の確定値)が決定される(ステップS7)。コントローラ153(リール制御量決定部)は、リール110の回転速度の制御量として、リール110を線材束310の直径に応じた速度で回転させるための、繰り出し速度の確定値を決定する。このとき、コントローラ153は、第1ダンサロール130の目標位置と現在位置との偏差に基づいて、繰り出し速度の確定値を決定することができる。
【0065】
線材送り装置100では、コントローラ153が、決定した繰り出し速度の確定値に応じて駆動パルスを出力し、アンプ151が、駆動パルスに応じた制御信号をモータユニット152のモータ152aに出力する。これにより、リール110が、線材300を一定の速度で繰り出す速度で回転するように、コントローラ153(リール制御部)によって制御される(ステップS9)。
【0066】
以上に説明した線材送り装置100では、リール110から繰り出された線材300を加工機200のマスタロール210に送り出す送りロール120を、マスタロール210に追従して回転させる。送りロール120は、マスタロール210に追従して回転することで、加工機200における加工工程の進行に応じて線材300を必要な速度でマスタロール210に送り出す。
【0067】
線材送り装置100では、マスタロール210に対する送りロール120の追従とは無関係に、リール110を線材束310の直径に応じた速度で回転させる。リール110は、線材束310の直径に応じた速度で回転することで、線材束310の線材を一定の速度で繰り出す。
【0068】
線材300を一定の速度で繰り出すリール110と、マスタロール210に追従して線材300を送り出す送りロール120との間には、線材300の送り速度の差が生じる。この速度差は、第1ダンサロール130に掛け渡した線材300の繰り出し側線材部分320の弛み量の増減によって吸収される。送りロール120による線材300の送り軸速度が変動しても、その速度変動が伝わって、リール110による線材300の繰り出し速度が変動することが抑制される。
【0069】
線材送り装置100では、加工機200の加工工程の進行に伴いマスタロール210が線材300の送りを停止、再開した場合、これに追従して、送りロール120が線材の送りを停止、再開する。このため、マスタロール210と送りロール120との双方による線材300の送り速度(マスタ軸速度、送り軸速度)に大きな速度差は生じない。よって、送りロール120及びマスタロール210間の送り側線材部分330に、弛み量の大きな変化は生じない。送り側線材部分330に常時接触する第2ダンサロール140は、大きい範囲で変位するものでなくてもよい。
【0070】
マスタロール210が線材300の送りを停止する際には、これに追従した送りロール120による線材300の送り停止が若干遅れて、送り側線材部分330の弛み量が増える可能性がある。マスタロール210が線材300の送り速度を低下させる際にも、これに追従した送りロール120による線材300の送り速度の低下が若干遅れて、同様のことが生じる可能性がある。送り側線材部分330の弛み量が増えた場合は、第2ダンサロール140が変位範囲の下方に変位して、弛み量が増えた送り側線材部分330に張力を付与し弛みを解消する。
【0071】
マスタロール210が停止した線材300の送りを再開する際には、これに追従した送りロール120による線材300の送り再開が若干遅れて、送り側線材部分330の張力が増える可能性がある。マスタロール210が線材300の送り速度を増加させる際にも、これに追従した送りロール120による線材300の送り速度の増加が若干遅れて、同様のことが生じる可能性がある。送り側線材部分330の張力が増えた場合は、第2ダンサロール140が送り側線材部分330に接触したまま変位範囲の上方に変位して、送り側線材部分330の増えた張力を解放する。
【0072】
したがって、送りロール120は、必要な速度で線材300を加工機200に送ることができる。よって、マスタロール210の回転速度に線材300の送り速度が追いつかず、線材300よりも早く回転したマスタロール210が線材300に対して空回りするのを、抑制することができる。この抑制により、空回りしたマスタロール210のニップ力により線材300の断面形状が変形し、加工機200が線材300を加工した製品の表面に本来は存在しない凹凸ができるのを、抑制することができる。
【0073】
線材送り装置100では、加工機200の加工工程の進行に追従して送りロール120が線材300の送りを停止、再開し、あるいは、送り速度を増減速させた場合でも、リール110は、線材束310の直径に応じた送り速度で線材300の送りを継続する。このため、送りロール120とリール110との双方による線材300の送り速度(送り軸速度、繰り出し速度)に大きな速度差が生じる可能性がある。よって、リール110及び送りロール120間の繰り出し側線材部分320に、弛み量の大きな変化が生じる可能性がある。繰り出し側線材部分320に常時接触する第1ダンサロール130は、第2ダンサロール140よりも大きい範囲で変位する必要がある。
【0074】
送りロール120がマスタロール210に追従して線材300の送りを停止する際、リール110はそれ以後も線材300の送りを継続するので、繰り出し側線材部分320の弛み量が大きく増える可能性がある。送りロール120がマスタロール210に追従して線材300の送り速度を低下させる際にも、リール110は一定の速度で線材300の送りを継続するので、同様のことが生じる可能性がある。繰り出し側線材部分320の弛み量が大きく増えた場合は、第1ダンサロール130が変位範囲の下方に大きく変位して、弛み量が大きく増えた繰り出し側線材部分320に張力を付与し弛みを解消する。
【0075】
送りロール120がマスタロール210に追従して停止した線材300の送りを再開する際には、リール110が線材300の送り速度を変えないので、繰り出し側線材部分320の張力が大きく増える可能性がある。送りロール120がマスタロール210に追従して線材300の送り速度を増加させる際にも、リール110は線材300の送り速度を変えないので、同様のことが生じる可能性がある。繰り出し側線材部分320の張力が大きく増えた場合は、第1ダンサロール130が繰り出し側線材部分320に接触したまま変位範囲の上方に大きく変位して、繰り出し側線材部分320の増えた張力を解放する。
【0076】
したがって、リール110は、送りロール120がマスタロール210に追従して線材300の送りを停止あるいは再開しても、一定の速度で線材束310から線材300を繰り出すことができる。よって、送りロール120による線材300の送りの停止又は減速後に、惰性で回転したリール110が送りロール120よりも速い送り速度で線材束310から線材300を送り出すのを、抑制することができる。この抑制により、線材束310の巻きが緩んで線材300がリール110の周りにだぶつくのを、抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、送りロール120と加工機200のマスタロール210との間の送り側線材部分330を第2ダンサロール140に掛け渡して、送り側線材部分330に第2ダンサロール140が張力を付与する。このため、マスタロール210による線材300の送り停止、再開又は増減速に対する送りロール120の追従が遅れても、第2ダンサロール140の変位により、弛み量が変化する送り側線材部分330に適切な張力を付与し続けることができる。
【0078】
本実施形態では、送りロール120の駆動ユニット160のコントローラ163が、第2ダンサロール140の変位量に基づいて送りロール120による線材300の送り速度の制御量を決定する。このため、送り側線材部分330の弛み量に変化が生じても、マスタロール210に追従して送りロール120が線材300の送りを停止又は再開し、あるいは、増減速させるように、送りロール120による線材300の送り速度を制御することができる。
【0079】
マスタロール210に対する送りロール120の追従性が十分に高い場合は、第2ダンサロール140は省略することもできる。第2ダンサロール140を省略する場合は、コントローラ163が、第2ダンサロール140の変位量に基づいて送りロール120による線材300の送り速度の制御量を決定する構成も、省略してよい。
【0080】
本実施形態では、リール110の駆動ユニット150のコントローラ153が、第1ダンサロール130の変位量に基づいてリール110からの線材300の繰り出し速度の制御量を決定する。このため、繰り出し側線材部分320の弛み量に変化が生じても、線材束310の直径に応じた送り速度でリール110から線材300が繰り出されるように、リール110からの線材300の繰り出し速度を制御することができる。
【0081】
コントローラ153が、第1ダンサロール130の変位量に基づいてリール110からの線材300の繰り出し速度の制御量を決定する構成は、省略してもよい。
【0082】
本実施形態では、コントローラ163が決定した送りロール120による線材300の送り速度の制御量(送り軸速度の確定値)に基づいて、コントローラ153が、リール110からの線材300の繰り出し速度の基礎値を決定する。コントローラ153は、この基礎値にフィルタをかけ、現在の繰り出し速度に近い繰り出し速度の制御量(繰り出し速度の確定値)を決定する。コントローラ153は、線材束310の現在の直径に基づいて、繰り出し速度の確定値に応じた回転速度でリール110を回転させる。このため、線材束310の直径が変化してもリール110からの線材300の繰り出し速度を一定の速度に保つことができる。
【0083】
本実施形態では、駆動ユニット150,160のコントローラ153,163、ロール位置検出ユニット170,180の各信号処理部172,182、マスタ速度検出ユニット190を、それぞれ独立した部材として説明した。しかし、勿論、これらを他の装置と一緒に1つの装置として構成してもよい。あるいは、それぞれが備える各部(154~159,164~168,174~177,184~187,191~193)の一部又は全部を、分割して2以上の異なる装置を用いて構成しても構わない。
【符号の説明】
【0084】
100 線材送り装置
110 リール
120 送りロール
130 第1ダンサロール(繰り出し側可動ロール)
140 第2ダンサロール(送り側可動ロール)
153 コントローラ(リール制御量決定部、リール制御部)
163 コントローラ(送り制御量決定部、送り制御部)
170,180 ロール位置検出ユニット
190 マスタ速度検出ユニット(情報取得部)
200 加工機(線材加工装置)
210 マスタロール
300 線材
310 線材束
320 繰り出し側線材部分
330 送り側線材部分