(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】乳化組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20250106BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20250106BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20250106BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250106BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20250106BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/04
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/73
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2023088973
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】595064854
【氏名又は名称】カネダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】西條 誠
(72)【発明者】
【氏名】勝部 昇
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/241000(WO,A1)
【文献】特開2023-040098(JP,A)
【文献】特開2018-108952(JP,A)
【文献】特開2020-158400(JP,A)
【文献】Anti-Aging Cream, The Face Shop,Mintel GNPD [online],2014年01月,[検索日2024.6.28], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#:2311732
【文献】Moisture Barrier Cream, Bb Laboratories,Mintel GNPD [online],2014年11月,[検索日2024.6.28], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#:2787105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンシリコーンの乳化組成物であって、
トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、下記一般式(1)で表されるエステル(1)と、下記一般式(2)で表されるエステル(2)と、炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、水と、を含有
し、
トリアシルグリセロールと、前記アルカンと、前記エステル(1)と、前記エステル(2)との混合比率は、
(トリアシルグリセロールと前記アルカンとの合計の含有量)/(前記エステル(1)と前記エステル(2)との合計の含有量)で表される質量比として0.3~8であり、
トリアシルグリセロールと前記アルカンとの合計の含有量は、前記乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上9質量%以下であり、
毛髪用化粧品用の乳化組成物である、
ノンシリコーンの乳化組成物。
R
1-C(=O)-O-R
2 ・・・(1)
R
3-C(=O)-O-R
4 ・・・(2)
式(1)中、R
1は、炭素原子数3から8の分岐鎖状炭化水素基を表す。R
2は、炭素原子数12から18の脂肪族炭化水素基を表す。
式(2)中、R
3は、炭素原子数11から21の脂肪族炭化水素基を表す。R
4は、グリコシド結合によって重合した多糖類構造を表す。
【請求項2】
連続相と、前記連続相に分散している分散相と、を備え、
前記連続相は、前記鎖状アルコール及び水を含む相からなり、
前記分散相は、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を含む油滴からなる、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の乳化組成物の製造方法であって、
前記鎖状アルコール及び水を加熱しながら混合して混合液Zを調製する工程(P1)と、
前記混合液Zに、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を添加しながら混合して乳化組成物を得る工程(P2)と、
を含む、乳化組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(P2)において、前記混合液Zに、
トリアシルグリセロールと前記アルカンとの混合液X、及び前記エステル(1)と前記エステル(2)との混合液Yを別々に添加しながら混合して乳化組成物を得る、請求項
3に記載の乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な洗髪行動として、シャンプーをし、その後、毛髪のダメージ軽減や感触向上を目的に、リンス、コンディショナー、トリートメント等の各種ヘアトリートメント剤による処理が行われている。
ヘアトリートメント剤には、通常、第4級アンモニウム塩及び高級アルコールが配合されており、さらに、種々の効果を付与する油分が加えられている。その油分の中で、代表的なものとして、乾燥後の毛髪をなめらかにしたり、しっとりさせたりするコンディショニング効果の高いジメチルシリコーンや変性シリコーン等のシリコーン類が汎用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリコーン類が配合されたヘアトリートメント剤を繰り返し使用していると、シリコーン類が毛髪に蓄積して、洗髪乾燥後に良好な感触が得られにくくなる傾向がある。
【0005】
ところで、近年、シリコーンの主原料である金属ケイ素について、主要生産地の電力規制などにより世界的に需給が逼迫し、その価格が高騰している。これに伴い、シャンプー、ヘアトリートメント剤においても、シリコーン類に関し、原材料価格への影響、及び供給不足が懸念され、これに対応する代替技術が求められる。
また、毛髪、頭皮及び肌へのやさしさや、環境への配慮の点から、植物由来の原料を使用した天然訴求のヘアケア用品が求められている。消費者ニーズとして、天然成分の含有割合が高いことを求める傾向が強まっている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シリコーン類を配合した組成と同等以上のコンディショニング効果を発現する、ノンシリコーンの乳化組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用した。
【0008】
[1] トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、下記一般式(1)で表されるエステル(1)と、下記一般式(2)で表されるエステル(2)と、炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、水と、を含有する、乳化組成物。
R1-C(=O)-O-R2 ・・・(1)
R3-C(=O)-O-R4 ・・・(2)
式(1)中、R1は、炭素原子数3から8の分岐鎖状炭化水素基を表す。R2は、炭素原子数12から18の脂肪族炭化水素基を表す。
式(2)中、R3は、炭素原子数11から21の脂肪族炭化水素基を表す。R4は、グリコシド結合によって重合した多糖類構造を表す。
【0009】
[2] 連続相と、前記連続相に分散している分散相と、を備え、前記連続相は、前記鎖状アルコール及び水を含む相からなり、前記分散相は、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を含む油滴からなる、前記[1]に記載の乳化組成物。
【0010】
[3] トリアシルグリセロールと、前記アルカンと、前記エステル(1)と、前記エステル(2)との混合比率は、
(トリアシルグリセロールと前記アルカンとの合計の含有量)/(前記エステル(1)と前記エステル(2)との合計の含有量)で表される質量比として0.3~8である、前記[1]又は前記[2]に記載の乳化組成物。
【0011】
[4] 前記[2]に記載の乳化組成物の製造方法であって、前記鎖状アルコール及び水を加熱しながら混合して混合液Zを調製する工程(P1)と、前記混合液Zに、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を添加しながら混合して乳化組成物を得る工程(P2)と、を含む、乳化組成物の製造方法。
【0012】
[5] 前記工程(P2)において、前記混合液Zに、トリアシルグリセロールと前記アルカンとの混合液X、及び前記エステル(1)と前記エステル(2)との混合液Yを別々に添加しながら混合して乳化組成物を得る、前記[4]に記載の乳化組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリコーン類を配合した組成と同等以上のコンディショニング効果を発現する、ノンシリコーンの乳化組成物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例2の乳化組成物についての顕微鏡による観察像である。
【
図2】比較例4の乳化組成物についての顕微鏡による観察像である。
【
図3】実施例6の乳化組成物についての顕微鏡による観察像である。
【
図4】実施例7の乳化組成物についての顕微鏡による観察像である。
【
図5】実施例21の乳化組成物についての顕微鏡による観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(乳化組成物)
本発明の一実施形態に係る乳化組成物は、トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、下記一般式(1)で表されるエステル(1)と、下記一般式(2)で表されるエステル(2)と、炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、水と、を含有するものであり、必要に応じてその他成分をさらに含有してもよい。
【0016】
R1-C(=O)-O-R2 ・・・(1)
R3-C(=O)-O-R4 ・・・(2)
式(1)中、R1は、炭素原子数3から8の分岐鎖状炭化水素基を表す。R2は、炭素原子数12から18の脂肪族炭化水素基を表す。
式(2)中、R3は、炭素原子数11から21の脂肪族炭化水素基を表す。R4は、グリコシド結合によって重合した多糖類構造を表す。
【0017】
本実施形態の乳化組成物は、毛髪用化粧品、皮膚用化粧品の用途に好適なものであり、特に毛髪用化粧品の用途に好適なものであり、例えばリンス、コンディショナー、トリートメント等の各種ヘアトリートメント剤に有用である。
本実施形態の乳化組成物は、カチオン界面活性剤/高級アルコール系のインバス用のヘアトリートメント剤において特に効果を発揮するが、リーブオンタイプのアウトバス用のヘアケア用品にも利用可能である。
【0018】
<トリアシルグリセロール>
本実施形態の乳化組成物が含有するトリアシルグリセロールは、1分子のグリセロールに、3分子の脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロールである。
3分子の脂肪酸は、同一でもよいし異なっていてもよい。ここでの各脂肪酸としては、炭素原子数4~18の脂肪酸が好ましく、炭素原子数6~12の脂肪酸(中鎖脂肪酸)がより好ましく、炭素原子数7の脂肪酸が特に好ましい。また、ここでの各脂肪酸は、飽和脂肪酸でもよいし不飽和脂肪酸でもよいし、直鎖状の脂肪酸でもよいし分岐鎖状の脂肪酸でもよい。
トリアシルグリセロールとしては、例えば、トリヘキサノイン、トリヘプタノイン、トリオクタノイン、トリエチルヘキサノイン、トリデカノインを用いることができ、これらの中でもトリヘプタノインを用いることが好ましい。
【0019】
トリアシルグリセロールは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の乳化組成物中の、トリアシルグリセロールの含有量は、その用途や剤型などに応じて適宜設定すればよく、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、例えば0.3質量%以上6質量%以下である。
【0020】
<炭素原子数10から16のアルカン>
本実施形態の乳化組成物が含有するアルカンは、炭素原子数10から16の飽和炭化水素である。ここでのアルカンは、鎖状の飽和炭化水素に加え、環状の飽和炭化水素を包含するものとする。ここでのアルカンとしては、炭素原子数11~16のアルカンが好ましく、炭素原子数13~15のアルカンがより好ましい。
【0021】
炭素原子数10から16のアルカンは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、アルカンは、鎖状の飽和炭化水素が好ましく、炭素原子数の異なる飽和炭化水素が混合したアルカンを用いることがより好ましい。
本実施形態の乳化組成物中の、炭素原子数10から16のアルカンの含有量は、その用途や剤型などに応じて適宜設定すればよく、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、例えば0.1質量%以上3.6質量%以下である。
【0022】
<エステル(1)>
本実施形態の乳化組成物が含有するエステル(1)は、下記一般式(1)で表されるエステルである。
【0023】
R1-C(=O)-O-R2 ・・・(1)
式(1)中、R1は、炭素原子数3から8の分岐鎖状炭化水素基を表す。R2は、炭素原子数12から18の脂肪族炭化水素基を表す。
【0024】
前記式(1)中、R1における分岐鎖状炭化水素基は、炭素原子数が3~8であり、好ましくは炭素原子数が5~8である。
また、R1における分岐鎖状炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし不飽和炭化水素基でもよく、飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0025】
前記式(1)中、R2における脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が12~18であり、好ましくは炭素原子数が14~18であり、より好ましくは炭素原子数が16である。
また、R2における脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし不飽和炭化水素基でもよく、飽和炭化水素基であることが好ましい。
また、R2における脂肪族炭化水素基は、鎖状でもよいし環状でもよく、鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0026】
エステル(1)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ラウリル、2-エチルヘキサン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸ステアリルを用いることができ、これらの中でも2-エチルヘキサン酸セチルを用いることが好ましい。
【0027】
エステル(1)は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の乳化組成物中の、エステル(1)の含有量は、その用途や剤型などに応じて適宜設定すればよく、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、例えば0.2質量%以上6質量%以下である。
【0028】
<エステル(2)>
本実施形態の乳化組成物が含有するエステル(2)は、下記一般式(2)で表されるエステルである。
【0029】
R3-C(=O)-O-R4 ・・・(2)
式(2)中、R3は、炭素原子数11から21の脂肪族炭化水素基を表す。R4は、グリコシド結合によって重合した多糖類構造を表す。
【0030】
前記式(2)中、R3における脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が11~21であり、好ましくは炭素原子数が13~17であり、より好ましくは炭素原子数が15である。
また、R3における脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし不飽和炭化水素基でもよく、飽和炭化水素基であることが好ましい。
また、R3における脂肪族炭化水素基は、鎖状でもよいし環状でもよく、鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0031】
前記式(2)中、R4における多糖類構造は、グリコシド結合によって重合した構造であり、例えば、デキストリン構造、マルトース構造、デンプン構造、イヌリン構造などが挙げられる。中でも、洗髪時に毛髪への吸着性が高められやすい点から、デキストリン構造が好ましい。
ここでいうデキストリン構造とは、α-グルコースがα-(1→4)又はα-(1→6)グリコシド結合によって重合した分子構造をいう。デキストリンは、多糖類に分類され、デンプンとマルトースとの中間にあたる。
【0032】
エステル(2)としては、例えば、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸イヌリン、ステアリン酸イヌリン等を用いることができ、これらの中でも、洗髪時に毛髪への吸着性が高められやすい点、又は溶解性の点から、パルミチン酸デキストリンを用いることが好ましい。
【0033】
なお、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンは、デキストリンのヒドロキシ基(-OH)にパルミチン酸及びエチルヘキサン酸の各カルボキシ基(-COOH)を脱水縮合したエステル混合物(デキストリン脂肪酸エステル)である。
(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリンは、デキストリンのヒドロキシ基(-OH)にパルミチン酸及びヘキシルデカン酸の各カルボキシ基(-COOH)を脱水縮合したエステル混合物(デキストリン脂肪酸エステル)である。
【0034】
エステル(2)は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の乳化組成物中の、エステル(2)の含有量は、その用途や剤型などに応じて適宜設定すればよく、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、例えば0.05質量%以上1質量%以下である。
【0035】
本実施形態の乳化組成物において、上述したトリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンとの合計の含有量は、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上9質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
本実施形態の乳化組成物において、上述したエステル(1)とエステル(2)との合計の含有量は、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましく、1質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態の乳化組成物において、上述したトリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、エステル(1)と、エステル(2)との合計の含有量は、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、1.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上9質量%以下であることがさらに好ましい。
これら4成分の合計の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、コンディショニング効果が高められやすくなり、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、べたつきが抑えられて、洗髪乾燥後の感触が向上しやすくなる。
【0038】
本実施形態の乳化組成物において、上述したトリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、エステル(1)と、エステル(2)との混合比率は、(トリアシルグリセロールと前記アルカンとの合計の含有量)/(前記エステル(1)と前記エステル(2)との合計の含有量)で表される質量比として0.3~8であることが好ましく、0.5~6であることがより好ましく、0.6~4であることがさらに好ましい。
この2成分同士の質量比が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、コンディショニング効果が高められやすくなり、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、乳化組成物の保存安定性が向上する。
【0039】
<炭素原子数16から22の鎖状アルコール>
本実施形態の乳化組成物が含有する鎖状アルコールは、炭素原子数16から22の鎖状アルコールであり、乳化組成物において連続相を構成する基材成分である。
鎖状アルコールは、炭素原子数が16~22であり、好ましくは炭素原子数が16~20であり、より好ましくは炭素原子数が16~18である。
鎖状アルコールとしては、例えばセタノール(炭素原子数16)、ステアリルアルコール(炭素原子数18)、セトステアリルアルコール(セタノールとステアリルアルコールとの混合物)、ベヘニルアルコール(炭素原子数22)を用いることができ、これらの中でもセタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールを用いることが好ましい。
【0040】
炭素原子数16から22の鎖状アルコールは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の乳化組成物中の、炭素原子数16から22の鎖状アルコールの含有量は、その用途や剤型などに応じて適宜設定すればよく、乳化組成物の総質量(100質量%)に対して、1~5質量%が好ましく、2~4質量%がより好ましい。
【0041】
<水>
本実施形態の乳化組成物においては、溶剤として水を含有する。
本実施形態の乳化組成物中の、水の含有量は、トリアシルグリセロール、炭素原子数10から16のアルカン、エステル(1)、エステル(2)及び炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、必要に応じて配合されるその他成分と、を除く残部である。
【0042】
<その他成分>
本実施形態の乳化組成物は、上述したトリアシルグリセロール、炭素原子数10から16のアルカン、エステル(1)、エステル(2)、炭素原子数16から22の鎖状アルコール及び水に加えて、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
その他成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の毛髪用化粧品又は皮膚用化粧品等に配合される成分を適宜用いることができる。
かかるその他成分としては、例えば、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、液体油脂、固体油脂、ワックス、炭素原子数16未満のアルコール、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、高分子エマルション、香料、ジグルコシル没食子酸又はその塩、各種訴求成分等が挙げられる。
【0043】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、グアニジン塩、アミドアミン型界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられる。
【0044】
液体油脂としては、ヤシ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、オリーブ油等の植物油;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油;ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサノイン等の多価アルコール脂肪酸エステル;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル;シクロメチコン、ジメチコン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0045】
ワックスとしては、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、サトウキビロウ、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、木ロウ等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の乳化組成物は、必要に応じて、ジグルコシル没食子酸又はその塩をさらに含有してもよい。ジグルコシル没食子酸又はその塩をさらに含有することで、コンディショニング効果がより高められやすくなる。
【0047】
[水中油滴(O/W型)エマルション]
本実施形態の乳化組成物は、典型的には、油滴が水相(連続相)に分散する水中油滴(O/W型)エマルションである。
図4は、本発明の一実施形態に係る乳化組成物(後述の実施例7に相当)についての顕微鏡による観察像である。
図4に示す乳化組成物1は、連続相10と、連続相10に分散している分散相20と、を備えた、水中油滴(O/W型)エマルションである。
連続相10は、炭素原子数16から22の鎖状アルコール及び水を含む相からなる。
分散相20は、トリアシルグリセロール、炭素原子数10から16のアルカン、エステル(1)及びエステル(2)を含む油滴からなる。
【0048】
前記油滴を構成する粒子の形状は、例えば、球形状から楕円形状であり、コンディショニング効果が高められやすい点から、球形状に近いほど好ましい。
【0049】
また、前記油滴を構成する粒子の粒子径は、例えば、3μmから200μmの範囲であり、10μmから200μmの範囲であることが好ましい。
加えて、前記油滴を構成する粒子は、コンディショニング効果が、より高められやすい点から、10μmから70μmの範囲である粒子径のものがさらに多いこと、例えば、全粒子の総個数の半分以上の粒子が、粒子径10μmから70μmの範囲であることがより好ましい。
ここで、油滴を構成する粒子の粒子径は、観察像の右下のスケールバー(10.0μm)に基づいて、写真で観測される50個以上の粒子の長径についての平均値である。粒子の長径を測定する際に使う前記写真には、撮影した数枚の写真の中から代表的な1枚を選択する。
【0050】
以上説明した本実施形態の乳化組成物は、トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、エステル(1)と、エステル(2)と、炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、水と、を含有してエマルション(乳濁液)を生成している。
かかる乳化組成物中では、トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、エステル(1)と、エステル(2)と、の二種以上の組合せを含む油滴が、前記鎖状アルコールと水とを含む相からなる連続相に分散し得る。そして、洗髪時に、この油滴が毛髪に吸着するため、シリコーン類を配合した組成と同等以上のコンディショニング効果を発現する、と推測される。
【0051】
本実施形態の乳化組成物は、ノンシリコーンの組成であり、近年のシリコーン類に関する原材料価格の高騰、及び供給不足に対応することができる有用な製剤である。また、本実施形態の乳化組成物においては、組成に占める天然成分の含有割合を高められる。
【0052】
(乳化組成物の製造方法)
本実施形態の乳化組成物は、トリアシルグリセロールと、炭素原子数10から16のアルカンと、エステル(1)と、エステル(2)と、炭素原子数16から22の鎖状アルコールと、水と、必要に応じてその他成分と、を混合することにより製造することができる。
乳化組成物の製造方法の一実施形態は、前記鎖状アルコール及び水を加熱しながら混合して混合液Z(連続相形成用)を調製する工程(P1)と、前記混合液Z(連続相形成用)に、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を添加しながら混合して、最終目的の乳化組成物を得る工程(P2)と、を含む製造方法である。
【0053】
[工程(P1)]
工程(P1)では、前記鎖状アルコール及び水を加熱しながら混合して混合液Z(連続相形成用)を調製する。
混合液Zは、油相を水相に分散させて、ベースとなる乳化組成物として調製される。油相は、前記鎖状アルコールと、その他成分における油溶性成分と、を任意の温度で混合して得る。水相は、水と、その他成分における水溶性成分と、を任意の温度で混合して得る。
【0054】
[工程(P2)]
工程(P2)では、前記混合液Z(連続相形成用)に、トリアシルグリセロール、前記アルカン、前記エステル(1)及び前記エステル(2)を添加しながら混合して、最終目的の乳化組成物を得る。
工程(P2)においては、工程(P1)で調製した混合液Zに、トリアシルグリセロールと前記アルカンとの混合液X、及び前記エステル(1)と前記エステル(2)との混合液Yを別々に添加しながら混合することが好ましい。このように混合することで、連続相に、油滴が分散した状態の乳化組成物が安定に得られやすくなる。加えて、コンディショニング効果が高められた乳化組成物が得られやすくなる。
【0055】
混合液X及び混合液Yは、必要に応じてその他成分が混合されていてもよい。
混合液X及び混合液Yとしては、それぞれ、調製した液を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。混合液Xの市販品には、例えば、INOLEX社製の「LexFeel(登録商標)WOW-A」を好適に用いることができる。混合液Yの市販品には、例えば、DOC Japan株式会社製の「DOCSilFee(登録商標)YA-30H」を好適に用いることができる。
【0056】
以上説明した本実施形態の製造方法によれば、
図4に示すような状態、すなわち、連続相10と、連続相10に分散している分散相20とを備えた乳化組成物を容易かつ安定に製造することができる。加えて、本実施形態の製造方法によれば、分散相20を構成する油滴の粒子径が適度な大きさに制御されることで、コンディショニング効果が、より高められる(後述の実施例7と実施例21との対比;製造方法(α)と製造方法(β)との相違;
図4~5を参照)。
【0057】
乳化組成物の製造方法の他の実施形態は、鎖状アルコールと、トリアシルグリセロールと、前記アルカンと、前記エステル(1)と、前記エステル(2)と、を加熱しながら混合した混合液に、別に加熱した水を添加しながら混合して、最終目的の乳化組成物を得る工程(P3)を含む製造方法である。この他の実施形態にかかる製造方法によれば、より微細な粒子径の油滴が分散した安定な乳化組成物を製造することができる。しかし、コンディショニング効果の点では、工程(P3)を含む製造方法に比べて、上述した工程(P1)と工程(P2)とを含む製造方法の方が高められやすい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0059】
<使用した原料>
実施例及び比較例では、以下に示す原料を使用した。
【0060】
・トリアシルグリセロール、炭素原子数10から16のアルカン
ここでは、プレミックス品を用いて配合した。プレミックス品として、INOLEX社製の「LexFeel(登録商標)WOW-A」を用いた。このプレミックス品は、トリヘプタノインと炭素原子数13~15のアルカンとの混合物である。
【0061】
・一般式(1)で表されるエステル(1)、一般式(2)で表されるエステル(2)
ここでは、プレミックス品を用いて配合した。プレミックス品として、DOC Japan株式会社製の「DOCSilFee(登録商標)YA-30H」を用いた。このプレミックス品は、2-エチルヘキサン酸セチルとパルミチン酸デキストリンとを主成分として含む混合物である。
【0062】
・シリコーン類
シリコーンガムブレンド、ダウ・ケミカル日本株式会社/ダウ・東レ株式会社製の「DOWSIL(登録商標)BY11-003」を用いた。ガム状直鎖状シリコーンと環状シリコーン5量体との混合物。ガム状直鎖状シリコーン10%、混合物の粘度1500mm2/s(25℃)。
【0063】
・炭素原子数16から22の鎖状アルコール
セタノール、花王株式会社製の「カルコール6098」を用いた。
【0064】
・水
精製水を用いた。
【0065】
・その他成分
メチルパラベン、上野製薬株式会社製の「メッキンスM」を用いた。
グリセリン、花王株式会社製の「濃グリセリン」を用いた。
クエン酸、昭和化工株式会社製の「クエン酸」を用いた。
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ライオン株式会社製の「アーカードT-800」を用いた。
ステアリン酸グリセリル、花王株式会社製の「レオドールMS-165V」を用いた。
ラノリン、日本精化株式会社製の「精製ラノリン」を用いた。
ミネラルオイル、カネダ株式会社製の「ハイコールK-230」を用いた。
オリーブ油、カネダ株式会社製の「オリーブ油」を用いた。
【0066】
<乳化組成物の製造>
(比較例1~6、参考例1、実施例1~21)
表1~5中、使用した原料についての数値は、乳化組成物中の各原料の含有量を示し、乳化組成物の総質量に対する割合(質量%;純分換算)を意味する。
製造方法(α)は、後述の工程(P1)と工程(P2)とを含む製造方法である。
製造方法(β)は、後述の工程(P3)を含む製造方法である。
【0067】
表1~5に示す組成及び含有量となるように、各例の乳化組成物を、以下に示すようにして製造した。
精製水と、メチルパラベンと、グリセリンと、クエン酸と、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムとを、80℃で加熱しながら混合して、混合液(Z1)を調製した。
ステアリン酸グリセリルと、ラノリンと、ミネラルオイルと、オリーブ油と、セタノールとを、80℃で加熱しながら混合して、混合液(Z2)を調製した。
【0068】
トリヘプタノインと炭素原子数13~15のアルカンとの混合物である「LexFeel(登録商標)WOW-A」を、50℃に加温して、混合液(X0)を調製した。
2-エチルヘキサン酸セチルとパルミチン酸デキストリンとを主成分として含む混合物である「DOCSilFee(登録商標)YA-30H」を、50℃に加温して、混合液(Y0)を調製した。
【0069】
(比較例1)
80℃の混合液(Z2)を、所定の冷却速度で冷却しつつ、そこに80℃の混合液(Z1)を添加しながら混合して、比較例1の乳化組成物を得た。
【0070】
(比較例2~3)
80℃の混合液(Z2)を、所定の冷却速度で冷却しつつ、そこに80℃の混合液(Z1)を添加しながら混合して、混合液(Z3)を調製した。
次いで、混合液(Z3)に、50℃の混合液(Y0)を添加しながら混合して、比較例2~3の乳化組成物をそれぞれ得た。
【0071】
(比較例4~6)
80℃の混合液(Z2)を、所定の冷却速度で冷却しつつ、そこに80℃の混合液(Z1)を添加しながら混合して、混合液(Z3)を調製した。
次いで、混合液(Z3)に、50℃の混合液(X0)を添加しながら混合して、比較例4~6の乳化組成物をそれぞれ得た。
【0072】
(参考例1)
80℃の混合液(Z2)に、シリコーンガムブレンドを添加しながら混合して、混合液(Z3)を調製した。
次いで、所定の冷却速度で冷却しつつ、混合液(Z3)に、80℃の混合液(Z1)を添加しながら混合して、参考例1の乳化組成物を得た。
【0073】
(実施例1~20)
下記の工程(P1)と工程(P2)とを含む製造方法(α)を使用することにより乳化組成物を得た。
工程(P1):
80℃の混合液(Z2)を、所定の冷却速度で冷却しつつ、そこに80℃の混合液(Z1)を添加しながら混合して、混合液(Z3)を調製した。
工程(P2):
次いで、工程(P1)で調製した混合液(Z3)に、50℃の混合液(X0)を添加しながら混合した後、続けて、50℃の混合液(Y0)を添加しながら混合して、実施例1~20の乳化組成物をそれぞれ得た。
【0074】
(実施例21)
下記の工程(P3)を含む製造方法(β)を使用することにより乳化組成物を得た。
工程(P3):
精製水と、メチルパラベンと、グリセリンと、クエン酸と、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムとを、80℃で加熱しながら混合して、混合液(Z1)を調製した。
ステアリン酸グリセリルと、ラノリンと、ミネラルオイルと、オリーブ油と、セタノールとを、80℃で加熱しながら混合して、混合液(Z2)を調製した。さらに、80℃の混合液(Z2)に、50℃の混合液(X0)を添加しながら混合した後、続けて、50℃の混合液(Y0)を添加しながら混合して、混合液(Z4)を調製した。
次いで、所定の冷却速度で冷却しつつ、混合液(Z4)に、混合液(Z1)を添加しながら混合して、実施例21の乳化組成物を得た。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
<評価(1)>
各例の乳化組成物を試料として用い、以下に示す試験方法により、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)を測定することにより、コンディショニング効果について評価した。この評価結果を表6~7に示した。
【0081】
≪試験方法≫
以下に示すように、毛束を処理してダメージ毛を調製し、すすぎ後の乾燥状態で、毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)を測定した。
【0082】
[毛束の準備]
ノーダメージの毛束として購入した、長さ10cmの毛束1gを、市販のブリーチ剤(ヘンケルジャパン社製)で、その取り扱い説明書の処理時間の2倍の時間にて処理して水洗し、さらに乾燥してから、ダメージ毛用の毛束として使用した。
【0083】
[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の乾燥状態の場合]
手順(1):前記のダメージ毛用の長さ10cmの毛束1gを、40℃の温水により濡らして軽く絞り、試料である乳化組成物0.1gを、この濡れた毛束の全体に延ばすように塗布した。
【0084】
手順(2):試料を塗布した毛束を、40℃の温水200mLに浸漬してすすぐ操作を2回行い、この後、水がしたたり落ちないように軽く絞った(希釈率200倍;すすぎ後半を想定)。
【0085】
手順(3):軽く絞った後の毛束を、室温(25℃)で24時間自然乾燥した。
この後、自然乾燥した毛束に、櫛入れを5回行ってから、櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定を開始した。
手順(4):12回の櫛入れの際の引張強度を測定し、これらの平均値を求めた。
【0086】
引張強度の測定機器には、イマダ製のフォースゲージZTA/ZTSシリーズ型式DST-2Nを使用した。
櫛入れの際の引張強度の測定は、前記フォースゲージを固定し、毛束を吊り下げて、櫛通しを行いながら行った。すなわち、櫛を、毛束の長さ方向に対して垂直に保ちつつ、重力方向の下方へまっすぐに通したときの最大荷重を測定した。
また、櫛入れの際の引張強度の測定は、櫛入れ最初の1~2回目の測定値、及び毛束にたまたま櫛が引っかかってしまったような場合の異常値をいずれも除外した後の、複数の測定値の平均値を採用した。
【0087】
各例の乳化組成物について、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)を測定した結果を、表6~7に示した。
尚、毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)は、櫛入れの際の引張強度(単位:N(ニュートン))として示されている。
コンディショニング効果について、参考例1の乳化組成物を用いた場合における、櫛入れの際の引張強度0.49Nを基準として評価した。
【0088】
【0089】
【0090】
表6~7に示す結果から、実施例1~21の乳化組成物を用いた場合の方が、比較例1~6の乳化組成物を用いた場合に比べて、櫛入れの際の引張強度が低い値であった。
また、実施例1~21の乳化組成物を用いた場合における櫛入れの際の引張強度は、参考例1の乳化組成物を用いた場合における櫛入れの際の引張強度に比べても、低い値であった。
したがって、本発明を適用した実施例1~21は、シリコーン類を配合した組成と同等以上のコンディショニング効果を発現する、ノンシリコーンの乳化組成物であること、が確認された。
【0091】
また、製造方法(α)の使用により得られた実施例7の乳化組成物を用いた場合の方が、製造方法(β)の使用により得られた実施例21の乳化組成物を用いた場合に比べて、櫛入れの際の引張強度が、より低い値であった。
【0092】
<評価(2)>
比較例2、比較例4、実施例6、実施例7及び実施例21の各乳化組成物を試料として用い、その乳化状態を顕微鏡により観察した。
顕微鏡には、株式会社キーエンス製の「デジタルマイクロスコープ VHX-6000-2」を用いた。当該顕微鏡によるCCD撮影を、温度25.0℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0093】
各例の乳化組成物について、前記顕微鏡による観察像を、
図1~5に示した。
前記観察像の中で観察される油滴を構成する粒子の粒子径は、観察像の右下のスケールバー(10.0μm)に基づいて、写真で観測される50個の粒子の長径についての平均値を算出することにより決定した。1つの試料(乳化組成物)につき、撮影した数枚の写真の中から代表的な1枚を選択し、その写真内で観測される粒子の長径を測定した。
【0094】
図1は、比較例2の乳化組成物(WOW-A/YA-30H=0質量%/2質量%)についての顕微鏡による観察像である。
連続相に分散している油滴は、粒子径が約10μmから230μmの範囲のものであった。平面視で、円形状のみならず、楕円形状の粒子も存在していた。観察される油滴の量は、比較的に少なかった。
【0095】
図2は、比較例4の乳化組成物(WOW-A/YA-30H=4質量%/0質量%)についての顕微鏡による観察像である。
連続相に分散している油滴は、粒子径が約10μmから120μmの範囲のものであったが、このうち粒子径が約10μmから70μmの範囲のものは多くはなかった。粒子径が約70μm以上の油滴は、楕円形状の粒子が多かった。
【0096】
図3は、実施例6の乳化組成物(WOW-A/YA-30H=4質量%/1質量%)についての顕微鏡による観察像である。
連続相に分散している油滴は、粒子径が約10μmから160μmの範囲のものであり、約10μmから70μmの範囲のものが多かった。また、連続相に分散している油滴は、球形に近い形状の粒子であった。
【0097】
図4は、実施例7の乳化組成物(WOW-A/YA-30H=4質量%/2質量%;製造方法(α))についての顕微鏡による観察像である。
連続相に分散している油滴は、粒子径が約10μmから200μmの範囲のものであった。また、連続相に分散している油滴は、ほぼ球形状の粒子であった。このうち、粒子径が約10μmから70μmの範囲であって球形状の粒子が多かった。観察される油滴の量は、比較的に多かった。
【0098】
図5は、実施例21の乳化組成物(WOW-A/YA-30H=4質量%/2質量%;製造方法(β))についての顕微鏡による観察像である。
連続相に分散している油滴は、粒子径が約3μmから80μmの範囲のものであり、このうち、粒子径が約20μm以下の粒子が非常に多かった。
連続相に分散している油滴は、主に球形状の粒子であったが、非球形状の粒子も存在していた。但し、楕円形状の粒子は少なかった。
【0099】
以上の評価(1)及び評価(2)より、連続相に分散している油滴について、粒子径が大きすぎず、かつ小さすぎず、粒子径が約10μmから70μmの範囲であり、球形に近い形状の粒子であることにより、櫛入れの際の引張強度が低い値を示し、コンディショニング効果を発現しやすいこと、が推測される。
【符号の説明】
【0100】
1 乳化組成物、10 連続相、20 分散相