(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
A61M25/00 506
(21)【出願番号】P 2022528454
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012978
(87)【国際公開番号】W WO2021246031
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020095666
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】本▲瀬▼ 有司
(72)【発明者】
【氏名】島田 大輔
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-096265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0340860(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139754(US,A1)
【文献】国際公開第2014/103599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、
前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、
前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、
前記収容部は、
前記ハブおよび前記シャフトの融着時に融解して縮径した収容面とほとんど変形しない外周面とを有し、前記収容面に、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、
前記収容部または前記ハブの少なくとも一方は、
前記収容部の外周面と異なる前記ハブ融着面に近接する位置に複数の気泡が形成されることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記収容部は、前記ハブ融着面に近接する位置に気泡である複数のハブ気泡が形成されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記シャフトは、前記ハブ融着面に融着される前記シャフト外表面のシャフト融着面に近接する位置に気泡である複数のシャフト気泡が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記ハブおよび前記シャフトの両方が複数の前記気泡を有し、前記ハブ融着面および当該ハブ融着面に融着される前記シャフト外表面のシャフト融着面は、凹凸を有して互いに入り込むように融着されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、
前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、
前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、
前記収容部は、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、
前記ハブ融着面に近接する位置の前記シャフトのみに複数の気泡がシャフト気泡として形成されることを特徴とするカテーテル。
【請求項6】
先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、
前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、
前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、
前記収容部は、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、
前記ハブ融着面に近接する位置の前記ハブのみに複数の気泡がハブ気泡として形成されることを特徴とするカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外科的侵襲が非常に低いという理由から、カテーテルを用いた血管等の管腔内の治療が盛んに行われている。カテーテルは、通常、先端から基端まで連通するルーメンを有するシャフトと、シャフトの基端に配置されるハブとを有している。ハブは、シリンジなどと接続するために、ルーメンに連通する通路が形成される。
【0003】
ハブにシャフトの基端を固定する方法として、インサート成形方法、接着剤による接着方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-180802号公報
【文献】実公昭63-17486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインサート成形方法は、シャフトを射出用金型内に配置して固定ピンでシャフトの一部を抑えて、ハブ用の樹脂を高温高圧で射出成型する。このため、固定ピンによるシャフトの変形やシャフトの軸心方向へのずれが生じる可能性がある。シャフトの変形や軸心方向のずれは、シャフトとハブの固定強度の低下を生じさせる可能性がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の接着剤による接着方法では、シャフト外径とハブのシャフト収容部の内腔の隙間が小さすぎると、接着剤が流入できずに、ハブとシャフトの間に隙間が残り、シャフトとハブの固定強度の低下を生じさせる可能性がある。シャフト外径とハブのシャフト収容部の内腔の隙間が大きすぎると、ハブとシャフトの間の隙間を接着剤により完全に満たすことが困難となり、シャフトとハブの固定強度の低下を生じさせる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、シャフトとハブを強固に固定できるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルは、先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、前記収容部は、前記ハブおよび前記シャフトの融着時に融解して縮径した収容面とほとんど変形しない外周面とを有し、前記収容面に、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、前記収容部または前記ハブの少なくとも一方は、前記収容部の外周面と異なる前記ハブ融着面に近接する位置に複数の気泡が形成されることを特徴とする。
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルの他の態様は、先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、前記収容部は、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、前記ハブ融着面に近接する位置の前記シャフトのみに複数の気泡がシャフト気泡として形成されることを特徴とする。
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルのさらに他の態様は、先端から基端まで連通するルーメンが形成された管体であり、前記ルーメンが開口するシャフト基端面および前記管体の外周面であるシャフト外表面を備えたシャフトと、前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、前記ハブは、前記シャフトを収容する筒状の収容部を有し、前記収容部は、前記シャフト外表面と直接的に融着したハブ融着面を有し、前記ハブ融着面に近接する位置の前記ハブのみに複数の気泡がハブ気泡として形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したカテーテルは、気泡により収容部とハブが互いに入り込むように融着される。このため、シャフトとハブを強固に固定できる。
【0010】
前記収容部は、前記ハブ融着面に近接する位置に気泡である複数のハブ気泡が形成されてもよい。これにより、収容部のハブ融着面は、凹凸を有する複雑な形状となってシャフトの外表面に融着されている。このため、シャフトとハブを強固に固定できる。
【0011】
前記シャフトは、前記ハブ融着面に融着される前記シャフト外表面のシャフト融着面に近接する位置に気泡である複数のシャフト気泡が形成されてもよい。これにより、シャフト外表面は、凹凸を有する複雑な形状となってハブ融着面に融着されている。このため、シャフトとハブを強固に固定できる。
【0012】
前記ハブおよび前記シャフトの両方が複数の前記気泡を有し、前記ハブ融着面および当該ハブ融着面に融着される前記シャフト外表面のシャフト融着面は、凹凸を有して互いに入り込むように融着されてもよい。これにより、シャフトとハブをさらに強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るカテーテルを示す平面図である。
【
図2】ハブおよびシャフトの基端部を示す断面図である。
【
図3】ハブの先端部およびシャフトの基端部を示す断面図である。
【
図4】シャフトが固定される前のハブの先端部を示す断面図である。
【
図5】ハブにシャフトを融着する過程を示す断面図であり、(A)は融着を開始した状態、(B)は融着している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。以下の説明において、カテーテルの操作する側を「基端側」、生体内へ挿入される側を「先端側」と称することとする。
【0015】
本発明の実施形態に係るカテーテル10は、
図1~3に示すように、長尺な管体であるシャフト20と、シャフト20の基端に固着されたハブ40と、シャフト20の折れ曲がりを抑制するための柔軟な耐キンクプロテクタ60とを備えている。カテーテル10は、ガイドワイヤをサポートするカテーテルの他、ガイディングカテーテル、造影カテーテル、マイクロカテーテルでもよく、あるいは拡張用のルーメンを有するバルーンカテーテルや画像診断カテーテルでもよい。また、カテーテル10は、シャフトの先端からハブまで連通するガイドワイヤルーメンが形成されたオーバーザワイヤー(OTW)型でもよく、シャフトの先端部にのみガイドワイヤルーメンが形成されたラピッドエクスチェンジ(RX)型でもよい。例えば、RX型のバルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンは、シャフトの先端からシャフトの軸心方向の途中の開口部まで形成される。RX型のバルーンカテーテルのバルーンを拡張させる流体を流通させる拡張用ルーメンは、バルーンからカテーテルの基端のハブまで連通して形成される。
【0016】
シャフト20は、先端から基端まで連通するルーメン21が形成されている。シャフト20は、シャフト外表面22と、シャフト内表面23と、シャフト基端面24とを有している。
【0017】
シャフト外表面22は、管体であるシャフト20の径方向の外側の面であり、シャフト20の先端から基端まで延在する。シャフト外表面22は、シャフト20の基端から先端に向かって所定の位置まで形成されるシャフト基端側外表面25を有している。シャフト基端側外表面25は、ハブ40に囲まれて収容されている。シャフト基端側外表面25は、シャフト20の軸心Xに沿って略均一の外径を有している。シャフト基端側外表面25は、ハブ40に融着されたシャフト融着面26と、シャフト融着面26の先端側に配置されてハブ40から離れているシャフト離間面27とを有している。シャフト離間面27は、ハブ40に融着されずに、ハブ40から隙間を有して離れている。シャフト20のシャフト融着面26の近傍には、複数のシャフト気泡32が形成される。各々のシャフト気泡32は、閉鎖空間を囲む内面を有している。
【0018】
シャフト内表面23は、管体であるシャフト20の径方向の内側の面であり、シャフト20の先端から基端まで延在する。
【0019】
シャフト基端面24は、シャフト20の基端で基端側を向く面であり、シャフト20の軸心Xに対して垂直に切断されて形成される。
【0020】
本実施形態におけるシャフト20は、シャフト内表面23を形成する内層28と、シャフト外表面22を形成する外層29と、シャフト20に埋設される補強体30とを有している。
【0021】
外層29の構成材料は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂のほか、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、あるいはこれらの1種以上の混合物あるいは硬度が異なるものの混合物が挙げられる。外層29は、基端から先端に向かって柔軟となるように硬度の異なる材料を配列したものでもよい。
【0022】
内層28の構成材料は、上述した外層29の構成材料と同じ材料であってもよく、あるいは外層29の構成材料と異なる材料であってもよい。内層28の構成材料は、シャフト20内周面の摺動性を高めるために、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂材料であってもよい。
【0023】
補強体30は、シャフト20を補強するものであり、複数の補強線31を筒状に編組して形成される。また、補強体30は、1本以上の補強線31をらせん状に巻回して形成されてもよい。補強体30における複数の補強線31の隙間には、外層29あるいは内層28の材料が入り込んでいる。補強線31は、ステンレス鋼、NiTi等の金属で構成される。
【0024】
ハブ40は、先端側に配置されてシャフト20の基端部を収容する筒状の収容部41と、収容部41の基端側に配置されるハブ本体42と、ウイング52と、ねじ切り突起53と、環状突起54とを有している。ハブ40は、収容部41の先端に形成されるハブ先端開口43から、ハブ本体42の基端に形成されるハブ基端開口44まで連通するハブ内腔45が形成される。ハブ内腔45は、収容部41の内周面である収容面46と、シャフト基端面24と対向する隣接面47
と、ハブ本体42の内周面であるハブ通路48とを有する。
【0025】
収容面46は、シャフト基端側外表面25のシャフト融着面26と直接的に融着したハブ融着面49と、シャフト離間面27から径方向の外側へ離れて対向するハブ離間面50とを有する。ハブ融着面49は、収容面46の基端から先端方向へ延在している。ハブ融着面49の基端は、隣接面47に接続されている。ハブ離間面50は、ハブ融着面49の先端から先端方向へ延在している。径方向におけるハブ離間面50とシャフト基端側外表面25の隙間は、先端方向へ向かって広がっている。なお、シャフト基端側外表面25との間に隙間を形成するハブ離間面50は、設けられなくてもよい。収容部41のハブ融着面49の近傍には、複数のハブ気泡55が形成させる。各々のハブ気泡55は、閉鎖空間を囲む内面を有している。
【0026】
隣接面47は、先端側を向く環状の面であり、シャフト20の軸心Xに対して略垂直に形成されている。隣接面47の径方向の外側は、ハブ融着面49に接続される。隣接面47の径方向の内側は、ハブ通路48の先端に接続される。
【0027】
ハブ通路48は、隣接面47から基端方向へ延在している。ハブ通路48は、基端方向へ向かって徐々に増加する内径を有してテーパ状に形成されている。ハブ通路48は、収容面46と同軸であり、さらにルーメン21と同軸であることが好ましい。ハブ通路48の先端の内径は、シャフト20の内径と略一致することが好ましいが、これに限定されない。テーパ状のハブ通路48の一部は、シリンジ(図示せず)と連結可能なルアーテーパ部51を有してもよい。ハブ基端開口44から挿入されたガイドワイヤや治療カテーテルは、円滑にハブ内腔45およびルーメン21を通って、カテーテル10の先端から突出する。これにより、ガイドワイヤや治療カテーテル10は、病変部などの目的位置へ容易に到達できる。
【0028】
ウイング52は、術者がハブ40を把持して操作しやすいように、ハブ本体42の外周面の対向する2カ所から突出して形成される。ねじ切り突起53は、ハブ本体42の基端側の外周面に形成される。ねじ切り突起53は、ロック型シリンジ等と係合可能である。環状突起54は、収容部41の外周面に360°にわたって形成される突起である。環状突起54は、耐キンクプロテクタ60の内周面に形成される溝に嵌合可能である。
【0029】
ハブ40の構成材料は、射出成型が可能である熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、熱または電磁波を透過しやすいものが好ましく、具体的にはポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0030】
次に、シャフト20とハブ40の融着方法について説明する。シャフト20が融着される前のハブ40は、
図4に示すように、収容面46の内径が、先端側の方が基端側より大きい。具体的には、ハブ先端開口43の内径D1は、ハブ融着面49の先端および基端の内径D2よりも大きい。また、ハブ通路48の先端の内径D3は、ハブ融着面49の基端の内径D2よりも小さい。ハブ融着面49の内径D2は、シャフト基端側外表面25の外径と略一致する。ハブ先端開口43の内径D1は、例えば0.92mmである。ハブ融着面49の基端の内径D2は、例えば0.88mmである。ハブ通路48の先端の内径D3は、例えば0.57mmである。
【0031】
まず、シャフト20の基端側を収容部41に挿入し、シャフト基端面24を隣接面47に当接させる。なお、シャフト基端面24は、隣接面47に当接せずに、シャフト基端面24と隣接面47の間に隙間があってもよい。また、シャフト基端側外表面25の基端は、ハブ融着面49の基端に当接する。なお、シャフト基端側外表面25は、ハブ融着面49に当接せずに、シャフト基端側外表面25とハブ融着面49の間に隙間があってもよい。
【0032】
次に、シャフト20のルーメン21にマンドレル(図示せず)を挿入して、シャフト基端側外表面25と、ハブ40の収容部41を加熱する。これにより、シャフト基端側外表面25と収容面46が融解し、ハブ融着面49およびシャフト融着面26が融着される。ハブ融着面49およびシャフト融着面26は、混ざり合うことで、一体的な構造となってもよい。加熱方法は、特に限定されないが、例えばハブ40を透過し、シャフト外表面22を透過しない波長の電磁波を照射する方法などが挙げられる。シャフト外表面22が電磁波を透過しないため、まずシャフト基端側外表面25が加熱されて融解する。そして、シャフト基端側外表面25の熱が収容部41に伝達して、収容部41を融解させる。
【0033】
電磁波とは、熱、マイクロ波、可視光のほか赤外線を含む。赤外線は波長がおよそ0.7μmから2.5μmの近赤外線、波長がおよそ2.5μmから4μmの中赤外線あるいは波長がおよそ4μmから1000μmの遠赤外線であるが、近赤外線、中赤外線または遠赤外線の単独あるいは2種以上含んだものでもよく、可視光あるいはマイクロ波を含んだものでもよい。
【0034】
電磁波の照射方法は特に限定しないが、ネオジムを用いたYAGレーザー等の半導体固体レーザー、あるいはファイバーレーザーなどであってもよい。
【0035】
電磁波が透過するとは、可視光により肉眼で透明に見えることのほか、測定した透過率(以下透過率)が80%以上、より好ましくは85%以上であることをいう。透過率は、樹脂ペレットを溶融プレスして作成した厚さ0.4mm~0.5mmのシートに特定の波長の電磁波を照射し、分光分析装置、例えばフーリエ変換赤外・近赤外分光分析装置を用いて測定できる。したがって、電磁波は可視光に限定されないため、電磁波が透過するとは、肉眼で着色あるいは不透明に見えても特定の波長に対して透明であることを含む。
【0036】
また、電磁波が透過しないとは、可視光により肉眼で不透明あるいは着色されていると見えることのほか、透過率が80%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは1%未満であることをいう。したがって、電磁波は可視光に限定されないため、電磁波が不透過であるとは、肉眼で透明に見えても特定の波長に対して不透明あるいは吸収することを含む。
【0037】
外層29は、熱または電磁波を透過しないあるいは吸収する顔料を、樹脂全体の0.01wt%以上10wt%未満、好ましくは0.05wt%以上5wt%以下、より好ましくは0.1wt%以上1%以下、混合されてもよい。あるいは、外層29は、顔料や造影剤などを含まず、外層29を形成する樹脂が、特定の波長に対する透過率が低いものであってもよい。または、外層29は、顔料に変えてあるいは顔料とともにX線造影性を有する金属を混合されてもよい。
【0038】
顔料は、白色、黒色、青、赤、黄を発色する顔料またはその混合物であれば、特に限定されないが、電磁波を吸収しやすいものとして黒色顔料例えばカーボンブラックが好ましい。X線造影剤は、例えば金、ビスマス、タングステンの化合物であり、粉末状のものがより好ましい。
【0039】
例えば、
図5(A)に示すように、赤外線レーザーLを照射してシャフト20とハブ40を融着する場合、照射した赤外線レーザーLの波長に対して透明なハブ40を透過した電磁波が、シャフト20の外層29の不透明な樹脂あるいは顔料などによりに吸収されて主に発熱する。これにより、外層29の樹脂が融解してハブ40の収容部41に熱Hを伝え、収容面46の少なくとも一部が融解する。融解した収容面46は、
図5(B)に示すように、縮径してシャフト基端側外表面25に密着し、シャフト基端側外表面25に融着される。これにより、ハブ融着面49およびシャフト融着面26が融着して形成される。このとき、収容面46が融解して縮径するが、収容部41の外周面は、熱がほとんど伝わらないために溶解せず、ほとんど変形しない。このため、収容面46の縮径により、収容面46を構成する材料がシャフト基端側外表面25との間の隙間を充てんするように流動し、その結果、収容部41の軸心Xに沿う長さが減少する。これにより、収容部41とシャフト基端側外表面25が隙間なく良好に融着される。また、シャフト基端面24および隣接面47も、外層29の発熱により融解して融着される。なお、シャフト基端面24は、隣接面47に融着されなくてもよい。
【0040】
シャフト基端側外表面25と収容面46が融着されると、
図3に示すように、シャフト20のシャフト融着面26の近傍にシャフト気泡32が形成され、収容部41のハブ融着面49の近傍にハブ気泡55が形成される。気泡は、材料の蒸発や空気の混入等によって生じる。シャフト融着面26およびハブ融着面49は、シャフト気泡32およびハブ気泡55が形成されることで、凹凸を有して複雑に混ざり合い、互いに入り込んで形成される。このため、ハブ40とシャフト20は、高い結合力で固定される。ハブ融着面49およびシャフト融着面26は、混ざり合うことで、一体的な構造となってもよい。なお、シャフト気泡32またはハブ気泡55の一方のみが形成されてもよい。この場合であっても、ハブ融着面49とシャフト融着面26は複雑に混ざり合い、互いに入り込んで形成される。このため、ハブ40とシャフト20は、高い結合力で固定される。
【0041】
ハブ融着面49の先端に位置するハブ離間面50は、シャフト離間面27に融着されず、シャフト離間面27との間に隙間を維持する。ハブ離間面50より基端側に位置するハブ融着面49の全体がシャフト融着面26に融着されると、赤外線レーザーLの照射を停止する。これにより、ハブ40とシャフト20の固定が完了する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル10は、先端から基端まで連通するルーメン21が形成された管体であり、ルーメン21が開口するシャフト基端面24および管体の外周面であるシャフト外表面22を備えたシャフト20と、シャフト20の基端に取り付けられたハブ40と、を有するカテーテル10であって、ハブ40は、シャフト20を収容する筒状の収容部41を有し、収容部41は、シャフト外表面22と直接的に融着したハブ融着面49を有し、収容部41またはハブ40の少なくとも一方は、ハブ融着面49に近接する位置に複数の気泡が形成される。
【0043】
上記のように構成したカテーテル10は、複数の気泡により収容部41とハブ40が互いに入り込むように融着される。このため、シャフト20とハブ40を強固に固定できる。したがって、カテーテル10の内部へ注入される造影剤の高い圧力が作用する場合や、体内からシャフト20を引き抜く際にハブ40とシャフト20の間で引張力が作用する場合などに、ハブ40からシャフト20が抜けることを防止できる。
【0044】
また、収容部41は、ハブ融着面49に近接する位置に気泡である複数のハブ気泡55が形成される。これにより、収容部41のハブ融着面49は、凹凸を有する複雑な形状となってシャフト外表面22に融着される。このため、シャフト20とハブ40を強固に固定できる。
【0045】
また、シャフト20は、ハブ融着面49に融着されるシャフト外表面22のシャフト融着面26に近接する位置に気泡である複数のシャフト気泡32が形成される。これにより、シャフト外表面22は、凹凸を有する複雑な形状となってハブ融着面49に融着される。このため、シャフト20とハブ40を強固に固定できる。
【0046】
また、ハブ40およびシャフト20の両方が複数の気泡を有し、ハブ融着面49および当該ハブ融着面49に融着されるシャフト外表面22のシャフト融着面26は、凹凸を有して互いに入り込むように融着されている。これにより、シャフト20とハブ40をさらに強固に固定できる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、シャフト20の加熱は、電磁誘導を利用して加熱する高周波誘導加熱により行われてもよい。電磁誘導される導電体は、例えば補強体30である。
【0048】
なお、本出願は、2020年6月1日に出願された日本特許出願2020-95666号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0049】
10 カテーテル
20 シャフト
21 ルーメン
22 シャフト外表面
23 シャフト内表面
24 シャフト基端面
25 シャフト基端側外表面
26 シャフト融着面
27 シャフト離間面
28 内層
29 外層
30 補強体
32 シャフト気泡(気泡)
40 ハブ
41 収容部
42 ハブ本体
43 ハブ先端開口
44 ハブ基端開口
45 ハブ内腔
46 収容面
47 隣接面
48 ハブ通路
49 ハブ融着面
50 ハブ離間面
55 ハブ気泡(気泡)
60 耐キンクプロテクタ