IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジッコ株式会社の特許一覧

特許7612440ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化用組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体活性化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/12 20160101AFI20250106BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20250106BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A23L33/12
A23L33/10
A61K31/7024
A61K36/48
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021017325
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2021159074
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020065034
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591183625
【氏名又は名称】フジッコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真通
(72)【発明者】
【氏名】相磯 知里
(72)【発明者】
【氏名】小阪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利雄
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-121823(JP,A)
【文献】特開2005-272370(JP,A)
【文献】Min-Chuan LAI et al.,The Natural PPAR Agonist Linoleic Acid Stimulated Insulin Release in the Rat Pancreas,Journal of Veterinary Medical Science,2013年,Vol. 75, No. 11,pp. 1449-1454,DOI: 10.1292/jvms.13-0189
【文献】Chi YANG et al.,Rosiglitazone (BRL 49653) Enhances Insulin Secretory Response via Phosphatidylinositol 3-Kinase Pathway,Diabetes,2001年11月01日,Vol. 50, No. 11,pp.2598-2602,DOI: 10.2337/diabetes.50.11.2598
【文献】PPARと膵,医学のあゆみ,220巻1号,pp. 23-26
【文献】Yoo Kim et al.,"Conjugated linoleic acid (CLA) promotes endurance capacity via peroxisome proliferator-activated receptor δ-mediated mechanism in mice.",The Journal of Nutritional Biochemistry,米国,Elsevier Inc,2016年12月,Vol.38,pp.125-133,doi: 10.1016/j.jnutbio.2016.08.005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00-31/15
A23L 33/00-33/29
A61K 31/7024
A61K 36/48
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショ糖脂肪酸エステルを有効成分として含有し、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δの活性化作用を促進することを特徴とするペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ活性化用組成物。
【請求項2】
上記ショ糖脂肪酸エステルと、大豆粉とを含む、請求項1記載のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ活性化用組成物
【請求項3】
上記ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸がステアリン酸である、請求項1または2記載のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ活性化用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内においてペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の活性作用を促す性質を示す、PPAR活性化用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大豆は日本の伝統食の食材として古くから食されてきたものである。そして、最近では健康の維持・増進に寄与する機能性成分が多く含まれていることが明らかになり、その利用が見直されている。
大豆の健康機能については、脂質代謝改善作用がよく知られている。例えば、大豆イソフラボンによる血中脂質濃度低下作用、大豆食物繊維(おから)による血清総コレステロール低下作用、大豆タンパク質による血中コレステロールおよび血中中性脂肪の濃度低下作用、体脂肪蓄積抑制作用、リノール酸やα-リノレン酸による血清コレステロール濃度低下作用が明らかになっている。
【0003】
また、近年の研究においてこれらの脂質代謝の制御に関して核内受容体PPARの活性化が寄与することが明らかになっている。そのため、脂質代謝を活性化するPPARの活性化物質の探索、開発が盛んに行われている。その一例として、没食子酸エステル(特許文献1)、ガロイルタンニン類、カテキン及びエピカテキン(特許文献2)、大豆テンペ菌発酵物の有機溶媒抽出物(特許文献3)、構成脂肪酸がオレイン酸又はリノール酸であるモノアシルグリセロール(特許文献4)等が報告されている。
【0004】
また、従来、PPARを活性化させる物質については、フィブラート系化合物、チアゾリジン誘導体、脂肪酸、ロイコトリエンB4、インドメタシン、イブプロフェン、フェノプロフェン、15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2のような、合成物質系のPPAR活性化剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-80362号公報
【文献】特開2011-105763号公報
【文献】特開2012-171911号公報
【文献】特開2001-354558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、味や風味に影響を与えることなく食品等に添加して摂取するのに適しており、さらに安全性に優れ継続的な摂取に適している、PPAR活性化用組成物の研究を重ねた。
【0007】
本発明は、食品等に添加して摂取するのに適しており、さらに安全性に優れることから継続的な摂取に適している、PPAR活性化用組成物の提供をその目的とする。
【0008】
加えて、本発明は、脂質代謝に優れる大豆に着目し、PPAR活性化作用がさらに向上された大豆を原料としたPPAR活性化用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、従来知られていなかったが、意外にも、ショ糖脂肪酸エステルに、PPARの活性化作用を促す性質があることを突き止めた。ショ糖脂肪酸エステルは、味や風味に影響を与えないことから食品等に添加して摂取するのに適しており、さらに安全性に優れており継続的な摂取に適していることから、ショ糖脂肪酸エステルを有効成分として含有することにより、従来にない優れたPPAR活性化用組成物となる。
なお、大豆原料にショ糖脂肪酸エステルを添加することにより、大豆を原料とした加工食品のPPAR活性を格段に向上させることができることも見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を、その要旨とする。
[1] ショ糖脂肪酸エステルを有効成分として含有することを特徴とするPPAR活性化用組成物。
[2] 上記ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸がステアリン酸である、[1]に記載のPPAR活性化用組成物。
[3] 上記ショ糖脂肪酸エステルと大豆粉との混合物である、[1]または[2]に記載のPPAR活性化用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のPPAR活性化用組成物は、ショ糖脂肪酸エステルを有効成分として含有することから、味や風味に影響を与えず、食品等に添加して摂取するのに適しており、さらに安全性に優れることから継続的な摂取に適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0013】
先にも述べたように、本発明のPPAR活性化用組成物は、ショ糖脂肪酸エステルを有効成分として含有する。
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖(スクロース)の水酸基に対し、脂肪酸のカルボキシル基を反応させて、エステル結合させることにより得ることができる。ショ糖1分子中に水酸基は8個あり、さらに、上記脂肪酸には各種のものがあることから、エステル結合数の違いや脂肪酸の種類によって、様々なショ糖脂肪酸エステルを合成することができる。 上記ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸等の、炭素数12~22の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸があげられる。これらは単独もしくは二種以上を併せて用いられる。なかでも、炭素数18の飽和脂肪酸であるステアリン酸を用いることが好ましい。
【0014】
本発明のPPAR活性化用組成物においては、上記のようなショ糖脂肪酸エステルを、単独もしくは二種以上を併せて用いられる。特に、異なるショ糖脂肪酸エステルを二種以上併せて用いることにより、個々の要望により適した性能を示すPPAR活性化用組成物とすることができる。
【0015】
本発明のPPAR活性化用組成物は、例えば液状の場合、PPAR活性の有効性の観点から、ショ糖脂肪酸エステルの含有量が0.01~20mg/mlの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.01~10mg/mlの範囲である。
なお、本発明のPPAR活性化用組成物は、経口摂取することが可能なものであれば、固形状、粉末状、液状等、特に限定されない。
【0016】
また、本発明のPPAR活性化用組成物が、ショ糖脂肪酸エステルと大豆粉との混合物である場合、大豆粉に含まれるイソフラボンやサポニンのPPAR活性化作用を相加的または相乗的に高めることから好ましい。本発明において、大豆粉とは、種皮を取り除いた大豆を粉末化したもののことを言う。
【0017】
このようにして得られる本発明のPPAR活性化用組成物は、継続的に経口摂取することによってPPARの活性化を促すことにより、高脂血症、炎症性疾患(皮膚炎症を含む)、インスリン抵抗性疾患(糖尿病、動脈硬化等)、脳卒中、生体リズム失調症(生体リズム障害疾患)、肥満の予防・改善、体脂肪の燃焼促進、血中中性脂肪の減少、脂肪肝の抑制、持久力の向上、表皮細胞の分化やメラノサイトの分化(表皮細胞の分化誘導、メラノサイトの分化抑制による美白効果)、角質形成の促進、表皮の発達や修復等において、優れた効果を発揮することができる。
【0018】
また、本発明のPPAR活性化用組成物は、先に述べたような、ショ糖脂肪酸エステルと大豆粉との混合物等を、そのまま直接経口摂取することも可能であるが、その有効成分の抽出物を、適当な液状担体に溶解あるいは分散させたり、適当な粉末担体に混合させたりしたものを経口摂取することも可能である。
【0019】
薬理学的に許容される担体としては、例えば、固形製剤における賦形剤,滑沢剤,結合剤および崩壊剤、あるいは、液状製剤における溶剤,溶解補助剤,懸濁化剤,張化剤,緩衝剤および無痛化剤等があげられる。
【0020】
また、本発明のPPAR活性化用組成物は、その製剤化の際に、通常製剤化に用いられる各種の成分が任意に使用されるが、その例としては、例えば、デンプン、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、無機塩類等があげられる。これらは単独もしくは二種以上併せて用いられる。
【0021】
上記製剤化の際の剤型としては、例えば、アンプル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、ドリンク剤等があげられる。
【0022】
さらに、本発明のPPAR活性化用組成物は、それを飲食品に関与させた形態としても提供することができる。上記飲食品としては、例えば、健康食品(タブレット、粉末、顆粒、濃縮液体)、清涼飲料、特定保健用食品、乳酸菌発酵食品(ヨーグルト等)、ドリンク、お茶、ミルク、プリン、ゼリー、飴、ガム、チョコレート、スープ、クッキー、スナック菓子、ワイン、焼酎、日本酒、ドレッシング、煮豆、豆腐、納豆、豆乳、煎り豆、乾燥豆、味噌等があげられる。そして、これらの飲食品を、通常の飲食品と同様に継続して飲食することにより、PPARの活性化を促すことができ、先に述べたような各種の効果(高脂血症、肥満の予防・改善、表皮の発達や修復等)が得られるようになる。
【0023】
本発明のPPAR活性化用組成物は、副作用を生じることなく、人体にやさしく、PPAR活性効果およびこれに関連する各種疾病(特に、肥満や高脂血症)等の予防・改善効果を発揮することができる。また、ヒトのみでなく、ペットや家畜等の動物においても上記効果が得られるものであり、その投与量は、投与対象とする生物の違い、投与される者の性別、体重、年齢等の条件に応じて適宜設定される。そして、上記のように、本発明のPPAR活性化用組成物は、ペットや家畜等の動物においても肥満抑制効果等が得られるものであることから、ペットフードや飼料に関与させた形態としても提供することができる。
【実施例
【0024】
つぎに実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、以下の記述で「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
【0025】
<PPAR活性化試験>
以下の方法により、レポーター遺伝子アッセイによる核内受容体(PPARα、PPARδ)活性化試験を行った。
使用細胞株は、CV-1(独立行政法人医薬基盤・健康・栄養研究所より分譲)を用いた。上記細胞株を、2.0×105細胞/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、ダルベッコ変法イーグル培地(10%ウシ胎児血清(FBS),2mol/l L-グルタミン添加)中で1日培養した。
次に、Gal4遺伝子のDNA結合ドメイン(Gal4-DBD)および各種ヒト核内受容体(PPARα、PPARδ)のリガンド結合ドメイン(NR-LBD)のキメラタンパク質発現プラスミド(pGal4DBD/NR(LBD))、Gal4遺伝子DNA応答配列およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(pGal4-Luc)、および内部標準用としてウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流に遺伝子構成的発現プロモーター(CMV)を連結した内部標準プラスミド(pGL4.75hRluc-CMV;Promega社製)を、各々プラスミドを重量比が1:0.9:0.1の割合で混合してOpti-MEM培地(GIBCO社製)に溶解し、これに遺伝子導入試薬X-tremeGENE HP(ロシュ社製)を添加した後、前記培養した細胞に加えて培養して遺伝子を導入した。
次に、遺伝子導入細胞をトリプシンによりはがし、細胞を洗浄後、96ウェルプレートに、1.6×104細胞/ウェルとなるよう再度播種した。この際、培養液を、被験試料を含むダルベッコ変法イーグル培地(フェノールレッド不含、10%活性炭処理FBS、SIGMA社製)に交換し、さらに48時間培養した。リン酸緩衝食塩液(PBS)にて細胞を洗浄し、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社製)を用いて細胞を溶解した後、ルシフェリンを含む基質溶液を加え、プレートリーダー(フェリオスAB-2350、ATTO社製)にてホタルルシフェラーゼ活性およびウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。なお、PPAR活性化試験においては、細胞に顕著な障害が認められない(ウミシイタケルシフェラーゼ活性値の顕著な低下が認められない)ことを確認したうえで実施した。
以上の操作は、1サンプル(陰性コントロールを含む)につき3ウェルを用いて実施し、3ウェルの平均値をデータとして採用した。
なお、核内受容体依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)は以下の式(1)に示すものとして定義した。
【0026】
核内受容体依存的転写活性値(内部標準補正値)=(Gal4-Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc-CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)……(1)
【0027】
[実施例1]
<ショ糖脂肪酸エステルのPPAR活性測定>
ショ糖ステアリン酸エステルのエタノール抽出物を取得し、これを被験試料として、前記<PPAR活性化試験>に記載の方法により、被験試料のPPAR活性測定を行った。 被験試料は、以下のように作製した。すなわち、まず、2種類のショ糖ステアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-370、リョートーシュガーエステルS-770、三菱ケミカルフーズ社製)を、重量比で1:1となるよう混合し、10倍量の70%エタノール溶液を加え、室温(23℃)で3時間撹拌した後に0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、凍結乾燥した。これを80mg/mlとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して溶解したものを、被験試料として用いた。
各被験試料は、最終濃度が、0.04mg/ml、0.16mg/ml、0.40mg/mlとなるように調整し、陰性コントロール(NC)としては、0.5%のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を用いた。
なお、PPARα活性およびPPARδ活性の評価は、陰性コントロールとの比(サンプルにおける活性値/陰性コントロールにおける活性値)で表し、本数値が1.2以上となる場合を有意な活性と定義した。この結果を、下記の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から、ショ糖ステアリン酸エステルの濃度にほぼ比例して、PPARαおよびPPARδの活性の向上が認められる。また、ショ糖ステアリン酸エステルの濃度が少量(0.04mg/ml)であっても、PPARαおよびPPARδの活性の向上が認められる。
【0030】
[実施例2]
<ショ糖脂肪酸エステルを含む大豆粉のPPAR活性測定>
ショ糖ステアリン酸エステルを含む大豆粉のエタノール抽出物を取得し、これを被験試料として、実施例1に記載の方法に準拠して、被験試料のPPAR活性測定を行った。なお、PPARα活性およびPPARδ活性の評価は、実施例1と同様にして行った。
被験試料は、以下のように作製した。すなわち、ます、2種類ショ糖ステアリン酸エステル(リョートーシュガーエステルS-370、リョートーシュガーエステルS-770、三菱ケミカルフーズ社製)を、重量比で1:1となるよう混合し、さらに大豆粉を混合して、熱水に撹拌溶解し、ホモゲナイザーにより均質化して大豆液を作製した。この大豆液を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物に、10倍量の70%エタノール溶液を加えて室温で3時間撹拌した後、遠心分離し、遠心後の上清を0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、凍結乾燥した。これを400mg/mlとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO)を添加して溶解したものを、被験試料として用いた。
被験試料の最終濃度は、ショ糖ステアリン酸エステルが0.04mg/ml、大豆粉が2.0mg/mlとなるように調整し、陰性コントロール(NC)は、実施例1と同様とした。この結果を、後記の表2に示す。
【0031】
[比較例1]
<大豆粉のPPAR活性測定>
大豆粉のエタノール抽出物を取得し、これを被験試料として、実施例1に記載の方法に準拠して、被験試料のPPAR活性測定を行った。なお、PPARα活性およびPPARδ活性の評価は、実施例1と同様にして行った。
被験試料は、実施例2に記載の方法からショ糖ステアリン酸エステルを除いた以外は、すべて実施例2と同様の方法により、被験試料を取得した。
被験試料の最終濃度は、大豆粉が2.0mg/mlとなるように調整し、陰性コントロール(NC)は、実施例1と同様とした。この結果を、後記の表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
上記表2の結果より、ショ糖ステアリン酸エステルとともに大豆粉を併用した実施例2のPPARαおよびPPARδの活性の度合が、先の表1に示す、ショ糖ステアリン酸エステルの濃度が0.04mg/mlのときのPPARαおよびPPARδの活性の度合に比べ、大幅な向上効果が認められる。特に実施例2では、PPARαの活性において高い相乗効果が認められる。
なお、ショ糖ステアリン酸エステルを使用せず大豆粉のみを使用した比較例1でも、ある程度高いPPARα活性およびPPARδ活性を示していたが、実施例2では、わずかなショ糖ステアリン酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステルの濃度が0.04mg/ml)であっても、大豆粉と併用することにより、PPARαおよびPPARδの活性の度合が高くなることが示される。
【0034】
そして、先の実施例1、および、上記実施例2にみられる、PPAR活性の向上効果は、本発明のPPAR活性化用組成物の実施形態の一つである食品として経口摂取したとき、PPAR活性の向上効果を示すものであると考えることができる。また、上記組成物の有効成分であるショ糖脂肪酸エステルは、味や風味に影響を与えないことから、食品等に添加して摂取するのに適していると考えられる。さらに、上記実験の結果より、本発明のPPAR活性化用組成物において、実施例2のように大豆粉と併用したもののほうが、食品等として経口摂取したときに、より高いPPAR活性の向上効果が得られることを、期待することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のPPAR活性化用組成物は、その有効成分であるショ糖脂肪酸エステルが、味や風味に影響を与えないことから、食品等に添加して摂取するのに適しており、さらに安全性に優れることから継続的な摂取に適している。そのため、本発明のPPAR活性化用組成物は、飲食品として適用することが可能であり、必要に応じ、粉末化、錠剤化、カプセル化等して、サプリメント、医薬品、食品添加剤等として、利用することも可能である。