(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/015 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
A61B1/015 512
(21)【出願番号】P 2023506462
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010708
(87)【国際公開番号】W WO2022195740
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祐貴
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特許第4764417(JP,B2)
【文献】実開昭55-146103(JP,U)
【文献】米国特許第04852551(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記吸引チューブは、少なくともチューブ保持部に保持されている部分において、前記送水チューブと並行して前記ハンドルの内部を延在しており、
前記チューブ保持部は、前記平板部に対して垂直方向に延びる凸板からなる隔壁部を有しており、
前記隔壁部によって、前記吸引チューブと前記送水チューブとが隔てられていることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡に関し、更に詳しくは、体内に挿入されるシャフト、操作用のハンドルおよびカメラを備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、十二指腸内視鏡を介して胆管や膵管などの診断治療に使用される小型の内視鏡として、体内に挿入されるシャフト、操作用のハンドルおよびカメラを備えた内視鏡が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
内視鏡を構成するシャフトには、通常、吸引チャンネルを兼ねている鉗子チャンネルと、送水チャンネルとが形成されている。
また、内視鏡を構成するハンドルには、鉗子ポートと、送水ポートと、吸引ポートとが設けられている。
【0004】
ハンドルの鉗子ポートは、シャフトの鉗子チャンネルと連通している。
鉗子ポートから挿入される生検鉗子は、ハンドルの内部(鉗子ポートと鉗子チャンネルとの連通路)を経由してシャフトの鉗子チャンネルに挿通され、生体鉗子の先端部は、シャフトの先端における鉗子チャンネルの開口である鉗子口から体内に延出される。
【0005】
ハンドルの鉗子ポートは、通常、薬液注入ポートを兼ねている。
鉗子ポートから薬液を注入することにより、当該薬液は、ハンドルの内部(前記連通路)およびシャフトの鉗子チャンネルを流通し、鉗子口から流出されて体内に投与される。
【0006】
ハンドルの送水ポートは、シャフトの送水チャンネルと連通している。
具体的には、その基端部が送水ボトルに接続されている送水チューブが、送水ポートからハンドルの内部に挿入されて当該ハンドルの内部を延在し、送水チューブの先端部は、シャフトの送水チャンネルに接続されている。
【0007】
送水ボトル内の水は、送水チューブおよび送水チャンネルを流動し、シャフトの先端における送水チャンネルの開口である送水口から体内に流出される。これにより、シャフトの先端部およびその周囲が洗浄され、カメラレンズの曇りなどが解消される。
【0008】
ハンドルの吸引ポートは、シャフトの鉗子チャンネルおよび鉗子ポート(薬液注入ポート)に連通している。
具体的には、その基端部が吸引ポンプに接続されている吸引チューブが、吸引ポートからハンドルの内部に挿入されて当該ハンドルの内部を延在し、吸引チューブの先端部が、鉗子チャンネルと鉗子ポートとの連通路に接続されている。
【0009】
鉗子ポートを封鎖して吸引ポンプを作動させることにより、シャフトの先端部の周囲における患者の体液などは、鉗子口から鉗子チャンネルに流入され、鉗子チャンネルおよび吸引チューブを流動して、吸引ポートから流出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
吸引ポンプの作動中に、ハンドルの鉗子ポートから薬液を注入すると、注入した薬液は、前記連通路に接続された吸引チューブに吸引されてしまい、シャフトの鉗子チャンネルを流通させて鉗子口から流出させることができない。
【0012】
このような場合、鉗子ポートから薬液を注入する際に吸引ポンプを停止させたり、吸引ポートからハンドルの外部に延出して吸引ポンプに至る吸引チューブの流路を二方活栓や三方活栓などで閉じることが考えられる。
【0013】
しかしながら、薬液を注入する際に吸引ポンプを停止させるのは現実的ではない。
また、ハンドルを把持・操作しているオペレータが、ハンドルから延出している吸引チューブの流路を閉じる操作は煩雑である。
【0014】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、ハンドルを把持・操作しながら吸引チューブによる吸引流路の開閉操作を容易に行うことができ、吸引ポンプの作動中においても、ハンドルの鉗子ポートから注入される薬液を、シャフトの先端の鉗子口から確実に流出させることができる内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の内視鏡は、吸引チャンネルを兼ねている鉗子チャンネルおよび送水チャンネルが形成されたシャフトと、
前記シャフトの基端側に配置され、前記鉗子チャンネルに連通する鉗子ポート、前記送水チャンネルに連通する送水ポートおよび吸引ポートが形成されたハンドルと、
前記シャフトおよび前記ハンドルの内部に配置されたカメラと、
その基端部が吸引手段に接続され、前記吸引ポートから前記ハンドルの内部に挿入されて当該ハンドルの内部を延在し、その先端部が、前記鉗子チャンネルと前記鉗子ポートとの連通路に合流する吸引チューブと、
その基端部が送水手段に接続され、前記送水ポートから前記ハンドルの内部に挿入されて当該ハンドルの内部を延在するチューブであって、そのルーメンが前記送水チャンネルに連通する送水チューブとを有し、
前記ハンドルは、前記吸引チューブによる吸引流路を開閉するバルブ機構を備えていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の内視鏡によれば、吸引チューブの吸引流路を開閉操作するバルブ機構がハンドルに備えられているので、当該開閉操作をハンドルを把持した状態で容易に行うことができる。
【0017】
(2)本発明の内視鏡において、前記バルブ機構は、前記吸引チューブの外周面を押圧して前記吸引流路を閉塞することにより「閉」状態となることように構成されていることが好ましい。
【0018】
(3)上記(2)の内視鏡において、前記バルブ機構は、前記ハンドルの内部に配置されて、前記ハンドルの内部を延在する前記吸引チューブ(外周面を押圧すべき部分)を所定の位置に保持するチューブ保持部と、前記ハンドルの内部と外部とを連通するように、当該ハンドルに装着または形成されたシリンダ部と、前記シリンダ部の軸の回りを回動しながら当該軸方向に沿って移動する押圧部材とを備えてなり、
前記バルブ機構が「開」状態のときに、前記押圧部材の先端部は、前記シリンダ部の内部に位置し、前記バルブ機構が「閉」状態のときに、前記押圧部材の前記先端部が、前記シリンダ部の先端開口から前記ハンドルの内部に延出し、当該押圧部材の先端面が、前記チューブ保持部に保持されている前記吸引チューブの外周面を押圧するように構成されていることが好ましい。
【0019】
このような構成の内視鏡によれば、「開」状態にあるバルブ機構を構成する押圧部材を、シリンダ部の軸の回りを回動させながら、シリンダ部の軸方向に沿って移動させることにより、シリンダ部の内部に位置(待機)している押圧部材の先端部がシリンダ部の先端開口(ハンドルの内部側の開口)から延出し、当該押圧部材の先端面が、チューブ保持部に保持されている吸引チューブの外周面を押圧し、これにより、吸引チューブの吸引流路を閉塞することができる。
【0020】
(4)上記(3)の内視鏡において、前記押圧部材は、前記シリンダ部の基端開口(ハンドルの外部側の開口)から前記ハンドルの外部に延出している基端部を有する軸部と、
前記軸部の前記基端部に取り付けられ、前記押圧部材を回動操作するための操作レバーと、
前記軸部の外周面の一部を覆うように形成され、前記シリンダ部の内周面に対して摺動可能な外周面と、前記シリンダ部の内端面(基端側の内端面)に対して摺動可能な螺旋状の基端面とを有する部分外周部と、
前記先端部とが一体成形されてなり、
前記操作レバーによって前記軸部を回動操作することにより、前記シリンダ部の前記内端面に対して前記部分外周部の前記基端面が摺動し、これにより、前記押圧部材が、前記シリンダ部の軸の回りを回動しながら、当該軸方向に沿って移動することが好ましい。
【0021】
(5)上記(4)の内視鏡において、前記バルブ機構が「開」状態から「閉」状態に至る間に、前記押圧部材は、前記シリンダ部の前記軸の回りを実質的に90°回動するように構成されていることが好ましい。
【0022】
このような構成の内視鏡によれば、操作レバーによって、シリンダ部の軸の回りに押圧部材を90°回動させることで、バルブ機構を、「開」または「閉」の状態から、「閉」または「開」の状態とすることができる。
【0023】
(6)上記(3)~(5)の内視鏡において、前記押圧部材の前記先端部が円環状であることが好ましい。
【0024】
このような構成の内視鏡によれば、押圧部材の先端面による吸引チューブの外周面への押圧力を集中させることができるので、吸引チューブの吸引流路をより確実に閉塞させることができる。
【0025】
(7)上記(3)~(6)の内視鏡において、前記チューブ保持部は、前記吸引チューブを挟んで前記押圧部材の前記先端面と対向する平面を有する平板部と、前記平板部の両側に形成されたチューブ把持部とを有してなることが好ましい。
【0026】
このような構成の内視鏡によれば、平板部の両側に形成されたチューブ把持部によって吸引チューブ(外周面が押圧される部分)が把持され、押圧部材の先端面と平板部の平面とによって吸引チューブを挟み込むことにより、吸引チューブの吸引流路をより確実に閉塞させることができる。
【0027】
(8)上記(7)の内視鏡において、前記吸引チューブは、少なくともチューブ保持部に保持されている部分が、前記送水チューブと並行して前記ハンドルの内部を延在しており、
前記チューブ保持部は、前記平板部に対して垂直方向に延びる凸板からなる隔壁部を有しており、
前記隔壁部によって、前記吸引チューブと前記送水チューブとが隔てられていることが好ましい。
【0028】
このような構成の内視鏡によれば、押圧部材の先端面によって送水チューブの外周面が押圧されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の内視鏡によれば、吸引チューブの吸引流路の開閉操作を、ハンドルを把持した状態で容易に行うことができる。
これにより、吸引ポンプの作動中にハンドルの鉗子ポートから薬液を注入するときには、バルブ機構を「閉」状態にして、注入された薬液をシャフトの先端における鉗子口から確実に流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の内視鏡の実施形態の外観を示す説明図である。
【
図2】
図1に示した内視鏡のハンドルの内部を示す説明図である。
【
図3】
図1に示した内視鏡の先端部を示す部分拡大図(III部詳細図)である。
【
図4B】
図3のIVB-IVB断面図(シャフトの断面図)である。
【
図4C】
図3のIVC-IVC断面図(先端チップの断面図)である。
【
図4D】
図3のIVD-IVD断面図(中間部材の断面図)である。
【
図5】カメラヘッドの内部を模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図1に示した内視鏡の先端部(カメラの図示を省略)を示す斜視図である。
【
図6B】
図1に示した内視鏡の先端部(カメラの図示を省略)を示す斜視図である。
【
図7A】
図1に示した内視鏡を構成するカメラコネクタのスライド部材が基端位置にある状態を示す断面図である。
【
図7B】
図1に示した内視鏡を構成するカメラコネクタのスライド部材が先端位置にある状態を示す断面図である。
【
図8A】
図1に示した内視鏡を構成するカメラの先端が、先端チップの先端面より基端側の第1位置にある状態を示す斜視図である。
【
図8B】
図1に示した内視鏡を構成するカメラの先端が、先端チップの先端面より先端側の第2位置にある状態を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示した内視鏡において、薬液の流路(鉗子の通路)、送水のための流路および吸引のための流路を模式的に示すフロー図である。
【
図10A】バルブ機構が「開」状態であるときの操作レバーの位置を示す説明図である。
【
図10B】バルブ機構が「閉」状態であるときの操作レバーの位置を示す説明図である。
【
図11A】
図1に示した内視鏡のバルブ機構の動作状態を示す説明図である。
【
図11B】
図1に示した内視鏡のバルブ機構の動作状態を示す説明図である。
【
図11C】
図1に示した内視鏡のバルブ機構の動作状態を示す説明図である。
【
図12】バルブ機構を構成する押圧部材の斜視図である。
【
図13】バルブ機構を構成するチューブ保持部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態>
本発明の実施形態について説明する。
この実施形態の内視鏡100は、十二指腸内視鏡などの側視鏡の鉗子ルーメンに挿通されて、胆管または膵管における疾患を診断治療するため使用される。
この内視鏡100は、先端可撓部分10Aを有し、カメラチャンネル13、吸引チャンネルを兼ねている鉗子チャンネル17、2つの送水チャンネル141,142が形成されされているとともに、4つのワイヤルーメン151,152,153,154が形成されている樹脂製のシャフト10と;
シャフト10の基端側に配置され、回転操作部(操作ノブ251および操作ノブ252)を備え、カメラチャンネル13に連通するカメラポート23、鉗子チャンネル17に連通する鉗子ポート27、送水チャンネル141,142に連通する送水ポート24および吸引ポート26が形成されたハンドル20と;
シャフト10の先端側に配置され、シャフト10と同一の外径を有し、シャフト10のカメラチャンネル13、送水チャンネル141,142および鉗子チャンネル17の各々に連通して、その先端面35で開口するカメラチャンネル33、送水チャンネル341,342および鉗子チャンネル37が形成されている樹脂製の先端チップ30と;
シャフト10と先端チップ30との間に配置され、シャフト10と同一の外径を有する円板状であって、シャフト10のカメラチャンネル13、送水チャンネル141,142および鉗子チャンネル17の各々と、先端チップ30のカメラチャンネル33、送水チャンネル341,342および鉗子チャンネル37の各々との連通路43,441,442,47を確保するために、当該連通路43,441,442,47のすべてを取り囲むように形成された主貫通穴41と、シャフト10のワイヤルーメン151,152,153,154の形成位置に対応して形成された4つの副貫通穴421,422,423,424とを有する金属製の中間部材40と;
先端チップ30に埋設された、中間部材40の副貫通穴421,422,423,424の直径よりも大きな直径の先端大径部511,521,531,541を有し、副貫通穴421,422,423,424の各々を通って、シャフト10のワイヤルーメン151,152,153,154の各々に延在し、それぞれの後端が、ハンドル20の回転操作部(操作ノブ25または操作ノブ26)に固定されて引張操作可能である4本の操作用ワイヤ51,52,53,54と;
CMOSイメージセンサ611(撮像素子)を搭載するカメラヘッド61と、ケーブルチューブ62とにより構成され、複数本の光ファイバ65を内蔵し、カメラチャンネル13およびハンドル20の内部に挿通されることにより、シャフト10およびハンドル20に対して着脱可能に配置されるカメラ60と;
その基端部が吸引ポンプ96に接続され、吸引ポート26からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在し、その先端部が、鉗子チャンネル17と鉗子ポート27との連通路に合流する吸引チューブ265と;
その基端部が送水タンク94に接続され、送水ポート24からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在するチューブであって、そのルーメンが送水チャンネル141,142に連通する送水チューブ245とを有し、
ハンドル20は、吸引チューブ265による吸引流路を開閉するバルブ機構80を備えている。
【0032】
この内視鏡100は、体内に挿入されるシャフト10と、シャフト10の基端側に配置されたハンドル20と、吸引チューブ265と、送水チューブ245と、シャフト10の先端側に配置された先端チップ30と、シャフト10と先端チップ30の間に配置された中間部材40と、操作用ワイヤ51,52,53,54と、カメラ60と、バルブ機構80とを備えている。
【0033】
<シャフト10>
図4Bおよび
図6Aに示すように、内視鏡100を構成するシャフト10には、カメラチャンネル13と、送水チャンネル141,142と、鉗子チャンネル17とが形成されている。
また、シャフト10には、操作用ワイヤ51,52,53,54の挿通路であるワイヤルーメン151,152,153,154が形成されている。
【0034】
シャフト10の長さ(有効長)としては200~4800mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1900mmである。
【0035】
シャフト10の先端可撓部分10Aを有している。
ここに、「先端可撓部分」とは、操作用ワイヤの後端を引張操作することによって撓む(曲がる)ことのできるシャフトの先端部分をいう。
先端可撓部分10Aの長さとしては5~200mmであることが好ましく、好適な一例を示せば20mmである。
【0036】
シャフト10の外径は、通常2.8~4.1mmとされ、好ましくは3.2~3.7mm、好適な一例を示せば3.6mmである。
このような小径のシャフト10であれば、胆管や膵管に挿入して、当該管内の診断治療を行うことができる。
【0037】
カメラチャンネル13の直径は、通常0.75~1.2mmとされ、好ましくは0.95~1.1mm、好適な一例を示せば1.05mmである。
【0038】
鉗子チャンネル17には生体鉗子が挿通され、また、鉗子チャンネル17に薬液を流通させることができる。
また、鉗子チャンネル17は、吸引チャンネルを兼ねており、シャフト10の先端部の周囲の体液などを鉗子口から流入して流通させることができる。
【0039】
鉗子チャンネル17の直径は1.8~3.1mmであることが好ましく、更に好ましくは1.9~2.1mm、好適な一例を示せば2.0mmである。
鉗子チャンネル17の直径が1.8mm以上であることにより、従来の内視鏡によっては挿通することのできない外径が1.75mm程度の汎用の生体鉗子を挿通することが可能となり、鉗子チャンネル17の直径が1.9mm以上であることによれば、外径が1.85mm程度の汎用の生体鉗子を挿通することも可能となる。
【0040】
そして、このような汎用の生体鉗子を使用することにより、生検時に十分な組織を採取することができ、良好な臨床成績を得ることができる。
また、汎用の生体鉗子は、従来の内視鏡で挿通可能な外径4Fr(1.33mm)以下の鉗子と比較して格段に安価である。
【0041】
送水チャンネル141,142の直径は0.4~1.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.75mmである。
ワイヤルーメン151,152,153,154の直径は0.2~0.5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.33mmである。
【0042】
シャフト10は樹脂により構成されている。
シャフト10を構成する樹脂材料としては、ナイロン樹脂、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリオレフィン樹脂などを挙げることができ、これらのうち、PEBAX樹脂およびポリウレタン樹脂が好ましい。
【0043】
シャフト10の構成樹脂の硬度(ショアD硬度)は、90D以下であることが好ましく、好適な一例を示せば、先端可撓部分10Aを構成する樹脂の硬度が25Dとされ、先端可撓部分10A以外の部分を構成する樹脂の硬度が30Dとされる。
【0044】
<ハンドル20>
図1および
図2に示すように、シャフト10の基端側にはハンドル20が配置されている。内視鏡100を構成するハンドル20は、グリップ21と、回転操作部として2つの操作ノブ251,252とを備えてなる。
【0045】
ハンドル20には、カメラチャンネル13に連通するカメラポート23と、鉗子チャンネル17に連通する鉗子ポート27と、送水チャンネル141,142に連通する送水ポート24と、鉗子チャンネル17に連通する吸引ポート26とが設けられている。
【0046】
カメラポート23には、カメラコネクタ70が装着されている。
鉗子ポート27には、鉗子挿入ポート91と薬液注入ポート93とを有するYコネクタ90が装着されている。
【0047】
図2に示すように、ハンドル20の内部には、第1チャンバ277と第2チャンバ247とが配置されている。
第1チャンバ277は、シャフト10の鉗子チャンネル17に連通している。
第2チャンバ247は、シャフト10の送水チャンネル141,142に連通している。
【0048】
図2において、275は鉗子チューブであり、鉗子チューブ275によって鉗子ポート27と第1チャンバ277とが連通されている。
これにより、ハンドル20の鉗子ポート27は、鉗子チューブ275、第1チャンバ277を介して、シャフト10の鉗子チャンネル17に連通している。
【0049】
図2において、245は送水チューブであり、その基端部は、図示しない送水タンクに接続されている。送水チューブ245は、送水ポート24からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在し、その先端部は第2チャンバ247に接続されている。これにより、送水チューブ245のルーメンは、送水チャンネル141,142に連通している。
【0050】
図2において、265は吸引チューブであり、その基端部は、図示しない吸引ポンプに接続されている。吸引チューブ265は、吸引ポート26からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在し、その先端部は第1チャンバ277に接続されている。これにより、吸引チューブ265のルーメンは、鉗子チャンネル17および鉗子ポート27に連通している。
【0051】
図2において、80は、吸引チューブ265による吸引流路を開閉するバルブ機構であり、その詳細については後述する。
【0052】
<先端チップ30>
シャフト10の先端側には先端チップ30が配置されている。
図4A、
図4Cおよび
図6Bに示すように、内視鏡100を構成する先端チップ30には、カメラチャンネル33と、送水チャンネル341,342と、鉗子チャンネル37とが形成されている。
【0053】
カメラチャンネル33は、連通路43を介して、シャフト10のカメラチャンネル13と連通している。カメラチャンネル33の直径は、これと連通するカメラチャンネル13の直径と同一である。
送水チャンネル341,342は、それぞれ、連通路441,442を介して、シャフト10の送水チャンネル141,142と連通している。送水チャンネル341,342の直径は、これと連通する送水チャンネル141,142の直径と同一である。
鉗子チャンネル37は、連通路47を介して、シャフト10の鉗子チャンネル17と連通している。鉗子チャンネル37の直径は、これと連通する鉗子チャンネル17の直径と同一である。
【0054】
先端チップ30の長さとしては1~30mmであることが好ましく、好適な一例を示せば3mmである。
先端チップ30の外径は、シャフト10の外径と同一である。
【0055】
先端チップ30は樹脂により構成されている。
先端チップ30を構成する樹脂材料としては、シャフト10を構成する樹脂として例示したものと同様の樹脂を挙げることができ、それらのうち、PEBAX樹脂およびポリウレタン樹脂が好ましい。
体内組織を傷つけないために、先端チップ30は、低硬度の樹脂材料により構成される。先端チップ30の構成樹脂の硬度(ショアD硬度)は72D以下であることが好ましく、好適な一例を示せば25Dとされる。
【0056】
<中間部材40>
シャフト10と先端チップ30との間には、円板状の中間部材40が配置されている。
内視鏡100を構成する中間部材40は、操作用ワイヤ51,52,53,54の各々の先端をシャフト10の先端に固定する(後端の引張操作時に抜け止めする)ための部材である。
【0057】
図4Dおよび
図6Bに示すように、中間部材40には、連通路43と、連通路441,442および連通路47のすべてを取り囲む1つの主貫通穴41が形成されている。
【0058】
ここに、連通路43は、シャフト10のカメラチャンネル13と、先端チップ30のカメラチャンネル33とを連通するために、シャフト10および/または先端チップ30の構成樹脂130により区画形成された通路(カメラチャンネル)であり、連通路43の直径は、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33の直径と同一である。
【0059】
連通路441,442は、シャフト10の送水チャンネル141,142の各々と、先端チップ30の送水チャンネル341,342の各々とを連通するために、シャフト10および/または先端チップ30の構成樹脂130により区画形成された通路(送水チャンネル)であり、連通路441,442の直径は、送水チャンネル141,142および送水チャンネル341,342の直径と同一である。
【0060】
連通路47は、シャフト10の鉗子チャンネル17と、先端チップ30の鉗子チャンネル37とを連通するために、シャフト10および/または先端チップ30の構成樹脂130により区画形成された通路(鉗子チャンネル)であり、連通路47の直径は、鉗子チャンネル17および鉗子チャンネル37の直径と同一である。
【0061】
図4Dに示すように、中間部材40には、シャフト10のワイヤルーメン151,152,153,154の形成位置に対応して4つの副貫通穴421,422,423,424が形成されている。副貫通穴421,422,423,424は、操作用ワイヤ51,52,53,54の挿通路となる。
副貫通穴421,422,423,424は円形の穴であり、それらの直径は、挿通される操作用ワイヤ51,52,53,54の直径より大きく、挿通を規制すべき先端大径部511,521,531,541の直径より小さく調整される。
副貫通穴の直径としては0.13~2.5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.35mmである。
【0062】
中間部材40の厚さしては0.05~3mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.15mmである。
中間部材40の厚さが過小であると、操作用ワイヤ51,52,53,54の引張操作に伴う機械的衝撃を受けて、中間部材40が破損してしまうおそれがある。
他方、この厚さが過大であると、中間部材40自体が撓みにくいため、先端可撓部分10Aを撓ませにくくなるおそれがある。
【0063】
中間部材40の外径は、シャフト10および先端チップ30の外径と同一であり、これにより、シャフト10の外周面、中間部材40の外周面および先端チップ30の外周面は面一となり、シャフト10と先端チップ30との間から、中間部材40が突き出て、そのエッジが露出するようなことはなく、そのようなエッジによって体内組織などを傷付けることはない。
【0064】
中間部材40は金属またはセラミックスにより構成され、金属から構成されていることが好ましい。
中間部材40を構成する金属材料としては、ステンレス銅、白金、金、銅、ニッケル、チタン、タンタルなどを挙げることができ、それらのうち、ステンレス銅が好ましい。
【0065】
本実施形態の内視鏡100においては、中間部材40の主貫通穴41の内側であって、連通路43,441,442,47の各々の外側の領域(連通路を除いた主貫通穴41に囲まれた領域)において、シャフト10と先端チップ30とが直接接合(両者の構成樹脂どうしが溶着)されている。これにより、中間部材40は、主貫通穴41の内側における樹脂によっても固着され、当該中間部材40は、シャフト10および先端チップ30に対して強固に固着される。
また、部分的ではあるが、シャフト10と先端チップ30とが直接接合されていることにより、シャフト10に対する先端チップ30の固着力も十分に高いものとなる。
【0066】
ここに、シャフト10の構成樹脂と先端チップ30とが直接接合される前記領域の面積を(S)とし、シャフト10の断面積を(S0 )とすると、(S)/(S0 )の値は0.1以上であることが好ましく、更に好ましくは0.3~0.6である。
【0067】
<操作用ワイヤ51,52,53,54>
図4Bおよび
図6Aに示すように、シャフト10のワイヤルーメン151,152,153,154の各々には、操作用ワイヤ51,52,53,54が延在している。
【0068】
図6Aおよび
図6Bに示すように、操作用ワイヤ51,52,53,54の各々の先端は、先端大径部511,521,531,541となっている。
先端大径部511,521,531,541は、中間部材40の副貫通穴421,422,423,424の直径よりも大きな直径を有する球状または部分球状であり、副貫通穴421,422,423,424を通過することができない。
先端大径部511,521,531,541の直径としては、0.2~3.5mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.4mmである。
操作用ワイヤ51,52,53,54(先端大径部以外の部分)の直径としては、0.1~2.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.25mmである。
【0069】
操作用ワイヤ51,52は、各々の先端大径部511,521が先端チップ30に埋設された状態で保持され、先端大径部511,521より基端側のワイヤ部分は、中間部材40の副貫通穴421,422を通って、シャフト10のワイヤルーメン151,152に延在している。操作用ワイヤ51,52の基端は、それぞれ、ハンドル20の操作ノブ25に固定されている。
【0070】
操作ノブ25を一方向に回転して操作用ワイヤ51の基端を引張操作することにより、操作用ワイヤ51がワイヤルーメン151を基端方向に移動する。このとき、先端大径部511は中間部材40の副貫通穴421に引っ掛かって基端方向への移動が規制されるので、シャフト10の先端可撓部分10Aが、
図4Aの矢印A1に示す方向に撓み、内視鏡100(先端チップ30)の先端が同方向に偏向する。
操作ノブ25を他方向に回転して操作用ワイヤ52の基端を引張操作することにより、操作用ワイヤ52がワイヤルーメン152を基端方向に移動する。このとき、先端大径部521は中間部材40の副貫通穴422に引っ掛かって基端方向への移動が規制されるので、シャフト10の先端可撓部分10Aが、
図4Aの矢印A2に示す方向に撓み、内視鏡100(先端チップ30)の先端が同方向に偏向する。
【0071】
操作用ワイヤ53,54は、各々の先端大径部531,541が先端チップ30に埋設された状態で保持され、先端大径部531,541より基端側のワイヤ部分は、中間部材40の副貫通穴423,424を通って、シャフト10のワイヤルーメン153,154に延在している。操作用ワイヤ53,54の基端は、それぞれ、ハンドル20の操作ノブ26に固定されている。
【0072】
操作ノブ26を一方向に回転して操作用ワイヤ53の基端を引張操作することにより、操作用ワイヤ53がワイヤルーメン153を基端方向に移動する。このとき、先端大径部531は中間部材40の副貫通穴423に引っ掛かって基端方向への移動が規制されるので、シャフト10の先端可撓部分10Aが、
図4Aの矢印A3に示す方向に撓み、内視鏡100(先端チップ30)の先端が同方向に偏向する。
操作ノブ26を他方向に回転して操作用ワイヤ54の基端を引張操作することにより、操作用ワイヤ54がワイヤルーメン154を基端方向に移動する。このとき、先端大径部541は中間部材40の副貫通穴424に引っ掛かって基端方向への移動が規制されるので、シャフト10の先端可撓部分10Aが、
図4Aの矢印A4に示す方向に撓み、内視鏡100(先端チップ30)の先端が同方向に偏向する。
【0073】
上記のように、操作用ワイヤ51,52,53,54の後端を引張操作したときには、先端大径部511,521,531,541が中間部材40に形成された副貫通穴421,422,423,424に引っ掛かって、操作用ワイヤ51,52,53,54の先端がシャフト10の先端に固定される(抜け止めされる)ことにより、シャフト10の先端可撓部分10Aを所期の方向(矢印A1~A4に示す方向)に撓ませることができる。
もし、シャフトと先端チップとの間に中間部材を配置しないと、操作用ワイヤの基端を引張操作したときに、操作用ワイヤの先端(先端大径部)をシャフトの先端に対して十分に固定(抜け止め)することができず、先端大径部がワイヤルーメンを押し広げながら基端方向に移動することがあり、その場合には、先端可撓部分を撓ませることができなくなる。
【0074】
操作用ワイヤ51,52,53,54の構成材料としては特に限定されるものでなく、先端偏向操作な従来公知の医療機器に使用されている操作用ワイヤの構成材料と同一の材料を使用することができる。
【0075】
<カメラ60>
内視鏡100を構成するカメラ60は、CMOSイメージセンサ611を搭載するカメラヘッド61と、CMOSイメージセンサ611の伝送ケーブルを内包するケーブルチューブ62とにより構成されている。
【0076】
図5に示すように、カメラ60には、CMOSイメージセンサ611を取り囲むようにして複数本(図示の例では24本)の光ファイバ65が内蔵されている。
これにより、光ファイバを配置するためのチャンネルを別途形成する必要がなく、シャフト10の小径化、装置の小型化を十分に図ることができる。
また、内視鏡100を構成するカメラ60は、シャフト10に対して着脱可能に配置されている(シャフト10に固定されていない)ので、シャフト10の先端可撓部分10Aが曲げられるときに、カメラチャンネル13内をカメラ60が軸方向に移動することで、カメラ60の内部に位置する光ファイバ65への負荷を緩和することができる。
【0077】
カメラヘッド61の外径としては0.7~1.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.0mmである。ケーブルチューブ62の外径は、カメラヘッド61の外径と実質的に同一である。
【0078】
カメラ60は、シャフト10および先端チップ30のカメラチャンネル(カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33)に配置され、ケーブルチューブ62の基端部分は、ハンドル20のカメラポート23から外部に延出し、ケーブルチューブの基端は制御装置に接続される。
【0079】
カメラ60のケーブルチューブ62には、カメラコネクタ70が取付けられている。
このカメラコネクタ70は、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33にカメラ60が適正に配置されているときに、ハンドル20のカメラポート23に装着される。
すなわち、カメラポート23にカメラコネクタ70を装着することにより、カメラ60は、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33に適正に配置される。
カメラコネクタ70の取付け位置としては、カメラ60の先端から300~5000mmとされ、好適な一例としては、カメラ60の先端から2100mmである。
【0080】
本実施形態の内視鏡100において、カメラ60は、ハンドル20およびシャフト10から分離可能である。
すなわち、カメラポート23からカメラコネクタ70を取り外し、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33に配置されているカメラ60を、カメラコネクタ70とともに、ハンドル20のカメラポート23から抜去することができる。
【0081】
また、一旦分離したカメラ60を、カメラヘッド61を先頭にして、ハンドル20のカメラポート23から、ハンドル20の内部およびシャフト10のカメラチャンネル13に挿入し、カメラポート23にカメラコネクタ70を装着することにより、当該カメラ60を内視鏡100の構成部品として再び組み込むことができる。
【0082】
カメラコネクタ70は、カメラポート23に装着されているときに、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33に配置されているカメラ60の先端が、カメラチャンネル33が開口する先端チップ30の先端面35よりも基端側にある第1位置(
図8Aに示したようなカメラ60の先端位置)と、先端面35よりも先端側にある第2位置(
図8Bに示したようなカメラ60の先端位置)との間で変位するよう、カメラチャンネル13およびカメラチャンネル33に対してカメラ60を往復移動させるカメラ位置調整機構を有している。
【0083】
ここに、第1位置から第2位置までの距離(位置調整機構によるカメラ60の先端の移動距離)としては2~100mmであることが好ましく、好適な一例を示せば30mmである。
また、先端チップ30の先端面35から第1位置までの距離は1.5~20mmであることが好ましく、先端面35から第2位置までの距離は0.5~80mmであることが好ましい。
【0084】
本実施形態の内視鏡100において、カメラコネクタ70の有するカメラ位置調整機構は、送りねじを利用してカメラ60を往復移動させる機構である。
具体的には、カメラポート23に装着され、軸方向に沿って延びるガイド溝(図示せず)が内周面に形成されているとともに、軸方向に沿って延びるガイド孔713が周壁に形成されているコネクタケース71と;
コネクタケース71の内部に延在して、その一部が当該コネクタケース71の基端側に延出し、その基端部分に雄ねじ部722が形成され、カメラ60のケーブルチューブ62が、その内部に挿通された状態で接着固定されているシャフト部721と、シャフト部721の先端部分を取り囲むようにして当該シャフト部721と一体的に形成され、コネクタケース71のガイド溝に案内される凸条部(図示せず)が外周面に形成されているとともに、ガイド孔713に案内される突起部725が外周側に形成されているガイド部723とからなり、コネクタケース71に対してスライド可能なスライド部材72と;
コネクタケース71の基端側に位置して軸方向の移動が規制され、スライド部材72のシャフト部721の雄ねじ部722に螺合する雌ねじ部731を有する回転摘み73とを備え、
回転摘み73を一方向に回転して、スライド部材72を基端位置から先端位置までスライドさせることにより、カメラ60の先端を第1位置(
図8Aに示したようなカメラ60の先端位置)から第2位置(
図8Bに示したようなカメラ60の先端位置)まで移動させ、回転摘み73を他方向に回転して、スライド部材72を先端位置から基端位置までスライドさせることにより、カメラ60の先端を第2位置から第1位置に移動させる機構である。
【0085】
ここに、「基端位置」は、
図7Aに示すように、スライド部材72がそれより基端側に移動できない位置であり、「先端位置」は、
図7Bに示すように、スライド部材72がそれより先端側に移動できない位置である。
【0086】
カメラ位置調整機構は、コネクタケース71と、スライド部材72と、回転摘み73とにより構成されている。
【0087】
コネクタケース71は、後述するポート側コネクタを介してカメラポート23に装着されるカメラコネクタ70の構成部材であり、アーチ状部分を有する筒状体からなる。
コネクタケース71の内周面には、軸方向に沿って延びるガイド溝が形成されているとともに、アーチ状部分の周壁には、軸方向に沿って延びるガイド孔713が形成されている。
【0088】
スライド部材72は、シャフト部721と、このシャフト部721の先端部分を取り囲むようにして当該シャフト部721と一体的に形成されたガイド部723とからなる。
【0089】
スライド部材72のシャフト部721はコネクタケース71の内部に延在し、シャフト部721の一部は、コネクタケース71の基端面711に形成された開口から基端側に延出している。
シャフト部721の基端部分には雄ねじ部722が形成されている。
図7Aおよび
図7Bに示すように、シャフト部721の内部には、カメラ60のケーブルチューブ62が挿通された状態で接着固定されている。
【0090】
スライド部材72のガイド部723は、コネクタケース71の形状に合わせてアーチ状部分を有し、シャフト部721の先端部分を取り囲むようにして当該シャフト部721と一体的に形成されている。
ガイド部723の外周面には、コネクタケース71のガイド溝に案内される凸条部が形成されている。
また、ガイド部723のアーチ状部分の外周側には、コネクタケース71のガイド孔713に案内される突起部725が形成されている。
【0091】
回転摘み73は、コネクタケース71の基端側に配置されている。
回転摘み73の内周側には、スライド部材72のシャフト部721の雄ねじ部722に螺合する雌ねじ部731が形成されている。
回転摘み73は、コネクタケース71に対する軸方向の移動が規制されており、回転摘み73を回転することにより、コネクタケース71に対してスライド部材72がスライドする。
また、回転摘み73を回転させてスライド部材72がスライドすることにより、シャフト部721の内部に接着固定されているケーブルチューブ62も、コネクタケース71に対して軸方向に移動することになる。
【0092】
上記のような構成のカメラ位置調整機構によれば、回転摘み73を一方向に回転して、スライド部材72を基端位置(
図7Aに示した位置)から先端位置(
図7Bに示した位置)までスライドさせることにより、カメラ60の先端を第1位置(
図8Aに示したようなカメラ60の先端位置)から第2位置(
図8Bに示したようなカメラ60の先端位置)まで移動させ、回転摘み73を他方向に回転して、スライド部材72を先端位置から基端位置までスライドさせることにより、カメラ60の先端を第2位置から第1位置に移動させることができる。
【0093】
<バルブ機構80>
図9は、本実施形態の内視鏡100における薬液の流路(鉗子の通路)、送水のための流路および吸引のための吸引流路を模式的に示すフロー図である。
ハンドル20には、鉗子ポート27と、送水ポート24と、吸引ポート26とが設けられている。
【0094】
ハンドル20の鉗子ポート27には、鉗子挿入ポート91および薬液注入ポート93を備えたYコネクタ90が接続されている。95は、鉗子挿入ポート91の開閉バルブである。
【0095】
Yコネクタ90の開閉バルブ95を開いた状態で、鉗子挿入ポート91から鉗子を挿入することにより、ハンドル20の内部(鉗子チューブ275,第1チャンバ277)およびシャフト10の鉗子チャンネル17に当該鉗子を挿通させ、当該鉗子の先端部を鉗子口(鉗子チャンネルの先端開口)から延出させることができる。
【0096】
また、Yコネクタ90の開閉バルブ95を閉じた状態で、薬液注入ポート93から薬液を注入することにより、ハンドル20の内部(鉗子チューブ275,第1チャンバ277)およびシャフト10の鉗子チャンネル17に当該薬液を流通させ、鉗子口から流出させる(投与する)ことができる。
【0097】
その基端部が送水タンク94に接続されている送水チューブ245は、送水ポート24からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在し、送水チューブ245のルーメンは、第2チャンバ247を介して、シャフト10の送水チャンネル141,142と連通している。これにより、送水タンク94内の水を送水口から流出させることができる。
【0098】
その基端部が吸引ポンプ96に接続されている吸引チューブ265は、吸引ポート26からハンドル20の内部に挿入されて当該ハンドル20の内部を延在し、吸引チューブ265の先端部は、第1チャンバ277に接続されることによって、鉗子チャンネル17と鉗子ポート27との連通路に合流している。これにより、吸引ポンプ96を作動させることで、患者の体液などを鉗子口(吸引口)から吸引し、鉗子チャンネル17および吸引チューブ265を通して、体外に排出することができる。
【0099】
本実施形態の内視鏡100では、この吸引チューブ265のルーメンによる吸引流路を開閉するバルブ機構80がハンドル20に設けられている点に特徴がある。
【0100】
バルブ機構80が設けられていることによれば、吸引ポンプ96の作動中に薬液を投与(Yコネクタ90の薬液注入ポート93から薬液を注入する)ときには、バルブ機構80によって吸引チューブ265の吸引流路を閉じることで、鉗子チューブ275を流通している薬液が吸引チューブ265に吸引されることを防止することができ、当該薬液を鉗子チャンネル17に流通させて鉗子口から流出させる(投与する)ことができる。
そして、薬液の投与後に吸引チューブ265の吸引流路を開くことで、患者の体液などの吸引、体外への排出操作を直ちに再開することができる。
【0101】
また、バルブ機構80がハンドル20に設けられていることにより、吸引チューブ265の吸引流路の開閉操作を、ハンドル20を把持した状態で容易に行うことができる。
そのようなバルブ機構をハンドルの外部(吸引ポートと吸引ポンプとの間における吸引チューブ)に設けた場合には、片手でハンドルを把持(操作)しながら、もう片方の手で開閉操作を行うことになるので、当該開閉操作はきわめて困難となる。
【0102】
【0103】
バルブ機構80は、チューブ保持部81とシリンダ部83と押圧部材85とにより構成されている。
【0104】
バルブ機構80を構成するチューブ保持部81は、ハンドル20の内部を延在する吸引チューブ265(外周面を押圧すべき部分)を所定の位置に保持するためにハンドル20の内部に配置されている。
チューブ保持部81は、平板部811と、チューブ把持部813と、隔壁部(8132,8134)とを有している。
平板部811は、後述する押圧部材85の先端面と対向する平面を有している。
チューブ把持部813は、平板部811の両側において当該平板部811に対して垂直方向に延びる凸板8131~8134からなる。凸板8131と凸板8132との間、および、凸板8133と凸板8134との間に吸引チューブ265を挿通させることにより、当該吸引チューブ265を保持(挟持)している。
また、チューブ把持部813を構成する凸板8132と凸板8134とにより隔壁部が構成されている。この隔壁部(8132,8134)により、吸引チューブ265と、これと並行して延在している送水チューブ245とを隔離することができ、送水チューブ245の外周面が押圧される(水の流路が閉塞される)ことを防止することができる。
【0105】
バルブ機構80を構成するシリンダ部83は、ハンドル20の内部と外部とを連通するように、当該ハンドル20に形成されている。
シリンダ部83には、後述する押圧部材85の軸部851が挿通される基端開口831が形成されている。
【0106】
バルブ機構80を構成する押圧部材85は、シリンダ部83の軸の回りを回動しながら、その軸方向に沿って、シリンダ部83の内部を移動する。
図12に示すように、押圧部材85は、軸部851と、操作レバー853と、部分外周部855と、先端部857とが一体成形されてなる。
【0107】
軸部851の基端部は、シリンダ部83の基端開口831からハンドル20の外部に延出しており、軸部851の基端部には、押圧部材85を回動操作するための操作レバー853が取り付けられている。
【0108】
押圧部材85の部分外周部855は、軸部851の外周面の円周方向の一部(0°~90°および180°~270°)を覆うように形成され、シリンダ部83の内周面に対して摺動可能な外周面8551と、シリンダ部83の内端面833に対して摺動可能な螺旋状の基端面8553とを有している。
【0109】
図12に示すように、押圧部材85の先端部857は円環状である。このような円環状の先端部857によれば、吸引チューブ265の外周面への押圧面積が小さくなって押圧力を集中させることができるので、吸引チューブ265の吸引流路をより確実に閉塞させることができる。
【0110】
図10A(
図11A)に示したような「開」状態から、操作レバー853によって軸部851を回動操作することにより、シリンダ部83の内端面833に対して部分外周部855の基端面8553が摺動し、これに伴って、
図11Bに示すように、押圧部材85が、シリンダ部83の軸の回りを回動しながら当該軸方向に沿って移動し、シリンダ部83の内部に位置(待機)していた押圧部材85の先端部857がシリンダ部83の先端開口835からハンドル20の内部に延出し、押圧部材85の先端面がチューブ把持部813に保持されている吸引チューブの外周面を押圧する。
そして、
図10Bに示す位置まで操作レバー853を回動操作したときには、
図11Cに示すように、押圧部材85の先端面と平板部811とに挟まれることによって吸引チューブ265の外周面が十分に押圧されて吸引流路が完全に閉塞された「閉」状態となる。
【0111】
本実施形態の内視鏡100によれば、吸引チューブ265の吸引流路を開閉操作するためのバルブ機構80がハンドル20に備えられているので、吸引チューブ265による吸引流路の開閉操作を、ハンドル20を把持した状態で操作レバー853を回動操作することにより容易に行うことができる。
これにより、吸引ポンプの作動中にハンドル20の鉗子ポート27から薬液を注入するときには、バルブ機構80を「閉」状態にして、注入された薬液をシャフト10の先端における鉗子口から確実に流出させることができる。
【0112】
また、凸板8131~8134から構成されるチューブ把持部813により、吸引チューブ265(外周面を押圧すべき部分)を所定の位置に保持することができる。
また、凸板8132および凸板8134から構成されるる隔壁部により、吸引チューブ265と並行して延在している送水チューブ245の外周面が押圧される(送水のための流路が閉塞される)ことを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0113】
100 内視鏡
10 シャフト
10A 先端可撓部分
13 カメラチャンネル
130 シャフトおよび/または先端チップの構成樹脂
151,152,153,154 ワイヤルーメン
141,142 送水チャンネル
17 鉗子チャンネル(吸引チャンネル)
20 ハンドル
21 グリップ
23 カメラポート
24 送水ポート
245 送水チューブ
247 第2チャンバ
251,252 操作ノブ
26 吸引ポート
265 吸引チューブ
27 鉗子ポート
275 鉗子チューブ
277 第1チャンバ
30 先端チップ
35 先端チップの先端面
33 カメラチャンネル
341,342 送水チャンネル
37 鉗子チャンネル(吸引チャンネル)
40 中間部材
41 主貫通穴
421,422,423,424 副貫通穴
43,441,442,47 連通路
51,52,53,54 操作用ワイヤ
511,521,531,541 操作用ワイヤの先端大径部
60 カメラ
61 カメラヘッド
611 CMOSイメージセンサ
62 ケーブルチューブ
65 光ファイバ
70 カメラコネクタ
71 コネクタケース
711 基端面
713 ガイド孔
72 スライド部材
721 シャフト部
722 雄ねじ部
723 ガイド部
725 突起部
73 回転摘み
731 雌ねじ部
80 バルブ機構
81 チューブ保持部
811 平板部
813 チューブ把持部
8131~8134 凸板
83 シリンダ部
831 基端開口
833 内端面
835 先端開口
85 押圧部材
851 軸部
853 操作レバー
855 部分外周部
8551 部分外周部の外周面
8553 部分外周部の基端面
857 先端部
90 Yコネクタ
91 鉗子挿入ポート
93 薬液注入ポート
94 送水タンク
95 鉗子挿入ポートの開閉バルブ
96 吸引ポンプ