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特許7612575筋萎縮性側索硬化症を治療及び予防するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症を治療及び予防するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7125 20060101AFI20250106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20250106BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20250106BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20250106BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALN20250106BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20250106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20250106BHJP
【FI】
A61K31/7125 ZNA
A61K48/00
A61P21/02
C12N9/02
C12N9/99
C12Q1/26
C12Q1/68
C12N15/113 130Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021525191
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019065936
(87)【国際公開番号】W WO2020123783
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】62/779,916
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/807,603
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/840,879
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514198367
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ネストロフ, イヴァン アレクサンドロフ
(72)【発明者】
【氏名】ファーガソン, トビー
(72)【発明者】
【氏名】ノリス, ダニエル エー.
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513469(JP,A)
【文献】Lancet Neurology,2013年,Vol.12,pp.435-442
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 48/00
A61P 21/00
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C12Q 1/00- 1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行うための医薬組成物であって、前記医薬組成物がアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、
前記医薬組成物が、髄腔内投与のための医薬組成物であり、
前記医薬組成物が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量で投与され、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、
ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、
ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、
各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記医薬組成物。
【請求項2】
筋萎縮性側索硬化症を有するヒト対象において、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1タンパク質合成を低減させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物がアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、
前記医薬組成物が、髄腔内投与のための医薬組成物であり、
前記医薬組成物が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量で投与され、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、
ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、
ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、
各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記医薬組成物。
【請求項3】
前記筋萎縮性側索硬化症がSOD1遺伝子中の突然変異によって生じ、前記突然変異がA4Vである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記筋萎縮性側索硬化症がSOD1遺伝子中の突然変異によって生じ、前記突然変異、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S59、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が遺伝子検査によって同定される、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、4か月の経過にわたって前記ヒト対象へ少なくとも5回投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ヒト対象が、前記医薬組成物の負荷用量に続いて、前記医薬組成物の維持用量を投与され
前記負荷用量および前記維持用量が、それぞれ、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量を含み、
前記ヒト対象が3回の負荷用量を投与され、ここで、前記負荷用量が2週間の間隔で投与され、
前記維持用量が前記第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)第1の負荷用量の前記医薬組成物;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量の前記医薬組成物;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量の前記医薬組成物;及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用量の前記医薬組成物
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の負荷用量;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第2の負荷用量;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第3の負荷用量;及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の負荷用量;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第2の負荷用量;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第3の負荷用量;及び
(iv)前記第3の負荷用量の1か月後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物の滅菌調製物を含むシリンジまたはポンプであって、
前記シリンジまたは前記ポンプは、それを必要とするヒト対象への前記医薬組成物の髄腔内投与のためのものであり、
前記医薬組成物は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量で前記シリンジまたは前記ポンプを介して髄腔内投与され、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、
ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、
ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、
各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記シリンジまたは前記ポンプ。
【請求項12】
萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行うための医薬組成物であって、前記医薬組成物がアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含み、前記医薬組成物が、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与されることを特徴とし、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化17】
を有することを特徴とし、
前記医薬組成物が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の100mgの固定用量で投与される、前記医薬組成物。
【請求項13】
ト対象において、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1タンパク質合成を低減させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物がアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含み、前記医薬組成物が、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与されることを特徴とし、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化21】

を有することを特徴とし、
前記医薬組成物が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の100mgの固定用量で投与される、前記医薬組成物。
【請求項14】
前記筋萎縮性側索硬化症がSOD1遺伝子中の突然変異によって生じ、前記突然変異がA4Vである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記筋萎縮性側索硬化症がSOD1遺伝子中の突然変異によって生じ、前記突然変異、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S59、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が遺伝子検査によって同定される、請求項14またはに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ヒト対象が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩を投与される、請求項1~1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記塩がナトリウム塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記塩が、以下の構造:
【化25】

を有する、請求項17または18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ヒト対象が、前記医薬組成物の負荷用量に続いて、前記医薬組成物の維持用量を投与され
前記負荷用量および前記維持用量が、それぞれ、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量を含み、
前記ヒト対象が3回の負荷用量を投与され、ここで、前記負荷用量が2週間の間隔で投与され、
前記維持用量が前記第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される、
請求項119のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)第1の負荷用量;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用
通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の負荷用量;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第2の負荷用量;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第3の負荷用量;
及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の負荷用量;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第2の負荷用量;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第3の負荷用量;及び
(iv)前記第3の負荷用量の1か月後に投与される、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの100mgの固定用量である第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月14日に出願された米国仮出願第62/779,916号;2019年2月19日に出願された同第62/807,603号;及び2019年4月30日に出願された同第62/840,879号の利益を主張し、そのすべての内容はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、概して、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現の低減を、それを必要とするヒト対象(例えばヒトSOD1遺伝子の確定された突然変異を有する、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した成人)において行う、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の臨床使用のための投薬レジメンに関する。かかる方法は、SOD1の発現を阻害することによって、ALSを治療、予防、または改善するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
可溶性SOD1酵素(Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼとしても公知である)は、スーパーオキシドの過酸化水素(H)への不均化を触媒することによって、生体分子の酸化的損傷に対する防御を提供するスーパーオキシドジスムターゼの1つである(Fridovich,Annu.Rev.Biochem.,64:97-112(1995))。スーパーオキシドアニオン(O2-)は、主としてミトコンドリアにおける酸化的リン酸化のエラーによって産生される、有害な可能性のある細胞副産物である(Turrens,J.Physiol.,552:335-344(2003))。
【0004】
筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病としても公知である)は、いかなるときでも30,000人のアメリカ人に影響を与える破壊的な進行性神経変性疾患である。SOD1遺伝子中の突然変異は、上位及び下位の運動ニューロンの選択的変性によって特徴づけられる障害である、ALSの優性遺伝型と関連する(Rowland,N.Engl.J.Med.,2001,344:1688-1700(2001))。家族性ALSとSOD1遺伝子中のミスセンス突然変異との間に密接な遺伝的連鎖がある(Rosen,Nature,362:59-62(1993))。
【0005】
突然変異SOD1の毒性は、ALS病因に関与し得るプロセスである、活性酵素からの核保護を低減させる(核における機能喪失)初期の誤った折り畳み(機能獲得)から生じると考えられる(Sau,Hum.Mol.Genet.,16:1604-1618(2007))。ALSにおける運動ニューロンの進行性の変性は、最終的にはそれらの死を導く。運動ニューロンが死ぬと、筋肉の動きを開始し制御する脳の能力が失われる。随意筋活動が次第に影響を受けて、当該疾患の後期ステージにおける患者は、完全に麻痺する場合がある。
【0006】
現在のところ、かかる神経変性疾患を治療するための許容可能な選択肢が欠如している。したがって、かかる疾患の治療のための方法を提供することが本明細書における目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Fridovich,Annu.Rev.Biochem.,64:97-112(1995)
【文献】Turrens,J.Physiol.,552:335-344(2003)
【文献】Rowland,N.Engl.J.Med.,2001,344:1688-1700(2001)
【文献】Rosen,Nature,362:59-62(1993)
【文献】Sau,Hum.Mol.Genet.,16:1604-1618(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現を低減させるアンチセンスオリゴヌクレオチドの投薬レジメン、ならびにSOD1遺伝子中の突然変異が有るヒト対象において、SOD1の発現を阻害するための、及びALSを治療、予防または寛解するためのかかるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の使用に部分的に関する。
【0009】
第1の態様において、本開示は、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特色とする。方法は、約100mgまたは100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ(例えば髄腔内投与によって)投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0010】
第2の態様において、本開示は、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特色とする。方法は、約60mgまたは60mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ(例えば髄腔内投与によって)投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0011】
第3の態様において、本開示は、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特色とする。方法は、約40mgまたは40mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ(例えば髄腔内投与によって)投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0012】
第4の態様において、本開示は、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特色とする。方法は、約20mgまたは20mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ(例えば髄腔内投与によって)投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0013】
第5の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、約100mgまたは100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0014】
第6の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、約60mgまたは60mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0015】
第7の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、約40mgまたは40mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0016】
第8の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、約20mgまたは20mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物をヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0017】
上記の態様のうちのいくつかの実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異は、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである。一実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はA4Vである。別の実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はH46Rである。さらに別の実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はG93Sである。
【0018】
いくつかの実施形態において、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異は、遺伝子検査によって同定される。
【0019】
ある特定の実施形態において、上記の方法は、遺伝子検査によってヒトSOD1遺伝子中の突然変異を同定することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、4か月の経過にわたってヒト対象へ少なくとも5回(例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24回)投与される。
【0021】
ある特定の実施形態において、ヒト対象は、負荷用量(複数可)に続いて、維持用量(複数可)の医薬組成物を投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量が投与され、第2の負荷用量は、第1の負荷用量の約2週間後または2週間後に投与され、第3の負荷用量は、第2の負荷用量の約2週間後または2週間後に投与される(例えば負荷用量は1日目、15日目、及び29日目に投与される)。いくつかの事例において、維持用量は、第3の負荷用量の4週間後に開始して、約4週間毎にまたは4週間投与される(例えば1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月間)。
【0022】
ある特定の実施形態において、ヒト対象は、医薬組成物の3回の負荷用量に続いて、少なくとも1回の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回の)維持用量を投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、約2週間または2週間の間隔で投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、約14日間または14日間の間隔で投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の約4週間または4週間後に開始して、投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の1か月後に開始して、1か月毎に投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の28日後に開始して、28日毎に投与される。
【0023】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)第1の負荷用量の医薬組成物;
(ii)第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量の医薬組成物;
(iii)第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量の医薬組成物;及び
(iv)第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用量の医薬組成物
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0024】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量の、第1の負荷用量;
(ii)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第3の負荷用量の28日後に投与される、第1の維持用量
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0025】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量の、第1の負荷用量;
(ii)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で第3の負荷用量の1か月後に投与される、第1の維持用量
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0026】
第9の態様において、本開示は、SOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化1】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。105.9mgの化合物A(すなわちISIS 666853のノナデカナトリウム塩)は、100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0027】
第10の態様において、本開示は、SOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化2】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。63.5mgの化合物Aは、60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0028】
第11の態様において、本開示は、SOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化3】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。42.3mgの化合物Aは、40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0029】
第12の態様において、本開示は、SOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化4】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。21.2mgの化合物Aは、20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0030】
第13の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化5】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。105.9mgの化合物Aは、100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0031】
第14の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化6】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。63.5mgの化合物Aは、60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0032】
第15の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化7】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。42.3mgの化合物Aは、40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0033】
第16の態様において、本開示は、筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成またはヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法を提供する。方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化8】

を有し、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。21.2mgの化合物Aは、20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等である。投与される医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の塩、またはそれらの混合物を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、ヒト対象は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩を投与される。いくつかの実施形態において、塩はナトリウム塩である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩は、以下の構造:
【化9】

を有する。
【0035】
上記の態様のうちのいくつかの実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異は、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである。一実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はA4Vである。別の実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はH46Rである。さらに別の実施形態において、SOD1遺伝子中の突然変異はG93Sである。
【0036】
いくつかの実施形態において、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異は、遺伝子検査によって同定される。
【0037】
ある特定の実施形態において、上記の方法は、遺伝子検査によってヒトSOD1遺伝子中の突然変異を同定することをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、4か月の経過にわたってヒト対象へ少なくとも5回投与される。
【0039】
ある特定の実施形態において、ヒト対象は、負荷用量(複数可)に続いて、維持用量(複数可)の医薬組成物を投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量が投与され、負荷用量は2週間離され、例えば1日目、15日目、及び29日目である。いくつかの事例において、維持用量は、第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される(例えば1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月間)。
【0040】
ある特定の実施形態において、ヒト対象は、医薬組成物の3回の負荷用量に続いて、少なくとも1回の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回の)維持用量を投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、2週間の間隔で投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、14日間の間隔で投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の1か月後に開始して、1か月毎に投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の28日後に開始して、28日毎に投与される。
【0041】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)第1の負荷用量の医薬組成物;
(ii)第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量の医薬組成物;
(iii)第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量の医薬組成物;及び
(iv)第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用量の医薬組成物
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0042】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な、第1の負荷用量;
(ii)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;
及び
(iv)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第3の負荷用量の28日後に投与される、第1の維持用量
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0043】
ある特定の実施形態において、医薬組成物の負荷用量及び維持用量は、以下の:
(i)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な、第1の負荷用量;
(ii)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;
及び
(iv)100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、第3の負荷用量の1か月後に投与される、第1の維持用量
の通りに、ヒト対象へ投与される。
【0044】
別の態様において、本開示は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの滅菌調製物を含むシリンジまたはポンプを特色とする。シリンジまたはポンプは、20mg、40mg、60mg、または100mgの固定用量でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの髄腔内投与のために適合される。アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0045】
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実践または試験において、本明細書において記載されるものに類似するかまたは等価である方法及び材料を使用することができるが、例示的な方法及び材料が以下に記載される。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、それらの全体が参照によって援用される。矛盾する事例において、定義を含めて本出願が優先されるだろう。材料、方法、及び実施例は、単に説明的なものであり、限定を意図したものではない。
【0046】
本発明の他の特色及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、約100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目2)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、約60mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目3)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、約40mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目4)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、約20mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目5)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、約100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目6)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、約60mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目7)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、約40mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目8)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、約20mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で、医薬組成物を前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記方法。
(項目9)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異がA4Vである、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が遺伝子検査によって同定される、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
遺伝子検査によって前記SOD1遺伝子中の前記突然変異を同定することを含む、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記医薬組成物が、4か月の経過にわたって前記ヒト対象へ少なくとも5回投与される、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記ヒト対象が、前記医薬組成物の負荷用量に続いて、前記医薬組成物の維持用量を投与される、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記ヒト対象が3回の負荷用量を投与され、前記負荷用量が2週間の間隔で投与される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記維持用量が、前記第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)第1の負荷用量の前記医薬組成物;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量の前記医薬組成物;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量の前記医薬組成物;及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用量の前記医薬組成物
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量の、第1の負荷用量;
(ii)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第3の負荷用量の28日後に投与される、第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量の、第1の負荷用量;
(ii)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)約100mgの固定用量の前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量で前記第3の負荷用量の1か月後に投与される、第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目14に記載の方法。
(項目20)
アンチセンスオリゴヌクレオチドの滅菌調製物を含むシリンジまたはポンプであって、前記シリンジまたは前記ポンプが、約20mg、約40mg、約60mg、または約100mgの固定用量での前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの髄腔内投与のために適合され、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々が、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々が、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合が、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンが、5-メチルシトシンである、前記シリンジまたは前記ポンプ。
(項目21)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化17】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目22)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化18】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約60mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目23)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化19】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約40mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目24)
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化20】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約20mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目25)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化21】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目26)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化22】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約60mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目27)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化23】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約40mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目28)
筋萎縮性側索硬化症と関連するスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、SOD1タンパク質合成を低減させる方法であって、前記方法が、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、前記ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、以下の構造:
【化24】


を有し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記その塩が、約20mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される、前記方法。
(項目29)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異がA4Vである、項目21~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rである、項目21~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記SOD1遺伝子中の前記突然変異が遺伝子検査によって同定される、項目21~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
遺伝子検査によって前記SOD1遺伝子中の前記突然変異を同定することを含む、項目21~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記ヒト対象が、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩を投与される、項目21~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記塩がナトリウム塩である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの前記塩が、以下の構造:
【化25】


を有する、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記ヒト対象が、前記医薬組成物の負荷用量に続いて、前記医薬組成物の維持用量を投与される、項目21~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記ヒト対象が3回の負荷用量を投与され、前記負荷用量が2週間の間隔で投与される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記維持用量が、前記第3の負荷用量の4週間後に開始して、4週間毎に投与される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)第1の負荷用量の前記医薬組成物;
(ii)前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量の前記医薬組成物;
(iii)前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量の前記医薬組成物;及び
(iv)前記第3の負荷用量の28日または1か月後に投与される、第1の維持用量の前記医薬組成物
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な、第1の負荷用量;(ii)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;
及び
(iv)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第3の負荷用量の28日後に投与される、第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目36に記載の方法。
(項目41)
前記医薬組成物の前記負荷用量及び前記維持用量が、以下の:
(i)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な、第1の負荷用量;(ii)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第1の負荷用量の14日後に投与される、第2の負荷用量;
(iii)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第1の負荷用量の28日後に投与される、第3の負荷用量;及び
(iv)約100mgの前記アンチセンスオリゴヌクレオチドに同等で、前記第3の負荷用量の1か月後に投与される、第1の維持用量
の通りに、前記ヒト対象へ投与される、項目36に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】異なるヒトSOD1突然変異の有る患者についての平均罹患期間(症状開始からの年数)のグラフ図である。
図2】反復投与用量漸増(MAD)コホートにおいて観察された化合物Aの脳脊髄液(CSF)濃度の用量依存的増加を図示する。一番上の破線は100mgの用量、次の2つの破線は60及び40mgの用量を示し、最も下の破線は20mgの用量を示す。
図3】MADコホートにおいて観察されたCSFのSOD1濃度の用量依存的減少を示す。試験85日目で、一番上の円は20mg、次の下の円はプラセボ、次の下の円は60mg、次の下の円は40mg、及び最も下の円は100mgの化合物Aに対応する。
図4A】MADコホート中の患者の筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALFSFRS-R)における、ベースラインからのLS平均変化のプロットである。試験85日目で、一番上の円は40mgの化合物A、次の下の円は100mgの化合物A、次の下の円は60mgの化合物A、次の下の円は20mgの化合物A、及び最も下の円はプラセボに対応する。
図4B】MADコホート中の患者のパーセントで予測された静的肺活量(SVC)における、ベースラインからのLS平均変化のプロット(90%信頼区間)である。試験85日目で、一番上の円は60mgの化合物A、次の下の円は40mgの化合物A、次の下の円は100mgの化合物A、次の下の円は20mgの化合物A、及び最も下の円はプラセボに対応する。
図4C】MADコホート中の患者のハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)の全体のメガスコアにおける、ベースラインからのLS平均変化のプロット(90%信頼区間)である。試験92日目で、一番上の円は40mgの化合物A、次の下の円は100mgの化合物A、次の下の円は60mgの化合物A、次の下の円は20mgの化合物A、及び最も下の円はプラセボに対応する。
図5】プラセボまたは100mgの化合物Aのいずれかを投与された進行の速い突然変異の有る患者における、85日目までの、ALSFRS-R、SVC、HHDメガスコア、及びCSFのSOD1レベルのベースラインからの変化を示す。
図6】プラセボまたは100mgの化合物Aのいずれかを投与された進行の遅い突然変異の有る患者における、85日目までの、ALSFRS-R、SVC、HHDメガスコア、及びCSFのSOD1レベルのベースラインからの変化を示す。
図7】進行の速いSOD1突然変異の有る患者における、85日目までの、ベースラインからのpNFHレベルに対する100mgの化合物Aによる治療効果を示す。
図8】進行の遅いSOD1突然変異の有る患者における、85日目までの、ベースラインからのpNFHレベルに対する100mgの化合物Aによる治療効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の発現を低減させるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の投薬レジメン、及びヒトSOD1遺伝子の突然変異を有する成人において、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療、予防または寛解するためのかかるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の使用を特色とする。
【0049】
定義
「2’-O-メトキシエチル」(2’-MOE及び2’-OCHCH-OCH及びMOEでもある)は、フラノース環の2’位のO-メトキシ-エチル修飾を指す。2’-O-メトキシエチル修飾糖は、修飾糖である。
【0050】
「2’-MOEヌクレオシド」(2’-O-メトキシエチルヌクレオシドでもある)は、MOE修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0051】
「5-メチルシトシン」は、5’位へ結合されたメチル基により修飾されたシトシンを意味する。5-メチルシトシンは、修飾核酸塩基である。
【0052】
「ホスホロチオエート結合」は、ホスホジエステル結合が非架橋酸素原子のうちの1つを硫黄原子により置き換えることによって修飾されるヌクレオシド間の結合を意味する。ホスホロチオエート結合は修飾ヌクレオシド間結合である。
【0053】
物質の量の文脈における「約」は、指示値の±10%を意味する。したがって、約100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、90mg~110mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。時間的な単位(例えば約10日または約1週間)の文脈において、「約」は±3日を意味する。
【0054】
「髄腔内またはIT」は、脳及び脊髄を覆うクモ膜下の脳脊髄液の中への投与を意味する。
【0055】
「負荷用量」は、投与が開始され、薬物(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)の定常状態濃度が達成される投薬相の間に投与される用量を意味する。
【0056】
「維持用量」は、薬物(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)の定常状態濃度が達成された後の投薬相の間に投与される用量を意味する。
【0057】
「固定用量」は、対象において所望される治療濃度(例えば定常状態濃度)または効果を達成することが意図される、アンチセンスオリゴヌクレオチドのあらかじめ決定された量(例えば20mg、40mg、60mg、100mg)を指す。
【0058】
筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、皮質、脳幹、及び脊髄内で運動性ニューロンの損失をもたらす稀な神経変性疾患である。患者は、延髄筋、呼吸筋、及び随意筋における、筋肉の質量、体力、及び機能の進行性喪失に悩まされる。低下は避けられず、診断後に平均で2~5年で典型的には呼吸不全から死亡する。大多数の患者は散発性ALSを患うが、患者のわずかな割合(およそ2%)は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)における様々な突然変異によって引き起こされる遺伝型または家族型のALSを有する。1993年に最初に見出されて以来、180を上回るSOD1突然変異が、ALSのこの形態(SOD1 ALSと称される)を引き起こすことが報告されている。The Amyotrophic Lateral Sclerosis Online Genetics Database(ALSoD).Institute of Psychiatry,Psychology & Neuroscience.Published 2015;Rosen,Nature,364(6435):362(1993)。個別の突然変異についての疾患の進行は変動し、最も深刻な突然変異は15か月未満の生存である。突然変異がSOD1 ALSを引き起こすメカニズムは知られていないが、説得力のあるデーターから、SOD1活性の喪失ではなく、毒性の機能獲得が運動性ニューロン死をもたらす事象のカスケードを開始する引き金であることが示唆される(Bruijn et al.,Science,281(5384):1851-4(1998))。
【0059】
ALSのために認可された治療は、リルゾール(Rilutek(登録商標))及びエダラボン(Radicava(商標))である。リルゾールは、体力または障害における明らかな改善無しに、生存のわずかな増加(2~3か月)を提供する。エダラボンは、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)によって測定される機能低下を軽減する。エダラボンの生存に対する効果は、不明である。SOD1に特異的なALS治療は、利用可能ではない。
【0060】
スーパーオキシドジスムターゼ1
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)としても既知のスーパーオキシドジスムターゼ[Cu-Zn]は、染色体21に所在し、ヒトにおいてSOD1遺伝子によってコードされる酵素である。
【0061】
SOD1は、β-バレルを形成し、各々のサブユニット中に分子内ジスルフィド結合及び二核のCu/Zn部位を含有する32kDaのホモ二量体である。このCu/Zn部位は銅イオン及び亜鉛イオンを保持し、スーパーオキシドを過酸化水素及び二酸素へ不均化させることを触媒する役割を担う。
【0062】
SOD1は、身体中の遊離スーパーオキシドラジカルの破壊のための役割を担う3つのスーパーオキシドジスムターゼのうちの1つである。コードされるアイソザイムは可溶性の細胞質及びミトコンドリア膜間腔のタンパク質であり、ホモ二量体として作用して、天然に存在するが有害なスーパーオキシドラジカルを分子酸素及び過酸化水素へ変換する。次いで過酸化水素は、カタラーゼと呼ばれる別の酵素によって分解され得る。
【0063】
SOD1遺伝子中の少なくとも180の突然変異が、家族性ALSに関連していた(Conwit RA,J Neurol Sci.,.251(1-2):1-2(2006);Al-Chalabi A,Leigh PN,Curr.Opin.in Neurol.,13(4):397-405(2000);Redler RL,Dokholyan NV,Progress in Molecular Biology and Translational Science,107:215-62(2012))。しかしながら、野生型SOD1も、細胞ストレスの条件下で、散発性ALS事例の有意な割合(ALS患者の90%に相当する)に関与していた。ヒトSOD1中の最も頻繁な突然変異は、米国でA4V;日本でH46R;及びアイスランドでG93Sである。他の周知のヒトSOD1突然変異としては、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、及びG147Rが挙げられる。SOD1突然変異に基づく罹患期間には有意な不均一性がある(図1を参照)。実質的には、すべての公知のALSを引き起こすSOD1突然変異は、優性様式で作用し、SOD1遺伝子の単一の突然変異コピーは、当該疾患を引き起こすのに十分である。
【0064】
ヒトSOD1のアミノ酸配列は、UniProt P00441及びGENBANKアクセッション番号NP_000445で見出され、以下に提供される。
MATKAVCVLK GDGPVQGIIN FEQKESNGPV KVWGSIKGLT EGLHGFHVHE FGDNTAGCTS AGPHFNPLSR KHGGPKDEER HVGDLGNVTA DKDGVADVSI EDSVISLSGD HCIIGRTLVV HEKADDLGKG GNEESTKTGN AGSRLACGVI GIAQ(配列番号:2)
【0065】
ヒトSOD1をコードするヌクレオチド配列は、GENBANKアクセッション番号NM_000454.4で提供され、同様に以下に提供される(本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドによって認識される領域に下線が引かれる)。
【化10】

(配列番号:3)
【0066】
ISIS 666853
ISIS 666853は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)の(5’から3’の)配列を有する5-10-5のMOEギャップマーであり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。ISIS 666853は、以下の化学的表記法:mCes Aeo Ges Geo Aes Tds Ads mCds Ads Tds Tds Tds mCds Tds Ads mCeo Aes Geo mCes Teによって記載され;式中、
A=アデニン、
mC=5-メチルシトシン、
G=グアニン、
T=チミン、
e=2’-O-メトキシエチルリボース修飾糖、
d=2’-デオキシリボース糖、
s=ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、及び
o=ホスホジエステルヌクレオシド間結合である。ISIS 666853配列は、以下のように省略でも記述され得る。
【化11】
【0067】
下線が引かれた残基は、2’-MOEヌクレオシドである。P=Oの注釈は、リン酸ジエステル結合の所在位置を反映する。
【0068】
ISIS 666853は、以下の化学構造:
【化12】

によって図示される。
【0069】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、溶液中で、遊離酸形態、塩形態、またはそれらの混合物で存在し得ることが理解されよう。
【0070】
ISIS 666853のノナデカナトリウム塩(「化合物A」)
化合物Aは、ISIS 666853のノナデカナトリウム塩であり、SOD1 ALSに罹患した対象におけるSOD1タンパク質のレベルを低減する、SOD1メッセンジャーRNA(mRNA)のアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害物質である。SOD1 mRNA及び後続して毒性のSOD1タンパク質を低減させることは、SOD1 ALSに罹患した対象に治療利益を提供し得る。
【0071】
化合物Aの構造は、以下に提供される。
【化13】
【0072】
化合物Aの分子式は、C23029872Na191231915であり、分子量=7545.59amuを有する。
【0073】
化合物Aは、ヒトSOD1のmRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)の一部に相補的であり、ワトソン・クリック塩基対によって結合する。同族mRNAへの化合物Aのハイブリダイゼーション(結合)は、SOD1のmRNAのRNase-H1媒介性分解をもたらし、したがってSOD1タンパク質合成の量を低減する。RNase Hは、デオキシリボ核酸-リボ核酸(DNA-RNA)ヘテロ二重らせんを認識して二重らせんのRNA鎖を切断する、普遍的に発現される酵素(ヌクレアーゼ)である。SOD1 mRNAの3’-UTR領域へ結合することによって、化合物Aは、RNase H1をSOD1 mRNAへ選択的に標的化し、その切断を増進し、このことはSOD1の野生型及び突然変異体の両方の発現減少を導く。
【0074】
化合物Aは、SOD1 G93Aトランスジェニックマウスにおける生存期間中央値を有意に増加させた(マンテル・コックス、p<0.01)。SOD1 G93Aトランスジェニックマウスにおいて複合筋活動電位によって測定されるように、神経筋機能の用量依存的保護も引き起こした。
【0075】
コンジュゲートされたアンチセンスオリゴヌクレオチド
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、もたらされたアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを促進する、1つまたは複数の部分またはコンジュゲートへ共有結合され得る。典型的なコンジュゲート基としては、コレステロール部分及び脂質部分が挙げられる。追加のコンジュゲート基としては、炭水化物、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つまたは両方の末端へ概して結合されている1つまたは複数の安定化基を有して、特性(例えばヌクレアーゼ安定性等)を促進するように修飾もされ得る。安定化基には、キャップ構造が含まれる。これらの末端修飾は、末端核酸を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ分解から保護し、細胞内の送達及び/または局在化を支援することができる。キャップは、5’末端(5’キャップ)もしくは3’末端(3’キャップ)で存在し得るか、または両方の末端上に存在し得る。キャップ構造は当技術分野において周知であり、例えば反転デオキシ脱塩基キャップが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つまたは両方の末端をキャッピングしてヌクレアーゼ安定性を付与するのに使用され得る、さらなる3’安定化基及び5’安定化基としては、WO03/004602中で開示されるものが挙げられる。
【0076】
医薬組成物の製剤化のための組成物及び方法
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、医薬組成物または製剤の調製のために、薬学的に許容される活性のある物質または不活性な物質と混合され得る。医薬組成物の製剤化のための組成物及び方法は、投与経路、疾患の程度、または投与される用量が挙げられるがこれらに限定されない、多数の基準に依存する。
【0077】
SOD1核酸へ標的化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、好適な薬学的に許容される希釈物質または担体とアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を組み合わせることによって、医薬組成物中で使用され得る。薬学的に許容される希釈物質はとしては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。PBSは、非経口で送達される組成物中での使用に好適な希釈物質である。したがって、一実施形態において、SOD1核酸へ標的化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩、及び薬学的に許容される希釈物質を含む医薬組成物が、本明細書において記載される方法において用いられる。
【0078】
本明細書において記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、対象への髄腔内投与のために医薬組成物として製剤化され得る。
【0079】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、任意の薬学的に許容される塩、エステルもしくはかかるエステルの塩、またはヒトを含む動物への投与に際してその生物学的に活性のある代謝物質もしくは残渣を提供することが可能な(直接または間接的)任意の他のオリゴヌクレオチドを網羅する。したがって例えば、本開示は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩及び他の生物学的同等物にも関する。好適な薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
治療の方法
本開示は、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特色とする。方法は、固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドをヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約100mgまたは100mgである。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約60mgまたは60mgである。さらに他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約40mgまたは40mgである。他のいくつかの実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約20mgまたは20mgである。ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩の固定用量は、約105.9mgまたは105.9mgである。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩の固定用量は、約63.5mg、または63.5mgである。さらに他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩の固定用量は、約42.3mgまたは42.3mgである。他のいくつかの実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩の固定用量は、約21.2mgまたは21.2mgである。
【0081】
筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成を低減させる方法も提供される。方法は、固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドをヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約100mgまたは100mgである。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約60mgまたは60mgである。さらに他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約40mgまたは40mgである。他のいくつかの実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約20mgまたは20mgである。
【0082】
筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法も提供される。方法は、固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドをヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、CAGGATACATTTCTACAGCT(配列番号:1)からなり、ヌクレオシド1~5及び16~20の各々は、2’-O-メトキシエチルリボース修飾ヌクレオシドであり、ヌクレオシド6~15の各々は、2’-デオキシヌクレオシドであり、ヌクレオシド2~3、4~5、16~17、及び18~19の間のヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合であり、ヌクレオシド1~2、3~4、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、17~18、及び19~20の間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各々のシトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約100mgまたは100mgである。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約60mgまたは60mgである。さらに他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約40mgまたは40mgである。他のいくつかの実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの固定用量は、約20mgまたは20mgである。
【0083】
SOD1遺伝子中の突然変異と関連する筋萎縮性側索硬化症の治療または予防を、それを必要とするヒト対象において行う方法も提供され、方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを伴い、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化14】

を有する。
【0084】
ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約100mgまたは100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約60mgまたは60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約40mgまたは40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約20mgまたは20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。
【0085】
筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1タンパク質合成を低減させる方法も提供され、方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを伴い、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化15】

を有する。
【0086】
ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約100mgまたは100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約60mgまたは60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約40mgまたは40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約20mgまたは20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。
【0087】
筋萎縮性側索硬化症と関連するヒトSOD1遺伝子中の突然変異を有するヒト対象において、ヒトSOD1 mRNAレベルを低減させる方法も提供され、方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩を含む医薬組成物を、ヒト対象へ髄腔内投与によって投与することを伴い、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化16】

を有する。
【0088】
ある特定の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約100mgまたは100mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約60mgまたは60mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約40mgまたは40mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。他の実例において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、約20mgまたは20mgのアンチセンスオリゴヌクレオチドに同等な用量で投与される。
【0089】
いくつかの事例において、上記の固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回ヒト対象へ投与される。
【0090】
いくつかの事例において、本明細書において記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬組成物の一部分としてヒト対象へ投与される。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、約20mgの固定用量の(すなわち同等量の)アンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量でヒト対象へ投与される。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、約40mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量でヒト対象へ投与される。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、約60mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量でヒト対象へ投与される。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、約100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するのに十分な量でヒト対象へ投与される。
【0091】
ある特定の実施形態において、上記の固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩は、負荷用量(複数可)として投与される。いくつかの実施形態において、上記の固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、維持用量(複数可)として投与される。ある特定の実例において、上記の固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、負荷用量(複数可)、続いて維持用量(複数可)として投与される。負荷用量(複数可)は、例えば1週間毎に、2週間毎に、3週間毎に、または4週間毎に投与され得る。維持用量(複数可)は、最後の負荷用量後に、例えば1週間毎に、2週間毎に、3週間毎に、または4週間毎に投与され得る。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、1か月毎に投与される。
【0092】
ある特定の実施形態において、ヒト対象は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の3回の負荷用量に続いて、少なくとも1回の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12回またはそれ以上の)維持用量を投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、2週間の間隔で投与される。いくつかの事例において、3回の負荷用量は、14日間の間隔で投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量の4週間後に開始して、投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量後に開始して、1か月毎に投与される。いくつかの事例において、維持用量(複数可)は、第3の負荷用量後に開始して、28日毎に投与される。
【0093】
SOD1中の突然変異は、ALSに関連しているヒトSOD1遺伝子中の任意の突然変異であり得る。いくつかの事例において、突然変異は、進行の遅いALS疾患突然変異である。他の実例において、突然変異は、進行の速いALS疾患突然変異である。ある特定の実例において、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異は、A4V、H46R、G93S、A4T、G141X、D133A、V148G、N139K、G85R、G93A、V14G、C6S、I113T、D49K、G37R、A89V、E100G、D90A、T137A、E100K、G41A、G41D、G41S、G13R、G72S、L8V、F20C、Q22L、H48R、T54R、S591、V87A、T88デルタTAD、A89T、V97M、S105デルタSL、V118L、D124G、L114F、D90A、G12R、またはG147Rのうちの1つまたは複数である。1つの特定の実施形態において、ヒト対象は、ヒトSOD1遺伝子中のA4V突然変異を有する。別の特定の実施形態において、ヒト対象は、ヒトSOD1遺伝子中のH46R突然変異を有する。さらに別の特定の実施形態において、ヒト対象は、ヒトSOD1遺伝子中のG93S突然変異を有する。
【0094】
ある特定の実例において、SOD1遺伝子中の突然変異は、遺伝子検査によって同定される。
【0095】
いくつかの事例において、上で記載される方法は、遺伝子検査によってSOD1遺伝子中の突然変異を同定することを含む。
【0096】
ある特定の実施形態において、治療有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)のヒト対象への投与には、ヒト対象におけるSOD1レベルのモニタリングが付随して、ヒト対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の投与への応答を決定する。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の投与へのヒト対象の応答は、治療介入の量及び継続期間を決定するために医師によって使用され得る。ある特定の実施形態において、ヒトSOD1レベルは、CSF中でモニターされる。ある特定の実施形態において、ヒトSOD1レベルは、血漿中でモニターされる。
【0097】
ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)の投与は、SOD1タンパク質発現の低減をもたらす。ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)の投与は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲でSOD1タンパク質発現の低減をもたらす。ある特定の実施形態において、SOD1タンパク質発現の低減は、CSF中での低減である。ある特定の実施形態において、SOD1タンパク質発現の低減は、血漿中での低減である。
【0098】
ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)の投与は、ヒト対象における運動機能及び呼吸の改善をもたらす。ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の投与は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは99%、またはこれらの値の任意の2つによって定義された範囲で運動機能及び呼吸を改善する。
【0099】
ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)を含む医薬組成物は、ALSに罹患するかまたはそれに感受性のあるヒト対象(例えばALSに関連しているSOD1中の突然変異を有するヒト対象)の治療のための医薬品の調製のために使用される。
【0100】
送達デバイス
ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)は、髄腔内の送達のためのシリンジによりヒト対象へ投与される。別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)は、髄腔内の送達のためのポンプによりヒト対象へ投与される。したがって、本開示は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)の滅菌調製物を含むポンプまたはシリンジも提供する。シリンジまたはポンプは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の髄腔内投与のために適合させることができる。いくつかの事例において、シリンジまたはポンプは、固定用量(複数可)(例えば約20mgもしくは20mg、約40mgもしくは40mg、約60mgもしくは60mg、または約100mgもしくは100mg)のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達する。本開示は、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)を含む医薬組成物の滅菌調製物を含むポンプまたはシリンジも提供する。シリンジまたはポンプは、医薬組成物の髄腔内投与のために適合させることができる。いくつかの事例において、シリンジまたはポンプは、固定用量(複数可)(例えば約20mgもしくは20mg、約40mgもしくは40mg、約60mgもしくは60mg、または約100mgもしくは100mg)の医薬組成物のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達する。特定の実施形態において、ポンプまたはシリンジは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩の滅菌調製物を含み、シリンジまたはポンプは、20mg、40mg、60mg、または100mgの固定用量のアンチセンスオリゴヌクレオチドでのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその塩(例えば化合物A)の髄腔内投与のために適合される。
【0101】
アッセイ
RNA単離
RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+ mRNAに対して遂行され得る。RNAは、当技術分野において周知の方法を使用して(例えば製造者の推奨プロトコルに従ってTRIZOL Reagent(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して)調製される。
【0102】
標的レベルまたは発現の阻害の分析
SOD1核酸のレベルまたは発現の阻害は当技術分野において公知の様々な手法でアッセイされ得る。例えば、標的核酸レベルは、例えばノーザンブロット分析、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または定量的リアルタイムPCRによって定量され得る。RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+ mRNAに対して遂行され得る。RNA単離の方法は、当技術分野において周知である。ノーザンブロット分析も、当技術分野において常用される。定量的リアルタイムPCRは、商業的に入手可能なABI PRISM 7600、7700、または7900 Sequence Detection System(PE-Applied Biosystems、Foster City、CAから利用可能であり、製造者の指示に従って使用される)を使用して、好都合に達成され得る。
【0103】
標的RNAレベルの定量的リアルタイムPCR分析
SOD1 RNAレベルの定量は、ABI PRISM 7600、7700、または7900 Sequence Detection System(PE-Applied Biosystems、Foster City、CA)を製造者の指示に従って使用する定量的リアルタイムPCRによって達成され得る。定量的リアルタイムPCRの方法は、当技術分野において周知である。
【0104】
リアルタイムPCRの前に、単離RNAに逆転写酵素(RT)反応を行い、相補DNA(cDNA)を生成し、次いでそれはリアルタイムPCR増幅のための基質として使用される。RT及びリアルタイムPCRの反応は、同じサンプルウェル中で連続して遂行される。RT及びリアルタイムPCRの試薬は、Invitrogen(Carlsbad、CA)から得られる。RTリアルタイムPCR反応は、当業者に周知の方法によって実行される。
【0105】
リアルタイムPCRによって得られた遺伝子(またはRNA)標的量は、その発現が一定の遺伝子(シクロフィリンA等)の発現レベルを使用して、またはRIBOGREEN(Invitrogen,Inc.、Carlsbad、CA)を使用して全RNAを定量することによってのいずれかで、正規化される。シクロフィリンA発現は、標的と同時に(マルチプレックス化)または分離して実行されることによるリアルタイムPCRによって定量される。全RNAは、RIBOGREEN RNA定量試薬(Invitrogen,Inc.、Eugene、OR)を使用して定量される。RIBOGREENによるRNA定量の方法は、Jones,L.J.,et al(Analytical Biochemistry,1998,265,368-374)中で教示される。CYTOFLUOR 4000機器(PE Applied Biosystems)が、RIBOGREEN蛍光の測定に使用される。プローブ及びプライマーは、SOD1核酸にハイブリダイズするようにデザインされる。リアルタイムPCRプローブ及びプライマーをデザインする方法は、当技術分野において周知であり、ソフトウェア(PRIMER EXPRESS Software(Applied Biosystems、Foster City、CA)等)の使用が挙げられ得る。
【0106】
タンパク質レベルの分析
SOD1核酸のアンチセンス阻害は、SOD1タンパク質レベルを測定することによって査定され得る。SOD1のタンパク質レベルは、免疫沈降、ウエスタンブロット分析(イムノブロット)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、定量的タンパク質アッセイ、タンパク質活性アッセイ(例えばカスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織化学、免疫細胞化学、または蛍光活性化細胞選別(FACS)等の当技術分野において周知の様々な手法において評価または定量され得る。標的に向けられた抗体は同定され、様々な供給源(抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation、Birmingham、MI)等)から得られ得るか、または当技術分野において周知の従来のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体の生成方法により調製され得る。ヒトSOD1の検出に有用な抗体は、商業的に入手可能である。
【0107】
SOD1突然変異についての試験
ALSについての1つの根本にある遺伝的原因は、ヒトSOD1遺伝子中の突然変異(複数可)である。したがって、ALSに罹患するかまたはそれに感受性のある対象の同定は、当技術分野において公知のアッセイを使用する、対象のSOD1遺伝子の遺伝子試験(例えば遺伝子シーケンス等)によって遂行され得る。ヒトSOD1中の少なくとも180の突然変異が、ALSに関連していることが当技術分野において公知である。
【0108】
対象のALS疾患への感受性の分析は、ALSについての対象の家族歴の分析によっても遂行され得る。家族歴の分析としては、ALSが報告されている3世代系図、家族メンバーの医療記録及び検死研究の精査、ならびに常染色体優性パターンのSOD1突然変異の同定が挙げられ得る。
【0109】
以下の実施例は、いかなる手法でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0110】
実施例1:試験デザイン
化合物Aは、実施されている臨床試験において調査中である。試験は、SOD1 ALS患者における無作為化・プラセボ対照・単回投与用量漸増(SAD)及び反復投与用量漸増(MAD)研究を含む。MAD部分において、参加者に、およそ3か月にわたって5用量の試験薬を投与した。50名の参加者を無作為化して(1コホートあたり3:1)、20mg、40mg、60mgもしくは100mgの化合物A、またはプラセボを投与した。1コホートあたり化合物Aにより治療された1~4名の間の参加者は、報告されたSOD1突然変異を有しており、これは進行の速いもの(主としてA4V)と演繹的に判断された。
【0111】
実施例2:安全性プロファイル
試験において、70名の患者のうちの66名(94%)は、少なくとも1つの有害事象(AE)を経験し、その大部分は軽度または中程度のグレードであった。化合物Aを投与した3名以上の参加者において起こる最も一般的なAEは、頭痛(n=16)、処置痛(n=14)、及び腰椎穿刺後症候群(n=13)であった。7名の患者が重篤有害事象(SAE)を経験し、そのうちの3例は致死的事象であった。最も高い用量群(100mgの化合物A)においてSAEは報告されなかった。6名の対象には、化合物Aに関連しないと査定され、且つALSまたは併発症に関連すると思われるSAEがあった。すべての致死的事象は、関連しないと査定された。1名の患者には、CSF白血球増加のSAE、及び化合物Aに関連すると査定されたCSFタンパク質増加があった。検査所見の異常は化合物Aによる継続的な投薬にもかかわらず解消し、患者は試験を完了した。重篤有害事象は、試験された最高用量の100mgにおいて報告されなかった。
【0112】
実施例3:薬物動態学及び薬力学
化合物Aの血漿(図示せず)及びCSF濃度中の用量依存的増加は、SAD(図示せず)及びMADコホート(図2)において観察された。1及び85日目の測定で、化合物Aの血漿中濃度は用量比例的であったが、CSF中の化合物Aの曝露は用量比例的な応答よりも低いものを示した。CSFのSOD1濃度のベースラインから低減は、40mgの複数用量レベル及びその上(すなわち60mg及び100mg)で観察され、それは投薬量とともに増加し、100mgの複数用量群において最大で36%の平均低減であった(図3)。CSFのSOD1のベースラインからの低減は、100mgの用量群中のすべての参加者において観察された。最大のSOD1低減は最後の用量でまたはその直後に観察され、5用量を超える連続的な投薬がさらなる低減をもたらし得ることが指摘された。前臨床データーに基づくモデルは、100mgの化合物AがSOD1レベルを脊髄において>99%及び皮質において約25~30%有効に低減することを示唆する。
【0113】
実施例4:臨床観察
有効性を、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALFSFRS-R)、静的肺活量(SVC)、及びハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)スケールを含む複数のスケールに対して、複数のタイムポイントで査定した。すべてのコホートにおいて、化合物A治療群は、プラセボ治療群に比較して、より高い(すなわちより良好な)スコアを有していた(図4A~4C)。85日目までの、100mgの用量群(N=10)での化合物Aにより治療された参加者のALSFRS-Rスコアのベースラインからの平均変化は、-1.1であり、プラセボにより治療された参加者(N=12)は-5.6であり、4.4ポイントの差であった。速く進行することが公知のSOD1突然変異(例えばA4V)の有る参加者において、100mgの用量群での化合物Aにより治療された参加者とプラセボにより治療された参加者との間で著しい差が観察された。これらの進行の速い参加者において、85日目までの、ALSFRS-Rのベースラインからの変化の平均差は10ポイント近づいた(図5)。治療効果は、進行の速い参加者(図5)及び進行の遅い参加者(図6)の両方における複数の臨床スケール及びCSFのSOD1低減にわたって一貫していると思われる。参照フレームとして、6か月でのALSFRS-Rの差は、ALSにおける中心的な試験であるエダラボンにおいて2.5ポイントであった。
【0114】
総合すると、本試験は、化合物AがSOD1 ALSに罹患した対象にとって安全且つ有効な治療であることを実証した。このことは、特に100mgの用量群において、化合物Aにより治療された、進行の速い突然変異サブタイプ(主としてA4V)の有る対象(有効な治療の非存在下において、急速な低下が予想される)の転帰によって最も強く補強される。上で指摘されるように、有効性を、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)、静的肺活量(SVC)、及びハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)を含む複数のスケールに対して、複数のタイムポイントで査定した。これらの結果から、100mgの化合物Aの用量群における3つの臨床的機能エンドポイントの各々について、プラセボ群に比較して、はるかに少ない低下が示される。
【0115】
実施例5:CSFのリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNFH)レベル
進行の速いSOD1突然変異の有る患者において、化合物Aによる治療は、プラセボに比較して、CSFのpNFHレベルの低減、及び臨床的低下の減速をもたらした。100mgの化合物A群とプラセボ群との間の85日目のpNFHレベルのより大きな差が、他のSOD1突然変異の有る患者(図8)に比較して、進行の速いSOD1突然変異の有る患者(図7)において観察された。
【0116】
他の実施形態
本発明はその詳細な記載と併用して記載されてきたが、先の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例証し限定しないことを意図するものである。他の態様、利点、及び修飾は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007612575000001.app