(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】レベリング角データ収集システム、レベリング角調整データ提供システムおよびレベリング角調整システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/08 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
B60Q1/08
(21)【出願番号】P 2021083203
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 拓弥
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125147(JP,A)
【文献】特開2018-193027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地の位置情報を特定する位置特定部と、
車両用前照灯のレベリング角を実レベリング角として検出する実レベリング角検出部と、
路面角度に応じた目標レベリング角を算出する目標レベリング角算出部と、
前記車両の走行時に取得した前記実レベリング角と、前記目標レベリング角と、前記位置情報とをレベリング角履歴データベースに登録する履歴登録部と、
を有する、レベリング角データ収集システム。
【請求項2】
前記路面角度を特定する路面角度特定部を更に備え、
前記路面角度特定部は、前記車両に搭載されたカメラが取得した画像内の消失点を特定し、前記消失点に基づき前記路面角度を特定する、請求項1に記載のレベリング角データ収集システム。
【請求項3】
前記路面角度を特定する路面角度特定部を更に備え、
前記路面角度特定部が路面角度を特定できないときはエラー値を出力し、
前記目標レベリング角算出部は、路面角度がエラー値の時は基準レベリング角を出力する、請求項1に記載のレベリング角データ収集システム。
【請求項4】
ある位置を示す位置情報と、前記位置の前照灯のレベリング角である実レベリング角と、前記位置の路面角度に応じて算出された目標レベリング角と、が関連付けて記録されたレベリング角履歴データベースから、前記目標レベリング角と前記実レベリング角とが所定値以上異なっている前記位置を調整地点として特定する調整地点特定部と、を有するレベリング角調整データ提供システム。
【請求項5】
車両が前記調整地点を通過する時刻よりどのくらい前に前記前照灯のレベリング調節部を作動させるかを示す第一前倒し時間、または、車両が前記調整地点のどのくらい手前を通過した際に前記レベリング調節部を作動させるべきかを示す第一前倒し距離、のいずれかである前倒し量を特定する前倒し量特定部と、
前記調整地点の位置情報と前記第一前倒し量を調整データベースに記録する調整登録部を有する、請求項4に記載のレベリング角調整データ提供システム。
【請求項6】
前記調整地点特定部は、前記実レベリング角と前記目標レベリング角とが所定値より大きな最大閾値以上異なっている場合に、前記位置情報を前記調整地点として特定しない、請求項4に記載のレベリング角調整データ提供システム。
【請求項7】
車両に搭載された前照灯のレベリング角を調整するレベリング角調整システムであって、
前記レベリング角を調節するレベリング調節部を備えた前記前照灯と、
前記車両の現在地の位置情報を特定する位置特定部と、
前記レベリング角の調整を要する調整地点の位置情報と、前記調整地点の路面角度に応じて定められた目標レベリング角と、車両が前記調整地点を通過する時刻よりどのくらい前に前記レベリング調節部を作動させるべきかを示す第一前倒し時間または車両が前記調整地点のどのくらい手前を通過する際に前記レベリング調節部を作動させるべきかを示す第一前倒し距離のいずれかである前倒し量と、が関連付けて記録された調整データベースから前記調整地点の前記位置情報、前記目標レベリング角および前記前倒し量を読み出す調整データ読出部と、
前記目標レベリング角に応じて前記レベリング調節部を作動させるレベリング制御部と、を備え、
前記レベリング制御部は、前記位置特定部が取得した前記位置情報に基づき、前記車両が前記調整地点に前記第一前倒し時間内に到達する、または、前記車両が前記調整地点の前記第一前倒し距離手前の地点に到達するときに、前記レベリング制御部に前記レベリング調節部を作動させ
、
前記レベリング制御部は、前記位置情報と、車速に基づき、前記車両が前記調整地点に前記第一前倒し時間内に到達することを特定する、または、前記車両が前記調整地点の前記第一前倒し距離手前の地点に到達することを特定する、レベリング角調整システム。
【請求項8】
前記前照灯の前記レベリング角を実レベリング角として検出する実レベリング角検出部と、
前記レベリング制御部に前記レベリング調節部を作動させたときに取得した、前記目標レベリング角と前記実レベリング角とが所定値以上異なっている場合に、前記第一前倒し時間と異なる第二前倒し時間または前記第一前倒し距離と異なる第二前倒し距離のいずれかである第二前倒し量を特定する前倒し量修正部と、
前記第一前倒し量を前記第二前倒し量で書き換えて前記調整データベースを更新する修正更新部を有する、請求項7に記載のレベリング角調整システム。
【請求項9】
前記前倒し量修正部は、以下の式1で表される深層強化学習によりQ(st,at,)が最大になるように前記第二前倒し時間を算出する、請求項
8に記載のレベリング角調整システム。
【数1】
(式1)
t:調整地点を通過する回数
s:現在地点
a:以下の式2により算出される第二前倒し時間、またはランダムに定めた第二前倒し時間
γ:目標レベリング角と実レベリング角との乖離度
γ:0~1の任意の数
【数2】
(式2)
fwd
time:第二前倒し時間[sec]
FWD
MAXTIME:前倒し時間の最大値 [sec]
difference:目標レベリング角と実レベリング角の乖離度[-]
DIFFERENCE
MAX:目標レベリング角と実レベリング角の最大乖離度[-]
【請求項10】
前記前倒し量修正部は、以下の式1で表される深層強化学習によりQ(st,at,)が最大になるように前記第二前倒し距離を算出する、請求項
8に記載のレベリング角調整システム。
【数3】
(式1)
t:調整地点を通過する回数
s:現在地点および車速
a:以下の式3により算出される第二前倒し距離、またはランダムに定めた第二前倒し距離
γ:目標レベリング角と実レベリング角との乖離度
γ:0~1の任意の数
【数4】
(式3)
fwd
distance:第二前倒し距離[sec]
FWD
MAXTIME:前倒し時間の最大値[sec]
difference:目標レベリング角と実レベリング角の乖離度[-]
speed
car:車速[km/h]
DIFFERENCE
MAX:目標レベリング角と実レベリング角の最大乖離度[-]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベリング角データ収集システム、レベリング角調整データ提供システムおよびレベリング角調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、レベリング角を調整可能な車両用前照灯が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、起伏が激しい路面を車両が走行する際には、目標レベリング角が素早く大きく変動するので、レベリング角を調整可能な前照灯であっても、光を照射したい領域に前照灯の光が照射されるようにレベリング角を調整することが難しかった。
【0005】
そこで本発明は、起伏の激しい路面を走行する際にも光を照射したい領域に前照灯の光を照射することができるレベリング角調整システム、このレベリング角調整システムに用いるレベリング角調整データを提供するレベリング角調整データシステム、および、レベリング角調整データを算出する際に用いられるデータを収集するレベリング角データ収集システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のレベリング角データ収集システムは、
車両の現在地の位置情報を特定する位置特定部と、
車両用前照灯のレベリング角を実レベリング角として検出する実レベリング角検出部と、
路面角度に応じた目標レベリング角を算出する目標レベリング角算出部と、
前記車両の走行時に取得した前記実レベリング角と、前記目標レベリング角と、前記位置情報とをレベリング角履歴データベースに登録する履歴登録部と、
を有する。
【0007】
本発明の一態様のレベリング角調整データ提供システムは、
ある位置を示す位置情報と、前記位置の前照灯のレベリング角である実レベリング角と、前記位置の路面角度に応じて算出された目標レベリング角と、が関連付けて記録されたレベリング角履歴データベースから、前記目標レベリング角と前記実レベリング角とが所定値以上異なっている前記位置を調整地点として特定する調整地点特定部と、を有する。
【0008】
本発明の一態様のレベリング角調整システムは、
車両に搭載された前照灯のレベリング角を調整するレベリング角調整システムであって、
前記レベリング角を調節するレベリング調節部を備えた前記前照灯と、
前記車両の現在地の位置情報を特定する位置特定部と、
前記レベリング角の調整を要する調整地点の位置情報と、前記調整地点の路面角度に応じて定められた目標レベリング角と、車両が前記調整地点を通過する時刻よりどのくらい
前に前記レベリング調節部を作動させるべきかを示す第一前倒し時間または車両が前記調整地点のどのくらい手前を通過する際に前記レベリング調節部を作動させるべきかを示す第一前倒し距離のいずれかである前倒し量と、が関連付けて記録された調整データベースから前記調整地点の前記位置情報、前記目標レベリング角および前記前倒し量を読み出す調整データ読出部と、
前記目標レベリング角に応じて前記レベリング調節部を作動させるレベリング制御部と、を備え、
前記レベリング制御部は、前記位置特定部が取得した前記位置情報に基づき、前記車両が前記調整地点に前記第一前倒し時間内に到達する、または、前記車両が前記調整地点の前記第一前倒し距離手前の地点に到達するときに、前記レベリング制御部に前記レベリング調節部を作動させる、レベリング角調整システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、起伏の激しい路面を走行する際にも光を照射したい領域に前照灯の光を照射することができるレベリング角調整システム、このレベリング角調整システムに用いるレベリング角調整データを提供するレベリング角調整データシステム、および、レベリング角調整データを算出する際に用いられるデータを収集するレベリング角データ収集システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】角度が大きく変化する路面を走行する際の目標レベリング角と実レベリング角とを示す概念図である。
【
図2】データ収集システムおよびデータ提供システムを示すブロック図である。
【
図3】車両前方に平坦路が続いているときにカメラが取得した画像を示す。
【
図4】車両前方の路面が平坦路から登り坂に変化している時のカメラが取得した画像を示す。
【
図5】レベリング角履歴データベースの一例を示す。
【
図7】レベリング角調整システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
本発明は、レベリング角データ収集システム1、レベリング角調整データ提供システム50およびレベリング角調整システム100に関する。まず、レベリング角データ収集システム1とレベリング角調整データ提供システム50を説明する。その後に、レベリング角調整システム100を説明する。
【0013】
<レベリング角データ収集システム1>
本発明の実施形態に係るレベリング角データ収集システム1を説明する。
図1は、角度が大きく変化する路面を走行する際の目標レベリング角と実レベリング角とを示す概念図である。
【0014】
図1の(a)に示したように車両Vが平坦な路面を走行している時は、前照灯のレベリング角は、例えば車両Vの70m先に配光パターンの中心点(H線とV線の交わるO点)(以降、照射基準点と呼ぶことがある)が位置するように設定される。例えば、このとき
のレベリング角(
図1では線H2で表した)は水平方向(
図1では線H1で表した)に対して下方に約0.5度傾いている。以降の説明において、この平坦路を走行中の水平方向に対して下方に0.5度傾いた角度を、前照灯の基準レベリング角と呼ぶ。以降の説明では、前照灯のレベリング角をこの基準レベリング角からずれている角度で表現することにする。
なお、この基準レベリング角は、前照灯の車両Vへの取り付け高さや、法規などにより異なる値となる。0.5度は説明を具体的にするために用いた数字に過ぎない。
【0015】
基本的には、前照灯のレベリング角は、車両Vが走行する路面の角度に応じた角度に設定される。例えば、車両前方の路面が
図1のように下っている場合(路面角度がマイナス)、基準レベリング角のままでは、照射基準点は車両Vの前方の70mよりも遠方に位置してしまう。そこでレベリング角を線H3で表したように、基準レベリング角よりも下方へ傾けることにより、照射基準点を車両Vの前方の70mに位置させる。
【0016】
ところで、前照灯に備えられているレベリング調整部が動作開始してからレベリング角が目標値(目標レベリング角)となるまでには、時間を要する場合がある。例えば、レベリング調整部がモータで構成されている場合には、およそ目標レベリング角が算出されてから実際にレベリング角が目標レベリング角になるまでに0.1~0.5秒程度の時間を要することがある。あるいは、前照灯の光源が複数のLEDで構成されており、各々のLEDの点消灯を制御することにより疑似的にレベリング角を制御する場合もある。この場合にも、およそ目標レベリング角が算出されてから実際にレベリング角が目標レベリング角になるまでにおよそ0.01秒から0.1秒程度の時間を要することがある。
【0017】
このため、角度が大きく変化する路面を通過する際には、目標レベリング角が直前のレベリング角と大きく異なることから、目標レベリング角が算出されてから実際にレベリング角が目標レベリング角になるまでに時間を要することがある。このため、角度が大きく変化する路面を通過する際には、
図1の(c)の地点でレベリング調整部を動作させても、視認したい領域に前照灯の光が照射されていないといった不具合が生じる。
【0018】
以降で説明する本実施形態に係るレベリング角調整システム100(以下、調整システム100と呼ぶ)は、レベリング角を目標レベリング角にさせる開始時間を前倒しすることにより、角度が大きく変化する路面を通過する際にも視認したい領域に前照灯の光を照射させるシステムである。
また、本実施形態に係るレベリング角調整データ提供システム50(以下、データ提供システム50と呼ぶ)は、このレベリング角調整システム100に用いられるデータを提供するシステムである。
さらに、本実施形態に係るレベリング角データ収集システム1(以下、データ収集システム1と呼ぶ)は、このレベリング角調整データ提供システム50により作成されるデータの元となるデータを収集するシステムである。
以降に、
図2から
図6を用いて各システムを詳細に説明する。
【0019】
<レベリング角調整データ提供システム50>
図2は、データ収集システム1およびデータ提供システム50を示すブロック図である。
図2に示したように、データ収集システム1は、位置特定部2と、実レベリング角検出部3と、路面角度特定部4と、目標レベリング角算出部5と、履歴登録部6を備えている。データ収集システム1は、例えば前照灯を備えた車両Vに搭載される。
位置特定部2は、車両Vの現在地の位置情報を特定し、出力する。位置特定部2は、例えば北緯と東経を含む情報を出力する。位置特定部2は、例えばGPS(Global Positioning System)などで構成できる。
【0020】
実レベリング角検出部3は、前照灯のレベリング調整部から現在のレベリング調整部で設定されている実レベリング角を検出し、出力する。例えば、前照灯の光源ユニットが搭載されている台座をハウジングに対して傾き角を調整可能に支持しているアクチュエータがレベリング機構として前照灯に搭載されている場合、アクチュエータのストローク量を検出する制御回路またはセンサを実レベリング角検出部3として構成できる。
【0021】
路面角度特定部4は、車両前方の路面角度を特定する。路面角度特定部4は例えば、車両前方を撮像するカメラと、カメラから出力される画像を解析する画像処理部とにより構成できる。ここでは、カメラが取得した画像中の消失点Pを用いて路面角度を特定する例を
図3を用いて説明する。画像処理部は例えば、灯具ECUまたは車両ECUといったプロセッサで構成できる。
路面角度特定部4は、LiDARセンサシステムにより作成した3次元画像から自車前方の走行路面の傾斜角を特定してもよい。また別の手段として、自動運転用途に向けた高精度3次元マップデータから自車前方の走行路面の傾斜角を直接参照するかデータ解析により傾斜角を推定しても構わない。
【0022】
なお、本明細書において、プロセッサとは、例えば、ASIC(specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)、汎用CPU(central processing unit)、あるいは記録装置に記録されたアプリケーションやロジックを実行するのに適した他のハードウェア、といった汎用または専用データ処理装置を含む。
記録装置とは、コンピュータ可読媒体を単独あるいはその組み合わせからなる、一次的あるいは持続的なコンピュータ可読記録装置を含む。例えば、記録装置は、RAM(random access memory)、DRAM(dynamic random access memory)あるいは、他の物理的、光学的、電気的手段を組み合わせた記録装置といった、磁気記録装置、光学的記録装置、電気的記録装置を含む。記録装置は、コンピュータプログラムやアプリケーションといった、プロセッサによって実行されるロジックを記録する装置である。
コンピュータプログラムは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、あるいは他のプログラマブルデータ処理装置といったハードウェアプロセッサに与えられ、コンピュータのプロセッサや他のプログラマブルデータ処理装置により実行されて、特定の機能や行動を実行する手段を生成する機械を生じさせる。
【0023】
図3は、車両前方に平坦路が続いているときにカメラが取得した画像を示す。
図3に示すように、カメラが取得した画像には、車両Vの走行レーンを定める道路標示として、車両Vの左側に前後方向に延びる白色又は橙色の左線LLと、車両Vの右側に前後方向に延びる白色又は橙色の右線RLが存在している。これらの左線LLと右線RLを仮想的に前方に延ばしていき、交差した点が消失点Pとなる。
【0024】
図4は、車両前方の路面が平坦路から登り坂に変化している時のカメラが取得した画像を示す。
図4に示したように、車両前方の路面が平坦路から登り坂に変化しているときの消失点Pを考える。
この場合、左線LLまたは右線RLの少なくとも一方は屈曲しているため、二つの消失点Pが存在することになる。手前側の平坦路または下り坂に引かれている左線LLと右線RLとが交わる第一消失点P1は、遠方に位置する登り坂に引かれている左線LLと右線RLとが交わる第二消失点P2よりも近く(画像上の下方)に位置している。
このように、画像中の左線LLと右線RLの少なくとも一方が屈曲しており、第一消失点P1と第二消失点P2が存在しており、消失点P2が消失点P1よりも、カメラ取得画像の上方に位置している場合、前方に登り坂があることを特定できる。前方に位置する登り坂の傾斜が大きい(路面角度が大きい)ほど、第一消失点P1と第二消失点P2の画像中の上下方向の離間距離Dが大きくなる。そこで、この離間距離Dに応じて登り坂の路面角度を特定することができる。なお、離間距離Dは、実際には、カメラから見た第一消失
点P1と第二消失点P2との間の角度を意味する。
【0025】
すなわち路面角度特定部4の画像処理部は、カメラが取得した画像からハフ変換などの画像処理により路面の左線LLおよび右線RLを特定する。次に画像処理部は、この左線LLと右線RLの少なくとも一方が屈曲しているか否かを判定する。いずれか一方が屈曲している場合、画像処理部は、屈曲点より自車に近い一方の線と他方の線との交わる第一消失点P1、および、屈曲点より自車から遠い一方の線と他方の線との交わる第二消失点P2を特定する。画像処理部は、第一消失点P1が第二消失点P2より自車両の近くにあるか否かを判定する。以上の判定がいずれもYesであれば、画像処理部は、第一消失点P1と第二消失点P2の上下方向の離間距離を算出し、離間距離に応じて前方の登り坂の路面角度を特定する。
なお、車両前方の路面が下り坂から登り坂に変化している時も同様に、前方に登り坂があること、および、登り坂の路面角度を特定できる。
【0026】
なお、路面角度特定部4がカメラと画像処理部とにより構成された例を説明したが、本発明はこの例に限られない。路面角度特定部4は、LiDARセンサと、LiDARセンサの出力を処理する処理部とにより構成することもできる。処理部は、クラウドを介した地図情報からのデータ参照、高度運転支援システム向けの3Dデータ等の参照も含まれる。
【0027】
図1に戻り、目標レベリング角算出部5は、路面角度特定部4により算出された路面角度に応じた目標レベリング角を算出する。先述したように、目標レベリング角算出部5は、車両前方の70m先の路面に照射基準点が位置するように、目標レベリング角を設定する。例えば前方に登り坂が存在する場合、その路面角度に応じて基準レベリング角よりも大きな目標レベリング角を設定する。なお、基準レベリング角よりも大きい角度とは、光が上方に照射されるように前照灯が上向きになる角度であり、基準レベリング角よりも小さい角度とは、光が下方に照射されるように前照灯が下向きになる角度である。
例えば、目標レベリング角算出部5は灯具ECUなどの灯具や車両に搭載されたプロセッサが相当する。尚、目標レベリング角算出に用いられる基準位置のレベリング角(平坦走行時のレベリング角)は、エンジン始動時のレベリングを行った時に不揮発性メモリに格納されてもいい。
【0028】
履歴登録部6は、車両Vの走行時に取得した、実レベリング角検出部3から出力された実レベリング角と、目標レベリング角算出部5から出力された目標レベリング角と、位置特定部2から出力された位置情報とをレベリング角履歴データベースDB1に登録する。
例えば、履歴登録部6は灯具ECU、車両ECUなどのプロセッサが該当する。
【0029】
図5は、レベリング角履歴データベースDB1の一例を示す。
図5に示したように、レベリング角履歴データベースDB1には、実レベリング角と、目標レベリング角と、位置情報とが関連付けて記録されている。また、
図5に示したように、レベリング角履歴データベースDB1には、路面角度も位置情報に関連付けて記録されていてもよい。ここでいう「関連付けて記録される」とは、ある位置座標に対応付けて、該位置座標における目標レベリング角などが記録される、との意味である。
【0030】
このレベリング角履歴データベースDB1は、第一記録部10に記録される(
図2参照)。第一記録部10は、車両Vに搭載されていてもよいし、クラウドサーバなど、車両Vの外部に設けられた記録装置であってもよい。例えば車両ECU内部のメモリ等の記憶媒体でも構わない。なお、レベリング角履歴データベースDB1が車両Vの外部に設けられた第一記録部10に記録される場合には、履歴登録部6は記録すべき情報を無線通信により第一記録部10に提供する。無線通信の手段は、例えば、自動車向けテレマティック等
の移動体通信システムや、スマートフォンとの連携、車内Wi-Fiの活用などでも構わない。
記録装置は、RAM(random access memory)、DRAM(dynamic random access memory)あるいは、他の物理的、光学的、電気的手段を組み合わせた記録装置といった、磁気記録装置、光学的記録装置、電気的記録装置を含む。
【0031】
本実施形態に係るレベリング角調整データ提供システム50によれば、実レベリング角と目標レベリング角と位置情報を含むデータを簡易に収集することができる。
【0032】
<レベリング角調整データ提供システム50>
次に、レベリング角調整データ提供システム50を説明する。
図2に示したように、データ提供システム50は、調整地点特定部51を備えている。
レベリング角調整データ提供システム50は、上述したようにレベリング調整部の動作に要する時間に起因して目標レベリング角と実レベリング角とが乖離している地点を特定する。調整地点特定部51は例えば、演算処理が可能なプロセッサが相当する。
【0033】
調整地点特定部51は、レベリング角履歴データベースDB1に基づき、目標レベリング角と実レベリング角とが第一所定値以上異なっている位置を調整地点として特定する。調整地点特定部51は、まずレベリング角履歴データベースDB1を読み出す。次に調整地点特定部51は、目標レベリング角と実レベリング角とが第一所定値以上異なっている位置情報を特定し、この目標レベリング角と実レベリング角とが第一所定値以上異なっている位置を調整地点として特定する。以降の説明では、この調整地点として特定した地点の位置情報を調整地点情報と呼ぶ。
【0034】
なお、実レベリング角検出部3はセンサの熱暴走などにより情報を出力することがある。あるいは、道路工事に伴い、本来ではありえないような路面角度を出力することがある。このような通常では生じないような実レベリング角を調整対象としないために、調整地点特定部51は、実レベリング角が目標レベリング角よりも第一所定値よりも大きい第二所定値以上離れている場合、該地点は調整地点として特定しなくてもよい。
また、データ収集システム1が同じ道路を複数回にわたって目標レベリング角、実レベリング角、位置情報を収集することがある。この場合、レベリング角調整データ提供システム50は、収集したこれらの情報に統計処理を施して得られた値から後述する前倒し量を特定するように構成してもよい。
例えば、ある特定の地点において、10組の目標レベリング角と実レベリング角とが存在する場合、調整地点特定部51は、これらの平均値を目標レベリング各と実レベリング角として前倒し量特定部52、調整登録部53、出力部54に出力してもよい。あるいは調整地点特定部51は、10個の目標レベリング角のうち、最大値と最小値を除いた8個の目標レベリング角から平均値を算出してもよい。あるいは、多数の実レベリング角が存在する場合、平均値から標準偏差の2倍以上離れている実レベリング角は無視する、などといった統計処理を施したうえで、前倒し量を特定するように構成してもよい。
【0035】
またレベリング角調整データ提供システム50は、
図2に示したように、前倒し量特定部52と、調整登録部53と、出力部54を備えていてもよい。このようなレベリング角調整データ提供システム50は、目標レベリング角と実レベリング角とが乖離している地点に差し掛かる前にレベリング調整部を目標レベリング角になるように動作させる前倒し時間または前倒し距離のいずれかである前倒し量を提供する。これにより、
図1の(b)に示したように、路面角度が大きく変化する地点に差し掛かるよりも手前の地点(例えば
図1の(c)の地点)からレベリング調整部を目標レベリング角になるように作動させることにより、実際に路面角度が変化する地点に差し掛かったときに適切な範囲に前照灯の光を照射させる。前倒し量特定部52、調整登録部53、出力部54は例えば、演算処理
可能な制御回路、計算機、コンピュータ等が相当する。
【0036】
前倒し量特定部52は、車両Vが調整地点を通過する時刻よりどのくらい前に前照灯のレベリング調節部を作動させるかを示す第一前倒し時間(前倒し量の一例)を特定する。ここでは、前倒し量を前倒し時間として説明する。
例えば前倒し量特定部52は、所定の範囲内の時間の内からランダムに選ばれた時間を第一前倒し時間として設定することができる。例えば、所定の範囲内の時間とは、レベリング調整部を最小レベリング角から最大レベリング角まで作動させるために要する時間(例えば3秒など)とすることができる。また、所定の範囲内の時間の内からランダムに選ばれうる時間を、0.01秒、0.05秒、0.1秒、0.5秒、1秒、0.5秒、2秒、3秒、などと設定することができる。ランダムに選ばれうる時間は、3個以上の候補が用意されていることが好ましい。
【0037】
なお、前倒し量は距離の概念としても解釈されうる。車両Vが調整地点のどのくらい手前を通過した際にレベリング調節部を作動させるべきかを示す距離が、第一前倒し距離となる。第一前倒し距離は、上述した前倒し時間と同様に、所定の範囲内の距離の内からランダムに選ばれた距離に設定することができる。あるいは、所定の範囲内の時間の内からランダムに選ばれた時間に、車両Vから取得した車速を乗じて得られた距離を設定することができる。
【0038】
調整登録部53は、調整地点の位置情報と第一前倒し量とを調整データベースDB2に記録する。
図6は、調整データベースDB2の一例を示す。
図6に示した例では、調整データベースDB2には、調整地点情報と、第一前倒し量(第一前倒し時間)とが関連付けて記録されている。また、
図6に示したように、調整データベースDB2には、路面角度と目標レベリング角も位置情報に関連付けて記録されていてもよい。ここでいう「関連付けて記録される」とは、ある調整位置座標に対応付けて、該調整位置座標における第一前倒しが記録される、との意味である。調整登録部53は例えば、演算処理が可能な制御回路、コンピュータ等が相当する。
【0039】
この調整データベースDB2は、第二記録部60に記録される。第二記録部60は、車両Vに搭載されていてもよいし、クラウドサーバなど車両Vの外部に設けられた記録装置であってもよい。第二記録部60としては、例えばメモリ等の記憶媒体が相当する。
【0040】
出力部54は、ユーザからの要求信号に基づき、調整データベースDB2の少なくとも一部をユーザへ提供する。出力部54は例えば、演算処理が可能な制御回路、計算機、コンピュータ等が相当する。
例えばデータ提供システム50、第二記録部60および調整システム100が車両Vに搭載されている場合、調整システム100の要求信号に応えてデータ提供システム50の出力部54は、第二記録部60の一例であるメモリから調整データベースDB2を読み出し、調整システム100へ提供する。調整データベースDB2のデータ量が大きい場合には、車両Vの現在地から所定距離以内の調整地点に関連付けられた情報のみを調整システム100へ提供するように構成してもよい。
あるいは、データ提供システム50が車両Vの外部に設けられたサーバとして構成されている場合、ユーザの車両Vからの要求信号に応えてデータ提供システム50の出力部54は、第二記録部60の一例であるメモリから調整データベースDB2を読み出し、その情報を無線通信により調整システム100へ提供する。
【0041】
なお、データ提供システム50は、クラウドサーバなど車両Vの外部に設けられる情報処理装置であってもよいし、データ収集システム1が搭載された車両Vに搭載された情報処理装置であってもよい。データ提供システム50は、上述したデータ収集システム1に
より作成されたレベリング角履歴データベースDB1を用いて調整データベースDB2を作成してもよいし、上述したデータ収集システム1とは異なるシステムにより作成されたデータベースに基づいて調整データベースDB2を作成してもよい。
【0042】
本実施形態に係るレベリング角データ収集システム1によれば、位置情報と実レベリング角と目標レベリング角とが含まれたレベリング角履歴データベースDB1に基づき、実レベリング角と目標レベリング角とが大きく乖離した地点を特定する。これにより、レベリング調節部を作動するタイミングを調整すべき地点を示す調整データベースDB2を提供することができる。
【0043】
<レベリング角調整システム100>
次に
図7を参照してレベリング角調整システム100を説明する。
図7は、レベリング角調整システム100のブロック図である。
図7に示したようにレベリング角調整システム100は、レベリング調節部102を備えた前照灯101と、位置特定部103と、調整データ読出部104と、レベリング制御部105を備えている。
【0044】
レベリング調節部102とは、機械的にレベリング角を制御する構造、および、電子的にレベリング角を制御する構造のいずれも含む。
機械的にレベリング角を制御する構造とは、例えば、光源ユニットが搭載された台座を前照灯101のハウジングに対して傾斜角度を変更させる機構である。このような機構は、例えば、モータと、モータによって進退する出力軸とを備え、モータがハウジングと台座の一方に取り付けられ、出力軸がハウジングと台座の他方に取り付けられている。出力軸が進退することにより、台座のハウジングに対する傾斜角度を変更させる。このような機械的にレベリング角を制御する構造は、目標レベリング角が算出されてから実レベリング角が目標レベリング角となるまでに要する時間は1~3秒程度である。
電子的にレベリング角を制御する構造とは、例えば、車両前方に設定された任意の領域の各々について、光の照射/非照射を制御する光源制御部である。光源制御部が複数の光源の点消灯を制御することにより、任意の領域に光を照射して所望の配光パターンを形成する。このような前照灯101において、配光パターンの中心座標を上下方向にシフトさせることにより、レベリング角を制御することができる。このような電子的にレベリング角を制御する構造は、目標レベリング角が算出されてから実レベリング角が目標レベリング角となるまでに要する時間は0.1~0.3秒程度である。
【0045】
調整データ読出部104は、調整データベースDB2から調整地点の位置情報と、目標レベリング角と前倒し量を読み出す。前倒し量とは、前述したように、車両Vが調整地点を通過する時刻よりどのくらい前にレベリング調節部102を作動させるべきかを示す第一前倒し時間または車両Vが調整地点のどのくらい手前を通過する際にレベリング調節部102を作動させるべきかを示す第一前倒し距離のいずれかである。調整データ読出部104は、例えば、灯具ECU、車両ECUなどといった灯具や車両に搭載されたプロセッサが該当する。
【0046】
レベリング制御部105は、目標レベリング角に応じてレベリング調節部102を作動させる。より具体的には、レベリング制御部105は、位置特定部103が取得した位置情報に基づき、車両Vが調整地点に第一前倒し時間に到達する、または、車両Vが調整地点の第一前倒し距離手前の地点に到達する場合に、車両Vが調整地点に第一前倒し時間内に到達する、または、車両Vが調整地点の第一前倒し距離手前の地点に到達するときに、レベリング制御部105がレベリング調節部102を作動させる。
これにより、調整データベースDB2に記録された前倒し量に応じて前倒しされたタイミングで、レベリング調節部102が作動し、路面角度が大きく変化する際にも前照灯101は所望の領域に光を照射することができる。レベリング制御部105は、例えば、灯
具ECU、車両ECUなどといった灯具や車両に搭載されたプロセッサが該当する。
【0047】
なおレベリング制御部105は、位置情報と、車速に基づき、車両Vが調整地点に第一前倒し時間内に到達することを特定する、または、車両Vが調整地点の第一前倒し距離手前の地点に到達することを特定するように構成することができる。
【0048】
なお上述した例では、第一前倒し量はランダムに決定されている。このため、レベリング調節部102の動作が遅すぎたり、早すぎたりする可能性がある。そこで、調整システム100は、
図7に示したように、前照灯101のレベリング角を実レベリング角として検出する実レベリング角検出部106と、前倒し量修正部107と、修正更新部108を備えていてもよい。実レベリング角検出部106は、例えばモータを制御するマイコンなどの電子回路である。前倒し量修正部107、修正更新部108は、例えば、灯具ECUや車両ECUなどといった灯具や車両に搭載されたプロセッサが該当する。
【0049】
前倒し量修正部107は、レベリング制御部105によりレベリング制御部105にレベリング調節部102を作動させたときに取得した、目標レベリング角と実レベリング角とが所定値以上異なっている場合に、第一前倒し時間と異なる第二前倒し時間または第一前倒し距離と異なる第二前倒し距離のいずれかである第二前倒し量を特定する。
修正更新部108は、第一前倒し量を第二前倒し量で書き換えて調整データベースDB2を更新する。
【0050】
例えば第一前倒し時間として0.3秒が設定されており、0.3秒前倒しでレベリング調節部102を作動させてもなお実レベリング角が目標レベリング角と乖離していた場合、前倒し量特定部52は第二前倒し時間として0.3秒以外の値を設定する。前倒し量修正部107は、第一前倒し時間を設定したときと同様にランダムに選ばれた時間を設定してもよいし、実レベリング角と目標レベリング角との乖離度合いに応じた時間を設定してもよい。このようにして設定された第二前倒し量で調整データベースDB2が更新される。
【0051】
このように調整データベースDB2が更新されると、車両Vが再び同一の調整地点を通過する際には、0.3秒とは異なる第二前倒し量でレベリング調節部102が前倒しで動作される。車両Vが同一地点を繰り返し通過し、第一前倒し量が第二前倒し量で繰り返し更新されていくうちに、実レベリング角が目標レベリング角との乖離度が所定値未満に収まるようになる。これにより、角度が大きく変化する路面を通過する際に、前照灯101が最適な範囲に光を照射することができるようになる。
【0052】
なおこの前倒し量修正部107は、深層強化学習により第二前倒し量を特定するように構成してもよい。例えば深層強化学習のアルゴリズムの一つであるQ学習を用いて、以下の式1により第二前倒し時間を求めるように構成してもよい。なお、このアルゴリズムは、レベリング角調整システム100が備える記録装置に記録されており、前倒し量修正部107はこの記録装置から読み出して以下を実行する。
【数1】
(式1)
t:当該調整地点を通過する回数
s:現在地点(および第二前倒し距離を求める場合は車速)
a:以下の式2により算出される第二前倒し時間、またはランダムに定めた第二前倒し時間
γ:目標レベリング角と実レベリング角との乖離度
γ:任意(将来報酬の割引率)
【数2】
(式2)
fwd
time:第二前倒し時間[sec]
FWD
MAXTIME:前倒し時間の最大値(レベリング調節部102が機械的にレベリング角を制御する構造の場合、例えば3秒)[sec]
difference:目標レベリング角と実レベリング角の乖離度[-]
DIFFERENCE
MAX:目標レベリング角と実レベリング角の最大乖離度(レベリング調節部102のレベリング角の作動範囲)[-]
【0053】
なお、前倒し量修正部107が、Q学習を用いて第二前倒し距離を求める場合は上記の式2を式3に変更して式1を援用できる。
【数3】
(式3)
fwd
distance:第二前倒し距離[m]
FWD
MAXTIME:前倒し時間の最大値(レベリング調節部102が機械的にレベリング角を制御する構造の場合、例えば3秒)[sec]
difference:目標レベリング角と実レベリング角の乖離度[-]
speed
car:車速[km/h]
DIFFERENCE
MAX:目標レベリング角と実レベリング角の最大乖離度(レベリング調節部102のレベリング角の作動範囲)[-]
なお、深層強化学習のアルゴリズムは、Q学習の他にSarsa,モンテカルロ法などを用いてもよい。
【0054】
本実施形態に係るレベリング角調整システム100によれば、調整データベースDB2から読み出した前倒し量に応じて路面角度が大きく変化するより前にレベリング調節部102が作動するので、角度が大きく変化する路面を走行する際でも前照灯101の光を車両前方の適切な領域に投射することができる。
【0055】
なお、データ収集システム1と調整システム100とが同一の車両Vに搭載される場合には、データ収集システム1の位置特定部2と調整システム100の位置特定部103とは共通の装置としてもよい。またこの場合、データ収集システム1の実レベリング角検出部3と調整システム100の実レベリング角検出部106とは共通の装置としてもよい。
【0056】
なお、車両前方の路面が下り坂の時には、車両が頂上に到達した直後はその先の路面を視認できず、消失点を特定できない。この場合は、路面角度特定部4は路面角度としてエラー値を出力する。また、目標レベリング角算出部5は、路面角度が特定できない場合には、基準レベリング角を出力する。
履歴登録部6は、車両が頂上に到達した直後の位置について、路面角度としてのエラー値、目標レベリング角として基準レベリング角、実レベリング角をレベリング角履歴データベースに登録する。
レベリング角調整データ提供システム50は、路面角度としてエラー値が登録されてい
るエラー位置について、レベリング角履歴データベースに含まれるエラー位置の前後の路面角度から、エラー位置での路面角度を推定する路面角度推定部を備えていてもよい。例えば路面角度推定部は、エラー位置のすぐ北側の路面角度が0度であり、エラー位置のすぐ南側の路面角度が-20度であった場合、エラー位置の路面角度を-10度と推定するように構成することができる。路面角度推定部は、エラー位置におけるエラー値を推定した路面角度に更新して調整データベースを保存する。
このように、レベリング角調整データ提供システム50は、多数の位置について路面角度の情報を収集しているため、路面角度を特定できなかった位置についてもその周囲の路面角度からその路面角度を推定することができる。
なお、レベリング角調整システム100のレベリング制御部105は、調整データベースの路面角度がエラー値であった場合は、目標レベリング角を基準レベリング角に設定するように構成されていてもよい。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1 レベリング角データ収集システム
2 位置特定部
3 実レベリング角検出部
4 路面角度特定部
5 目標レベリング角算出部
6 履歴登録部
10 第一記録部
50 レベリング角調整データ提供システム
51 調整地点特定部
52 前倒し量特定部
53 調整登録部
54 出力部
60 第二記録部
100 レベリング角調整システム
101 前照灯
102 レベリング調節部
103 位置特定部
104 調整データ読出部
105 レベリング制御部
106 実レベリング角検出部
107 前倒し量修正部
108 修正更新部
DB1 レベリング角履歴データベース
DB2 調整データベース