(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】選択的付加製造装置用のスロットを有するナット
(51)【国際特許分類】
B22F 12/50 20210101AFI20250106BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20250106BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20250106BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250106BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/28
B33Y30/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021532313
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2019083959
(87)【国際公開番号】W WO2020115271
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-09
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】セプレット デニス
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102691711(CN,A)
【文献】英国特許出願公開第02054787(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0126157(US,A1)
【文献】特開平09-137818(JP,A)
【文献】特開平06-010935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 12/50
B29C 64/153
B29C 64/205
B65G 65/30
F16B 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的付加製造装置用のストリップ(33)を動かすナット(1)を備えたシステム(30)であって、
前記ナット(1)が第1の軸線(A)に沿って延びるネジ穴(2)を有し、
前記ナット(1)は、前記ナット(1)の外面(4)から前記ネジ穴(2)の内面(5)まで前記第1の軸線(A)に直交する第2の軸線(B)に沿って前記ナットの厚さを貫通して延びるスロット(3a、3b)を備え、
前記スロット(3a、3b)は、前記ネジ穴(2)の少なくとも1つのネジピッチ(6)を横切って、前記第1の軸線(A)を通過する平面に沿って延
び、
前記ナット(1)が、前記ストリップ(33)に対して回転しないように前記ストリップ(33)に固定され、
前記システム(30)は、前記ナット(1)の前記ネジ穴(2)に係合するネジ山を含むネジ(35)を備え、前記ナットの前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)に関して前記ストリップ(33)の180度反対に位置する、
ことを特徴とする
システム(30)。
【請求項2】
前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)に対して直交する前記ナット(1)の端部(7a、7b)から前記第1の軸線(A)に沿って延びる、
請求項1に記載の
システム(30)。
【請求項3】
各々が前記ナット(1)の1つの端部(7a、7b)から前記第1の軸線(A)に沿って延びる、2つのスロット(3a、3b)を備える、
請求項1又は2に記載の
システム(30)。
【請求項4】
前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)及び前記第2の軸線(B)に対して直交する第3の軸線(C)に沿った、作動環境内に浮遊する粒子の最大サイズよりも少なくとも3倍大きな幅を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
システム(30)。
【請求項5】
前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)及び前記第2の軸線(B)に対して直交する第3の軸線(C)に沿った、500マイクロメータから10000マイクロメータの間の幅を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
システム(30)。
【請求項6】
前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)及び前記第2の軸線(B)に対して直交する第3の軸線(C)に沿った、1000マイクロメータから2000マイクロメータの間の幅を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の
システム(30)。
【請求項7】
前記ナット(1)の前記外面(4)は、前記第1の軸線(A)に沿って延びる円筒である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の
システム(30)。
【請求項8】
前記ナット(1)の前記外面(4)は、円筒であり、さらに前記第1の軸線(A)に沿って延びる2つの溝(9a、9b)を有し、前記溝(9a、9b)の各々は、前記第2の軸線(B)に平行な第1の矩形及び前記第1の軸線(A)および第2の軸線(B)に直交する第3の軸線(C)に平行な第2の矩形によって形成され、前記2つの溝は、前記スロット(3a、3b)の180度反対の区域に位置する、
請求項7に記載の
システム(30)。
【請求項9】
前記ナット(1)が前記ストリップ(33)に対して前記第1の軸線(A)の周りで回転するのを防止するように、前記ナット(1)の前記スロット(3a、3b)に収容されるように設計されたピン(11)を備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム(30)。
【請求項10】
前記ナット(1)が請求項8のナットであり、
前記ストリップ(33)は、その下部に、前記2つの溝(9a、9b)の間に位置する前記ナット(1)の部分(10)を受け入れるように設計された凹部を備える、
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム(30)。
【請求項11】
前記ストリップ(33)にしっかり固定され、十分な機械的な遊びでもって前記ナット(1)を囲み、前記ナットが前記ネジ(35)に取り付けられる場合に、前記ナット(1)の自己整列を可能にするように設計されたハーフシェル(12)を備える、
請求項
1から10のいずれか1項に記載の動かすためのシステム(30)。
【請求項12】
請求項9から
11のいずれか1項に記載の動かすためのシステム(20)を有する選択的付加製造装置(21)。
【請求項13】
請求項1
2に記載の選択的付加製造装置(21)の使用方法であって、付加製造は、付加製造用の粉体に基づいて実行され、前記スロット(3a、3b)は、前記第1の軸線(A)及び前記第2の軸線(B)に対して直交する第3の軸線(C)に沿った、前記付加製造用の粉体の粒子の最大サイズよりも少なくとも3倍大きな幅を有する、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、選択的付加製造分野に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的付加製造は、粉末材料(金属粉末、セラミック粉末など)の連続層における選択領域を圧密化することによって3次元物体を形成するものである。圧密化領域は、3次元物体の連続断面に対応する。圧密化は、例えば、エネルギー源を使用して行われる完全な又は部分的な選択的溶融によって層毎に行われる。
【0003】
粉末材料又は粉体は、スライド内を摺動するように設計されたストリップを使用して粉体容器から製造ゾーンに運ぶことができる。
【0004】
一部の粉体は、浮遊状態で周囲大気の中に入る場合があるので、作業環境は、装置の機械構成部品にとって有害である。このことは、ストリップのスライド内での移動などの、移動伝達装置に含まれる構成部品に特に当てはまる。
【0005】
従来からストリップを動かすためにネジ-ナットシステムを使用することは知られている。環境内に浮遊する物質によってネジとナットとの間の間隙が閉塞される。これらの粉体の堆積は、ネジ-ナットシステムの機械的な遊びを減じ、結果的に遊びを無くする。構成部品の頻繁な交換が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ストリップを動かすためのシステムは、浮遊する材料粉体を含む環境で作動する場合により長い耐用年数を示す必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の全体的な目的は、従来技術の制限を解消することである。
詳細には、この目的は、浮遊する材料粉体を含む環境で作動する場合により長い耐用年数を示す、ストリップを動かすためのシステムを提供することである。
【0008】
特にこの目的のために、本発明は、選択的付加製造装置に粉体を運ぶためにストリップを動かすためのナットを提供し、ナットは、第1の軸線に沿って延びるネジ穴を有し、ナットは、ナットの外面からネジ穴の内面までナットの厚さを貫通して延びるスロットを備え、スロットは、ネジ穴の少なくとも1つのネジピッチを横切って、第1の軸線を通過する平面に沿って延びる。
【0009】
このようなナットは、好都合には、様々な特徴が単独で又は組み合わせて追加される。すなわち、
-第1の軸線に対して直交するナットの端部から第1の軸線(A)に沿って延びるスロット、
-各々がナットの1つの端部から第1の軸線に沿って延びる2つのスロット、
-スロットは、第1の軸線及び第2の軸線に対して直交する第3の軸線に沿った、作動環境内に浮遊する粒子の最大サイズよりも少なくとも3倍大きな幅を有する、
-スロットは、第3の軸線に沿った、500マイクロメータから10000マイクロメータの間の幅を有する、
-スロットは、第3の軸線に沿った、1000マイクロメータから2000マイクロメータの間の幅を有する、
-ナットの外面は、第1の軸線に沿って延びる円筒である、
-ナットの外面は、円筒であり、さらに第1の軸線に沿って延びる2つの溝を有し、溝の各々は、第2の軸線に平行な第1の矩形及び第3の軸線に平行な第2の矩形によって形成され、2つの溝は、スロットの180度反対の区域に位置する。
【0010】
本発明は、上記のナットと、ナットがこれに対して回転するのを防止するようにナットが固定されたストリップとを備える、選択的付加製造装置用のストリップを動かすためのシステムであって、ストリップを動かすためのシステムは、ナットのネジ穴に係合するネジ山を含むネジを備え、ナットのスロットは、第1の軸線に関してストリップの180度反対に位置する。
【0011】
このストリップを動かすためのシステムは、好都合には、様々な特徴が単独で又は組み合わせて追加される。すなわち、
-ナットがストリップに対して第1の軸線の周りで回転するのを防止するように、ナットのスロットに収容されるように設計されたピン、
-ストリップは、その下部に、2つの溝の間に位置するナットの部分を受け入れるように設計された凹部を備える、
-ストリップにしっかり固定され、十分な機械的な遊びでもってナットを囲み、ナットがネジに取り付けられる場合に、ナットの自己整列を可能にするように設計されたハーフシェル(12)。
【0012】
本発明は、上記のストリップを動かすためのシステムを有する、3次元物体の選択的付加製造のための装置に関連し、さらにこのような装置の使用方法であって、付加製造は、付加製造用の粉体に基づいて実行され、スロットは、第1の軸線及び第2の軸線に対して直交する第3の軸線に沿った、付加製造用の粉体の粒子の最大サイズよりも少なくとも3倍大きな幅を有する使用方法に関連する。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、単なる例示でありかつ非限定的であり、添付図面と併せて読む必要がある以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】付加製造装置内で粉末材料を分配するためのシステムの実施形態の概略図である。
【
図2A】本発明の1つの態様による選択的付加製造装置のための図を示す。
【
図2B】本発明の1つの態様による選択的付加製造装置のための図を示す。
【
図2C】本発明の1つの態様による選択的付加製造装置のための図を示す。
【
図2D】本発明の1つの態様による選択的付加製造装置のための図を示す。
【
図3】本発明の1つの態様による選択的付加製造装置のためのストリップを動かすためのシステムの実施形態の概略図である。
【
図4】本発明の可能性のある1つの実施形態によるストリップを動かすためのシステムを有する選択的付加製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ストリップを動かすためのシステム
図1はストリップ33を動かすためのシステム26の一実施形態を示す。
システム26は、ノズル36を通る粉体量を計量するために作られた計量装置31を備える。
【0016】
ストリップ33は、ネジ35の作用下でスライド32の中を動くことができる。ストリップ33は、ネジ35の方向に並進するようになっている。ストリップを動かすための特にナットを備えるシステム30によって、ネジ35の回転は、スライド32の中でのストリップ33の並進運動を引き起こす。
【0017】
スライド32は、製造ゾーンの近くに位置し、計量装置31と端部37との間に延び、端部37は、ストリップの並進移動を制限する。
充填段階の間に、ストリップ33は、ノズル36の下に移動する。ノズル36が所定量の粉体を分配する間に、ストリップ33は、粉体層がストリップ33上に堆積するように端部37の方向に移動する。
【0018】
粉体がこの目的で設けられたストリップ33全体の上に堆積されると、ストリップは、端部37に移動してこれに当接する。この位置で、ストリップ33を覆う粉体層は、製造ゾーン及び製造される物体に面し、物体の最後に製作された層の上に分散させることができる。
【0019】
選択的付加製造装置のためのナット
図2A、2B、2C、2Dは、選択的付加製造装置のためのナットを示す。
ナット1は、第1の軸線Aに沿って延びるネジ穴2を有する。
図2Aは、軸線Aに対して直交するナット1の端部7aの図である。
【0020】
図2Aには、第1の軸線Aに対して直交する第2の軸線B、並びに第2の軸線B及び第1の軸線Aに対して直交する第3の軸線Cが示されている。
図2Aの2つの矢印Dは、第2の軸線Bの沿ったナット1を通る断面を示す。この断面は
図2Bに示される。
【0021】
図2Bは、第1の軸線A及びネジ穴2を示し、ネジ穴のネジ山が示されている。ネジ山の中の2つの連続する点の間の距離6は、ネジピッチ6を表す。
ナット1の外面4は、第1の軸線Aに関して半径方向外側であるナット1の表面である。
ナット1の内面5は、第1の軸線Aに関して半径方向内側であり、ネジ穴のネジ山によって定められた表面に対応するナット1の表面である。
【0022】
ナット1は、ネジ穴2の少なくとも1つのネジピッチ6を横切って第1の軸線Aに沿って延びるスロット3a、3bを備え、このスロットは、ナット1の外面4からネジ穴2によって定められた内面5まで、第2の軸線Bに沿ってナットを貫通して延びる。
スロット3a、3bは、第2の軸線Bの方向でネジ穴2の内部空間とナット1の外部空間を連通状態に置く。
【0023】
付加製造装置の内部で、スロット3a、3bがナット1の底部に向かって垂直面に位置付けられるように、ナット1をネジ35の上に配置することができる。粉末材料の堆積物、換言するとネジ35とナット1との間の間隙を塞ぐ粉体粒は、表面5に沿ってスロット3a、3bに向かって運ぶことができる。次に、堆積物は、重力の下でスロット3a、3bの中に入り、間隙から離れる。これは、ネジ-ナットシステムの機械的な遊びの減少及び排除を制限する。これにより、浮遊する付加製造粉体を含有する環境内でのネジ-ナットシステムの耐用年数が延びる。
【0024】
スロット3a、3bは、好都合には、ネジの回転エネルギーの一部がナットの並進エネルギーに変換されるのを妨げないように、ナットのネジ山の全長に沿って延びない場合がある。
【0025】
スロットがこれに沿って延びない第1の軸線Aに沿ったナット1の長さは、ネジ穴2に取り付けられたネジがこれ以上ナット1を変形させない又は開かないように十分に長い必要があり、又はネジの回転エネルギーをナットの並進エネルギーに変換するのを保証するために十分に長い必要がある。
【0026】
ネジ穴2は、1又は2以上のフライトを備えることができる。いずれの場合でも、スロット3a、3bは、ネジ穴2の各フライトの少なくとも1つのネジピッチ6を横切って第1の軸線Aに沿って延びる。これにより、ネジとナットとの間の間隙を塞ぎかつ表面5に沿って運ばれる粉体粒の全ての軌道が、スロット3a、3bを通過するのを保証することができる。
【0027】
図2Bは、ナット1の端部7a及びその反対端の端部7bを示す。2つの端部7a、7bの間の距離は、ナット1のネジ穴2の長さに対応する。
ナット1のスロット3a、3bは、好都合には、ナット1の端部7aから又は端部7bから第1の軸線Aに沿って延びることができる。端部7a及び7bの両方は、第1の軸線Aに対して直交する平面である。
【0028】
この状況で、スロット3a、3bは、端部7a又は端部7bに見える。スロット3a、3bは、ネジ穴2の内部空間とナット1の外部空間を、第2の軸線Bに沿うが
図2Bの切断面における斜め方向でも連通状態に置く。
【0029】
このことは、スロット3a、3bが付加製造装置のフロア又は底部に向かって垂直面に位置するようにナット1が付加製造装置の中に配置される場合、スロット3a、3bの中に重力の下で入ることができる堆積物の数を増やすことを可能にする。堆積物を外側に向かって排出することができる角度は、この状況ではより多い。
【0030】
ナットは、好都合には、各々がナット1の1つの端部7a、7bから第1の軸線Aに沿って延びる2つのスロット3a、3bを備えることができる。
間隙に堆積した粉体堆積物を排出するためにナット1が付加製造装置の内部に配置される状況では、2つのスロットの存在により、堆積物を排出することができるネジ領域が増える。従って、排出される堆積物の数が増える。
【0031】
このようなナットは
図2Bに示されており、2つのスロット3a及び3bが示されている。これらのスロットの間には、ナットの材料厚さ8が残っている。この厚さ8は、ネジ穴2に取り付けられたネジがこれ以上ナット1を変形させない又は開かないように十分に長い必要があり、又はネジの回転エネルギーをナットの並進エネルギーに変換するのを保証するために十分に長い必要がある。
【0032】
図2Cは、2つのスロット3a、3b及び材料厚さ8の側から第2の軸線Bに沿ったナット1の底面図を示す。スロット3aは、端部7aから延びるように示され、スロット3bは、端部7bから延びるように示されている。
図2Dは、
図2A及び2Cで構成されるナット1の斜視図を示す。スロット3a、3bは、作業環境内で浮遊して存在する粉体の特性に適応する第3の軸線Cに沿った幅を有する。
一般に、付加製造装置の環境内で、従ってナットの環境内で浮遊する粉体粒の大きさは、0から200マイクロメータの間である。
【0033】
スロット3a、3bは、第3の軸線Cに沿った幅が粉体粒の最大直径の3倍よりも大きいように設計することができる。このように、スロット内に存在する3つの粒子は第3の軸線Cの方向に詰まることはできない。なおさら、スロット内に存在する2つの粒子も第3の軸線Cの方向に詰まることはできない。この特徴は、スロットが粉体粒で塞がれる可能性を低減し、ナット1がネジ-ナットの間隙に堆積した粉体粒を排出する能力を高めることができる。従って、第3の軸線Cに沿った幅は、600マイクロメータよりも大きいように選択することができる。
【0034】
また、第3の軸線Cに沿った幅は、500マイクロメータから10000マイクロメータの間の値、好都合には、1000マイクロメータから2000マイクロメータの間の値に等しいように選択することができる。
ナット1は、円筒形とすることができ、この場合、外面4は、第1の軸線Aに沿って延びる円筒に正確に対応する。
【0035】
ナット1は、何らかの他の形状とすることができる。例えば、円筒形状は第1の軸線Aに沿って延び、同様に第1の軸線Aに沿って延びる2つの溝9a、9bを有する。各溝9a、9bは、第2の軸線Bに平行な第1の矩形、及び第3の軸線Cに平行な第2の矩形を定める。2つの溝は、スロット3a、3bの180度反対の区域に位置する。
図2A及び2Dは、2つの溝9a及び9bを示す。
【0036】
このように定義され、外面4の形状は、2つの溝9a、9bの間に位置し、外面4の残部から突出する部分10を有する。この部分は、ストリップの下に位置する、ストリップのハウジングに挿入することができる。このように、ナットは、スロット3a、3が垂直面内で付加製造装置のフロア及び底部に向かう位置を取りこの位置を維持する。さらに、ナット1の少容量を定めるこの形状によって、ナットは、付加製造装置の中で容易に取り付けること及び取り外すことができる。
【0037】
ストリップを動かすためのシステム
図3は、選択的付加製造装置用のストリップを動かすためのシステムの実施形態の概略図である。
ストリップを動かすシステム30は、ストリップ33及び上述のナット1を備える。ナットは、ナットがストリップに対して回転しないように、ストリップに取り付けられる。
【0038】
ストリップを動かすシステム30はネジ35を備え、そのネジ山はナット1のネジ穴2の中に係合する。
システムは、ナット内のスロット3a、3bがネジ35の軸線に関してストリップ33の180度反対の区域に位置するように設計されている。
【0039】
ネジの回転によってストリップの並進運動を制御するために、ナットは、ストリップに対して回転しないことが必要である。このような回転防止により、スロット3a、3bの位置は、常に同じ区域に維持することができる。従って、スロット3a、3bは、付加製造装置の運転を通して、付加製造装置のフロア及び底部に向かって垂直面に維持することができる。
【0040】
ナットがストリップに対して回転するのを防止する1つの可能性は、ナット1のスロット3a、3bの中に収容されるように設計されたピン11の使用である。従って、ピンの一端は、第1の軸線Aの方向でスロット3a、3bに係合する。ピンは、他端がスロット3a、3bから突出してストリップ33の穴に収容すること又はストリップ33にしっかり固定された構成要素に収容することができる十分な長さに選択することができる。
【0041】
ピンの直径が第3の軸線Cの方向でのスロットの幅より小さい円筒ピンを使用すると、ナット1とピンとの間に機械的な遊びをもつことが可能になる。これは、ナット1の回転を防止するのを保証しながら構造体の組み立て及び分解を容易にすることができる。
【0042】
ナットの回転を防止する他の可能性は、ナット1の2つの溝9a、9bに間に位置する部分10をストリップの凹部に位置付けることである。このように、部分10は、凹部に当接する状態になり、結果的に、ナットがストリップに対して軸線Aの周りで回転するのが防止される。
【0043】
このような凹部は、粉体堆積物を排出するための位置にナット1を簡単に位置付けるのを可能にする。さらに、2つの溝9a、9bの間に位置するナット1の部分10の幅よりも僅かに広い凹部を選ぶことで、機械的な遊びを可能にすることができる。このことは、第1の軸線A及び第2の軸線Bの方向での正確な配置を課することなく、ナット1をストリップ33に対して所定の角度位置で固定するのを可能にする。
【0044】
ナットは、ストリップ33にしっかり固定されたハーフシェル12で囲まれる。ハーフシェル12の内部の寸法は、ナット1の外部の寸法より僅かに大きく、ナットとハーフシェルとの間に機械的な遊びがあるように設計されている。この機械的な遊びは、ネジ35上でのナットの自己整列を可能にするのに十分なものである。このように、ナットは、浮遊様式で取り付けられ、ナットのフライトの耐用年数が長くなる。
【0045】
ハーフシェル12の内部の寸法は、全ての方向で、ナット1の外部の寸法より僅かに大きい。詳細には、第1の軸線Aに沿って、ハーフシェルに対するナットの並進運動の機械的な遊びが存在する。ナットが、第1の軸線Aで一方向に動くと、この並進運動の機械的な遊びで許容された移動端で、ハーフシェルに当接する状態になり、結果的にナットの移動が阻止される。これにより、ストリップ33は動くことができる。
【0046】
ハーフシェル12は、ナット1のスロット3a、3bに対向して位置するように設計された切り欠き13を備える。これにより、スロット3a、3bから落ちた粒子堆積物は、付加製造装置のフロア及び底部に向かって継続的に落下することができる。
【0047】
選択的付加製造装置
図4の選択的付加製造装置21は、
-付加製造粉体(金属粉末、セラミック粉末など)の様々な層が連続的に堆積され、3次元物体(図中のモミの木様の形の物体22)を製造するのを可能にする水平プレート23のような支持体、
-積層ローラー又はスプレッダーに製造用の粉体を供給するように設計された、粉末材料を分配するためのシステム26、分配システム26は、計量装置31、スライド32、及びストリップ33を備える、
-金属粉末をプレート上に分配するための機構24、この機構24は、例えば、粉体の様々な連続層を分散させるための積層ローラー及び/又はスプレッダー25を有する(両矢印Aに沿って移動する)、
-エネルギー源211を有する組立体28、エネルギー源は、分散された薄い層を(全体的に/部分的に)溶融させるための、例えばレーザービーム及び/又は電子ビームである。エネルギー源211から生じたエネルギーは、粉体平面内に分散された薄い層と接触する、
-予め記憶された情報(メモリM)に基づいて装置21の様々な構成要素を制御する制御ユニット29、
-各層が堆積されるにつれてプレート23の支持体を降下させることができる機構210(両矢印Bに沿って移動する)、
を備える。
【0048】
装置21の構成要素は、不活性ガス回路及び/又は少なくとも1つの真空ポンプ218(電子ビームが使用される場合)に接続することができる密閉室217の中に配置される。