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特許7612703共振効果の発生を低減するための電子整流式油圧機械および操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】共振効果の発生を低減するための電子整流式油圧機械および操作方法
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/14 20060101AFI20250106BHJP
   F04B 1/06 20200101ALI20250106BHJP
【FI】
F03C1/14
F04B1/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022554620
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 GB2021050586
(87)【国際公開番号】W WO2021181086
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】20162253.7
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509066031
【氏名又は名称】アルテミス インテリジェント パワー リミティド
【氏名又は名称原語表記】ARTEMIS INTELLIGENT POWER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルドウェル,ナイル・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ダムノフ,ダニイル
(72)【発明者】
【氏名】レアード,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】マクファーソン,ジル
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,マシュー
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/14
F04B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の操作方法であって、前記装置は、原動機および複数の油圧アクチュエータを備え、油圧機械は、前記原動機と駆動係合している回転可能シャフトを有し、かつ前記回転可能シャフトの回転により周期的に変化する体積を有する複数の作動チャンバを備え、
油圧回路は、前記油圧機械の1つ以上の作動チャンバのグループと、前記油圧アクチュエータのうちの1つ以上との間に延在し、
前記油圧機械の各作動チャンバは、前記作動チャンバと低圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する低圧バルブと、前記作動チャンバと高圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する高圧バルブとを備え、
前記油圧機械は、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択し、それにより、需要信号に応答して、前記1つ以上の作動チャンバのグループ毎の油圧液の正味変位を選択するために、前記1つ以上の作動チャンバのグループの少なくとも前記低圧バルブを能動的に制御するように構成され、
前記方法は、前記バルブを制御して、各作動チャンバに、作動チャンバ容積の各サイクル中に作動チャンバ容積の活性サイクルまたは不活性サイクルのいずれかを実行させることを含み、
活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変であり、複数の離散分数から選択され、
前記複数の離散分数は、所定の最大繰り返しパターン長を超える長さを有する作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルのいかなる繰り返しパターンの生成も回避するように選択されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記複数の離散分数は、既約分数で表される場合、所定の最大分母より大きい分母を有するいかなる分数も含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油圧機械が応答する前記需要信号は量子化され、複数の離散値のうちの1つを有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記離散分数は既約分数として表され、分母は、所定の最小値未満の周波数での作動チャンバ作動の繰り返しパターンの生成を回避するように選択される最大値にまで及ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の離散分数のうちの最小の非ゼロ分数は1/nであり、かつ前記複数の離散分数のうちの2番目に小さい分数は通常1/(n-1)であり、nが整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の離散分数のうちの最小の非ゼロ分数は、2つ以上の作動チャンバが同じ位相を有すること、または2つ以上の作動チャンバ間に不均一な位相差があることを考慮して選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記離散分数はシミュレーションまたは実験により決定され、通常、離散分数は、結果として生じる高圧マニホールド圧力、またはバルブ作動電流、または他の信号の周波数コンテンツが、1つ以上の許容周波数スペクトル基準を満たしていることを示す、および/またはカットオフ周波数未満の前記周波数コンテンツが閾値未満である、または活性サイクルおよび不活性サイクルの前記選択の効果が許容可能と判定し、あるいはそれらがそのような基準を満たさない場合には除外と判定する、シミュレーションまたは実験に応じた前記複数の離散分数に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
量子化された前記需要信号の前記離散分数および/または複数の離散値は、所定のパラメータ/または電流測定パラメータを考慮して、ランタイム中に計算され、および/またはリアルタイムで計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の離散分数は、前記回転可能シャフトの回転速度または前記装置の別の動作パラメータに応答して変化し、任意で、前記方法は、前記回転可能シャフトの回転速度が閾値を超えるときに、第1の複数の離散分数から第2の複数の離散分数の使用に切り替えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも前記低圧バルブの開閉タイミングは、各活性サイクル中に作動チャンバ毎に変位される最大ストローク容積の分数を変更するように調節され、活性サイクルを実行する作動チャンバの前記分数が複数の離散分数のうちの1つに限定されるものの、任意で、これにより、前記回転可能シャフトの1回転当たりの連続的な変位範囲を生成することが可能となる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複数の離散分数を計算するために、前記方法は、最小許容周波数と、回転可能シャフトの目標回転動作速度と、前記機械の作動チャンバ間の数および/または位相差、および/またはグループ内の作動チャンバ間の位相差を示すデータ、とを入力することと、最小許容周波数を上回る場合に限ってシリンダ作動の周波数の発生をもたらす活性サイクル間の作動チャンバ決定点の整数個nを計算することと、複数の離散分数に1/nを含めること、とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
重複値を除去した後に、分母が最大nの整数であり、かつ分子が最大n-1の整数である複数の分数を前記複数の離散分数内に含むことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
特定値未満の周波数成分を有する繰り返しシリンダ作動パターンの生成を回避するために、前記複数の離散分数から1つ以上の離散分数を除去することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
動作中に読み出すために、前記複数の離散分数を固体メモリデバイスに格納することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法に従って計算された複数の離散分数を格納する固体メモリデバイス。
【請求項16】
原動機および複数の油圧アクチュエータを備える装置であって、油圧機械は、前記原動機と駆動係合している回転可能シャフトを有し、かつ前記回転可能シャフトの回転により周期的に変化する体積を有する複数の作動チャンバを備え、
油圧回路は、前記油圧機械の1つ以上の作動チャンバのグループと、前記油圧アクチュエータのうちの1つ以上との間に延在し、
前記油圧機械の各作動チャンバは、前記作動チャンバと低圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する低圧バルブと、前記作動チャンバと高圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する高圧バルブとを備え、
前記油圧機械は、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択し、それにより、需要信号に応答して、前記1つ以上の作動チャンバのグループ毎の油圧液の前記正味変位を選択するために、前記1つ以上の作動チャンバのグループの少なくとも前記低圧バルブを能動的に制御するように構成されたコントローラを備え、
前記コントローラは、前記バルブを制御して、各作動チャンバに、作動チャンバ容積の各サイクル中に作動チャンバ容積の活性サイクルまたは不活性サイクルのいずれかを実行させるように構成され、
前記装置が、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変であり、複数の離散分数から選択されるように構成され
前記複数の離散分数は、所定の最大繰り返しパターン長を超える長さを有する作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルのいかなる繰り返しパターンの生成も回避するように選択されることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子整流式油圧機械の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電子整流式油圧機械は既知であり、作動チャンバ毎の作動流体の変位は、少なくとも、各作動チャンバを低圧マニホールドに接続する低圧バルブの能動的制御により、かついくつかの実施形態では(例えば、機械がモータとして機能する場合)各作動チャンバを高圧マニホールドに接続する高圧バルブの能動的制御によって、作動チャンバ容積のサイクルと段階的に関連付けて、作動チャンバ容積の個別サイクル毎に制御される。このような機械は需要の変化に迅速に応答することができ、変動する需要信号に出力を厳密に一致させることができる。
【0003】
本発明は特に、作動流体の正味変位が生じる作動チャンバ容積の活性サイクル間に、作動流体の正味変位が生じない作動チャンバ容積の不活性サイクルを散在させた電子整流式機械に関する。通常、活性サイクルの大部分またはすべては、バルブ作動信号のタイミングの好適な制御によって、作動チャンバが作動流体の所定最大変位を変位する、フルストロークサイクルである。いわゆる部分ストロークサイクルを操作することにより、活性サイクル中に行われる最大変位の分数を調節するために、低圧バルブおよび任意で高圧バルブを調節することも知られている。しかしながら、通常そのような機械は活性サイクルと不活性サイクルを散在させ、活性サイクルはフルストロークサイクルであり、活性サイクルであるサイクルの分数(活性サイクル分数)は、部分ストロークサイクルのみで動作する代わりに、需要分数変位を達成するように変化する。
【0004】
このような機械を最大出力の特定の比率で操作すると、問題が発生することがわかっている。そのような例は、最大出力に対する比率が低い場合および最大出力に対する比率が高い場合で見られる。比率が低い場合、機械は、不活性サイクルが介在し高脈動流をもたらす活性サイクルのみを偶発的に実行する可能性がある。このような脈動流は、時として振動(特に低周波の振動)および共振効果を引き起こすことがわかっている。例えば、このような機械が軸回転当たりの最大変位の5%で動作し、活性サイクル1回分に続いて不活性サイクル19回分を連続で実行した後に、このパターンを繰り返すことによって動作を実行し、作動チャンバが等間隔で同相の場合、作動チャンバ選択の頻度(作動チャンバが活性サイクルまたは不活性サイクルのいずれかにコミットする頻度)の1/20の頻度で振動が生じる。これが装置の構成要素の共振周波数と一致する場合、望ましくない振動または損傷につながる可能性がある。例えば装置が掘削機である場合、低周波の脈動流は、オペレータのキャビンを振動させる可能性がある。したがって、作動チャンバ(例えばシリンダ)活性化(すなわち、活性サイクルを実行する作動チャンバ)のパターンを繰り返すと、対応する動作周波数(かつ場合によってはその倍音)の生成につながる。
【0005】
不活性サイクルを実行するシリンダのパターンに起因して、共振効果が生じる可能性もある。例えば、同様の機械が最大変位の95%で動作している場合、主に活性サイクルを実行し、20サイクルに1度が不活性サイクルとなる。このようなシリンダ不活性化パターンにより、作動チャンバ作動の周波数の1/20に等しい周波数で再び共振効果が生じる可能性がある。最大変位量の50%をわずかに上回る場合および50%をわずかに下回る場合に強い共振が生じる可能性もある。
【0006】
したがって本発明は、特定の共振周波数、特に低周波数の生成を抑制または回避する、作動チャンバ容積の活性サイクルと不活性サイクルを散在させる、電子整流式油圧機械を提供することを目指す。
【0007】
WO2015/040360(Abrahams et al.)により、作動チャンバの活性サイクルおよび不活性サイクルパターンの周波数スペクトルにおける1つ以上の強度ピークの周波数が、望ましくない周波数の1つ以上の範囲内に残らないように、バルブ作動信号のパターンが調節された機械が開示された。本発明は、通常実行するのがより単純な代替的アプローチを提供することを目指す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従い装置の操作方法を提供するものであり、装置は、原動機および複数の油圧アクチュエータを備え、油圧機械は、原動機と駆動係合している回転可能シャフトを有し、かつ回転可能シャフトの回転により周期的に変化する体積を有する複数の作動チャンバを備え(例えば、各チャンバは、使用中に内部でピストンが往復するシリンダによって画定され得る)、油圧回路は、油圧機械の1つ以上の作動チャンバのグループと、油圧アクチュエータのうちの1つ以上との間に延在し、油圧機械の各作動チャンバは、作動チャンバと低圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する低圧バルブと、作動チャンバと高圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する高圧バルブとを備え、油圧機械は、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択し、それにより、需要信号に応答して、1つ以上の作動チャンバのグループ毎の油圧液の正味変位を選択するために、1つ以上の作動チャンバのグループの少なくとも低圧バルブを(およびいくつかの実施形態では高圧バルブも)能動的に制御するように構成され、方法は、上記バルブを制御して、各作動チャンバに、作動チャンバ容積の各サイクル中に作動チャンバ容積の活性サイクルまたは不活性サイクルのいずれか実行させることを含み、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変であり、複数の離散分数から選択されることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様に従い装置を提供するものであり、装置は、原動機および複数の油圧アクチュエータを備え、油圧機械は、原動機と駆動係合している回転可能シャフトを有し、かつ回転可能シャフトの回転により周期的に変化する体積を有する複数の作動チャンバを備え(例えば各チャンバは、使用中に内部でピストンが往復するシリンダによって画定され得る)、油圧回路は、油圧機械の1つ以上の作動チャンバのグループと、油圧アクチュエータのうちの1つ以上との間に延在し、油圧機械の各作動チャンバは、作動チャンバと低圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する低圧バルブと、作動チャンバと高圧マニホールドとの間の油圧液の流れを調節する高圧バルブとを備え、油圧機械は、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択し、それにより、需要信号に応答して、1つ以上の作動チャンバのグループ毎の油圧液の正味変位を選択するために、1つ以上の作動チャンバのグループの少なくとも低圧バルブを(およびいくつかの実施形態では高圧バルブも)能動的に制御するように構成されたコントローラを備え、コントローラは、上記バルブを制御して、各作動チャンバに、作動チャンバ容積の各サイクル中に作動チャンバ容積の活性サイクルまたは不活性サイクルのいずれかを実行させるように構成され(例えばプログラミングされた)、装置は、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変であり、複数の離散分数から選択されるように構成されることを特徴とする。
【0010】
油圧機械のコントローラは、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変であり、かつ複数の離散分数のうちの1つであり得るように構成することができる。本装置は、油圧機械のコントローラが複数の離散値から選択された需要信号のみを受信し、それによって活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変となり、複数の離散分数から選択するように構成することができる。
【0011】
「活性サイクル」とは、作動流体の正味変位が生じる作動チャンバ容積のサイクルを指す。「不活性サイクル」とは、作動流体の正味変位が生じない作動チャンバ容積のサイクルを指す(通常、低圧バルブおよび高圧バルブの一方または両方がサイクル全体を通して閉じたままである)。活性サイクルおよび不活性サイクルは、通常、需要信号によって示された需要を満たすために散在している。これは、活性サイクルのみを実行する機械とは対照的で、その変位は可変であり得る。作動チャンバ選択の決定とは、作動チャンバ容積の活性サイクルと不活性サイクルのどちらを作動チャンバが受けるかの決定を指す。これらは、通常、回転可能シャフトが複数の離散的な角度の各々にあるときに発生する。「活性サイクル分数」とは、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数を指す。これは有効分数としても知られている。需要信号は、通常、回転可能シャフトの1回転当たりの作動流体の最大変位の目標分数である「変位分数」Fdとして処理される。体積項で表した需要(1秒当たりの作動流体量)は、回転可能シャフトの現在の回転速度と、同じ高圧マニホールドおよびアクチュエータにグループで接続された作動チャンバ数とを考慮して、変位分数に変換することができる。需要信号は、油圧回路を介して油圧アクチュエータのうちの上記1つ以上に流体的に接続された1つ以上の作動チャンバのグループの合成流体変位に対する需要に関する。それぞれの需要信号を有する1つ以上の他の油圧アクチュエータに流体的に接続された1つ以上の作動チャンバの他のグループが存在する可能性がある。
【0012】
複数の離散分数は、望ましくない周波数の共振振動の発生、特に所定の最小周波数未満の周波数の共振の生成を回避するために選択される。複数の離散分数は、通常、所定の最大繰り返しパターン長を超える長さを有する作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルのいかなる繰り返しパターンの生成も回避するために選択される。複数の離散分数は、通常、既約分数で表される場合、所定の最大分母より大きい分母を有するいかなる分数も含まない。
【0013】
これにより、オペレータが経験するように、構成要素の損傷、許容できないノイズ、および振動など、そうでなければ発生するであろう共振振動の悪影響を回避または低減することができる。油圧ポンプおよびモータを含む装置は、油圧ポンプまたはモータの動作から生じる振動によって損傷する可能性がある。
【0014】
複数の離散分数の選択では、通常、回転可能シャフトの所定の動作回転速度(標準または最小標準動作速度であり得る)を考慮に入れる(回転可能シャフトの回転速度が作動チャンバサイクルの周波数を決定するため)。
【0015】
通常、油圧機械が応答する需要信号は量子化され、複数の離散値のうちの1つを有する。離散値はまた、離散分数(例えば活性サイクル分数)であってもよい。これらの離散値は離散分数と同じであってもよい。しかしながら、これは、活性サイクルと不活性サイクルのどちらを作動チャンバが受けるかを決定するために、需要信号の単位および需要信号が処理される方式に依存する。したがって、少なくとも作動チャンバの低圧バルブ(およびいくつかの実施形態では高圧バルブも)は、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択するために制御されるため、これにより、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が可変となる一方、複数の離散分数から選択した分数となる。
【0016】
複数の離散分数(および、該当する場合は複数の離散値)は、任意の時点で1つの値が選択される(有限数の)離散分数(値)のグループとみなすことができる。複数の離散分数(または値)は、通常、機械のコントローラと電子通信する固体メモリデバイスに格納され、必要に応じて固体メモリから読み取られる。
【0017】
(任意で連続する)需要信号を受信してもよく、かつ例えば、受信した需要に最も近い離散値、または受信した需要信号を上回るまたは下回る次の離散値を選択することによって需要信号を量子化してもよい。ヒステリシスは、チャタリングを回避するために量子化ステップに適用され得る。
【0018】
複数の離散値および複数の離散分数は、1つ以上の作動チャンバのグループ毎の回転可能シャフトの1回転当たりの作動流体の最大変位の対応する分数(変位分数、Fd)を表すことができる。
【0019】
離散値を決定するステップ、例えば、値を計算するステップ、またはメモリから値を読み取るステップが存在する可能性があり、値は、例えば、回転可能シャフトの回転速度に応じて可変である可能性がある。
【0020】
需要信号が量子化される場合、これら個別の変位分数(「量子化された変位」)における活性サイクルおよび不活性サイクルのパターンにより、周波数コンテンツが既知であるシリンダ作動パターン(すなわち、活性サイクルまたは不活性サイクルを実行するシリンダのパターン)が発生し、その結果、存在する最小周波数の繰り返しシリンダ作動パターンが既知である。
【0021】
このように、バルブコマンド信号のパターンは、特定範囲のFdを避けることによって不要な振動を低減するように制御される。これは、目標正味変位が厳密には満たされない場合があることを意味する。しかしながら、いくつかの閉ループフィードバックシステムでは、このことから生じるいかなるの誤差も補正することができ、それは要求した変位分数を上回る離散分数で機械が動作する場合、かつ要求した変位分数を下回る離散分数で動作する場合があるためである。
【0022】
容積誤差が許容されないシステムの一例は、正確な流体要求量をポンプが吐出することが必要となる開ループ変位制御に基づくものである。LS(負荷感知)システムなどの、積分項を持つ閉ループ圧力制御も、量子化に苦しむことになる。変位需要は、連続変位需要レベルが量子化テーブルからの2つの離散レベルの間にあるとき、2つの離散変位レベルの間を循環することができる。例えば、定常状態で20barまで制御しているとする。より低い変位レベルでは18barとなり、より高い変位レベルでは25barとなる。最も近い離散レベルが連続変位レベル未満の場合を考える。選択された離散レベルは、連続変位レベル需要に起因する流量よりも低い、ポンプからの流量となる。それは18barである。これにより圧力制御ループの積分項が増加する。この積分項は、ある時点で、連続変位需要レベルをより高い離散変位レベルに近づけるのに十分に大きくなり、選択された離散変位はこのより高いレベルまで増加する。送達圧力は25barになるため、積分項が減少し始める。ある時点で、ポンプの要求変位レベルを落とすのに十分な低さになる。本サイクルは無期限に継続する可能性があり、低頻度で発生し、低周波数コンテンツを油圧ラインに導入する可能性がある。
【0023】
しかしながら、少なくとも低圧バルブ(およびいくつかの実施形態では高圧バルブも)の開閉タイミングは、各活性サイクル中に作動チャンバ毎に変位される最大ストローク容積の分数を変更するように調節され得る。変位される最大ストロークの分数は、活性サイクル分数と(例えば装置コントローラによって)連携され、活性サイクル分数を複数の離散分数のうちの1つだけに制限しつつ、需要信号によって示される変位分数を油圧機械に変位させることができる。
【0024】
このことは、活性サイクルを実行する作動チャンバの分数が複数の離散分数のうちの1つに限定されるものの、回転可能シャフトの1回転当たりの連続的な変位範囲を生成することを可能にし得る。これにより、回転可能シャフトの1回転当たりのすべての変位(ゼロからフル)が有効になり、(完全な)可変変位油圧機械が効率的に作成される(完全連続変位は、有限数の離散活性サイクル分数を使用すると可能である)。最大変位量のすべての分数は、0~100%の範囲の最大ストローク容積変動を許容することによって達成され得るが、最大ストローク容積変動の0~5%および95~100%、または0~10%および90~100%の制限でも可能である。各サイクル中に作動チャンバ毎に変位される最大ストローク容積の分数は、0~x%かつy%~100%の間で変化し、x<25かつy>75、あるいはx≦10かつy≧90であってもよい。その理由は、このような範囲の部分ストローク変位は、作動チャンバ内部または外部への流体流量が制限されているとき、ストローク(作動チャンバ容積のサイクル内)の開始または終了付近に限ってバルブを作動させることによって生成され得るからである。
【0025】
需要信号の複数の離散分数および/または複数の離散値は、等間隔であってもよく、または等間隔でなくてもよい。需要信号の離散分数および/または離散値は、回転可能シャフトの回転速度応じて変化してもよく、また変化しなくてもよい。回転可能シャフトの回転速度に応じて変化する場合は、低周波成分の生成を低減するために選択することができる。例えば、離散値は1000未満、または100未満であってもよい。需要信号がデジタルの場合、バイナリ論理によって課された取り得る値を参照するのではなく、需要信号のビットサイズを考慮してデジタルで表すことができる値のサブセットを参照する。このように離散値は、通常、そのビット長を考慮すると、需要信号が有し得るデジタル値の10%未満、1%未満、または0.1%未満を示す。
【0026】
コントローラは需要信号(通常は連続需要信号)を受信し、かつ対応する一連の値を決定することが可能で、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび/または不活性サイクルのパターンに対応する上記一連の値は、それにより需要信号を満たす(すなわち、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび/または不活性サイクルのパターンに起因する需要信号(F)を一定期間にわたって平均化したとき)。本方法は、需要信号(通常は連続需要信号)を受信すること、および対応する一連の値を決定することを含むことが可能で、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび/または不活性サイクルのパターンに対応する上記一連の値は、それにより需要信号を満たす(すなわち、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび/または不活性サイクルのパターンに起因する需要信号(F)を一定期間にわたって平均化したとき)。
【0027】
例えば、コントローラは、最大変位の90%の連続需要信号を受信することができ、少なくとも100個の値、または望ましくは少なくとも500個の値、より好ましくは少なくとも1000個の値を含む一連の値を決定することができる。一連の値は反復配列を含んでもよく、そのため、活性サイクルおよび/または不活性サイクルのパターンは、反復配列に対応する期間を含んでもよい。一定期間にわたって平均化された活性サイクルは、配列内の低周波数コンテンツを生成することなく、可能な限り90%近くを満たす。
【0028】
いくつかの実施形態では、各活性サイクル中の作動流体の正味変位は同じである。この変位は、通常、作動チャンバ毎の作動流体の最大変位である。
【0029】
分数とは、整数の分子と整数の分母の比率で表される0~1の範囲の数を指す。既約分数とは、分子と分母が整数の公約数を持たないように表された分数を指す。例えば、3/6は既約分数1/2と同じである。
【0030】
通常、離散分数が既約分数で表されるとき、分母は、所定の最小値未満の周波数での作動チャンバ作動の繰り返しパターンの生成を回避するように選択される最大値にまで及ぶ。通常、離散分数が既約分数で表されるとき、それらは、最大分母までの各整数分母を有する分数を含む。離散分数が既約分数として表されるとき、それらは、最大分母までの整数iの倍数である各整数分母を有する分数を含んでもよい。(例えばi=3の場合、分母は3、6、9、12…であり、そのような多くの分数は、既約分数で表される場合、より小さい整数を有するが、分数は通常、1/i、1/2i、1/3i…(3i-1)/3i、(2i-1)/2i、i-1/iを含む)。
【0031】
複数の分数はそれぞれ、(通常0および1と共に)1~nの分母と、対応する1~n-1の分子mと(mおよびnは整数)を有する既約分数を含むか、またはそれからなり得る。
【0032】
複数の整数はそれぞれ、(通常0および1と共に)i~nの整数iの倍数である分母と、1~n-1の分子mと(i>1)を有する既約分数を含むか、またはそれからなり得る。各作動チャンバが同じ冗長性を有する場合、iは冗長性に等しくてもよい。冗長性とは、同位相で動作する(したがってシャフト角度と同等の流体変位となる)同じ作動チャンバグループ内の作動チャンバの数を指す。
【0033】
複数の離散分数のうちの最小の非ゼロ分数は1/nであり、かつ複数の離散分数のうちの2番目に小さい非ゼロ分数は通常1/(n-1)であり、nが整数である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
回転可能シャフトの目標回転動作速度において、作動チャンバ容積の活性サイクルの繰り返しパターンの周波数が所定の最小許容周波数を上回るように、複数の離散分数のうちの最小の非ゼロ分数が選択され得る。
【0035】
複数の離散分数のうちの最小の非ゼロ分数は、2つ以上の作動チャンバが同じ位相を有すること、または2つ以上の作動チャンバ間に不均一な位相差があることを考慮して選択され得る。これは、作動チャンバの相対位相を表すデータを処理すること、および/またはいくつかの作動チャンバが、同期された作動チャンバ容積のサイクルを有し得ることを考慮することを含み得る。本方法は、通常、グループ内の作動チャンバの位相差および/または冗長性を考慮に入れて、繰り返しパターンを生成するのに必要な作動チャンバのグループ内の連続した作動チャンバ数を計算することを含み得る。
【0036】
しかしながら、量子化された需要信号の離散分数(活性サイクル分数)および/または複数の離散値(該当する場合)は、シミュレーションまたは実験によって決定することができる。この場合、量子化された需要信号の離散分数および/または離散値は、結果として生じる高圧マニホールド圧力、またはバルブ作動電流、または他の信号の周波数コンテンツが、1つ以上の許容周波数スペクトル基準を満たしていることを示す、および/またはカットオフ周波数未満の周波数コンテンツが閾値未満である、または活性サイクルおよび不活性サイクルの選択の効果が許容可能と(例えば、オペレータのフィードバック、または器具の1つ以上の部品の移動の測定もしくは計算に応じて)判定し、あるいはそれらがそのような基準を満たさない場合には除外と判定する、シミュレーションまたは実験に応じた複数の離散分数(または値)に含まれる。したがって、複数の離散分数および/または離散値は、試行錯誤によって構築されてもよい。最小周波数は、実験またはシミュレーション(設計、製造、またはランタイム中であるかにかかわらず)によって決定され、最大分母nを計算するために使用され得る。
【0037】
量子化された需要信号(該当する場合)の離散分数(活性サイクル分数)および/または複数の離散値は、機械の製造もしくは試運転の前、または運転前でも決定する必要はないが、事前に決定されたパラメータ(例えば、作動チャンバの位相および冗長性データ、最小周波数)および/または電流測定パラメータ(例えばシャフトの回転速度)を考慮して、ランタイム中に計算されてもよく、および/またはリアルタイムで計算されてもよい。
【0038】
複数の離散分数および/または複数の離散値(該当する場合、需要信号は量子化される)は、回転可能シャフトの回転速度または装置の別の動作パラメータに応答して変化し得る。すなわち、複数の離散分数(または値)は、離散分数(または値)のグループであってもよく、異なるグループの離散分数(または値)は、回転可能シャフトの異なる回転速度、または装置の別の動作パラメータの異なる値もしくは範囲で使用され得る。本方法は、回転可能シャフトの回転速度が閾値を超えるとき、第1の複数の離散分数(または値)から第2の複数の離散分数(または値)の使用に切り替えることを含み得る。
【0039】
使用される複数の離散分数(または値)は、高圧マニホールドに接続される作動チャンバのグループ内の作動チャンバの数および位相の変化に応答して変更されてもよい。
【0040】
作動チャンバ容積の活性サイクルと不活性サイクルのどちらを作動チャンバが受けるかは、変位需要の時間履歴(例えば、受信した変位需要信号)を実際の変位の時間履歴と比較し、例えば、変位需要信号に応じてアキュムレータをインクリメントし、および変位される作動流体の量に応じてアキュムレータをデクリメントすることによって決定され得る。
【0041】
第3の態様の方法は、第1の態様の方法、または第2の態様の装置で使用するための複数の離散分数を計算する方法に及んでおり、本方法は、最小許容周波数と、回転可能シャフトの目標回転動作速度と、機械の作動チャンバ間の数および/または位相差、および/またはグループ内の作動チャンバ間の位相差を示すデータ、とを入力することと(上記グループは、グループ化された作動チャンバが共通の油圧出力を共有するように定義される)、最小許容周波数を上回る場合に限ってシリンダ作動の周波数の発生をもたらす活性サイクル間の作動チャンバ決定点の整数個n(通常は最大整数)を計算することと、複数の離散分数に1/nを含めること、とを含む。
【0042】
本方法は、重複値を除去した後に、最大nの整数である分母、および最大n-1の整数である分子を有する複数の分数を複数の離散分数内に含むことをさらに含み得る。
【0043】
本方法は、すべてが整数の(1より大きい)整数倍である分母を有する複数の分数から複数の離散分数を形成することを含み得る。
【0044】
本方法は、分数1/i、1/2i、および通常iが整数である場合の1/3iも含む複数の離散分数を形成することを含み得る。iは、作動チャンバの冗長性に等しくてもよい。
【0045】
通常、重複値は除去される。分数は既約分数として表し直すことができる。分数は二進数に変換することができる。
【0046】
本方法は、特定値未満の周波数成分を有する繰り返しシリンダ作動パターンの生成を回避するために、複数の離散分数から1つ以上の離散分数を除去することを含み得る。周波数成分は、不均衡なシリンダ位相に伴い生じる可能性がる。
【0047】
本方法は、候補となる複数の離散分数(例えば、活性サイクル分数)が、1つ以上の動作平滑化基準を満たすことを可能にする十分な解像度を有する、結果として生じる出力流体変位の離散レベルと関連付けられているかどうかを検証するステップをさらに含み得る。候補となる複数の分数が(離散分数間のギャップに伴い)十分に滑らかな動作をもたらさない場合、本方法は、複数の離散分数を再計算する、または油圧機械を再指定する(例えば、より多くの作動チャンバを有する油圧機械の使用を決定する)、誤差または故障方式を生成することを含み得る。離散分数は、該当する場合、複数の離散分数および/または量子化された需要信号の値として使用されてもよい。
【0048】
本方法は、動作中に読み出すために、複数の離散分数を固体メモリデバイスに格納するステップを含み得る。
【0049】
作動チャンバによって実行される、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルは、所与の活性サイクル分数に対する有限期間のパターンを含む。例えば、活性サイクルおよび不活性サイクルのパターンは、少なくとも0.001秒、または少なくとも0.005秒、または少なくとも0.01秒の最小期間を有してもよく、および/または、多くても0.1秒、または多くても0.5秒の最大期間を有してもよい。
【0050】
機械の一例では、最小期間は2.4ミリ秒であり得る(最大速度2500RPMにおける等間隔の12個のシリンダすべての作動頻度に起因する)。当業者であれば、原動機のより高い速度、またはより多くのシリンダがあれば、最小期間が1ミリ秒(またはそれ未満)であり得ることを理解するであろう。
【0051】
一次実施形態では、5Hz未満のすべての周波数を除去することが好ましく、これは0.2秒の周期に相当する。
【0052】
通常、許容可能な周波数コンテンツに応じて、許容可能な周期の範囲が選択される。特定値未満のすべての周波数を除去する必要がある用途では、最大許容周期を指定する必要がある。この最大許容周期から、活性サイクル分数の許容範囲が、シリンダ数および原動機の動作範囲に応じて選択される。例えば、許容可能な活性サイクル分数の範囲は、整数の分母値および整数の分子値を使用して生成された複数の離散活性サイクル分数を含むように選択され得る。複数の活性サイクル分数の分母は、回転軸の回転速度に応じて選択されてもよく、例えば分母は、周期が最小周期よりも高いように選択されてもよい。これは、活性作動チャンバ容積または不活性作動チャンバ容積のより頻繁なサイクルに対応するため、かつ活性サイクルおよび不活性サイクルのパターンから低周波数コンテンツを除去するため、短い周期を有することが有益である。通常、有限個の分数の分母の許容値は、回転可能シャフトの回転速度に応じて変化する。しかしながら、利用可能な活性サイクル分数が原動機速度によって変化せず、最小原動機速度で低周波数コンテンツを除去するために選択される可能性がある。その結果、より高速での周波数コンテンツも許容されることになる。
【0053】
活性サイクルまたは不活性サイクルを実行する作動チャンバの周波数は、所与の活性サイクル分数の回転可能シャフトの回転速度(毎秒回転数)に比例する。作動チャンバ容積の活性サイクルと不活性サイクルの配列は、所与の活性サイクル分数のシャフト速度に依存しない。ただし、配列の構成要素間の時間はシャフト速度とともに変化しない。したがって、活性サイクルおよび不活性サイクルの特定の配列から生じる周波数は、回転可能シャフトの回転速度に比例する。
【0054】
むしろ、明確に、シリンダが有効または無効であるかどうかにかかわらず、活性チャンバまたは不活性チャンバの繰り返しパターンが重要である。例えば配列0、0、0、1、0、0、0、1は、配列1、1、1、0、1、1、1、0と同じ基本周波数を有する。
【0055】
したがって本発明により、作動チャンバによって実行される活性サイクルおよび不活性サイクルのパターンに依存し、かつ活性サイクルおよび不活性サイクルの所与の配列に対し、回転可能シャフトの回転速度に比例する周波数で強度ピークを有する振動を油圧機械が生成するということがわかる。
【0056】
本方法は、最小許容周波数(例えば、5Hz、10Hz)を選択すること、次いで、複数の離散活性サイクル分数(例えば、該当する場合、Fdおよび/または量子化された需要信号の値)の量子化されたリストを作成することを含んでもよく、上記分数は、活性サイクルおよび不活性サイクルの1つ以上のパターンを生成するように選択され、上記パターンは、最小許容周波数を超える周波数コンテンツのみを有する。コントローラは、最小許容周波数(例えば、5Hz、10Hz)を決定し、次いで、複数の離散分数の量子化されたリスト(例えば、該当する場合、Fdおよび/または量子化された需要信号の値)を作成するように構成されてもよく、上記値は、活性サイクルおよび不活性サイクルの1つ以上のパターンを生成するように選択され、上記パターンは、最小許容周波数を超える周波数コンテンツのみを有する。
【0057】
(量子化されたリスト内の)離散値は、通常、(活性サイクルを実行する作動チャンバの)離散分数に対応するが、需要信号は変位分数に関して表す必要がないため、必須ではない。
【0058】
離散分数(および/または離散値)は、機械内のシリンダ数および/または機械の回転可能シャフトの回転動作速度に依存し得る(回転可能シャフトの回転速度およびシリンダ数は、所与の需要値に対して存在する周波数に影響を与えるため)。活性サイクル分数毎に、存在する最小周波数を計算することができる。機械が動作している間、(フィルタリングされた)需要信号は油圧機械のコントローラに送信される。なお、連続需要信号の計算、および需要信号の量子化、および/または離散活性サイクル分数の選択は、すべてコントローラ自体の内部で計算することができる。
【0059】
最小許容周波数は、20Hz未満または10Hz未満であってもよい。本発明は、このような種類の低周波数を回避するのに特に有用である。
【0060】
本発明は、第4の態様において、本発明の第3の態様の方法に従って計算された複数の離散分数を格納する固体メモリデバイスに及ぶ。第1の態様の方法は、第4の態様の固体メモリデバイスについての離散分数を読み取ることを含み得る。第2の態様の装置は、コントローラと電子通信する第4の態様の固体メモリデバイスを含み得る。
【0061】
本装置は、車両、一般的に産業用車両であってもよい。本装置は、例えば、掘削機、テレハンドラ、またはバックホーローダであってもよい。本装置は、車、バス、トラック、フォークリフトトラック、および/またはホイールローダーである可能性がある。本装置は、射出成形機またはウォータージェット切断ユニットである可能性がある。本装置は油圧パワーユニットであってもよい。本装置は油圧トランスミッションを含み得る。本装置は、油圧ハイブリッド車両トランスミッションであってもよい。本装置は、再生可能発電機(風力タービン発電機または波力もしくは潮汐発電機など)であり得る。本装置は無線トランシーバを含み得る。本装置は電池を含み得る。本装置は、充電のための電気端子を含み得る。本装置は鉄道車両であってもよい。装置は(非工業用の)乗用車であってもよい。ただし、本装置は車両ではない可能性もある。
【0062】
油圧機械は、6個または8個を超える作動チャンバを含み得る。油圧機械は、12個を超える作動チャンバを含み得る。
【0063】
本装置は、油圧回路または1つ以上のアクチュエータの測定された特性に応じて需要信号を計算するように構成され得る。本装置は、通常、油圧回路または油圧アクチュエータのうちの1つ以上の測定された特性に応じて需要信号を計算するように構成されたコントローラを含む。
【0064】
本発明はまた、油圧回路またはアクチュエータのうちの1つ以上の測定された特性に応じて需要信号を計算することを含む、装置の操作方法にも及ぶ。
【0065】
この方法は、通常、1つ以上の油圧アクチュエータのうちの少なくとも1つの流量要件および/または圧力要件を検出すること、または油圧アクチュエータのうちの1つ以上の圧力需要および/または流量需要に基づいて要求された圧力または流量を示す需要信号を受信すること、および1つ以上の油圧アクチュエータに流体的に接続されている1つ以上の作動チャンバのグループの各々からの油圧液の流量もしくは各々への油圧液の流量を、それに応じて制御することを含む。
【0066】
本方法は、測定された圧力に応答して、1つ以上の作動チャンバのグループの変位を調節することを含み得る。したがって、本装置は通常、負の流量制御ループを有する。本装置は、任意で、油圧回路または1つ以上のアクチュエータの測定された特性のフィードフォワードに応じて需要信号を計算するように構成されたフィードフォワードコントローラを含んでもよい(例えば、油圧回路または1つ以上のアクチュエータの測定された特性のフィードバックに応答して需要信号を計算するように構成されたフィードバックコントローラへの追加またはその代替)。
【0067】
例えば需要信号は、圧力の測定値および/または流量の測定値に応答して判定され得る。需要信号は圧力の測定値を含んでもよく、圧力の測定値は、スロットルで測定される。需要信号は、回転可能シャフトの1回転当たりに変位される1つ以上の作動チャンバのグループ毎の油圧液の最大変位の分数を示すことができる。これは本明細書ではFdと称される。(1回転当たりの最大変位の分数)。Fdは、各作動チャンバが作動流体の最大可能体積を変位させる場合の活性サイクル分数に等しい。
【0068】
通常、原動機は油圧機械と駆動係合する。原動機は、通常、ECMの回転可能シャフトに結合される回転可能シャフトを有する(原動機は、それにトルクを加えることができる)。原動機(例えばエンジン)および油圧機械は、共通のシャフトを有し得る。
【0069】
本装置が掘削機である場合、複数の油圧アクチュエータは、通常トラックを移動させるため(例えば車両、典型的には掘削機の移動のため)の(例えば、少なくとも)2個のアクチュエータ、回転アクチュエータ(例えばモータ)(例えば、掘削機のベースに対して掘削機のキャブを回転させるためのもので、ベースは通常トラックを含む)、少なくとも1つのラムアクチュエータ(例えば掘削機アームの制御用、例えばブームおよび/またはスティック用)、およびさらに少なくとも2個のアクチュエータ(例えば、バケットなどのツールの移動の制御用)を含む。
【0070】
1つ以上の低圧マニホールドは、油圧機械の作動チャンバに延在してもよい。1つ以上の高圧マニホールドは、油圧機械の作動チャンバに延在してもよい。油圧回路は、通常、1つ以上の作動チャンバの上記グループと上記1つ以上のアクチュエータとの間に延在する高圧マニホールドを含む。低圧マニホールドは、1つ以上の油圧回路の一部であってもよい。低圧マニホールド54および高圧マニホールド58とは、マニホールド内の相対圧力を指す。
【0071】
少なくとも低圧バルブ(任意で高圧バルブ、任意で低圧バルブおよび高圧バルブの両方)は電子制御バルブであり、本装置が、(例えば電子制御された)バルブを作動チャンバ容積のサイクルと段階的に関連付けて制御し、それによって作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を決定するコントローラを含んでもよい。本方法は、(例えば電子制御された)バルブを作動チャンバ容積のサイクルと段階的に関連付けて制御し、それによって作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を決定することを含み得る。
【0072】
1つ以上の油圧アクチュエータのグループの流量要件および/または圧力要件は、例えば、1つ以上の油圧アクチュエータのグループへの、もしくは1つ以上の油圧アクチュエータのグループからの油圧液の流量、または1つ以上の油圧アクチュエータの出口内もしくは入口内の、またはその出口もしくは入口における油圧液の圧力を測定することによって判定され得る。流量要件および/または圧力要件は、1つ以上の測定された流量および/または測定された圧力が減少しまたは期待値を下回ることから判定され得る。流量および/または測定された圧力の期待値からの減少は、1つ以上の油圧アクチュエータのグループへの流量、または1つ以上の油圧アクチュエータのグループからの流量が不十分であることを示す。例えば、アクチュエータへの油圧液の流量が期待値(例えば目標値)を下回っていると判定することができ、それに応答してアクチュエータへの油圧液の流量を増加させることができる。アクチュエータからの油圧液の流量が(例えば、アームまたは他の荷重が低くなるにつれて)期待値(例えば目標値)を上回っていると判定することができ、それに応答してアクチュエータからの流量を減少させることができる。1つ以上の油圧アクチュエータで圧力の増加もしくは減少を検出することができ、1つ以上の油圧アクチュエータに接続された1つ以上の作動チャンバのグループは、1つ以上の作動チャンバのグループから1つ以上の油圧アクチュエータへの油圧液の流量を変更(例えば増加もしくは減少)するように制御が可能で、またはその逆もまた同様に可能である。
【0073】
1つ以上の作動チャンバのグループは、1つ以上の油圧アクチュエータのそれぞれのグループに動的に割り当てることができ、それにより、1つ以上の作動チャンバの油圧アクチュエータ(例えば、そのグループ)への接続を、例えば電子制御バルブ(例えば、後述するような高圧バルブおよび低圧バルブ)を例えばコントローラの制御下で開閉することによって変更することができる。(例えば1つ以上の)作動チャンバのグループは、(例えば、1つ以上の)アクチュエータのグループ(それぞれの)に動的に割り当てることができ、それにより、例えばコントローラの制御下で(例えば電子制御された)バルブを例えば開くおよび/または閉じることによって、機械のどの作動チャンバをどの油圧アクチュエータに結合するかを変更することができる。各作動チャンバ(および/または各油圧アクチュエータ)を通る油圧液の正味変位は、1つまたは複数の油圧アクチュエータに接続された1つまたは複数の作動チャンバの正味変位を調節することによって調節することができる。1つ以上の作動チャンバのグループは、通常、上記マニホールドを介して1つ以上の油圧アクチュエータのそれぞれのグループに接続される。
【0074】
通常、本装置はコントローラを含む。コントローラは、メモリと電子通信する1つ以上のプロセッサと、メモリに記憶されたプログラムコードとを含む。コントローラは分散型であってもよく、かつ2つ以上のコントローラモジュール(例えば、2つ以上のプロセッサ)を含んでもよく、例えばコントローラは、油圧機械を制御する油圧機械コントローラ(メモリと電子通信する1つ以上のプロセッサ、およびメモリに記憶されたプログラムコードを含む)と、装置の他の構成要素(例えば、油圧液の流路を変更するためのバルブ)を制御する装置コントローラ(メモリと電子通信する1つ以上のプロセッサ、およびメモリに記憶されたプログラムコードを含む)とを含んでもよい。
【0075】
各作動チャンバによって受け入れられる、または各作動チャンバによって出力される油圧液の流量は、独立して制御可能であり得る。各作動チャンバによって受け入れられる、または各作動チャンバによって生成された油圧液の流れは、作動チャンバ容積の各サイクルにおける作動チャンバ毎の油圧液の正味変位を選択することによって独立して制御され得る。この選択は、通常コントローラによって行われる。
【0076】
流量需要および/または圧力需要は、油圧アクチュエータの入口で油圧液の圧力を測定することによって感知され得る。油圧アクチュエータが油圧機械である場合、例えば、回転シャフトの回転速度、またはラムの並進速度、またはジョイントの角速度を測定することによって流量需要を感知することができる。測定された流れの圧力和を合計してもよく、または測定された圧力または流量の最大値が検出されてもよい。
【0077】
油圧アクチュエータの圧力需要および/または流量需要に基づいて要求された圧力または流量を示す需要信号は、油圧液の流量、または油圧液の圧力、または機械のシャフトへのトルク、または機械によって駆動される油圧アクチュエータのシャフトへのトルク、または機械の出力、または1つ以上の油圧アクチュエータの圧力要件もしくは流量要件に関連する需要を示す任意の他の信号を表す信号であり得る。
【0078】
油圧機械は通常、ポンプ動作モードでポンプとして動作可能であるか、またはモータ動作モードでモータとして動作可能である。油圧機械の作動チャンバはポンプとして機能する可能性もあれば(したがって、いくつかの作動チャンバは油圧液を出力し得る)、モータとして機能する可能性もある(したがって、いくつかの作動チャンバは油圧液を入力し得る)。
【0079】
離散値の値は回転可能シャフトの回転速度に応じて変化し、量子化された需要を実行するために1つ以上の作動チャンバのグループの正味変位を油圧機械が制御するときに、望ましくないおよび/または許容できない周波数の生成を回避するために選択され得る。
【0080】
個々の作動チャンバは、例えばバルブ制御モジュールによって、作動チャンバ容積の各サイクルで、所定の固定体積の油圧液を変位させる(活性サイクル)か、または油圧液の正味変位がない不活性サイクル(アイドルサイクルとも称される)を受けるかのいずれかを選択可能であり、それにより機械の正味流体処理量を、需要信号によって示される需要に動的に一致させることを可能にする。コントローラおよび/またはバルブ制御モジュールは、(例えば作動チャンバ容積のサイクル毎に)アルゴリズムを実行することによって、個々の作動チャンバに活性サイクルまたは不活性サイクルを受けさせるように動作可能であってもよい。本方法は、個々の作動チャンバが活性サイクルまたは不活性サイクル(例えば作動チャンバ容積のサイクル毎に)を受けるかどうかを決定するためにアルゴリズムを実行することを含み得る。通常、本アルゴリズムは(例えば量子化された)需要信号を処理する。
【0081】
ここで、本発明の例示的な実施形態を、以下の図面を参照して示す。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】電子整流式油圧機械およびアクチュエータを含む、本発明による装置の概略図である。
図2】電子整流式油圧機械の概略図である。
図3】シリンダ毎の正味変位を順次判定するために、図2の電子整流式油圧機械が実行する手順を示す。
図4】量子化を実行するためのデータ処理の概略図である。
図5】時間の関数として受信した需要信号に応じて量子化した出力のグラフである。
図6】量子化テーブル(複数の離散分数)を作成する手順のフロー図である。
図7A】変位需要Fdを伴う、活性シリンダの分数の変化(図7A)、最大分数としての部分ストロークサイズの変化(図7B)、およびスケールファクターの変化(図7C)を示す。
図7B】変位需要Fdを伴う、活性シリンダの分数の変化(図7A)、最大分数としての部分ストロークサイズの変化(図7B)、およびスケールファクターの変化(図7C)を示す。
図7C】変位需要Fdを伴う、活性シリンダの分数の変化(図7A)、最大分数としての部分ストロークサイズの変化(図7B)、およびスケールファクターの変化(図7C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1を参照すると、装置1、例えば油圧掘削機または他の車両は、作動チャンバの第1のグループ10Aおよび第2のグループ10Bを含む電子整流式油圧機械10(以下「ECM」)を含み、各グループは、それぞれ、第1の流体接続21Aおよび第2の流体接続21Bを介し、かつ作動チャンバのグループは、高圧マニホールド22A、22Bまたは22Cのうちの1つ以上に別々に接続されるように、バルブブロック8に流体接続される。したがって、この図1の実施形態に示されるように、ECM10は2つのグループ10Aおよび10Bを含み、各グループは1つ以上の作動チャンバを含むが、作動チャンバ数は図に示されていない。ECM10は上記油圧機械として機能し、図2を参照して以下でさらに説明する。ECMはポンプまたはモータであってもよく、本例ではポンプまたはモータとして動作可能である。ECMは、回転シャフト4を介して原動機2によって駆動される。低圧マニホールド6は、タンクから、ECMに入力される低圧側に延在する。高圧側では、ECMは、電子整流式機械の1つ以上の作動チャンバの異なるグループ10A、グループ10Bを高圧マニホールド22a、22bおよび22cに選択的に接続するように作動可能なバルブブロック8を有し、それにより、各高圧マニホールドにどの作動チャンバを接続するかを変更する。高圧マニホールドに(同一の高圧マニホールドの内部または外部に作動流体を変位するように)接続されているすべての作動チャンバ(グループ10A、またはグループ10B、または両方のグループ、または1つ以上のさらなるグループにかかわらず)は、油圧回路を介して1つ以上の油圧アクチュエータに接続されている1つ以上の作動チャンバのグループとして一緒に機能し、需要信号に応答してアクチュエータへの制御または応答を行うように一緒に制御されている、特定の1つ以上のアクチュエータに接続されているグループのうちの1つ以上の作動チャンバによる作動流体の正味変位である。本発明は、アクチュエータへの作動チャンバの割り当てを変更するオプションがない場合にも同様に適用可能である。これらの高圧マニホールドの各々は、さらなる油圧機械11などのアクチュエータに延在する。機械11は固定変位であってもよく、または電子的または機械的に(油圧的に)作動され制御されるバルブを有する可変変位であってもよく、車両の1つ以上の車輪などの負荷12を、さらなるシャフト14、または別の種類の油圧アクチュエータ16、18、例えば、掘削機のバケット、またはラムなどを通して駆動する。アクチュエータは、油圧液のシンクとしてのみ、またはソースとしてのみ機能することができるが、アクチュエータの作動方向に応じて、いくつかまたはすべてがシンクまたはソースのいずれかとして機能することができる。アクチュエータを駆動すると、アクチュエータに接続されたECMの作動チャンバはポンピングサイクルを実行し、アクチュエータによって駆動されると、アクチュエータに接続されたECMの作動チャンバはモータリングサイクルを実行する。
【0084】
装置は、1つ以上の手動制御を介してオペレータから制御信号を受信する装置コントローラ100と、アクチュエータ位置信号、または個々の油圧アクチュエータ11、16、18および/または高圧マニホールド22A、22B、22Cおよび/または流体接続21A、21Bからの圧力信号などのフィードバック信号とを含む。装置コントローラ100はこれらの信号を処理し、作動チャンバの各グループに対する連続可変需要信号を算出してECMに送信することで装置を制御する。また図示した例では、装置コントローラはまた、例えば現在または将来的な負荷の変化に応答して、どの作動チャンバがどのアクチュエータに接続されているかを再構成するために、制御信号をバルブブロック8に周期的に送信することができ、それによって、1つ以上の作動チャンバのどのグループにどの作動チャンバがあるかを変更する。ただし、バルブブロック内のバルブは、代替的に油圧ジョイスティックを介したパイロット圧力を介して作動されてもよい。
【0085】
図2は、図1に示されるECMの実施形態の一部の概略図であり、高圧マニホールド54を介して1つ以上のアクチュエータに現在接続されている作動チャンバの単一のグループを示す。図2は、第1のグループ10Aに関する詳細を示し、上記グループは、シリンダの内面によって画定される作動体積26を有するシリンダ24と、偏心カム32によって回転可能シャフト30から駆動され、かつシリンダの作動体積を周期的に変化させるためにシリンダ内で往復するピストン28とを有する複数の作動チャンバ(8つ分を表示)を含む。回転可能シャフトは、ドライブシャフトにしっかりと接続され、ドライブシャフトとともに回転する。シャフトの位置および速度センサ34は、シャフトの瞬間的な角度位置および回転速度を決定し、信号線36を通じてECMコントローラ50に通知し、これによりECMコントローラ50は、各シリンダのサイクルの瞬間的な位相を決定することができる。
【0086】
作動チャンバは各々、電子作動されたフェイスシールポペットバルブ52の形態の低圧バルブ(LPV)と関連付けられ、これらは、関連付けられた作動チャンバを有し、かつ作動チャンバから低圧油圧液マニホールド54に延在するチャネルを選択的に密閉するように動作可能であり、低圧油圧液マニホールド54は、1つまたは複数の作動チャンバ、または、本明細書に示されるように、実際にはすべての作動チャンバをECMの低圧油圧液マニホールドに接続することができる。LPVは、作動チャンバ内の圧力が低圧油圧液マニホールド内の圧力以下であるとき、すなわち吸気ストローク中に受動的に開き、作動チャンバが低圧油圧液マニホールドと流体連通となるが、LPV制御ライン56を介したECMコントローラの能動的制御下で選択的に閉じることができ、作動チャンバが低圧油圧液マニホールドと非流体連通となる、通常開の電磁駆動バルブである。バルブは、代替的に、通常閉のバルブであってもよい。
【0087】
作動チャンバは各々、それぞれの高圧バルブ(HPV)64とさらに関連付けられ、各々は圧力作動吐出バルブの形態である。HPVは、それぞれの作動チャンバから外側に開き、バルブブロック8を通って作動チャンバから高圧油圧液マニホールド22、58に延在するそれぞれのチャネルを密閉するようにそれぞれ動作可能であり、1つまたは複数の作動チャンバ、または実際には図2に示すようにすべてを接続することができる。HPVは、作動チャンバ内の圧力が高圧油圧液マニホールド内の圧力を超えると受動的に開く通常閉の圧力開放チェックバルブとして機能する。HPVはまた、関連する作動チャンバ内の圧力によってHPVが開放されると、ECMコントローラがHPV制御ライン62を介して選択的に開状態を保持することができる、通常閉の電磁駆動チェックバルブとして機能する。HPVは、通常、高圧油圧液マニホールド内の圧力に対してECMコントローラによって開くことができない。またHPVは、高圧油圧液マニホールド内には圧力がかかっているが作動チャンバ内にはかかっていないとき、ECMコントローラの制御下で開くことができ、または部分的に開くことができる。
【0088】
ポンピングモードでECMコントローラは、関連付けられた作動チャンバのサイクルの、通常、最大体積のポイント付近でLPVのうちの1つ以上を能動的に閉じ、低圧油圧液マニホールドへの経路を閉じ、それにより、後続の収縮ストロークで、関連付けられたHPVを通して油圧液を外に向けることによって(ただし、HPVを能動的には開状態を保持しない)、作動チャンバから高圧油圧液マニホールドへの油圧モータによる油圧液マニホールドの正味変位率を選択する。ECMコントローラは、選択された正味変位率を満たすために、流れを生成する、またはシャフトトルクもしくは電力を生成するLPV閉およびHPV開の数および配列を選択する。
【0089】
モータリング動作モードでは、ECMコントローラは、高圧油圧液マニホールドを介してECMによって変位された油圧液の正味変位率を選択し、関連付けられた作動チャンバのサイクルの最小体積のポイントの直前でLPVのうちの1つ以上を能動的に閉じ、作動チャンバ内の油圧液を収縮ストロークの残りによって圧縮させる低圧油圧液マニホールドへの経路を閉じる。関連付けられたHPVは、そこにかかる圧力が均等になり、かつ関連付けられたHPVを通して少量の油圧液が外に向けられると開き、ECMコントローラによって開状態が保持される。次いでECMコントローラは、通常、関連付けられた作動チャンバのサイクルの最大体積に近づくまで、関連付けられたHPVの開状態を能動的に保持し、高圧油圧液マニホールドから作動チャンバに油圧液を受け入れ、回転可能シャフトにトルクを加える。
【0090】
ECMコントローラは、サイクル毎にLPVを閉じるか、または開状態を保持するかどうかを決定するだけでなく、変化する作動チャンバ容積に対してHPVの閉じる正確な位相を変更し、それにより、高圧油圧液マニホールドから低圧油圧液マニホールドへの、またはその逆での油圧液の正味変位率を選択するように動作可能である。
【0091】
低圧流体接続部6および高圧流体接続部21Aの矢印は、モータリングモードにおける油圧液の流れを示し、ポンピングモードでは流れが逆向きになる。圧力リリーフバルブ66は、ECM内のグループを損傷から保護することができる。
【0092】
ECMは、通常の動作では、受信した需要信号によって示された需要を満たすために、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルを散在させる。
【0093】
図3は、シリンダ毎の正味変位を順次判定するためにECMコントローラ50によって実行される手順を示す。手順は、200で開始し、その後、記憶された複数の可変アルゴリズムアキュムレータは、202でゼロに設定される。可変アルゴリズムアキュムレータは、各グループが独立した需要信号に応答することができるように、1つ以上のシリンダが独立して制御されたグループ毎に維持される(1つ以上の作動チャンバのグループとして機能する)。「アルゴリズムアキュムレータ」は、コンピュータ科学において「アキュムレータ」としてより一般的に知られているが、ここでは、全く異なる概念の油圧アキュムレータと区別するために別の用語を使用する。可変アルゴリズムアキュムレータは、変位需要によって表される油圧液変位の量と実際に変位される量との間の差を記憶する。
【0094】
次いで204では、ECMの回転可能シャフトは、個々のシリンダの決定点に達するまで回転する。図1に示される例では、いかなる冗長性もなく等位相でずれている8つのシリンダがあるため、各決定点は回転可能シャフトの回転45度だけ離れている。したがって、決定点の間に生じる実際の期間は、回転可能シャフトが45度回転するのに必要な期間であり、回転可能シャフトの回転速度に反比例する。しかしながら、いくつかの実施形態では、作動チャンバ活性化の決定点間に異なる位相が存在し、独立して制御され得るが常に同じ位相を有する複数の作動チャンバが存在し得る。
【0095】
ECMコントローラは、各決定点において、別のコントローラ(例えば、装置コントローラ)から受信された変位分数Fdの形態の、またはECMの作動チャンバのグループ毎に油圧回路からの信号を使用して内部で計算された需要信号を206で読み取る。次いで208では作動チャンバのグループ毎に、ECMコントローラは、関連するアルゴリズムアキュムレータに、グループに対して要求された変位を加えたものに相当する可変アルゴリズムの和を計算する。この和は、前の決定点からの時間を考慮しており、回転可能シャフトの回転速度の変動と、作動チャンバの決定点間の位相の起こり得る変動とを考慮すると可変である可能性がある。
【0096】
次に210では、検討されているシリンダのステータスを、作動チャンバステータスのデータベース220を参照して確認する。シリンダ24毎に、シリンダが破損していること、または単一もしくは複数のアクチュエータに接続されていない異なるシリンダグループの一部であることがわかった場合、この時点では、そのシリンダに対してさらなるアクションは行われない。決定点でさらに検討する必要がある各シリンダ(もしあれば)が検討されると、本方法は、次の決定点に到達した時点でステップ204から繰り返す。
【0097】
決定点が関連するシリンダ毎に、関連する作動チャンバグループのアルゴリズムの和を閾値と212で比較する。この値は、検討されている唯一のオプションが、正味変位がない不活性サイクル、またはシリンダによる油圧液の最大変位が選択されている完全変位活性サイクルである場合、シリンダによって変位可能な油圧液の単なる最大体積であってもよい。しかしながら閾値は、より高くてもまたはより低くてもよい。例えば、シリンダの最大変位の一部のみが変位する部分サイクルを実行するのが望ましい場合、シリンダ毎の最大変位よりも小さくてもよい。
【0098】
アルゴリズムの和が閾値以上である場合、シリンダ24が活性サイクル214を受けると判定される。代替的に、アルゴリズムの和が閾値以上でない場合、シリンダ24は、その次のサイクルのシリンダ24の作動体積で非アクティブであると216で判定され、正味変位ゼロとなる。アキュムレータ値は、アルゴリズムの和から変位を引いて計算される(218)。
【0099】
その後、検討中のシリンダ24の低圧バルブ52および高圧バルブ64に制御信号が送られ、決定されたように、活性サイクルまたは不活性サイクルをシリンダに受けさせる。(ポンプの場合、高圧バルブは電子制御されておらず、制御信号が低圧バルブのみに関与する可能性がある)。制御信号は、検討中のシリンダと関連付けられた特定のバルブ用のそれぞれの制御ライン56(低圧)および62(高圧)を介して送信される。
【0100】
本ステップでは、作動チャンバ(シリンダ)のグループ毎に、変位需要信号によって表される変位需要、および変位需要信号によって表された以前の変位とECMコントローラによって決定された以前の正味変位との差(この場合、格納された誤差の形をとる)を効果的に考慮し、次いで、アルゴリズムの和が閾値以上の場合、油圧液の正味変位を生成する活性サイクルをシリンダに受けさせることによって、シリンダ毎の油圧液の時間平均正味変位を、変位需要信号によって表される時間平均変位と一致させる。その場合、誤差の値は、活性シリンダによる変位を和から差し引いた値に設定される。代替的に、アルゴリズムの和が閾値以上でない場合、シリンダは不活性であり、アルゴリズムの和は修正されない。
【0101】
本手順では、1つ以上のシリンダについて次の決定ポイントに到達すると、ステップ204から再開する。
【0102】
したがって、作動チャンバのグループ毎に、アルゴリズムアキュムレータは、要求された変位と、実際に発生した変位との間の差の記録を保存することがわかる。各サイクルにおいて、要求された変位が変位誤差値に加算され、実際に選択された変位が減算される。アルゴリズムアキュムレータは、要求された変位と供給された変位との間の差を効率的に記録し、この差が累積したものが閾値を超えるたびに活性サイクルが発生する。同じ高圧マニホールドに一緒に接続された1つ以上のシリンダの異なるグループ毎に別個のアルゴリズムアキュムレータが維持されるため、それぞれのアクチュエータに接続された各高圧マニホールド内の圧力または各高圧マニホールドを通る流れは、独立して制御され得る。
【0103】
当業者であれば、この変位判定アルゴリズムの効果がいくつかの方式で得られることを理解するであろう。例えば、アルゴリズムアキュムレータ変数から選択された変位を差し引くのではなく、要求された変位と供給された変位とを一定期間にわたって合計し、両者を均等に一致させるように個々のシリンダの変位を選択することが可能である。
【0104】
需要信号が低い場合、周期的な活性サイクルが不活性サイクル間に周期的に散在するため、非常に脈動性の高い圧力リップルをアルゴリズムがもたらすことがわかる。需要信号が最大需要の1/nで、その割合で一定である場合は、作動チャンバ容積のnサイクルに1つは活性サイクルで残りは不活性サイクルであり、作動チャンバ活性化決定点204の周波数をnで割った周波数を有する脈動流が生じる。偶発的な不活性サイクルは、それ以外の連続した活性サイクル間に周期的に発生するため、需要信号が例えば最大需要の100%近傍または未満であるときに同様の効果がある。
【0105】
通常、このような振動は比較的低い振幅で開始されるが、振動の振幅は、特に振動の周波数が車両(または車両の一部)の共振周波数にある(またはそれに近い)場合に、経時的に増加することがある。このような振動は、振幅が増加して所定の最大振幅を超えると損傷を引き起こす可能性がある。
【0106】
本発明によれば、ECMコントローラに渡され、上記アルゴリズムの入力として使用される需要信号は、後述するように、所定の長さを上回るシリンダ作動の繰り返しパターンの生成を回避するように選択される離散値の所定のグループのうちの1つのみと、カットオフ周波数を下回る周波数成分とを有するように、量子化される。
【0107】
図4は、本発明をともに実行する装置コントローラ100およびECMコントローラ50によって実行されるデータ処理の概略図である。装置コントローラおよびECMコントローラの機能が組み合わされ得るか、またはさらに分散され得ることは、当業者には明らかであろう。装置制御プログラムモジュール300(装置コントローラによって実行されるコンピュータコードによって表される)は、アクチュエータおよび高圧マニホールドから装置コントローラによって受信されたフィードバック信号310、312、314を処理する。これらの信号は、圧力測定値、アクチュエータ位置または速度測定値などを含み得る。装置コントローラはまた、タッチスクリーンまたはキーボードなどのユーザインタフェース、またはアクチュエータを制御する(例えば、掘削機の油圧アクチュエータの動作を制御する、および/または車両を駆動する)ために使用されるジョイスティックもしくはレバーなどの手動制御を介して入力され得るオペレータコマンド信号316を受信する。このデータは、作動チャンバのグループ毎の電流変位需要信号301A、301B、301Cを計算するために使用される。本例では、変位需要信号はFd(回転可能シャフトの1回転当たりの最大変位の分数)として表される。次いでこれらの信号は、部分的に処理された変位需要信号303A、303B、303Cを出力するヒステリシスロジック302A、302B、302Cを使用してヒステリシスを実行するために、装置コントローラによってデジタル処理される。
【0108】
ヒステリシスは、隣接する量子化ステップ間のチャタリングを防止するのに有用であり、すべての量子化方法に使用される。負の流量制御システムなどの積分項を持たないシステムにおけるヒステリシスのレベルは、システムの適合性および圧力と変位との関係(場合によっては比例ゲイン)に固有のものである。ヒステリシスは、量子化された活性サイクル分数を使用し、かつポンピングストロークのみが完全に利用可能な場合には、積分項を有するシステムでは有効ではなく、変位サイクルの周波数を変更するためにのみ機能する。ヒステリシスシステムを設計するとき、例えばジョイスティック位置を調整してアクチュエータ位置を実現することにより、油圧液の生成変位と要求変位との間のわずかな誤差を人間のオペレータが効果的に補正することを考慮することが好ましい。いくつかの実施形態では、ヒステリシスは、変位需要が減少しているときにのみ提供され、増加しているときには提供されない。このことは、以下に記載される可変ストローク容積の実施形態において特に有用である。したがって、ECMコントローラ50に供給され、かつ図3を参照して説明されるアルゴリズムを使用して処理される連続需要信号は量子化され、通常はヒステリシスを導入するために処理済みでもある。
【0109】
次いで、部分的に処理された変位要求は量子化される(304A、304B、304C)。図5を参照すると、元々計算された変位需要信号400をECMコントローラ50に渡す代わりに、需要信号を量子化、すなわち、複数の異なる変位分数402A、402B、402C、402D、402E等のうちの1つに対応させる。これは、複数の離散分数を設定するデータ構造306を格納する固体メモリを参照して実行される。活性サイクル分数は、格納されたテーブルを有さずにランタイム中に計算することもできる。次に、量子化された需要信号305A、305B、305CをECMコントローラ50に渡す。活性サイクル分数は、格納されたテーブルを有さずにランタイム中に計算することもできる。
【0110】
離散分数は、回転可能シャフトの所定の最小回転速度を仮定して、決定カットオフ周波数を下回る周波数コンテンツを有する、シリンダ体積の活性サイクルまたは不活性サイクルのパターンの生成を回避するように選択される。油圧ライン内の圧力脈動は、シリンダ作動体積の活性サイクルおよび不活性サイクルを含む有効パターンに見られるものと同じ周波数コンテンツから生じ、同じ周波数コンテンツを有する。この振動は構成要素に伝達される。量子化制御方法の目的は、システム/車両の機械的構成要素が(例えばオペレータの起動を介した直接的または間接的のいずれかで)それらの固有周波数で励起されることを防止することである。これは、ポンプ(または接続されたホース/パイプ)から機械的構成要素に振動が伝達されるための何らかの経路(例えば、機械的結合経路)が存在する機械的構成要素の固有周波数と同じ周波数でシリンダが有効にされた場合に生じ得る。
【0111】
量子化を使用してシリンダの有効パターンから周波数を除去することにより、特定の変位レベルがECMコントローラによって指令されるのを防ぐ。変位レベルは、シャフト1回転当たりの流体の体積、またはシャフト1回転当たりの流体の最大変位の分数に関して画定され得る。連続変位レベル需要が離散変位レベルのうちの1つと等しくない場合、最も近い離散変位レベルが選択され、連続変位需要と離散変位レベルとの間に、結果として生じる誤差が存在する。したがって、この場合、要求量とポンプの送達量との間に誤差が生じる。これは、生成された流体の正確な体積と送達体積との間の誤差が許容されるシステムでは発生しない。
【0112】
さらに、人間のオペレータは、油の需要量と生成量との間のわずかな誤差を効果的に補正する。オペレータはジョイスティックの位置を調整して所望のアクチュエータの位置を実現する。
【0113】
「最小周波数」の重要性は、量子化を使用する場合、それ未満の周波数がシリンダの有効パターンに存在しないことである。選択された「最小周波数」が構成要素の固有周波数を上回る場合、機械的構成要素は固有周波数で共振しない。
【0114】
この目的のために、離散分数のグループは、整数nまでの分母を有する分数から構成されてもよく、nは、シャフト回転の期待速度で、変位分数1/nにおけるシリンダ容積の活性サイクルの選択の周波数がカットオフ周波数を上回るように選択される。
【0115】
例えば、機械が12個の等間隔のシリンダを有し、かつ1000rpmで回転する場合、(60/1000)/12=5ミリ秒毎にシリンダ選択の決定に達する。最大分母が5の場合、シリンダは25ミリ秒毎に活性サイクルを実行し、活性サイクル分数は1/5で、したがって、存在する最小周波数は40Hzである。これは、以下のようなシリンダ起動パターンの例で見ることができる。
【0116】
【表1】
【0117】
上記の表は、Fd=1/n(ここでは5)の場合、n個のシリンダ毎の繰り返しでパターンが生成されることを示している。mおよびnが両方とも整数であるm/nについては、既約分数として表され(すなわちmおよびnは1以外の公約数を有さない)、配列長nを有するパターン(m個のシリンダが活性サイクルを受ける)が再び生成される。
【0118】
例えば許容可能な部分のグループは、既約分数である各分数m/nであってもよく、nは1から所定の最大整数(本例では5)までの値であり、mはnより小さい(nの値毎)。n=5についての例の表を以下に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
より一般的には、軸の周りに均等に分散された、最小動作回転速度r(毎秒回転数)のx個のシリンダの場合、シリンダn個毎に繰り返すパターンにより、周波数xr/nの振動が発生する。
【0121】
より大きい最大配列長nを有する表は、最大n-1の各m、および決定最大値までの各nについての各既約分数m/nを含むことによって生成することができる。
【0122】
より大きい繰り返しパターン長(nにより決定される)は、比例してより低い周波数につながるが、より大きいテーブル長につながる。
【0123】
例えばn=12の場合、対応する表を以下に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
実際には、分数は、格納される重要なビットの数に応じてある程度の端数処理を必要とするバイナリ形式で格納され得る。代替的に、変位分数は、格納されたテーブルを使用することなく計算されてもよい。
【0126】
上記の表では、ECMによって実行される最小の非ゼロ分数、したがって最小のFd値は、1/n、1/(n-1)、1/(n-1)…であることが注目される(配列内の次の数が2/n以上になるまで)。最大の1未満の分数は、(n-1)/n、(n-2)/(n-1)、(n-3)/(n-2)となる。
【0127】
最大変位バンドにより、表に示す最大の変位ギャップの値が与えられ、この値は通常1/nとなる。これは、量子化後の変位ステップの粗さ、したがって、量子化テーブルがどの程度許容可能かを示す。変位における非常に粗いステップは、車両用途において特に懸念され得るアクチュエータの正確な制御を妨げる可能性がある。
【0128】
ある実験では、低周波数(約3~15Hz)で振動させることができるオペレータキャブを有する掘削機を使用し、ECM駆動油圧アクチュエータがECMに流体接続された状態で、表2の量子化テーブル(最大配列長12、すなわちn=12)はキャブを励起しなかったが、許容できないユーザエクスペリエンスを提供するのに十分に粗い変位ステップを与えた。配列長を24、すなわちn=24に増加させた場合は、キャブを励起しなかったが、許容できるユーザエクスペリエンスを提供する変位ステップを提供した。配列長をさらに36に増加させた、つまりn=36では、許容できるステップサイズを提供したが、周波数コンテンツはキャブを励起した。
【0129】
このように、量子化された変位レベルの粗さと最小周波数との間にはトレードオフがある。一部の用途では、最大5~10%のギャップが許容できる。ギャップは、異なる位相でより多くの作動チャンバを有するECMを選択するか、またはより高い最低シャフト速度を有する(または最低シャフト速度を制限する)原動機を選択し、かつより大きい最大分母を選択することによって減らすことができる。
【0130】
油圧掘削機の場合はキャブ自体の共振が主な懸念事項であるが、他の車体の励振や共振も懸念される。例えば、車両キャブの動きは個々のオペレータの共振を引き起こす可能性があり、その結果、ジョイスティックの意図しない動きを引き起こす可能性があり、したがって、状況を悪化させる可能性がある。本発明は、低周波数共振効果を回避するために特に有用である。
【0131】
さらに変位分数のなかには、例えば、さらなる共振を励起するリスクが原因で許容できないとみなされるものもあり、許容できないとみなされる変位分数は、変位分数のテーブルから除外され得る。
【0132】
表1の例では、シリンダは等間隔で同相であり、冗長性はない(n個のシリンダは、それらの容積サイクルが360/n°の位相間隔になるように構成されている)。しかしながら、作動チャンバが同相で等間隔でなく、および/または冗長性があるECMは、それにより、互いに同相を有する複数の作動チャンバを指すことが知られている。後者は、シリンダがマルチローブカムによって駆動されるのが一般的であり、例えば、1つ以上の作動チャンバサイクルが、回転可能シャフトの1回転内で発生することを意味する。不均一な位相の作動チャンバは、ECMの設計に起因して、または動作中に作動チャンバの異なるグループに作動チャンバを割り当てることに起因して生じ得る。
【0133】
例えばECMは、等間隔で同相(360/24=15°間隔)の24個のシリンダを有する。120°間隔の3つのシリンダのグループは共通の高圧出力を有し、8つの独立した出力がある。これらの独立した出力のうちの3つは第1の高圧マニホールドに接続され、これらの独立出力のうちの4つは第2の高圧マニホールドに接続され、1つの独立出力は第3の高圧マニホールドに接続される。
【0134】
第1の高圧マニホールドに接続された9つのシリンダの位相は下表のようになり得る。
【0135】
【表4】
【0136】
表4は、この実施形態では、連続するシリンダ間の位相は30°のときと60°のときがあることを示す。したがって、シリンダ間の位相は一定していない。
【0137】
表4の例では、繰り返しシリンダ位相パターンの長さは3である。この数値は、シリンダの位相を繰り返すために必要なシリンダの数を示す。シリンダ1とシリンダ2との位相差は30である。シリンダ2とシリンダ3との位相差は30である。シリンダ3とシリンダ4との位相差は60である。次いで、このパターンを繰り返す。このパターンを繰り返すのにシリンダが3つ必要なため、繰り返しシリンダ位相パターンの長さは3となる。
【0138】
機械はまた、重複した位相(冗長性)を有するシリンダを有するように設計され得る。下表に、冗長性2を有する6気筒機を示す。
【0139】
【表5】
【0140】
このような機械の量子化テーブルは、想定した様式で特定の最大配列長が最低周波数を制限することを保証する要件を考慮して作成する必要がある。
【0141】
すべての作動チャンバが1を超える冗長性を有する場合、分数の分母は、冗長性の倍数であるように選択されてもよい。したがって冗長性が3の場合、テーブルは分数1/3、1/6、1/9、1/12、1/15などを含み得る。
【0142】
不等間隔の作動チャンバを機械が有する場合のオプションの1つは、繰り返しシリンダ位相パターン長の倍数であるすべての分母を選択することである。これにより、同じシリンダ数の等間隔機械と同じ最小周波数が得られる。
【0143】
したがって、最低周波数を制限するために、位相または冗長性が一定していない機械またはサービスの許容変位レベルが低減される。これにより、量子化テーブルにさらなる粗さが生じる。
【0144】
下表は、12個のシリンダを有する機械における作動チャンバの冗長性の効果を示す。本表は、1/3の変位分数でどのシリンダが活性サイクルを実行するかを示す。
【0145】
【表6】
【0146】
表6は、冗長性が1の場合、90°毎に繰り返しパターンがあることを示す(すなわち、パターンは回転可能シャフトの1回転毎に4回繰り返され、回転可能シャフトの回転数の4倍である)。冗長性が3の場合、90°毎に繰り返しパターンがある(すなわち、パターンは回転可能シャフトの1回転毎に4回繰り返され、回転可能シャフトの回転数の4倍である)。しかしながら、冗長性が2のとき、有効シリンダ間の位相差は120度であることがあり、有効シリンダ間の位相差は60度であることがある。これは180°毎の繰り返しパターンを引き起こす(すなわち、回転可能シャフトの半回転毎にパターンが繰り返し、回転可能シャフトの2倍の回転数で繰り返す)。冗長性が1の例および冗長性が3の例では、有効分数が1/3の場合、シャフトの回転数の4倍の周波数となる。有効分数が1/3の場合、シャフト回転数の2倍の周波数でより低い周波数となる。
【0147】
本例から、冗長性の整数倍でない分母が量子化テーブルで使用されると、より低い周波数が存在することが明らかとなる。シャフト回転数の2倍未満の周波数を除去することが望ましい場合、冗長性2を有したシリンダ位相では1/3の有効分数を使用することはできない。
【0148】
そのような場合、冗長性>1を有する実施形態の量子化テーブルは、冗長性の倍数である分母を有する分数からなる。例えばnが最大18の場合、以下の分数が算出され、次いでソートされ、重複が除去される:1/3、2/3、3/3、1/6、2/6、3/6、4/6、5/6、6/6、1/9、2/9、3/9、4/9、5/9、6/9、7/9、8/9、9/9、1/12、2/12、3/12、4/12、5/12、6/12、7/12、8/12、9/12、10/12、11/12、12/12、1/15、2/15、3/15、4/15、5/15、6/15、7/15、8/15、9/15、10/15、11/15、12/15、13/15、14/15、15/15、1/18 2/18/18 3/18 4/18 5/18 6/18 7/18 8/18 9/18 10/18 11/18 12/18 13/18 14/18 15/18 16/18 17/18 18/18。
【0149】
既約分数に約分すると次のようになる。
【0150】
【表7】
【0151】
図6を参照すると、より一般的には量子化テーブルを決定するための手順は、個々のシリンダの相対位相差、およびシリンダ間に冗長性があるかどうか、および冗長性がどの程度あるかに依存する繰り返しシリンダパターンを計算すること(500)から始まる。破損したシリンダは、動作前(図6のようなシミュレーションまたは実験など)または動作中に考慮されてもよい。冗長性がなくかつ各シリンダが等しく離れている単純な例では、次いで、繰り返される位相差は、シリンダ間の単純な位相間隔である。シリンダが等間隔でない場合、繰り返しパターンは、繰り返し位相差パターンを生成するために必要なシリンダ数を特定してから、すべてのシリンダ間の位相差を合計することによって計算する必要がある。これは、作動チャンバの繰り返し配置間の位相差を判定するために使用される。表4および表5の例では、これは120°である。c個のシリンダが等間隔で冗長性がrの機械の場合、これは360*r/cである。繰り返しパターンを生成するために必要なシリンダ数も決定される。これは、表4および表5の例では3である。
【0152】
次のステップでは、変位分数の許容分母が計算される(502)。これは、最小期待動作シャフト回転速度を使用し、かつ前のステップで計算したシリンダの繰り返しパターン間のシリンダ数および位相差を使用して計算され、このステップには最小許容周波数も含まれる。これにより、最小周波数を下回る周波数を有する繰り返しパターンにつながらない許容分母を算出することができる。図6の例では、冗長性3、シャフト速度1500rpm、最小周波数15Hzで、許容分母は3、6、9、12、15である。
【0153】
その後、これらの分母を使用して、許容Fd値(すなわち、利用可能な量子の1つとして選択される変位分数)が計算される(504)。各許容分母nについては、通常、量子化テーブルは、各m/nを含み、mは、nの各値に対する1~nの整数である。
【0154】
次に、重複を除去しかつ数値順にソートすることにより、算出された分数を処理する(506)。次の段階では、任意であるが、いくつかのFd値は、例えば装置の別の構成要素で他の共鳴をいくつか生成する可能性があるため、計算されたリストからフィルタリング(除去)されてもよい(508)。
【0155】
その後に検証ステップ510があり、計算された許容Fd値が分析され、ユーザのためにそれらが十分に滑らかな動作を提供するかどうかを判定する。
【0156】
計算されたFD値の最終セットは、次いでメモリに格納512され、機械の動作中に使用される。上述のように、例えば、異なる作動チャンバグループが個々の高圧マニホールドに接続されているときのため、異なるシャフト速度、または装置の動作モードのための許容Fdの異なるテーブルが存在してもよい。
【0157】
上記の例では、装置コントローラ100は、量子化された需要信号を作成し、かつ所定の長さを超えるシリンダ作動の繰り返しパターンの生成の回避を、ECMコントローラ50を修正すること、または使用するアルゴリズム(シグマ-デルタ・アルゴリズム)を変更することを必要とせずに行った。したがって、要求された変位を実行するために実際に活性サイクルを実行させる正確なシリンダは、ECMコントローラよって決定される。通常それらは所定のものではなく、シャフト回転の時間履歴および要求される変位に応じて、使用する毎に異なる。
【0158】
既に説明したように、電気的に整流された油圧機械は、分数変位要求を満たすために、作動チャンバ容積の活性サイクルおよび不活性サイクルを散在させることが通常有利であり、各活性サイクルは通常、各作動チャンバの最大正味変位である同じ正味変位を有する。しかしながら、図7A図7Cを参照し、バルブタイミングを修正することによって活性サイクル中の作動チャンバのストローク容積を減少させる実施形態をここで説明する。これは、いくつかの点で効率が悪い可能性があるが、上述の量子化アプローチと組み合わせることができ、望ましくない低周波数や振動などの生成を抑制する信頼性の高い機械をもたらすことができ、これは、幅広い(かついくつかの実施形態では)連続的な変位分数の範囲を提供することができる。
【0159】
これらの実施形態では、活性サイクル中の正味変位は、低圧バルブおよび高圧バルブの能動的制御のタイミングを変化させることによって、最大変位の100%未満に低減される。そのための方法は、WO2004/025122で既知である。例えば、ポンピングサイクル中、低圧バルブを閉じるタイミングは、シリンダの最大容積(上死点)の点の直後である、通常の位相から遅れてもよい。短時間の遅延では、変位の減少はわずかである。低圧バルブの閉鎖が最小シリンダ容積(上死点)に近づくまで遅れると、最大変位の一部まで変位が減少する。モータリングサイクルの場合、低圧バルブは開かれ、高圧バルブは、膨張ストローク中(上死点から下死点まで)の場合よりも早く閉じられ、高圧マニホールドから受け取る作動流体の体積を減少させる。このステップは通常、膨張ストロークの遅い段階で発生し、少し前方に進めると変位がわずかに低減されるが、最小シリンダ容積の点の直後に前方に進めると、正味変位が大幅に低減される。
【0160】
動作中、受信された(例えば計算された、または入力された)変位需要Fd(x軸)の任意の値について、各シリンダによって送達される体積を減少させることによって(バルブタイミングを調整することによって)、実際の需要変位を依然として達成することができるように、選択された量子化変位分数が常に需要よりも大きくなることを確実にするように意図したスケーリングファクター406をFdに乗じる。図7Aおよび図7Bは、スケールファクターを用いる。図7Aに見られるように、活性サイクルを実行するシリンダの分数は以前のように量子化され、それによって不要な周波数成分の生成を抑制する。しかしながら、バルブタイミングは、要求される変位に総正味変位がより厳密に一致するように修正される。図7Cに見られるように、変位を「切り上げ」するために使用されるスケールファクター自体がFdの関数でなければならないため、各シリンダのストロークサイズを可能な限り100%に近づけることが望ましい。このタイプの関数を使用することにより、量子化されたFdをFd需要よりも高いほぼ固定したレベルに維持し、したがってストロークサイズが最大になることを確実にする。
【0161】
例として、図7Bのy軸上の0.9は、フルストローク(最大)を使用するときに送達される体積の90%であるシリンダ毎の正味変位に対応する。変位需要の量子化は、シリンダ有効化アルゴリズムの結果として、機械出力の周波数コンテンツを制御するのに有用であり、図7A図7Cの左側から見ると、低変位需要ではシリンダ作動周波数が閾値(約0.1)未満に低下せず、代わりに部分ストローク容積が減少することがわかる。これにより、超低周波数コンテンツを有するパルスパターンの生成を回避すると同時に、入力変位需要に厳密に一致する出力変位を可能にする。同様の効果は高い変位需要において見られ、この方法は、シリンダ不活性化の低周波パターンの生成を回避する。
【0162】
上記および図7Aに示すように、ECMコントローラ50に送信される量子化された需要は、常に連続変位需要よりも高いことがわかる。必要条件は、量子化された活性サイクル分数が連続変位需要よりも高く、連続変位需要を確実に達成するために部分ストロークサイズを1以下にすることができることである。量子化された需要が連続変位需要よりも低い場合、連続変位を達成するために必要な部分ストロークサイズは1よりも大きくする必要があり、これは不可能である。
【0163】
満たすことができない変位のギャップを残すことは可能であるが、量子化された需要信号が変位範囲全体にわたって連続的な変位需要よりも大きいことが確実であれば、ギャップを回避することができる。これは、本例では、連続変位需要に図7Cに示されるスケールファクターを掛けることによって達成されるが、これは唯一の可能なアプローチではない。例えばバイアスは連続需要に適用することができ、変位範囲全体にわたって変化することができる。
【0164】
他の実施形態では、ギャップは、連続変位需要に最も近い離散活性サイクル分数を選択し、上向きヒステリシスを適用せず、下向きヒステリシスのみを適用することによって対処される。これらの方法は、有効シリンダの1よりも大きい部分ストローク分数の要求を防止する。前述の理由により、部分ストロークサイズは、変位範囲全体で可能な限りフルストロークサイズに近いことが好ましい。
【0165】
ヒステリシスは、要求された変位にノイズが多いとき、量子化されたステップ間のジャンプを防止することができる。図7Aに示す例では、Fd(直線連続変位需要)信号が滑らかな場合、ヒステリシス(またはスケーリング)は省略されてもよく、(直線連続変位需要)Fdを上回る最も近い量子化されたステップまで切り上げるのに十分である。残念ながら現実には、需要信号はノイズを含み、したがって、ステップを上に変更するか下に変更するかの判定に関わる閾値の差を指すヒステリシスが必要となる。量子化器にヒステリシスを適用すると、ヒステリシスが十分であれば、ノイズがある場合のステップ間の切り替えが防止される。ノイズレベルがステップ自体よりも大きい場合、ヒステリシスの量だけでは役に立たない。
【0166】
代替的かつ潜在的に好ましいアプローチは、バックラッシュを使用することである。バックラッシュは、入力信号の変化率の符号が変化したときに出力信号が変化するのを防ぐ。通常、これには「デッドバンド」と呼ばれる単一のパラメータがある。デッドバンドとは、入力と出力との間の差の量で、出力が入力に続いて再び開始される。このタイプの信号処理は、多くの場合、入力信号と出力信号との間のオフセットを引き起こす。図7Cのグラフに示すようなスケーリングを使用することによって、オフセットを補正することが可能である。スケーリング関数はy=n/x+1型であり、nはデッドバンド幅の半分である。
【0167】
上記の実施例では、量子化テーブル内の離散値は、作動チャンバ容積の活性サイクルを実行する作動チャンバの離散分数に対応する。これは、需要信号の単位が変位分数であるために生じる。ただし、これは必須ではない。
【0168】
さらなる変形および修正は、本明細書に開示される本発明の範囲内で行われ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-7C】