IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7612743ポリエステル樹脂、樹脂水性分散体及びトナー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂、樹脂水性分散体及びトナー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/195 20060101AFI20250106BHJP
   C08J 3/05 20060101ALI20250106BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20250106BHJP
   C08G 63/68 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C08G63/195
C08J3/05 CFD
G03G9/087 331
C08G63/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023066789
(22)【出願日】2023-04-17
(65)【公開番号】P2024008827
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2022110223
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】嘉納 亮治
(72)【発明者】
【氏名】香島 拓哉
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-004033(JP,A)
【文献】特開2014-136707(JP,A)
【文献】特開2009-217183(JP,A)
【文献】特開2008-165124(JP,A)
【文献】特開2011-148913(JP,A)
【文献】特開2011-046919(JP,A)
【文献】特開2014-136732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 64/42
C08G 9/00 - 9/113
C08G 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合させて得られるポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂が、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂であり、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する塩基の価数が1であるものを含み、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、前記(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として20~98モル%であり、前記(x1)がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)を含有し、前記(x1)中のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)のモル比[(x11)/(x12)]が30/70~70/30であり、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が55~85℃であるポリエステル樹脂。
【請求項2】
請求項に記載のポリエステル樹脂を含有してなる樹脂微粒子が水性媒体に分散してなる樹脂水性分散体。
【請求項3】
樹脂微粒子の体積平均粒径が20~500nmである請求項に記載の樹脂水性分散体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂及び着色剤を含有してなるトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂、樹脂水性分散体及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムの発展に伴い、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置の需要は急速に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。
フルカラー電子写真用には従来、電子写真感光体等の潜像坦持体に色画像情報に基づく潜像を形成し、該潜像を対応する色のトナーにより現像し、次いで該トナー像を転写材上に転写するといった画像形成工程を繰り返した後、転写材上のトナー像を加熱定着して多色画像を得る方法や装置が知られている。
【0003】
これらのプロセスを問題なく通過するためには、紙への定着性が良好であることが必要とされる。また、装置は定着部に加熱体を有するため、装置内で温度が上昇することから、トナーは、装置内でブロッキングしないことが要求される。
【0004】
上記性能を発現させるためにスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂を含有しスルホン酸塩基を構成する塩基の価数が2以上である樹脂水性分散体を使用したトナーが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、上記樹脂水性分散体を使用したトナーは、装置内でのブロッキングは良好であるものの、トナー中のポリエステル樹脂の吸湿性に起因するトナーの帯電性が十分といえず、それらの改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-136707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱保存性を維持しつつ、帯電性に優れたトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合させて得られるポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂が、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂であり、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する塩基の価数が1であるものを含み、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、前記(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として20~98モル%であり、前記(x1)がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)を含有し、前記(x1)中のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)のモル比[(x11)/(x12)]が30/70~70/30であり、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が55~85℃であるポリエステル樹脂;前記ポリエステル樹脂を含有してなる樹脂微粒子が水性媒体に分散してなる樹脂水性分散体;前記ポリエステル樹脂及び着色剤を含有してなるトナーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐熱保存性を維持しつつ、帯電性に優れたトナーを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のポリエステル樹脂、樹脂水性分散体及びトナーを順次、説明する。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合させて得られるポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂が、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂であり、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する塩基の価数が1であるものを含み、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有する。ポリステル樹脂が前記塩基を有し、構成成分としてビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を有することにより、適度に電荷を保持しつつ、剛直な骨格を有するため、耐熱保存性を維持しつつ帯電性に優れたトナーを得ることができる。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂を構成するアルコール成分(x)としては、必須構成成分であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)の他、後述するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外のジオール及び/又は3価以上の価数のポリオール等が挙げられる。また、アルコール成分(x)には、必要によりモノアルコールを使用してもよい。
【0012】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる化合物であり、上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)は、帯電性と保存安定性の観点からビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)付加物(x11)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)付加物(x12)を含有する。
【0013】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)としては、必須成分であるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)の他、例えば、ビスフェノールAのブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記することがある。)付加物(x13)等が挙げられる。
【0014】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)中のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(x11)とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x12)のモル比[(x11)/(x12)]は、帯電性と保存安定性の観点から、30/70~70/30である。
【0015】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)のアルキレンオキサイドの付加モル数は、帯電性及び保存安定性の観点から、好ましくは2~30であり、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは2~5である。
【0016】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外のジオールとしては、炭素数2~12のアルキレングリコール(例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数4~36の脂環式ジオール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド〔EO、PO、BO等〕付加物(好ましくは付加モル数1~30)、ビスフェノール類(ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド(EO、PO、BO等)付加物(好ましくは付加モル数2~30)、ポリラクトンジオール(ポリε-カプロラクトンジオール等)、ポリブタジエンジオール、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有するジオール(例えば3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)―1-プロパンスルホン酸、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等)、スルファミン酸基及び/又はスルファミン酸塩基を有するジオール(例えばN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)スルファミン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)スルファミン酸PO2モル付加物等)及びリン酸基及び/又はリン酸塩基を有するジオール(下記3価以上の価数のポリオールが有する水酸基とリン酸又は酸性リン酸エステル(炭素数1~12のアルキル基を有するリン酸モノ又はジエステル)との反応物)等が挙げられる。
【0017】
3価以上の価数のポリオールとしては、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコール、多価脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数2~120)、トリスフェノール(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2~30)、アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など]等が挙げられる。
炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物並びに糖類(ショ糖等)及びそのメチルグルコシド等が挙げられる。
アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等が挙げられる。
【0018】
モノアルコールとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0019】
アルコール成分(x)として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外の成分を含む場合は、ポリエステル樹脂の溶解性と帯電性の観点から、ジオール及び3価以上の価数のポリオールが好ましく、炭素数2~12のアルキレングリコール、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールがより好ましく、炭素数3~36の3価以上の多価脂肪族アルコールが特に好ましい。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂は、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂であるため、ポリエステル樹脂にカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基、リン酸塩基を導入する観点から、アルコール成分(x)は、上記のスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有するジオール、スルファミン酸基及び/又はスルファミン酸塩基を有するジオール、リン酸基及び/又はリン酸塩基を有するジオールを含有することがより好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂のカルボン酸成分(y)としては、ジカルボン酸及び/又は3価以上の価数のポリカルボン酸及びこれらの酸の無水物や低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等が挙げられる。また、カルボン酸成分(y)には、必要によりモノカルボン酸を使用してもよい。
【0022】
ジカルボン酸としては、例えば、炭素数2~50のアルカンジカルボン酸{鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、鎖状飽和炭化水素基の末端以外にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(デシルコハク酸等)}、炭素数4~50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等)、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有するジカルボン酸(4-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、2-スルホテレフタル酸、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム及びスルホコハク酸)、及びスルファミン酸基及び/又はスルファミン酸塩基を有するジカルボン酸(N-[2,3-ジカルボキシフェニル]スルファミン酸及びN-[2,4-ジカルボキシフェニル]スルファミン酸)等が挙げられる。
【0023】
3価以上の価数のポリカルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)及び不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(Mn):450~10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
【0024】
モノカルボン酸としては、炭素数(カルボニル基の炭素を含める)7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等)等が挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂は、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂であるため、ポリエステル樹脂にカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基、リン酸塩基を導入する観点から、カルボン酸成分(y)は、上記のジカルボン酸、3価以上の価数のポリカルボン酸、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを含有することが好ましく、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有するジカルボン酸を含有することがより好ましい。
【0026】
カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂のうち、帯電性及び導入の容易性の観点から、カルボン酸塩基及び/又はスルホン酸塩基を有するポリエステル樹脂が好ましい。なお、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基は、アルコール成分(x)やカルボン酸成分(y)にカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する構成成分を使用し、ポリエステル樹脂に導入してもよく、カルボン酸基、スルホン酸基、スルファミン酸基及びリン酸基を有する構成成分を使用し、カルボン酸基、スルホン酸基、スルファミン酸基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するポリエステル樹脂を得た後、それらの酸と以下に記載する塩基を反応させてもよい。
【0027】
帯電性の観点から、本発明における、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する塩基の価数は1であるものを含む。
価数が1の塩基としては、アンモニア、炭素数1~30のモノアミン、4級アンモニウム、及びアルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)等が挙げられる。
炭素数1~30のモノアミンとしては、炭素数1~30の1級および/または2級アミン(エチルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン等)、炭素数3~30の3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、ラウリルジメチルアミン等)が挙げられる。4級アンモニウムとしては炭素数4~30のトリアルキルアンモニウム(ラウリルトリメチルアンモニウム等)などが挙げられる。
これらの塩基のうち、帯電性の観点から、アルカリ金属が好ましく、より好ましくは、ナトリウムである。
なお、本発明のポリエステル樹脂は、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基であって、それらを構成する塩基の価数が2以上のもの(アルカリ土類金属、アルミニウム、及びポリアミン等)を有していてもよい。また、ポリエステル樹脂は、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する塩基の価数が1であるもののみを含むことがより好ましい。
【0028】
アルコール成分(x)のうち(x1)の(x)における含有量は、耐熱保存性の観点から、(x)の合計モル数を基準として20~100モル%であり、より好ましくは40~100モル%であり、さらに好ましくは、48~98モル%である。
【0029】
カルボン酸成分(y)のうち、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基及びリン酸塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する構成成分の(y)における含有量は、帯電性及び耐熱保存性の観点から、(y)の合計モル数を基準として2~10モル%であることが好ましく、より好ましくは4~8モル%である。
【0030】
アルコール成分とカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基のモル比{[OH]/[COOH]}として、好ましくは1/2~2/1であり、より好ましくは1/1.5~1.5/1、さらに好ましくは1/1.4~1.4/1である。上記水酸基は、アルコール成分由来の水酸基である。
【0031】
本発明においてポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有するアルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する原料とを含む成分を混合し、重合触媒の存在下で重縮合反応を行うことによって得ることができる。
また、アルコール成分(x)にエチレングリコール成分を含む場合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)由来のエチレングリコール成分であってもよく、カルボン酸成分(y)にテレフタル酸成分を含む場合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)由来のテレフタル酸成分であってもよい。この場合、ポリエステル樹脂は、PETとアルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する原料とを含む成分とを混合して、重合触媒の存在下で重縮合反応を行うことによって得ることができる。
【0032】
具体的には、ポリエステル樹脂は、以下のようにして製造することができる。例えば、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)と、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する原料とを含む成分を、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、さらに好ましくは170~235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点と乳化安定性の観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間である。反応速度を向上させるために減圧工程を有することが好ましく、減圧度は好ましくは0.5~20kPaであり、より好ましくは0.5~15kPaであり、さらに好ましくは0.5~10kPaである。
【0033】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することもできる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}、及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)並びに酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0034】
本発明において、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱保存性及び帯電性の観点から好ましくは45~86℃であり、より好ましくは55~85℃である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0035】
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は、5~40mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは15~35mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~30mgKOH/gである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
【0036】
本発明において、ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、耐熱保存性と分散性の観点から、好ましくは4,000~100,000であり、より好ましくは5,000~30,000であり、特に好ましくは6,000~20,000である。
【0037】
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置 :「HLC-8120」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK GEL GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0038】
本発明の樹脂水性分散体は、本発明のポリエステル樹脂を含有してなる樹脂微粒子が水性媒体に分散してなる樹脂水性分散体である。水性媒体としては、水を必須構成成分とする液体であれば特に制限はなく、水に界面活性剤を含有させた水溶液等が挙げられる。
【0039】
水性媒体中にポリエステル樹脂を含有してなる樹脂微粒子を分散させて樹脂水性分散体を得る方法としては、特に制限はないが、以下の(1)~(7)が挙げられる。
(1)ポリエステル樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱して、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法。
(2)ポリエステル樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
(3)ポリエステル樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(4)ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(5)ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(6)ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法。
(7)ポリエステル樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化した後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法。
【0040】
前記(1)~(7)の方法における分散は、分散機を用いて行うことができる。
分散機としては、一般に乳化機や分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えばホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、ウルトラビスコミル(アイメックス(株)製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[三井三池化工機(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル[太平洋機工(株)製]等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機[冷化工業(株)製]等の膜乳化機、バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。
【0041】
前記(1)~(7)の方法において、併用する乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤(s)、水溶性ポリマー(t)等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として有機溶剤、可塑剤等を併用することができる。
【0042】
界面活性剤(s)としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤(s-1)、カチオン界面活性剤(s-2)、両性界面活性剤(s-3)及び非イオン界面活性剤(s-4)等が挙げられる。界面活性剤(s)は2種以上の界面活性剤を併用したものであってもよい。
【0043】
アニオン界面活性剤(s-1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(s-2)としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤(s-3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(s-4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコ-ル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤(s)の具体例としては、特開2002-284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0044】
水溶性ポリマー(t)としては、セルロース化合物(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物及びアクリル酸ナトリウム-アクリル酸エステル共重合体等)、スチレン-無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、及びポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)等が挙げられる。
【0045】
有機溶剤としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族炭化水素溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-デカン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン溶剤(塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等);エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ピルビン酸メチル及びピルビン酸エチル等);エーテル溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等);ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン及びシクロヘキサノン等);アルコール溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール及びトリフルオロエタノール等);アミド溶剤(ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等);スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等);複素環式化合物溶剤(N-メチルピロリドン等)並びにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0046】
可塑剤としては、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等);脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル及びセバシン酸-2-エチルヘキシル等);トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等);リン酸エステル(リン酸トリエチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル及びリン酸トリクレジール等);脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0047】
樹脂水性分散体中の樹脂微粒子の体積平均粒径は、帯電性の観点から、好ましくは20~500nmであり、より好ましくは30~200nmである。
なお、樹脂微粒子の体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置「LA-920」[(株)堀場製作所製]や「マルチサイザーIII」[ベックマン・コールター(株)製]、光学系として、「SZ-100」[(株)堀場製作所製]、レーザードップラー法を用いる「ELS-800」[大塚電子(株)製]、光散乱法を用いる「LB-550」[(株)島津製作所製]等で測定することができる。
【0048】
本発明のトナーは、上記ポリエステル樹脂及び着色剤を含有してなるトナーである。
本発明のポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用いることにより、トナーの帯電性と耐熱保存性に優れたトナーが得られる。
【0049】
また、本発明のトナーは、上記ポリエステル樹脂に加えて、その他の樹脂を併用することができる。その他の樹脂は、公知の樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、その具体例については、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等が使用できる。
その他の樹脂として好ましいものは、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びそれらの併用であり、更に好ましくは上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。
【0050】
その他の樹脂が本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂は結晶性のポリエステル樹脂でも非晶性のポリエステル樹脂でもよく、本発明のポリエステル樹脂で例示した従来から公知のアルコール成分及び/又はカルボン酸成分と同様のものを用いることができ、アルコール成分及びカルボン酸成分として好ましいものは上記本発明のポリエステル樹脂と同様であり、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、スルファミン酸塩基又はリン酸塩基を構成する原料を用いない以外は同様に製造することができる。
なお、本発明において「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC測定ともいう。)により得られる示差走査熱量曲線の昇温過程において、DSC曲線に極大があり、吸熱ピークを有することをいう。一方、「非晶性」とは、上記DSC曲線において、吸熱ピークを有しないことをいう。
【0051】
着色剤としては黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤及び黄色着色剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21、77及び114等)、ピグメントイエロー(12、14、17及び83等)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17、49、128、5、13、22及び48・2等)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25、94、60及び15・3等)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末、マグネタイト、ヘマタイト並びにフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~15重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、磁性粉の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは30~120重量部である。
【0052】
本発明のトナーは、必要により公知の、離型剤、荷電制御剤、流動化剤などの種々の添加剤等を含んでもよい。
【0053】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ろう、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、及び合成エステルワックス(炭素数10~30の脂肪酸と炭素数10~30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられ、これらの離型剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。離型剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0054】
上記離型剤を使用する際必要により、変性ワックスを併用してもよい。変性ワックスは、離型剤にビニルポリマー鎖がグラフトしたものである。変性ワックスに用いられる離型剤としては上記離型剤と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。変性ワックスのビニルポリマー鎖を構成するビニルモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸エステル等が挙げられる。ビニルポリマー鎖はビニルモノマーの単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。前記変性ワックスの含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%である。
【0055】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニ
ウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂とその他の樹脂の合計100重量部に対して、0~20重量%であってよく、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%である。
【0056】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。流動化剤の含有量は、本発明のトナーの合計100重量部に対して、0~10重量%であってよく、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0.1~4重量%である。
【0057】
トナーの製造方法については特に制限はなく、公知の混練粉砕法、特公昭36-10231号公報、特開昭59-53856号公報、特開昭59-61842号公報に記載されている懸濁重合法、単量体には可溶で水溶性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法、マイクロカプセル製法のような界面重合法、in site重合法、コアセルベーション法、特開昭62-106473号公報や特開昭63-186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法、単分散を特徴とする分散重合法、非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後水性媒体中で樹脂粒子化する溶解懸濁法やエステル伸長重合法により得られたものであってもよいし、超臨界状態の二酸化炭素中で分散する方法により製造してもよい。
【実施例
【0058】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例6は参考例と読み替える。
【0059】
<実施例1>
[ポリエステル樹脂(A-1)及び樹脂水性分散体(D-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物256重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物191重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物256重量部、トリメチロールプロパン10重量部、テレフタル酸277重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム27重量部、アジピン酸11重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸41重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-1)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-1)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-1)を均一に溶解させ、(A-1)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-1)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ70nmであった。
【0060】
<実施例2>[ポリエステル樹脂(A-2)及び樹脂水性分散体(D-2)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物502重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物197重量部、トリメチロールプロパン10重量部、テレフタル酸283重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム28重量部、アジピン酸11重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸39重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-2)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-2)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-2)を均一に溶解させ、(A-2)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-2)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ100nmであった。
【0061】
<実施例3>[ポリエステル樹脂(A-3)及び樹脂水性分散体(D-3)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO3モル付加物248重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物454重量部、トリメチロールプロパン10重量部、テレフタル酸280重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム28重量部、アジピン酸11重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸41重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-3)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-3)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-3)を均一に溶解させ、(A-3)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-3)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ80nmであった。
【0062】
<実施例4>[ポリエステル樹脂(A-4)及び樹脂水性分散体(D-4)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物290重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物270重量部、プロピレングリコール380重量部、トリメチロールプロパン18重量部、テレフタル酸650重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム28重量部、コハク酸62重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸41重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-4)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-4)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-4)を均一に溶解させ、(A-4)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-4)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ90nmであった。
【0063】
<実施例5>[ポリエステル樹脂(A-5)及び樹脂水性分散体(D-5)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物380重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物400重量部、プロピレングリコール180重量部、トリメチロールプロパン18重量部、テレフタル酸408重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム27重量部、コハク酸62重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸41重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-5)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-5)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-5)を均一に溶解させ、(A-5)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-5)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ90nmであった。
【0064】
<実施例6>[ポリエステル樹脂(A-6)及び樹脂水性分散体(D-6)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO3モル付加物390重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物333重量部、トリメチロールプロパン10重量部、テレフタル酸187重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム26重量部、アジピン酸83重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸41重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-6)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-6)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-6)を均一に溶解させ、(A-6)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-6)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ80nmであった。
【0065】
<実施例7>[ポリエステル樹脂(A-7)及び樹脂水性分散体(D-7)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、PETフレーク(市販のPETボトルを1cm角にカットしたもの)300重量部、プロピレングリコール118重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム26重量部とチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を加えて、200℃で3時間反応をおこなった。その後120℃まで冷却し、ビスフェノールA・PO2モル付加物513重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物201重量部、トリメチロールプロパン6.0重量部、コハク酸25重量部を投入し、210℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸48重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(A-7)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(A-7)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(A-7)を均一に溶解させ、(A-7)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(D-7)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ100nmであった。
【0066】
<比較例1>[ポリエステル樹脂(RA-1)及び樹脂水性分散体(RD-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物37重量部、プロピレングリコール424重量部、テレフタル酸466重量部、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム30重量部、アジピン酸59重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸43重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、ポリエステル樹脂(RA-1)を得た。
さらに、攪拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた別の反応容器にポリエステル樹脂(RA-1)110重量部に対しメチルエチルケトンを90重量部加え溶解させ、さらに水酸化ナトリウム(10重量%水溶液)15.6重量部を投入し、25℃で攪拌してポリエステル樹脂(RA-1)を均一に溶解させ、(RA-1)のメチルエチルケトン溶液を得た。よく攪拌されているこの溶液に水235重量部を加え、転相乳化させ、メチルエチルケトンを留去し、樹脂水性分散体(RD-1)を得た。体積平均粒径を「SZ-100」で測定したところ110nmであった。
【0067】
ポリエステル樹脂と樹脂水性分散体の組成及び物性値を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<製造例1>[結晶性ポリエステル樹脂(C-1)分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、セバシン酸683.8重量部、1,6-ヘキサンジオール436.9重量部、及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1重量部を投入し、180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させ、次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007~0.026MPaの減圧下で水を留去しながら反応させ、酸価が0.5mgKOH/g以下になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕・粒子化し、結晶性ポリエステル樹脂(C-1)を得た。融点は67℃、重量平均分子量は12,000、水酸基価は30mgKOH/gであった。撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた別の反応容器に、得られた結晶性ポリエステル樹脂(C-1)30重量部、酢酸エチル270重量部を投入し、78℃に昇温して同温度で3時間攪拌した後、1時間かけて30℃まで冷却して結晶性ポリエステル樹脂(C-1)を微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、結晶性ポリエステル樹脂(C-1)分散液を得た。結晶性ポリエステル樹脂(C-1)分散液の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は、0.24μmであった。
【0070】
<製造例2> [非晶性ポリエステル樹脂(E-1)溶液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA・PO2モル付加物263重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物197重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物264重量部、トリメチロールプロパン10重量部、テレフタル酸259重量部、アジピン酸40重量部及びチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3重量部を投入し、220℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になった時点で180℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸30重量部を入れ常圧密閉下1時間反応後取り出し、非晶性ポリエステル樹脂(E-1)を得た。
非晶性ポリエステル樹脂(E-1)の数平均分子量は2,800、重量平均分子量は10,000、ガラス転移温度は58.0℃であった。
攪拌装置、加熱冷却装置及び温度計を備えた別の反応容器に、得られた非晶性ポリエステル樹脂(E-1)250重量部、酢酸エチル250重量部を投入し、25℃で攪拌して非晶性ポリエステル樹脂(E-1)を均一に溶解させ、非晶性ポリエステル樹脂(E-1)溶液を得た。
【0071】
<製造例3> [変性ワックス(WD-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454重量部、低分子量ポリエチレン 「サンワックス LEL-400」[軟化点:128℃、三洋化成工業(株)製]150重量部を投入し、窒素置換後撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595重量部、メタクリル酸メチル255重量部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34重量部及びキシレン119重量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。次いで0.039MPaの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックス(WD-1)を得た。変性ワックスの数平均分子量は1,900、重量平均分子量は5,200、ガラス転移温度は56.9℃であった。
【0072】
<製造例4> [離型剤分散液(WO-1)の製造]
冷却管、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計の付いた反応容器中に、パラフィンワックス「HNP-9」[融点:73℃、日本精蝋(株)製]10重量部、変性ワックス(WD-1)5重量部及び酢酸エチル85重量部を投入し、78℃に昇温して同温度で3時間間撹拌した後、1時間かけて30℃まで冷却して離型剤を微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、離型剤分散液(WO-1)を得た。離型剤分散液(WO-1)の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は0.25μmであった。
【0073】
<製造例5> [着色剤分散液(PO-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、カーボンブラック「MA100」[三菱化学(株)製]20重量部と着色剤分散剤「ソルスパーズ28000」[アビシア(株)製]4重量部、及び酢酸エチル56重量部を投入し、撹拌して均一分散させた後、ビーズミルによって顔料を微分散して、着色剤分散液(PO-1)を得た。着色剤分散液(PO-1)の「LA-920」で測定した体積基準のメジアン径は0.2μmであった。
【0074】
<実施例8>[トナー(T-1)の作製]
ビーカーに、イオン交換水135.2重量部、樹脂水性分散体(D-1)16.2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.4重量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5重量%水溶液「エレミノールMON-7」[三洋化成工業(株)製]13.2重量部と投入し、均一に混合させた水溶液を得た。次いで別の容器に、非晶性ポリエステル樹脂(E-1)溶液105重量部、結晶性ポリエステル樹脂(C-1)分散液27重量部、着色剤分散液(PO-1)14.5重量部、離型剤分散液(WO-1)10.2重量部、酢酸エチル6重量部を混合し、非晶性ポリエステル樹脂が溶解した樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を先ほど作成した水溶液に全量加えてTKオートホモミキサー[プライミクス(株)製]で10,000rpm、2分間攪拌して混合液を得た。次いで、この混合液を攪拌装置、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に移し、濃度が0.5重量%以下となるまで酢酸エチルを留去し、得られた分散体を洗浄、濾別し、40℃×18時間乾燥を行い、揮発分を0.5重量%以下として樹脂粒子を得た。ついで、樹脂粒子100重量部と疎水性シリカ「アエロジェルR-972」[日本アエロジル製]1重量部とを均一混合して本発明のトナー(T-1)を得た。
【0075】
<実施例9>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-2)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-2)を得た。
【0076】
<実施例10>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-3)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-3)を得た。
【0077】
<実施例11>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-4)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-4)を得た。
【0078】
<実施例12>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-5)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-5)を得た。
【0079】
<実施例13>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-6)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-6)を得た。
【0080】
<実施例14>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(D-7)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T-7)を得た。
【0081】
<比較例2>
実施例8において、樹脂水性分散体(D-1)を樹脂水性分散体(RD-1)に変更すること以外は実施例8と同様にして、トナー(T’-1)を得た。
【0082】
各実施例及び比較例で得られたトナーの組成及び評価結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
[評価方法]
以下に、得られたトナー(T-1)~(T-7)及び(T’-1)の耐熱保存性及び帯電性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。
【0085】
<耐熱保存性>
トナー(T-1)~(T-7)及び(T’-1)を40℃、相対湿度80%の雰囲気で20時間静置し、ブロッキングの程度により下記の基準で耐熱保存性を評価した。
[評価基準]
○:ブロッキングが発生しない。
△:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
【0086】
<帯電性>
50ccの共栓付ガラス瓶に、トナー0.5g、鉄粉(パウダーテック社製「F-150」)10gを精秤し、共栓をして23℃、相対湿度50%の雰囲気下でターブラシェーカミキサー(ウイリー・ア・バショッフェン社製)にセットし、回転数90rpmで2分攪拌した。攪拌後の混合粉体0.2gを目開き20μmステンレス金網がセットされたブローオフ粉体帯電量測定装置(京セラケミカル株式会社製TB-203)に装填し、ブロー圧10KPa,吸引圧5KPaの条件で、残存鉄粉の帯電量を測定し、定法によりトナーの帯電量(μC/g)を算出した。なお、トナー用としてはマイナス帯電量が高いほど帯電特性が優れている。
【0087】
表2の評価結果から明らかなように、実施例8~14に係るトナー(T-1)~(T-7)はいずれもすべての性能評価において優れた結果が得られた。
一方、比較例2に係るトナー(T’-1)は、いくつかの性能項目が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリエステル樹脂は、耐熱保存性を維持しつつ、帯電性に優れ、電子写真、静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナーとして好適に使用できる。
さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。