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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/108 20220101AFI20250106BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20250106BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20250106BHJP
   F24H 15/315 20220101ALI20250106BHJP
【FI】
F24H15/108
F24H1/18 A
F24H15/20
F24H15/315
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021099489
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190946
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】辻野 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】牛島 亘
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-060169(JP,A)
【文献】特開2007-120825(JP,A)
【文献】特開2013-204842(JP,A)
【文献】特開2004-263934(JP,A)
【文献】特開2019-095168(JP,A)
【文献】特開2001-201181(JP,A)
【文献】国際公開第2019/231394(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、
前記貯湯タンクの湯水を前記第1の水栓に送る給湯管と、
前記給湯管に設けられ、前記貯湯タンクからの湯水に前記水道管の水を混合する混合弁Cと、
前記給湯管の前記混合弁Cの下流側で、該給湯管を流れる湯水の流量を計測する羽根車式の水量センサDと、
前記水道管の水が前記貯湯タンクの下部に給水されない水道停止時に前記貯湯タンクの湯水を出す第2の水栓と、
前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴い該貯湯タンクに流入する外部の空気を取り込む空気取得手段と、
前記混合弁Cにおける前記貯湯タンクの湯水の流入口C1の開度及び前記水道管の水の流入口C2の開度を調整する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴う該貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出した際、前記水道停止時から前記通常時に戻り前記第1の水栓が開かれて、前記混合弁Cの前記流入口C2の開度を予め定められた開度J以上とする制御を行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
請求項1記載の貯湯式給湯装置において、前記貯湯タンクの湯水を浴槽に送る湯張り管と、前記湯張り管に設けられ、前記貯湯タンクの湯水に前記水道管の水を混合する混合弁Gと、前記湯張り管の前記混合弁Gの下流側で、該湯張り管を流れる湯水の流量を計測する羽根車式の水量センサHとを、更に備え、前記制御手段は、前記混合弁Gの前記貯湯タンクの湯水の流入口G1の開度及び前記水道管の水の流入口G2の開度の調整も行い、該制御手段は、前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴う該貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出した際、前記水道停止時から前記通常時に戻って前記浴槽に貯湯タンクの湯水を送るにあたり、前記混合弁Gの前記流入口G2の開度を予め定められた開度K以上とする制御を行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の貯湯式給湯装置において、作動して前記水道停止時に前記第2の水栓に前記貯湯タンクの湯水を送るポンプと、前記制御手段に前記ポンプを作動させるポンプ起動入力が可能な操作端末とを、更に備え、前記制御手段は、前記操作端末での前記ポンプ起動入力を検知して、前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴う該貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の湯を水栓に供給する貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯装置は、貯湯タンクから出る湯と水道管からの水を混合弁で混合してなる湯水(湯又は水を意味する、以下同じ)を、台所や浴室に設けられた水栓に供給する(特許文献1、2参照)。水栓への湯水の供給は、通常時に水道管にかかっている水圧を利用して行われることから、水栓への湯水の供給のためにポンプを設ける必要はない。利用者は水栓を開くことで水栓から湯水を出すことができる。また、貯湯タンクからの出湯に伴い、貯湯タンクには、水道管の水圧により水道管から水が注入される。
ところが、自然災害等で水道水供給のインフラが機能しなくなって、水道管の水の流れが停止し、水道管に水圧がかからなくなる水道停止時には、水栓を開いても水栓から湯水を出すことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196887号公報
【文献】特開2017-129328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これについては、専用水栓が連結された送水管を貯湯タンクに接続し、重力等で専用水栓から貯湯タンクの湯水が出るように、貯湯式給湯装置を設計することによって、水道停止時でも貯湯タンクの湯水を出すことが可能となる。この場合、水道停止時に貯湯タンクの湯水を専用水栓から出しても、貯湯タンクに水道管の水は注入されず、負圧作動弁を介して取り込まれる外部の空気が貯湯タンク内に流入する。
【0005】
ところで、混合弁の湯水の出側には、特許文献2に記載されているように、水栓に送られる湯水の流量を計測する水量センサ(流量センサ)が設けられている。水量センサの計測値は、例えば、設定された給湯温度の湯水が水栓に供給されるようにするための制御に用いられる。
ここで、水道水供給のインフラ復旧後、貯湯タンクに空気が溜まっている状態で、水栓が開かれると、貯湯タンク内の空気は貯湯タンクから出て水量センサを通り水栓から外部に放出されることとなる。
【0006】
従来の貯湯式給湯装置で採用される羽根車式の水量センサは、空気の通過を想定した設計ではなく、水量センサを流れる空気の流量によっては空回りが生じて水量センサが破損する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、水道停止時に貯湯タンクに空気が溜められた後に、通常時に戻って水栓が開かれても、羽根車式の水量センサの破損を抑制可能な貯湯式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る貯湯式給湯装置は、水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、前記貯湯タンクの湯水を前記第1の水栓に送る給湯管と、前記給湯管に設けられ、前記貯湯タンクからの湯水に前記水道管の水を混合する混合弁Cと、前記給湯管の前記混合弁Cの下流側で、該給湯管を流れる湯水の流量を計測する羽根車式の水量センサDと、前記水道管の水が前記貯湯タンクの下部に給水されない水道停止時に前記貯湯タンクの湯水を出す第2の水栓と、前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴い該貯湯タンクに流入する外部の空気を取り込む空気取得手段と、前記混合弁Cにおける前記貯湯タンクの湯水の流入口C1の開度及び前記水道管の水の流入口C2の開度を調整する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記第2の水栓からの前記貯湯タンクの湯水の出水に伴う該貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出した際、前記水道停止時から前記通常時に戻り前記第1の水栓が開かれて、前記混合弁Cの前記流入口C2の開度を予め定められた開度J以上とする制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る貯湯式給湯装置は、制御手段が、第2の水栓からの貯湯タンクの湯水の出水に伴う貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出した際、水道停止時から通常時に戻り第1の水栓が開かれて、混合弁Cの水道管の水の流入口C2の開度を予め定められた開度J以上とする混合弁Cの制御を行うので、水道停止時に貯湯タンクに溜まった空気が通常時に第1の水栓から出る際に水道管の水が必ず羽根車式の水量センサを流れるようにでき、空気による水量センサの空回りを防いで当該水量センサの破損を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る貯湯式給湯装置の回路図である。
図2】貯湯タンクの湯水の第1の水栓への供給の様子を示す説明図である。
図3】制御手段の接続を示すブロック図である。
図4】浴槽の湯張りの様子を示す説明図である。
図5】貯湯タンクの湯水を第2の水栓に供給する様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る貯湯式給湯装置10は、水道管11の水が貯湯タンク12に給水される通常時に、貯湯タンク12内の湯水を、開かれた第1の水栓13に供給する装置である。
【0011】
貯湯タンク12には、図1に示すように、複数(本実施の形態では6個)の温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eが取り付けられている。温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eは、貯湯タンク12の上部に設けられた温度センサ14が最も高い位置に配され、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eの順に取り付け位置が低くなっている。
貯湯タンク12の下部には、減圧弁15、温度センサ16及び逆止弁17、18が設けられた水道管11の一端部が連結されている。
【0012】
台所や洗面所等に設けられる第1の水栓13は、貯湯タンク12の上部に上流側端部が接続された給湯管20の下流側端部に連結されている。給湯管20には上流側端部から下流側端部に向けて、逆止弁21、混合弁C、羽根車式の水量センサD及び温度センサ23が設けられている。混合弁Cは、貯湯タンク12の上部からの湯水が流入する流入口C1(貯湯タンク12の湯水の流入口C1)と、水道管11の別の端部が連結され、水道管11の水が流入する流入口C2(水道管11の水の流入口C2)とを具備し、貯湯タンク12からの湯水に水道管11の水を混合する。
【0013】
水量センサDは、給湯管20の混合弁Cの下流側で、給湯管20を流れる湯水の流量を計測する。
第1の水栓13が開かれることによって、通常時に水道管11に生じている水圧により、貯湯タンク12上部の湯は、図2に示すように、混合弁C及び水量センサD経由で給湯管20によって第1の水栓13に送られる。よって、給湯管20は貯湯タンク12の湯水を第1の水栓13に送ることとなる。
【0014】
混合弁C及び水量センサDは、図3に示すように、ICチップ等によって構成された制御手段25に、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14e、16、23と共に接続されている。制御手段25には、第1の水栓13への給湯温度の設定をはじめとする種々の入力操作がなされる操作端末26が接続されている。制御手段25は、温度センサ14、16、23及び水量センサDの各計測値を検知し、これらの計測値を基に、混合弁Cの流入口C1の開度及び流入口C2の開度を調整して、操作端末26で設定された給湯温度の湯水が第1の水栓13に送られるように混合弁Cを制御する。ここで、混合弁Cの流入口C1、C2は、いずれか一方の開度が大きくなると、他方の開度が小さくなり、常に流入口C1、C2の各開度の合計が100%となるように連動する。
【0015】
また、給湯管20には、図1に示すように、貯湯タンク12の湯水を浴槽Bに送る湯張り管27の上流側端部及び浴槽Bの湯を加熱する熱交循環回路28の上流側端部が接続されている。
湯張り管27には、上流側端部から浴槽Bに接続された下流側端部に向けて逆止弁29、混合弁G、羽根車式の水量センサH、電磁弁32、逆止弁33及び温度センサ34が順に設けられている。
【0016】
混合弁Gは、貯湯タンク12の上部からの湯水が流入する流入口G1(貯湯タンク12の湯水の流入口G1)と、水道管11の別の端部が連結され、水道管11の水が流入する流入口G2(水道管11の水の流入口G2)を具備し、貯湯タンク12からの湯水に水道管11の水を混合する。
混合弁G、水量センサH、電磁弁32及び温度センサ34は、図3に示すように、制御手段25に接続されている。水量センサHは、湯張り管27の混合弁Gの下流側で、湯張り管27を流れる湯水の流量を計測する。
【0017】
操作端末26で浴槽Bの湯張り操作がなされると、電磁弁32が制御手段25によって開かれ、水道管11の水圧により、貯湯タンク12上部の湯及び水道管11の水が、図4に示すように、混合弁Gに送られ混合されて、浴槽Bに供給される。制御手段25は、温度センサ14、16、34及び水量センサHの各検出値を基に、混合弁Gの流入口G1の開度及び流入口G2の開度を調整して、浴槽Bに供給される湯水の温度が、操作端末26で設定された温度となるように制御する。混合源Gの流入口G1、G2は、混合弁Cの流入口C1、C2と同様に、いずれか一方の開度が大きくなると、他方の開度が小さくなり、常に流入口G1、G2の各開度の合計が100%となるように連動する。
【0018】
熱交循環回路28は、図1に示すように、逆止弁36及びポンプ37を有し、下流側端部が貯湯タンク12に連結されている。浴槽Bには、水位センサ38、水流スイッチ39、温度センサ40及びポンプ41が設けられ、下流側端部が湯張り管27に接続された風呂循環回路42の上流側端部が連結されている。熱交循環回路28及び風呂循環回路42には、熱交換器43が取り付けられ、ポンプ37、41、水位センサ38、水流スイッチ39及び温度センサ40は、図3に示すように、制御手段25に接続されている。
【0019】
操作端末26で追焚き操作がなされると、制御手段25は、ポンプ37、41を作動して、貯湯タンク12の上部の湯水が給湯管20の一部及び熱交循環回路28を通って貯湯タンク12に戻るようにすると共に、浴槽B内の湯水が風呂循環回路42及び湯張り管27の一部を通って浴槽Bに戻るようにする。これによって、熱交循環回路28を流れる湯水と風呂循環回路42を流れる湯水とが熱交換器43により熱交換されて、風呂循環回路42を流れる湯水が加熱され、浴槽B内の湯水の温度が上昇する。
【0020】
水道管11内に水圧が生じている通常時は、第1の水栓13が開かれて湯水が出ると、あるいは、浴槽Bの湯張りがなされると、貯湯タンク12の上部から送り出された湯と同量の水が水道管11から貯湯タンク12の下部に流入する。そのため、通常時、貯湯タンク12内は湯水で満たされている。
【0021】
これに対し、水道水供給のインフラが機能しなくなると、水道管11の水圧が低下して、水道管11の水が貯湯タンク12の下部に給水されなくなる。水道管11の水が貯湯タンク12の下部に給水されない水道停止時には、第1の水栓13を開いても、電磁弁32を開いても、貯湯タンク12の湯水は貯湯タンク12の上部から給湯管20には出ず、第1の水栓13や浴槽Bには貯湯タンク12の湯水も水道管11の水も送られない。
【0022】
また、貯湯タンク12の下部には、図1に示すように、下流側端部が貯湯タンク12の上部及び下部に連結された沸上回路44の上流側端部が連結されている。沸上回路44は、図1図3に示すように、それぞれ制御手段25に接続されたポンプ45、加熱手段46及び切替手段47を有し、制御手段25によってポンプ45が作動されて、貯湯タンク12の下部から取得した湯水を、ポンプ45、加熱手段46及び切替手段47経由で貯湯タンク12の上部又は下部に戻す。
【0023】
加熱手段46は、制御手段25により作動させられて、沸上回路44を循環する湯水を加熱する。沸上回路44は、切替手段47より下流側が2つに分岐し、一方が貯湯タンク12の上部に接続され、他方が貯湯タンク12の下部に接続されている。切替手段47は、制御手段25からの指令信号を受信して、加熱手段46を通過した湯水の送り先を、貯湯タンク12の上部及び下部の一方から他方に切り替える。
【0024】
制御手段25は、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eの各計測温度を基に貯湯タンク12内の湯量(沸き上がっている湯の量)が少なくなったのを検知すると、ポンプ45及び加熱手段46を作動させて、貯湯タンク12の下部の湯水を沸上回路44に循環させ、貯湯タンク12の沸上げを行う。制御手段25は、加熱手段46を通過する湯水の温度を計測する加熱手段46に設けられた図示しない温度センサの計測温度が所定値未満の際に、切替手段47の湯水の送り先を貯湯タンク12の下部にして、低温の湯水が貯湯タンク12の上部へ流入するのを防止する。
【0025】
制御手段25は、加熱手段46を通過する湯水の温度が所定値以上になったことを検知したタイミングで、切替手段47の湯水の送り先を貯湯タンク12の上部に切り替え、加熱手段46により加熱された湯水が貯湯タンク12の上部に供給されるようにする。これにより、貯湯タンク12内には上部から高温(例えば、80℃)の湯が蓄えられる。なお、本実施の形態では、加熱手段46にヒートポンプユニットが採用され、切替手段47に三方弁が採用されている。
【0026】
また、沸上回路44のポンプ45及び加熱手段46の間の領域には、送水管49の上流側端部が接続され、送水管49の下流側端部に第2の水栓48が連結されている。水道停止時に、制御手段25は、操作端末26に所定の入力操作がなされることにより、ポンプ45を作動させて、図5に示すように、貯湯式給湯装置10を、貯湯タンク12内の湯水が送水管49経由で第2の水栓48から出る状態(以下、この状態を「非常時給水状態」とする)にする。よって、水道停止時に、貯湯式給湯装置10が非常時給水状態にされて、ポンプ45が作動して第2の水栓48に貯湯タンク12の湯水を送ることができ、第2の水栓48は開かれて貯湯タンク12の湯水を出すことができる。
【0027】
制御手段25は、切替手段47を、貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも沸上回路44の湯水を意図的に送らない状態にすることができ、これによって、沸上回路44は貯湯タンク12への湯水の戻しを止めた状態(以下、この状態を止水状態とする)となる。なお、切替手段47の設計によっては、止水状態時に、少量(切替手段47の送り側を全開状態にした場合の例えば10分の1の量)の湯水が貯湯タンク12の上部又は下部に送られる。
本実施の形態では、貯湯式給湯装置10を非常時給水状態にする際、沸上回路44は止水状態にされ、加熱手段46は非作動状態にされる。
【0028】
給湯管20には、負圧作動弁付き逃し弁(空気取得手段の一例)50を具備する接続管51が連結されている。負圧作動弁付き逃し弁50は、貯湯タンク12の沸上げに伴い膨張した貯湯タンク12内の湯水を給湯管20及び接続管51を介して外部に排出する機能、及び、貯湯タンク12内が負圧になった際に外部から空気を取り込み、当該空気を接続管51及び給湯管20を経由して貯湯タンク12内に流入させる機能を有している。
【0029】
第2の水栓48からの貯湯タンク12の湯水の出水に伴い、貯湯タンク12内は負圧になることから、外部の空気が負圧作動弁付き逃し弁50に取り込まれ接続管51及び給湯管20を経由して貯湯タンク12の上部に流入し、貯湯タンク12内には上部から空気が溜まる。よって、負圧作動弁付き逃し弁50は、第2の水栓48からの貯湯タンク12の湯水の出水に伴い貯湯タンク12に流入する外部の空気を取り込むこととなる。
【0030】
貯湯式給湯装置10は、操作端末26への所定の入力操作により、貯湯タンク12の沸上げ(加熱手段46の作動)、浴槽Bへの湯張り、及び、浴槽B内の湯水の追い焚きが禁止された非常時制限状態となる。本実施の形態では、操作端末26において、貯湯式給湯装置10を非常時制限状態にする入力操作と、貯湯式給湯装置10を非常時給水状態にする入力操作とが共通の釦でなされる。即ち、操作端末26への入力操作により、制御手段25はポンプ45を作動させる(以下、この操作端末26への入力操作をポンプ起動入力とする)。
【0031】
制御手段25は、同釦が一定時間(例えば、5秒間)継続的に押下(長押し)されることで、貯湯式給湯装置10を非常時制限状態とし、同釦が再度長押しされることで、貯湯式給湯装置10の非常時制限状態を(貯湯式給湯装置10が非常時給水状態であったなら、非常時給水状態も)解除する。非常時制限状態の貯湯式給湯装置10は、同釦に通常の押し操作(長押しではない押し操作)がなされることにより、制御手段25によって、非常時制限状態を維持した上で非常時給水状態となり、再度同釦に通常の押し操作がなされると非常時給水状態のみが解除される。
【0032】
水道停止時に第2の水栓48から貯湯タンク12の湯水が出されて、貯湯タンク12に溜まった空気は、通常時に戻って水道管11に水圧がかかるようになり、貯湯式給湯装置10の非常時制限状態が解除されても、貯湯タンク12内に留まっている。これは、負圧作動弁付き逃し弁50が貯湯タンク12内の空気を外部に放出できない設計になっているためである。
【0033】
貯湯タンク12の上部に空気が溜まっている状態で、第1の水栓13が開かれると(あるいは、浴槽Bの湯張りがなされると)、貯湯タンク12から湯水ではなく空気が出て、水量センサD(あるいは、水量センサH)を空気が通過する。ここで、水量センサD、Hは羽根車式であることから、水量センサD、Hを流れる流体の全部又はほとんど(例えば、全体の流量の95%以上)が空気の場合、水量センサD、Hは羽根車部が空回りし、場合によっては破損する。
【0034】
そこで、制御手段25は、水道停止時の第2の水栓48からの貯湯タンク12の湯水の出水に伴う貯湯タンク12への空気の流入の可能性を検出し、通常時に戻り第1の水栓13が開かれた際、混合弁Cの流入口C2の開度を予め定められた開度J(例えば、5%以上20%以下の範囲の開度)以上とする混合弁Cの制御を行う。以下、この混合弁Cの制御を混合弁Cによるセンサ保護制御と言う。
【0035】
具体的には、混合弁Cによるセンサ保護制御が作動中、操作端末26で設定された給湯温度の湯水を第1の水栓13に送るために、混合弁Cの流入口C2の開度を開度Jより小さくする必要があっても、制御手段25は流入口C2の開度を開度Jとする。一方、混合弁Cの流入口C2の開度を開度J以上の開度Rにすることによって操作端末26で設定された給湯温度の湯水を第1の水栓13に送ることが可能な場合、制御手段25は流入口C2の開度を開度Rとする。これによって、混合弁Cによるセンサ保護制御の作動中は常に水量センサDの空回りを防止可能な量の水が水道管11から混合弁C経由で水量センサDに送られるようにする。
【0036】
この点、操作端末26で浴槽Bの湯張り操作がなされた場合も同様であり、制御手段25は、水道停止時の第2の水栓48からの貯湯タンク12の湯水の出水に伴う貯湯タンク12への空気の流入の可能性を検出し、通常時に戻り浴槽Bに貯湯タンク12の湯水を送るにあたり、混合弁Gの流入口G2の開度を予め定められた開度K(例えば、5%以上20%以下の範囲の開度)以上とする混合弁Gの制御を行う。以下、この混合弁Gの制御を混合弁Gによるセンサ保護制御と言う。
【0037】
具体的には、混合弁Gによるセンサ保護制御が作動中、操作端末26で設定された湯張り温度の湯水を浴槽Bに送るために、混合弁Gの流入口G2の開度を開度Kより小さくする必要があっても、制御手段25は流入口G2の開度を開度Kとする。一方、混合弁Gの流入口G2の開度を開度K以上の開度Sにすることによって操作端末26で設定された湯張りの温度の湯水を浴槽Bに送ることが可能な場合、制御手段25は流入口G2の開度を開度Sとする。これによって、混合弁Gによるセンサ保護制御の作動中は常に水量センサHの空回りを防止可能な量の水が水道管11から混合弁G経由で水量センサHに送られるようにする。
【0038】
本実施の形態では、制御手段25は、操作端末26でのポンプ起動入力を検知して、第2の水栓48からの貯湯タンク12の湯水の出水に伴う貯湯タンク12への空気の流入の可能性を検出し、通常時に戻った際、混合弁Cによるセンサ保護制御及び混合弁Gによるセンサ保護制御を行う。操作端末26でポンプ起動入力があっても、第2の水栓48が開かれない限り、貯湯タンク12の湯水は第2の水栓48から出ず、貯湯タンク12には空気が流入しない。そのため、本実施の形態では、貯湯タンク12に空気が流入していなくても、混合弁Cによるセンサ保護制御及び混合弁Gによるセンサ保護制御が行われることがある。
【0039】
また、制御手段25は、混合弁Cによるセンサ保護制御及び混合弁Gによるセンサ保護制御のいずれか一方又は双方が作動中、以下に記載する条件1、2、3のいずれかが満たされることによって、混合弁Cによるセンサ保護制御及び混合弁Gによるセンサ保護制御を解除する。
【0040】
<条件1>
混合弁Cの流入口C1の開度を予め設定した開度U1以上とした状態で、貯湯タンク12の湯水を給湯管20に流し、温度センサ23で計測される温度が操作端末26で設定された給湯温度に対して±α℃以内に収まっていて、かつ、水量センサDによる計測値がV1以上になっていることを一定時間(例えば、30秒間)連続して検知したとき。
【0041】
<条件2>
混合弁Gの流入口G1の開度を予め設定した開度U2以上とした状態で、貯湯タンク12の湯水を湯張り管27に流し、温度センサ34で計測される温度が操作端末26で設定された湯張り温度に対して±α℃以内に収まっていて、かつ、水量センサHによる計測値がV2以上になっていることを一定時間(例えば、30秒間)連続して検知したとき。
【0042】
<条件3>
混合弁Cの流入口C1の開度を予め設定した開度U3以上とした状態で水量センサDで計測される流量の積算値、及び、混合弁Gの流入口G1の開度を予め設定した開度U4以上とした状態で水量センサHで計測される流量の積算値の合計が、予め設定されたW以上となったとき。
【0043】
本実施の形態では、開度U1、U2、U3、U4がそれぞれ5%以上90%以下の範囲の開度であり、α℃が0.5℃以上2℃以下の範囲であり、V1、V2がそれぞれ3L/分以上10L/分以下の範囲であり、Wが100L以上300L以下の範囲である。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、下流側端部に第2の水栓が連結された送水管の上流側端部を、沸上回路に接続せず、貯湯タンクの下部に直接接続してもよい。送水管の上流側端部を貯湯タンクの下部に直接接続する場合、貯湯タンクの下部の湯水を第2の水栓に送るポンプを送水管に設けてもよいし、そのようなポンプは設けず、第2の水栓から重力により貯湯タンクの湯水が出るようにしてもよい。
また、浴槽への湯張りを行えない設計の貯湯式給湯装置においては、給湯管に設けられた水量センサに対して混合弁によるセンサ保護制御が行われる。
【0045】
制御手段は、操作端末でのポンプ起動入力を検知して、第2の水栓からの貯湯タンクの湯水の出水に伴う貯湯タンクへの空気の流入の可能性を検出する必要はなく、例えば、第2の水栓からの貯湯タンクの湯水の出水に伴う貯湯タンクへの空気の流入の可能性の検出を、送水管に水量センサを設けて当該水量センサの計測値を基に行ってもよいし、貯湯タンク内の圧力を計測する圧力センサを設けて当該圧力センサの計測値を基に行ってもよい。但し、これらの場合、水量センサや圧力センサ等の追加が必要となる。
【符号の説明】
【0046】
10:貯湯式給湯装置、11:水道管、12:貯湯タンク、13:第1の水栓、14、14a、14b、14c、14d、14e:温度センサ、15:減圧弁、16:温度センサ、17、18:逆止弁、20:給湯管、21:逆止弁、23:温度センサ、25:制御手段、26:操作端末、27:湯張り管、28:熱交循環回路、29:逆止弁、32:電磁弁、33:逆止弁、34:温度センサ、36:逆止弁、37:ポンプ、38:水位センサ、39:水流スイッチ、40:温度センサ、41:ポンプ、42:風呂循環回路、43:熱交換器、44:沸上回路、45:ポンプ、46:加熱手段、47:切替手段、48:第2の水栓、49:送水管、50:負圧作動弁付き逃し弁、51:接続管、B:浴槽、C:混合弁、C1、C2:流入口、D:水量センサ、G:混合弁、G1、G2:流入口、H:水量センサ
図1
図2
図3
図4
図5