(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】薄膜堆積装置用流体分配デバイス、関連装置、および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022518282
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 FI2020050624
(87)【国際公開番号】W WO2021058870
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コスタモ,ユハナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァハ-オハラ,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ブロンバーグ,トム
(72)【発明者】
【氏名】プダス,マルコ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502179(JP,A)
【文献】特表2011-523444(JP,A)
【文献】特開平01-157520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜堆積装置用の流体分配デバイス(100)であって、前記流体分配デバイス(100)は、
-各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口(103)を介して、流体ストリーム(F1、F2)を受け入れるためのサブ領域(101-1、101-2)を含む拡張領域(101)であって、それによって、前記流体ストリーム(F1、F2)が本質的に互いに向かう方向に前記サブ領域を伝播する、拡張領域(101)と、
-前記サブ領域(101-1、101-2)を介してそこに到達する流体ストリーム(F1、F2)が混合する、移行領域(102)と、
を備える、デバイスであり、
各サブ領域(101-1、101-2)は、それを横断する距離が、断面において各入口(103)と前記移行領域(102)との間で拡張幅(D1)まで流体流(F1、F2)の方向に増加する内部を有し、
前記移行領域(102)は、反応チャンバの入口で確立され、前記薄膜堆積装置の反応チャンバの長さを伝播する流れ(F)が層流であるように、混合流体ストリームを前記反応チャンバの中に導くように構成される、流体分配デバイス(100)。
【請求項2】
前記移行領域(102)に入る流体ストリーム(F1、F2)の流れ方向を、本質的に前記反応チャンバ(201)に向かって調節するように構成された流れ成形要素(105)をさらに備える、請求項1に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項3】
前記流れ成形要素(105)は、前記移行領域(102)の中に到達する流体ストリーム(F1、F2)が入口(102A)で衝突するのを防ぐように構成される、請求項2に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項4】
前記移行領域(102)は、幅(d2、d2’)および各サブ領域(101-1、101-2)の拡張幅に対応する距離(D1)に伸びる長さを有する開口として提供される入口(102A)および出口(102B)を備えるチャネル(102A-102B)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項5】
前記移行領域(102)は、前記距離(D1)で本質的に一定の幅(d3)への、前記チャネル(102A-102B)の側面(112、121)の傾斜によって形成される狭窄領域(104)をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項6】
前記チャネル(102A-102B)の少なくとも一部は、ある曲率で傾斜した側面を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項7】
前記拡張領域(101)のサブ領域(101-1、101-2)は、前記薄膜堆積装置の長手方向軸(Y)と本質的に直交する
一次断面(P1)に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項8】
前記拡張領域(101)を伝播する流体ストリーム(F1、F2)の方向は、前記反応チャンバ(201)を伝播する流体流(F)の方向に本質的に垂直である、請求項1~7のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項9】
前記拡張領域(101)のサブ領域(101-1、101-2)は、
二次断面(P1’)に各々配置され
、各二次断面(P1’)は、前記
一次断面(P1)に対してある角度(アルファ、α)だけ傾斜している、請求項1~6のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項10】
前記
二次断面(P1’)は鏡映対称である、請求項9に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項11】
前記移行領域(102)において、各流体ストリーム(F1、F2)は、
一次断面(P1)または二次断面
(P1’)から、前記薄膜堆積装置の長手方向軸(Y)に沿った前記サブ領域(101-1、101-2)の対称面と定義される
三次断面(P2)に向かって曲がる、請求項1~10のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項12】
前記サブ領域(101-1、101-2)は、その内部にわたって本質的に一定の高さ(h1)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項13】
前記移行領域(102)に混合装置(106)をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項14】
プラズマ発生装置(107)をさらに備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項15】
前記プラズマ発生装置(107)は、前記移行領域(102)に配置される、請求項14に記載の流体分配デバイス(100)。
【請求項16】
薄膜堆積装置(200)であって、
-それらの側面が互いに隣接して配置された複数の基板(10)を収容するための反応チャンバ(201)と、
-請求項1~15のいずれか1項に記載の流体分配デバイス(100)と、
を備える、薄膜堆積装置(200)であり、
前記移行領域(102)は、前記反応チャンバの入口で確立され、前記反応チャンバの長さを通って前記複数の基板(10)の側面の間を伝播する流れ(F)が層流であるように、混合流体ストリームを前記反応チャンバ(201)の中にさらに導くように構成される、薄膜堆積装置(200)。
【請求項17】
前記反応チャンバ(201)は、その長さ全体を通して一定の断面を有する、請求項16に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項18】
前記移行領域(102)は、入口開口(102A)および出口開口(102B)を備えるチャネル(102A-102B)によって確立され、前記入口開口および/または前記出口開口は、前記反応チャンバ(201)と同じ断面を有する、請求項16または17に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項19】
前記反応チャンバ(201)の内部は、その中に受け入れられる所定の数の前記基板(10)に寸法的に適合する、請求項16~18のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項20】
前記薄膜堆積装置(200)は、全ての基板表面上に同時にコーティング膜を堆積させるように構成される、請求項16~19のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項21】
前記薄膜堆積装置(200)は、排気導管(41)、および本質的に前記排気導管(41)の周りに配置されかつ前記導管(41)を通って前記反応チャンバ(201)から流れる流体を受け入れるエンクロージャ(42)をさらに備え、前記排気導管(41)および前記エンクロージャ(42)は、前記反応チャンバ(201)を出る排気流(Fex)の方向を変更するように構成された排気アセンブリを形成する、請求項16~20のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項22】
前記排気導管(41)および前記エンクロージャ(42)は、前記排気導管(41)を介して前記反応チャンバ(201)を出る排気流(Fex)が、前記エンクロージャ(42)の中に留まったまま、前記導管(41)を形成する1つ以上の壁の周りに曲がり、前記エンクロージャ(42)の少なくとも1つの側壁に配置された開口部(42A)を介して排気マニホールド(40)の中にさらに導かれる通路を形成する、請求項21に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項23】
前記薄膜堆積装置(200)は、化学蒸着反応のための装置として構成される、請求項16~22のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項24】
前記薄膜堆積装置(200)は、原子層堆積(ALD)のための装置として構成される、請求項16~23のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項25】
前記薄膜堆積装置(200)は、コーティング材料の薄膜を基板表面上に堆積させるために使用される、請求項16~24のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)。
【請求項26】
薄膜堆積用装置内で材料を基板表面上に堆積させるための方法であって、前記方法は、
-それらの側面が互いに隣接して配置された複数の基板(10)を収容する反応チャンバ(201)を備える薄膜堆積装置(200)、ならびにサブ領域(101-1、101-2)を含む拡張領域(101)および移行領域(102)を備える流体分配デバイス(100)を得ることと、
-流体ストリーム(F1、F2)が本質的に互いに向かう方向に前記サブ領域を伝播するように、各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口(103)を介した前記サブ領域(101-1、101-2)の中への流体の流れ(F1、F2)を確立することであって、少なくとも1つの流体ストリーム(F1、F2)は、少なくとも1種の前駆
体を含むことと、
-流体ストリーム(F1、F2)を前記移行領域(102)で混合し、それにより、少なくとも1種の前駆
体を含む前駆体流体を形成し、前記前駆体流体を前記反応チャンバ(201)の中にさらに導くことと、
-前記反応チャンバの入口で前駆体流体の層流(F)を確立することによって材料を前記複数の基板の表面上に堆積させ、前記前駆体流体を前記反応チャンバの長さを通して前記基板(10)の側面の間を伝播させる時に、前記層流を維持することと、
を含む、方法であり、
各前記サブ領域(101-1、101-2)は、それを横断する距離が、断面(P1、P1’)において各入口(103)と前記移行領域(102)との間で拡張幅(D1)まで流体流(F1、F2)の方向に増加する内部を有する、方法。
【請求項27】
前駆体流体は、先端において本質的に一様な速度で前記基板(10)の間を伝播する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
順次かつ/またはアレイ状に互いに接続された、いくつかの、請求項16~25のいずれか1項に記載の薄膜堆積装置(200)を備える、薄膜堆積システム(500A、500B、500C、500D)。
【請求項29】
前記薄膜堆積装置(200)は、少なくとも2つの装置の中に共通の前駆体化合
物を受け入れるように配置される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
薄膜堆積用装置内の流体の均一な分配のための方法であって、前記方法は、
-それらの側面が互いに隣接して配置された基板(10)を収容するための反応チャンバ(201)を備える薄膜堆積装置(200)、ならびにサブ領域(101-1、101-2)を含む拡張領域(101)および移行領域(102)を備える流体分配デバイス(100)を得ることと、
-流体ストリーム(F1、F2)が本質的に互いに向かう方向に前記サブ領域を伝播するように、各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口(103)を介した前記サブ領域(101-1、101-2)の中への流体の流れ(F1、F2)を確立することと、
-流体ストリーム(F1、F2)を前記移行領域(102)で混合することと、
-前記反応チャンバの入口で確立され、前記反応チャンバの長さを通って前記基板(10)の側面の間を伝播する流れ(F)が層流であるように、混合流体ストリームを前記反応チャンバ(201)の中に導くことと、
を含む、方法であり、
各前記サブ領域(101-1、101-2)は、それを横断する距離が、断面(P1、P1’)において各入口(103)と前記移行領域(102)との間で拡張幅(D1)まで流体流(F1、F2)の方向に増加する内部を有し、
前記反応チャンバ(201)の内部は、その中に受け入れられる所定の数の基板(10)に寸法的に適合し、
前記移行領域(102)において、各流体ストリーム(F1、F2)は、前記断面(P1、P1’)から、前記薄膜堆積装置(200)の長手方向軸(Y)に沿った前記サブ領域(102-1、102-2)の対称面と定義される断面(P2)に曲がる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して薄層堆積方法および関連する機器に関する。具体的には、本発明は、反応空間内で流体の層流を確立するための、薄膜堆積反応器用流体分配デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜コーティングが気相から基板上に堆積する薄膜堆積方法は、当該技術分野において広範囲に記載されている。一般に化学気相蒸着(CVD)のサブクラスとみなされている原子層堆積(ALD)技術は、3次元基板構造上への高品質でコンフォーマルなコーティングの製造におけるその効率性を証明している。
【0003】
ALDは交互の自己飽和表面反応に基づいており、ここでは非反応性(不活性)ガス状担体中の化合物または元素として提供される異なる反応物(前駆体)を、基板を収容する反応空間の中に順次導入する。反応物の堆積後に当該基板を不活性ガスでパージする。従来のALDサイクルは、2つの半反応(第1の前駆体の導入-パージ、第2の前駆体の導入-パージ)で進行し、これにより典型的には0.05~0.2nmの厚さの材料の層が、自己制御(自己飽和)的に形成される。
【0004】
各導入中、特定の前駆体化学物質が、反応空間を通って連続的に流れる不活性(担体)流体の中に注入される。導入は、反応空間を前述の担体ガスでパージして、前の導入からの前駆体化学物質を除去するパージ期間によって分離される。堆積の実行では、1つ以上のサイクルを、所定の厚さを有する膜を得るために必要に応じて何回でも繰り返す。各前駆体のための典型的な基板曝露時間は、(1回の導入当たり)0.01~1秒以内の範囲である。一般的な前駆体としては、金属酸化物、元素金属、金属窒化物、および金属硫化物が挙げられる。
【0005】
化学蒸着法、特にALDによって作製される膜の品質に悪影響を及ぼす場合がある1つの共通の欠点は、反応空間の中への反応性(前駆体)物質の導入時の非コンフォーマルな流れのプロファイルである。反応チャンバの突出した形状特徴および反応空間内の様々な突出構造は、流れを乱し、渦巻運動および/または乱流をもたらし得る。そのようなデバイスでは、流れのプロファイルは、層流から乱流またはその逆に切り替わる傾向があり、これは、(時間、速度、化学組成などの点での)流体流のわずかな変化でも、予測不可能な方法で流れのプロファイルに影響を及ぼしやすいためである。
【0006】
堆積時間は、長いパージ期間によって主に制限される。(例えば1堆積サイクル当たり0.5~20秒などの、1堆積サイクル当たりの時間の点で)堆積速度を最適化するために、堆積反応器を通る流体の流れは、できるだけ均等であるべきである。ALDでは、乱流は、導入された化学物質の排出を遅くする可能性があり、これは、第2の前駆体の送達時に第1の前駆体が反応空間の中に残っている不完全なパージをもたらす。望ましくない状況は、第2の前駆体が第1の前駆体と気相中で反応する場合に生じ、これは粒子形成をもたらす。最悪のシナリオでは、そのような状況は、コーティングされる試料を損なう。いずれにせよ、ALD反応における1種ではなく2種の前駆体の存在は、粒子形成、コーティングの不均一性、ならびにブレークスルー電圧および増加した粒子のような損なわれた膜の特性を有する低品質の膜をもたらしやすい。
【0007】
この点に関して、薄膜堆積反応器での前駆体の効率的な混合を提供しながら乱流を回避することに伴う課題に対処するために、薄膜堆積技術分野の更新がなお望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、関連技術の限界および欠点から生じる問題の各々を解決するか、または少なくとも軽減することである。目的は、薄膜堆積装置用流体分配デバイス、関連する装置、システム、および方法の様々な実施形態によって達成される。したがって、本発明の一態様では、薄膜堆積装置用流体分配デバイスが、独立請求項1に定義される内容に従って提供される。
【0009】
好ましい実施形態では、薄膜堆積装置用流体分配デバイスは、流体ストリームF1、F2が本質的に互いに向かう方向にサブ領域を伝播するように各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口を介して、前述の流体ストリームF1、F2を受け入れるためのサブ領域を含む拡張領域と、サブ領域を介してそこに到達する流体ストリームF1、F2が混合する移行領域とを備え、各サブ領域は、それを横断する距離が、断面において各入口と移行領域との間で拡張幅D1まで流体流F1、F2の方向に増加する内部を有し、移行領域は、反応チャンバの入口で確立され、前述の反応チャンバの長さを伝播する流れFが層流であるように、混合流体ストリームを堆積装置の反応チャンバの中に導くように構成される。
【0010】
実施形態では、各サブ領域の内部で、入口と移行領域との間の距離で確立された流体の流れは、層流である。
【0011】
実施形態では、移行領域は、幅d2、d2’および各サブ領域の拡張幅に対応する距離D1に伸びる長さを有する開口として提供される入口および出口を備えるチャネルである。
【0012】
実施形態では、移行領域102は、距離D1で本質的に一定の幅d3への、チャネルの側面の傾斜によって形成される狭窄領域をさらに備える。
【0013】
実施形態では、前述のチャネルの少なくとも一部は、ある曲率で傾斜した側面を有する。
【0014】
実施形態では、拡張領域のサブ領域は、堆積装置の長手方向軸Yと本質的に直交する断面P1に配置される。
【0015】
実施形態では、拡張領域を伝播する流体ストリームF1、F2の方向は、反応チャンバを伝播する流体流Fの方向に本質的に垂直である。
【0016】
実施形態では、拡張領域のサブ領域は、断面P1’に各々配置され、そのような各平面P1’は、断面P1に対して角度アルファ、αだけ傾斜している。実施形態では、前述の断面P1’は鏡映対称である。
【0017】
実施形態では、移行領域において、各流体ストリームF1、F2は、断面P1、P1’から、堆積装置の長手方向軸Yに沿ったサブ領域の対称面と定義される断面P2に曲がる。
【0018】
実施形態では、流体分配デバイスは、移行領域に入る流体ストリームF1、F2の流れ方向を、本質的に反応チャンバに向かって調節するように構成された流れ成形要素をさらに備える。実施形態では、流体分配デバイスは、移行領域に混合装置をさらに備える。
【0019】
別の態様では、薄膜堆積装置が、独立請求項15に定義される内容に従って提供される。
【0020】
実施形態では、装置は、それらの側面が互いに隣接して配置された基板を収容するための反応チャンバと、流体ストリームF1、F2が本質的に互いに向かう方向にサブ領域を伝播するように各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口を介して、前述の流体ストリームF1、F2をその中に受け入れるサブ領域を含む拡張領域、およびサブ領域を介してそこに到達する流体ストリームF1、F2が混合する移行領域を備える、流体分配デバイスとを備え、各サブ領域は、それを横断する距離が、断面において各入口と移行領域との間で拡張幅D1まで流体流F1、F2の方向に増加する内部を有し、移行領域は、反応チャンバの入口で確立され、前述の反応チャンバの長さを通って基板の側面の間を伝播する流れFが層流であるように、混合流体ストリームを反応チャンバの中にさらに導くように構成される。
【0021】
実施形態では、装置は、いずれかの上記実施形態に係る流体分配デバイスを備える。
【0022】
実施形態では、前述の装置の反応チャンバは、その長さ全体を通して一定の断面を有する。
【0023】
実施形態では、前述の装置において、移行領域は、入口開口および出口開口を備えるチャネルによって確立され、前述の入口開口および/または前述の出口開口は、反応チャンバと同じ断面を有する。
【0024】
実施形態では、前述の装置の反応チャンバの内部は、その中に受け入れられる所定の数の基板に寸法的に適合する。
【0025】
実施形態では、装置は、反応チャンバの長さを通して前駆体流体の層流Fを確立することによって、材料を基板表面上に堆積させるように構成され、前駆体流体は、先端において本質的に一様な速度で前述の基板の側面の間を伝播する。
【0026】
実施形態では、前述の装置において、反応チャンバの中に送達される前駆体流体は、少なくとも1種の前駆体化学物質を含む。
【0027】
実施形態では、前駆体流体は、いくつかの順次の導入で前述の装置の反応チャンバの中に送達される。
【0028】
実施形態では、装置は、全ての基板表面上に同時にコーティング膜を堆積させるように構成される。
【0029】
実施形態では、装置は、排気導管、および本質的に前述の排気導管の周りに配置されかつ導管を通って反応チャンバから流れる流体を受け入れるエンクロージャをさらに備え、前述の排気導管および前述のエンクロージャは、反応チャンバを出る排気流の方向を変更するように構成された排気アセンブリを形成する。実施形態では、前述の排気アセンブリにおいて、排気導管およびエンクロージャは、排気導管を介して反応チャンバを出る排気流が、エンクロージャの中に留まったまま、前述の導管を形成する1つ以上の壁の周りに曲がり、エンクロージャの少なくとも1つの側壁に配置された開口部を介して排気マニホールドの中にさらに導かれる通路を形成する。
【0030】
実施形態では、装置は、化学蒸着反応のための装置として構成される。実施形態では、前述の装置は、原子層堆積(ALD)のための装置として構成される。
【0031】
さらなる態様では、薄膜堆積用装置で材料を基板表面上に堆積させるための方法が、独立請求項28に定義される内容に従って提供される。
【0032】
なおさらなる態様では、コーティング材料の薄膜を基板表面上に堆積させるための、いくつかの上記態様に係る薄膜堆積用装置の使用が、独立請求項30に定義される内容に従って提供される。
【0033】
なおさらなる態様では、いくつかの上記態様に係るいくつかの薄膜堆積用装置を備える薄膜堆積システムが、独立請求項31に定義される内容に従って提供される。実施形態では、前述のシステム内の装置は、順次かつ/またはアレイ状に互いに接続される。
【0034】
実施形態では、装置は、前述のシステムにおいて、少なくとも2つの装置の中に共通の前駆体化合物を受け入れるように配置される。
【0035】
いくつかの他の態様では、いくつかの上記態様に係る薄膜堆積用装置における流体の均一な分配のための方法が、独立請求項33に定義される内容に従って提供される。
【0036】
本発明の有用性は、その各特定の実施形態に応じた様々な理由により得られる。全体として、本発明は、堆積装置で前駆体化学物質を効率的に混合し、同時に、化学蒸着反応における層流条件を確立するための、デバイスおよび方法を提供する。ALD反応において渦巻運動を回避することは、改善された厚さの均一性を有する高品質の膜の作製を可能とする。層流プロファイルを確立および制御することによって、本発明は、パージ期間の短縮および作製プロセス全体の高速化を可能とする。
【0037】
ALD実装では、層流は、導入段階およびパージ段階の両方にわたって維持される。パージ段階における層流条件の確立は、ガスなどの流体の反応空間からのより効率的な除去、およびそれに応じた所定の(反応チャンバ)容積をパージするのに必要な期間の短縮を可能とする。したがって、反応空間に層流で流れ込む流体は、前の導入から気相中に残っている前駆体化合物および/または反応生成物を定常的かつ均等に「押しやる」。
【0038】
層流を支持しない解決策(先行技術)では、反応空間内の前述の前駆体化合物および/または反応生成物の濃度は、典型的には、不活性流体での「希釈」によって下げられる。しかしながら、本質的に乱流の条件のため、反応チャンバのパージは、非常に長い時間(例えば1分超)続く場合がある。本明細書により示される装置では、反応チャンバの入口で確立され、前述の反応チャンバを通して流体を伝播させる時に維持される層流条件は、層流プラグフロー反応器で観察されるものに近い。
【0039】
本発明に係る流体分配デバイスは、異なる供給源から反応チャンバの中に到達する前駆体化学物質を互いに分離して保ち、したがって、前述の化学物質が反応器装置内の所定の空間に到達するまでそれらが互いに混合および/または反応するのを効果的に防ぐことを可能とする。したがって、反応チャンバの前にある反応器表面上への膜形成が回避される。当該装置では、前駆体化学物質を、(タイミングの悪い/早過ぎる混合によって)望ましくない表面上に存在させることなく、反応チャンバの中にまっすぐガイドする。
【0040】
本開示の装置では、反応空間を通る前駆体化合物の伝播は、1度に1種の前駆体で生じ、これは、革新的な構成によって可能となる改善された流速特性によって可能となる。したがって当該装置は、例えばシャワーヘッド反応器でよく生じ、(化学物質が混合しないように前駆体を反応空間の中に順次導くことに基づく)ALD反応器での(少なくとも2種の前駆体を反応空間の中に同時に導くことに基づく)いわゆるCVD型反応に関連する、問題の回避を可能とする。
【0041】
本開示に係る装置で化学蒸着反応を行うと、反応チャンバ内のウエハ基板などの全ての基板は、前駆体の均一な層が堆積されるようになり、その結果、前駆体の濃度は、個々の基板(側)面および反応空間内の全ての基板の表面にわたって均一である。前駆体化学物質を均一に混合し、前述の混合された化学物質を全ての基板表面上に均等に広げるその能力のため、各導入で反応空間の中に導かれる前駆体化学物質(単数または複数)の量を最小限にすることができる。これは、化学物質の節約、供給経路(単数または複数)内での膜形成の低減、およびパージ期間の最小化を可能とする。
【0042】
当該装置は、圧力損失なしでさらに動作する。
【0043】
本開示では、1マイクロメートル(μm)未満の層厚を有する材料を「薄膜」と呼ぶ。
【0044】
「反応性流体」および「前駆体流体」という表現は、本開示では、不活性担体中に少なくとも1種の化学物質(前駆体化合物)、以後、前駆体を含む流体の流れを示す。
【0045】
「いくつかの」という表現は、本開示では、1から開始する任意の正の整数、例えば1、2、または3を指す。「複数の」という表現は、本明細書では、2から開始する任意の正の整数、例えば2、3、または4を指す。
【0046】
「第1の」および「第2の」という用語は、いかなる順序、量、または重要性も表すことを意図しておらず、明示的に別段の定めがない限り、むしろ単に1つの要素を別のものと区別するために使用される。
【0047】
「いくつかの」という表現は、本開示では、1から開始する任意の正の整数、例えば1、2、または3を指す。「複数の」という表現は、本明細書では、2から開始する任意の正の整数、例えば2、3、または4を指す。
【0048】
本明細書により示される図面中のいくつかの構成要素は、必ずしも正確な比率ではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】実施形態に係る薄膜堆積反応器200を概略的に例解する。
【
図2】実施形態に係る堆積反応器200およびその中に確立された流体の流れの部分断面図である。
【
図3A】様々な実施形態に係る流体分配デバイス100の垂直断面図である。
【
図3B】様々な実施形態に係る流体分配デバイス100の垂直断面図である。
【
図4A】実施形態に係る堆積反応器を通る流体の伝播を概略的に例解する。
【
図4B】堆積反応器内の様々な部分の構成を断面で概略的に示す。
【
図5A】実施形態に係る流体分配デバイス100の水平断面図である。
【
図5B】流体分配デバイス100を有する堆積反応器の(部分)斜視図である。
【
図5C】流体分配デバイス100を有する堆積反応器の(部分)斜視図である。
【
図6A】実施形態に係る排気装置を有する堆積反応器200の斜視図である。
【
図6B】別の実施形態に係る排気装置を有する堆積反応器200の概略図である。
【
図7A】上から見た薄膜堆積システム500の様々な実施形態を概略的に例解する。
【
図7B】上から見た薄膜堆積システム500の様々な実施形態を概略的に例解する。
【
図7C】上から見た薄膜堆積システム500の様々な実施形態を概略的に例解する。
【
図7D】上から見た薄膜堆積システム500の様々な実施形態を概略的に例解する。
【
図8】実施形態に係る堆積反応器200の制御システムのブロック図である。
【
図9】円盤状ウエハ基板上への堆積時に得られた流れの均一性の測定結果を示す。
【
図10】円盤状ウエハ基板上への堆積時に得られた流れの均一性の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の詳細な実施形態を、添付の図面を参照しながら本明細書に開示する。同じ部材を指すために、図面全体を通して同じ符号が使用される。以下に列挙された符号が、部材に対して使用される:
100 流体分配デバイス
101 拡張領域
101-1、101-2 拡張領域のサブ領域
102 チャネル102A-102Bによって確立された移行領域
102A、102B それに応じた(移行領域の)入口開口および出口開口
103 入口
104 狭窄領域
105 流れ成形要素
106 混合装置
107 プラズマ発生装置
110 拡張領域のためのカバー部
112、121 チャネル102A-102Bの内側面
200 堆積装置
201 反応チャンバ
202 基板ホルダ
203 ドア
204 ヒータ
210 真空チャンバ
10 基板
11 不活性(担体)流体
12 前駆体流体
12X、12A~12G 任意選択で対応する容器中にある前駆体(前駆体供給源)
21 前駆体流体吸入ライン
21A 前駆体流体流調整デバイス
21B 前駆体供給源(単数または複数)用閉鎖バルブ
22 バルブブロック
301 制御システム
40 排気マニホールド
41、41A それに応じた出口開口部を有する排気導管
42、42A それに応じた出口開口部を有する、排気導管のためのエンクロージャ
43 真空ポンプフォアラインのためのフィードスルー配置
401 排出ライン(真空ポンプフォアライン)
500(500A、500B、500C、500D) 堆積システム
【0051】
図1は、様々な実施形態に係る薄膜堆積装置、以後、反応器を200で例解する。全ての構成において、反応器200は、複数の基板10を組み込む反応空間全体を通して流体の層流を発生させるように構成された流体分配デバイス100(破線の囲み)を備える。反応器200は、反応チャンバ201、ならびに拡張領域101および移行領域102を有する流体分配デバイス100を備え、移行領域102は、拡張領域101を反応チャンバ201と接続する。
【0052】
反応器200は、好ましくは、気相蒸着に基づく技術、好ましくは化学気相蒸着(CVD)に基づく技術の原理を利用するように構成される。好ましい実施形態では、反応器200は、原子層堆積(ALD)デバイスとして構成される。
【0053】
ALDでは、少なくとも1つの基板が、典型的には、反応容器中で時間的に分離した前駆体の導入に曝露されて、順次自己飽和表面反応により材料を基板表面上に堆積させる。本出願の文脈では、ALDという用語は、全ての適用可能なALDに基づく技術およびあらゆる同等または密接に関連する技術、例えば以下のALDサブタイプ:MLD(分子層堆積)、プラズマ支援ALD、例えばPEALD(プラズマ強化原子層堆積)、およびフォトン強化原子層堆積(フラッシュ強化ALDとしても知られている)などを含む。
【0054】
反応器200をさらに、物理気相蒸着(PVD)およびプラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)プロセスに適したものにすることができる。
【0055】
図1はしたがって、薄膜堆積装置200の例示的設備を垂直クロスカットで例解する。反応チャンバ201は、好ましくはそれらの側面を向かい合わせに配置した複数の基板10を収容する内部を有する細長い容器として構成される。例えば(平坦な表面を並べて配置した)垂直積層に配置することができる、板状または円盤状基板などの平坦な平面基板が、好ましくは利用される。基板10は、例えば金属ウエハまたはシリコンウエハなどのウエハであり得る。前述の反応チャンバ201の内部は、反応空間(堆積空間)を形成する。
【0056】
基板10を、1枚ずつまたはバッチ式に反応チャンバの中に載置することができる。バッチ式載置が典型的には好ましい。非限定的に、基板ホルダ202を、1~27枚の基板のバッチ用に構成することができる。いくつかの実施形態は、15枚の基板のバッチを含む。
【0057】
様々な構成では、基板ホルダ202を、ドア/ハッチ203または反応チャンバ201と一体化させることができる。あるいは、基板ホルダを、別個の取り外し可能な部分として提供することができる。基板ホルダ202を、例えば基板10がその上に配置される(例えば、ロッドに設けられた溝(単数または複数)に嵌められる)ロッドまたは棒などの少なくとも1つの要素によって形成することができる。いくつかの構成では、基板ホルダ202は、基板(単数もしくは複数)を移動、振動、および/または回転させるための、アクチュエータ(単数もしくは複数)およびモータ(単数もしくは複数)などの手段を備える。このような方法で、前述の基板(単数もしくは複数)への堆積コーティングプロセスを、特に堆積の均一性に関して最適化することができる。
【0058】
反応空間内で、ウエハなどの円盤状基板を回転させることが有利である。回転速度は、(膜の堆積に必要な全堆積サイクルを含む)全堆積実行1回当たり半回転(180度)などの比較的低速、または単一の化学物質導入中に1回の全回転(360度)などの比較的高速であり得る。基板ホルダ202が、反応空間内に固定された少なくとも1つのロッドとして提供される構成では、基板(単数または複数)10の回転を、前述のロッドに、その中心軸の周りに回転運動を付与することによって実装することができる。あるいは、基板ホルダを、例えば反応チャンバ201内に、本質的に円形のトラックに従って配置されたレール(単数または複数)などの摺動装置(図示せず)に固定された、いくつかのロッドとして実装することができる。そのような場合、回転は、ロッド(基板ホルダ202)を本質的に円形のトラック上で移動させることによって、基板(単数または複数)10の中心軸の周りに行われる。
【0059】
バッチ中の基板10は、それらの側面が互いから等距離にあるように配置されることが好ましい。
【0060】
反応チャンバ201は、その中に受け入れられる基板のバッチにぴったり合うように構成される。したがって、バッチ中の最も外側の基板(反応チャンバの側壁に面するもの)は、バッチ中の全基板間に提供されるのと本質的に同じ距離だけ前述の側壁から離れている。反応チャンバは、その中に受け入れられる所定の数の基板10に寸法的に適合する平坦な細長い容器として実装されるものである。
【0061】
好ましい実施形態では、流体(単数または複数)は、反応チャンバ201をその長手方向平面に沿って伝播する。反応チャンバの長手方向平面は、反応チャンバの頭部(入口)からその尾部(排気)に通る平面である。本開示では、頭部から尾部への方向は、y方向またはY軸(長手方向軸)に沿った方向と呼ばれる。反応チャンバを通る流体流はしたがって、反応器200が設備全体の中で垂直に位置するかまたは水平に位置するかに依存しない長手方向平面に沿って生じるものと見なされる。
【0062】
図1は、本質的に垂直な(「上から下への」)方向に、反応チャンバ201をその長手方向平面に沿って流体が伝播することを一般に可能とする直立位置の反応器200の構成を示す。反応器200が水平に位置する構成は、
図6Aに示される。
【0063】
基板は、典型的にはドア203(
図1および
図6)で封鎖される開口を介して反応チャンバ201に載置される。反応チャンバの任意の面に、基板載置のための開口を設けることができる。反応器200が垂直に配置されるかまたは水平に配置されるかに依存して、載置を横から(
図1)、底から(
図6)、または上から(図示せず)実装することができる。
【0064】
明示的に別段の定めがない限り、装置200の長手方向平面、長手方向軸、および/またはY軸は、反応チャンバ201の同じものと整列する。
【0065】
反応器200は、過剰の担体、前駆体、および反応生成物などの排気流を反応チャンバ201から放出するための排気(排出)ライン401をさらに備える。排気ライン401は、ポンプユニットおよび任意選択で1つ以上のバルブ(図示せず)のためのフォアラインを構成する。反応チャンバが、排気マニホールドによって排気ライン401と接続される構成を、以下にさらにより詳細に記載する。
【0066】
場合によっては、反応チャンバからの流体物質の回収を途切れなく実行するのが好ましいことがある。ゆえに、ポンプユニットを、全堆積プロセスの間に反応チャンバから流体物質を連続的に除去するための真空ポンプとして構成することができる。
【0067】
動作中、装置200は、反応チャンバ201を収容する外側ハウジング210をさらに備える。場合によっては、前述の外側ハウジングの内部によって確立された中間空間は、真空下に維持され、真空チャンバと呼ばれる。真空チャンバ210を備える例示的構成を
図1および
図6Aに示す。任意選択で真空チャンバとして構成される外側ハウジングが2つ以上の装置200を組み込む実施形態を、以下にさらに記載する。
【0068】
前述の中間空間210は、いくつかのヒータ/加熱要素204をさらに収容することができる(
図1)。加熱要素(単数または複数)を、例えば1つ以上の反応チャンバに隣接するように置くことができる。追加または代わりとして、いくつかの加熱要素を、反応チャンバ(単数または複数)201を形成する容器の1つ以上の壁に一体化させることができる。さらなる追加または代替構成では、反応空間の加熱を、例えば供給経路21を介してガスなどの予め加熱した流体をその中に導くことによって実装することができる。そのような場合、いくつかの加熱要素を、例えば、供給経路21に隣接するかもしくはそれを包含するように、または前述の供給経路を形成するパイプ(図示せず)の中に組み込まれるように配置することができる。さらなる構成では、加熱要素(単数または複数)を、バルブを封入する別個の区画22に提供することができる(
図1)。
【0069】
反応チャンバ201を操作、載置、および取り出し中に真空下に維持し、その際に反応チャンバ内の圧力を1kPa(10mbar)、好ましくは10Pa(0.1mbar)未満のレベルに維持することが好ましい。いくつかの構成では、反応チャンバ内の圧力は、周囲圧力と同じレベルに設定される。
【0070】
中間空間/真空チャンバ210内の圧力を少なくとも1kPa(10mbar)のレベルに維持することがさらに好ましい。好ましくは、中間空間210内の圧力を1kPa超のレベルに維持して、反応チャンバ201の内部(典型的には100Pa未満)と真空チャンバ210の内部との間の圧力差を確立する。
【0071】
以下にさらに示すいくつかの例では、中間空間内の圧力は、反応チャンバと比較して高く維持されている。特定の動作パラメータ、前駆体、および/または反応条件に依存して、中間空間210内の圧力を、反応チャンバ201内より低いか、または反応チャンバ内と同じものにさらに維持することができる。
【0072】
前駆体流体(単数もしくは複数)12は、いくつかの吸入ライン(供給経路)21ならびにバルブなどの関連する切り替えおよび/または調整デバイス21Aを介して、反応器の中に送達される。
図1は、前駆体流体12が少なくとも1つの供給経路21によって反応チャンバ201の内部に送達される実施形態を例解する。場合によっては、反応器200が、2つ、3つ、またはそれ以上の供給経路21(図示せず)を備えることが好ましい。いくつかの構成では、装置は、マニホールド供給経路、ならびに様々な前駆体供給源および1つ以上の不活性ガス供給部(図示せず)に接続可能な分配配管を備えていてもよい。いくつかの代替構成では、供給経路(単数または複数)の提供を、バルブ(単数または複数)21Aを流体分配デバイス100に直接接続することによって省略することができる。
【0073】
反応チャンバの中に送達される前駆体流体12は、12A、12B、12C、12D、12E、12F、および12Gのいずれか1つとして提供される少なくとも1種の前駆体化合物12Xを含むことが好ましい。
【0074】
前駆体(単数または複数)は、流体の形態で供給経路21の中に送達される。供給経路21を通って流れる反応性流体12は、好ましくは不活性担体11によって運ばれる所定の前駆体化学物質12Xを含むガス状物質である。前駆体(単数または複数)は、例えば容器、カートリッジ、または配管システムとして構成された1つ以上の供給源から供給経路21の中に供給される。各供給源は、好ましくは、化合物、分子、または元素として提供される所定の前駆体12Xを含有する。各供給源には、例えば手動の閉鎖バルブとして提供される少なくとも1つのバルブ21Bが備えられている。ALD反応(単数または複数)などの堆積反応(単数または複数)のために必要とされる様々な前駆体化学物質を、単一の供給経路21を介して反応空間の中に導くことができる。
【0075】
場合によっては、前駆体(単数または複数)12Xは、アンモニアガス(NH3)などのガスの形態で提供される。いくつかの他の場合には、前駆体(単数もしくは複数)は、液体または固体の形態で提供され、不活性担体に混合される前に気化される。
【0076】
不活性担体11は、本質的に前駆体(反応物)および反応生成物と全く反応しない窒素(N2)、アルゴン(Ar)、またはあらゆる他の好適なガス状媒体などの流体、好ましくはガスである。不活性担体ガス11は、1つ以上の別個の供給源(図示せず)から供給される。
【0077】
前駆体流体12は、いくつかの順次の導入で反応チャンバ201の中に送達される。例として、微小電気機械システム(MEMS)を作製するのに普及している、トリメチルアルミニウム(第1の前駆体)および水(第2の前駆体)を使用することによって酸化アルミニウムを含有するコーティング層を堆積させるためのALDプロセスは、同じ供給経路21または2つの異なる供給経路を介して2つの供給源から反応チャンバの中に順次供給される2種のこれらの化学物質を用いる。導入の間に、反応チャンバを不活性流体でパージする。
【0078】
各層が別個のALDサイクルで作製され、かつ/または前述の層が組成の点で互いに異なる複雑な多層構造(いわゆる積層体)の製造では、3種以上の異なる前駆体およびそれに応じた供給源を用いてもよい。
【0079】
場合によっては、例えば溶媒中の所定の前駆体などの化合物の混合物を、同じ前駆体供給源から供給することができる。
【0080】
異なる供給源から各々供給される前駆体(単数または複数)12Xおよび不活性担体11は、マルチポートバルブ21Aを介して供給経路21に入る。バルブ21Aは、自動制御システムおよび任意選択で手動のバックアップ制御による、例えば3ポートバルブとして構成される。好ましい構成では、バルブ21Aは、ALDバルブとして一般に知られている三方バルブである。ALDバルブは、反応チャンバの中への不活性担体流体11の定常流を維持し、流体の前駆体(単数または複数)12Xを所定の時点で前述の担体の中に導入するように構成される。ALDバルブを、前駆体12Xを(連続的に)流れている担体の中に注入するように構成することができる。追加または代わりとして、例えばマスフローコントローラ(単数または複数)などの他の制御手段(図示せず)を、バルブ21Aの上流に設けて、前駆体12Xが供給経路21の中に注入されている期間に担体流体11の流れを変更することができる。いずれの状況でも、前駆体の注入は、短い導入(0.01~100秒、典型的には0.1秒)で行われる。
【0081】
反応器が2つ以上の供給経路21を備える構成では、各前述の供給経路にALDバルブ21Aが備えられていることが好ましい。
【0082】
いくつかの構成では、バルブ21Aは、WO2018/234611および/またはWO2018/202949に記載されているような、追加の廃棄ラインを有する四方バルブであり得る。三方バルブまたは四方バルブなどのさらなるバルブを、供給経路21に導入するか、または流体分配デバイス100に直接接続することができる。
【0083】
反応器200には、バルブ21Aおよび21Bのいずれか1つ、ならびに任意選択でそれに応じた前駆体供給源(単数または複数)12Xおよび不活性担体供給源(単数または複数)11のいずれか1つを含有する、任意選択で加熱される区画22(「バルブブロック」と呼ばれる)がさらに備えられている。各前駆体供給源12Xを、個別の熱調節を有するカートリッジにさらに封入することができ、そのような供給源の例示的実装は、WO2009/130375に記載されている。
【0084】
図1を参照すると、反応性流体(単数または複数)12は、少なくとも1つの供給経路21に接続され、かつ/またはバルブ21Aを介して前駆体供給源12Aに直接接続された、いくつかの入口103を介して反応チャンバの中に送達される。反応チャンバ201に入る前に、反応性流体(単数または複数)12は、入口103を介して、以下に記載される流体分配デバイス100の中に受け入れられる。
【0085】
側面から見た垂直クロスカット(
図2)および上から見た水平クロスカット(
図5A)で流体分配デバイス100を例解する
図2および
図5Aに対して参照がなされている。
図2の装置200の配向は、
図1と同じである。3次元デカルト座標系では、
図2は、長手方向断面(流体分配デバイス100/装置200とXY平面との交差面)に沿った図を示す一方で、
図5Aは、横(水平)断面(流体分配デバイス100とXZ平面との交差面)に沿った図を示す。反応チャンバ201では、例えば円盤状ウエハなどの基板10は、(
図1の基板ホルダ202に)いわゆる垂直積層に配置され、その際に、基板10の側面は向かい合わせに(互いに平行に)配置される。全ての基板は、反応チャンバ201/反応器200の長手方向軸(Y軸)に沿って配置される。
【0086】
流体分配デバイス100は、拡張領域101および移行領域102を備える。拡張領域101を、反応器の最上部であるという意味で、反応器の「蓋」と見なすことができる。拡張領域101を、任意選択で、例えば溶接などの標準的な技術で反応チャンバに結合された別個の部分によって形成することができる。ゆえに、場合によっては、拡張領域101を、取り外し可能かつ交換可能な区画として提供することができる。移行領域102は、流体ストリームを合流させる効率的な混合のためのいくつかの器具を任意選択で備える、前述の蓋(拡張領域101)と反応チャンバ201との間の領域によって形成される。
【0087】
拡張領域101は、移行領域102によって分離されるが、共通の上部カバー110の下に提供されるサブ領域(サブ容積)101-1、101-2を備える。上部カバー110を、拡張領域101と一体化した(分離不可能な)部分として供給することができ、または代わりに、上部カバー部110を、(例えばメンテナンスを容易にするために)別個の着脱可能な部分として提供することができる。上部カバーは、
図5A~
図5Cおよび
図7A~
図7Dには示されていない。
【0088】
各前述のサブ領域101-1、101-2は、少なくとも1つの入口103を備える。入口103を通って、流体ストリームF1、F2は、拡張領域、具体的にはそれぞれのサブ領域101-1および101-2の中に受け入れられる。
【0089】
好ましい構成では、各サブ領域101-1、101-2は、水平クロスカットで、本質的に三角形の形状を与えられる(
図5A)。サブ領域101-1、101-2を、例えば、合同な辺の間かつ(
図5Aの距離D1によって定められる)移行領域102の入口と反対側にある角に配置された少なくとも1つの入口103を有する、二等辺三角形の形状で提供することができる。距離D1はしたがって、三角形の底辺を定める。
【0090】
各サブ領域101-1、101-2はしたがって、それを横断する距離(幅)が、各入口103と移行領域102との間(d1で示される距離)で、拡張幅D1まで、流体流F1、F2の方向に徐々に増加する内部を有する区画によって確立される(
図5A)。サブ領域101-1、101-2の本質的に三角形の形状のため、流体は、入口103と移行領域102との間を、距離d1で拡張幅D1に、本質的に広がった(放射状)パターンに従って、ただし区画101-1、101-2の内部によって定められる限度内で伝播する。
【0091】
サブ領域101-1、101-2のいずれか1つへの入口(単数または複数)103の提供は、流体ストリームF1、F2が、本質的に互いに向かって、距離d1でサブ領域101-1、101-2を伝播するようなものである(
図2、
図5Aに矢印で示される)。いくつかの実施形態では、サブ領域101-1の入口(単数または複数)103は、サブ領域101-2の入口(単数または複数)と反対側に配置され、したがって流体ストリームF1、F2が、反対方向から互いに向かって伝播することを可能とする。
【0092】
サブ領域101-1、101-2を形成する区画は、内部の高さh1を有する(
図2)。高さh1は、サブ領域の内部にわたって本質的に一定であることが好ましい。それでも、値h1は、例えば特定の流れの条件に適合するために各サブ領域101-1、101-2内で変化することができ、それにより、各入口から移行領域までの間の距離(d1)で増減する高さh1を有する構成を達成することができる。
【0093】
入口103と移行領域102との間の距離d1で拡張幅D1に到達するように徐々に増加する幅を有する実質的に拡張された(「翼の形状の」)区画としてのサブ領域101-1、101-2の提供のような特徴のおかげで、サブ領域101-1、101-2を伝播する流体流(F1、F2)のプロファイルは、層流である。
【0094】
層流(laminar flowまたはstreamline flow)は、本開示の文脈では、乱流のない(乱流速度変動のない)流れと定義される。層流では、流体層/ストリームは、渦巻運動、旋回、または流動(current)の非存在下で平行に滑らかに動く。明確性のために、本発明は、構造詳細の点でも機能性に関しても、任意の種類のベンチュリ用途と混同されるべきではないことに留意する。本発明は、非圧縮性液体を利用せず、高真空条件およびほとんどの場合は高温で、ガス状媒体を利用する。
【0095】
本明細書に記載される装置では、層流は、前駆体流体流および不活性流体流の両方について自然に維持され、後者は、ALDでは例えばパージ期間中に生じる。
【0096】
図2は、入口103の2つの代替構成を示す。左の入口(F1)は、(水平面XZ上に配置された)拡張領域101に本質的に垂直な管として構成される。前述の入口を介して拡張空間に入る流体F1(垂直下向きの流れ)は、本質的に直角(90°)に曲がり、その際に流体ストリームF1は、対向する壁と衝突し、区画101-1を介して移行領域102に向かって流れ抵抗を徐々に減少させながらさらに伝播する。あるいは、流れF1を受け入れるための入口103を、拡張領域101を構成する区画の下部に配置することができ(図示せず)、その際に、流れF1は上向きの方向に確立されるものとする。
【0097】
流れF2を受け入れるための右の入口(
図2)は、2つの直角の曲がり角を有する管として構成される。そのような入口に入る流体F2は、強制的にその方向を2回変化させる。結果として、流体流の慣性は減少する。依然として、入口および/もしくは入口の組み合わせ、ならびに/または装置内の入口(単数もしくは複数)の位置のための、あらゆる他の適切な構成は除外されない。
【0098】
移行領域102(いわゆる装置200の「スロート」)は、拡張領域101と反応チャンバ201との間に確立される。装置200において、移行領域102は、本質的に反対側から到達する流体ストリームF1、F2が合流および混合する領域である。その形状および/または例えば105、106などの様々な構造器具(以下にさらに記載される)に関して、移行領域102は、拡張領域101を介してそこに到達する流体ストリームF1、F2を受け入れかつ混合するように構成され、それにより混合流体ストリームFcが形成され(
図2、
図3A)、これは反応チャンバ201の中にさらに導かれる。
【0099】
移行領域102は、それぞれ幅d2およびd2’の開口として各々提供される入口102Aおよび出口102Bを有するチャネル102A-102Bによって確立される(
図5B)。幅パラメータd2およびd2’は、等しいかまたは互いに異なり得る(d2=d2’またはd2<d2’またはd2>d2’)。さらに、各開口102A、102Bは、各サブ領域101-1、101-2の拡張幅に対応する距離D1に伸びる長さを有する(
図5B)。
【0100】
全体的に、移行領域102の実装は、ストリームF1、F2の効率的な混合を確実にし、それにより前駆体化学物質が堆積表面上に均等に存在するようなものである。したがって、反応チャンバ内の全ての(ウエハ)基板10は、前駆体の均一な層が堆積されるようになり、その結果、前駆体の濃度は、個々の基板(側)面およびバッチ/反応空間内の全ての基板の表面にわたって均一である。混合は、移行領域102において、高度に制御された方法で、渦形成の非存在下、圧力損失なしで実装され、これは効率的なパージをさらに可能とする。
【0101】
典型的には、開口102Bの断面積は、反応チャンバの断面積(XZ)によって定められる一方で、開口102Aの断面積は、設計関連の修正を受け得る。ゆえに、開口102Bの幅d2’は、典型的には反応チャンバ201の幅に対応する(
図5B)。
【0102】
開口102Bはしたがって、移行領域102と反応チャンバ201との境界の輪郭を描き、したがって前述の開口102Bを、反応チャンバの入口とさらに呼ぶことができる。
【0103】
拡張領域101を形成する区画101-1、101-2を、装置200の本体の最上部に設けられた中空の拡張部(「翼」)と見なすことができる。サブ領域101-1、101-2は、開口102Aと入口(単数または複数)103との間に距離d1で広がる。距離D1で、開口102Aは、拡張領域101と移行領域102との境界を形成する(
図5A~
図5C)。
【0104】
拡張領域101の例示的レイアウト(
図5A~
図5C)では、例えば入口103によって確立される、サブ領域の最も遠い点間の距離(
図5A)は、移行領域102を形成するチャネル102A-102Bの幅を定める距離d2の2倍または3倍を超える。
【0105】
実施形態では、チャネル102A-102Bは、その全高(h2)にわたって一定の断面(XZ平面との交差面)を有する。そのような場合、開口102Aおよび102Bは、それらの断面において同一である。いくつかの構成では、チャネル102A-102Bを、その高さにわたって変化する断面(XZ)で構成することができる。
【0106】
実施形態では、入口102A(幅d2)と出口102B(幅d2’)との間の距離(h2)で、チャネル102A-102Bの断面(XZ)は減少する。チャネル102A-102Bの幅はしたがって、値d2から所定の値d3に狭くなり(
図2、
図3A、
図5A、
図5B)、反応チャンバの入口(102B)で値d2’にさらに広がる。
【0107】
チャネル102A-102Bの最も狭い領域は、狭窄領域104によって形成される。いくつかの構成では、移行領域102はしたがって、全距離D1(
図5A、
図5B)で本質的に一定の幅d3を有する狭窄領域104(
図2、
図3A~
図3B)を備える。
【0108】
狭窄領域104は、好ましくは、全距離D1のチャネル102A-102Bの(内)側面112、121(
図2、
図3A)の、幅d3への傾斜によって形成される。前述のチャネルにおいて、表面112、121は、それに応じた入口102Aおよび出口102Bから狭窄領域104(
図5B)に向かう距離で各々徐々に傾斜する。
【0109】
追加または代わりとして、狭窄領域104は、末端面の(内側)傾斜、すなわち側面112、121間に提供される狭い部分を含むことができる(図示せず)。
【0110】
いくつかの構成では、前述のチャネル102A-102Bの少なくとも一部は、ある曲率で傾斜した内側面を有する。場合によっては、チャネルの一部が距離102A-104(表面112)ではある曲率で傾斜しているが、チャネルの一部が距離104-102B(表面121)では傾斜した平面を形成することが有利である(
図2、
図3A~
図3B)。そのような配置は、流体流の方向で定められるような、本質的に水平な平面(XZ)から本質的に垂直な平面(XY)への流体流の滑らかな移行を達成することを可能とする。
【0111】
移行領域102では、本質的に反対の方向(101-1、101-2)からチャネル102A-102Bの中に到達する流体ストリームF1、F2は、合流および混合して混合ストリームFcを形成する。流入する流体F1、F2の混合および混合ストリームFcの形成を、
図2、
図3Aに概略的に示す。
【0112】
図3Aおよび
図3Bは、流体F1、F2の混合を促進するために流体分配デバイス100に設けられたいくつかの追加の器具105、106を例解する。
【0113】
いくつかの構成では、デバイス100は、移行領域102に入る流体ストリームF1、F2の流れ方向を、前述のストリームを本質的に反応チャンバ201に向かって導くよう調節するように構成された、流れ成形要素105を備える。流れ成形要素105を、上部カバー110と一体化した拡張部、または前述の上部カバーの内側に取り外し可能に接続可能な別個の部分として設けることができる。
【0114】
断面において、流れ成形要素105は、ドーム形(
図3A、
図3B)、三角形、および切頂三角形などの形状を有することができる。流体分配デバイス100において、要素105は、好ましくは、その頂点(最も突出した流れ成形部)が反応チャンバ201に面するように配置される。要素105を、距離D1全体を通して同じ断面を有する連続要素として提供することができ、または代わりに、要素105を、前述の距離D1に順次配置されたいくつかの成形された物品(ドーム形、三角形など)として提供することができる。
【0115】
要素105は、区画101-1、101-2を介して移行領域102の中に到達するストリームF1、F2が入口102A(
図5B、要素105は図示されていない)で衝突するのを防ぎ、代わりに、要素105は、ストリームF1、F2を狭窄領域104に向かってガイドする。当該配置は、混合率および混合均一性を改善する。
【0116】
追加または代わりとして、流体分配デバイス100は、移行領域102に配置された混合装置106を備える(
図3B)。実施形態では、混合装置は、(移行領域102内で)距離D1に伸びるシャフトまたはロッドを備え、前述のシャフトに十字形に配置されたいくつかの固定ブレードを設ける(
図3B)。ブレードは、断面を、湾曲した縁の鋭いプロファイルで構成することができる。いくつかの他の実施形態では、ブレードまたは類似のツール(ロッド、棒、指など)を、移行領域102を形成する内部表面またはカバー110に配置することができる。前述のツールを、他の方法、例えば押し出しによっても提供することができる。混合装置106のあらゆる他の適切な実装を除外しない。
【0117】
流体分配デバイス100が器具(単数または複数)105および/または106を備える構成では、チャネル102A-102B内の狭窄領域104の提供を省略することができる。
【0118】
実施形態では、プラズマ発生装置107が提供される(
図3A)。プラズマ発生装置107は、混合装置106を置き換えるか、または補完することができる。後者の場合、プラズマ電極(単数または複数)を、混合装置106の構造に一体化させることができる。設計上の特徴に関して、前述のプラズマ発生装置107は、混合装置106について記載したのと同様の方法で、反応器の内壁に構築および/または接続される。プラズマ発生装置107は、例えばプラズマ電極などの少なくとも1つのプラズマ源を備えるか、またはそれからなる。プラズマ源は、本開示の文脈では、バイパス流体、好ましくはガスからプラズマを発生および/または放出することができる装置と定義される。さらに、装置200は、誘導結合プラズマを発生させるためのデバイス(単数または複数)などの、反応チャンバの外側に配置されたプラズマを発生させるための1つ以上のデバイスを含むことができる。そのようなデバイス(単数または複数)は、好ましくは、高周波誘導コイルおよび高周波電源(図示せず)を含む。
【0119】
いくつかの構成では、プラズマ発生装置107は、少なくとも1つのプラズマアンテナを備えるか、またはそれからなる。前述のプラズマアンテナ(単数または複数)を、(混合装置106について上に記載したように)距離D1に伸びる個々のロッドの形態で、または移行領域102を形成する内部表面またはカバー110に配置された1つ以上の「指」として提供することができる。
【0120】
移行領域で混合されたストリームF1、F2を含む混合流体流(Fc)は、反応チャンバ201の中にさらに導かれる。反応チャンバの入口102B(
図3A)で確立され、前述の反応チャンバを伝播する流体流を、
図2、
図3Aに流れFで示す。反応チャンバの入口で確立され、前述の反応チャンバの長さ全体を通って基板10の間を伝播する流れFは、層流である。
【0121】
反応器200では、拡張領域101(101-1、101-2)から反応チャンバ201に向かう途中の移行領域102を通る流体ストリームF1、F2の伝播は、前述の流体ストリームの方向の変化を伴う。実施形態に係る流体分配デバイス100の提供によって、かつ垂直積層に配置された基板のバッチを包含する閉鎖空間として提供される比較的平坦な反応チャンバ201のおかげで、移行領域102を伝播する流体パターンにおけるジェット、渦および/または旋回の形成は防がれる。
【0122】
反応器200は、その各区画を通る流体の流れが層流に維持されるような方法で構成される。明確性のためにストリームF1、F2、Fc、Fとして示される流体は、変動または不規則性の非存在下、規則的な経路でそれぞれの区画101-1、101-2、102、201を各々通って移動し、それにより、流速、圧力、加速度、および他の流れの特性は、各特定の区画を通って移動する流体流の各仮想断面内のいずれの点においても本質的に一定のままである。上述のパラメータは、先端および流体流の方向の流体経路を横断する各(仮想)クロスカット内で本質的に一定に維持されるが、いくつかのパラメータ値(圧力、流速)は、入口10から基板10に向かう流体経路全体を定める距離において、かつ/または反応チャンバ201を伝播する時に、減少してもよい。
【0123】
移行領域102(「スロート」)は、層流条件での流体の効率的な(対流および拡散)混合を可能とするような方法で実装される。前述の移行領域では、本質的に反対の方向から到達する流体ストリームF1、F2は、再分配および再混合されて(Fc)、乱流を伴う渦またはジェットの非存在下で、堆積装置の長手方向軸Yに対応する流れ方向Yに平行な流れFを形成する。移行領域102での層流混合は、流体分配デバイス100および反応チャンバ201の特徴的な構成により達成される。
【0124】
ストリームF1、F2は、拡張領域101との境界D1を有する移行領域102で合流および混合する(
図5A~
図5C)。混合ストリームFcは、流れFの形態で、実質的に平坦な細長い本体として構成された反応チャンバ201の中に伝播する。反応チャンバ201は、(
図5Bに102Bで示されるその移行領域との境界から排気までの)Y軸により定められるその長さ全体を通して一定の断面(XZ平面)を有することが好ましい。
【0125】
反応チャンバの入口で確立された流れFはしたがって、本質的に一様な速度で、前述の反応チャンバの長さを通って基板10の側面の間を伝播する。
【0126】
実施形態に係る反応器200は、反応チャンバ201全体の長さを通して前駆体流体12の層流(F)を確立することによって、全ての基板表面上に同時にコーティング膜を均一に堆積させることを可能とする。層流条件では、前駆体流体12は、先端において本質的に一様な速度で、基板10の側面の間を伝播する。装置200は、(基板間の不均一かつ/または乱流の前駆体流体流によってもたらされる)積層中の基板への不規則な堆積速度に起因し、従来の化学蒸着反応器でよく起こる堆積不良を回避することを可能とする。
【0127】
反応器200では、前駆体の均一な濃度(所定の体積中に本質的に同じ量の前駆体分子)が、反応チャンバの入口(102B、断面XZ)で達成される。前駆体濃度は、前駆体流体が、定常層流Fの形態で、反応チャンバの長さ全体を通って基板10の間を伝播する時に、本質的に均一に維持される。ゆえに、基板10の全ての面は、同じ厚さ、および堆積表面(単数もしくは複数)にわたる前駆体分子の均一/均等な分配を有する膜が堆積されるようになる。
【0128】
基板を反応チャンバ内で並べてかつ互いに近接して配置する(ただし、間に隙間を残す)ことは、前述の基板10の間に層流を確立することに寄与する。実際に、反応チャンバを異なるサイズで提供して、非限定的に、25~300mmの範囲内の直径を有する円盤状ウエハ基板などの、様々な規格の基板に寸法的に適合することができる。反応チャンバ201(およびそれに応じた反応器設備全体200)をさらに修正して、300mmを超える直径の基板を組み込むことができる。
【0129】
円盤状基板10が利用される場合、反応器200/反応チャンバ201の排気端を、湾曲させるか、または弓形にすることができる(
図6A)。
【0130】
前駆体化学物質が移行領域102に到達する前にこれらの化学物質が流体分配デバイス100で混合するのを防ぐために、かつ反応器200を通して一様な流量に定常流を維持するために、以下の配置を行うことができる。
【0131】
(例えば第1のサブ領域101-1を介した)反応チャンバの片側への前駆体化学物質の送達中に、前述の化学物質は、堆積反応器の中への供給経路(単数または複数)21を通って連続的に流れる不活性流体の流れの中に、三方または四方バルブを介して導入(注入)される。同時に、(例えば第2のサブ領域101-2を介した)他の方向からの不活性流体11の一定の流れが存在する。理想的な条件では、両側(101-1、101-2)の供給経路内の圧力は、本質的に同じ(例えば5mbar)に維持される。しかしながら、供給経路内の圧力は、前駆体化学物質を含有する容器内で通常維持される、より高い圧力(例えば10mbar)のため、前駆体化学物質が前駆体供給源から前述の供給経路に21に注入された瞬間に変化する。これを、以下のようないくつかの方法によって補償することができる:
-マスフローコントローラまたは別の適切な調整デバイスを用いた、前駆体注入供給経路での急速流れ変更、
-もう一方の側(不活性流体供給)の供給経路内の流量を増加させて、前駆体注入供給経路内の増加した圧力に一致させることによる、前駆体注入供給経路での圧力補償、および
-マスフローコントローラに並列に追加されたバルブを用いた、前駆体注入供給経路での急速圧力変更(増加または減少)。
【0132】
図4Aおよび
図4Bに参照がなされ、ここで
図4Aは、反応器200における3次元の流体伝播に関する洞察を当業者に提供することを目的とし、
図4Bは、拡張容積(単数または複数)101の様々な構成を示す。基準座標系は、3次元デカルト座標系で指定される。
【0133】
図4Aの図式は、(
図5Aに示すように上から見た)流体分配デバイス100の水平クロスカット図と、(
図1、
図2、
図3Aまたは
図3Bのいずれか1つに示すように側面から見た)反応チャンバ201の垂直クロスカット図とを組み合わせている。
【0134】
図4Aは、堆積装置200の長手方向軸(Y軸)に沿った長手方向断面(XY)との交差面として反応チャンバ201を示す。拡張領域101を形成するサブ領域101-1、101-2は、前述の堆積装置の長手方向軸Yと本質的に直交する水平断面(XZ)との交差面として示される。断面XZは、
図4Bに参照記号P1で示される。前述の断面P1はさらに、サブ領域101-1、101-2が配置される平面と見なされる。
【0135】
図4Bは、反応チャンバ201を形成する本質的に平坦な細長い容器の配向を平面1(P1)に関してさらに示す。反応チャンバ201はしたがって、堆積装置200の長手方向軸(Y軸)に沿った長手方向断面(YZ)との交差面として、
図4Bに示される。
【0136】
断面(YZ)は、堆積装置200の長手方向軸(Y軸)に沿ったサブ領域101-1、101-2の対称面を形成する。いくつかのささいな詳細(例えば入口103の構成)を除いて、平面YZは装置200を半分に二等分し、それらは互いに鏡像であり、そのような各半分はサブ領域101-1、101-2を含む。
【0137】
堆積装置200の長手方向軸に沿ったサブ領域101-1、101-2の対称面は、
図4Bに参照記号P2で示される。
【0138】
図4Bに示す構成(i)は、
図5A~
図5Cに示す実施形態に対応する。構成(i)にかかる反応器では、流体分配デバイス100は、拡張領域101(101-1、101-2)を伝播する流体ストリームF1、F2の方向が、反応チャンバ201を伝播する流体流Fの方向に本質的に垂直であるように構成される。
【0139】
構成(i)では、水平面P1はしたがって、垂直面P2に垂直である。
【0140】
(i)および(iii)において、
図4Bは、区画101-1、101-2が平面P1上にない代わりに、各区画が所定の角度α(アルファ)だけ前述の平面P1から傾斜している、反応器200の代替構成を示す。各区画/サブ領域101-1、101-2の傾斜面は、参照記号P1’で示される(
図4Bのii、iii)。
【0141】
したがって、構成(ii、iii)では、サブ領域101-1、101-2は、断面P1’に各々配置され、そのような各平面P1’は、断面(P1)に対して所定の角度だけ傾斜している。明確性のために、
図4Bは、平面P1を破線の囲みとして示す一方で、傾斜した平面P1’は、実線の輪郭を有する。
【0142】
傾斜角(アルファ)を、XZ平面から0~180度、またはより好ましくは5~45(95~135)度の範囲内で提供することができる。
図4Bでは、直角α1(アルファ1)および直角α2(アルファ2)は、合わせて0~180度の範囲を定義する。構成(ii、iii)を実践するために、各サブ領域の傾斜の境目は、上に記載されたような移行領域102の各側の境界D1に沿うべきである。
【0143】
傾斜した平面P1’は鏡映対称であることがさらに好ましい。
【0144】
上に記載された全ての構成では、流体分配デバイス100は、全ての前述の区画101、102、201において層流を維持しながら、移行領域102において、各流体ストリームF1、F2が、断面P1、P1’(拡張領域101)から断面P2(反応チャンバ201)に曲がるように構成される。平面P2(YZ)はさらに、堆積装置200の長手方向軸(Y軸)に沿ったサブ領域101-1、101-2の対称面と定義される。
【0145】
【0146】
上に記載された構成では、基板10は、それらの側面が前述の平面P2(YZ)と整列するように置かれる。ゆえに、垂直積層に配置されて反応チャンバの中に置かれた基板のバッチでは、全ての基板は前述の平面P2に平行である。
【0147】
図6Aおよび
図6Bは、反応器200が、反応チャンバ201を出る排気流の方向を変更するように配置された排気アセンブリをさらに備える実施形態を例解する。排気アセンブリは、排気導管41および導管41を収容するように構成されたエンクロージャ42によって形成される。排気アセンブリは、ベンドありまたはベンドなしの少なくとも1つの管として構成された排気マニホールド40に接続可能である。ベンドは、例えばJ字ベンドであり得る。マニホールド40により、反応器は、フィードスルー装置43を介して真空ポンプフォアライン401にさらに接続可能である(真空ポンプは示されていない)。
図6A、
図6Bに示された反応器200に関するマニホールド管(単数または複数)40の配置は例示的なものであり、特定の実装に応じて変化してもよい。
【0148】
排気アセンブリ41、42は、一般的な硬い排気管を、反応チャンバに直接取り付けられたベンド(例えばJ字ベンド)で有利に置き換える(図示せず)。
【0149】
図6Aでは、上側の破線の囲みは、マニホールド40のない反応器200/反応チャンバ201の排気端を示す。排気端において、反応器は、出口開口部41Aを有する排気導管41を設ける。排気導管41のものより大きい直径を有する「カップ」として構成された排気エンクロージャ42は、前述の導管の周りに配置される。
図6Aの構成では、カップ状エンクロージャ42が、導管41上に装着される。エンクロージャ42は、その側壁に位置する、任意選択でオリフィスまたはオリフィスパイプとして構成された、開口部42Aを有する。エンクロージャ42は、マニホールド40と反応チャンバ201との間の接続を媒介する(下側の破線の囲み)。エンクロージャ42の硬い底は、反応チャンバを出る排気流(Fex)の「行き止まり」を形成し、排気流を、前述のエンクロージャの側壁に配置された開口部/オリフィス42Aを介してマニホールド40の中に強制的に通す。排気導管41(
図6Aの上側の破線の囲み)を介して反応チャンバ201から排出された流れ(排気流Fex)は、エンクロージャ42(
図6Aの排気カップ42)の硬い底にぶつかり、そこから前述の排気流は、エンクロージャ42の内部で強制的に曲げられる。要素41、42は、所定の角度、好ましくは最小90度の角度で曲がる排気流を支持するように構成される。
図6Aに示す構成では、排気流の曲がりは、前述の流れが到達した方向から本質的に反対の方向、すなわち反応チャンバの方向に、約180度である(
図6Aの上下の破線の囲み)。180度の曲がりは、エンクロージャ42の内部で生じる。したがって、排気流Fexは、排気導管41で方向転換(「Uターン」)し、開口部(単数または複数)/オリフィス(単数または複数)42Aを介してエンクロージャ42を出で、少なくとも1つのマニホールド管40に入る。前述のマニホールド管(単数または複数)40では、流れ方向は、排気導管41の中での方向/排気導管41を通る方向に本質的に垂直であり得る。明確性のために、上側の破線の囲みからカップ42の図示を省略している(
図6A)。
【0150】
図6Bは、排気アセンブリ41、42の代替実施形態を示す。本明細書では、排気導管41は、反応チャンバの幅全体(Z軸)にわたる反応チャンバ201の底面の傾斜によって確立されて、細長い出口開口部または隙間41A(XZ平面)を有する徐々に狭くなるチャネルを形成する。前述のチャネルは、反応チャンバ201のその底部での形状に合うように適合された細長いエンクロージャ空間42の中に封入される。実施形態を、例えばUターンなどの曲がりが、エンクロージャ42内の導管41により確立された中間壁によって形成される、「二重」底を有する反応チャンバ201と見なすことができる。本構成では、排気流(Fex)は、エンクロージャ42の中にある反応チャンバ全体の端部にわたって、少なくとも90度の曲がりなどの、所定の角度で曲がる。いくつかの構成では、前述の曲がりは、約180度の曲がりである。
【0151】
Uターンする排気流を、例えばいくつかの流れガイドで、XY平面に少なくとも部分的に限定することができる。このようにして、Z方向の反応チャンバの幅にわたる排気の均一性を改善することができる。流れパラメータをさらに最適化するために、例えばフィードスルー配置43(
図6A)などの、真空ポンプフォアラインを形成する構成要素の寸法を調節することができる。
【0152】
図6Bはしたがって、反応器200/反応チャンバ201の反対側に位置する2つの管を備える排気マニホールド40を有する構成を示す。特定の設計およびその最適化に応じて、1つの管または任意の他の数の管を備えるマニホールドの提供が可能である。
【0153】
開口部/オリフィス42Aを、フランジまたはカラーによって対応するマニホールド管40に接続することができる。そのような場合、マニホールド管40に面するオリフィス42Aの出口開口部は、前述のマニホールド管と本質的に同じ直径を有することが好ましい。いくつかの代替構成では、オリフィス42Aをマニホールド管40の内部に合うように構成することができ、それにより摺動接続を作り出すことができる(
図6Aの下側の破線の囲み)。記載された両方の構成では、カップ42とマニホールド40との間の接続を、例えば溶接によってさらに固定することができる。
【0154】
上に記載された流れの曲がりを伴う排気アセンブリの利点は、流れの条件について妥協することのないコンパクトな設計である。排気導管41およびエンクロージャ42は、排気導管41を介して反応チャンバ201を出る排気流(Fex)が、エンクロージャ42の中に留まったまま、前述の導管41を形成する壁の周りに、例えば約180度の曲がりで曲がる通路を共に形成する。エンクロージャ42から、その少なくとも1つの側壁に配置された開口部42Aを介して、排気流は排気マニホールド40の中にさらに導かれる。排気流は、(管の直径以下の中心線半径を有する約90度のベンド、いわゆる「短半径エルボ」を備える従来の排気管でよく生じるような)圧力損失が事実上なく、180度曲がる。前述の短半径エルボによる解決策などの既知の解決策と比較して、排気アセンブリ41、42は、反応器200の全長を短くすることを可能とする。
【0155】
薄膜堆積システム500の様々な実施形態を例解する
図7A~
図7Dに対して参照がなされている。システム500は、順次かつ/またはアレイ状(単数もしくは複数)に接続された、いくつかの、上に記載されたような堆積装置200を備えるモジュール式システムである。順次接続(直列接続)が、順次配置されて列を形成するいくつかの反応器ユニット200を示す
図7Aおよび
図7B(500A、500B)で例解されている。アレイ接続(「並列」接続)が、
図7C(500C)で例解されている。各反応器ユニット200はしたがって、システム内の個々のモジュールを構成する。
【0156】
システム500は、基板10を基板ホルダ202および/または反応チャンバ201の中に載置し、基板を取り出し、任意選択で基板を反応器ユニット200間で輸送するための、少なくとも1つの基板ハンドラ(図示せず)をさらに備えることが好ましい。システム500内の反応器ユニット200間の接続は、前駆体流体を個々の堆積反応器の中に供給する流体送り込みライン21および/またはマニホールドによって確立される。反応器ユニット200を、12A、12B、12C、12D、12E、12G、および12Fのいずれか1つとして提供される所定の前駆体化合物が、前駆体供給源から、任意選択で互いに隣接している少なくとも2つの反応器ユニットの中に導かれるように配置することが好ましい。実施形態では、前駆体供給源は、同じ前駆体(共通の前駆体)を少なくとも2つの反応器ユニットの中に供給する共通の前駆体供給源である。実施形態では、隣接する反応器ユニット200間の各接点で、共通の前駆体化学物質は、供給経路マニホールドを介して各反応器ユニットに振り向けられる。反応器ユニット200間の接点を、異なる反応器ユニットに設けられているが互いに隣接して配置された、いくつかの入口103と見なすことができる。接点は、少なくとも2つの反応器ユニット間に確立される(
図7A、
図7B、
図7D)。各接点に4つの反応器を有する配置を
図7Cに示す。前駆体(単数または複数)を、前述の少なくとも2つの反応器ユニットの中に同時にまたは順次供給することができる。実施形態では、所定の接点での反応器ユニット200の中への例えば12Aなどの特定の前駆体化学物質の供給は、システム500において、バルブ21Aの特定のセットを作動させて、前述の前駆体化学物質12Aを、関連する1つ以上の前駆体供給源から、全ての前述の所定の接点で反応器ユニットの中に、特定の反応設計に従って同時に供給するように同期される。例として、
図7Bに示された構成では、第1および第2の反応器ユニット間の接点ならびに第4および第5の反応器ユニット間の接点(左から右に採番)は、例示的な前駆体化学物質12Bを受け入れる。実施形態では、システム500Bは、前駆体12Bが、前述の接点を形成する反応器ユニット200の入口103の中に同時に送達されるように同期される。同期は、有利には、以下にさらに記載される制御システムを介して行われる。
【0157】
共通の前駆体供給源を2~10個のモジュールに接続することが実現可能であり得、11個以上のモジュールを備えるアレイを構築する場合、いくつかの共通の前駆体供給源を利用することが好ましい場合がある。
【0158】
システム500では、反応器ユニット200は、各堆積反応器が、入口103を介して少なくとも2種の異なる前駆体を供給されるようにさらに配置される。
【0159】
順次接続とアレイ接続との組み合わせを、例えばシステム500Aおよび/または500Bに設けられたモジュールをいくつかの列に配置し、アレイを形成するようにモジュールを接続することによって確立することができる。反応器ユニット200をリング状配置にさらに配置して、システム500Dを形成することができる(
図7D)。リング内のいくつかのユニット200およびそれに応じたリングの形状(例えば
図7Dに示すような六角形)を、特定の堆積システム用に調節することができる。
【0160】
システム500A(
図7A)は、2種の前駆体12Aおよび12Bを利用する。例として、前駆体12Aがトリメチルアルミニウム(TMA)であり、12Bが水である場合、酸化アルミニウム(12A+12B)の効果的な堆積を、いくつかのモジュール200で同時に実装することができる。不活性流体でのパージを、吸入ライン(単数または複数)21または吸入マニホールド(単数または複数)と連結した上記の三方および四方バルブ21A(例えばALDバルブ)を介して実装することができる。
【0161】
システム500B、500C、および500D(
図7B、
図7C、および
図7D)は、複数の反応器ユニット200の同時動作を可能とし、その際に、順次(500B)またはアレイ状(500C、500D)の個々の堆積反応器を、基板10に別個のコーティングを堆積させるように構成することができる。例として、システム500Bは、基板に以下のコーティング:12A+12B、12B+12C、および12A+12Cを堆積させるように構成される。
【0162】
備考として、個々の反応器ユニット200(モジュール)の反応チャンバの中に載置されたバッチ中の全ての基板10に、同一のコーティングが堆積される。したがって、別個のコーティングの提供は、モジュールごとに調節される。
【0163】
システム500Cは、いくつかのアレイを備え、各アレイは、4つの相互接続された反応器ユニット200を備える。アレイ内の全てのユニットは、少なくとも1種の共通の前駆体(12A、12B、12C、供給源は各アレイの中央にある)を供給される。例として、共通の前駆体は、第1の前駆体である。実際に、共通の前駆体を、第1の前駆体、第2の前駆体、または任意の他の後続の前駆体として提供することができる。さらに、アレイ内の各反応器ユニット200は、第1の前駆体と異なる別の前駆体(例えば第2の前駆体)を供給されて、化学蒸着反応を開始する。500Cとして具現化されたシステムが、例えばハニカム状配置で配置された2つ以上のアレイの列を含有する場合(図示せず)、第1および第2の前駆体の両方を、ハニカム配置の中の異なる反応器ユニット200に関して「共通の」前駆体と見なすことができる。
【0164】
例として、システム500は、金属酸化物の堆積用のいくつかの反応器ユニット200、ならびに金属および/または金属窒化物の堆積用のいくつかの反応器ユニットを備えることができる。システムは、基板を基板ホルダまたは反応チャンバの中に載置し、基板を取り出し、任意選択で基板を堆積反応器間で輸送するための、基板ローダ(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0165】
図7A~
図7Dに示された構成は、限定と見なされるべきではなく、むしろ、与えられた例に基づいて任意の適切な構成でシステム500を実装するために当業者にガイダンスを提供するものであることに留意すべきである。同様に、前駆体のあらゆる好適な組み合わせを利用することができる。
【0166】
図8は、装置200および/またはシステム500の制御システム300を例解するブロック図である。システム300は、システム500内のいくつかの反応器ユニット200を管理するように構成された中央制御空間305と通信する少なくとも1つの処理ユニット(CPU、301)を備える。前述の中央制御空間305および任意選択で処理ユニット301は、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)302および関連するソフトウェアと通信するように設定される。基本的なシステムでは、設定プロセスパラメータは、ソフトウェアを用いてプログラムされ、命令は、HMI端末302で実行され、ライン307を介して、中央制御空間305および任意選択で(図示せず)処理ユニット301に直接またはリモートで通信される。ユニット301、305のいずれか1つは、メモリに格納されたプログラムコードを実行するための少なくとも1つのマイクロプロセッサ、ダイナミックおよびスタティックランダムアクセスメモリ、I/Oモジュール、A/DおよびD/A変換器、ならびに電力リレーを備える。
【0167】
処理ユニット301は、バルブコントローラ321と信号を送信および/または受信し(これはバルブ21A、21Bの動作を調整する)、信号をヒータコントローラ322に送信し(これはヒータ204および/または前駆体供給源カートリッジヒータの動作を調整する)、熱電対323、圧力トランスデューサ324、およびスイッチ326(例えば過熱スイッチ)の出力値を読み取り、マスフローコントローラおよび/またはセンサ325、基板ローダ327、プラズマ発生装置107の制御手段328、ならびにオゾン発生器320および関連する制御手段と双方向通信する。上述のデバイス321~327と処理ユニット301との間の信号伝送路を、
図8に符号306で概略的に示す。破線310は、処理ユニット301と堆積反応器200の部品との間の境界線を示す。(符号311で示される)矢印は、処理ユニット301とモジュール321~329との間の通信回線(一方行または双方向)を示し、矢印の方向は例示的なものであり、構成に応じて変化してもよい。
【0168】
実施形態では、HMI端末302および処理ユニット301のプログラムコードは、有線または無線通信回線303、309を介して固定リモートアクセスポイント304から更新される。
【0169】
制御システム300内で、中央制御空間305は、有線または無線通信回線308を介して、システム500内のいくつかの反応器ユニット200および任意選択で基板ハンドル(単数または複数)を管理するためにさらに提供される。システム500において、モジュール200を、(上に記載されたような接点での)様々な隣接する反応器ユニットの中への前駆体化学物質の同期された送達、および自動ウエハ処理ラインへのALDプロセスなどの様々な堆積プロセスの統合を可能とするような方法で、中央制御空間305に接続することができる。
【0170】
制御システム300を、ユーザインタフェースおよび関連するソフトウェアを備えた一体化型または独立型CPUソリューションとして提供することができる。処理ユニット301および/または中央制御ユニット305のためのソフトウェア管理機能は、ローカルおよび/またはリモート制御(単数または複数)の実装、いくつかの堆積反応器モジュールの監視、ならびに緊急電源制御(単数または複数)などをさらに含んでいてもよい。
【0171】
本発明は、薄膜堆積装置で材料を基板表面上に堆積させるための方法にさらに関する。方法は、上に記載された実施形態に係る流体分配デバイス100を有する装置200を有利に利用する。
【0172】
実施形態では、方法は、
それらの側面が互いに隣接して配置された基板10を収容するための反応チャンバを備える薄膜堆積装置200、ならびにサブ領域101-1、101-2を含む拡張領域101および移行領域102を備える流体分配デバイス100を得ることと、
流体ストリームF1、F2が本質的に互いに向かう方向にサブ領域を伝播するように、各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口103を介したサブ領域101-1、101-2の中への流体の流れF1、F2を確立することであって、少なくとも1つの流体ストリームF1、F2は、少なくとも1種の前駆体12X、12A、12B、12C、12D、12E、12F、12Gを含むことと、
流体ストリームF1、F2を移行領域102で混合し、それにより、前述の少なくとも1種の前駆体を含む前駆体流体を形成し、前述の前駆体流体を反応チャンバ201の中にさらに導くことと、
反応チャンバの入口で前駆体流体の層流Fを確立することによって材料を基板表面上に堆積させ、前述の前駆体流体を前述の反応チャンバの長さを通して基板10の側面の間を伝播させる時に、前述の層流を維持することと
を含む。
【0173】
前述の方法では、前駆体流体は、先端において本質的に一様な速度で、基板10の間を伝播する。
【0174】
本発明は、薄膜堆積用装置における流体の均一な分配のための方法にさらに関する。方法は、上に記載された実施形態に係る流体分配デバイス100を有する装置200を有利に利用する。
【0175】
実施形態では、方法は、
それらの側面が互いに隣接して配置された基板10を収容するための反応チャンバ201を備える薄膜堆積装置200、ならびにサブ領域101-1、101-2を含む拡張領域101および移行領域102を備える流体分配デバイス100を得ることと、
流体ストリームF1、F2が本質的に互いに向かう方向にサブ領域を伝播するように、各サブ領域に配置された少なくとも1つの入口103を介したサブ領域101-1、101-2の中への流体の流れF1、F2を確立することと、
流体ストリームF1、F2を移行領域102で混合することと、
反応チャンバの入口で確立され、前述の反応チャンバの長さを通って基板10の側面の間を伝播する流れFが層流であるように、混合流体ストリームを反応チャンバ201の中に導くことと
を含む。
【0176】
さらに、本発明は、コーティング材料の薄膜を基板表面上に堆積させるための、実施形態に係る薄膜堆積装置200の使用に関する。実施形態では、装置200は、化学蒸着法、特に原子層堆積(ALD)法に利用される。
【0177】
実施例1
実施例は、乱流を回避した層流パターンの確立の点で薄膜堆積装置200の性能を実証するために行われた実証実行を例解する。例示的なAB型のALD反応を、反応チャンバの中に順次送達される2つの前駆体、すなわちトリメチルアルミニウム(TMA)および水からの酸化アルミニウム(Al2O3)の堆積について、300℃で行った。前述の反応に供給される少なくとも1種の前駆体化学物質の量は、反応チャンバを通ってウエハ基板(14枚のウエハ)の間を伝播する時に、前述の化学物質が、ウエハ(単数または複数)のおよそ半分のところで終わる程度に制限された。
【0178】
図9は、以下のように配置された14枚のウエハ基板10のバッチへのTMA導入(0.1秒)から得られた、酸化アルミニウムコーティングの厚さマップ(nm)を示す:9Aは、ドア(203)側の第2の(2
nd)スロットにあるウエハであり、9Bは、ドアと反対の反応チャンバの壁側の第2のスロットにあるウエハを示し、9Cは、ドア側の第8(8
th)のウエハであり、9Dは、壁側の第8のウエハである。9Aおよび9Bは、反応チャンバの側面のより近くに配置されたバッチ中のウエハのコーティング結果を示す一方で、9Cおよび9Dは、バッチの中央に配置されたウエハの結果を示す。反応チャンバを伝播する前駆体流体(F)の流れ方向を、矢印(下から上)で示す。全てのウエハの両側面に、Al
2O
3コーティングが(部分的に)堆積された(片面を
図9のマップA~Dに示す)。
【0179】
図9は、ウエハA~D上のコーティングされた領域(より暗い領域)と前述のウエハ上のコーティングされていない領域(より明るい領域)との境目を明確な鋭い輪郭で示す。全てのウエハ(端のスロットおよび中央のスロット)で本質的に同じサイズのコーティングされた領域の輪郭を描くため、境目は均一であり、これは、基板チャンバ内の全ての基板間での、前駆体流体の均等な伝播を示す。全ての基板ウエハの均一な被覆は、乱流がないこと示す。反応チャンバを通る前駆体流体と共に伝播する前駆体化学物質は、バッチ中の全てのウエハ上に等しく沈着し、これは、流体分配デバイス100の移行領域での効率的な混合、およびその先端における本質的に一様な前駆体流体速度を達成するための反応チャンバ内での層流条件の確立の結果である。
【0180】
図10は、上に記載されたものと同様の条件であるが、ウエハ基板全体を被覆するように調節された前駆体化学物質の用量を用いて堆積された、酸化アルミニウムコーティングの厚さマップ(nm)を示す。反応条件は、さらに最適化されなかった。
図10によれば、上に記載された反応で達成可能な不均一率は、さらなる最適化なしでも、1%未満に相当する。したがって、
図10に示されたマップでは、合計81個の点がエリプソメータデバイスで測定され、不均一率はわずか0.54%に相当した。
【0181】
本開示に記載されている実施形態を所望どおりに適合および組み合わせ可能であることが当業者によって理解されるであろう。したがって本開示は、添付の特許請求の範囲内で当業者によって認識可能な、本明細書に記載の装置およびシステムのあらゆる可能な修正を包含することが意図されている。