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特許7612834他車挙動予測方法、他車挙動予測装置及び運転支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】他車挙動予測方法、他車挙動予測装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250106BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023508130
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2021000235
(87)【国際公開番号】W WO2022200826
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】南里 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160032(JP,A)
【文献】特開2020-185968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周囲の他車両の挙動を予測する他車挙動予測方法であって、
自車両の走行経路を算出し、
前記自車両の走行経路上且つ、前記自車両から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、
前記交差点の手前において、前記自車両周囲の他車両の位置を検出し、
前記自車両の走行経路が前記交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両が存在する場合に、
前記自車両が前記交差点を進行する際に通過する自車通過領域と、前記第1の対向車両が前記交差点を進行する際に通過すると予測される他車通過領域を算出し、
前記自車通過領域と前記他車通過領域との間隔を算出し、
前記第1の対向車両と前記交差点との距離を算出し、
前記間隔及び前記距離に基づいて、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率を予測する
ことを特徴とする他車挙動予測方法。
【請求項2】
前記間隔が予め設定された間隔の所定値未満且つ、前記距離が予め設定された距離の所定値未満である場合に、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率が、前記自車両が前記第1の対向車両よりも先に前記交差点を進行する確率よりも高いと予測する
ことを特徴とする請求項1に記載の他車挙動予測方法。
【請求項3】
前記自車両の走行経路が前記交差点を右折又は左折する前の道路上に、前記交差点に接近する第2の対向車両が存在しない場合に、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点に進行する確率を加算する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の他車挙動予測方法。
【請求項4】
前記自車両の走行経路が前記交差点を右折又は左折する前の道路上に、前記交差点に接近する第2の対向車両が存在し、前記第2の対向車両が前記交差点手前で停止した場合に、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率を加算する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法。
【請求項5】
前記第1の対向車両の速度が予め設定された速度の所定値以上の場合に、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率を加算する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法。
【請求項6】
前記第1の対向車両と前記交差点の中心との距離に基づいて、前記第1の対向車両と前記交差点との距離を算出する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法。
【請求項7】
前記交差点手前の停止線の位置を検出し、
前記第1の対向車両と前記停止線との距離に基づいて、前記第1の対向車両と前記交差点との距離を算出する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法。
【請求項8】
前記自車両の走行経路が前記交差点を右折又は左折する前の道路の優先度が、前記自車両の走行経路が右折又は左折した先の道路の優先度より高い場合に、前記間隔及び前記距離に基づいて、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点に進入する確率を予測する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の他車挙動予測方法を用いた運転支援方法であって、
前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率を予測した結果に基づいて、前記自車両の走行を制御する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項10】
前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率が、第1の所定値以上第2の所定値未満の場合に、前記自車両の減速を開始する
ことを特徴とする請求項9に記載の運転支援方法。
【請求項11】
前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率が、2の所定値以上第3の所定値未満の場合に、前記自車両を徐行する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の運転支援方法。
【請求項12】
前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率が、3の所定値以上である場合に、前記自車両を前記交差点の手前で停止する
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項13】
自車両の走行経路を算出し、
前記自車両の走行経路上且つ、前記自車両から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、
前記交差点の手前において、自車両周囲の他車両の位置を検出し、
前記自車両の走行経路が前記交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両が存在する場合に、
前記自車両が前記交差点を進行する際に通過する自車通過領域と、前記第1の対向車両が前記交差点を進行する際に通過すると予測される他車通過領域を算出し、
前記自車通過領域と前記他車通過領域との間隔を算出し、
前記第1の対向車両と前記交差点との距離を算出し、
前記間隔及び前記距離に基づいて、前記第1の対向車両が前記自車両よりも先に前記交差点を進行する確率を予測する
ことを特徴とする他車挙動予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他車挙動予測方法、他車挙動予測装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非優先道路と優先道路とが交差する交差点の手前において、非優先道路上の車両が所定時間以上停車していると判定された場合に、非優先道路上の車両が停車していることを表す情報を優先道路上の車両の運転者に伝達する交差点譲り合い支援システムが記載されている。この交差点譲り合い支援システムは、非優先道路上の車両が所定時間以上停車している場合に、譲り合いのために交差点の手前で停止すべきことを要求する情報を優先道路上の車両の運転者に伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-251759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている交差点譲り合い支援システムは、非優先道路上の車両が交差点の手前において所定時間以上停車していない場合は、優先道路上の車両の運転者に、譲り合いを要求する情報を伝達しない。このため、自車両が交差点を右左折する際に、右左折先の道路上に存在する対向車両が交差点の手前において停止せずに交差点を進行する場合には、自車両は交差点への進行を対向車両に譲る判断ができない。その結果、自車両と対向車両との接近によって運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、自車両が交差点を右折又は左折する際に、右折又は左折先の道路上の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測して、交差点への進行を対向車両に譲るか否かを判断することができる他車挙動予測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる挙動予測方法は、自車両の走行経路を算出し、自車両の走行経路上且つ、自車両から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、交差点の手前において、自車両周囲の他車両の位置を検出する。走行経路が交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両が存在する場合に、自車両が交差点を進行する際に通過する自車通過領域と、第1の対向車両が交差点を進行する際に通過すると予測される他車通過領域を算出し、自車通過領域と他車通過領域との間隔を算出し、第1の対向車両と交差点との距離を算出する。間隔及び距離に基づいて、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両が交差点を右折又は左折する際に、右折又は左折先の道路上の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測して、交差点への進行を対向車両に譲るか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る他車挙動予測装置及び運転支援装置の機能ブロック図である。
図2A図2Aは、本発明の実施形態に係る他車挙動予測方法が適用されるシーンの一例を説明する図である。
図2B図2Bは、本発明の実施形態に係る他車挙動予測方法が適用されるシーンの一例を説明する図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係る他車挙動予測方法が適用されるシーンの一例を説明する図である。
図3B図3Bは、本発明の実施形態に係る他車挙動予測方法が適用されるシーンの一例を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る他車挙動予測装置及び運転支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図4のステップS07の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る他車挙動予測方法が適用されるシーンの一例を説明する図である。
図7図7は、図4のステップS07の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[運転支援装置の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る運転支援装置の構成を説明する。運転支援装置は、物体検出装置1と、自車位置推定装置3と、地図記憶装置4と、マイクロコンピュータ100とを備える。
【0011】
物体検出装置1は、自車両31に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、自車両31の周囲の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両31の周囲における物体を検出する。物体検出装置1は、例えば、他車両、バイク、自転車、歩行者、障害物などの自車両31に対する位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。物体検出装置1は、検出結果として、例えば自車両31の上方の空中から眺める天頂図(平面図ともいう)において、物体の2次元の位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する。なお、自車両31及び自車両周囲の他車両やバイクなどの車両が互いに通信可能な通信装置を備える場合には、物体検出装置1は自車両周囲の他車両やバイクとの間で通信(車車間通信)を行うことによって、自車両周囲の他車両やバイクなどの車両の位置、姿勢、大きさ、速度などを取得してもよい。
【0012】
自車位置推定装置3は、自車両31に搭載された、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど自車両31の絶対位置を計測する位置検出センサを備える。自車位置推定装置3は、位置検出センサを用いて、自車両31の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両31の位置、姿勢及び速度を計測する。
【0013】
地図記憶装置4は、自車両31が走行する道路の構造を示す地図情報を記憶する。地図記憶装置4は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより外部の地図データサーバから地図情報を取得してもよい。地図記憶装置4が記憶する地図情報には、道路及び道路上の車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。なおここで、道路とは単一車線あるいは走行方向が共通する複数車線を含んだ車両の走行領域を意味し、車線とは道路上をレーンマーカーで区画した走行領域を意味する。
【0014】
マイクロコンピュータ100(制御部の一例)は、自車両31の走行経路を算出し、算出した走行経路に沿った自車両31の走行を支援する。マイクロコンピュータ100は、自車両31周囲の他車両の位置を検出し、自車両31の走行経路が交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両32が存在する場合に、第1の対向車両32の挙動を予測し、第1の対向車両32の挙動を予測した結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。
【0015】
なお、実施形態では、マイクロコンピュータ100は、自車両31を制御する運転支援装置の例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、マイクロコンピュータ100は、第1の対向車両32の挙動を予測する他車挙動予測装置としても実施可能である。つまり、マイクロコンピュータ100は、自車両31の走行経路算出及び走行経路に沿って走行する自車両31の制御を行なわず、第1の対向車両32の挙動を予測した結果を最終出力してもよい。
【0016】
マイクロコンピュータ100は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータ100には、運転支援装置として機能させるためのコンピュータプログラム(運転支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータ100は、運転支援装置が備える複数の情報処理回路(2、5、6、10、21)として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって運転支援装置が備える複数の情報処理回路(2、5、6、10、21)を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(2、5、6、10、21)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(2、5、6、10、21)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(2、5、6、10、21)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0017】
マイクロコンピュータ100は、複数の情報処理回路(2、5、6、10、21)として、物体検出統合・追跡部2と、地図内自車位置推定部5と、自車経路算出部6と、他車挙動予測部10と、車両制御部21とを備える。更に、他車挙動予測部10は、交差点検出部11と、周囲車両検出部12と、通過領域間隔算出部13と、他車交差点間距離算出部14と、他車先行確率予測部15とを備える。なお、第1の対向車両32の挙動を予測する他車挙動予測装置として実施する場合、情報処理回路(車両制御部21)は不要である。
【0018】
物体検出統合・追跡部2は、物体検出装置1が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の位置、姿勢、大きさ、速度から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の位置、姿勢、大きさ、速度を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
【0019】
物体検出統合・追跡部2は、物体検出装置1によって検出された物体を追跡する。具体的に、異なる時刻に出力された物体の位置、姿勢、大きさ、速度などから、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度情報を推定する。なお、異なる時刻に出力された物体の位置、姿勢、大きさ、速度などは、マイクロコンピュータ100内のメモリに記憶され、後述する他車両の検出及び他車走行経路51の算出に用いられる。なお、自車両31と自車両周囲の他車両やバイクなどの車両との間で通信(車車間通信)を行うことが可能である場合には、自車両周囲の他車両やバイクから各車両固有のIDを受信して、受信したIDに基づいて物体の同一性を検証することが可能である。
【0020】
地図内自車位置推定部5は、自車位置推定装置3により得られた自車両31の絶対位置及び姿勢と、地図記憶装置4に記憶された地図データから、地図上における自車両31の位置及び姿勢を推定する。そして、地図内自車位置推定部5は、自車両31が走行している道路を特定する。なお、地図内自車位置推定部5は、自車両31が走行する車線をさらに特定してもよい。
【0021】
自車経路算出部6は、地図内自車位置推定部5により得られた地図上の自車両31の位置から、地図上の自車両31の目的地までの、自車両31が走行する道路単位の走行経路(自車走行経路41)を算出する。なお、自車経路算出部6は、自車両31が走行する車線単位の走行経路を算出してもよい。
【0022】
他車挙動予測部10は、自車走行経路41上且つ、自車両31から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、当該交差点の手前において、自車両31周囲の他車両の位置を検出し、自車走行経路41が当該交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在する場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に当該交差点を進行する確率を予測する。他車挙動予測部10は、交差点検出部11と、周囲車両検出部12と、通過領域間隔算出部13と、他車交差点間距離算出部14と、他車先行確率予測部15と、を備える。以下に、他車挙動予測部10の具体的な構成を説明する。
【0023】
交差点検出部11は、自車経路算出部6により得られた自車走行経路41の情報に基づいて、自車走行経路41上且つ、自車両31の現在位置から自車両の走行経路上で所定距離内に存在する交差点の位置を検出する。交差点検出部11は、自車走行経路41が当該交差点で右折又は左折するか否かを判定する。
【0024】
周囲車両検出部12は、交差点検出部11により検出された交差点の手前において、自車両31周囲の他車両の位置を検出する。具体的には、周囲車両検出部12は、自車走行経路41が、交差点検出部11により検出された交差点を右折又は左折する場合に、当該交差点の手前において、物体検出統合・追跡部2より得られた検出結果の情報を取得する。そして、取得した物体の位置、姿勢、大きさ、速度から、当該物体が他車両であるか否かを判断する。周囲車両検出部12は、自車両31の周囲に存在する他車両の位置と、地図上における自車両31の位置とから、地図上における他車両の位置を特定する。そして、周囲車両検出部12は、自車走行経路41が交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両32が存在するか否かを判定する。
【0025】
通過領域間隔算出部13は、自車走行経路41が交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在する場合に、第1の対向車両32の位置、姿勢、速度及び道路構造に基づいて、第1の対向車両32の動作意図を予測し、当該交差点における第1の対向車両32の走行経路(他車走行経路51)を算出する。そして、自車両31が交差点を進行する際に通過する自車通過領域42と、第1の対向車両32が交差点を進行する際に通過すると予測される他車通過領域52を算出し、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔を算出する。
【0026】
具体的には、通過領域間隔算出部13は、地図上の交差点における道路構造と、自車走行経路41と、自車両31の車幅とに基づいて、自車両31が交差点を右折又は左折する自車走行経路41を走行する場合に自車両31が通過する領域である、自車通過領域42を算出する。さらに、通過領域間隔算出部13は、地図上の交差点における道路構造と、他車走行経路51と、第1の対向車両32の大きさ(車幅)とに基づいて、第1の対向車両32が交差点において他車走行経路51を走行する場合に通過すると予測される領域である、他車通過領域52を算出する。そして、通過領域間隔算出部13は、自車通過領域42と他車通過領域52の最も近い間隔を、自車通過領域42と他車通過領域52の間隔61として算出する。
【0027】
他車交差点間距離算出部14は、自車走行経路41が交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両32が存在する場合に、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出する。他車交差点間距離算出部14は、地図上における第1の対向車両32の位置と、地図上の交差点における道路構造とに基づいて、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出する。他車交差点間距離算出部14は、例えば、第1の対向車両32と、交差点の中心との距離に基づいて、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出する。また、他車交差点間距離算出部14は、例えば、交差点の手前の停止線の位置を検出し、第1の対向車両32と、停止線との距離に基づいて、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出してもよい。この場合、他車交差点間距離算出部14は、停止線と交差点の中心との距離から、第1の対向車両32と停止線との距離を減ずることにより、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出してもよい。なお、交差点の手前の停止線の代わりに、交差点の手前の横断歩道の位置や、交差点の入り口の縁石の位置を検出してもよく、第1の対向車両32と交差点との距離71の算出方法は特に限定されない。
【0028】
他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52の間隔61と、第1の対向車両32と交差点との距離71とに基づいて、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率を予測する。他車先行確率予測部15は、間隔61が予め設定された間隔の所定値未満且つ、距離71が予め設定された距離の所定値未満である場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が、自車両31が第1の対向車両32よりも先に交差点を進行する確率よりも高いと予測する。以下、他車先行確率予測部15による他車挙動予測方法の一例について、図2A図2B及び図3A図3Bを参照して説明する。
【0029】
[他車挙動予測方法]
図2A及び図2Bにおいては、自車両31の自車走行経路41が交差点を左折し、自車走行経路41が左折した先の道路上に、第1の対向車両32が存在する。図2Aにおいては、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が狭く、第1の対向車両32は交差点に近い位置に存在する。このため、自車両31がこのまま交差点を進行すると、第1の対向車両32が自車両31よりも先、或いは自車両31と同時に交差点を進行し、自車両31と第1の対向車両32が接近するおそれがある。
【0030】
一方、図2Bにおいては、図2Aと同様に、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61は狭い。しかし、第1の対向車両32は、図2Aよりも交差点から遠い位置に存在している。このため、自車両31がこのまま交差点を進行しても、第1の対向車両32は自車両31よりも後に交差点を進行することが予測され、自車両31と第1の対向車両32とが接近する可能性は低い。
【0031】
そこで、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が予め設定された間隔の所定値未満であるという条件(以下、条件1という)と、第1の対向車両32と交差点との距離71が予め設定された距離の所定値未満であるという条件(以下、条件2という)を共に満たした場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が高いと予測する。そして、条件1または条件2の少なくとも一方を満たさない場合には、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が低いと予測する。
【0032】
例えば、図2Aにおいて、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満と判定し、第1の対向車両32と交差点との距離71が、予め設定された距離の所定値未満と判定する。この場合、条件1と条件2を共に満たすため、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が高いと予測する。
【0033】
一方図2Bにおいては、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満と判定し、第1の対向車両32と交差点との距離71が予め設定された距離の所定値以上と判定する。この場合、条件1を満たすが、条件2を満たさないため、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が低いと予測する。
【0034】
また、図3A及び図3Bにおいては、自車両31の自車走行経路41が交差点を右折し、右折先の道路上に第1の対向車両32が存在する。図3Aにおいて、他車先行確率予測部15は、図2Aと同様に、条件1及び条件2を満たすと判定する。そして、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が高いと予測する。
【0035】
一方図3Bにおいては、他車先行確率予測部15は、図2Bと同様に、条件1を満たすが、条件2を満たさないと判定する。そして、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が低いと予測する。
【0036】
車両制御部21は、他車挙動予測部10が、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率を予測した結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。車両制御部21は、他車先行確率予測部15が、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が、自車両31が第1の対向車両32よりも先に交差点を進行する確率よりも高いと予測した場合には、交差点の手前で停止し、第1の対向車両32に交差点の進行を譲るように、自車両31のアクチュエータを制御する。車両制御部21は、他車先行確率予測部15が、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が、自車両31が第1の対向車両32よりも先に交差点を進行する確率よりも低いと予測した場合には、第1の対向車両32に交差点の進行を譲ることなく、交差点を進行するように、自車両31のアクチュエータを制御する。
【0037】
また、車両制御部21は、自車走行経路41が交差点で右折又は左折しない場合や、自車走行経路41が右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在しない場合など、他車挙動予測部10が図5の処理を途中で終了した場合には、自車走行経路41に沿ってそのまま交差点を進行するように、自車両31のアクチュエータを制御する。なお、アクチュエータには、ブレーキアクチュエータ、アクセルアクチュエータ、ステアリングアクチュエータなどが含まれる。
【0038】
[運転支援処理の手順]
次に、図4及び図5のフローチャートを参照し、本実施形態に係る運転支援装置を用いた運転支援処理の手順の一例を説明する。なお、第1の対向車両32の動作を予測する他車挙動予測装置として図1のマイクロコンピュータ100を用いることにより、図4のステップS07に示す処理動作の結果を最終出力する他車挙動予測処理として実施することができる。
【0039】
先ず、図4のステップS01において、物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両31の周囲における物体の挙動を検出する。ステップS02に進み、物体検出統合・追跡部2は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。そして、検出及び統合された各物体を追跡する。
【0040】
ステップS03に進み、自車位置推定装置3は、位置検出センサを用いて、所定の基準点に対する自車両31の位置、姿勢及び速度を計測する。ステップS04に進み、地図記憶装置4は、自車両31が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。
【0041】
ステップS05に進み、地図内自車位置推定部5は、ステップS03で計測された自車両31の位置、及びステップS04で取得された地図データから、地図上における自車両31の位置及び姿勢を推定する。
【0042】
ステップS06に進み、自車経路算出部6は、地図内自車位置推定部5により得られた地図上の自車両31の位置から、地図上の自車両31の目的地までの、自車両31が走行する道路単位の走行経路(自車走行経路41)を算出する。
【0043】
ステップS07に進み、他車挙動予測部10は、自車走行経路41上且つ、自車両31から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、当該交差点の手前において、自車両31周囲の他車両の位置を検出し、自車走行経路41が当該交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在する場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に当該交差点を進行する確率を予測する。ステップS07の詳細を、図5を参照して説明する。
【0044】
先ず、ステップS701において、交差点検出部11は、自車経路算出部6により得られた自車走行経路41の情報に基づいて、自車走行経路41上且つ、自車両31の現在位置から所定距離内に存在する交差点の位置を検出する。交差点検出部11は、自車走行経路41が、当該交差点で右折又は左折するか否かを判定する。自車走行経路41が、当該交差点で右折又は左折する場合(ステップS702でYES)には、処理はステップS703に進む。一方、自車走行経路41が、当該交差点で右折又は左折しない場合(ステップS702でNO)には、他車挙動予測部10は図5の処理を終了する。これにより、図4のステップS07が終了する。
【0045】
ステップS703において、周囲車両検出部12は、交差点検出部11により検出された交差点の手前において、自車両周囲の他車両の位置を検出する。処理はステップS704に進み、周囲車両検出部12は、自車走行経路41が交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在するか否かを判定する。交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在する場合(ステップS704でYES)には、処理はステップS705に進む。一方、交差点を右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在しない場合(ステップS704でNO)には、他車挙動予測部10は図5の処理を終了する。これにより、図4のステップS07が終了する。
【0046】
ステップS705において、通過領域間隔算出部13は、第1の対向車両32の位置、姿勢、速度及び道路構造に基づいて、第1の対向車両32の動作意図を予測し、当該交差点における他車走行経路51を算出する。通過領域間隔算出部13は、地図上の交差点における道路構造と、自車走行経路41と、自車両31の車幅とに基づいて、自車通過領域42を算出する。処理はステップS706に進み、通過領域間隔算出部13は、地図上の交差点における道路構造と、他車走行経路51と、第1の対向車両32の大きさ(車幅)とに基づいて、他車通過領域52を算出する。処理はステップS707に進み、通過領域間隔算出部13は、自車通過領域42と他車通過領域52の間隔61を算出する。
【0047】
処理はステップS708に進み、他車交差点間距離算出部14は、地図上における第1の対向車両32の位置と、地図上の交差点における道路構造とに基づいて、第1の対向車両32と交差点との距離71を算出する。
【0048】
処理はステップS709に進み、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満か否かを判定する。自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満の場合(ステップS709でYES)には、処理はステップS710に進む。一方、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値以上の場合(ステップS709でNO)には、処理はステップS712に進む。
【0049】
ステップS710において、他車先行確率予測部15は、交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値未満か否かを判定する。交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値未満の場合(ステップS710でYES)には、処理はステップS711に進む。一方、交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値以上の場合(ステップS710でNO)には、処理はステップS711に進む。
【0050】
ステップS711において、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が、自車両31が第1の対向車両32よりも先に交差点を進行する確率よりも高いと予測し、図5の処理を終了する。ステップS712においては、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が、自車両31が第1の対向車両32よりも先に交差点を進行する確率よりも低いと予測し、図5の処理を終了する。これにより、図4のステップS07が終了する。
【0051】
図4のステップS08に進み、車両制御部21は、他車挙動予測部10が、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率を予測した結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。また、車両制御部21は、自車走行経路41が交差点で右折又は左折しない場合や、自車走行経路41が右折又は左折した先の道路上に第1の対向車両32が存在しない場合など、他車挙動予測部10が図5の処理を途中で終了した場合には、自車走行経路41に沿ってそのまま交差点を進行するように、自車両31のアクチュエータを制御する。
【0052】
なお、通過領域間隔算出部13は、第1の対向車両32の位置、姿勢、速度及び道路構造に基づいて、第1の対向車両32が交差点を右折する場合、左折する場合、直進する場合など、第1の対向車両32が走行する可能性がある全ての他車走行経路及び他車通過領域を算出し、自車通過領域42と複数の他車通過領域の各々との間隔を算出してもよい。この場合、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と、複数の他車通過領域の各々との間隔のいずれかが、予め設定された間隔の所定値未満か否かを判定してもよい。
【0053】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0054】
本実施形態に係る他車挙動予測方法は、自車両の走行経路を算出し、自車両の走行経路上且つ、自車両から所定距離内に存在する交差点の位置を検出し、交差点の手前において、自車両周囲の他車両の位置を検出する。自車両の走行経路が交差点を右折又は左折した先の道路上に、第1の対向車両が存在する場合に、自車両が交差点を進行する際に通過する自車通過領域と、第1の対向車両が交差点を進行する際に通過すると予測される他車通過領域を算出し、前記自車通過領域と前記他車通過領域との間隔を算出し、第1の対向車両と交差点との距離を算出する。そして、間隔及び距離に基づいて、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測する。
【0055】
これにより、自車両が交差点を右折又は左折する際に、自車通過領域と他車通過領域との間隔及び右折又は左折先の道路上の対向車両と交差点との距離とに基づいて、対向車両が自車両よりも先に交差点に進行する確率を予測して、自車両が交差点への進行を対向車両に譲るか否かを判断して、自車両の走行支援を実施することができる。その結果、交差点の右左折時に自車両と対向車両とが接近し、自車両の運転者に違和感を与えることを抑制できる。また、自車両が交差点への進行を対向車両に譲ることにより、対向車両が交差点を通過するのに要する時間を短縮できる。自車両が交差点への進行を対向車両に譲らなくてよい場合には、自車両がスムーズに交差点に進行でき、自車両が交差点を通過するのに要する時間を短縮できる。
【0056】
また、本実施形態に係る他車挙動予測方法は、自車通過領域と他車通過領域との間隔が予め設定された間隔の所定値未満且つ、第1の対向車両と交差点との距離が予め設定された距離の所定値未満である場合に、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が、自車両が第1の対向車両よりも先に交差点を進行する確率よりも高いと予測する。これにより、自車通過領域と他車通過領域との間隔が所定値未満且つ、第1の対向車両と交差点との距離が所定値未満の場合に、交差点への進行を第1の対向車両に譲ることを判断して、自車両の走行支援を実施することができる。また、自車通過領域と他車通過領域との間隔が所定値以上または、第1の対向車両と交差点との距離が所定値以上の場合には、交差点への進行を第1の対向車両に譲らないことを判断して、自車両の走行支援を実施することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る他車挙動予測方法は、第1の対向車両と交差点の中心との距離に基づいて、第1の対向車両と交差点との距離を算出する。あるいは、本実施形態に係る運転支援装置の他車挙動予測方法は、交差点手前の停止線の位置を検出し、
第1の対向車両と停止線との距離に基づいて、第1の対向車両と交差点との距離を算出してもよい。
【0058】
また、本実施形態に係る他車挙動予測方法を用いた運転支援方法は、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測した結果に基づいて、自車両の走行を制御させる。これにより、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が高い場合に、交差点への進行を第1の対向車両に譲るように自車両の走行を制御できる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る他車挙動予測方法は、自車両の走行経路が交差点を右折又は左折する前の道路の優先度が、自車両の走行経路が右折又は左折した先の道路の優先度より高い場合に、間隔及び距離に基づいて、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測してもよい。自車両の優先度が第1の対向車両の優先度が高い場合に、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を予測することにより、自車両の優先度が高いにも関わらず、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点に進行してきた場合であっても、第1の対向車両の挙動に応じて交差点への進行を第1の対向車両に譲ることを判断できる。その結果、交差点の右左折時に自車両と第1の対向車両が接近し、自車両の運転者に違和感を与えることを抑制できる。
【0060】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において、第1実施形態と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
第1実施形態に係る運転支援装置の他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が間隔の所定値未満であるという条件1と、第1の対向車両32と交差点との距離71が距離の所定値未満であるという条件2の2つの条件を満たした場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率が高いと予測した。そして、車両制御部21は、その予測結果に基づいて、自車両31の走行を制御した。
【0062】
これに対し、第2実施形態に係る運転支援装置の他車先行確率予測部15は、上述の条件1、条件2の2つの条件を満たした場合に、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率(以下、他車先行確率という)を加算する。さらに、他車先行確率予測部15は、条件1、条件2とは異なる、他車先行確率に影響を及ぼす条件をさらに設定してもよい。この場合、他車先行確率予測部15は、条件1、条件2とは異なる条件を1つ満たした場合に、他車先行確率を加算する。そして、他車先行確率予測部15は、全ての条件の判定が終了した時点での他車先行確率の値に応じた自車両31の制御方法を判断する。なお、他車先行確率予測部15は、他車先行確率の値ではなく、条件を満たすと判定された条件の組み合わせに基づいて、自車両31の制御方法を判断してもよい。
【0063】
そして、車両制御部21は、他車先行確率予測部15の判断結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。なお、その他の運転支援装置の構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0064】
[他車挙動予測方法]
以下、図6を参照して、第2実施形態に係る運転支援装置の他車挙動予測方法の一例について説明する。図6においては、自車両31の自車走行経路41が交差点を左折し、自車走行経路41が左折した先の道路上に、第1の対向車両32が存在する。そして、自車走行経路41が交差点を左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在し、第2の対向車両33は、交差点の手前で停止している。
【0065】
図6において、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61は狭く、第1の対向車両32は交差点に近い位置に存在する。他車先行確率予測部15は、例えば、条件1及び条件2を満たした場合に、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、他車先行確率に60%を加算する。
【0066】
また、図6においては、自車走行経路41が交差点を左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在するため、第1の対向車両32は、減速や一旦停止する可能性がある。これに対し、自車走行経路41が交差点を左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在しない場合には、第1の対向車両32が交差点を進行するうえでの障害物がないので、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。このため、他車先行確率予測部15は、自車走行経路41が交差点を左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在しないという条件(以下、条件3という)を満たした場合に、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、条件3を満たした場合に、他車先行確率に10%を加算する。
【0067】
さらに、第2の対向車両33は、交差点の手前において停止している。よって、第1の対向車両32が交差点を進行するうえでの障害物がなく、第1の対向車両32が自車両31よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。このため、他車先行確率予測部15は、自車走行経路41が交差点を左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在し、第2の対向車両33が、交差点手前で停止したという条件(以下、条件4という)を満たした場合に、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、条件4を満たした場合に、他車先行確率に10%を加算する。
【0068】
また、その他の条件として、第1の対向車両32の速度が速い場合には、第1の対向車両が交差点手前で停止する意図を持つ可能性が低いと考えられ、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。このため、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32の速度が予め設定された速度の所定値以上という条件(以下、条件5という)を満たした場合に、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、条件5を満たした場合に、他車先行確率に10%を加算する。
【0069】
他車先行確率予測部15は、条件1~5の判定が終了した時点の他車先行確率に応じた制御方法を判断する。例えば、他車先行確率予測部15は、他車先行確率が第1の所定値以上第2の所定値未満の場合に、自車両31の減速を開始させると判断する。
例えば、他車先行確率予測部15は、他車先行確率が60%以上70%未満の場合に、自車両31の減速を開始させると判断する。
【0070】
また、他車先行確率が第2の所定値以上第3の所定値未満の場合に、自車両31を徐行させると判断する。例えば、他車先行確率予測部15は、他車先行確率が70%以上80%未満の場合に、自車両31を徐行させると判断する。
【0071】
そして、他車先行確率が第3の所定値以上である場合に、自車両31を交差点の手前で停止させると判断する。例えば、他車先行確率予測部15は、他車先行確率が80%以上である場合に、自車両31を交差点の手前で停止させると判断する。車両制御部21は、他車先行確率予測部15の判断結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。
【0072】
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る運転支援装置の運転支援処理の一例について説明する。本実施形態に係る運転支援装置は、図4のステップS01~ステップS06と同じ処理を行う。そして、図4のステップS07において、図5のステップS701~ステップS708と同じ処理を行った後に、図7のステップS720~ステップS729の処理を行う。第2実施形態に係る運転支援処理のうち、第1実施形態と同じ処理については、説明を省略する。
【0073】
図7のステップS720において、他車先行確率予測部15は、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満か否かを判定する。自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値未満の場合(ステップS720でYES)には、処理はステップS721に進む。一方、自車通過領域42と他車通過領域52との間隔61が、予め設定された間隔の所定値以上の場合(ステップS720でNO)には、処理はステップS723に進む。
【0074】
ステップS721において、他車先行確率予測部15は、交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値未満か否かを判定する。交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値未満の場合(ステップS721でYES)には、処理はステップS722に進む。一方、交差点と第1の対向車両32との距離71が、予め設定された距離の所定値以上の場合(ステップS721でNO)には、処理はステップS723に進む。
【0075】
ステップS722において、他車先行確率予測部15は、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、他車先行確率の初期値0%に、60%を加算する。そして、処理はステップS723に進む。
【0076】
ステップS723において、他車先行確率予測部15は、自車走行経路41が交差点を右折又は左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在するか否かを判定する。自車走行経路41が交差点を右折又は左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在する場合(ステップS723でYES)には、処理はステップS725に進む。一方、自車走行経路41が交差点を右折又は左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両33が存在しない場合(ステップS723でNO)には、処理はステップS724に進む。
【0077】
ステップS724において、他車先行確率予測部15は、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、他車先行確率に10%を加算する。そして、処理はステップS727に進む。
【0078】
ステップS725において、他車先行確率予測部15は、第2の対向車両33が交差点手前で停止したか否かを判定する。第2の対向車両33が交差点手前で停止した場合(ステップS725でYES)には、処理はステップS726に進む。一方、第2の対向車両33が交差点手前で停止しない場合(ステップS725でNO)には、処理はステップS727に進む。
【0079】
ステップS726において、他車先行確率予測部15は、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、他車先行確率に10%を加算する。そして、処理はステップS727に進む。
【0080】
ステップS727において、他車先行確率予測部15は、第1の対向車両32の速度が予め設定された速度の所定値以上か否かを判定する。第1の対向車両32の速度が予め設定された速度の所定値以上の場合(ステップS727でYES)には、処理はステップS728に進む。一方、第1の対向車両32の速度が予め設定された速度の所定値未満の場合(ステップS727でNO)には、処理はステップS729に進む。
【0081】
ステップS728において、他車先行確率予測部15は、他車先行確率を加算する。他車先行確率予測部15は、例えば、他車先行確率に10%を加算する。そして、処理はステップS729に進む。
【0082】
ステップS729において、他車先行確率予測部15は、他車先行確率の値に応じた自車両31の制御方法を判断する。例えば、他車先行確率予測部15は、他車先行確率が、60%以上70%未満の場合に、自車両31の減速を開始すると判断する。他車先行確率が、70%以上80%未満の場合に、自車両31を徐行させると判断する。他車先行確率が、80%以上である場合に、自車両31を交差点の手前で停止させると判断する。そして、図7の処理を終了し、図4のステップS07を終了する。
【0083】
処理は図4のステップS08に進み、車両制御部21は、他車先行確率予測部15の判断結果に基づいて、自車両31の走行を制御する。
【0084】
[第2実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0085】
本実施形態に係る他車挙動予測方法は、自車両の走行経路が交差点を右折又は左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両が存在しない場合に、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点に進行する確率を加算する。自車両の走行経路が交差点を右左折する前の道路上に第2の対向車両が存在しない場合は、第1の対向車両が交差点を進行するうえでの障害物がないので、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。これにより、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率をより正確に予測できる。
【0086】
また、本実施形態に係る他車挙動予測方法は、自車両の走行経路が交差点を右折又は左折する前の道路上に、交差点に接近する第2の対向車両が存在し、第2の対向車両が交差点手前で停止した場合に、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率を加算する。自車両の走行経路が交差点を右左折する前の道路上に第2の対向車両が存在し、第2の対向車両が交差点手前で停止した場合は、他車が交差点を進行するうえでの障害物がなくなるので、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。これにより、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率をより正確に予測できる。
【0087】
本実施形態に係る他車挙動予測方法は、第1の対向車両の速度が予め設定された速度の所定値以上の場合に、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点進行する確率を加算する。第1の対向車両の速度が速い場合には、第1の対向車両が交差点手前で停止する意図を持つ可能性が低いと考えられ、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率がより高まると予測することができる。これにより、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率をより正確に予測できる。
【0088】
本実施形態に係る他車挙動予測方法を用いた運転支援方法は、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が、第1の所定値以上第2の所定値未満の場合に、自車両の減速を開始させる。第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が第1の所定値以上第2の所定値未満の場合に、自車両の減速を開始することができ、交差点への進行時に第1の対向車両と自車両が接近することを抑制できる。第1の対向車両と自車両が接近した場合のリスクを低減できる。
【0089】
本実施形態に係る他車挙動予測方法を用いた運転支援方法は、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が、第2の所定値以上第3の所定値未満の場合に、自車両を徐行させる。第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が第2の所定値以上第3の所定値未満の場合に、自車両を徐行することができ、交差点への進行時に第1の対向車両と自車両が接近することを抑制できる。第1の対向車両と自車両が接近した場合のリスクを低減できる。
【0090】
本実施形態に係る他車挙動予測方法を用いた運転支援方法は、第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が、第3の所定値以上である場合に、自車両を交差点の手前で停止させる。第1の対向車両が自車両よりも先に交差点を進行する確率が第3の所定値以上の場合に、自車両を交差点の前で停止することができ、交差点への進行時に第1の対向車両と自車両が接近することを抑制できる。
【符号の説明】
【0091】
31 自車両
41 自車走行経路(自車両の走行経路)
100 マイクロコンピュータ(運転支援装置)
32 第1の対向車両
42 自車通過領域
52 他車通過領域
61 間隔
71 距離
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7