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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】はんだ付けシステム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20250106BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20250106BHJP
   B23K 1/08 20060101ALI20250106BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
H05K3/34 506K
H05K3/34 503B
B23K1/00 A
B23K1/08 320Z
B23K3/00 310R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022546265
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031180
(87)【国際公開番号】W WO2022050149
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020149384
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川添 徹也
(72)【発明者】
【氏名】南 典也
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩儀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊介
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139571(WO,A1)
【文献】特開平07-142852(JP,A)
【文献】特開平06-077639(JP,A)
【文献】特開2006-140244(JP,A)
【文献】特開平10-193092(JP,A)
【文献】特開2001-036232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 1/00
B23K 1/08
B23K 3/00
G01N 25/72
G01J 5/00
G01J 5/48
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けシステムであって、
溶融はんだを貯留するはんだ槽と、
基板に向けて前記はんだ槽内の前記溶融はんだを噴流する噴流ノズルと、
前記はんだ槽の上方に前記基板を順次搬送する搬送機構と、
前記噴流ノズルの上方に配置され、前記基板の上面の温度を測定する温度測定装置と、
制御パラメータに基づいて、前記はんだ付けシステムを制御する駆動制御部と、
前記制御パラメータが標準値のときに前記温度測定装置によって測定された温度に基づく前記搬送機構によって搬送された基板の温度分布と目標温度分布との差を表わすデータと、はんだ付け検査装置による検査結果を表わす前記搬送機構によって搬送された基板のはんだ付けの良否を表わすデータとのセットを複数個含む第1の学習データを記憶する第1の学習データ記憶部と、
前記第1の学習データを用いて、基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータから基板のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを生成する第1の学習装置と、
前記第1の学習装置から取得したはんだ付けが不良のときの前記搬送機構によって搬送された基板の温度分布と目標温度分布との差を表わすデータと、シミュレーションによって求めた前記搬送機構によって搬送された基板の温度分布と前記目標温度分布との差が許容範囲となるような前記制御パラメータの修正量とのセットを複数個含む第2の学習データを記憶する第2の学習データ記憶部と、
前記第2の学習データを用いて、前記制御パラメータが標準値のときの基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータのみから前記制御パラメータの修正量を推定する第2の学習済みモデルを生成する第2の学習装置と、を備える、はんだ付けシステム。
【請求項2】
前記第2の学習装置は、はんだ付けが不良となったときの前記基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータを取得し、前記制御パラメータを標準値から修正し、前記修正した制御パラメータに基づいて、前記搬送機構によって搬送された基板の温度分布と前記目標温度分布との差をシミュレーションで求め、記基板の温度分布と前記目標温度分布との差が許容範囲となるまで、前記制御パラメータの修正量を段階的に変化させることによって、前記基板の温度分布と前記目標温度分布との差が許容範囲となるような前記制御パラメータの修正量を求めることによって前記第2の学習データを作成する、請求項記載のはんだ付けシステム。
【請求項3】
はんだ付けシステムであって、
溶融はんだを貯留するはんだ槽と、
基板に向けて前記はんだ槽内の前記溶融はんだを噴流する噴流ノズルと、
前記はんだ槽の上方に前記基板を順次搬送する搬送機構と、
前記噴流ノズルの上方に配置され、前記基板の上面の温度を測定する温度測定装置と、
制御パラメータに基づいて、前記はんだ付けシステムを制御する駆動制御部と、
基板の温度分布と目標温度分布との差を表わすデータから基板のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを記憶する第1の記憶部と、
前記制御パラメータが標準値のときに前記温度測定装置によって測定された温度に基づいて前記搬送機構によって搬送された基板の温度分布と目標温度分布との差を表わすデータを生成し、前記第1の記憶部に記憶されている前記第1の学習済みモデルを用いて、前記生成された前記基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータから、前記搬送機構によって搬送された基板のはんだ付けの良否を推定し、前記基板のはんだ付けが不良と推定したときに、前記制御パラメータが標準値のときの前記基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータを出力する第1の推論装置と、
前記制御パラメータが標準値のときの基板の温度分布と目標温度分布との差を表わすデータと、前記制御パラメータの修正量とから前記制御パラメータが修正された後の設定時間経過後の基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータを推定する第2の学習済みモデルを記憶する第2の記憶部と、
前記制御パラメータが標準値のときの前記基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータを前記第1の推論装置から取得し、前記制御パラメータの修正量を生成し、前記第2の記憶部に記憶されている前記第2の学習済みモデルを用いて、前記取得された基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータと、前記生成された制御パラメータの修正量とから、前記制御パラメータが修正された後の設定時間経過後の基板の温度分布と前記目標温度分布との差を表わすデータを推定する第2の推論装置とを、備え、
前記第1の推論装置が出力する基板の表面の温度差分布データは、はんだ付けが不良となった時の基板の表面の温度差分布データであるはんだ付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだ付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付けの良否を自動チェックする手段を備えたはんだ付けシステムが知られている。たとえば、特許文献1のシステムは、はんだ付け直後の基板の温度分布を非接触温度センサによって検知するとともに画像処理し、この処理信号をコンピュータに予め記録させた最適温度データと比較演算することにより、はんだ付け温度の異常の有無を検出する。このシステムは、検出結果に基づいて、基板の搬送速度、プリヒータの温度、および溶融はんだの温度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-142852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、基板と噴流された溶融はんだとの接触状態の変化を逐次把握することができない。その結果、基板のはんだ付けの品質が安定しない。
【0005】
それゆえに、本開示の目的は、安定した品質で基板のはんだ付けが可能なはんだ付けシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のはんだ付けシステムは、基板にフラックスを塗布するフラックス塗布機と、基板を予熱するプリヒータと、溶融はんだを貯留するはんだ槽と、はんだ槽内のはんだを溶融させるはんだ槽ヒータと、基板に向けてはんだ槽内の溶融はんだを噴流する噴流ノズルと、フラックス塗布機の上方、プリヒータの上方、およびはんだ槽の上方に順次基板を搬送する搬送機構と、噴流ノズルの上方に配置された温度測定装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のはんだ付けシステムによれば、噴流ノズルの上方に配置された温度測定装置を備えるので、安定した品質で基板のはんだ付けをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1のはんだ付けシステム1を示す概略図である。
図2】制御装置9の構成を表わす図である。
図3】第1の学習装置22の構成を表わす図である。
図4】(a)は、基板10の表面の温度分布データの例を表わす図である。(b)は、基板10の表面の目標温度分布データの例を示す図である。(c)は、基板10の表面の温度差分布データの例を表わす図である。
図5】サポートベクトルマシンにおける識別イメージを表わす図である。
図6】第2の学習装置23の構成を表わす図である。
図7】ニューラルネットワークの構成の一例を表わす図である。
図8】第1の推論装置24の構成を表わす図である。
図9】第2の推論装置25の構成を表わす図である。
図10】実施の形態1における第1の学習装置22および第2の学習装置23による学習手順を表わすフローチャートである。
図11】実施の形態1における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論手順を表わすフローチャートである。
図12】実施の形態2における第1の学習装置22および第2の学習装置23による学習手順を表わすフローチャートである。
図13】実施の形態2における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論手順を表わすフローチャートである。
図14】実施の形態3における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論および再学習の手順を表わすフローチャートである。
図15】実施の形態4における赤外線カメラ7の配置を表わす図である。
図16】基板10の表面温度の時間変化を表わす図である。
図17】(a)は、基板10が溶融はんだに接触したときの状態を表わす図である。(b)は、基板10が溶融はんだから離脱した直後の状態を表わす図である。
図18】実施の形態6のはんだ付けシステム1bを示す概略図である。
図19】実施の形態7のはんだ付けシステム1aの構成を表わす図である。
図20】制御装置9のハードウェア構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1のはんだ付けシステム1を示す概略図である。
【0010】
はんだ付けシステム1は、搬送機構2、フラックス塗布機3、プリヒータ4、はんだ槽5、フラクサー制御部18、噴流モータ15、はんだ槽ヒータ14、温度測定装置17、制御装置9、およびはんだ付け検査装置16を備える。
【0011】
フラックス塗布機3は、はんだ付けされる対象の電子部品201が搭載された基板10の下面(はんだ付け面)に対して、フラックス11を塗布する。フラックス11を塗布する工法としては、スプレー式、発泡式、および浸漬式がある。
【0012】
フラクサー制御部18は、フラックス11の塗布量を制御する。フラックス11の塗布量は、フラックス液の流量、圧縮空気の圧力、および2つのノズルの移動速度によって決定される。フラックス11の塗布量は、フラックス塗布機3内のノズルの詰まり具合、フラックス塗布機3の動作のばらつき、およびフラックス塗布機3内の排気ファンの排気量のばらつきなどによって、変動する。フラックス11の塗布量が多くなると、プリヒータ4での予熱工程において、溶剤の蒸発に要する時間が長くなるので、基板10の温度が十分に上がらない。フラックス11の塗布量が少なくなると、プリヒータ4での予熱工程において、溶剤がすぐに揮発するので、基板10の温度が高くなり過ぎる。
【0013】
プリヒータ4は、基板10を予熱する。予熱の目的は、フラックス11の溶剤を揮発させること、およびはんだ付け前に基板10を加熱することである。これにより、フラックス11の酸化膜除去効果を発揮することができるので、はんだ付けが成功する比率が向上する。プリヒータ4の加熱方式には、赤外線、遠赤外線、および熱風がある。基板10の下面(はんだ付け面)のみを加熱する場合もあれば、基板10の上面(非はんだ付け面、部品面)も加熱する場合もある。
【0014】
はんだ槽5は、溶融はんだを貯留する。
噴流ノズル13は、はんだ槽5内の貯留させた溶融はんだ12を噴流する。これによって、基板10の下面が溶融はんだ12に接触して、はんだ付けが行われる。噴流ノズル13は、1次ノズル13aと2次ノズル13bとを備える。1次ノズル13aは、荒れた波を形成し、基板10のはんだ付け面の隅々まで溶融はんだを供給する。2次ノズル13bは、整った波を形成し、適切な量のはんだが基板10に付着するようにする。
【0015】
はんだ槽ヒータ14は、はんだを溶融させる。
噴流モータ15は、インペラを回転させ、噴流ノズル13に溶融はんだ12を送り込む。これによって、溶融はんだ12が噴流ノズル13から噴流する。
【0016】
制御装置9は、はんだ付けシステム1の各構成要素を制御する。たとえば、制御装置9は、はんだ槽ヒータ14の温度、噴流モータ15の回転速度、および噴流ノズル13の角度などを制御する。
【0017】
温度測定装置17は、噴流ノズル13を構成する2次ノズル13bの上方に配置される。温度測定装置17は、基板10の表面温度を測定する。温度測定装置17は、赤外線カメラを備える。温度測定装置17は、赤外線カメラによって基板10を撮影する。温度測定装置17は、撮像された赤外線画像に基づいて、基板10の表面の温度分布を測定する。温度測定装置17は、測定された基板10の表面の温度分布の情報を制御装置9に出力する。赤外線カメラは、赤外線カメラの光軸の向きを変更することが可能な首振り機構を備えることとしてもよい。基板10に大型部品が搭載されている場合に、通常の光軸の向きでは、大型部品に遮られて基板10の表面の温度を測定できないときに、大型部品に遮れないように、光軸の向きを変えることによって、基板10の表面の温度を測定することができる。
【0018】
温度測定装置17が、2次ノズル13bの上方に配置されているので、温度測定装置17が、基板10が、噴流された溶融はんだから離脱する直後の基板10の温度を測定することができる。これによって、基板10へのはんだ付けの品質が安定する。
【0019】
制御装置9は、はんだ付け検査装置16と接続される。
はんだ付け検査装置16は、基板10のはんだ付けの良否を検査する。具体的には、はんだ付け検査装置16は、画像解析機能を備える。はんだ付け検査装置16は、基板10の撮像画像などに基づいて、はんだ付けの状態を解析する。詳細には、はんだ付け検査装置16は、電子部品201の端子に付着した「つらら状」のはんだに該当する画像の有無、およびはんだブリッジに該当する画像の有無を検出する。また、はんだ付け検査装置16は、はんだが付着している面積を求め、この面積の予め定められた面積に対する過不足を評価する。さらに、はんだ付け検査装置16は、はんだの光沢を評価し、光沢基準を満たすか否かを評価する。はんだ付け検査装置16は、以上のような複数の項目について評価する。はんだ付け検査装置16は、各項目の評価に基づいて、はんだ付けの良否を検査する。
【0020】
制御装置9は、基板10の表面の温度分布を許容範囲内の温度分布にするための制御パラメータを求める。制御装置9は、求められた制御パラメータに基づいて、はんだ付けシステム1の各部を制御する。
【0021】
図2は、制御装置9の構成を表わす図である。制御装置9は、識別および設定部21と、記憶装置27と、駆動制御部26とを備える。
【0022】
識別および設定部21は、第1の学習装置22と、第2の学習装置23と、第1の推論装置24と、第2の推論装置25とを備える。
【0023】
記憶装置27は、目標温度分布記憶部76と、許容温度差分布記憶部73と、第1の学習データ記憶部71と、第2の学習データ記憶部74と、第1の学習済みモデル記憶部72と、第2の学習済みモデル記憶部75とを備える。
【0024】
目標温度分布記憶部76は、基板10の表面の目標温度分布データを記憶する。溶融はんだが吹き付けられている基板10の表面の温度分布は、均一であることが望ましい。基板10の上方から測定される表面の温度分布は、電子部品201が基板10に実装されているために、均一にならない。そこで、目標温度分布記憶部76は、実装された電子部品201を考慮した基板10の表面の目標温度分布データを予め記憶する。基板10の表面の目標温度分布データは、実験によって予め求められている。具体的には、はんだ付け不良とならなかった複数の温度分布データを統計処理することにより、基板10の表面の目標温度分布データが作成される。
【0025】
許容温度差分布記憶部73は、許容温度差分布データを記憶する。許容温度差分布データは、基板の表面の温度差分布データの各位置の温度差の許容範囲を定める。
【0026】
図3は、第1の学習装置22の構成を表わす図である。
第1の学習装置22は、温度分布データ作成部51と、温度差分布データ作成部52と、特徴量抽出部53と、第1の学習データ作成部54と、第1の学習済みモデル生成部55とを備える。
【0027】
温度分布データ作成部51は、温度測定装置17から基板10の表面の温度分布の情報を取得する。温度分布データ作成部51は、基板10の表面を、例えば1000×1000の領域を有する2次元マトリクスに分割する。温度分布データ作成部51は、マトリクスに対して、縦方向が1から1000、横方向が1から1000の座標を設定する。この処理によって、基板10の表面の各位置の温度と座標とを対応付けて処理することができる。温度分布データ作成部51は、取得した温度分布の情報から、マトリクスの各位置ごとの温度を特定し、基板10の表面の温度分布データを作成する。
【0028】
温度差分布データ作成部52は、基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす基板10の表面の温度差分布データを作成する。
【0029】
図4(a)は、基板10の表面の温度分布データの例を表わす図である。図4(b)は、基板10の表面の目標温度分布データの例を示す図である。図4(c)は、基板10の表面の温度差分布データの例を表わす図である。
【0030】
図4(a)~(c)において、外枠で囲まれた範囲は、基板10の表面の範囲を表す。枠内の線は、等温線を表す。例えば、5℃ごとの等温線が示されている。
【0031】
特徴量抽出部53は、基板10の表面の温度差分布データの特徴量を抽出する。特徴量は、たとえば、温度の絶対値、等温線の密度、等温線の形状、前回測定された基板10の表面の温度分布に対する等温線の変化量、または設定されている時間前に取得された基板10の表面の温度分布に対する等温線の変化量などのデータである。設定されている時間は、例えば、1時間とすることができる。特徴量は、これらのデータを主成分分析または独立成分分析することによって得られるデータとしてもよい。
【0032】
第1の学習データ作成部54は、特徴量抽出部53から出力される基板10の表面の温度差分布データの特徴量を受け、はんだ付け検査装置16から出力される基板10のはんだ付けの良否の検査結果を受ける。
【0033】
第1の学習データ作成部54は、複数の基板10について、基板10の表面の温度差分布データの特徴量と、基板10のはんだ付けの良否のラベル(正解)とのセットからなる第1の学習データを作成して、第1の学習データ記憶部71に記憶させる。
【0034】
第1の学習データ記憶部71は、第1の学習データを記憶する。
第1の学習済みモデル生成部55は、第1の学習データ記憶部71に記憶されている第1の学習データを用いて、基板10の表面の温度差分布データの特徴量から基板10のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを生成する。第1の学習済みモデル生成部55は、生成した第1の学習済みモデルを第1の学習済みモデル記憶部72に記憶させる。
【0035】
第1の学習済みモデル記憶部72は、第1の学習済みモデルを記憶する。
第1の学習済みモデル生成部55は、例えば、サポートベクトルマシンに従って、いわゆる教師あり学習により、第1の学習済みモデルを生成する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)のデータのセットからなる第1の学習データを第1の学習済みモデル生成部55に与えることで、第1の学習データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0036】
図5は、サポートベクトルマシンにおける識別イメージを表わす図である。図5では、説明の便宜上、二次元で表されている。
【0037】
黒丸は、第1の学習データに含まれるはんだ付けが不良と判定された基板10の温度差分布データの特徴量を表わす。三角印は、第1の学習データに含まれるはんだ付けが良と判定された基板10の表面の温度差分布データの特徴量を表わす。
【0038】
サポートベクトルマシンは、学習フェーズにおいて、第1の学習データに基づいて、はんだ付けが不良と判定された基板10の表面の温度差分布データの特徴量と、はんだ付けが良と判定された基板10の表面の温度差分布データの特徴量とを識別する識別面を構築する。
【0039】
サポートベクトルマシンは、推論フェーズにおいて、識別対象の基板10の表面の温度差分布データの特徴量が識別面によって分割された2つの空間のうちのいずれに属するかを特定することによって、識別対象の基板10のはんだ付けの良否を判定する。星印は、識別対象の基板10の温度差分布データの特徴量ベクトルの例を表わす。この例では、識別対象の基板10が不良と判定される。
【0040】
図6は、第2の学習装置23の構成を表わす図である。
第2の学習装置23は、データ取得部61と、制御パラメータ設定部62と、シミュレーション部63と、第2の学習データ作成部64と、第2の学習済みモデル生成部65とを備える。
【0041】
データ取得部61は、第1の学習装置22から、はんだ付けが不良となったときの基板10の表面の温度差分布データを取得する。
【0042】
制御パラメータ設定部62は、制御パラメータを設定する。制御パラメータ設定部62は、学習フェーズにおいて、基板10のはんだ付けが不良となったときに、制御パラメータを標準値から複数段階修正する。制御パラメータ設定部62は、制御パラメータがはんだ槽ヒータ14の温度のときに、はんだ槽ヒータ14の温度を標準値よりも5℃、10℃、および15℃だけ高くする。制御パラメータ設定部62は、制御パラメータが噴流モータ15の回転速度のときに、噴流モータ15の回転速度を標準値よりも10%、20%、および30%だけ速くする。制御パラメータ設定部62は、制御パラメータが噴流ノズル13の角度のときに、噴流ノズル13の角度を10°、20°、および30°だけ大きくする。
【0043】
シミュレーション部63は、制御パラメータ設定部62から出力される修正後の制御パラメータに基づいて、シミュレーションによって、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データを得る。シミュレーション部63は、シミュレーションによって得られた「制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データ」と、目標温度分布記憶部76に記憶されている「基板10の表面の目標温度分布データ」との差分を表わす「制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データ」を出力する。
【0044】
第2の学習データ作成部64は、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量と、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データ(正解)とのセットを複数個含む第2の学習データを作成して、第2の学習データ記憶部74に記憶させる。
【0045】
第2の学習データ記憶部74は、第2の学習データを記憶する。
第2の学習済みモデル生成部65は、第2の学習データ記憶部74に記憶されている第2の学習データを用いて、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とから、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを推定する第2の学習済みモデルを生成する。第2の学習済みモデル生成部65は、生成した第2の学習済みモデルを第2の学習済みモデル記憶部75に記憶させる。
【0046】
第2の学習済みモデル記憶部75は、第2の学習済みモデルを記憶する。
第2の学習済みモデル生成部65が用いる学習アルゴリズムは、教師あり学習、教師なし学習、または強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
【0047】
第2の学習済みモデル生成部65は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習を実行する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)のデータの組を第2の学習済みモデル生成部65に与えることによって、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0048】
図7は、ニューラルネットワークの構成の一例を表わす図である。
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる中間層(隠れ層)、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層、または2層以上でもよい。
【0049】
例えば、図7に示すような3層のニューラルネットワークであれば、複数の入力が入力層(X1~Xn)に入力されると、その値に重みW1を掛けて中間層(Y1~Ym)に入力され、その結果にさらに重みW2を掛けて出力層(Z1~Zs)から出力される。この出力結果は、重みW1およびW2の値によって変わる。
【0050】
本実施の形態において、ニューラルネットワークは、第1の学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データの出力を学習する。
【0051】
すなわち、ニューラルネットワークは、入力層に制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とを入力して、出力層から出力された結果が、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データ(正解)に近づくように重みW1とW2とを調整することで学習を実行する。
【0052】
図8は、第1の推論装置24の構成を表わす図である。
第1の推論装置24は、制御パラメータ設定部36と、温度分布データ作成部31と、温度差分布データ作成部32と、特徴量抽出部33と、第1の推定部34と、データ出力部35とを備える。
【0053】
制御パラメータ設定部62は、制御パラメータを標準値に設定する。
温度分布データ作成部31は、第1の学習装置22内の温度分布データ作成部51と同様に、温度測定装置17から基板10の表面の温度分布の情報を取得し、基板10の表面の温度分布データを作成する。
【0054】
温度差分布データ作成部32は、第1の学習装置22内の温度差分布データ作成部52と同様に、基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす基板10の表面の温度差分布データを作成する。
【0055】
特徴量抽出部33は、第1の学習装置22内の特徴量抽出部53と同様に、基板10の表面の温度差分布データの特徴量を抽出する。
【0056】
第1の推定部34は、第1の学習済みモデル記憶部72から基板10の表面の温度差分布データの特徴量から基板10のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを読み出す。第1の推定部34は、第1の学習済みモデルに特徴量抽出部33から出力される基板10の表面の温度差分布データの特徴量を入力することによって、基板10のはんだ付けの良否を表わすデータを得る。
【0057】
データ出力部35は、第1の推定部34によって、基板10のはんだ付けが不良と推定されたときに、温度差分布データ作成部32によって生成された制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データを出力する。
【0058】
図9は、第2の推論装置25の構成を表わす図である。
第2の推論装置25は、データ取得部41と、第2の推定部42と、制御パラメータ設定部43とを備える。
【0059】
制御パラメータ設定部43は、制御パラメータを標準値または標準値から修正量だけ修正した値に設定する。
【0060】
データ取得部41は、第1の推論装置24のデータ出力部35から出力された制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データを取得する。
【0061】
第2の推定部42は、第2の学習済みモデル記憶部75から、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とから、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを推定する第2の学習済みモデルを読み出す。
【0062】
第2の推定部42は、第2の学習済みモデルにデータ取得部41から出力される制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータ設定部43によって修正された制御パラメータの修正量とを入力することによって、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを得る。
【0063】
図10は、実施の形態1における第1の学習装置22および第2の学習装置23による学習手順を表わすフローチャートである。
【0064】
ステップS101において、図示しない駆動スイッチがオンに設定される。これによって、搬送機構2によって、基板10がはんだ槽5の上部に搬送される。
【0065】
ステップS102において、制御パラメータ設定部62は、制御パラメータを標準値に設定する。
【0066】
ステップS103において、温度分布データ作成部51は、基板10の表面の温度分布データを作成する。
【0067】
ステップS104において、温度差分布データ作成部52は、基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす基板10の表面の温度差分布データを作成する。
【0068】
ステップS105において、特徴量抽出部53は、基板10の表面の温度差分布データの特徴量を抽出する。
【0069】
ステップS106において、はんだ付け検査装置16は、基板10のはんだ付けの良否を検査する。
【0070】
ステップS107において、第1の学習データ作成部54は、ステップS105において得られた基板10の表面の温度差分布データの特徴量と、ステップS106において得られた基板10のはんだ付けの良否のラベル(正解)とのセットを第1の学習データ記憶部71内の第1の学習データに追加する。
【0071】
ステップS108において、終了指示が入力されたときには、処理がステップS109に進む。終了指示が入力されないときには、処理がステップS103に戻り、搬送される次の基板10について、ステップS103~S107の処理が繰り返される。
【0072】
ステップS109において、図示しない駆動スイッチがオフに設定される。これによって、搬送機構2による基板10の搬送が停止される。
【0073】
ステップS110において、第1の学習済みモデル生成部55は、第1の学習データ記憶部71に記憶されている第1の学習データを用いて、基板10の表面の温度差分布データの特徴量から基板10のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを生成する。第1の学習済みモデル生成部55は、生成した第1の学習済みモデルを第1の学習済みモデル記憶部72に記憶させる。
【0074】
ステップS111において、第2の学習装置23のデータ取得部61は、第1の学習装置22からはんだ付けが不良となったときの基板10の表面の温度差分布データを1つ取得する。
【0075】
ステップS112において、制御パラメータ設定部62は、制御パラメータを標準値からΔP、2×ΔP、3×ΔP、・・・およびn×ΔPだけ修正する。
【0076】
ステップS113において、シミュレーション部63は、制御パラメータ設定部62から出力される修正後の制御パラメータに基づいて、シミュレーションによって、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データを得る。シミュレーション部63は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを出力する。修正されたn個の制御パラメータについて、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データが出力される。
【0077】
ステップS114において、第2の学習データ作成部64は、ステップS111で取得した制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、ステップS112における制御パラメータの修正量と、ステップS113で得られた制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データ(正解)とのセットを第2の学習データ記憶部74内の第2の学習データに追加する。修正されたn個の制御パラメータについて、上記のセットが第2の学習データに追加される。
【0078】
ステップS115において、終了指示が入力されたときには、処理がステップS116に進む。終了指示が入力されないときには、処理がステップS111に戻り、はんだ付けが不良となった別の基板10について、ステップS111~S114の処理が繰り返される。
【0079】
ステップS116において、第2の学習済みモデル生成部65は、第2の学習データ記憶部74に記憶されている第2の学習データを用いて、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とから、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを推定する第2の学習済みモデルを生成する。第2の学習済みモデル生成部65は、生成した第2の学習済みモデルを第2の学習済みモデル記憶部75に記憶させる。
【0080】
図11は、実施の形態1における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論手順を表わすフローチャートである。
【0081】
ステップS201において、図示しない駆動スイッチがオンに設定される。これによって、搬送機構2によって、基板10がはんだ槽5の上部に搬送される。
【0082】
ステップS202において、制御パラメータ設定部36は、制御パラメータを標準値に設定する。
【0083】
ステップS203において、温度分布データ作成部31は、基板10の表面の温度分布データを作成する。
【0084】
ステップS204において、温度差分布データ作成部32は、基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす基板10の表面の温度差分布データを作成する。
【0085】
ステップS205において、特徴量抽出部33は、基板10の表面の温度差分布データの特徴量を抽出する。
【0086】
ステップS206において、第1の推定部34は、第1の学習済みモデル記憶部72から基板10の表面の温度差分布データの特徴量から基板10のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを読み出す。
【0087】
ステップS207において、第1の推定部34は、第1の学習済みモデルに特徴量抽出部33から出力される基板10の表面の温度差分布データの特徴量を入力することによって、基板10のはんだ付けの良否を表わすデータを得る。
【0088】
ステップS208において、基板10のはんだ付けが不良の場合には、処理がステップS209に進む。基板10のはんだ付けが良の場合には、処理が終了する。
【0089】
ステップS209において、データ取得部41は、ステップS204において温度差分布データ作成部32によって作成された制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データを取得する。
【0090】
ステップS210において、第2の推定部42は、第2の学習済みモデル記憶部75から、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とから、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを推定する第2の学習済みモデルを読み出す。
【0091】
ステップS211において、第2の推定部42は、K=1に設定する。
ステップS212において、第2の推定部42は、制御パラメータの修正量をK×ΔPに設定する。
【0092】
ステップS213において、第2の推定部42は、第2の学習済みモデルにデータ取得部41から出力される制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、制御パラメータの修正量とを入力することによって、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板の温度差分布データを得る。
【0093】
ステップS214において、第2の推定部42は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データの各位置の温度差が、許容温度差分布記憶部73内の許容温度差分布データの各位置の温度差以下のときには、基板10の表面の温度差分布データが許容範囲内と判断する。第2の推定部42は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データの各位置の温度差が、許容温度差分布データの各位置の温度差を越えるときには、基板10の表面の温度差分布データが許容範囲外と判断する。基板10の表面の温度差分布データが許容範囲内のときには、処理がステップS216に進み、許容範囲外のときには、処理がステップS215に進む。
【0094】
ステップS215において、第2の推定部42は、Kを1だけインクリメントする。その後、処理がステップS211に戻る。
【0095】
ステップS216において、制御パラメータ設定部43は、制御パラメータを修正量だけ修正する。修正された制御パラメータは、駆動制御部26に出力される。駆動制御部26は、修正後の制御パラメータに基づいて、はんだ付けシステム1を駆動する。これにより、たとえば、滞留していたドロスの溶解又はドロスの滞留位置の移動が起こる。そして、噴流ノズル13から均一に噴出され、基板10の表面の温度分布は、許容温度分布の範囲内に収まる。
【0096】
実施の形態2.
図12は、実施の形態2における第1の学習装置22および第2の学習装置23による学習手順を表わすフローチャートである。図12のフローチャートのステップS101~S111は、図10のフローチャートのステップS101~S111と同様なので、説明を繰り返さない。
【0097】
ステップS312において、制御パラメータ設定部62は、K=1に設定する。
ステップS313において、制御パラメータ設定部62は、制御パラメータを標準値からK×ΔPだけ修正する。
【0098】
ステップS314において、シミュレーション部63は、制御パラメータ設定部62から出力される修正後の制御パラメータに基づいて、シミュレーションによって、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データを得る。シミュレーション部63は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度分布データと、目標温度分布記憶部76に記憶されている基板10の表面の目標温度分布データとの差分を表わす制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データを出力する。
【0099】
ステップS315において、第2の学習データ作成部64は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データの各位置の温度差が、許容温度差分布記憶部73内の許容温度差分布データの各位置の温度差以下のときには、基板10の表面の温度差分布データが許容範囲内と判断する。第2の学習データ作成部64は、制御パラメータが修正された後設定された時間経過後の基板10の表面の温度差分布データの各位置の温度差が、許容温度差分布データの各位置の温度差を越えるときには、基板10の表面の温度差分布データが許容範囲外と判断する。基板10の表面の温度差分布データが許容範囲内のときには、処理がステップS317に進み、許容範囲外のときには、処理がステップS316に進む。
【0100】
ステップS316において、制御パラメータ設定部62は、Kを1だけインクリメントする。その後、処理がステップS313に戻る。
【0101】
ステップS317において、第2の学習データ作成部64は、ステップS111において取得した制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、ステップS313において設定された制御パラメータの修正量(正解)とのセットを第2の学習データ記憶部74内の第2の学習データに追加する。
【0102】
ステップS318において、終了指示が入力されたときには、処理がステップS319に進む。終了指示が入力されないときには、処理がステップS111に戻り、はんだ付けが不良となった別の基板10について、ステップS111、およびS312~S317の処理が繰り返される。
【0103】
ステップS319において、第2の学習済みモデル生成部65は、第2の学習データ記憶部74に記憶されている第2の学習データを用いて、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データから、制御パラメータの修正量を推定する第2の学習済みモデルを生成する。第2の学習済みモデル生成部65は、生成した第2の学習済みモデルを第2の学習済みモデル記憶部75に記憶させる。
【0104】
図13は、実施の形態2における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論手順を表わすフローチャートである。図13のフローチャートのステップS201~S209は、図11のフローチャートのステップS101~S209と同様なので、説明を繰り返さない。
【0105】
ステップS410において、第2の推定部42は、第2の学習済みモデル記憶部75から、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データから制御パラメータの修正量を推定する第2の学習済みモデルを読み出す。
【0106】
ステップS411において、第2の推定部42は、第2の学習済みモデルにデータ取得部41から出力される制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データを入力することによって、制御パラメータの修正量を得る。
【0107】
ステップS412において、制御パラメータ設定部43は、制御パラメータを修正量だけ修正する。
【0108】
実施の形態3.
図14は、実施の形態3における第1の推論装置24および第2の推論装置25による推論および再学習の手順を表わすフローチャートである。図14のフローチャートのステップS201~S209、S410~S412は、図13のフローチャートのステップS201~S209、S410~S412と同様なので、説明を繰り返さない。
【0109】
ステップS207の後、ステップS208の前までに、ステップS501およびステップS502が実行される。
【0110】
ステップS501において、第1の学習データ作成部54は、ステップS205において得られた基板10の表面の温度差分布データの特徴量と、ステップS207において得られた基板のはんだ付けの良否のラベル(正解)とのセットを第1の学習データ記憶部71内の第1の学習データに追加する。
【0111】
ステップS502において、第1の学習済みモデル生成部55は、第1の学習データ記憶部71に記憶されている第1の学習データを用いて、基板10の表面の温度差分布データの特徴量から基板10のはんだ付けの良否を推定する第1の学習済みモデルを更新する。第1の学習済みモデル生成部55は、更新した第1の学習済みモデルを第1の学習済みモデル記憶部72に記憶させる。
【0112】
ステップS501およびステップS502によって、はんだ付けシステム1の運用を継続するに伴い、第1の学習データの蓄積量が増加し、第1の学習データの蓄積量の増加に伴って、第1の学習済みモデルの推定精度が高くなる。
【0113】
ステップS412の後、ステップS503およびステップS504が実行される。
ステップS503において、第2の学習データ作成部64は、ステップS204において取得した制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データと、ステップS411において得られた制御パラメータの修正量(正解)とのセットを第2の学習データ記憶部74内の第2の学習データに追加する。
【0114】
ステップS504において、第2の学習済みモデル生成部65は、第2の学習データ記憶部74に記憶されている第2の学習データを用いて、制御パラメータが標準値のときの基板10の表面の温度差分布データから、制御パラメータの修正量を推定する第2の学習済みモデルを更新する。第2の学習済みモデル生成部65は、更新した第2の学習済みモデルを第2の学習済みモデル記憶部75に記憶させる。
【0115】
ステップS503およびステップS504によって、はんだ付けシステム1の運用を継続するに伴い、第2の学習データの蓄積量が増加し、第2の学習データの蓄積量の増加に伴って、第2の学習済みモデルの推定精度が高くなる。
【0116】
実施の形態4.
本実施の形態では、温度測定装置17は、赤外線カメラ7を備える。
【0117】
図15は、実施の形態4における赤外線カメラ7の配置を表わす図である。
図15に示すように、搬送機構2によって、基板10は、水平方向と一定角度(5±1°)だけ相違する方向に搬送される。
【0118】
赤外線カメラ7の光軸Kの方向は、搬送される基板10の面に対して垂直となるように赤外線カメラ7が配置される。すなわち、赤外線カメラ7の光軸の方向は、水平方向から、90°―(5±1)°だけ相違する方向である。
【0119】
また、水平方向については、2次ノズル13bの後端PNから上流の水平方向に220[mm]の位置PAと、下流の水平方向に300[mm]の位置PBとの間に、赤外線カメラ7が設置される。このように赤外線カメラ7の設置範囲に幅を持たせているのは、はんだ付けシステム1の構造の差異によって、赤外線カメラ7が2次ノズル13bの後端PNの位置に設置できない場合があるからである。
【0120】
上述のように赤外線カメラ7を設置することによって、赤外線カメラ7によって撮影される熱画像のゆがみを除外して、正確な測定をすることができる。さらには、赤外線カメラ7を設置することによって、基板10に搭載された部品の影になる面積を小さくすることができるので、温度測定に必要な面積を確保しやすくなる。
【0121】
実施の形態5.
図16は、基板10の表面温度の時間変化を表わす図である。
【0122】
実線が、基板10と溶融はんだとの接触時間が長い場合の基板10の表面の温度変化を表わす。時刻t1において、基板10が溶融はんだから離脱する。
【0123】
破線が、基板10と溶融はんだとの接触時間が短い場合の基板10の表面の温度変化を表わす時刻t2において、基板10が溶融はんだから離脱する。
【0124】
基板10が溶融はんだから離脱した後の方が、基板10と溶融はんだとの接触時間の違いによる基板10の表面の温度差が大きい。基板10が、溶融はんだから離脱したときの基板10の温度を測定することによって、基板10の入熱量の差異を明確に検出することができる。
【0125】
図17(a)は、基板10が溶融はんだに接触したときの状態を表わす図である。
図17(b)は、基板10が溶融はんだから離脱した直後の状態を表わす図である。
【0126】
本実施の形態では、温度測定装置17は、噴流ノズル13から噴流された溶融はんだから基板10が離脱した後の基板10の上面の温度を測定する。
【0127】
実施の形態6.
図18は、実施の形態6のはんだ付けシステム1bを示す概略図である。
【0128】
はんだ付けシステム1の外装91に穴151が形成されている。温度測定装置17に含まれる赤外線カメラ7が、はんだ付けシステム1bの外装91の外側に配置され、赤外線カメラ7のレンズは、穴151の部分に配置される。これによって、揮発したフラックスの溶剤が赤外線カメラ7に付着するのを回避できるため、正確な温度測定ができる。
【0129】
赤外線カメラ7は、はんだ付けシステム1bの外側にあるため、メンテナンス時等における赤外線カメラ7の温度変化の影響を少なくすることができる。一般的な赤外線カメラは、カメラ本体に温度変化がある場合、測定温度も変化してしまうが、本構成をとることで、より正確な測定をすることができる。
【0130】
実施の形態7.
図19は、実施の形態7のはんだ付けシステム1aの構成を表わす図である。
【0131】
実施の形態7のはんだ付けシステム1aは、保護窓98を備える。
保護窓98は、赤外線カメラ7のレンズを保護するために設けられる。このようにすることで、長期間の稼働においても、フラックスが赤外線カメラ7に付着を防止することができるため、赤外線が遮られず、正確な温度測定が可能となる。
【0132】
実施の形態8.
図20は、制御装置9のハードウェア構成を表わす図である。
【0133】
制御装置9は、相当する動作をデジタル回路のハードウェアまたはソフトウェアで構成することができる。制御装置9の機能をソフトウェアを用いて実現する場合には、制御装置9は、例えば、図20に示すように、バス1001によって接続されたプロセッサ1002とメモリ1003とを備える。メモリ1003は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。プロセッサ1002が実行するプログラムとプログラムを実行するために必要なデータが、ROMに記憶されている。プログラム実行中に作成されるデータが、RAMに記憶される。
【0134】
変形例.
本開示は、次のような変形例を含む。
【0135】
(1)赤外線カメラの位置
温度測定装置17に含まれる赤外線カメラをはんだ付けシステム1に設けられた排気ダクト(図示しない)直下から、離して設置することによって、赤外線カメラが備えるレンズにフラックス蒸気が付着することを防止してもよい。
【0136】
(2)温度分布データ作成
温度分布データ作成部は、基板10の表面を1000×1000の2次元マトリクスに分割した。基板10の表面の分割は、これに限定されない。温度分布データ作成部は、基板10の表面を、基板10の大きさ、温度分布の解析精度、はんだ付けシステム1の制御精度等に応じて、分割しても良い。例えば、温度分布データ作成部は、基板10の表面を、50×50、100×800、7000×3000等に分割しても良い。
【0137】
(3)はんだ付け検査
はんだ付けの良否の評価は、作業者によって行われても良い。
【0138】
(4)シミュレーション
シミュレーション結果の判別方法は、上記の実施形態に記載されたものに限定されない。例えば、シミュレーションにより得られた温度分布をサポートベクトルマシンに入力し、はんだ付けの不良に属するグループとはんだ付けが正常に属するグループの何れに属するかを識別してもよい。
【0139】
第1の学習済みモデルの精度が一定値以上に達した場合に、第1の学習済みモデルの再学習を停止するものとしてもよい。第2の学習済みモデルの精度が一定値以上に達した場合に、第2の学習済みモデルの再学習を停止するものとしてもよい。再学習を停止することによって、制御装置9における処理負荷を軽減できる。
【0140】
(5)第1の学習済みモデルの入力
上記の実施形態では、第1の学習済みモデルの入力は、温度差分布データの特徴量としたが、これに限定されるものではない。第1の学習済みモデルの入力は、基板の温度分布を表わすデータであればよい。たとえば、第1の学習済みモデルの入力は、温度分布データ作成部によって作成された温度分布データ、あるいは温度差分布データ作成部によって作成された温度差分布データであってもよい。
【0141】
(6)第2の学習済みモデルの入力
上記の実施形態では、第2の学習済みモデルの入力は、温度差分布データとしたが、これに限定されるものではない。第2の学習済みモデルの入力は、基板の温度分布を表わすデータであればよい。たとえば、第2の学習済みモデルの入力は、温度分布データ作成部によって作成された温度分布データであってもよい。
【0142】
(7)温度測定装置
温度測定装置の計測方式としては、レーザ方式、超音波方式、または電磁波方式を用いることができる。温度測定装置は、赤外線カメラではなく、放射温度計を備えるものとしてもよい。
【0143】
(8)学習
本実施の形態では、第1の学習済みモデル生成部および第2の学習済みモデル生成部が用いる学習アルゴリズムに教師あり学習を適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、教師あり学習以外にも、強化学習、教師なし学習、または半教師あり学習等を適用することも可能である。
【0144】
第1の学習済みモデル生成部、第2の学習済みモデル生成部は、複数のはんだ付けシステムにおいて作成される第1の学習データ、第2の学習データを用いて、第1の学習済モデル、第2の学習済みモデルを生成するようにしてもよい。第1の学習済みモデル生成部、第2の学習済みモデル生成部は、同一のエリアで使用される複数のはんだ付けシステムから第1の学習データ、第2の学習データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数のはんだ付けシステムから収集される第1の学習データ、第2の学習データを利用しもよい。
【0145】
第1の学習済モデル、第2の学習済みモデルを収集するはんだ付けシステムを途中で対象に追加したり、対象から除去することも可能である。さらに、あるはんだ付けシステムに関して生成した第1の学習済モデル、第2の学習済みモデルを、別のはんだ付けシステムに適用し、再学習によって第1の学習済モデル、第2の学習済みモデルを更新するようにしてもよい。
【0146】
第1の学習済みモデル生成部および第2の学習済みモデル生成部に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもでき、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、またはサポートベクトルマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
【0147】
第1の学習装置、第1の推論装置、第2の学習装置、および第2の推論装置は、はんだ付けシステムに内蔵されていてもよい。さらに、第1の学習装置、第1の推論装置、第2の学習装置、および第2の推論装置は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0148】
第1の推論装置、第2の推論装置は、他のはんだ付けシステムなどの外部から第1の学習済モデル、第2の学習済みモデルを取得し、これらに基づいて、推論を実行することとしてもよい。
【0149】
(9)実施形態の組み合わせ
上記の各実施形態を任意に組み合わせて実施することとしてもよい。
【0150】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
1,1a,1b はんだ付けシステム、2 搬送機構、3 フラックス塗布機、4 プリヒータ、5 はんだ槽、7 赤外線カメラ、9 制御装置、10 基板、11 フラックス、13 噴流ノズル、13a 1次ノズル、13b 2次ノズル、14 はんだ槽ヒータ、15 噴流モータ、16 はんだ付け検査装置、17 温度測定装置、18 フラクサー制御部、21 識別および設定部、22 第1の学習装置、23 第2の学習装置、24 第1の推論装置、25 第2の推論装置、26 駆動制御部、27 記憶装置、31,51 温度分布データ作成部、32,52 温度差分布データ作成部、33,53 特徴量抽出部、34 第1の推定部、35 データ出力部、36,43,62 制御パラメータ設定部、41,61 データ取得部、42 第2の推定部、54 第1の学習データ作成部、55 第1の学習済みモデル生成部、63 シミュレーション部、64 第2の学習データ作成部、65 第2の学習済みモデル生成部、71 第1の学習データ記憶部、72 第1の学習済みモデル記憶部、73 許容温度差分布記憶部、74 第2の学習データ記憶部、75 第2の学習済みモデル記憶部、76 目標温度分布記憶部、91 外装、98 保護窓、151 穴、201 電子部品、1001 バス、1002 プロセッサ、1003 メモリ、K 光軸。
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