(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】レーザ加工機及び加工不良検出方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20250106BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20250106BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 Q
B23K26/00 P
(21)【出願番号】P 2023158148
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2024-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】西野 将伍
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 周平
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039028(JP,A)
【文献】特開平09-108866(JP,A)
【文献】特開2015-188938(JP,A)
【文献】特開2021-142533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金にレーザビームを照射して切断するときに前記板金の加工点から放射される放射光を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された前記放射光に基づいて前記板金の加工不良を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる
角度または幅を測定し、測定された前記
角度または前記幅が所定値以上である場合に、前記板金が加工不良である
と判定する
レーザ加工機。
【請求項2】
板金にレーザビームを照射して切断するときに前記板金の加工点から放射される放射光を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された前記放射光に基づいて前記板金の加工不良を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度
または幅を測定し、所定時間内に測定された複数の前記角度
または前記幅から分散値を算出し、算出された前記分散値が所定値以上である場合に、前記板金が加工不良であると判定す
る
レーザ加工機。
【請求項3】
前記制御部は、前記板金が加工不良であると判定された場合に、レーザ加工を継続するか、レーザ加工を停止するか、ユーザが選択できるように設定されている
請求項
1または2に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
レーザ加工機が板金にレーザビームを照射して切断するときに、前記板金の加工点から放射される放射光をカメラで撮像し、
撮像された前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる
角度または幅を測定し、
測定された前記
角度または前記幅が所定値以上である場合に、前記板金が加工不良である
と判定する
加工不良検出方法。
【請求項5】
レーザ加工機が板金にレーザビームを照射して切断するときに、前記板金の加工点から放射される放射光をカメラで撮像し、
撮像された前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度または幅を測定し、
所定時間内に測定された複数の前記角度または前記幅から分散値を算出し、
算出された前記分散値が所定値以上である場合に、前記板金が加工不良であると判定する
加工不良検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機及び加工不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バーニング不良が発生しているか否かを判定するレーザ加工機が記載されている。特許文献1のレーザ加工機では、板金にレーザビームを照射して切断するときの反射光を検出し、反射光の検出レベルから所定の計算周期で標準偏差を求めてバーニング不良が発生しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反射光の検出レベルは加工不良以外の要因でも変化するので、上述した従来のレーザ加工機では、加工不良でない場合に加工不良であると誤検知してしまう場合があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るレーザ加工機は、板金にレーザビームを照射して切断するときに前記板金の加工点から放射される放射光を撮像するカメラと、前記カメラで撮像された前記放射光に基づいて前記板金の加工不良を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された前記放射光の広がり具合に基づいて、前記板金が加工不良であるか否かを判定する。
【0006】
本発明の他の一態様に係る加工不良検出方法は、レーザ加工機が板金にレーザビームを照射して切断するときに、前記板金の加工点から放射される放射光をカメラで撮像し、撮像された前記放射光が前記レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された前記放射光の広がり具合に基づいて、前記板金が加工不良であるか否かを判定する。
【0007】
本発明の一態様に係るレーザ加工機及び加工不良検出方法によれば、放射光の広がり具合に基づいて、板金が加工不良であるか否かを判定する。放射光の広がり具合は、レーザ切断したときの切断面の状態と相関があるので、放射光の広がり具合に基づいて板金の加工不良を判定すれば、加工不良を正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、レーザ切断するときの加工不良を正確に判定して、加工不良の誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るレーザ加工機の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るレーザ加工機に備えられたカメラで撮像された撮像画像の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、加工不良がない場合の放射光の広がり具合の変化を撮像した画像の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、加工不良がない場合の板金の切断面の状態の一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、加工不良がある場合の放射光の広がり具合の変化を撮像した画像の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、加工不良がある場合の板金の切断面の状態の一例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、加工不良がある場合の板金の切断面に形成された条痕の深さと周期を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るレーザ加工機による加工不良検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るレーザ加工機による角度の測定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るレーザ加工機によって測定された角度の分布を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るレーザ加工機によって測定された放射光が広がる幅を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
[レーザ加工機の構成]
以下、図面を参照し、第1実施形態に係るレーザ加工機及びその加工不良検出方法について説明する。
図1は、レーザ加工機の構成を示す図である。
図1に示すように、レーザ加工機1は、加工ヘッド3と、カメラ5と、制御部7と、レーザ発振器9と、照明装置11とを備えている。レーザ加工機1は、レーザ発振器9からレーザビームを射出させて、金属製の板金Wに対してレーザ切断を行う装置である。
【0011】
レーザ加工機1は、板金Wにレーザビームを照射して切断するときに板金Wの加工点から放射される放射光を撮像するカメラ5と、カメラ5で撮像された放射光に基づいて板金Wの加工不良を検出する制御部7とを備えている。制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された放射光の広がり具合に基づいて、板金Wが加工不良であるか否かを判定する。
【0012】
加工ヘッド3は、レーザ発振器9に伝送ファイバを介して接続され、レーザ発振器9から射出されたレーザビームを板金Wに向けて照射する。加工ヘッド3の内部には、カメラ5と、バンドパスフィルタ13と、接眼レンズ15と、コリメートレンズ17、19と、ビームスプリッタ21と、ベンドミラー23と、集束レンズ25と、が設けられている。
【0013】
カメラ5は、加工ヘッド3の内部の上端に配置され、板金Wの加工点から放射される放射光を撮像する。板金Wにレーザビームが照射されて加工点から放射光が放射されると、接眼レンズ15とバンドパスフィルタ13とを介して放射光がカメラ5に入射する。このとき、バンドパスフィルタ13で特定の波長帯の光を透過させ、接眼レンズ15を上下方向に移動させてカメラ5の焦点を合わせている。こうして撮像された画像は、制御部7に出力される。
【0014】
図2は、カメラ5で撮像された撮像画像の一例を示す図である。
図2に示すように、カメラ5は、板金Wにレーザビームが照射された加工点を撮像しており、撮像画像には、照明装置11からの光を反射した板金Wと、板金Wがレーザビームで加熱されて高温になることで放射された放射光31とが撮像されている。
【0015】
放射光中心31Aは、レーザビームの中心に対応し、
図2の上方がレーザビームの進行方向であるので、放射光中心31Aよりも上側が放射光前方部31Bとなり、放射光中心31Aよりも下側が放射光後方部31Cとなる。
【0016】
放射光前方部31Bは、放射光中心31Aよりも進行方向に対して前方の部分であり、レーザビームの形状に対応して半円形をしており、その周囲にカーフ33が形成されている。
【0017】
放射光後方部31Cは、放射光中心31Aよりも進行方向に対して後方の部分であり、板金Wが加熱されて放射された放射光が、レーザビームの進行に伴って進行方向の後方に広がった部分である。
【0018】
制御部7は、カメラ5で撮像された放射光に基づいて板金Wの加工不良を検出する処理を実行する。具体的に、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された放射光の広がり具合に基づいて、板金Wが加工不良であるか否かを判定する。
【0019】
図3Aは、加工不良がない場合の放射光の広がり具合の変化を撮像した画像の一例を示す図であり、
図3Bは、加工不良がない場合の板金Wの切断面の状態の一例を示す図である。
図3Bは、板金Wが正常に切断されて、切断面の状態が滑らかである場合を示している。
図3Aは、
図3Bに示すように切断面の状態が滑らかな場合の連続する時刻t1~t6の複数フレームを示しており、レーザビームの進行方向は
図3Aの左から右の方向である。
【0020】
図3Aに示すように、放射光後方部31Cの広がり具合は、レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がることはなくほぼ一定となっている。また、時刻t1~t6の複数のフレームの間で、放射光後方部31Cの広がり具合は、変化せずに安定している。
【0021】
一方、
図4Aは、加工不良がある場合の放射光の広がり具合の変化を撮像した画像の一例を示す図であり、
図4Bは、加工不良がある場合の板金Wの切断面の状態の一例を示す図である。
図4Bは、板金Wが異常切断されて、切断面の状態が荒れている場合を示している。
図4Aは、
図4Bに示すように切断面の状態が荒れている場合の連続する時刻t1~t6の複数フレームを示しており、レーザビームの進行方向は
図4Aの左から右の方向である。
【0022】
図4Aに示すように、放射光後方部31Cの広がり具合は、進行方向に対して垂直方向に幅hだけ広がっている。この広がり幅hは、およそ137μmである。また、時刻t1~t6のフレームの間で、放射光後方部31Cの広がり具合は、広がり幅hだけ広がったり、広がり幅hから縮小したりを繰り返しており、その変動周期は904μmである。
【0023】
ここで、
図4Cは、
図4Bの切断面にできた条痕を計測した図である。
図4Cに示すように、条痕の深さは140μmであり、条痕周期は950μmである。放射光後方部31Cの広がり幅hは137μmで、変動周期は904μmなので、条痕の深さと広がり幅hはほぼ一致しており、条痕周期と広がり幅hの変動周期もほぼ一致している。このように切断面にできた条痕と広がり幅hとの間には相関関係があることが分かるので、放射光後方部31Cの広がり具合を測定することで、板金Wの切断面の加工不良を検出することができる。
【0024】
そこで、制御部7は、放射光の広がり具合の所定時間内における変化が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。例えば、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定し、所定時間内に測定された複数の角度から分散値を算出し、算出された分散値が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。尚、分散値は標準偏差であってもよいし、その他に単位時間当たりの変化率や前後フレーム間の差分などであってもよい。さらに、角度や分散値を学習データとする機械学習アルゴリズムを用いて加工不良を判定してもよい。
【0025】
制御部7は、メモリと、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリと各種のインターフェースは、バスを介してプロセッサに接続されている。プロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行することにより、制御部7は、板金Wの加工不良を検出する加工不良検出処理を実行する。制御部7は、レーザ加工機1の全体を制御するNC(Numerical Control:数値制御)装置に設けられていてもよい。
【0026】
レーザ発振器9は、ファイバレーザ発振器又はYAGレーザ発振器などであり、レーザビームを発振して加工ヘッド3へ供給する。レーザ発振器9から供給されたレーザビームは、コリメートレンズ19で平行光(コリメート光)に変換され、ベンドミラー23で反射されて進行方向を90度折り曲げられ、集束レンズ25で集束されて板金Wに照射される。
【0027】
照明装置11は、複数の発光ダイオード(LED)で構成され、照明光を板金Wに照射する。照明装置11から照射された照明光は、コリメートレンズ17で平行光(コリメート光)に変換され、ビームスプリッタ21で反射されて進行方向を90度折り曲げられ、集束レンズ25を透過して板金Wに照射される。尚、照明装置11は備えていなくてもよい。
【0028】
[加工不良検出処理]
次に、第1実施形態に係るレーザ加工機1による加工不良検出処理を説明する。
図5は、加工不良検出処理の処理手順を示すフローチャートである。加工不良検出処理は、レーザ加工機1によるレーザ加工が開始されるとスタートする。
【0029】
図5に示すように、ステップS101において、制御部7は、カメラ5で撮像された画像を取得する。レーザ発振器9からレーザビームが射出されると、板金Wの加工点から放射される放射光をカメラ5で撮像する。制御部7は、カメラ5から出力された撮像画像を取得する。尚、撮像画像は、図示しないメモリに一旦格納され、制御部7がメモリから取得するようにしてもよい。
【0030】
ステップS103において、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定する。具体的に、第1実施形態では、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定する。
【0031】
具体的な角度の測定方法を、
図6を参照して説明する。
図6に示すように、制御部7は、取得した画像61を二値化して、二値化画像62に変換する。次に、制御部7は、二値化画像62から放射光中心31Aを検出し、レーザビームの進行方向に対して放射光中心31Aよりも後方側の輪郭63A、63Bを抽出する。制御部7は、抽出した輪郭63A、63Bに対して直線推定を行って直線64A、64Bを検出し、直線64A、64Bがレーザビームの進行方向に対して垂直な方向と成す角度θL、θRを測定する。この角度θL、θRが、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度となる。
【0032】
ステップS105において、制御部7は、ステップS103で測定された角度の分散値を算出する。具体的に、制御部7は、過去のNフレーム分の角度を取得して、所定時間内に測定された複数の角度から分散値を算出する。
【0033】
ステップS107において、制御部7は、ステップS105で算出された分散値が所定値以上であるか否かを判定する。加工不良がない場合に、放射光は、レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がることはなく、また変化せずに安定している。一方、加工不良がある場合に、放射光は、レーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がり、尚且つ広がり幅だけ広がったり、広がり幅から縮小したりを繰り返して安定しない。そのため、分散値を算出すると、加工不良がない場合には小さな値になり、加工不良がある場合には大きな値になる。
【0034】
例えば、
図7に示すように、ステップS103で測定された角度の分布を作成すると、加工不良がない良好切断の場合の角度分布71は、90度の近くに集中しているので、分散値が小さくなっていることが分かる。
【0035】
一方、加工不良である断面荒れが発生している場合の角度分布72は、90度の近くが多くなっているものの70度から110度にかけて広く分布しているので、分散値が大きくなっていることが分かる。さらに、加工不良であるバーニングが発生している場合の角度分布73は、分布が集中して大きくなることなく80度から120度にかけて広く分布しているので、分散値が大きくなっていることが分かる。
【0036】
このように加工不良の有無によって分散値が変化するので、予め実験やシミュレーションによって所定値を設定しておき、この所定値と分散値とを比較することによって、加工不良であるか否かを判定することができる。このようにしてステップS107において、分散値と所定値とを比較して分散値が所定値以上である場合には、加工不良があると判断してステップS109へ進み、所定値未満である場合には加工不良がないと判断してステップS117へ進む。
【0037】
ステップS109において、制御部7は、板金が加工不良であると判定された場合にレーザ加工を継続するとユーザが設定しているか否かを判定する。制御部7は、板金Wが加工不良であると判定された場合に、レーザ加工を継続するか、レーザ加工を停止するか、ユーザが選択できるように設定されている。加工不良があっても後処理で対応すればよいと考えるユーザはレーザ加工の継続を選択し、加工不良がある場合には直ちに加工を停止したいと考えるユーザはレーザ加工の停止を選択している。そのため、ユーザがレーザ加工を継続すると設定している場合にはステップS111へ進み、レーザ加工を継続せずに停止すると設定している場合にはステップS113へ進む。
【0038】
ステップS111において、制御部7は、加工不良であることを示す加工異常アラームを出力し、アラーム表示や警告音によって加工不良が発生していることをユーザに報知して加工を継続する。
【0039】
ステップS113において、制御部7は、NC装置に通知してレーザ加工機1によるレーザ加工を停止させる。ステップS115において、制御部7は、加工不良が発生したことを示す加工異常通知を出力し、加工不良によってレーザ加工が停止したことをユーザに報知する。加工異常通知が出力されると、第1実施形態に係る加工不良検出処理は終了する。
【0040】
ステップS117において、制御部7は、レーザ加工機1によるレーザ加工が終了したか否かを判定し、終了していない場合にはステップS101へ戻り、終了している場合には第1実施形態に係る加工不良検出処理は終了する。
【0041】
[変形例]
第1実施形態では、放射光が垂直方向に広がる角度を測定し、角度の分散値を算出して板金Wが加工不良であるか否かを判定する。しかし、分散値を算出せずに、放射光が垂直方向に広がる角度が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定することも可能である。
【0042】
すなわち、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定し、角度が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。この場合に、
図5のフローチャートでは、ステップS105の分散値を算出するステップを削除し、ステップS107は、角度が所定値以上であるか否かを判定するように変更すればよい。
【0043】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、第1実施形態に係るレーザ加工機1は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された放射光の広がり具合に基づいて、板金Wが加工不良であるか否かを判定する。放射光の広がり具合は、レーザ切断したときの切断面の状態と相関があるので、放射光の広がり具合に基づいて板金Wの加工不良を判定すれば、加工不良を正確に判定することができる。したがって、第1実施形態に係るレーザ加工機1によれば、レーザ切断するときの加工不良を正確に判定して、加工不良の誤検知を防止することができる。
【0044】
また、第1実施形態に係るレーザ加工機1は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定し、所定時間内に測定された複数の角度から分散値を算出し、算出された分散値が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。このように角度を測定することによって放射光の広がり具合を正確に測定することができ、分散値を算出することによって放射光が周期的に変化しても加工不良を正確に判定することができる。
【0045】
さらに、第1実施形態に係るレーザ加工機1は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定し、角度が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。このように角度を測定することによって放射光の広がり具合を正確に測定することができ、角度で加工不良を判定することによって容易に加工不良の判定を行うことができる。
【0046】
また、第1実施形態に係るレーザ加工機1は、板金Wが加工不良であると判定された場合に、レーザ加工を継続するか、レーザ加工を停止するか、ユーザが選択できるように設定されている。これにより、加工不良が発生した場合の対応を、ユーザの希望に応じて設定することができる。
【0047】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態に係るレーザ加工機及びその加工不良検出方法について、図面を参照して説明する。尚、第2実施形態に係るレーザ加工機1の構成は、
図1に示した第1実施形態の構成と同一なので詳細な説明は省略する。
【0048】
第1実施形態では、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる角度を、放射光の広がり具合として測定する。しかし、第2実施形態では、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅を、放射光の広がり具合として測定するようにしたことが第1実施形態と相違している。
【0049】
すなわち、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅を、放射光の広がり具合として測定し、所定時間内に測定された複数の幅から分散値を算出し、算出された分散値が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。
【0050】
図8に示すように、制御部7は、放射光中心31Aの位置におけるレーザビームの進行方向に対して垂直方向の幅L1と、放射光後方部31Cの位置におけるレーザビームの進行方向に対して垂直方向の幅L2とを測定する。
【0051】
制御部7は、測定された幅L1と幅L2との差分(L2-L1)を算出する。その結果、この差分が、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅Lとして測定され、放射光の広がり具合となる。こうして幅Lが測定されると、制御部7は、所定時間内に測定された複数の幅Lから分散値を算出し、算出した分散値が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。尚、幅Lの代わりに
図4Aに示す広がり幅hを用いてもよい。
【0052】
したがって、第2実施形態では、
図5に示すフローチャートのステップS103において、放射光の広がり具合として、放射光が垂直方向に広がる幅Lを算出するように変更すればよい。
【0053】
[変形例]
第2実施形態では、放射光が垂直方向に広がる幅Lを測定し、幅Lの分散値を算出して板金Wが加工不良であるか否かを判定する。しかし、分散値を算出せずに、幅Lが所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定することも可能である。
【0054】
すなわち、制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅を、放射光の広がり具合として測定し、幅が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。この場合に、
図5のフローチャートでは、ステップS105の分散値を算出するステップを削除し、ステップS107では、幅が所定値以上であるか否かを判定するように変更すればよい。
【0055】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、第2実施形態に係るレーザ加工機1は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅を、放射光の広がり具合として測定し、所定時間内に測定された複数の幅から分散値を算出し、算出された分散値が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。このように放射光が広がる幅を測定することによって放射光の広がり具合を正確に測定することができ、分散値を算出することによって放射光が周期的に変化しても加工不良を正確に判定することができる。
【0056】
また、第2実施形態に係るレーザ加工機1は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる幅を、放射光の広がり具合として測定し、幅が所定値以上である場合に、板金Wが加工不良であると判定する。このように幅を測定することによって放射光の広がり具合を正確に測定することができ、幅で加工不良を判定することによって容易に加工不良の判定を行うことができる。
【0057】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザ加工機
3 加工ヘッド
5 カメラ
7 制御部
9 レーザ発振器
11 照明装置
13 バンドパスフィルタ
15 接眼レンズ
17、19 コリメートレンズ
21 ビームスプリッタ
23 ベンドミラー
25 集束レンズ
31 放射光
31A 放射光中心
31B 放射光前方部
31C 放射光後方部
33 カーフ
61 画像
62 二値化画像
63A、63B 輪郭
64A、64B 直線
71、72、73 角度分布
h 広がり幅
L、L1、L2 幅
θL、θR 角度
【要約】
【課題】レーザ切断するときの加工不良を正確に判定して加工不良の誤検知を防止する。
【解決手段】レーザ加工機1は、板金Wにレーザビームを照射して切断するときに板金Wの加工点から放射される放射光を撮像するカメラ5と、カメラ5で撮像された放射光に基づいて板金Wの加工不良を検出する制御部7とを備える。制御部7は、放射光がレーザビームの進行方向に対して垂直方向に広がる広がり具合を測定し、測定された放射光の広がり具合に基づいて、板金Wが加工不良であるか否かを判定する。
【選択図】
図1