(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】環状金属シール、環状金属シールの取付構造及び環状金属シールの取付方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
F16J15/08 G
F16J15/08 K
F16J15/08 A
(21)【出願番号】P 2022087525
(22)【出願日】2022-05-30
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 一之
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 聡
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0076650(US,A1)
【文献】実開昭58-056253(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0264810(US,A1)
【文献】特開2012-082891(JP,A)
【文献】実開昭49-002944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とがシールされる環状金属シールの取付構造であって、
前記環状金属シールは、
上下面に前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有
し、前記突条の側面を含めて断面直線状の側面を有するシール本体を
備え、
前記シール本体
における、内径側及び外径側の少なくとも一方の
、前記断面直線状の側面との間に
環状の位置決め用リングを挟んだ状態で、
前記位置決め用リングが前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールが嵌め込まれ、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させることにより、前記環状金属シールの内側と外側とがシールされている
ことを特徴とする環状金属シールの取付構造。
【請求項2】
前記位置決め用リングの半径方向の厚さが、前記シール溝の隅角部の半径の大きさ以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の環状金属シールの取付構造。
【請求項3】
前記位置決め用リングの高さが、前記シール溝の深さから前記シール溝の隅角部の半径を引いたもの以上でかつ前記環状金属シールの高さの0.75倍以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環状金属シールの取付構造。
【請求項4】
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とをシールする環状金属シールの取付方法であって、
上下面に前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有
し、前記突条の側面を含めて断面直線状の側面を有するシール本体を備えた環状金属シールと、
前記シール本体の内径よりも小さい外径を有する位置決め用リング又は前記シール本体の外径よりも大きな内径を有する位置決め用リングとを準備し、
前記位置決め用リングを前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接させ
ると共に、前記シール本体における、内径側及び外径側の少なくとも一方の、前記断面直線状の側面に当接させ、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールを嵌め込み、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させて環状金属シールの内側と外側とをシールする
ことを特徴とする環状金属シールの取付方法。
【請求項5】
第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材
の平坦面で前記シール溝を覆うようにして押さえ付けられて変形する環状金属シールであって、
上下面に前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有
し、前記突条の側面を含めて断面直線状の側面を有するシール本体と、
前記シール本体
における、内径側及び外径側の少なくとも一方の
、前記断面直線状の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起の、前記シール本体の尖った突条側の側面と、前記尖った突条の先端との間に前記シール溝の隅角部との接触を防止する隙間が設けられている
ことを特徴とする環状金属シール。
【請求項6】
前記位置決め用突起が、前記シール本体の内径側及び外径側
の前記断面直線状の側面の高さ方向中間に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の環状金属シール。
【請求項7】
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材
の平坦面で前記シール溝を覆うようにして押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とがシールされる環状金属シールの取付構造であって、
前記環状金属シールが、
上下面に前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有
し、前記突条の側面を含めて断面直線状の側面を有するシール本体と、
前記シール本体
における、内径側及び外径側の少なくとも一方の
、前記断面直線状の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起が前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールが嵌め込まれ、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させることにより、前記環状金属シールの内側と外側とがシールされている
ことを特徴とする環状金属シールの取付構造。
【請求項8】
前記位置決め用突起の半径方向の突出量が、前記シール溝の隅角部の半径の大きさ以上である
ことにより前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離している
ことを特徴とする請求項7に記載の環状金属シールの取付構造。
【請求項9】
前記位置決め用突起の高さが、前記環状金属シールの高さから前記シール溝の隅角部の半径の2倍を引いたもの以上でかつ前記環状金属シールの高さの0.75倍以下である
ことにより前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離している
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の環状金属シールの取付構造。
【請求項10】
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材
の平坦面で前記シール溝を覆うようにして押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とをシールする環状金属シールの取付方法であって、
上下面に前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有
し、前記突条の側面を含めて断面直線状の側面を有するシール本体と、
前記シール本体
における、内径側及び外径側の少なくとも一方の
、前記断面直線状の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起の、前記シール本体の尖った突条側の側面と、前記尖った突条の先端との間に隙間が設けられた環状金属シールを準備し、
前記位置決め用突起を前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接させ、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールを嵌め込み、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させて環状金属シールの内側と外側とをシールする
ことを特徴とする環状金属シールの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状金属シール、環状金属シールの取付構造及び環状金属シールの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図4及び
図5に示すように、第1部材101の第1平面101aと第2部材102の第2平面102aとの間に挟持され、第1平面101aと第2平面102aを相互に近づけることによって押圧される環状金属シール110を有する環状金属シールの取付構造103は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、
図1に示すように、従来の環状金属シール110は、周方向に連続する複数の突条111~114が形成されている。環状金属シール110に生じる反力により、環状金属シール110と第1平面101a及び第2平面102aとの間に高い接触圧力が生じることで、環状金属シール110の内側Aと外側Bとが遮断され、対象の流体(気体、液体等)が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-100362号公報(特に、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環状金属シール110は、第1平面101aと第2平面102aとの間に挟持されることを前提として設計されているが、実際の使用時には、例えば、
図5に示すように、第1部材101に掘られたシール溝104に嵌め込んで使用されることが多く、環状金属シール110とシール溝104との位置関係により、平面間で締め付けられない場合がある。
【0006】
すなわち、環状金属シール110の尖った突条111~114のうちの1つの突条111がシール溝104の隅角部(以下、隅Rともいう)に当接する場合である。シール溝104の隅Rは、機械加工でシール溝4を加工する場合、通常は、避けられない形状である。このような場合、以下のような問題が生じ得る。
【0007】
(1)締付時に環状金属シール110の位置が安定せず、正常に反力又は接触面圧が立たない。
【0008】
(2)隅Rで半径方向に滑り、密封すべき領域をつなぐパス方向に傷がつき、漏れの原因となる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環状金属シールを確実に平面間で締め付けることにより、安定して環状金属シール本来の性能を発揮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、環状金属シールの突条を強制的にシール溝の側壁から所定の距離だけ離すようにした。
【0011】
具体的には、
第1の発明の環状金属シールの取付構造では、
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とがシールされる環状金属シールの取付構造であって、
前記環状金属シールは、
前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有するシール本体を有し、
前記シール本体の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面との間に位置決め用リングを挟んだ状態で、
前記位置決め用リングが前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールが嵌め込まれ、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させることにより、前記環状金属シールの内側と外側とがシールされている。
【0012】
上記の構成によると、位置決め用リングを挟み込むことにより、位置決め用リングがシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、シール本体の尖った突条側の側面と、尖った突条の先端との間に隙間が確保されるので、尖った突条がシール溝の隅角部と接触しない。このため、締付時に環状金属シールの位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅角部で半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。「位置決め用リングが前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し」とは、位置決め用リングが全周ではなく、周方向の一部で当接していてもよいことを意味する。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
前記位置決め用リングの半径方向の厚さが、前記シール溝の隅角部の半径の大きさ以上である。
【0014】
上記の構成によると、位置決め用リングがシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接することにより、環状金属シールの尖った突条が確実に隅角部(隅R)から距離を離される。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
前記位置決め用リングの高さが、前記シール溝の深さから前記シール溝の隅角部の半径を引いたもの以上でかつ前記環状金属シールの高さの0.75倍以下である。
【0016】
上記の構成によると、適切な高さの位置決め用リングを挟持することで、環状金属シールの尖った突条が確実に隅角部(隅R)から距離を離される。
【0017】
第4の発明の環状金属シールの取付方法は、
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とをシールする環状金属シールの取付方法であって、
前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有するシール本体を備えた環状金属シールと、
前記シール本体の内径よりも小さい外径を有する位置決め用リング又は前記シール本体の外径よりも大きな内径を有する位置決め用リングとを準備し、
前記位置決め用リングを前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接させ、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールを嵌め込み、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させて環状金属シールの内側と外側とをシールする。
【0018】
上記の構成によると、位置決め用リングを挟み込むことにより、位置決め用リングがシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、シール本体の尖った突条側の側面と、尖った突条の先端との間に隙間が確保されるので、尖った突条がシール溝の隅角部と接触しない。このため、締付時に環状金属シールの位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅角部で半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。
【0019】
また、第5の発明では、
第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形する環状金属シールであって、
前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有するシール本体と、
前記シール本体の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起の、前記シール本体の尖った突条側の側面と、前記尖った突条の先端との間に前記シール溝の隅角部との接触を防止する隙間が設けられている。
【0020】
上記の構成によると、位置決め用突起を設けることにより、位置決め用突起がシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、シール本体の尖った突条側の側面と、尖った突条の先端との間に隙間が確保されるので、尖った突条がシール溝の隅角部と接触しない。このため、締付時に環状金属シールの位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅角部で半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。「位置決め用突起が前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し」とは、位置決め用突起が全周ではなく、周方向の一部で当接していてもよいことを意味する。
【0021】
第6の発明では、第5の発明において、
前記シール本体が断面X状であり、
前記位置決め用突起が、前記シール本体の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面の高さ方向中間に設けられている。
【0022】
上記の構成によると、簡単な構成で、尖った突条が、シール溝の隅角部と接触するのが確実に防止される。
【0023】
第7の発明の環状金属シールの取付構造では、
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とがシールされる環状金属シールの取付構造であって、
前記環状金属シールが、
前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有するシール本体と、
前記シール本体の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起が前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールが嵌め込まれ、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させることにより、前記環状金属シールの内側と外側とがシールされている。
【0024】
上記の構成によると、位置決め用突起を設けることにより、位置決め用突起がシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、シール本体の尖った突条側の側面と、尖った突条の先端との間に隙間が確保されるので、尖った突条がシール溝の隅角部と接触しない。このため、締付時に環状金属シールの位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅角部で半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。
【0025】
第8の発明では、第7の発明において、
前記位置決め用突起の半径方向の突出量が、前記シール溝の隅角部の半径の大きさ以上である。
【0026】
上記の構成によると、位置決め用突起がシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接することにより、環状金属シールの尖った突条が確実に隅角部(隅R)から距離を離される。
【0027】
第9の発明では、第7又は第8の発明において、
前記位置決め用突起の高さが、前記環状金属シールの高さから前記シール溝の隅角部の半径の2倍を引いたもの以上でかつ前記環状金属シールの高さの0.75倍以下である。
【0028】
上記の構成によると、適切な高さの位置決め用突起を設けることで、環状金属シールの尖った突条が確実に隅角部(隅R)から距離を離される。
【0029】
第10の環状金属シールの取付方法の発明では、
環状金属シールが、第1部材の環状のシール溝に嵌め込まれた状態で、第2部材で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シールの内側と外側とをシールする環状金属シールの取付方法であって、
前記シール溝の隅角部に対応する少なくとも一方の角部が尖った突条を有するシール本体と、
前記シール本体の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面より膨出する位置決め用突起とを備え、
前記位置決め用突起の、前記シール本体の尖った突条側の側面と、前記尖った突条の先端との間に隙間が設けられた環状金属シールを準備し、
前記位置決め用突起を前記シール溝の少なくとも一部の内側側面に当接させ、前記シール溝の隅角部から前記シール本体の尖った突条を離した状態で、前記シール溝に前記環状金属シールを嵌め込み、
前記第1部材と前記第2部材とを締め付けて前記環状金属シールを変形させて環状金属シールの内側と外側とをシールする構成とする。
【0030】
上記の構成によると、位置決め用突起を設けることにより、位置決め用突起がシール溝の少なくとも一部の内側側面に当接し、シール本体の尖った突条側の側面と、尖った突条の先端との間に隙間が確保されるので、尖った突条がシール溝の隅角部と接触しない。このため、締付時に環状金属シールの位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅角部で半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、環状金属シールを確実に平面間で締め付けることにより、安定して環状金属シール本来の性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】実施形態1に係る環状金属シール及びその周辺を示す斜視図である。
【
図4】従来例に係る環状金属シールの締め付け構造の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
(実施形態1)
図1及び
図2は、本発明の実施形態1の環状金属シール10を含む、環状金属シールの取付構造3を示す。
【0035】
この環状金属シールの取付構造3において、環状金属シール10が、第1部材1の環状のシール溝4に嵌め込まれた状態で、第2部材2で押さえ付けられて変形することにより、環状金属シール10の内側Aと外側Bとがシールされている。本実施形態では、第1部材1及び第2部材2の構成は具体的には説明しないが、例えば、一対の配管の接続部分におけるフランジ部分である。
【0036】
本実施形態の環状金属シール10は、例えば、上下の側面に、角部が尖った4つの突条11,12,13,14を含むシール本体10aを有する。環状金属シール10は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅等よりなる。本実施形態では、4つの突条11,12,13,14を有する断面X字状のXリングを対象としているが、この断面形状には限定されない。
【0037】
そして、本実施形態の環状金属シールの取付構造3では、
図1に示すように、シール本体10aの外径側側面10bとの間に位置決め用リング20を挟んだ状態で、位置決め用リング20がシール溝4の内側側面4aに当接し、シール溝4の隅角部(以下、隅Rともいう)からシール本体10aの尖った突条11を離した状態で、シール溝4に環状金属シール10が嵌め込まれている。この状態で、第1部材1と第2部材2とを締め付けて環状金属シール10を変形させることにより、環状金属シール10の内側Aと外側Bとがシールされる。
【0038】
なお、図示しないが、シール本体10aの内径側側面との間に位置決め用リング20を挟んだ状態で、位置決め用リング20がシール溝4の内側側面4aに当接するようにしてもよい。
【0039】
ここで、位置決め用リング20の半径方向の厚さW2は、シール溝4の隅Rの半径r0の大きさ以上である(W2≧r0)。また、位置決め用リング20の高さH2は、シール溝4の深さH0からシール溝4の隅Rの半径r0を引いたもの以上でかつ環状金属シール10の高さH1の0.75倍以下である(H0-r0≦H2≦0.75H1)。これらの寸法関係とするのが、環状金属シール10の機能を発揮する上で望ましい。
【0040】
実施例としては、シール溝4は、外径D0=17.80mm、溝深さH0=0.7mm、溝幅W0≧1.5mmで、環状金属シール10は、外径D1=17.0mm、高さH1=0.8mm、径方向の厚さW1=0.8mmで、位置決め用リング20は、外径D2=17.65mm、高さH2=0.6mm、半径方向の厚さW2=0.25mmである。
【0041】
本実施形態では、適切な寸法関係の位置決め用リング20を挟持することで、環状金属シール10の尖った突条11が確実に隅Rから距離を離されるように構成されている。
【0042】
-環状金属シールの取付方法-
まず、本実施形態の環状金属シール10として、シール本体10aと、位置決め用リング20とを準備する。
【0043】
次いで、位置決め用リング20をシール溝4の内側側面4aに当接させ、シール溝4の隅Rからシール本体10aの尖った突条11を離した状態で、シール溝4に環状金属シール10を嵌め込む。
【0044】
次に、第1部材1と第2部材2とを締め付けて環状金属シール10を変形させて環状金属シール10の内側Aと外側Bとをシールする。
【0045】
このとき、本実施形態では、位置決め用リング20を挟み込むことにより、位置決め用リング20がシール溝4の内側側面4aに当接し、シール本体10aの尖った突条11側の外径側側面10bと、尖った突条11の先端との間に隙間Sが確保されるので、尖った突条11がシール溝4の隅Rと接触しない。このため、締付時に環状金属シール10の位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。また、隅Rで半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、環状金属シール10を確実に平面間で締め付けることにより、安定して環状金属シール10本来の性能を発揮させることができる。
【0047】
なお、一般的に、バックアップリングは、Oリングなどの溝部からのはみ出しや隙間への食い込みを防ぐためのものであり、一般的に溝部の深さ以上の高さを有し、本実施形態の位置決め用リング20とは相違する。
【0048】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2を示し、位置決め用リング20を有さない点で上記実施形態1と異なる。なお、本実施形態では、
図1及び
図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
具体的には、本実施形態では、環状金属シール10’そのものに特徴があり、位置決め用リング20を挟持するのではなく、環状金属シール10’側に突起が設けられている。
【0050】
つまり、シール本体10a’の内径側及び外径側の少なくとも一方の側面より位置決め用突起20’が膨出している。本実施形態では、
図3に示すように、シール本体10a’の外径側側面10b’より位置決め用突起20’が膨出している。
【0051】
シール本体10a’は、断面X状であり、位置決め用突起20’が、シール本体10a’の外径側側面10b’の高さ方向中間に設けられている。
【0052】
この位置決め用突起20’の半径方向の突出量W3は、シール溝4の隅Rの半径r0の大きさ以上である(W3≧R0)。
【0053】
位置決め用突起20’の高さH3は、環状金属シール10の高さH1からシール溝4の隅Rの半径r0の2倍を引いたもの以上でかつ環状金属シール10の高さH1の0.75倍以下である(H1-2r0≦H3≦0.75H1)。
【0054】
本実施形態の環状金属シールの取付構造3’では、位置決め用突起20’がシール溝4の内側側面4aに当接し、シール溝4の隅Rからシール本体10a’の尖った突条11を離した状態で、シール溝4に環状金属シール10が嵌め込まれ、第1部材1と第2部材2とを締め付けて環状金属シール10を変形させることにより、環状金属シール10の内側Aと外側Bとがシールされている。そして、位置決め用突起20’の、シール本体10a’の尖った突条11側の外径側側面10b’と、尖った突条11の先端との間にシール溝4の隅Rとの接触を防止する隙間S’が設けられている。
【0055】
-環状金属シールの取付方法-
まず、シール本体10a’の外径側側面10b’より膨出する位置決め用突起20’を有する環状金属シール10’を準備する。
【0056】
次いで、位置決め用突起20’をシール溝4の内側側面4aに当接させ、シール溝4の隅Rからシール本体10a’の尖った突条11を離した状態で、シール溝4に環状金属シール10を嵌め込む。このとき、位置決め用突起20’がシール溝4の内側側面4aに当接し、位置決め用突起20’の半径方向の突出量W3が、シール溝4の隅Rの半径r0の大きさ以上であることから、環状金属シール10’の尖った突条11が確実に隅Rから距離を離される。
【0057】
次に、第1部材1と第2部材2とを締め付けて環状金属シール10’を変形させて環状金属シール10’の内側Aと外側Bとをシールする。
【0058】
本実施形態では、位置決め用突起20’がシール溝4の内側側面4aに当接し、シール本体10a’の尖った突条11側の外径側側面10b’と、尖った突条11の先端との間に隙間S’が確保されるので、尖った突条11がシール溝4の隅Rと接触しない。
【0059】
このため、締付時に環状金属シール10の位置が安定し、正常に反力又は接触面圧が立つ。
【0060】
また、隅Rで半径方向に滑ることがなく、密封すべき領域をつなぐパス方向の傷がつかず、漏れが発生しない。
【0061】
したがって、本実施形態に係る環状金属シール10’においても、環状金属シール10’を確実に平面間で締め付けることにより、安定して環状金属シール10’本来の性能を発揮させることができる。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0063】
すなわち、上記実施形態1では、シール本体10aの外径D1よりも大きい内径を有する位置決め用リング20を設けたが、シール本体10aの内径よりも小さい外径を有する位置決め用リング20を設けてシール溝4の内側側壁に当接させるようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態2では、位置決め用突起20’を環状金属シール10’の外径側側面10b’に設けたが、内径側側面に設けたり、外径側及び内径側の両方に設けたりしてもよい。内径側側面に位置決め用突起20’を設ける場合には、シール溝4の中心に近い側の隅Rを避けることができる。
【0065】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 第1部材
2 第2部材
3,3’ 取付構造
4 シール溝
4a 内側側面
10,10’ 環状金属シール
10a,10a’ シール本体
10b,10b’ 外径側側面
11,12,13,14 突条
20 位置決め用リング
20’ 位置決め用突起
101 第1部材
101a 第1平面
102 第2部材
102a 第2平面
104 シール溝
110 環状金属シール
111~114 突条