(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】煙監視システム及び煙センサ
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20250106BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B17/10 K
(21)【出願番号】P 2021049055
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 隆文
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慎一朗
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-276670(JP,A)
【文献】特開2015-230652(JP,A)
【文献】特開2018-173988(JP,A)
【文献】特開2017-068392(JP,A)
【文献】特開2017-097893(JP,A)
【文献】特開平03-030096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部設備に接続されている煙警報盤と、前記煙警報盤に接続されている煙センサとを備え、
前記煙センサは、
前記外部設備への出力を伴う外部出力試験の実行指示を取得する取得部と、
前記実行指示に従って、前記外部設備への出力を伴わない火災試験において行われる所定時間の蓄積動作を行わずに火災に関する動作の試験を実行する試験部と、
前記試験の結果を前記煙警報盤に送信する第1送信部とを有し、
前記煙警報盤は、
前記煙センサから前記試験の結果を受信する受信部と、
前記試験の結果に応じて前記外部設備に信号を出力する出力部とを有する
煙監視システム。
【請求項2】
前記煙警報盤に接続されている監視装置をさらに備え、
前記監視装置は、前記外部出力試験の実行を指示する操作に応じて、前記外部出力試験の前記実行指示を前記煙警報盤に送信する第2送信部を有し、
前記煙警報盤は、前記実行指示を前記煙センサに転送する転送部をさらに有する
請求項1に記載の煙監視システム。
【請求項3】
前記取得部は、煙の濃度がそれぞれ異なる閾値以上であることを示す複数の警報レベルのそれぞれでの前記外部出力試験の前記実行指示を取得し、
前記試験部は、前記複数の警報レベルのそれぞれでの前記試験を実行し、
前記試験の結果は、前記複数の警報レベルのうち前記試験において判定された該当する警報レベルを示し、
前記出力部は、前記外部設備に接続されている接点であって、前記複数の警報レベルのうち少なくともいずれかの警報レベルが割り当てられた接点を有し、前記接点に割り当てられた前記警報レベルを示す前記試験の結果が前記受信部により受信されると、前記接点の接続状態を切り替えることにより前記外部設備に前記信号を出力する
請求項1又は2に記載の煙監視システム。
【請求項4】
外部設備への出力を伴う外部出力試験の実行指示を取得する取得部と、
前記実行指示に従って、前記外部設備への出力を伴わない火災試験において行われる所定時間の蓄積動作を行わずに火災に関する動作の試験を実行する試験部と、
前記試験の結果に応じて前記外部設備に信号を出力する出力部と
を備える煙センサ。
【請求項5】
前記取得部は、煙の濃度がそれぞれ異なる閾値以上であることを示す複数の警報レベルのそれぞれでの前記外部出力試験の実行指示を取得し、
前記試験部は、前記複数の警報レベルのそれぞれでの前記試験を実行し、
前記出力部は、前記外部設備に接続されている接点であって、前記複数の警報レベルのうち少なくともいずれかの警報レベルが割り当てられた接点を有し、前記接点に割り当てられた前記警報レベルに該当すると前記試験において判定されると、前記接点の接続状態を切り替えることにより前記外部設備に前記信号を出力する
請求項4に記載の煙センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙監視システム及び煙センサに関する。
【背景技術】
【0002】
火災受信機において他の装置に移報出力を行う移報部の試験を行う技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煙センサの中には、蓄積機能を有する煙センサがある。しかし、煙センサの火災に関する動作の試験結果に応じて外部設備への出力を行う試験が行われる場合には、煙センサにおいて所定時間の蓄積動作が行われると、この試験に要する時間が長くなる。
【0005】
本発明は、蓄積機能を有する煙センサの火災に関する動作の試験結果に応じて外部設備に出力する試験に要する時間を短縮することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、外部設備に接続されている煙警報盤と、前記煙警報盤に接続されている煙センサとを備え、前記煙センサは、前記外部設備への出力を伴う外部出力試験の実行指示を取得する取得部と、前記実行指示に従って、前記外部設備への出力を伴わない火災試験において行われる所定時間の蓄積動作を行わずに火災に関する動作の試験を実行する試験部と、前記試験の結果を前記煙警報盤に送信する送信部とを有し、前記煙警報盤は、前記煙センサから前記試験の結果を受信する受信部と、前記試験の結果に応じて前記外部設備に信号を出力する出力部とを有する煙監視システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓄積機能を有する煙センサの火災に関する動作の試験結果に応じて外部設備に出力する試験に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る煙監視システムの構成の一例を示す図である。
【
図5】従属型煙センサの構成の一例を示す図である。
【
図6】外部出力試験の動作の一例を示すシーケンスチャートである。
【
図7】監視装置に表示される監視画面の一例を示す図である。
【
図8】監視装置に表示される確認画面の一例を示す図である。
【
図10】警報レベルの判定タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【
図11】監視装置に表示される通知画面の一例を示す図である。
【
図12】独立型煙センサの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
構成
図1は、実施形態に係る煙監視システム10の構成の一例を示す図である。煙監視システム10は、サーバー室、データセンター、クリーンルーム等の防火対象物に設置される。煙監視システム10は、防火対象物の環境空気の状態を監視することにより火災の予兆を検知する。このように、火災の予兆を検知することにより、初期段階で迅速に対処することが可能となる。
【0010】
煙監視システム10は、監視装置100と、煙警報盤200と、複数の従属型煙センサ300とを備える。監視装置100と煙警報盤200とは、LAN(Local Area Network)等の第1信号線11を介して接続されている。煙警報盤200には、第2信号線12を介して複数の従属型煙センサ300が接続されている。また、煙警報盤200には、第3信号線13を介して外部設備500が接続されている。なお、
図1では、煙警報盤200は一つだけ示されているが、煙警報盤200は複数設けられてもよい。
【0011】
煙監視システム10においては、設置時や保守時等の所定の時に火災試験及び外部出力試験が行われる。火災試験は、従属型煙センサ300が正常に動作するかを確認する試験である。火災試験においては、外部設備500への出力は行われない。外部出力試験は、対向試験とも呼ばれ、従属型煙センサ300による火災の判定に応じて外部設備500に移報する動作が正常に行われるかを確認する試験である。この移報とは、警報を伝達することをいう。外部出力試験においては、外部設備500への出力が行われる。外部出力試験の際には、外部設備500に移報が行われたかを外部設備500側で人が立ち会って確認する必要がある。そのため、外部出力試験に要する時間は短い方が好ましい。
【0012】
監視装置100は、煙警報盤200及び従属型煙センサ300を一括して監視するのに用いられる。また、監視装置100は、煙警報盤200及び従属型煙センサ300に対して外部出力試験の実行指示を行う。
【0013】
煙警報盤200は、従属型煙センサ300から煙の検出結果を受信し、この煙の検出結果に応じて警報を出力する装置である。この警報の出力には、外部設備500への移報が含まれる。
【0014】
従属型煙センサ300は、通信タイプの煙センサとも呼ばれ、煙警報盤200に従属する煙センサである。ここでいう「従属」とは、煙警報機能の一部を煙警報盤200が担うことをいう。従属型煙センサ300は、周囲の煙を検出し、煙の検出結果を煙警報盤200に送信する。また、従属型煙センサ300は、監視装置100の指示に従って試験を実行する。
【0015】
外部設備500は、警報の発生に応じて煙警報盤200から移報が行われる先の外部の設備である。外部設備500には、例えば警告灯、消火設備、防災制御盤、放送設備、警備会社の設備等の設備が含まれる。
【0016】
図2は、監視装置100の構成の一例を示す図である。監視装置100には、例えば汎用のコンピュータが用いられる。監視装置100は、制御部101と、記憶部102と、通信部103と、操作部104と、表示部105とを備える。監視装置100の各部は、バスを介して接続されている。
【0017】
制御部101は、自装置の各部の制御及び各種の処理を行うプロセッサである。制御部101には、例えばCPU(Central Processing Unit)が含まれる。記憶部102は、自装置の機能を実現するためのプログラム及び各種のデータを記憶するメモリである。記憶部102には、例えばROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)のうち少なくとも一つが含まれる。通信部103は、自装置を第1信号線11に接続するための通信インターフェースである。通信部103は、第1信号線11を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。操作部104は、自装置の操作に用いられる。操作部104には、例えばマウスとキーボードとが含まれる。表示部105は、各種の情報を表示する。表示部105には、例えば液晶ディスプレイが含まれる。
【0018】
制御部101は、送信部111と、受信部112と、表示制御部113として機能する。これらの機能は、制御部101が記憶部102に記憶されたプログラムを実行して、制御部101が演算を行い又は監視装置100の各部を制御することにより実現される。
【0019】
送信部111は、複数の警報レベルのそれぞれでの外部出力試験の実行を指示する操作に応じて、複数の警報レベルのそれぞれでの外部出力試験の実行指示を煙警報盤200に送信する。複数の警報レベルは、煙の濃度がそれぞれ異なる閾値以上であることを示す。一の例において、複数の警報レベルは、「アラーム1」~「アラーム3」という三段階の警報レベルである。「アラーム1」は最も低い警報レベルである。「アラーム2」は2番目に低い警報レベルである。「アラーム3」は最も高い警報レベルである。
【0020】
受信部112は、送信部111から送信された実行指示に従って従属型煙センサ300により試験が実行されると、この試験の結果を煙警報盤200を介して従属型煙センサ300から受信する。
【0021】
表示制御部113は、受信部112にて受信された試験の結果を表示部105に表示する。
【0022】
図3は、煙警報盤200の構成の一例を示す図である。煙警報盤200は、制御部201と、記憶部202と、第1通信部203と、第2通信部204と、操作部205と、表示部206と、移報回路207とを備える。煙警報盤200の各部は、バスを介して接続されている。
【0023】
制御部201、記憶部202、第1通信部203、操作部205、及び表示部206は、それぞれ、基本的には監視装置100の制御部101、記憶部102、通信部103、操作部104、及び表示部105と同様である。ただし、記憶部202には、煙警報盤200の機能を実現するためのプログラムに加えて、移報データベース221が記憶される。操作部205には、例えば操作ボタンが含まれる。表示部206には、例えば7セグメントディスプレイとLED(Light Emitting Diode)とが含まれる。第2通信部204は、自装置を第2信号線12に接続するための通信インターフェースである。第2通信部204は、第2信号線12を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。
【0024】
移報回路207は、警報が発生したときに外部設備500に移報を行う。移報回路207は、本発明に係る「出力部」の一例である。移報回路207には、複数のリレーが含まれる。各リレーには、コイルと接点とが含まれる。一の例において、移報回路207には、第1リレー~第3リレーが含まれる。第1リレー~第3リレーには、それぞれ、第1コイル及び第1接点と、第2コイル及び第2接点と、第3コイル及び第3接点とが含まれる。
【0025】
移報回路207に含まれる接点は、第3信号線13を介して外部設備500に接続されている。これらの接点には、移報の契機となる信号又は警報レベルが予め割り当てられている。各接点には、第1端子と第2端子とが含まれる。通常時、コイルには電流が流れていないため、第1端子は閉じ、第2端子は開いている。一方、接点に割り当てられた移報の契機が発生し、対になるコイルに電流が流れると、第1端子は開き、第2端子は閉じる。第2端子が閉じると、第2端子の両端が導通し、第2端子に接続されている外部設備500に接点信号が出力される。
【0026】
制御部201は、転送部211と、受信部212と、表示制御部213と、移報制御部214として機能する。これらの機能は、制御部201が記憶部202に記憶されたプログラムを実行して、制御部201が演算を行い又は煙警報盤200の各部を制御することにより実現される。
【0027】
転送部211は、監視装置100から送信されてきた外部出力試験の実行指示を従属型煙センサ300に転送する。また、転送部211は、従属型煙センサ300から送信されてきた試験の結果を監視装置100に転送する。
【0028】
受信部212は、従属型煙センサ300により試験が実行されると、この試験の結果を従属型煙センサ300から受信する。
【0029】
表示制御部213は、受信部212にて受信された試験の結果を表示部206に表示する。
【0030】
移報制御部214は、受信部212にて受信された試験の結果に応じて移報回路207の接点の接続状態を切り替えることにより外部設備500に接点信号を出力させる。
【0031】
図4は、移報データベース221の一例を示す図である。移報データベース221は、接点と、その接点に割り当てられた移報の契機との対応関係を示す。移報データベース221には、接点識別子と、移報の契機とが含まれる。接点識別子は、接点を一意に識別する情報である。移報の契機には、警報レベル又は信号が含まれる。各接点識別子には、その接点識別子により識別される接点に割り当てられた移報の契機が関連付けられる。
【0032】
ここでは、移報回路207に含まれる第1接点~第3接点には、それぞれ、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルが割り当てられるものとする。この場合には、
図4に示されるように、第1接点の識別子と「アラーム1」という警報レベルとが関連付けて格納される。また、第2接点の識別子と「アラーム2」という警報レベルとが関連付けて格納される。さらに、第3接点の識別子と「アラーム3」という警報レベルとが関連付けて格納される。
【0033】
図5は、従属型煙センサ300の構成の一例を示す図である。従属型煙センサ300は、制御部301と、記憶部302と、通信部303と、煙検出部304とを備える。従属型煙センサ300の各部は、バスを介して接続されている。
【0034】
制御部301、記憶部302、及び通信部303は、それぞれ、基本的には監視装置100の制御部101、記憶部102、及び煙警報盤200の第2通信部204と同様である。ただし、記憶部302には、従属型煙センサ300の機能を実現するためのプログラムに加えて、予め設定された蓄積時間が記憶される。この蓄積時間は、本発明に係る「所定時間」の一例である。
【0035】
煙検出部304は、周囲の空気を吸引して煙の濃度を測定する。これにより、煙検出部304は、周囲の空気中に存在する煙を検出する。煙検出部304が測定し得る煙濃度の範囲は、例えば0.0001%/mから20.0%/mである。煙の検出には、例えば総散乱光方式や二受光方式が用いられる。ただし、煙を検出する方法はこれらの方式に限定されず、他の方式であってもよい。煙検出部304により測定された煙の濃度は、記憶部302に記憶される。
【0036】
制御部301は、取得部311と、試験部312と、判定部313と、送信部314として機能する。これらの機能は、制御部301が記憶部302に記憶されたプログラムを実行して、制御部301が演算を行い又は従属型煙センサ300の各部を制御することにより実現される。
【0037】
取得部311は、監視装置100から複数の警報レベルのそれぞれでの外部出力試験の実行指示が送信されると、この実行指示を煙警報盤200を介して取得する。
【0038】
試験部312は、取得部311により取得された実行指示に従って、外部設備500への出力を伴わない火災試験において行われる所定時間の蓄積動作を行わずに、複数の警報レベルのそれぞれでの火災に関する動作の試験を実行する。この火災に関する動作には、火災が発生した際に行われる動作と、火災の予兆が発生した際に行われる動作とが含まれる。なお、試験部312は、外部出力試験に加えて火災試験を実行してもよい。この場合、試験部312は、外部出力試験のときは蓄積動作を行わず、火災試験のときは蓄積動作を行う。
【0039】
従属型煙センサ300には、複数の警報レベルについてそれぞれ異なる閾値が予め設定されている。例えば「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルの閾値は、0.01%/mから20.0%/mの範囲において、「アラーム1」という警報レベルの閾値、「アラーム2」という警報レベルの閾値、「アラーム3」という警報レベルの閾値の順に大きくなるように設定される。このようにして設定された閾値は、記憶部302に記憶される。試験部312は、煙の濃度を疑似的に対象の警報レベルの閾値まで上げることにより対象の警報レベルでの火災に関する動作の試験を実行する。また、試験部312は、外部出力試験においては蓄積動作を行わないよう判定部313を制御する。
【0040】
判定部313は、記憶部302に記憶された煙の濃度と「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルの閾値とを比較することにより、該当する警報レベルを判定する。例えば判定部313は、煙の濃度が「アラーム1」という警報レベルの閾値未満である場合には、「アラーム1」~「アラーム3」のいずれの警報レベルにも該当しないと判定する。判定部313は、煙の濃度が「アラーム1」という警報レベルの閾値以上である場合には、「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定する。判定部313は、煙濃度が煙の濃度が「アラーム2」という警報レベルの閾値以上である場合には、「アラーム2」という警報レベルに該当すると判定する。判定部313は、煙濃度が「アラーム3」という警報レベルの閾値以上である場合には、「アラーム3」という警報レベルに該当すると判定する。
【0041】
ここで、判定部313は、外部設備500への出力を伴わない火災試験においては、記憶部302に記憶された蓄積時間の間、蓄積動作を行ってから警報レベルを判定する。例えば蓄積時間が20秒である場合には、記憶部302に記憶された煙の濃度が最初に対象の警報レベルの閾値以上になった時点から20秒間、蓄積動作を行う。そして、蓄積時間が経過した時点で、記憶部302に記憶された煙の濃度が対象の警報レベルの閾値以上である場合には、判定部313は、対象の警報レベルに該当すると判定する。一方、判定部313は、外部設備500への出力を伴う外部出力試験においては、試験部312の制御の下、この蓄積動作を行わずに警報レベルを判定する。
【0042】
送信部314は、試験部312により実行された試験の結果を煙警報盤200に送信する。この試験の結果は、記憶部302に記憶された煙の濃度と、判定部313により判定された該当する警報レベルとを示す。
【0043】
動作
図6は、外部出力試験の動作の一例を示すシーケンスチャートである。この動作は、外部試験を行うときに開始される。
【0044】
ステップS11において、作業員は、監視装置100の操作部104を用いて、外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300を選択し、外部出力試験の実行を指示する操作を行う。
【0045】
図7は、監視装置100の表示部105に表示される監視画面150の一例を示す図である。監視画面150は、例えば作業員の操作に応じて表示部105に表示される。
図7に示されるように、監視画面150は、操作領域150aと、選択領域150bと、表示領域150cとを有する。操作領域150aには、「試験」ボタン151が含まれる。「試験」ボタン151は、「アラーム1」~「アラーム3」の中から対象の警報レベルを指定し、外部出力試験の実行を指示する操作を受け付ける。この操作は、操作部104により実現される。
【0046】
ここでは、複数の従属型煙センサ300には従属型煙センサ300Aが含まれるものとする。例えば従属型煙センサ300Aに対して最初に「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験を行う場合、作業員は、
図7に示される監視画面150において「試験」ボタン151を用いて、従属型煙センサ300Aを選択し、「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験の実行を指示する操作を行う。
【0047】
図8は、監視装置100の表示部105に表示される確認画面165の一例を示す図である。外部出力試験の実行を指示する操作が行われると、表示部105には
図8に示される確認画面165が表示される。確認画面165は、外部出力試験を開始してもよいかを確認するメッセージと「はい」ボタン166とが含まれる。外部出力試験を開始する場合、作業員は、「はい」ボタン166を押す。
【0048】
ステップS12において、監視装置100の送信部111は、ステップS11において行われた操作に応じて、外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300が接続されている煙警報盤200に、外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300の識別子と、対象の警報レベルでの外部出力試験の開始を指示する試験開始コマンドとを送信する。この試験開始コマンドには、対象の警報レベルが含まれる。例えば外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300が従属型煙センサ300Aであり、対象の警報レベルが「アラーム1」である場合には、監視装置100から従属型煙センサ300Aが接続されている煙警報盤200に、従属型煙センサ300Aの識別子と、「アラーム1」という警報レベルを含む試験開始コマンドが送信される。煙警報盤200の転送部211は、監視装置100から識別子と試験開始コマンドとを受信する。
【0049】
ステップS13において、煙警報盤200の転送部211は、受信した試験開始コマンドを外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300に送信する。この試験開始コマンドの送信先は、試験開始コマンドとともに受信された識別子を用いて特定される。従属型煙センサ300の取得部311は、煙警報盤200から試験開始コマンドを受信する。
【0050】
図9は、煙警報盤200の盤面250の一例を示す図である。外部出力試験の試験開始コマンドを受信すると、煙警報盤200の盤面250には、外部出力試験の実行中であることを示す情報が表示される。この例では、盤面250には、「試験」ボタンの表示灯251と、「スイッチ注意」という表示灯252とが含まれる。これらの表示灯251及び252は、例えばLEDにより実現される。外部出力試験の試験開始コマンドが受信されると、「試験」ボタンの表示灯251が点灯するとともに、「スイッチ注意」という表示灯252が点滅する。これらの表示は、外部出力試験中であることを示す。
【0051】
図6に戻り、ステップS14において、従属型煙センサ300は、試験開始コマンドを受信すると、外部出力試験モードに移行する。外部出力試験モードに移行すると、通常の警報動作は行われない。
【0052】
ステップS15において、従属型煙センサ300の試験部312は、試験開始コマンドに従って、火災に関する動作の試験を実行する。具体的には、試験部312は、記憶部302に記憶された煙の濃度を対象の警報レベルの閾値に書き換える。これにより、煙の濃度が対象の警報レベルの閾値まで疑似的に上がる。例えば対象の警報レベルが「アラーム1」であり、「アラーム1」という警報レベルの閾値が0.04%/mである場合には、記憶部302に記憶された煙の濃度が0.04%/mに書き換えられる。
【0053】
判定部313は、記憶部302に記憶された煙の濃度と「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルの各閾値とを比較して、「アラーム1」~「アラーム3」の少なくともいずれかの警報レベルに該当するか否かを判定する。例えば記憶部302に記憶された煙の濃度が「アラーム1」という警報レベルの閾値に書き換えられた場合には、この煙の濃度は「アラーム1」という警報レベルの閾値以上になるため、「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定される。なお、対象の警報レベルより低い警報レベルが存在する場合には、対象の警報レベルに該当するときは対象の警報レベルより低い警報レベルにも該当することになる。
【0054】
ここで、外部設備500への出力を伴わない火災試験においては、判定部313は、記憶部302に記憶された蓄積時間だけ蓄積動作を行ってから警報レベルを判定する。しかし、外部設備500への出力を伴う外部出力試験においては、判定部313は、この蓄積動作を行わずに警報レベルを判定する。具体的には、試験部312は、記憶部302に記憶された蓄積時間に代えて、0という蓄積時間を用いるよう判定部313を制御する。ただし、記憶部302に記憶された蓄積時間自体は書き換えられない。判定部313は、試験部312の制御の下、0という蓄積時間を用いて、すなわち蓄積動作を行わずに警報レベルの判定を行う。なお、火災試験は、外部出力試験と同様に、煙の濃度を疑似的に各警報レベルの閾値まで上げることにより行われる。
【0055】
図10は、警報レベルの判定タイミングの一例を示すタイミングチャートである。火災試験においては、
図10(a)に示されるように、記憶部302に記憶された蓄積時間TAの間、蓄積動作が行われる。例えば時刻t1において試験が開始された後、時刻t2において記憶部302に記憶された煙の濃度が「アラーム1」という警報レベルの閾値に書き換えられると、時刻t2から蓄積時間TAだけ蓄積動作が行われる。記憶部302に記憶された煙の濃度は「アラーム1」という警報レベルの閾値のまま維持されるため、時刻t3において蓄積時間TAが経過すると、「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定される。この場合、試験が開始されてから警報レベルが判定されるまでに要する時間は、時刻t1から時刻t3までの時間TBとなる。
【0056】
一方、外部出力試験においては、
図10(b)に示されるように、蓄積動作が行われない。例えば時刻t1において試験が開始された後、時刻t2において記憶部302に記憶された煙の濃度が「アラーム1」という警報レベルの閾値に書き換えられると、すぐに「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定される。この場合、試験が開始されてから警報レベルが判定されるまでに要する時間は、時刻t1から時刻t2までの時間TCとなり、
図10(a)に示される時間TBよりも短くなる。
【0057】
図6に戻り、ステップS16において、従属型煙センサ300の送信部314は、ステップS15において実行された試験が終了すると、従属型煙センサ300の識別子と試験結果とを、従属型煙センサ300が接続されている煙警報盤200に送信する。この試験結果には、記憶部302に記憶された煙の濃度と、アラーム情報とが含まれる。煙の濃度は、アナログ値である。アラーム情報は、該当する警報レベルを示す。アラーム情報には、例えば該当する警報レベルを示す1ビットの値が用いられてもよい。例えば従属型煙センサ300Aの記憶部302に記憶された0.04%/mという煙濃度と、「アラーム1」という警報レベルを示すアラーム情報とを含む試験結果と、従属型煙センサ300Aの識別子とが、従属型煙センサ300Aから煙警報盤200に送信される。煙警報盤200の受信部212は、従属型煙センサ300から識別子と試験結果とを受信する。
【0058】
ステップS17において、煙警報盤200の受信部212は、従属型煙センサ300から受信した識別子と試験結果とを関連付けて記憶部202に記憶させる。
【0059】
ステップS18において、煙警報盤200の表示制御部213は、記憶部202から試験結果を読み出して表示部206に表示する。この試験結果は、関連付けられた識別子に基づいて、従属型煙センサ300毎に表示される。
【0060】
図9に示されるように、煙警報盤200の盤面250には、煙警報盤200に接続されている従属型煙センサ300の数だけ、センサ領域253が設けられる。各センサ領域253には、煙濃度領域254と、バーグラフ255と、「アラーム1」~「アラーム3」という警報灯256~258とが含まれる。警報灯256~258は、例えばLEDにより実現される。
【0061】
煙濃度領域254には、従属型煙センサ300により測定された煙の濃度が表示される。バーグラフ255には、この煙の濃度を示すバーが表示される。「アラーム1」~「アラーム3」という警報灯256~258は、それぞれ、「アラーム1」~「アラーム3」に該当すると判定された場合に点灯される。
【0062】
従属型煙センサ300Aの試験結果は、従属型煙センサ300Aに対応するセンサ領域253-1に表示される。上述したように、従属型煙センサ300Aの試験結果に0.04%/mという煙濃度と、「アラーム1」という警報レベルを示すアラーム情報とが含まれる場合、センサ領域253-1の煙濃度領域254には、0.04%/mという煙濃度が表示される。センサ領域253-1のバーグラフ255には、0.04%/mという煙濃度を示すバーが表示される。「アラーム1」という警報灯256は点灯される。「アラーム2」という警報灯257及び「アラーム3」という警報灯258は消灯される。この表示により、作業員は、外部出力試験において「アラーム1」という警報レベルの警報動作が正常に行われたことが確認できる。
【0063】
図6に戻り、ステップS19において、煙警報盤200の移報制御部214は、記憶部202に記憶された移報データベース221を参照して、移報回路207の接点に割り当てられた移報の契機が発生したか否かを判定する。
【0064】
例えば記憶部202に記憶された試験結果にアラーム情報が含まれない場合には、接点に割り当てられた移報の契機が発生していないため(ステップS19の判定がNO)、後述するステップS20の処理を飛ばしてステップS21の処理に進む。
【0065】
一方、例えば記憶部202に記憶された試験結果にアラーム情報が含まれ、且つ、このアラーム情報により示される警報レベルが少なくともいずれかの接点に割り当てられている場合には、移報の契機が発生したため(ステップS19の判定がYES)、処理はステップS20に進む。
【0066】
ステップS20において、煙警報盤200の移報制御部214は、発生した移報の契機が割り当てられた接点を含むリレーを作動させる。これにより、このリレーに含まれる接点の接続状態が切り替わり、外部設備500に接点信号が出力される。
【0067】
例えば従属型煙センサ300Aの試験結果に「アラーム1」という警報レベルに該当することを示すアラーム情報が含まれている場合を想定する。
図4に示される移報データベース221では、「アラーム1」という警報レベルが第1接点に割り当てられている。この場合、移報制御部214は、第1接点を含む第1リレーを作動させる信号を移報回路207に供給する。この信号により、第1リレーに含まれる第1コイルに電流が流れる。第1コイルに電流が流れると、第1接点の第2端子が閉じて、第2端子の両端が導通する。これにより、この第2端子に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。
【0068】
外部設備500は、接点信号を受信すると、所定の処理を行う。この所定の処理には、例えば音の出力、発光、動作、他の装置の制御、警報表示、又はこれらのうち少なくとも二つの組合せが含まれる。これにより、外部設備500の設置場所に居る作業員は、警報の発生に応じて煙警報盤200から外部設備500に正常に移報が行われたことが分かる。
【0069】
ステップS21において、煙警報盤200の転送部211は、従属型煙センサ300から受信した識別子と試験結果とを監視装置100に送信する。監視装置100の受信部112は、煙警報盤200から識別子と試験結果とを受信する。
【0070】
ステップS22において、監視装置100の受信部112は、煙警報盤200から受信した識別子と試験結果とを関連付けて記憶部102に記憶させる。
【0071】
ステップS23において、監視装置100の表示制御部113は、記憶部102から試験結果を読み出して表示部105に表示する。この試験結果は、関連付けられた識別子に基づいて、従属型煙センサ300毎に表示される。
【0072】
図7に示される監視画面150において、選択領域150bには選択ボタン152が含まれる。選択ボタン152は、煙警報盤200を選択する操作を受け付ける。表示領域150cには、表示対象となる従属型煙センサ300の数だけ、センサ領域159が表示される。各センサ領域159には、状態表示領域153と、煙濃度領域154と、バーグラフ155と、「アラーム1」~「アラーム3」という警報シンボル156~158とが含まれる。
【0073】
状態表示領域153には、従属型煙センサ300の状態が表示される。外部出力試験が行われている間は、状態表示領域153には「外部出力試験」という状態が表示される。煙濃度領域154には、従属型煙センサ300により測定された煙濃度が表示される。バーグラフ155には、この煙濃度を示すバーが表示される。「アラーム1」~「アラーム3」という警報シンボル156~158は、それぞれ「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルに該当する場合に点灯表示される。この点灯表示とは、赤色等の点灯色で目立つように表示することをいう。
【0074】
従属型煙センサ300Aの試験結果は、従属型煙センサ300Aに対応するセンサ領域159-1に表示される。従属型煙センサ300Aの試験結果に0.04%/mという煙濃度と、「アラーム1」という警報レベルを示すアラーム情報とが含まれる場合、センサ領域159-1の煙濃度領域154には、0.04%/mという煙濃度が表示される。センサ領域159-1のバーグラフ155には、0.04%/mという煙濃度を示すバーが表示される。「アラーム1」という警報シンボル156は点灯表示される。「アラーム2」という警報シンボル157及び「アラーム3」という警報シンボル158は消灯表示される。この消灯表示とは、グレー等の消灯色で目立たないように表示することをいう。この表示により、作業員は、外部出力試験において「アラーム1」という警報レベルの警報動作が正常に行われたことが確認できる。
【0075】
図6に戻り、ステップS24において、監視装置100の送信部111は、警報レベルを変更して次の外部出力試験を行うか否かを判定する。例えば作業員により警報レベルを変更して次の外部出力試験の実行を指示する操作が行われた場合には、送信部111は、警報レベルを変更して次の外部出力試験を行うと判定する(ステップS24の判定がYES)。この場合、処理は上述したステップS12に戻り、変更後の警報レベルを対象の警報レベルとしてステップS12以降の処理が行われる。
【0076】
図11は、外部出力試験が行われている間、監視装置100の表示部105に表示される通知画面170の一例を示す図である。「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験が行われている間には、
図11(a)に示される通知画面170Aが表示される。通知画面170Aには、「アラーム1」という警報レベルと外部出力試験の実行中であることを示すメッセージとが含まれる。また、通知画面170Aは、外部出力試験の対象である従属型煙センサ300に対して、「アラーム1」の次に高い警報レベルである「アラーム2」での外部出力試験の開始を指示する操作を受け付ける。この例では、通知画面170Aには、「アラーム2」という警報レベルに変更するかを問い合わせるメッセージと、「はい」ボタン171とが含まれる。続いて「アラーム2」という警報レベルでの外部出力試験を開始する場合、作業員は、「はい」ボタン171を押す。
【0077】
この操作に応じて、監視装置100から煙警報盤200を介して従属型煙センサ300Aに「アラーム2」という警報レベルを含む試験開始コマンドが送信される。試験開始コマンドを受信すると、従属型煙センサ300Aは試験モードを継続し、「アラーム2」という警報レベルでの試験を実行する。ここでは、「アラーム2」という警報レベルの閾値が0.06%/mであるものとする。この場合、記憶部302に記憶された煙の濃度が0.06%/mに書き換えられる。続いて、蓄積動作が行われずに、「アラーム1」及び「アラーム2」という警報レベルに該当すると判定される。そして、0.06%/mという煙濃度と、「アラーム1」及び「アラーム2」という警報レベルを示すアラーム情報とを含む試験結果が従属型煙センサ300Aから煙警報盤200に送信される。煙警報盤200は、この試験結果を記憶部202に記憶して、
図9に示される例と同様に表示部206に表示する。また、
図4に示される移報データベース221では、「アラーム2」という警報レベルが第2接点に割り当てられているため、既に作動済みの第1接点に加えて、第2接点を含む第2リレーが作動され、第2接点に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。さらに、この試験結果は煙警報盤200から監視装置100に送信される。監視装置100は、この試験結果を記憶部102に記憶して、
図7に示される例と同様に表示部105に表示する。
【0078】
「アラーム2」という警報レベルでの外部出力試験が行われている間、監視装置100の表示部105には、
図11(b)に示される通知画面170Bが表示される。通知画面170Bには、「アラーム2」という警報レベルと外部出力試験の実行中であることを示すメッセージとが含まれる。また、通知画面170Bは、外部出力試験の対象である従属型煙センサ300に対して、「アラーム2」の次に高い警報レベルである「アラーム3」での外部出力試験の開始を指示する操作を受け付ける。この例では、通知画面170Bには、「アラーム3」という警報レベルに変更するかを問い合わせるメッセージと、「はい」ボタン172とが含まれる。続いて「アラーム3」という警報レベルでの外部出力試験を行う場合、作業員は、「はい」ボタン172を押す。
【0079】
この操作に応じて、監視装置100から煙警報盤200を介して従属型煙センサ300Aに「アラーム3」という警報レベルを含む試験開始コマンドが送信される。試験開始コマンドを受信すると、従属型煙センサ300Aは試験モードを継続し、「アラーム3」という警報レベルでの試験を実行する。ここでは、「アラーム3」という警報レベルの閾値が0.08%/mであるものとする。この場合、記憶部302に記憶された煙の濃度が0.08%/mに書き換えられる。続いて、蓄積動作が行われずに、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルに該当すると判定される。そして、0.08%/mという煙濃度と、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルを示すアラーム情報とを含む試験結果が従属型煙センサ300Aから煙警報盤200に送信される。煙警報盤200は、この試験結果を記憶部202に記憶して、
図9に示される例と同様に表示部206に表示する。また、
図4に示される移報データベース221では、「アラーム3」という警報レベルが第3接点に割り当てられているため、既に作動済みの第1接点及び第2接点に加えて、第3接点を含む第3リレーが作動され、第3接点に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。さらに、この試験結果は煙警報盤200から監視装置100に送信される。監視装置100は、この試験結果を記憶部102に記憶して、
図7に示される例と同様に表示部105に表示する。
【0080】
図6に戻り、上述したステップS24において作業員により外部出力試験の終了を指示する操作が行われた場合には、送信部111は、次の外部出力試験を行わないと判定する(ステップS24の判定がNO)。この場合、処理はステップS25に進む。
【0081】
例えば、「アラーム3」という警報レベルでの外部出力試験が行われている間、監視装置100の表示部105には、
図11(c)に示される通知画面170Cが表示される。通知画面170Cには、「アラーム3」という警報レベルと外部出力試験の実行中であることを示すメッセージとが含まれる。また、通知画面170Cは、外部出力試験の終了を指示する操作を受け付ける。この例では、通知画面170Cには、「試験終了」ボタン173が含まれる。外部出力試験を終了する場合、作業員は「試験終了」ボタン173を押す。「試験終了」ボタン173が押されると、次の外部出力試験を行わないと判定される。
【0082】
図6に戻り、ステップS25において、監視装置100の送信部111は、外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300が接続されている煙警報盤200に、外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300の識別子と、対象の警報レベルでの外部出力試験の終了を指示する試験終了コマンドとを送信する。例えば監視装置100から従属型煙センサ300Aが接続されている煙警報盤200に、従属型煙センサ300Aの識別子と、試験終了コマンドが送信される。煙警報盤200の転送部211は、監視装置100から識別子と試験終了コマンドとを受信する。
【0083】
ステップS26において、煙警報盤200の転送部211は、受信した試験終了コマンドを外部出力試験の対象となる従属型煙センサ300に送信する。この試験開始コマンドの送信先は、試験終了コマンドとともに受信された識別子を用いて特定される。従属型煙センサ300の取得部311は、煙警報盤200から試験終了コマンドを受信する。
【0084】
また、外部出力試験の試験終了コマンドを受信すると、煙警報盤200の盤面250において、
図9に示される「試験」ボタンの表示灯251と「スイッチ注意」という表示灯252とが消灯する。また、第1乃至第3接点の作動が解除され、外部設備500への接点信号の送信が停止する。
【0085】
ステップS27において、従属型煙センサ300は、試験終了コマンドを受信すると、外部出力試験モードから通常の警報モードに戻る。これにより、通常の警報動作が再開される。通常の警報モードにおいては、所定の時間間隔で煙検出部304により煙の濃度が測定され、この煙の濃度が記憶部302に記憶される。続いて、記憶部302に記憶された煙の濃度に応じて「アラーム1」~「アラーム3」のうち少なくともいずれかの警報レベルに該当するかが判定される。そして、記憶部302に記憶された煙の濃度と該当する警報レベルを示すアラーム情報とを含む煙の検出結果が煙警報盤200に送信される。従属型煙センサ300から受信した煙の検出結果にアラーム情報が含まれる場合には、そのアラーム情報により示される警報レベルに応じた警報が煙警報盤200から出力される。また、警報レベルに応じた接点が作動し、作動した接点に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。
【0086】
上述した実施形態によれば、外部出力試験では従属型煙センサ300において蓄積動作が行われないため、外部出力試験に要する時間が短縮される。特に、「アラーム1」~「アラーム3」という複数の警報レベルでの外部出力試験が順番に行われる場合には、これらの警報レベルでの外部出力試験のそれぞれにおいて蓄積動作が省略されるため、「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験が開始されてから「アラーム3」という警報レベルでの外部出力試験が終了するまでの時間が大幅に短縮される。また、上述した実施形態では、外部出力試験の際に、従属型煙センサ300に設定されている蓄積時間自体は変更されない。仮に外部出力試験が行われる際に従属型煙センサ300に設定されている蓄積時間が0に変更されたとすると、例えば外部出力試験の後に作業員が蓄積時間を設定された元の時間に戻す操作を忘れると、火災試験の際に蓄積動作が行われなくなってしまう。しかし、上述した実施形態では、外部出力試験の際に、従属型煙センサ300に設定されている蓄積時間自体は変更されないため、作業員が蓄積時間を戻す操作を行わなくても火災試験の際には蓄積動作が行われる。従って、蓄積時間の戻し忘れにより火災試験において蓄積動作が行われなくなるのを防止することができる。さらに、監視装置100が外部出力試験の実行を指示する操作を受け付けるため、作業員は監視装置100を操作することにより外部出力試験の実行を指示することができる。
【0087】
さらに、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルについて別々に外部出力試験が行われるため、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルがそれぞれ割り当てられた第1接点~第3接点が正常に動作するかを個別に確認することができる。例えば、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルがそれぞれ第1接点~第3接点に割り当てられている場合、「アラーム3」という警報レベルでの外部出力試験が行われると、「アラーム1」~「アラーム3」の全ての警報レベルに該当すると判定され、第1接点~第3接点に接続されている外部設備500に接点信号が出力されることになる。しかし、本例の場合は、外部設備500に対する接点信号の出力が、「アラーム1」という警報レベルへの到達を契機に行われたのか、「アラーム2」という警報レベルへの到達を契機に行われたのか、それとも「アラーム3」という警報レベルへの到達を契機に行われたのか、判別できない場合がある。しかし、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルについて別々に外部出力試験を行うことにより、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルのそれぞれへの到達を契機に外部設備500に正常に接点信号が出力されたかを個別に確認することができる。
【0088】
変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。実施形態と変形例とは、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。同様に、以下の変形例は、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。
変形例1
【0089】
上述した実施形態において、煙監視システム10には、外部設備500への移報出力を行う1又は複数の独立型煙センサ400が含まれてもよい。独立型煙センサ400は、第1信号線11を介して監視装置100に接続されている。また、独立型煙センサ400には、第4信号線を介して外部設備500が接続されている。
【0090】
独立型煙センサ400は、スタンドアローンタイプの煙センサとも呼ばれ、煙警報盤200を要さずに独立して動作する煙センサである。ここでいう「独立して動作」とは、他の装置によらず煙警報機能を実現し得ることをいう。独立型煙センサ400は、周囲の煙を検出し、煙の検出結果に応じて警報を出力する。また、独立型煙センサ400は、監視装置100の指示に従って試験を実行する。
【0091】
図12は、独立型煙センサ400の構成の一例を示す図である。独立型煙センサ400は、制御部401と、記憶部402と、通信部403と、煙検出部404と、操作部405と、表示部406と、移報回路407とを備える。独立型煙センサ400の各部は、バスを介して接続されている。
【0092】
制御部401、記憶部402、通信部403、煙検出部404、操作部405、表示部406、及び移報回路407は、それぞれ、基本的には監視装置100の制御部101、記憶部102、通信部103、従属型煙センサ300の煙検出部304、煙警報盤200の操作部205、表示部206、及び移報回路207と同様である。移報回路407は、本発明に係る「出力部」の一例である。ただし、記憶部402には、独立型煙センサ400の機能を実現するためのプログラムに加えて、独立型煙センサ400に対して予め設定された蓄積時間と、
図4に示される移報データベース221と同様の移報データベース421とが記憶される。また、煙検出部404により測定された煙の濃度は記憶部402に記憶される。
【0093】
制御部401は、取得部411と、試験部412と、判定部413と、送信部414と、表示制御部415と、移報制御部416として機能する。これらの機能は、制御部401が記憶部402に記憶されたプログラムを実行して、制御部401が演算を行い又は独立型煙センサ400の各部を制御することにより実現される。
【0094】
取得部411と、試験部412と、判定部413と、送信部414と、表示制御部415と、移報制御部416は、それぞれ、基本的には従属型煙センサ300の取得部311と、試験部312、判定部313、送信部314、煙警報盤200の表示制御部213、及び移報制御部214と同様である。ただし、取得部311は、監視装置100から又は操作部405の操作に応じて外部出力試験の実行指示を取得する。送信部414は、試験の結果を監視装置100に送信する。
【0095】
この変形例に係る第1動作例としては、監視装置100から独立型煙センサ400に対して外部出力試験の実行指示が行われる。ここでは、独立型煙センサ400には独立型煙センサ400Aが含まれるものとする。例えば独立型煙センサ400Aに対して「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験を行う場合、作業員は、
図7に示される監視画面150において「試験」ボタン151を用いて、独立型煙センサ400Aを選択し、「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験の実行を指示する操作を行う。
【0096】
この操作に応じて、監視装置100から独立型煙センサ400Aに「アラーム1」という警報レベルを含む試験開始コマンドが送信される。試験開始コマンドを受信すると、独立型煙センサ400Aは試験モードに移行し、蓄積動作を行わずに「アラーム1」という警報レベルでの試験を実行する。この試験において、「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定されると、その警報レベルが割り当てられた移報回路407の接点の接続状態が切り替えられることにより、この接点に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。また、この試験結果は独立型煙センサ400Aから監視装置100に送信される。監視装置100は、この試験結果を記憶部102に記憶して、
図7に示される例と同様に表示部105に表示する。
【0097】
この変形例に係る第2動作例としては、監視装置100を用いずに、独立型煙センサ400の操作部405を用いて外部出力試験の実行指示が行われる。例えば独立型煙センサ400Aに対して「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験を行う場合、作業員は、独立型煙センサ400Aの操作部405を用いて「アラーム1」という警報レベルでの外部出力試験の実行を指示する操作を行う。
【0098】
この操作に応じて、「アラーム1」という警報レベルを含む試験開始コマンドが独立型煙センサ400Aに入力される。試験開始コマンドが入力されると、独立型煙センサ400Aは試験モードに移行し、蓄積動作を行わずに「アラーム1」という警報レベルでの試験を実行する。この試験において、「アラーム1」という警報レベルに該当すると判定されると、その警報レベルが割り当てられた移報回路407の接点の接続状態が切り替えられることにより、この接点に接続されている外部設備500に接点信号が送信される。また、この試験結果は表示部406に表示される。
【0099】
この変形例によれば、独立型煙センサ400から外部設備500への外部出力試験においても蓄積動作が行われないため、この外部出力試験に要する時間が短縮される。
【0100】
変形例2
上述した実施形態又は変形例において、外部出力試験において用いられる蓄積時間は必ずしも0でなくてもよい。例えば外部出力試験においては、火災試験で用いられる蓄積時間よりも短い蓄積時間が用いられてもよい。例えば従属型煙センサ300又は独立型煙センサ400に対して設定された蓄積時間が20秒である場合、外部出力試験においては、この蓄積時間から所定の時間だけ減じた時間、例えば5秒を用いて蓄積動作が行われてもよい。この変形例によっても、外部出力試験に要する時間が短縮される。
【0101】
変形例3
上述した実施形態又は変形例において、監視装置100は設定ツールとして使用されてもよい。この変形例では、監視装置100には、例えば作業員により持ち運ばれる携帯型のコンピュータが用いられてもよい。監視装置100は、煙警報盤200、従属型煙センサ300、又は独立型煙センサ400に、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の第5信号線を介して個別に接続される。第5信号線を介して接続先の装置に接続されると、監視装置100は、接続先の装置と第5信号線を介して各種のデータのやり取りを行う。
【0102】
変形例4
上述した実施形態又は変形例において、移報回路207又は407に含まれる接点は、c接点であってもよいし、a接点又はb接点であってもよい。また、リレーは、有接点リレーであってもよいし、無接点リレーであってもよい。さらに、移報回路207又は407に含まれる接点の数は、三つより少なくてもよいし、多くてもよい。さらに、「アラーム1」~「アラーム3」という警報レベルが全て接点に割り当てられていなくてもよい。「アラーム1」~「アラーム3」という複数の警報レベルのうち一つ又は二つの警報レベルだけが接点に割り当てられていてもよい。
【0103】
変形例5
上述した実施形態又は変形例において、外部設備500は複数設けられていてもよい。この場合、移報回路207又は407に含まれる複数の接点のうち少なくとも一つが他の接点とは異なる外部設備500に接続されていてもよいし、複数の接点がそれぞれ異なる外部設備500に接続されていてもよい。また、接点と外部設備500とは有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。
【0104】
変形例6
上述した実施形態又は変形例において、煙の濃度が「アラーム2」という警報レベルの閾値以上である場合、「アラーム1」という警報レベルには必ずしも該当しなくてもよい。例えば煙の濃度が「アラーム2」という警報レベルの閾値以上である場合には、「アラーム2」という警報レベルだけに該当すると判定されてもよい。同様に、煙の濃度が「アラーム3」という警報レベルの閾値以上である場合、「アラーム1」及び「アラーム2」という警報レベルには必ずしも該当しなくてもよい。煙の濃度が「アラーム3」という警報レベルの閾値以上である場合、「アラーム3」という警報レベルだけに該当すると判定されてもよい。
【0105】
変形例7
上述した実施形態又は変形例において、警報レベルの数は三つに限定されない。警報レベルの数は、二つであってもよいし、四つ以上であってもよい。
【0106】
変形例8
上述した実施形態又は変形例において、監視装置100とともに又は代えて、煙警報盤200が外部出力試験の実行を指示する操作を受け付け、この操作に応じて試験開始コマンドを従属型煙センサ300に送信してもよい。
【0107】
変形例9
上述した実施形態又は変形例において、監視装置100に表示される各種の画面及び煙警報盤200の盤面250の構成は上述した例に限定されない。監視画面150及び盤面250は、従属型煙センサ300又は独立型煙センサ400の試験結果を表示し得るものであれば、どのような構成を有していてもよい。この構成には、色、配置、形状、構成要素、及び画面遷移が含まれる。また、監視画面150は、外部出力試験の実行を指示する操作を受け付けるものであれば、どのように構成を有していてもよい。例えば監視画面150は、上述した実施形態で説明した操作画像とは異なる操作画像を含むように構成されてもよいし、一部の操作画像を含まずに構成されてもよい。
【0108】
変形例10
上述した実施形態又は変形例において、煙監視システム10の構成は上述した例に限定されない。煙監視システム10は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。例えば煙監視システム10は、監視装置100と、煙警報盤200と、従属型煙センサ300と、独立型煙センサ400とを備えていてもよい。或いは、煙監視システム10は、独立型煙センサ400だけを備えていてもよい。また、煙監視システム10の機能を有する主体は、上述した例に限定されない。
【0109】
変形例11
上述した実施形態又は変形例において、煙監視システム10の動作は上述した例に限定されない。煙監視システム10の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、煙監視システム10の一部の処理手順が省略されてもよい。
【0110】
変形例12
本発明の別の形態は、煙監視システム10、監視装置100、煙警報盤200、従属型煙センサ300、及び独立型煙センサ400のうち少なくともいずれかにおいて行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明のさらに別の形態は、監視装置100、煙警報盤200、従属型煙センサ300、又は独立型煙センサ400において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10:煙監視システム、100:監視装置、111:送信部、112:受信部、113:表示制御部、200:煙警報盤、207:移報回路、211:転送部、212:受信部、213:表示制御部、214:移報制御部、300:従属型煙センサ、311:取得部、312:試験部、313:判定部、314:送信部、400:独立型煙センサ、407:移報回路、411:取得部、412:試験部、413:判定部、414:送信部、415:表示制御部、416:移報制御部、500:外部設備