(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ホースのガイド機構および建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 13/12 20060101AFI20250106BHJP
B66C 23/70 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
B66C13/12 A
B66C23/70 A
(21)【出願番号】P 2021033373
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸治
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-053990(JP,U)
【文献】実開昭48-092667(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03059382(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
B66C 1/00-25/00
B66F 1/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のブームに設置され、前記ブームに沿って配置されるホースを環状構造の内側に拘束するガイド環を備え、
前記ガイド環は、環状構造の下辺が開放されるよう構成されているホースのガイド機構であって、
前記ガイド環は、
上辺をなして前記ブーム側に取り付けられる第一の柱状部材と、
側辺をなす第二の柱状部材と、
下辺をなす第三の柱状部材とを備えて構成され、
前記第一の柱状部材は、前記第二の柱状部材
を俯仰自在に軸支する回転軸を、前記第一の柱状部材の軸より上方に支持する支持部を備えていること
を特徴とするホースのガイド機構。
【請求項2】
前記第二の柱状部材は、前記第三の柱状部材と共に前記第一の柱状部材に対し回転可能に構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のホースのガイド機構。
【請求項3】
前記第一の柱状部材を固定されたベース部材を備え、
前記第三の柱状部材に、前記ベース部材に対し係合可能な着脱機構を備えていること
を特徴とする請求項2に記載のホースのガイド機構。
【請求項4】
前記第一の柱状部材に、前記第二の柱状部材を仮置き可能な肩部を備えていること
を特徴とする請求項3に記載のホースのガイド機構。
【請求項5】
前記第二の柱状部材に、前記第一の柱状部材に対し係合可能な着脱機構を備えていること
を特徴とする請求項2に記載のホースのガイド機構。
【請求項6】
前記ガイド環が開放された状態において、前記第二の柱状部材に備えた付勢体により、前記第二の柱状部材が前記第一の柱状部材に対して保持可能に構成されていること
を特徴とする請求項5に記載のホースのガイド機構。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のホースのガイド機構を適用したことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等に備えられた油圧ホース等のホースをガイドするための機構、およびこれを適用した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーンや高所作業車など、伸縮式のブームと共に油圧で作動する機構を備えた建設機械では、前記ブームに沿って油圧を伝達するホース(油圧ホース)が装備される。前記ホースは可撓性であり、ブームの伸縮や起伏といった動作を妨げることのないよう、前記ブームの動作に合わせて適宜繰り出され、あるいは巻き取られながら、変形しつつブームに寄り添って動く。
【0003】
ブームの各所には、作動する前記ブームに対し油圧ホースが適切な位置を保ちつつ動くよう、ガイド機構が設けられる。ガイド機構としては、油圧ホースを巻き掛けられるガイドドラムや、油圧ホースの周囲を取り囲む環状の部材(以下、「ガイド環」)等がある。これらのガイド機構は、油圧ホースの延びる経路上の要所に取り付けられ、油圧ホースの長手方向に沿ってスライドする動きや、長手方向と交わる向きに屈曲する動きを適度に許容しながら、油圧ホースをブームから大きく逸脱しないよう拘束するようになっている。
【0004】
こうした建設機械のブームに取り付けられる油圧ホースや、そのガイド機構について記載した技術文献としては、例えば下記特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のガイド機構のうちガイド環は、例えばブームの複数箇所に取り付けられた環状の部材であり、環状構造の内側に油圧ホースを通して該油圧ホースを拘束するようになっている。
【0007】
ところで、このガイド環は、常に油圧ホースを通して使用されるわけではなく、建設機械の格納時等には、収納やメンテナンスの妨げにならぬよう、油圧ホースがガイド環から取り外され、稼働時には再び通される。このような油圧ホースの掛替え作業には、人力で行う場合、相応の腕力が要求される。油圧ホースには、該油圧ホースの自重や、内部を流通するオイルの重量、さらにホースリールから加わる張力等がかかっており、これらの力に抗して油圧ホースを操作しなくてはならないからである。
【0008】
ここで、掛替えの際、油圧ホースにかかる力そのものを軽減することは難しいとしても、仮に掛替えの作業を簡略化できれば、作業員にとっては油圧ホースを支える時間が短縮されたり、油圧ホースを支持しながらの姿勢の変更の必要が減るので、負担の軽減に繋がる。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ホースの掛替えの作業を簡便に行い得るホースのガイド機構および建設機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、建設機械のブームに設置され、前記ブームに沿って配置されるホースを環状構造の内側に拘束するガイド環を備え、前記ガイド環は、環状構造の下辺が開放されるよう構成されているホースのガイド機構であって、前記ガイド環は、上辺をなして前記ブーム側に取り付けられる第一の柱状部材と、側辺をなす第二の柱状部材と、下辺をなす第三の柱状部材とを備えて構成され、前記第一の柱状部材は、前記第二の柱状部材を俯仰自在に軸支する回転軸を、前記第一の柱状部材の軸より上方に支持する支持部を備えていることを特徴とするホースのガイド機構にかかるものである。
【0012】
本発明のホースのガイド機構において、前記第二の柱状部材は、前記第三の柱状部材と共に前記第一の柱状部材に対し回転可能に構成することができる。
【0014】
本発明のホースのガイド機構は、前記第一の柱状部材を固定されたベース部材を備え、前記第三の柱状部材に、前記ベース部材に対し係合可能な着脱機構を備えて構成することができる。
【0015】
本発明のホースのガイド機構は、前記第一の柱状部材に、前記第二の柱状部材を仮置き可能な肩部を備えて構成することができる。
【0016】
本発明のホースのガイド機構は、前記第二の柱状部材に、前記第一の柱状部材に対し係合可能な着脱機構を備えることもできる。
【0017】
本発明のホースのガイド機構は、前記ガイド環が開放された状態において、前記第二の柱状部材に備えた付勢体により、前記第二の柱状部材が前記第一の柱状部材に対して保持可能に構成することもできる。
【0019】
また、本発明は、上述のホースのガイド機構を適用した建設機械にかかるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のホースのガイド機構および建設機械によれば、ホースの掛替えの作業を簡便に行うという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の適用対象である建設機械の全体像の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の建設機械に備えられたブームの前方部分の形態を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施によるガイド機構を構成するガイド環の形態の一例(第一実施例)を示す正面図である。
【
図5】第一実施例のガイド環における一部の部材の内部構造を示す断面図である。
【
図6】第一の柱状部材に設けられた肩部の別の形態例を示す正面図である。
【
図7】第一の柱状部材に設けられた肩部の別の形態例を示す側面図である。
【
図8】建設機械におけるブームの先端部の形態の一例を示す側面図であり、格納時の状態を示している。
【
図9】
図8の状態から、ホースをガイド環に通し、且つドラムユニットを引き起こした状態を示す側面図である。
【
図10】第一実施例の格納時の状態と、ホースに対する位置関係を示している。
【
図11】
図10の状態から、環状構造を開いてホースを通す作業中の状態を示している。
【
図12】
図11の状態から、さらに環状構造を閉じた状態を示している。
【
図13】本発明の参考例として、従来のガイド環の形態の一例を説明する正面図であり、格納時の状態と、ホースに対する位置関係を示している。
【
図14】
図13の状態から、環状構造を開いてホースを通す作業中の状態を示している。
【
図15】
図14の状態から、さらに環状構造を閉じた状態を示している。
【
図16】本発明の第一実施例において、ドラムユニットの回転途中におけるガイド環との位置関係を示す斜視図である。
【
図17】本発明の参考例において、ドラムユニットの回転途中におけるガイド環との位置関係を示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施によるガイド機構におけるガイド環の形態の別の一例(第二実施例)を示す正面図であり、一部の部材については内部構造を断面にて示している。
【
図19】第二実施例のガイド環を開いた状態を示す正面図である。
【
図20】本発明の実施によるガイド機構におけるガイド環の形態の別の一例(第三実施例)を示す正面図であり、一部の部材については内部構造を断面図にて示している。
【
図21】第三実施例のガイド環を開いた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1、
図2は、本発明の適用対象としての建設機械と、該建設機械に備えられるブームの形態の一例を示している。建設機械である車両式クレーン1は、車体2の上部に旋回台3を介してブーム4を備えている。ブーム4は、基部を旋回台3に対し水平な軸を中心に回転可能に支持されており、図示しない油圧式の起伏シリンダの伸縮により、旋回台3に対して起伏動作を行うようになっている。
【0024】
ブーム4は、
図2に示す如く、複数の筒体5がテレスコピック状に連結された構造であり、図示しない油圧機構により伸縮可能に構成されている。ブーム4の先端部の下側には、ジブ6の基部が回動軸6aを中心として回転可能に取り付けられるようになっており、車両式クレーン1の稼働時には、ジブ6がブーム4の先端から振り出されて使用され、車両式クレーン1の格納時等には、必要に応じてジブ6をブーム4から取り外せるようになっている。尚、
図2は、ジブ6をブーム4に下抱きし、且つブーム4を縮めて倒伏させた格納時の状態を示している。
【0025】
ブーム4の中間部には、ホース(油圧ホース)7を巻き掛けられて該油圧ホース7の繰出し・巻取りの動作を行うホースリール8が取り付けられており、ホースリール8よりも先端側にはガイドドラム9が取り付けられている。油圧ホース7は、ブーム4に沿って基部側から先端側へ延びており、ホースリール8に巻き掛けられた後、ブーム4の各所に設けられたガイドドラム9に順次巻き掛けられている。油圧ホース7は、さらにブーム4の先端部で折り返し、ジブ6側へ延びて該ジブ6に対し駆動のための油圧を供給するようになっている。
【0026】
ブーム4の先端部付近には、ドラムユニット10が取り付けられている。このドラムユニット10は、ジブ6におけるブーム4との接続部付近に設けられ、ブーム4の先端部に対して下部寄りに位置しており、2個のガイドドラム11,12を備えている。ガイドドラム11、12は、互いに平行な軸11a,12a同士をリンク部材13によって連結されており、また、これらのガイドドラム11,12を含むドラムユニット10の全体が、ジブ6の基端部に取り付けられた軸11aを中心として回転可能に支持されている。また、軸11aは、ブーム4に対するジブ6の回動軸と同軸に設定されており、ジブ6の振出し操作によってブーム4に対するドラムユニット10の位置関係が変化することがないようになっている。こうして、ガイドドラム12は、ブーム4およびジブ6に対し、ガイドドラム11の周囲を軸11aを中心として回転するようになっている。
【0027】
ガイドドラム9やドラムユニット10は、それぞれ油圧ホース7の位置や動きをガイドするガイド機構を構成するが、車両式クレーン1は、ガイド機構としてさらにガイド環14を備えている。ガイド環14は、ブーム4を構成する各筒体5の先端部にそれぞれ取り付けられている。
【0028】
尚、
図1、
図2では説明の都合上、本発明の要旨に直接関係のない部分や、要部の視認性を妨げる部分等については適宜図示を省略している(以降の各図でも同様である)。
【0029】
図3~
図5は、本発明の第一実施例によるホースのガイド機構を構成するガイド環14の形態を示している。ガイド環14は、ブーム4(
図1、
図2参照)側に固定された取付ブラケット15に対し取り付けられるベース部材16と、該ベース部材16に取り付けられて開閉可能な環状構造をなす3本の柱状部材17,18,19を備えた簡単な構成の部品である。柱状部材17,18,19を閉じた状態(
図3に実線にて示す状態)において、ベース部材16、第一の柱状部材17、第二の柱状部材18、第三の柱状部材19の4部材は、ベース部材16と第二の柱状部材18、第一の柱状部材17と第三の柱状部材19がそれぞれ向かい合う形で、方形の環状構造の四辺をなす。第一~第三の柱状部材17~19によって囲まれる面は、油圧ホース7の延びる方向に対しほぼ直交しており、ブーム4に沿って延びる油圧ホース7を第一~第三の柱状部材17~19で取り囲むことができるようになっている。
【0030】
ガイド環14がブーム4に取り付けられ、且つ閉じられた状態において、ガイド環14を構成する柱状部材のうち、第一の柱状部材17と第三の柱状部材19は地面と略平行であり、それぞれガイド環14の環状構造の上辺と下辺をなす。ベース部材16および第二の柱状部材18は、互いに平行な第一の柱状部材17と第三の柱状部材19の端部同士の間にそれぞれ渡され、環状構造の両側辺をなす。尚、以下では説明の都合上、ガイド環やその他の装置における上下の位置関係は、ブーム4を倒伏させた状態を基準に記述することとする。
【0031】
ベース部材16は、一端に備えた取付部16aにおいて、ボルト等の締結具により取付ブラケット15に対し固定されるようになっている。ベース部材16の他端には、後述するように第三の柱状部材19の着脱機構と係合する係合部としての係合孔16bが設けられている。
【0032】
ベース部材16の中間部には、第一の柱状部材17の基端部が固定されている。第一の柱状部材17は、ベース部材16の中間部に基端部を固定され、該ベース部材16と直交する向きに突出している。第一の柱状部材17は、ベース部材16を介してブーム4側の部材である取付ブラケット15に取り付けられ、ガイド環14の全体を支持する。
【0033】
第一の柱状部材17の先端部17aには、回転軸17bを中心として第二の柱状部材18の基端部が回転可能に取り付けられている。第二の柱状部材18の先端部には、該第二の柱状部材18と直交するように第三の柱状部材19が取り付けられている。
【0034】
回転軸17bは、ベース部材16の係合孔16b、および第一の柱状部材17の軸を含む面に対し直交する向きに設けられ、第二の柱状部材18は、軸が前記面と一致するように、あるいは平行になるように設けられる。第三の柱状部材19は、軸が前記面と一致するように、あるいは平行になるように設けられ、また後述する着脱機構により、先端部をベース部材16の係合孔16bに対し係合可能に構成されている。
【0035】
こうして、回転軸17bによる第二の柱状部材18の回転機構により、第二の柱状部材18およびこれに取り付けられた第三の柱状部材19の全体を、第一の柱状部材17に対し回転することができる。ガイド環14は、こうした簡単な機構により、ベース部材16および第一~第三の柱状部材17~19による環状構造を開閉することができるようになっている。また、環状構造を閉じた状態(閉状態)においては、前記着脱機構により第三の柱状部材19の先端部をベース部材16に対して係止し、閉状態を維持できるようになっている。
【0036】
第三の柱状部材19に設けられた着脱機構について説明する。第三の柱状部材19は、前記着脱機構として筒体19a、ロックピン19b、把持部19cおよび付勢体19dを備えており、
図5に示す如く、第三の柱状部材19の外殻をなす円筒状の筒体19aの内部に、棒状のロックピン19bを収容して構成されている。
【0037】
筒体19aは、基端部を第二の柱状部材18に固定されており、内部に収容されたロックピン19bは、両端が筒体19aの両端から軸方向に関して外側に突出するように配置されている。ロックピン19bの基端部は、第二の柱状部材18の先端部において、第三の柱状部材19の主要部が設けられた側とは反対側に突出しており、突出した部分にはリング状の把持部19cが取り付けられている。
【0038】
筒体19a内に収容されたロックピン19bの外周面と、筒体19aの内周面との間には、付勢体19dが配置されている。付勢体19dは、例えばコイルばねであり、ロックピン19bを筒体19aに対し、基部側から先端側に向かって付勢している。この付勢体19dの付勢力により、ロックピン19bは、先端部が筒体19aの先端部から突出した状態で保持されるが、ロックピン19bの基端部に設けられた把持部19cを把持し、付勢体19dの付勢力に抗してロックピン19bを基部側に引っ張ると、ロックピン19bの先端部が筒体19aの先端部に引き込まれるようになっている。また、把持部19cは、ロックピン19bの軸と直交する向きの寸法が筒体19aの内径よりも大きく設定されており、把持部19cがロックピン19bの基端部側において筒体19aと干渉することにより、付勢体19dの付勢力によってロックピン19bが筒体19aから先端側へ過剰に突出したり、抜け落ちたりすることがないようになっている。
【0039】
ベース部材16の他端には、上述の通り係合孔16bが設けられており、ガイド環14を閉じた状態においてロックピン19bの先端部を筒体19aの先端部から突出させると、ロックピン19bの先端部が係合孔16bに入り込み、これによって第三の柱状部材19がベース部材16に係合され、ガイド環14の環状構造が保持されるようになっている。また、この状態から把持部19cを操作し、ロックピン19bの先端部を筒体19aの先端部に引き込むと、ロックピン19bの先端部が係合孔16bから抜かれ、係合状態が解除されるようになっている。係合状態が解除されると、第二の柱状部材18と第三の柱状部材19を回転軸17bを中心に回転させ、ガイド環14を開くことができる。
【0040】
また、ガイド環14を開いた状態から閉じていくと、ロックピン19bの先端部がベース部材16に当接して押し込まれていき、ガイド環14が完全に閉じてロックピン19bの軸線が係合孔16bの中心軸と一致した段階で、付勢体19dの付勢力によりロックピン19bの先端部が筒体19aの先端部から突出し、係合孔16bに係合するようになっている。よって、ガイド環14を閉じる際には、把持部19cによるロックピン19bの操作は必要ない。このように、第三の柱状部材19に設けられた着脱機構により、ガイド環14の開閉を簡単に切り替えることができる。
【0041】
第三の柱状部材19には、さらに筒体19aの外周面を覆うように円筒状のローラ19eが設けられている。ローラ19eは、第三の柱状部材19の軸を中心とし、筒体19aの表面に沿って回転するようになっている。
【0042】
さらに、第一の柱状部材17の先端部17aには、第二の柱状部材18を仮置きするための肩部17cが設けられている。第一の柱状部材17は、
図3、
図4に示すように、第二の柱状部材18の取付部である先端部17aが胴部17dと比較して薄くなって(すなわち、回転軸17bに沿った方向における寸法が小さくなって)おり、この先端部17aを第二の柱状部材18の基端部の部材で挟み込みつつ、両者を回転軸17bで貫通するようにして互いを接続している。
【0043】
ここで、第一の柱状部材17には厚い胴部17dから薄い先端部17aに至る途中に段部が設けられ、この段部において寸法が切り替わっているが、この段部が、胴部17dの端面を斜め上に向けた肩部17cとして形成されている。このように肩部17cに斜めの角度を設定すると、ガイド環14を開いた際、第二の柱状部材18を回転軸17bの真上よりも胴部17d側まで回転させることができる(
図3に一点鎖線にて示す位置を参照)。
【0044】
肩部17cの角度は適宜設定することができるが、
図3に一点鎖線に示す位置まで第二の柱状部材18を回転させた際に、第二の柱状部材18と第三の柱状部材19によって構成される部材の重心(
図3中にGの符号にて示す)が、回転軸17bよりも胴部17d側に位置し得るような角度に設定する。このようにすると、ガイド環14を開いた際、第二の柱状部材18の一部を肩部17cに載せる形で、第二の柱状部材18と第三の柱状部材19を第一の柱状部材17の上側に仮置きすることができる。
【0045】
尚、このような肩部の設定による仮置きの機構は、第一の柱状部材17と第二の柱状部材18の接続の形態により適宜変更することができる。例えば
図6、
図7に示すように、第二の柱状部材18側の部材が薄く形成され、この部分を第一の柱状部材17側の部材で挟み込むようにして接続部が形成されている場合、第二の柱状部材18を挟み込む部材同士の間に斜めの肩部17cを設けることで、同様の作用効果を奏することが可能である。
【0046】
上記した第一実施例のガイド機構におけるホースの掛替えの手順を説明する。
【0047】
車両式クレーン1の格納時には、
図8に示す如く、ブーム4の基部側から延びる油圧ホース7はガイド環14を経由せず、ブーム4の先端部付近に設けられたドラムユニット10のガイドドラム11,12に巻き掛けられ、折り返してジブ6に沿って延びるように配置される。この状態から車両式クレーン1を稼働させる場合、ブーム4を伸長させたり、ジブ6を振り出すといった動作を油圧ホース7が妨げることのないよう、稼働に先立って油圧ホース7の掛替えを行う。すなわち、
図9に示す如く、ブーム4を構成する各筒体5の先端に設けられたガイド環14に油圧ホース7を通す。また、軸11aを中心としてドラムユニット10を回転させ、ガイドドラム12をガイドドラム11に対して上方に引き起こす。
【0048】
収納時(
図8参照)には、ブーム4に沿って先端側に延びてきた油圧ホース7が、ガイドドラム11、ガイドドラム12の順で巻き掛けられ、ブーム4に下抱きされたジブ6に折り返すようになっているが、ドラムユニット10の回転操作によってガイドドラム12を引き起こすと(
図9参照)、ブーム4に沿って延びてきた油圧ホース7はガイドドラム12、ガイドドラム11の順で巻き掛けられてジブ6へ延びる形になる。
【0049】
図8の状態において、各ガイド環14は
図10に示す如く閉じており、油圧ホース7は各ガイド環14の外側の下方に位置している。ここから
図9に示すように油圧ホース7を各ガイド環14に通す場合、まず
図11に示す如く、ガイド環14を開く操作を行う。ガイド環14を閉じた状態においては、第三の柱状部材19のロックピン19bの先端がベース部材16の係合孔16bに入り込んで係合されているので(
図3の実線参照)、把持部19cを把持してロックピン19bを基部側に引っ張って係合を解除してから、第二の柱状部材18を第三の柱状部材19ごと回転させる。このとき、開いた第二の柱状部材18を、第一の柱状部材17の肩部17cに第三の柱状部材19ごと仮置きすることができる。
【0050】
ガイド環14を開いたら、ドラムユニット10の回転操作を行い、
図9に示す如くガイドドラム12を引き起こす。それまでガイド環14の下方に位置していた油圧ホース7は、この操作に伴い、張力によって自動的にガイド環14の内側へ引き上げられる(
図11の矢印参照)。このとき、ガイド環14においては、環状構造の下辺にあたる第三の柱状部材19がガイド環14の下部から退避しているので、油圧ホース7自体に対しては特段の操作を行わなくとも、油圧ホース7はガイド環14の構成部材に妨げられることなく、真っ直ぐ上方へ移動するだけでガイド環14の内側に収まる。その後、
図12に示す如くガイド環14を閉じることで、油圧ホース7の掛替えは完了する。
【0051】
こうしてガイド環14の内側に油圧ホース7を拘束し、その状態で車両式クレーン1(
図1参照)を稼働させると、ブーム4の伸縮など各部の動作に伴い、油圧ホース7は自重によってガイド環14の下辺にあたる第三の柱状部材19に接しつつ、ホースリール8からの繰出し・巻取りに伴って長手方向に前後する。その際、第三の柱状部材19に設けられたローラ19eが回転することにより、油圧ホース7は長手方向にスムーズにスライドすることができる。尚、ガイド環14から油圧ホース7を取り外す場合には、上記と逆の手順で作業を行えばよい。
【0052】
尚、実際の建設機械において、ガイド機構を構成する各部の位置関係や、油圧ホースに実際に加えられる張力、油圧ホースの繰出し長さ等の如何によっては、ガイド環を開いてドラムユニットを回転させる操作だけでは油圧ホースがガイド環の内側まで持ち上がらない場合も想定できるが、その場合は油圧ホースを人力でさらに持ち上げるなど、適宜作業を補えばよい。
【0053】
本発明の参考例として、
図13~
図15に従来のガイド環の一例と、これによる油圧ホースの掛替え作業を示す。参考例のガイド環20は、ベース部材16に第一~第三の柱状部材21~23を備えて構成されている点は上記第一実施例におけるガイド環14と共通しているが、第二の柱状部材22のみを第三の柱状部材23に対し回転またはスライドさせることで環状構造を開放する仕組みとなっている点が上記第一実施例と異なっている。すなわち、本参考例のガイド環20では、掛替え作業時、環状構造の下辺ではなく側辺が開放されるようになっている。
【0054】
このような構造のガイド環20に対し油圧ホース7の掛替え(
図8、
図9参照)を行う場合、例えば
図13に示すようにガイド環20が閉じられ、その下方に油圧ホース7が位置する状態から、
図14に示す如く第二の柱状部材22を操作して環状構造を開放する。ガイド環20は側辺が開放された状態となるので、
図14中に矢印で示す如く、下辺にあたる第三の柱状部材23を迂回するように、油圧ホース7をガイド環20の内側に移動させる。その後、
図15に示す如く第二の柱状部材22を操作してガイド環20を閉じ、さらに
図9に示す如くドラムユニット10を回転させてガイドドラム12を引き上げると、油圧ホース7の張力により、
図15内に矢印で示すように油圧ホース7がガイド環20内で浮いた状態になる。
【0055】
参考例のガイド環20に対するこうした掛替え作業では、油圧ホース7をガイド環20の内側に収める操作に相応の力と手間が必要である。油圧ホース7には自重のほか、内部を流通するオイルの重量や張力が加わっており、これに抗して油圧ホース7を持ち上げなければならないし、また、第三の柱状部材23を迂回させようとすれば、その分だけ油圧ホース7をホースリール8から余分に引き出す必要があり、さらに力が必要である。これに対し、
図10~
図12に示したようなガイド環14であれば、環状構造の下辺にあたる第三の柱状部材19が開放されるので、ドラムユニット10を回転させれば油圧ホース7は張力によって自動的に持ち上がってガイド環14内に収まるので、油圧ホース7の掛替えに大きな力は必要ない。尤も、上述のようにドラムユニット10の回転操作だけでは油圧ホース7がガイド環内に収まるには至らない場合も想定できるが、その場合も油圧ホース7をまっすぐに少し持ち上げれば済み、油圧ホース7を屈曲させて環状構造の下辺にあたる部材を迂回させるような操作を行う必要はないので、参考例と比較すればやはり作業の負担は大幅に軽減される。
【0056】
さらに、第一実施例では、ガイド環14の上辺にあたる第一の柱状部材17に肩部17cを設け、第二の柱状部材18を仮置きできるようにしている。これにより、ガイド環14の構成部材を別途保持しなくとも、下辺を開放した状態を保つことができるようになっている。したがって、掛替えの作業において、ドラムユニット10の回転操作中に第二の柱状部材18を保持しておくような必要がなく、作業をさらに容易に行うことができる。
【0057】
さらに、第一実施例のガイド環14の場合、環状構造を開放した状態において、下辺にあたる第三の柱状部材19に加え、第二の柱状部材18も退避されるようになっているため、ドラムユニット10の操作時にガイド環14がドラムユニット10と干渉しにくいというメリットもある。
【0058】
図8に示す状態から、
図9に示すようにドラムユニット10を引き起こす場合、ドラムユニット10を時計回りに回転させれば、ガイドドラム12をガイド環14の設けられた位置を経由させることなく引き起こすことができる一方、この操作においては、油圧ホース7の巻き掛けられたガイドドラム12を、ホースリール8(
図2参照)から遠ざかる側に引っ張ることになる。すなわち、ホースリール8から油圧ホース7に加えられる張力に抗して油圧ホース7を引き出しながら、ドラムユニット10の回転操作を行わなくてはならない。
【0059】
これに対し、ドラムユニット10を反時計回りに回転させる場合は、油圧ホース7をホースリール8から新たに引き出す必要がないか、引出し量を抑えることができる。
【0060】
すなわち、ホースリール8がモータ式である場合は、動力であるモータを停止すれば油圧ホース7に対し巻取り力は発生せず、油圧ホース7に弛みが生じても、油圧ホース7が自動的に巻き取られることはない。よって、ドラムユニット10を反時計回りに回転させる場合には、作業を通じて油圧ホース7を引き出す必要はない。
【0061】
ホースリール8がゼンマイ式である場合は、油圧ホース7に対し常時巻取り力が発生しており、油圧ホース7に弛みが生じれば自動的に巻き取られてしまう。このため、ドラムユニット10を反時計回りに回転する場合であっても、回転操作の後半には油圧ホース7を引き出す作業が必要である。しかしながら、ドラムユニット10を時計回りに回転させることを考えると、回転操作の前半で油圧ホース7を大きく引き出し、その後もホースリール8の巻取り力に抗しながらドラムユニット10をゆっくりと操作しなくてはならない。これと比較すれば、反時計回りに回転する場合、必要な引出し量は少なく、また巻取り力に抗して行う作業の量も少ない。
【0062】
また、ブーム4やジブ6における機器や部品類の配置、あるいは作業時における周囲の状況によっては、ドラムユニット10の前方に何らかの物体が存在し、ドラムユニット10を反時計回りに回転させようとしても、作業のための空間を確保することが難しい可能性も想定できる。本第一実施例のように、ドラムユニット10を時計回りに回転できるようにしておけば、ドラムユニット10の引き起こしを最低限の移動量で完了させることができ、回転のための空間を確保する作業が別途生じるようなことはない。
【0063】
このように、ホースリール8の型式にかかわらず、ドラムユニット10を引き起こすにあたり、回転操作は時計回りに行うより反時計回りに行う方が作業が楽である。ただし、回転操作を反時計回りに行う場合、ドラムユニット10の回転範囲内にガイド環14が位置しているため、ガイド環14の状態によってはドラムユニット10の構成部材がガイド環14と干渉してしまう虞がある。
【0064】
ここで、本第一実施例のように、ガイド環14の開放時、環状構造の側辺をなす第二の柱状部材18と、下辺をなす第三の柱状部材19が上方へ退避するようになっていると、
図16に示すように、ドラムユニット10の構成部材がガイド環14に近づいても、ガイド環14の開放によって構成部材がドラムユニット10の回転範囲から退避するので、ドラムユニット10の回転操作を支障なく行うことができる。
【0065】
これに対し、
図13~
図15に示したような参考例のガイド環20の場合、ドラムユニット10の回転範囲からガイド環20を退避させようとすれば、例えば
図17に示すように、ガイド環20の姿勢や位置を変更するための機構が別途必要になる。第一実施例のガイド環14であれば、環状構造を開放するだけで部材を退避させることができるが、参考例のガイド環20では、環状構造の開閉構造の他にガイド環20の姿勢や位置を変更する機構が必要になるため、構造が複雑になって製造コストが増大してしまうのである。
【0066】
また、本第一実施例では、回転軸17bが上側の第一の柱状部材17の高さに位置している。これにより、ガイド環14を開く操作を行うにあたり、第三の柱状部材19が下側に突出する量が少なくなっている。例えば第二の柱状部材18の先端部に第三の柱状部材19の回転軸が設定されている場合を想定すると、開閉時、第三の柱状部材19が該第三の柱状部材19の長さの分だけ第二の柱状部材18より下側へ突出することになるが、本題医師実施例のように回転軸がそれより高い位置に設定されていれば、その分、第三の柱状部材19の突出量は少ない。したがって、開閉時、ガイド環14の下方に位置する油圧ホース7に対して第三の柱状部材19が干渉しにくく、開閉の作業がしやすくなっている。
【0067】
また、本第一実施例の場合、着脱機構としてのロックピン19bを第三の柱状部材19に内蔵しているので、ガイド環14の開閉操作を前提とした全体の構成をコンパクトにすることができる。例えば着脱機構として、前後方向に沿って抜き差しされるようにロックピンを設けた場合を想定すると、前記ロックピン自体が前後方向に寸法を要するのに加え、抜き差しの操作に必要な空間も確保する必要があり、複数のガイド環同士の間に前後方向の間隔を設けなくてはならない。これでは収縮時に密集するブームの各筒体の先端にガイド環をうまく配置することが難しい。本第一実施例のようにすれば、着脱機構に要する前後方向の寸法を極力小さくすることができ、ガイド環14を筒体5の先端に容易に配置することができる。また、ロックピン19bの操作も、前後方向と直交する向きに行うようになっているので、操作にあたって前後のガイド環14と干渉することがなく、作業がしやすい。
【0068】
図18、
図19は本発明の第二実施例として、ガイド環として想定される別の形態を示している。ガイド環30は、ベース部材16に第一~第三の柱状部材31~33を備えて環状構造を形成し、第二、第三の柱状部材32,33を第一の柱状部材31に対し開閉することで環状構造を開閉するようになっている点において上記第一実施例のガイド環14と共通しているが、下辺をなす第三の柱状部材33ではなく、側辺をなす第二の柱状部材32に着脱機構を備えた点で第一実施例のガイド環14と異なっている。尚、本第二実施例の場合、ベース部材16に第三柱状部材33と係合する係合孔は設けられていない。第三の柱状部材33には、第一実施例における第三の柱状部材19と同様、外周面を覆うように円筒状のローラ33aが設けられている。
【0069】
第二の柱状部材32は、着脱機構として筒体32a、ロックピン32b、把持部32cおよび付勢体32dを備えており、外殻をなす円筒状の筒体32aの内部に、棒状のロックピン32bを収容して構成されている。
【0070】
筒体32aは、第一の柱状部材31の先端部に設けられた支持部31aに対し、基端部を回転軸31bを中心として回転可能に取り付けられ、該回転軸31bにより前記第一の柱状部材31に対し前記第二の柱状部材32が俯仰自在に軸支されている。支持部31aは、ガイド環30の環状構造のなす面に沿って第一の柱状部材31の先端から上方へ張り出すように設けられた板状の部材であり、回転軸31bは、この支持部31aにおいて第一の柱状部材31より上方に設けられている。第二の柱状部材32の筒体32aは、基端部に設けた切り込みに支持部31aを挟み込み、筒体32aと支持部31aの構成部材に回転軸31bを貫通させる形で、第一の柱状部材31に対し回転可能に支持されている。
【0071】
支持部31aの下側には、第二の柱状部材32のロックピン32bと係合する係合部としての係合溝31cが設けられている。係合溝31cは、ロックピン32bの基端部が収まるよう、支持部31aの下方に向かって開口する凹状の構造である。
【0072】
筒体32aの内部に収容されたロックピン32bは、両端が筒体32aの両端から軸方向に関して外側に突出するように配置されている。ロックピン32bの先端部は、第三の柱状部材33の先端部において、第二の柱状部材32の主要部が設けられた側とは反対側に突出しており、突出した部分にリング状の把持部32cが取り付けられている。
【0073】
筒体32a内に収容されたロックピン32bの外周面と、筒体32aの内周面との間には付勢体32dが配置され、ロックピン32bを筒体32aに対し先端側から基部側に向かって付勢している。この付勢体32dの付勢力により、ロックピン32bの基端部は、第一の柱状部材31の支持部31aに押し付けられる。
【0074】
図18に実線で示す如くガイド環30を閉じた状態において、ロックピン32bの基端部は支持部31aの下側に設けられた係合溝31cに係合し、その状態で支持部31aに対し付勢されている。これにより、ガイド環30は環状構造が閉じられた状態で保持される。
【0075】
ロックピン32bの先端部に設けられた把持部32cを把持し、付勢体32dの付勢力に抗してロックピン32bを先端側に引っ張ると、ロックピン32bの基端部が筒体32aの先端側へ引き込まれて支持部31aの係合溝31cから抜け、係合が解除される。係合が解除されると、第二の柱状部材32と第三の柱状部材33を回転軸31bを中心に回転させ、
図19に示すようにガイド環30を開くことができる。
【0076】
ガイド環30を開いた状態でロックピン32bを放すと、付勢体32dの付勢力によりロックピン32bが再び支持部31aに対し押し付けられ、これにより、ガイド環30は開放された状態で保持される。このように、本第二実施例の場合、第一の柱状部材31に対して直接、回転可能に接続された第二の柱状部材32に着脱機構が設けられ、該着脱機構が付勢力によって第二の柱状部材32を第一の柱状部材31に対し保持するようになっているので、上記第一実施例における肩部17c(
図3参照)のような構造を特に設けなくとも、ガイド環30を開いた状態で保持することができる。尚、ガイド環30を開放した状態で第二の柱状部材32を保持する位置は、ここに図示した位置に限らない。例えば、
図11における第二の柱状部材18の位置で保持することもできる(この場合でも、第二の柱状部材32の姿勢は付勢力によって保持されるので、肩部17cのような構造は不要である)。
【0077】
ガイド環30を閉じる際には、第二の柱状部材32を閉じていけば、ロックピン32bが先端に当接する支持部31aにより、付勢体32dの付勢力に抗して押し込まれていく。ガイド環30が完全に閉じた状態になると、ロックピン32bの位置が係合溝31cと一致し、ここで付勢体32dの付勢力によりロックピン32bの先端部が筒体32aの先端部から突出し、係合溝31cに係合する。よって、ガイド環30を閉じる際、把持部32dによるロックピン32bの操作は必要ない。このように、第二の柱状部材32でも、ガイド環30の開閉は着脱機構によって簡単に切り替えることができる。
【0078】
この第二実施例のガイド環30によっても、上記第一実施例(
図3~
図12参照)と同様に、環状構造の下辺を開放することによって油圧ホース7の掛替えを簡便に行うことができる。また、上記第一実施例と同様、着脱機構としてのロックピン32bが柱状部材(本第二実施例の場合、第三の柱状部材33ではなく、第二の柱状部材32)に内蔵しているので、ガイド環30の開閉操作を前提とした全体の構成をコンパクトにすることができる。
【0079】
さらに本第二実施例の場合、上述の通り第一の柱状部材31に支持部31aが設けられ、この支持部31aにより、第一の柱状部材31の軸よりも上方に回転軸31bが支持されている。第二の柱状部材32の回転の中心をなす回転軸31bが上方に支持されていれば、その分、第一の柱状部材31に対して回転する第二の柱状部材32と第三の柱状部材33を、開放状態において上方に退避させることができる。これにより、ドラムユニット10の回転操作時におけるドラムユニット10とガイド環30との干渉や、ガイド環30を開く際における第三の柱状部材33と油圧ホース7との干渉をいっそう確実に回避することができる。
【0080】
図20、
図21は、ガイド環として想定されるさらに別の形態を示している。本第三実施例のガイド環40は、ベース部材16に第一~第三の柱状部材41~43を備えて環状構造を形成している点、また第三の柱状部材43の外周面を覆うように円筒状のローラ33aが設けられている点では上記第一、第二実施例のガイド環14、30と共通している。ただし本第三実施例の場合、ガイド環40の開閉を回転ではなく、スライドする動作によって行うようになっている点が上記いずれの実施例とも異なっている。
【0081】
本第三実施例のガイド環40は、第一の柱状部材41にスライド機構として、相互に軸方向にスライド可能な固定軸41aと可動筒41bを備えている。固定軸41aの基端部はベース部材16に固定されている。可動筒41bは、固定軸41aの外周面を覆う円筒状の部材であり、先端部に第二の柱状部材42の基端部が固定されている。第二の柱状部材42の先端部には第三の柱状部材43の基端部が固定されており、第二の柱状部材42と第三の柱状部材43が可動筒41bと共に第一の柱状部材41の軸方向に沿ってスライドすることにより、ガイド環40を簡単に開閉できるようになっている。
【0082】
また、固定軸41aの先端部には、第二の柱状部材42の着脱機構と係合する係合部としての係合孔41cが設けられている。係合孔41cは、第二の柱状部材42の軸方向に沿って設けられた孔であり、後述するように第二の柱状部材42内のロック体42aに設けられたロックピン42bが嵌まり込むようになっている。
【0083】
また、固定軸41aの先端は、先端側に向かって径が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0084】
第二の柱状部材42は、第一の柱状部材41に対する着脱機構として、ロック体42aと付勢体42cを内部に備え、さらにそれらを操作するための作動溝42dおよび把持部42eを備えている。
【0085】
ロック体42aは、第二の柱状部材42の内部空間に収容された円筒状の物体であり、基部側の端面には基部側に向かって突出するロックピン42bが設けられている。第二の柱状部材42の内部空間におけるロック体42aより先端側の位置には、コイルばねである付勢体42cが収容されており、ロック体42aを第二の柱状部材42に対して基部側に付勢している。第二の柱状部材42におけるロック体42aを収容した部分の側壁には、内外を連通するように軸方向に沿って作動溝42dが設けられており、ロック体42aの側面には、この作動溝42dを通して外部へ突出するように把持部42eが設けられている。
【0086】
ガイド環40を閉じた状態では、第一の柱状部材41の可動筒41b、第二の柱状部材42および第三の柱状部材43は固定軸41aに対しベース部材16に最も接近した位置にある。第二の柱状部材42内に収容されたロック体42aは、ロックピン42bが固定軸41aの先端の係合孔41cに嵌り込んだ状態で固定軸41aに対し付勢され、これによってガイド環40は閉じた状態で保持されている。
【0087】
ここからガイド環40を開く場合、まず第二の柱状部材42の側面に突出した把持部42eを把持し、作動溝42dに沿って付勢体42cの付勢力に抗し先端側へ移動させる。この操作よってロック体42aは第二の柱状部材42の内部を先端側に移動し、ロック体42aの基端部に備えたロックピン42bが係合孔41cから抜け、係合が解除される。係合が解除されると、第一の柱状部材41の可動筒41bを第二の柱状部材42および第三の柱状部材43と共にベース部材16から離れる方向にスライドさせ、
図21に示すようにガイド環40を開くことができる。こうして開いた状態のガイド環40は、特に力等を加えずとも、開いた状態のままで保持される。
【0088】
ガイド環40を閉じる場合には、この状態から、第一の柱状部材41の可動筒41bを第二の柱状部材42および第三の柱状部材43と共にベース部材16へ向かう方向にスライドさせる。このとき、固定軸41aの先端には上述の通りテーパ形状が形成されており、ロックピン42bと向かい合う斜め下の部分に斜面が形成されているので、ロックピン42bの先端がこの斜面に当接すると、ロック体42aに対し軸方向に沿って下向きの力が加わる。これにより、特に把持部42eを把持してロック体42aを操作せずとも、可動筒41bおよび第二、第三の柱状部材42、43をベース部材16に向かって押し込むだけで、ロック体42aは付勢体42cの付勢力に抗して第二の柱状部材42内を先端側に移動し、可動筒41bおよび第二、第三の柱状部材42、43をロックピン42bに妨げられることなくスライドさせることができる。可動筒41bが固定軸41aに対し、ベース部材16に最接近する位置に達すると、ロックピン42bの位置が固定軸41aの係合孔41cと合致し、付勢体42cの付勢力によってロック体42aが基部側に押し出されてロックピン42bが係合孔41cに嵌まり込む。こうして、ガイド環40は再び環状構造を閉じた状態で保持される。
【0089】
この第三実施例のガイド環40によっても、上記第一、第二実施例(
図3~
図12および
図18、
図19参照)と同様に、環状構造の下辺を開放することによって油圧ホース7の掛替えを簡便に行うことができる。また、ガイド環40を開閉するための機構として、前後方向と直交する向きに一部の部材をスライドさせる機構を採用しているので、前後方向の寸法が小さく、且つ開閉操作がしやすくなっている。また、開閉に伴って一部の部材が閉状態における位置よりも下方に突出することがないので、ガイド環40を開く際における第三の柱状部材43と油圧ホース7との干渉を回避することもできる。
【0090】
尚、以上に説明した第一~第三の各実施例は、細部の仕様を変更したり、それぞれの構成を適宜組み合わせるなど、適宜変形させてもよい。例えば第一実施例において、第二実施例のように第一の柱状部材の先端に支持部を設け、回転軸を上方に設定してもよいし、第三実施例において着脱構造を第一の柱状部材の固定軸および可動筒における中間部に設定するといったこともできる。また、着脱機構についても、コイルばね等の付勢体を用いた機構のほかに、可動部分を固定部分に係合し得る限りにおいて、種々の仕組みを想定できる。例えば、柱状部材同士の接続部に設けた孔に、環状構造のなす面と直交する向きにピン等を挿入し又は抜き取ることで着脱を行う仕組み等も考えられる。また、スライド機構は、例えば上記第三実施例とは逆に、ベース部材に固定された筒に対し、該筒に収容された軸がスライドするような機構とすることもできる。その他、ガイド環の部品構成や、開閉のための構造(回転の機構やスライド機構)、着脱機構の構成や位置等は適宜変更することができる。
【0091】
以上のように、上記各実施例のホースのガイド機構は、建設機械(車両式クレーン)1のブーム4に設置され、ブーム4に沿って配置されるホース(油圧ホース)7を環状構造の内側に拘束するガイド環14,30,40を備え、ガイド環14,30,40は、環状構造の下辺が開放されるよう構成されている。このようにすれば、ホース7の掛替え作業の際、下辺にあたる部材(第三の柱状部材19,33,43)がガイド環14の下部から退避するので、ガイド環14の下方に位置していたホース7を、ガイド環14の構成部材に妨げられることなくガイド環14の内側に収めことができる。
【0092】
また、各実施例において、ガイド環14,30,40は、上辺をなしてブーム4側に取り付けられる第一の柱状部材17,31,41と、側辺をなす第二の柱状部材18,32,42と、下辺をなす第三の柱状部材19,33,43とを備えて構成されている。このようにすれば、簡単な構成のガイド環14,30,40により、上記作用効果を奏することができる。
【0093】
また、一部の実施例において、第二の柱状部材18,32は、第三の柱状部材19,33と共に第一の柱状部材17,31に対し回転可能に構成されている。このようにすれば、簡単な機構によりガイド環14,30を開閉することができる。
【0094】
また、一部の実施例において、第一の柱状部材31は、第二の柱状部材32の回転軸31bを、第一の柱状部材31の軸より上方に支持する支持部31aを備えている。このようにすれば、側辺をなす第二の柱状部材32と下辺をなす第三の柱状部材33を開放状態においてより上方に退避させることができ、これにより、ドラムユニット10の回転操作の際、ドラムユニット10とガイド環30との干渉をいっそう確実に回避することができる。
【0095】
また、一部の実施例は、第一の柱状部材17を固定されたベース部材16を備え、第三の柱状部材19に、ベース部材16に対し係合可能な着脱機構(筒体19a、ロックピン19b、把持部19c、付勢体19d)を備えて構成されている。このようにすれば、ガイド環14の開閉を簡単に切り替えることができる。
【0096】
また、一部の実施例は、第一の柱状部材17に、第二の柱状部材18を仮置き可能な肩部17cを備えている。このようにすれば、第一の柱状部材18を肩部17cに仮置きすることで、ガイド環14の構成部材を特に保持しなくとも下辺を開放した状態を保つことができ、作業をさらに容易に行うことができる。
【0097】
また、一部の実施例は、第二の柱状部材32に、第一の柱状部材31に対し係合可能な着脱機構(筒体32a、ロックピン32b、把持部32c、付勢体32d)を備えている。このようにしても、ガイド環30の開閉を簡単に切り替えることができる。
【0098】
また、一部の実施例は、ガイド環30が開放された状態において、第二の柱状部材32に備えた付勢体32dにより、第二の柱状部材32が第一の柱状部材31に対して保持可能に構成されている。このようにしても、ガイド環30の開閉を簡単に切り替えることができる。
【0099】
また、一部の実施例は、第一の柱状部材41に、第二の柱状部材42と第三の柱状部材43が第一の柱状部材41の軸方向に沿ってスライドするよう構成されたスライド機構(固定軸41a、可動筒41b)を備えている。このようにしても、ガイド環40の開閉を簡単に切り替えることができる。
【0100】
また、各実施例では、上述のホースのガイド機構を建設機械1に適用しているので、建設機械1において上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0101】
したがって、上記各実施例によれば、ホースの掛替えの作業を簡便に行い得る。
【0102】
尚、本発明のホースのガイド機構および建設機械は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、上記実施例では建設機械として振出し式のジブを搭載した車両型クレーンを想定したが、本発明はその他の種類の建設機械にも適用できる。例えば、振出し式のジブを搭載しないクレーンや、車両式でないクレーン、さらには高所作業車などクレーン以外の建設機械も適用対象として想定できる。油圧ホース等のホースをブームに取り付ける機構を備えている限りにおいて、本発明は種々の建設機械に適用することができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、実施形態には種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
1 建設機械(車両式クレーン)
4 ブーム
7 ホース(油圧ホース)
14 ガイド環
16 ベース部材
17 第一の柱状部材
17c 肩部
18 第二の柱状部材
19 第三の柱状部材
19a 着脱機構(筒体)
19b 着脱機構(ロックピン)
19c 着脱機構(把持部)
19d 着脱機構(付勢体)
30 ガイド環
31 第一の柱状部材
31b 回転軸
32 第二の柱状部材
32a 着脱機構(筒体)
32b 着脱機構(ロックピン)
32c 着脱機構(把持部)
32d 着脱機構(付勢体)
33 第三の柱状部材
40 ガイド環
41 第一の柱状部材
41a スライド機構(固定軸)
41b スライド機構(可動筒)
42 第二の柱状部材
43 第三の柱状部材