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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20250106BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250106BHJP
   C04B 41/64 20060101ALI20250106BHJP
   C09D 201/10 20060101ALI20250106BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250106BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K3/013
C04B41/64
C09D201/10
C09D7/61
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022555579
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037282
(87)【国際公開番号】W WO2022075437
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020171352
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】森川 知也
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕章
(72)【発明者】
【氏名】中山 佑太
(72)【発明者】
【氏名】堂本 高士
(72)【発明者】
【氏名】白石 智子
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235332(WO,A1)
【文献】特開2018-188595(JP,A)
【文献】特開2009-275157(JP,A)
【文献】特開2003-105956(JP,A)
【文献】特開2016-172442(JP,A)
【文献】特開2018-168692(JP,A)
【文献】特表2013-508493(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216358(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/165288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00-201/10
C04B41/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変成シリコーン樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される、
最大応力が、5.0N/mm2以上であり、
破断歪が、100%以上であり、
弾性率が、2.0MPa以上である、
被着体の補強又は補修のための樹脂組成物。
【請求項2】
平行平板を用いて、ギャップ1.5mm、歪0.5%、温度40℃、角周波数0.1rad/sの条件で、JIS K 6394に準拠して圧縮モードにより測定される伸長応力が、25Pa以上である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記変成シリコーン樹脂が、反応性シリル基を両末端にそれぞれ2以上有する直鎖重合体Aを含み、
該直鎖重合体Aの含有量が、前記変成シリコーン樹脂の総量に対して、10~90質量%である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記変成シリコーン樹脂が、反応性シリル基を両末端にそれぞれ1つ有する直鎖重合体Bを含み、
該直鎖重合体Bの含有量が、前記変成シリコーン樹脂の総量に対して、10~90質量%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記変成シリコーン樹脂の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して、20~99質量%である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記充填剤の平均粒径が、400nm以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して、1.0~15質量%である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、樹脂粒子からなる群より選ばれる一種以上を含み、
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
コンクリート片の表面保護工法に使用される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
コンクリート躯体の表面、又は、該表面に形成された他の層の表面に、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて、中塗層を形成する工程を有する、
コンクリート片の表面保護工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特にはコンクリート片の表面保護工法に使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素による中性化や塩化物イオンの浸透による塩害やその他の経時劣化が進行することなどにより、コンクリート構造物からコンクリート片が剥落することがある。このようなコンクリート片の剥落を防止するために、コンクリートの表面を樹脂組成物や繊維シートで覆う工法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような表面保護工法の作業性を向上させることを目的として、コンクリート躯体の表面側にプライマー層を形成した後、該プライマー層上に弾性樹脂層を形成し、次いで、該弾性樹脂層上に補強層を形成するコンクリート片の剥落防止工法において、補強層として、所定のイソシアヌレート化合物、所定のイソシアネートプレポリマー、及び所定のジアミン化合物により形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-090566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イソシアヌレート化合物は劇物や毒物の指定がされつつあり、イソシアヌレート化合物を原料とするポリウレアやポリウレタンは、有毒性の点から問題がある。そのため、表面保護工法に使用する樹脂組成物としてイソシアヌレート化合物を用いない樹脂組成物が求められている。
【0006】
また、表面保護工法の中塗層として従来用いられてきたウレタンは強度が低く、またエポキシは追従性が低いなど、表面保護材料として課題がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、有害性が低く、かつ、強度及び伸び性に優れる塗膜を形成できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
変成シリコーン樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される、
最大応力が、5.0N/mm2以上であり、
破断歪が、100%以上であり、
弾性率が、2.0MPa以上である、
樹脂組成物。
〔2〕
平行平板を用いて、ギャップ1.5mm、歪0.5%、温度40℃、角周波数0.1rad/sの条件で、JIS K 6394に準拠して圧縮モードにより測定される伸長応力が、25Pa以上である、
〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記変成シリコーン樹脂が、反応性シリル基を両末端にそれぞれ2以上有する直鎖重合体Aを含み、
該直鎖重合体Aの含有量が、前記変成シリコーン樹脂の総量に対して、10~90質量%である、
〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記変成シリコーン樹脂が、反応性シリル基を両末端にそれぞれ1つ有する直鎖重合体Bを含み、
該直鎖重合体Bの含有量が、前記変成シリコーン樹脂の総量に対して、10~90質量%である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記変成シリコーン樹脂の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して、20~99質量%である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記充填剤の平均粒径が、400nm以下である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して、1.0~15質量%である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記充填剤が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、樹脂粒子からなる群より選ばれる一種以上を含み、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔9〕
コンクリート片の表面保護工法に使用される、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔10〕
コンクリート躯体の表面、又は、該表面に形成された他の層の表面に、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて、中塗層を形成する工程を有する、
コンクリート片の表面保護工法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有害性が低く、かつ、強度及び伸び性に優れる塗膜を形成できる樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例における引張特性を示す図である。
図2】押し抜き試験の概略を示す図である。
図3】実施例における押し抜き試験の結果を示す図である。
図4】ひび割れ追従性試験の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、変成シリコーン樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される、最大応力が、5.0N/mm2以上であり、破断歪が、100%以上であり、弾性率が、2.0MPa以上であるものである。
【0013】
(最大応力)
樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される最大応力(以下、単に「最大応力」という。)は、5.0N/mm2以上であり、好ましくは6.0~25N/mm2であり、より好ましくは7.0~20N/mm2であり、さらに好ましくは7.5~18N/mm2であり、よりさらに好ましくは10~18N/mm2である。
【0014】
(破断歪)
樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される破断歪(以下、単に「破断歪」という。)は、100%以上であり、好ましくは120%~600%であり、より好ましくは140%~550%であり、さらに好ましくは160%~500%であり、よりさらに好ましくは180%~500%である。
【0015】
(弾性率)
樹脂組成物を23℃、相対湿度50%で、7日間硬化させたときの硬化物において、JIS K 6251に準拠して測定される弾性率(以下、単に「弾性率」という。)は、2.0MPa以上であり、好ましくは3.0~35MPaであり、より好ましくは4.0~30MPaであり、さらに好ましくは5.0~25MPaであり、よりさらに好ましくは6.0~20MPaである。
【0016】
得られる塗膜の強度及び伸び性は、最大応力、破断歪、及び弾性率によって複合的に発揮される効果であり、最大応力、破断歪、及び弾性率のすべてが上記下限値以上であることにより、得られる塗膜の強度及び伸び性がより向上する。より具体的には、最大応力や弾性率が上記下限値以上であっても破断歪が劣れば、実施例に記載の押し抜き試験において硬化物(塗膜)は容易に破断するし、ひび割れ追従性試験においても追従性が発揮されない結果となる。また、破断歪が上記下限値以上であり最大応力や弾性率が劣る場合においても、押し抜き試験において硬化物(塗膜)は容易に破断する。
【0017】
最大応力、破断歪及び弾性率は、変成シリコーン樹脂及び充填剤の種類や含有量により、調整できる。より具体的には、架橋密度が高くなる変成シリコーン樹脂を用いることで、最大応力や弾性率はより向上する傾向にあり、架橋密度が低くより柔軟な骨格を有する変成シリコーン樹脂を用いることで、破断歪はより向上する傾向にある。本実施形態においては、後述するように変成シリコーン樹脂を2種以上用いることで、最大応力、破断歪及び弾性率を調整してもよい。
【0018】
最大応力、破断歪及び弾性率は、JIS K 6251に準拠して測定できる。なお、最大応力、破断歪及び弾性率の測定においては、3号ダンベルの厚みを1mmとし、また、引張速度は100mm/minとする。
【0019】
(伸長応力)
平行平板を用いて、ギャップ1.5mm、歪0.5%、温度40℃、角周波数0.1rad/sの条件で、JIS K 6394に準拠して圧縮モードにより測定される伸長応力(以下、単に「降伏伸長応力」という。)は、好ましくは25Pa以上であり、より好ましくは30~800Paであり、さらに好ましくは35~700Paであり、よりさらに好ましくは40~600Paである。
【0020】
本実施形態の組成物は壁や天井など、重力により液だれが生じやすい場所にも塗工され得る。角周波数0.1rad/sの条件は、例えば天井に塗工した際に液だれが生じ始める速度に相当するものであり、上記条件により測定される降伏伸長応力が25Pa以上であることにより、液だれの発生を防止できる。そのため、取り扱い性がより向上するほか、液だれが抑制されることで強度や伸び性のばらつきが抑えられた均一な塗膜を得ることができる。
【0021】
(変成シリコーン樹脂)
本実施形態における変成シリコーン樹脂とは、反応性シリル基を有する重合体をいい、主鎖となる重合体に対して反応性シリル基が付加されたものが含まれる。変成シリコーン樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
反応性シリル基が付加される重合体としては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシブチレン等のポリエーテル系重合体;ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等の脂肪族炭化水素系重合体;ポリ(メタ)アクリル酸、及びポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系重合体;ポリエステル系重合体が挙げられる。
【0023】
このなかでも、ポリエーテル系重合体が好ましい。ポリエーテル系重合体の中では、ポリオキシアルキレンがより好ましい。ポリオキシアルキレンの中では、ポリオキシプロピレンがより好ましい。このような重合体を主鎖として用いることにより、主鎖の柔軟性が高いため、破断歪及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0024】
なお、重合体の骨格は、直鎖状であっても、分岐状であってもよいが、直鎖状が好ましい。このような変成シリコーン樹脂を用いることにより、過剰に架橋密度が向上することが抑制され、破断歪及び弾性率がより向上するため、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0025】
反応性シリル基としては、特に制限されないが、例えば、付加反応性シリル基、縮合反応性シリル基、加水分解性シリル基が挙げられる。より具体的には、ケイ素原子に、水素原子、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アミド基、オキシム基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アミノオキシ基等の反応性基が結合した基が挙げられる。
【0026】
このような反応性シリル基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
-(SiOX2-b-SiX3-a ・・・ (1)
(式中、Rは、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアラルキル基を示し、Xは、各々独立して、水素原子、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アミド基、オキシム基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、又はアミノオキシ基を示し、aは、1~3の整数を示し、bは0~2の整数を示し、nは0~10の整数を示す。)
【0027】
反応性シリル基の具体例としては、特に制限されないが、例えば、トリメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジメトキシフェニルシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジエトキシフェニルシリル基、ジフェニルエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;これらアルコキシシリル基が末端に結合した、ジアルキルシリコーン、アルキルアルコキシシリコーン、ジアルコキシシリコーン、ジフェニルシリコーン、アルコキシフェニルシリコーンなどの高分子化反応性シリル基が挙げられる。反応性シリル基の中では、ジメトキシメチルシリル基が好ましい。
【0028】
また、重合体における反応性シリル基の結合位置は、特に制限されないが、例えば、主鎖である重合体の末端、側鎖、あるいは末端及び側鎖とすることができる。このなかでも、主鎖である重合体の末端に反応性シリル基を有する変成シリコーン樹脂が好ましい。このような変成シリコーン樹脂を用いることにより、架橋点同士の距離や架橋点数をより制御しやすくなり、最大応力、破断歪、及び弾性率をより好適に調整できるため、得られる塗膜の強度及び伸び性をより向上できる。
【0029】
重合体の末端への反応性シリル基の結合態様は、特に制限されず、重合体の末端を反応性シリル基により変成する方法に応じて、任意のリンカーLによって反応性シリル基(-SiX3-a)は重合体の末端へ結合できる。ここで、リンカーLは、重合体の繰り返し単位の末端の原子から、式(1)で表される反応性シリル基のケイ素原子をつなぐ部分とすることができる。例えば、重合体がポリオキシエチレンである場合、繰り返し単位の末端の原子は、一方の末端は酸素原子となり他方の末端は炭素原子となる。また、重合体がアクリル系重合体であり重合体の末端に開始剤が付加している場合には、その開始剤部分はリンカーLに含まれるものとする。
【0030】
このようなリンカーLとしては、特に制限されないが、例えば、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、シロキサン結合を有してもよい連結基が挙げられる。このような連結基としては、例えば、下記式(a)~(i)で表される基が挙げられる。
【化1】
(式中、Rは、重合体の末端に結合する基であり、単結合、炭素数1~10の炭化水素基を示し、Rは、反応性シリル基に結合する基であり、各々独立して、単結合、炭素数1~10の炭化水素基を示し、Zは、各々独立して、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、シロキサン結合を示し、Rは、各々独立して、炭素数1~10の炭化水素基を示す。)
【0031】
なお、式(a)~(c)は、直鎖リンカーであり、式(d)~(f)は、2分岐リンカーであり、式(g)~(i)は、3分岐リンカーである。但し、連結基としては、上記に制限されず、直鎖、2~5分岐の連結基を用いることができる。また、連結基全体の炭素数は好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20であり、さらに好ましくは1~10である。式(a)においては、Rは、反応性シリル基にも結合する。
【0032】
重合体の一つの末端に結合する反応性シリル基の数は、好ましくは1~5である。このなかでも、変成シリコーン樹脂としては、反応性シリル基を両末端にそれぞれ2以上有する変成シリコーン樹脂(以下、「直鎖重合体A」ともいう)、反応性シリル基を両末端にそれぞれ1つ有する変成シリコーン樹脂(以下、「直鎖重合体B」ともいう)、あるいはこれらを併用することが好ましい。このように反応性シリル基の数が異なる変成シリコーン樹脂を組み合わせて用いることにより、最大応力、破断歪、及び弾性率をより好適に調整でき、得られる塗膜の強度及び伸び性をより向上できる。
【0033】
直鎖重合体Aとしては、アルコキシ基が結合したケイ素原子を両末端にそれぞれ2以上有する変成シリコーン樹脂が好ましい。このような直鎖重合体Aを用いることにより、硬化物の架橋密度の向上により最大応力及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の強度がより向上する傾向にある。
【0034】
直鎖重合体Aの25℃における粘度は、好ましくは100~7000mPasであり、より好ましくは500~5000mPasであり、さらに好ましくは1000~3000mPasである。一般に、分子量が小さいほど粘度が小さい傾向にあるが、粘度が上記範囲内であることにより、硬化物の架橋密度の向上により最大応力及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の強度がより向上する傾向にある。なお、本実施形態における粘度は、ブルックフィールド粘度計(B型回転粘度計)を用いて常法により測定できる。本実施形態における粘度は、25℃、回転数10rpmの条件下で測定する。
【0035】
直鎖重合体Aは、リンカーとしてはシロキサン結合を有する連結基を用いることが好ましい。このような変成シリコーン樹脂を用いることにより、硬化物の架橋密度の向上により最大応力及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の強度がより向上する傾向にある。また、直鎖重合体Aは、ウレタン結合等の柔軟性基を有しても、有していなくてもよい。例えば、ウレタン結合等の柔軟性基を有することにより、硬化物の破断歪がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にあり、ウレタン結合等の柔軟性基を有しないことにより、ウレタン結合を形成する際の原料となるイソシアネートが樹脂組成物に混入し難くなるため、より安全な樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
直鎖重合体Aのような、反応性シリル基を両末端にそれぞれ2以上有する変成シリコーン樹脂の含有量は、変成シリコーン樹脂の総量に対して、好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは20~85質量%であり、さらに好ましくは30~85質量%である。反応性シリル基を両末端にそれぞれ2以上有する変成シリコーン樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、最大応力及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の強度がより向上する傾向にある。
【0037】
また、直鎖重合体Bとしては、アルコキシ基が結合したケイ素原子を両末端にそれぞれ1つ有する変成シリコーン樹脂が好ましい。このような直鎖重合体Bは架橋密度が比較的低いため、硬化物の破断歪がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0038】
直鎖重合体Bは、ウレタン結合等の柔軟性基を有してもよい。このような変成シリコーン樹脂を用いることにより、硬化物の破断歪がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0039】
直鎖重合体Bの25℃における粘度は、好ましくは7500~40000mPasであり、より好ましくは10000~45000mPasであり、さらに好ましくは20000~50000mPasである。一般に、分子量が大きいほど粘度が大きい傾向にあるが、粘度が上記範囲内であることにより、硬化物の架橋密度の低下により破断歪がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0040】
直鎖重合体Bのような、反応性シリル基を両末端にそれぞれ1つ有する変成シリコーン樹脂の含有量は、変成シリコーン樹脂の総量に対して、好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは15~80質量%であり、さらに好ましくは15~70質量%である。反応性シリル基を両末端にそれぞれ1つ有する変成シリコーン樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、硬化物の破断歪がより向上し、得られる塗膜の伸び性がより向上する傾向にある。
【0041】
変成シリコーン樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは20~99質量%であり、より好ましくは25~99質量%であり、さらに好ましくは30~99質量%である。変成シリコーン樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、最大応力、破断歪、及び弾性率がより向上し、得られる塗膜の強度及び伸び性がより向上する傾向にある。
【0042】
(充填剤)
充填剤としては、特に制限されないが、例えば、無機充填剤や有機充填剤が挙げられる。充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、シリカ;アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウムなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;ガラス繊維などの無機繊維が挙げられる。
【0044】
また、有機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、アクリルビーズなどの樹脂粒子;セルロース繊維、合成樹脂繊維などの有機繊維が挙げられる。
【0045】
このなかでも、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、及び樹脂粒子からなる群より選ばれる一つ以上を用いることが好ましい。このような充填剤を用いることにより、降伏伸長応力がより向上し、液だれが抑制される傾向にある。
【0046】
充填剤の平均粒径は、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは1~200nmであり、さらに好ましくは1~100nmであり、よりさらに好ましくは1~50nmである。平均粒径が上記範囲内であることにより、降伏伸長応力がより向上し、液だれが抑制される傾向にある。なお、本実施形態において、平均粒径は体積基準の一次粒子径のことを言う。一次粒子径はレーザー回折散乱法により測定できる。
【0047】
充填剤の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは1.0~15質量%であり、より好ましくは1.5~10質量%であり、さらに好ましくは2.0~8.0質量%である。充填剤の含有量が上記範囲内であることにより、降伏伸長応力がより向上し、液だれが抑制される傾向にある。
【0048】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、変成シリコーン樹脂及び充填剤以外に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に制限されないが、例えば、上記変成シリコーン以外のシリコーン樹脂、シランカップリング剤、硬化触媒、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、及び光安定剤などが挙げられる。
【0049】
シリコーン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、あるいはこれらの共重合体、または変性体が挙げられる。なお、変性体としては、メチル基、フェニル基の一部が、アルキル変性、アラルキル変性、フルオロアルキル変性、ポリエーテル変性、アミノ変性、アクリル変性、エポキシ変性などされたものが挙げられる。
【0050】
シリコーン樹脂を含む場合には、シリコーン樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは45~75質量%であり、より好ましくは50~70質量%であり、さらに好ましくは55~65質量%である。
【0051】
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物;フェニルシラン系化合物が挙げられる。
【0052】
シランカップリング剤は硬化剤として機能し得る。シランカップリング剤を含む場合には、シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.1~7.5質量%であり、より好ましくは0.5~5.0質量%であり、さらに好ましくは1.0~3.0質量%である。
【0053】
硬化触媒としては、反応性シリル基の反応を触媒するものであれば特に制限されないが、例えば、スズ系触媒、チタン系触媒、アルミ系触媒、亜鉛系触媒、鉄系触媒、リン系触媒などが挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤(UVA)としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾールやベンゾフェノンを含む高分子が挙げられる。
【0055】
光安定剤(HALS)としては、特に制限されないが、例えば、N-OR型ヒンダードアミン系化合物、N-R型ヒンダードアミン系化合物、N-H型ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。ここでRは炭化水素基を示し、N-OR型、N-R型とは、ピペリジル骨格の窒素原子にOR基、R基が結合したものを意味する。また、N-H型とは、ピペリジル骨格の窒素原子に水素原子が結合したものを意味する。
【0056】
〔用途〕
本実施形態の樹脂組成物は、被着体の補強、補修、あるいは接着などに好適に用いることができ、特にはコンクリート片の表面保護工法に用いることが好ましい。なお、本実施形態における表面保護工法には、コンクリートの剥落防止を目的として行われる剥落防止工法、塩分、酸素、水分、又は光などの劣化因子を遮断する目的として行われる保護工法などが含まれ、いずれの工法においても本実施形態の組成物は好適に用いることができる。このなかでも、強度及び伸び性に優れる塗膜を形成可能な本実施形態の樹脂組成物は、剥落防止工法により好適に用いることができる。
【0057】
特には、本実施形態の樹脂組成物は、コンクリート片の表面保護工法における中塗層として用いることが好ましい。中塗層とは、コンクリート片の表面保護工法における被覆材の機械特性を担う層であり、一般には、コンクリート躯体の表面に形成されたプライマー層の上に形成される。このような用途に用いることにより、イソシアネートなどの有毒物を用いることなくコンクリートの補強や補修を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態の樹脂組成物は強度と伸びのバランスに優れるため、押し抜き試験やひび割れ追従性試験においても良好な結果を示すことができ、より信頼性の高い剥落防止処理を実現できる。
【0059】
〔コンクリート片の表面保護工法〕
本実施形態のコンクリート片の表面保護工法は、コンクリート躯体の表面、又は、該表面に形成された他の層の表面に、上記樹脂組成物を用いて、中塗層を形成する工程を有する。また、本実施形態のコンクリート片の表面保護工法は、必要に応じて、コンクリート躯体の表面に他の層としてプライマー層を形成してもよいし、また、中塗層の表面に上塗層をさらに形成してもよい。
【0060】
プライマー層を形成することにより、コンクリート躯体と中塗層の接着性がより向上する傾向にある。プライマー層に含まれる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミン化エポキシ樹脂、ウレア樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらの変性樹脂などが挙げられる。
【0061】
なお、本実施形態の樹脂組成物は、コンクリート躯体に対する接着性にも優れるため、プライマー層を形成しない表面保護工法にも好適に用いることができる。
【0062】
また、上塗層を形成することにより、耐候性がより向上する傾向にある。上塗層に含まれる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの変性樹脂が挙げられる。
【0063】
各層の形成方法は、特に制限されないが、例えば、各層を形成する樹脂組成物を塗工した後、常温でまたは乾燥設備を用いて乾燥させる方法が挙げられる。また、層を積層する際には、下地となる層が乾燥してから次の層を形成する。乾燥時間は、塗装環境条件などによって異なるが、例えば1日以上とすることができる。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
〔実施例1〕
変成シリコーン樹脂A(旭化成ワッカーシリコーン社製、品名:XB502、25℃粘度:2000mPas、メトキシ基が結合したケイ素原子を両末端にそれぞれ2以上有する変成シリコーン樹脂、ポリエーテル系重合体としてポリオキシプロピレン構造を有する、反応性シリル基としてジメトキシメチルシリル基を有する)80重量部、変成シリコーン樹脂B(旭化成ワッカーシリコーン社製、品名:E30、25℃粘度:30000mPas、メトキシ基が結合したケイ素原子を両末端にそれぞれ1つ有する変成シリコーン樹脂、ポリエーテル系重合体としてポリオキシプロピレン構造を有する、反応性シリル基としてジメトキシメチルシリル基を有する)20重量部、及びシリカ(旭化成ワッカーシリコーン社製、品名:H18、平均粒径:10nm)6重量部を加えて、5分間撹拌した。さらに、3-アミノプロピルトリメトキシシラン2重量部を添加し、5分間撹拌し、樹脂組成物を調製した。
【0066】
〔実施例2〕
変成シリコーン樹脂Aの使用量を50重量部、変成シリコーン樹脂Bの使用量を50重量部としたこと以外は実施例1と同様の操作により、樹脂組成物を調製した。
【0067】
〔実施例3〕
シリカの使用量を3重量部としたこと以外は実施例1と同様の操作により、樹脂組成物を調製した。
【0068】
〔比較例1〕
変成シリコーン樹脂Aの使用量を100重量部とし、変成シリコーン樹脂Bを用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作により、樹脂組成物を調製した。
【0069】
〔比較例2〕
変成シリコーン樹脂Aの使用量を20重量部、変成シリコーン樹脂Bの使用量を80重量部としたこと以外は実施例1と同様の操作により、樹脂組成物を調製した。
【0070】
〔比較例3〕
シリカを用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作により、樹脂組成物を調製した。
【0071】
〔最大応力、破断歪及び弾性率の測定〕
上記のようにして得られた樹脂組成物を厚み1mmのシート状に成形し、23℃、相対湿度50%環境下で7日間静置させシート状の硬化物を得た。これを3号ダンベル形状に打抜き、後述する、最大応力、破断歪及び弾性率の測定に用いた。そして、JIS K 6251に準拠して最大応力、破断歪及び弾性率を測定した。なお、上記測定においては、3号ダンベルの厚みを1mmとし、また、引張速度は100mm/minとした。その結果を以下に示す。また、図1に引張試験結果を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
〔押し抜き試験〕
JSCE K 511に準拠して、図2(a)に示す形状の試験用基板を作製し、その試験用基板の表面に上記のようにして調製した樹脂組成物を塗工量1.0[kg/m]で塗工した。そして、23℃、相対湿度50%で、7日間静置し、樹脂組成物を硬化させて塗膜を作製した。なお、試験用基板は、塗膜作製面と反対側に、直径10mm、深さ55mmの円筒状の削孔を有するものとした。
【0074】
押し抜き試験は、JSCE K 533に準拠して行った。具体的には、図2(b)に示すように、削孔に囲まれる円柱状のコア部を塗膜非作製面から塗膜作製面方向へ載荷し、変位量が10mmに到達した時点で載荷を一時中断した。この際、5mm/minで載荷する際にかけた荷重(kN)の経時変化をモニタリングし、また、変位量が10mmに到達したときの剥離範囲をマーキングした。これを変位量10mmごとに繰り返し、塗膜が破断するまで載荷を行った。
【0075】
なお、載荷は、コア部の残存部が破壊されるまでは1mm/minで行い、コア部の残存部が破壊されてからは5mm/minで行った。
【0076】
図3に押し抜き試験の荷重(kN)の経時変化を示す。また、同じ押し抜き試験を3回行い、表2に、測定された最大荷重と最大変位の平均値を示す。表2及び図3に示されるように、最大応力や弾性率が比較的高く破断歪みが低い比較例1や、破断歪が比較的高く最大応力や弾性率が低い比較例2では、押し抜き試験において硬化物(塗膜)は容易破断することが分かった。これに対して、実施例1及び2においては、最大応力、弾性率、破断歪が所定値以上であることにより、最大荷重及び最大変位が比較例1~2と比べてはるかに良化することが分かった。
【0077】
【表2】
【0078】
〔ひび割れ追従性試験〕
JSCE K 511に準拠して、図4(a)に示す形状の試験用基板を作製し、その試験用基板の表面に上記のようにして調製した樹脂組成物を塗工量1.5[kg/m]で塗工した。そして、23℃、相対湿度50%で、7日間静置し、樹脂組成物を硬化させて塗膜を作製した。なお、試験用基板は、中心に切断面を有し、塗膜は、その切断面を横断するように形成した。
【0079】
ひび割れ追従性試験は、JSCE-K 532に準拠して行った。具体的には、図4(b)に示すように、試験用基板をロードセル(容量2kN)で長軸方向に引っ張り、塗膜が破断するまで試験を行った。そして、塗膜が破断したときの変位を測定した。
【0080】
このひび割れ追従性試験を3回行い、表3に、測定された変位の平均値を示す。表3に示されるように、最大応力や弾性率が比較的高く破断歪みが低い比較例1では、ひび割れ追従性試験において硬化物(塗膜)は容易破断することが分かった。これに対して、実施例1及び2においては、最大応力、弾性率、破断歪が所定値以上であることにより、変位が比較例1と比べてはるかに良化することが分かった。
【0081】
【表3】
【0082】
〔液だれ評価〕
まず、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、装置名:RSA-G2)を用いて、ギャップ1.5mm、歪0.5%、温度40℃、角周波数0.1rad/sの条件で、JIS K 6394に準拠して圧縮モードにより降伏伸長応力を測定した。
【0083】
次いで、JSCE K 511に準拠して試験用基板を作製し、その試験用基板の面方向が地面と平行になるように試験用基板を保持した。そして、試験用基板の表面と対向する側(下面)に、上記のようにして調製した樹脂組成物を塗工した。その状態で、23℃、相対湿度50%で、24時間静置して、液だれが発生するか否かを確認した。
【0084】
その結果を表4に示す。なお、液だれが発生しないものを〇と評価し、液だれが発生したものを×と評価した。表4に示すように、液だれの発生は降伏伸長応力とよく相関することが分かった。
【0085】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、コンクリート片の表面保護工法、あるいはその他の補強、補修、あるいは接着などに用いる樹脂組成物として、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4