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特許7612911トンネル内作業方法およびトンネル空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】トンネル内作業方法およびトンネル空調システム
(51)【国際特許分類】
   E21F 1/00 20060101AFI20250106BHJP
【FI】
E21F1/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024036423
(22)【出願日】2024-03-09
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 直広
(72)【発明者】
【氏名】藤井 顕悟
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓人
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154103(JP,A)
【文献】特開2013-189752(JP,A)
【文献】特開2018-031129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一坑口と第二坑口とを有するトンネル内において作業を行うトンネル内作業方法であって、
当該トンネル内において、有害物を発する有害作業と、有害物を発しない一般作業と、を行うにあたって、
当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流とした状態で、前記有害作業を実行している有害区域の風上となる第一側において前記一般作業を並行して実行する第一側安全作業と、
当該トンネル内の気流を、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流とした状態で、前記有害作業を実行している有害区域の風上となる第二側において前記一般作業を並行して実行する第二側安全作業と、があり、
前記第一側安全作業と前記第二側安全作業とを時間ごとに切り替えながらトンネル内作業を進行する
ことを特徴とするトンネル内作業方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替える空調システムを当該トンネルに設置し、
前記空調システムによって当該トンネル内の気流を前記第一方向気流と前記第二方向気流とで切り替え、
前記第一側安全作業と前記第二側安全作業とを時間ごとに切り替えながらトンネル内作業を進行する
ことを特徴とするトンネル内作業方法。
【請求項3】
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
当該トンネル内において前記第一坑口と前記第二坑口との中央または中央に近い領域から作業を開始し、その後、前記第一坑口と前記第二坑口との両方に向けて並行して作業を進行する
ことを特徴とするトンネル内作業方法。
【請求項4】
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
前記一般作業は、当該トンネル内に新管を引き込む作業であり、
前記有害作業は、引き込んだ前記新管を固定する作業である
ことを特徴とするトンネル内作業方法。
【請求項5】
一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、ユーザから操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、前記自装置から前記他装置への指示により、前記第一換気装置と前記第二換気装置とは連動して制御される
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【請求項6】
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転モード選択手段として、送気運転を選択する送気運転選択入力部と、排気運転を選択する排気運転選択入力部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転モード選択操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオフでかつ前記他装置も運転状態がオフであることを確認できた場合、当該自装置は、ユーザから受けた運転モード選択操作にしたがって送気運転モードおよび排気運転モードのうちの一方の運転モードに自装置の運転モードを設定するとともに、前記他装置に向けて、送気運転モードおよび排気運転モードの他方の運転モードに設定する運転モード設定指令を送信し、
前記他装置は、受信した運転モード設定指令にしたがって送気運転モードおよび排気運転モードのうちの他方の運転モードに設定する
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【請求項7】
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、ファンとモータとで気流を起こす換気機器と、その換気機器の動作を制御する制御部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転オン入力部を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転オン操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオフでかつ前記他装置も運転状態もオフであることを確認できた場合、当該自装置は、当該自装置の運転状態をオンにするとともに、前記他装置に向けて運転開始指令を送信し、
前記運転開始指令を受信した前記他装置が前記他装置の運転状態をオンにするとともに、前記自装置に向けて受信確認を送信し、前記他装置は、当該他装置の換気機器の送気運転および排気運転の他方を開始し、
前記自装置は、前記他装置からの受信確認を受信した後、前記自装置は、当該自装置の換気機器の送気運転および排気運転の一方を開始する
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【請求項8】
請求項7に記載のトンネル空調システムにおいて、
前記自装置は、トンネル内に設置された風速計の計測値の変化を確認した後、当該自装置の換気機器の送気運転および排気運転の一方を開始する
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【請求項9】
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、ファンとモータとで気流を起こす換気機器と、その換気機器の動作を制御する制御部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転オフ入力部を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転オフ操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオンでかつ前記他装置も運転状態がオンであることを確認できた場合、当該自装置は、当該自装置の換気機器を停止するとともに、前記他装置に向けて運転オフ指令を送信し、
前記運転オフ指令を受信した前記他装置の制御部が前記他装置の換気機器を停止するとともに、前記自装置に向けて受信確認を送信し、その後、前記他装置の運転状態をオフにし、
前記自装置は、前記他装置からの受信確認を受信した後、前記自装置は、当該自装置の運転状態をオフにする
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【請求項10】
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
トンネル内に設置された風速計の計測値の移動平均と、予め設定された風速の目標値と、とに基づいて、トンネル内風速が目標値で設定された範囲内になるように前記第一換気装置と前記第二換気装置とはフィードバック制御される
ことを特徴とするトンネル空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内作業方法およびトンネル空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貫通したトンネルに対し、修繕、改修、更生、点検や、あるいは、トンネル内事故の消火や障害物の除去といった作業が発生する。典型的な例としては、水道(上水道、下水道)管の更生工法として、老朽化した既設管の内側に新管を設置することで管路を更生させるパイプインパイプ(PIP)工法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6216690
【文献】特開2016-007910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管路更生工法の一つであるパイプインパイプ(PIP)工法を例に説明する。パイプインパイプ工法の一種として巻き込み管によるパイプインパイプ工法がある。巻き込み管によるパイプインパイプ工法は、既設管の径に近い径で内側に新管を設置できるので、少ない断面減少で老朽化した管路を更生できることから、管路更生としては望ましい工法である。ただし、新管を設置するにあたっては、新管を設置個所まで運搬するために、1度管の延長方向を切断してより小さい径に巻いて、設置個所で既設管の径より少し小さい径まで押し広げた上で、管軸方向および円周方向に溶接(接着)作業が必要であるから、溶接(接着)作業時、すなわち固定作業時に有害物質が生じる。このような有害物質の発生を伴う作業(有害作業)は、資格を有し、専門の訓練を受け(例えば、アーク溶接特別教育、ガス溶接議場講習、有機溶剤取扱責任者)、防護服や防塵マスクをした専門作業員が行うもので、有害作業を行っているときにはトンネル内に他の一般作業、すなわち有害物質の発生を伴わない作業を行う人員は入れない。そのため、巻き込み管によるパイプインパイプ工法は時間(日数)を要する工事であった。パイプインパイプ工法に限らず、トンネル内作業において作業員の安全衛生環境を確実に保ちながら複数の作業を並行的に行うことは難しいことである。そのため、新たにトンネルを掘るということでもないのに、既設のトンネルであってもやはりトンネル内の作業というのはどうしても工期を短縮することができない難工事であった。しかし、近年では人手が不足しているうえに改修工事を求められる管路の数は膨大である。
【0005】
貫通した長距離トンネルの換気制御は難しく、両坑口間の気温・気圧・風速等の差異により、風向すら変化する。また、これらの工事を実施するためには、風向の制御のみならず、労働安全衛生規則(寒期)の上限値1.0m/秒を超えずに、同時作業を行うために必要となる最小換気量から定まる最小風速(例えば本実施例では)0.8m/秒以上を維持しなければならない。したがって、外部要因(天候・気候)の影響を受けつつも、常に風速を一定に保つ制御システムが求められる。
【0006】
本発明の目的は、作業員の安全衛生を確実に保ちつつも工期を画期的に短縮できるトンネル内作業方法、およびそのためのトンネル空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のトンネル内作業方法は、
一坑口と第二坑口とを有するトンネル内において作業を行うトンネル内作業方法であって、
当該トンネル内において、有害物を発する有害作業と、有害物を発しない一般作業と、を行うにあたって、
当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流とした状態で、前記有害作業を実行している有害区域の風上となる第一側において前記一般作業を並行して実行する第一側安全作業と、
当該トンネル内の気流を、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流とした状態で、前記有害作業を実行している有害区域の風上となる第二側において前記一般作業を並行して実行する第二側安全作業と、があり、
前記第一側安全作業と前記第二側安全作業とを時間ごとに切り替えながらトンネル内作業を進行する
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のトンネル内作業方法は、
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替える空調システムを当該トンネルに設置し、
前記空調システムによって当該トンネル内の気流を前記第一方向気流と前記第二方向気流とで切り替え、
前記第一側安全作業と前記第二側安全作業とを時間ごとに切り替えながらトンネル内作業を進行する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のトンネル内作業方法は、
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
当該トンネル内において前記第一坑口と前記第二坑口との中央または中央に近い領域から作業を開始し、その後、前記第一坑口と前記第二坑口との両方に向けて並行して作業を進行する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のトンネル内作業方法は、
請求項1に記載のトンネル内作業方法において、
前記一般作業は、当該トンネル内に新管を引き込む作業であり、
前記有害作業は、引き込んだ前記新管を固定する作業である
ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のトンネル空調システムは、
一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、ユーザから操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、前記自装置から前記他装置への指示により、前記第一換気装置と前記第二換気装置とは連動して制御される
ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載のトンネル空調システムは、
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転モード選択手段として、送気運転を選択する送気運転選択入力部と、排気運転を選択する排気運転選択入力部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転モード選択操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオフでかつ前記他装置も運転状態がオフであることを確認できた場合、当該自装置は、ユーザから受けた運転モード選択操作にしたがって送気運転モードおよび排気運転モードのうちの一方の運転モードに自装置の運転モードを設定するとともに、前記他装置に向けて、送気運転モードおよび排気運転モードの他方の運転モードに設定する運転モード設定指令を送信し、
前記他装置は、受信した運転モード設定指令にしたがって送気運転モードおよび排気運転モードのうちの他方の運転モードに設定する
ことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のトンネル空調システムは、
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、ファンとモータとで気流を起こす換気機器と、その換気機器の動作を制御する制御部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転オン入力部を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転オン操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオフでかつ前記他装置も運転状態もオフであることを確認できた場合、当該自装置は、当該自装置の運転状態をオンにするとともに、前記他装置に向けて運転開始指令を送信し、
前記運転開始指令を受信した前記他装置が前記他装置の運転状態をオンにするとともに、前記自装置に向けて受信確認を送信し、前記他装置は、当該他装置の換気機器の送気運転および排気運転の他方を開始し、
前記自装置は、前記他装置からの受信確認を受信した後、前記自装置は、当該自装置の換気機器の送気運転および排気運転の一方を開始する
ことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載のトンネル空調システムは、
請求項7に記載のトンネル空調システムにおいて、
前記自装置は、トンネル内に設置された風速計の計測値の変化を確認した後、当該自装置の換気機器の送気運転および排気運転の一方を開始する
ことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載のトンネル空調システムは、
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは無線通信で通信接続されており、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、ファンとモータとで気流を起こす換気機器と、その換気機器の動作を制御する制御部と、を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とは、それぞれが、運転オフ入力部を有し、
前記第一換気装置と前記第二換気装置とのうちでユーザから運転オフ操作を受けた一方を自装置とし、他方を他装置とし、
前記自装置は、当該自装置自身の運転状態がオンでかつ前記他装置も運転状態がオンであることを確認できた場合、当該自装置は、当該自装置の換気機器を停止するとともに、前記他装置に向けて運転オフ指令を送信し、
前記運転オフ指令を受信した前記他装置の制御部が前記他装置の換気機器を停止するとともに、前記自装置に向けて受信確認を送信し、その後、前記他装置の運転状態をオフにし、
前記自装置は、前記他装置からの受信確認を受信した後、前記自装置は、当該自装置の運転状態をオフにする
ことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載のトンネル空調システムは、
第一坑口と第二坑口とを有するトンネルに設置され、当該トンネル内の気流を、前記第一坑口から前記第二坑口に向かう第一方向気流と、前記第二坑口から前記第一坑口に向かう第二方向気流と、で切り替えるトンネル空調システムであって、
前記第一坑口側に設置され、外気を前記第一坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第一坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第一換気装置と、
前記第二坑口側に設置され、外気を前記第二坑口から当該トンネル内に送り込む送気と、当該トンネル内空気を前記第二坑口から外気に排出する排気と、を切り替えて実行する第二換気装置と、を備え、
トンネル内に設置された風速計の計測値の移動平均と、予め設定された風速の目標値と、とに基づいて、トンネル内風速が目標値で設定された範囲内になるように前記第一換気装置と前記第二換気装置とはフィードバック制御される
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係るトンネル空調システムの構成を説明するための図である。
図2】第一操作盤を例示する図である。
図3】トンネル空調システムの動作の全体的な流れ図である。
図4】運転モード選択設定の手順を説明するための図である。
図5】トンネル空調システムの運転開始の手順を説明するための図である。
図6】トンネル空調システムの運転開始の手順を説明するための図である。
図7】風速フィードバック制御の動作手順を説明するための図である。
図8】風速フィードバック制御の動作手順を説明するための図である。
図9】トンネル空調システムの運転の停止の手順を説明するための図である。
図10】トンネル空調システムの運転の停止の手順を説明するための図である。
図11】気流の向きを切り替えながら管路更生作業を行う様子を例示する図である。
図12】気流の向きを切り替えながら管路更生作業を行う様子を例示する図である。
図13】気流の向きを切り替えながら管路更生作業を行う様子を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
なお、個々の実施形態を単独で実施するのみならず、二以上の実施形態を組み合わせて実施してもよいし、個々の実施形態で補足した変形の例は他の実施形態にも適用できる。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
本発明は、トンネル内作業を効率的に実行するためのトンネル内作業方法とトンネル空調システムとに関するものである。第一実施形態として、トンネル空調システムを説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るトンネル空調システムの構成を説明するための図である。トンネル10としては既設のトンネルであって、すでに貫通したトンネルがあるとする。貫通したトンネルに対し、修繕、改修、更生、点検や、あるいは、トンネル内事故の消火や障害物の除去といった作業が発生する。典型的な例としては、水道(上水道、下水道、農業用水)管の更生工法として、老朽化した既設管の内側に新管を設置することで管路を更生させるパイプインパイプ(PIP)工法などがある。
【0019】
トンネル10は、長く繋がっているものであるが、新管を引き込むために、数百メートルおきや数キロメートルおきに立坑を設け、それを地上に連通する坑口としている。すなわち、トンネルは、ある区間でみると、第一側の坑口である第一坑口11と、第二側の坑口である第二坑口12と、を有する。トンネル空調システム100は、換気装置110、120と、環境測定装置210、220と、を備える。
【0020】
トンネル空調システム100は、換気装置として、第一坑口11側に設置された第一換気装置110と、第二坑口12側に設置された第二換気装置120と、を備える。第一換気装置110と第二換気装置120との違いは設置場所の違いであって、構成は共通である。第一換気装置110を例に構成を説明する。
【0021】
第一換気装置110は、第一換気機111と、第一風管112と、第一風門113と、第一操作盤114と、第一制御部115と、を備える。
【0022】
第一換気機111は、ファンとモータとを有する。ここでは、一つのファンの回転方向を切り替えることで送気運転と排気運転とを切り替えることを想定しているが、送気専用機器と排気専用機器とを別個に備え、機器を切り替えて使用するようにしてもよい。
【0023】
第一換気機111は、立坑の外側に設置され、トンネル10内と第一換気機111とは第一風管112で繋がれている。
【0024】
第一風門113は隣のトンネル区間との仕切りとして坑口付近に設置された扉である。第一風門113または第二風門(第二坑口12の側の風門)123のうち少なくとも一方を閉じることで換気効率が上がる。なお、後述する第二実施形態の施工条件においては、送気側の風門を常時閉鎖することはできないので、風門を閉鎖する場合には、排気側の風門を閉じることを想定している。風門の開閉は手動でもよいし、制御器(例えば第一換気装置111の第一制御部115)が風門の開閉を制御するようにしてもよい。
【0025】
第一操作盤114は、トンネル10内で坑口11の付近に設置されている。図2に第一操作盤114を例示する。第一操作盤114には、オンオフボタン131/134と、運転モード選択ボタン132/133と、が設けられている。オンオフボタン131/134は、第一換気装置110の運転状態のオンオフ切り替えを行うボタン(入力部)である。オンボタン131とオフボタン134を別々にしても、一つのボタンで兼ねてもよい。また、オフボタン134のみとし、オンボタン131は運転モード選択ボタン132/133と兼ねてもよい。運転モード選択ボタン132/133として、送気運転を選択する送気運転選択ボタン132と、排気運転を選択する排気運転選択ボタン133と、が設けられている。
【0026】
第一操作盤114には、各種メッセージを表示する表示パネルがあるとよい。なお、ボタンではなく、タッチパネルになっていてもよい。
【0027】
第一制御部115は、第一換気機111の制御装置である。第一制御部115は、第一換気機111および第一操作盤114と通信接続され、第一操作盤114からの入力操作を受けて、自装置の第一換気機111の動作制御や、他装置(第二換気装置)120の第二制御部125との間の信号の送受信を行う。ここで、第一制御部115は、無線通信機を有し、他装置(第二換気装置)120の第二制御部125との間の信号の送受信を無線通信で行う。監視モニタ300との間の通信も無線通信で行うことを想定している。なお、一つの第一換気装置110のなかで第一制御部115と第一換気機111と第一操作盤114との間の通信接続は有線接続であってもよい。立坑のなかに通信ケーブルを引くことはできる。一方、一の坑口(第一坑口11)と他の坑口(第二坑口12)との間の距離は数百メートルや数キロメートルあるし、トンネル内には工事機材もあるし、トンネル内に新管を設置しなければならず、さらには、トンネル10の全線にわたって一の坑口(第一坑口11)と他の坑口(第二坑口12)との間を通信する通信ケーブルを設置すると、巻き込み管の拡径の時に通信ケーブルを断線する可能性があることから、トンネル内に有線ケーブルを引いて自装置(第一換気装置110)と他装置(第二換気装置120)との間の制御部同士を繋ぐことは難しい。また、トンネル10の上の地上は、市街地では道路になっていることが多いので、地上に有線ケーブルを引くことも難しい。さらに、耕作地の場合は耕作の支障になるし、森林等では動物による断線が懸念される。そこで、自装置(第一換気装置110)と他装置(第二換気装置120)との間の通信、自装置110(あるいは他装置120)と監視モニタ300との間の通信は、無線通信機を介して無線通信とすることが望ましい。
【0028】
トンネル空調システム100は、環境測定装置210、220として、第一坑口11側に設置された第一環境測定装置210と、第二坑口12側に設置された第一環境測定装置220と、を備える。第一環境測定装置210と第二環境測定装置220との違いは設置場所の違いであって、構成は共通である。第一環境測定装置210を例に構成を説明する。
【0029】
第一環境測定装置210は、第一風速計211と、第一粉塵計212と、を備える。
第一風速計211は、第一坑口11付近に設置するが、気流の乱れの影響を受けにくいように、坑口11から適当な距離(数メートルあるいは十数メートル、それでも気流が安定しない場合には数十メートル、例えば50メートル)内側に設置されていることが好ましい。第一風速計211は、時々刻々計測した風速値を自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御装置115)に送信してもよいし、(管理)単位時間ごとの平均(移動平均)風速を制御部115に送信するようにしてもよい。
同じく、第一粉塵計212も設置する。
第一環境測定装置210としては、その他、各種の、例えば二酸化炭素濃度計、一酸化炭素濃度計、酸素濃度計、硫化水素計などの、ガス濃度計などがあってもよい。第一環境測定装置210と、第一制御部115との通信は無線通信機を介した無線通信とすることを想定している。
【0030】
風速計211としては、風速の絶対値に加え、風向き(気流の向き)を判定できるものであることが望ましい。しかし、例えば第一実施形態では風速の下限を0.8m/秒に設定しており、かつ、トンネル10の両側の坑口(第一坑口11、第二坑口12)がともに立坑形式となっており、屋外の気流が直接トンネル10内に吹き込まない構造になっている。この状態で、坑内作業に必要とされる風速が、気象庁などが静穏状態と定めている風速の上限0.3m/秒を十分超過する場合には、風速制御中に風向が反転することは考えにくい。よって、ここでは(本トンネル空調システム100に用いる風速計211、221では)、風向を測定できなくても、風速の大きさが分かればよいとする。風向きは、換気装置の操作盤114(124)で設定したり切り替えたりできるようにし、制御目標値としては、風速の大きさに基づいてコントロールするのがよい。
【0031】
トンネル10からでた地上の管理室に監視モニタ300が設置されており、監視モニタ300は、換気装置(第一換気装置110、第二換気装置120)の運転状況や、環境測定装置(第一環境測定装置210、第二環境測定装置220)による計測値をモニタしたりする。また、トンネル内空調(風速)のフィードバック制御を行うにあたり、環境測定装置210、220による計測値(風速)に基づいて、換気装置(第一換気装置110、第二換気装置120)に制御指令を送る機能を監視モニタ300に追加してもよい。トンネル10内の換気状況をトンネル10から離れた場所にある工事事務所などから監視することもあることから、監視モニタ300と、換気装置(第一換気装置110、第二換気装置120)と、環境測定装置(第一環境測定装置210、第二環境測定装置220)と、の間の通信は無線通信機を介した無線通信とすることが好ましい。
【0032】
(トンネル空調システムの動作)
トンネル空調システムの動作を説明する。
図3がトンネル空調システムの動作の全体的な流れ図である。
まず、トンネル空調システムの運転状態をオンにする前に、前もって運転モードの選択設定をしておく(ST100)。ここで、運転モードとは、1)操作側が送気で相手側が排気、2)操作側が排気で相手側が送気、の2通りのモードを含む構成とする。このとき、1)および2)において、運転モードがオンであることは、操作側の第一換気機111と相手側の第二換気機121が操作側からの指示により連動して制御される運転状態のことを指し、連動して制御されていれば、第一換気機111または第二換気機121の少なくとも一方が停止している状態も含まれる。急激な気流の反転を防止するため、トンネル空調システム100による強制的な気流の切り替えはシステムの停止時に限って受け付けるようにしている。また、運転中に気流を切り替える操作を受け付けることとすると、無線通信の不具合(例えば通信ロストなど)があったときに、両側の換気装置の連動が崩れ、作業員がそのことに気付かないままだと事故につながる場合がある。
【0033】
(運転モードの選択設定)
運転モードの選択設定(ST100)で行われる制御の流れを図4に示す。
運転モードの選択設定(ST100)は、第一換気装置110の第一操作盤114でも第二換気装置120の第二操作盤124でもどちらでも受け付け可能とする。監視員は、予め決められた作業計画や、トンネル内の作業の進行状況をみて、トンネル内の風向きをどちらにするか判断し、近い方の操作盤で運転モードの選択操作を行う。例えば、第一坑口11にいる監視員が第一換気装置110の第一操作盤114の送気運転選択ボタン132を押すとする。つまり、第一坑口11から第二坑口12に向けて気流が流れる第一方向気流を選択するとする。
【0034】
第一換気装置110の第一制御部115が運転モード選択操作を受けたことを検知すると(ST110)、第一制御部115は空調システム100の運転状態がオフであるか否かを確認する(ST120)。自装置(第一換気装置110)の運転状況については自分自身のことであるからすでに認識している。他装置(第二換気装置120)の運転状況については、他装置120に対して問い合わせ(Ask)を送信し、他装置(第二換気装置120)の制御部(第二制御部125)からの返答を確認する。自装置110の運転状況がオフでかつ他装置120の運転状況がオフの場合、引き続き運転モードの設定を行うが、自装置110および他装置120の両方のオフを確認できない場合は、入力された運転モード選択操作を破棄する。この場合は、運転モード選択操作を受け付けない旨のメッセージを表示パネルに表示するとよい。
【0035】
自装置110の運転状態がオフならば他装置120も運転状態はオフのはずであるが、数百メートル離れた相手方の実際の状態は不明であり、そもそも電源が外れている、撤去されてしまっている、まだ設置されていない、など想定外の不都合なことは有り得る。したがって、他装置120の運転状況を問い合わせ、その回答を確実に受信して確認するのが望ましい。
【0036】
自装置および他装置の運転状態がオフであれば(ST120: YES)、自装置110の運転モードを指示に従って設定し(ここでは送気運転モード)(ST130)、他装置120に向けて対になる運転モード(ここでは排気運転モード)の設定を指令する(ST140)。
他装置120からの設定完了(ST150)報告を受領するようにするとなおよい。
【0037】
(運転の開始)
運転モードの選択設定が完了したら、運転の開始である(ST200)。運転の開始(ST200)で行われる、操作者の運転オンボタン131の押下から相手側の換気機(以下の事例では125)が作動し、自機側の換気機(以下の事例では115)が作動するまでの制御の流れを図5及び図6に示す。ここでは、運転開始を指示する運転オンボタン131が運転モード選択入力部(送気ボタン132や排気ボタン133)とは別個に操作盤114にあることを想定しているが、「運転オン入力部」としては、運転モード選択入力部(送気ボタン132や排気ボタン133)が運転オン入力部を兼ねていてもよい。この場合、運転モード選択操作が入力されて、運転モードの設定が完了した時点で、自動的に空調システムの運転開始動作に入るとする。
【0038】
運転オンの操作はどちらの換気装置110、120の操作盤114、124でも受け付けることができる。ここでは、監視員が第一換気装置110の第一操作盤114で運転オンボタン131を押すとする(ST210)。なお、制御指令を発する親機(マスター)と、親機の指令に従って作動する子機(スレーブ)の関係は、運転オンボタン131が操作された換気装置(この事例では第一換気装置110)が親機(マスター)とし、他装置を子機(スレーブ)とする。そして、一連の運転が停止するまで、他装置に向けて換気機の始動、停止、だけでなく、風量の増減を指令する。自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御部115)は、自装置110も他装置120も運転状態がオフであることを確認したうえで(ST220: YES)、自装置110の運転状態をオンにする(ST230)。そして、他装置(第二換気装置120)に向けて運転開始指令を送信する(ST240)。
【0039】
他装置(第二換気装置120)は、運転開始指令を受信すると、他装置(第二換気装置120)は運転状態をオンにする(ST310)。それと同時に、相手装置(ここでは第一換気装置110)に向けて受信確認を送信する(ST320)。
その上で、他装置(第二換気装置120)は、換気機(第二換気機125)の稼働を開始させる(ST330)。
ここでは、第二換気装置120はすでに排気運転モードに設定されているとし、すなわち、第二換気機121は排気運転を行う。
【0040】
最初の始動のときの出力や、風速の目標値については後述する。
【0041】
自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御部115)は、他装置120に運転開始指令を送信した後(ST240)、直ちに自装置110の換気機111の稼働を開始してもよいが、ここでは、他装置120が運転開始指令を受信した時に、他装置120の換気機121を先に稼働させ、相手側の風速計221の風速の変化を確認してから(ST260)、自装置110の換気機111の稼働を開始する(ST270)。
(風速の変化を判定する閾値は適宜設定される。)
なお、他装置120が自装置110からの運転開始指令を受信した時に、他装置の換気機121の稼働開始と同時に他装置120から自装置110に運転開始承諾信号を送信し、自装置110における運転開始承諾信号の受信(ST250)をもって自装置110の換気機111を稼働開始(ST270)してもよい。
さらには、他装置120が自装置110からの運転開始指令を受信した時に、他装置120は他装置120から自装置110に運転開始承諾信号の送信のみを行い、自装置110が他装置120からの運転開始承諾信号を受信したら、自装置110を稼働させるとともに、他装置120に運転開始信号を送信し、他装置120が自装置110からの運転開始信号を受信したら、他装置の換気機121の運転を開始するような、二重の制御信号による運転開始にしてもよい。
ここでは、第一換気装置110には送気運転モードが設定されているとし、第一換気機111は送気運転を行う。
【0042】
なお、風速計211、221の風速値は、第一制御部115と第二制御部125との間で直にやり取りできるようにしてもよいが、環境測定装置(例えば第一、第二風速計211、221)の計測値は監視モニタ300に集約しておき、換気装置110、120の制御部115、125は監視モニタ300に問い合わせるようにしてもよい。
【0043】
所定の時間が経過しても風速の変化が確認できない場合は、何かのエラーであるから自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御部115)は、操作盤114にメッセージを表示し、監視モニタ300にも報告する。
【0044】
(風速フィードバック制御ST400)
風速フィードバック制御(ST400)で行われる制御の流れを図7図8に示す。
第一換気装置110の第一換気機111と第二換気装置120の第二換気機121が稼働を開始したら、目標の風速になるように第一換気機111および第二換気機121のフィードバック制御が行われる。
ここでは、フィードバック制御は、自装置110側の第一制御部115によって実行されるとする。具体には、運転オンボタン131が操作された方が自装置をマスターとし、他装置をスレーブとして、他装置に向けて換気機の出力のアップまたはダウンを指令する。
【0045】
ただし、自装置110側の第一制御部115によらず、第二換気装置120の第二制御部125または監視モニタ300が第一換気機111および第二換気機121のフィードバック制御を行うとしてもよい。
【0046】
風速の目標値は、法規や作業内容を勘案して適宜設定される。
風速の目標値の下限値については、安全衛生上のことを考えれば、有害な粉塵等を外気に排気するため、風速は強ければ強いほど良いと言える。
本事例では、アーク溶接作業において発生する粉塵及び作業員の呼気に対して必要な換気量から求められる最小風速が0.8m/秒であるとする。
しかし一方で、風速の目標値の上限値については、農林水産省施設機械工事等共通仕様書の溶接作業禁止条件より、風速の上限値が2.0m/秒、さらに、本実施例では冬の農閑期施工であり、貫通した管路のため、管内の気温が10℃以下になる日があることから、労働安全衛生規則第601条第2項の低温の室内作業における風速の上限値である1.0m/秒が加わり、最大風速は1.0m/秒となる。以上より、本事例では、目標の風速の範囲を0.8m/秒以上1.0m/秒未満とする。このような点を勘案し、また、数百メートルや数キロメートルのトンネル内での厳密な風速制御を行うことの困難さを勘案し、目標の風速(目標の風速の範囲)は定められる。ここでは、制御目標値としての目標風速(以下目標値)は目標の風速の範囲の中央値である0.9m/秒、許容誤差は±0.1m/秒であるとする。
【0047】
風速計211、221は、両側の坑口付近に設置しているので、両方の風速計の風速計測値を統合的に使用してもよいが、ここでは、排気側の風速計221の風速計測値に基づいてフィードバック制御を行うことを想定している。なお、風速フィードバック制御(ST400)の時間間隔は、風量変更後の風速が落ち着くまでの時間を考慮し、1分おきに行うこととする。以下、図7図8に従い、風速フィードバック制御(ST400)で行われる制御の流れを示す。
【0048】
換気機(第一換気機111、第二換気機121)の最初の初動では、送気運転モードの換気機(ここでは第一換気機111)は断面積と目標の風速の積に相当する風量を初期風量として稼働を開始し、排気運転モードの換気機(第二換気機121)は排気側の初期風量は0でもよいが、停止状態から稼働するときに大きな電力を消費することから、排気側の初期風量は0でない最小出力で稼働を開始するとともに(ST401)、次の風量のフィードバック制御時刻である1分後までのタイマーを始動する(ST402)。このとき、目標風量が最大風速に近い場合には、最大出力に相当する風量を初期風量としてもよい。具体例としては、第一換気機111、第二換気機121とも、送気時の最大風量が150m3/分であり、排気時の最大風量が75m3/分である換気機を使用するものとする。そして、風速管理開始時、第一換気機111が送気時の最大風量である150m3/分で送気し、第二換気機121が、排気時の最大風量の1/8に相当する9m3/分で排気する状態から換気を開始するものとする(ST401)。ここで、本事例において、送気側の第一換気機111の初期の風量を送気における最大風量としたのは、本事例の内径1800mmの鋼管設置後の管路の断面積が2.5434 m2(=(1.8÷2)×(1.8/2)×3.14)であることから、管路内の損失がない条件の最大風量で送気したとしても、150÷2.5434÷60=0.98 m3/分となり、目標の風速の範囲の上限値である1.0m/秒を超過しないからである。また、排気側の第二換気機121の初期の風量を排気における最大風量の1/8としたのは、換気機は稼働開始時に大きな電力を消費するため、初期状態で排気側の第二換気機121を最小の出力で運転させておきたいこと、及び、後述する管路内の風速のフィードバック制御における排気側の風量変化量の1単位を最大風量の1/8と定め、風量の段階を風量0m3/分を含めた9段階としたことから、無風状態より1単位だけ風量のある9m3/分を排気側の初期状態としている。また、風門113、124が開いている場合も閉じている場合もあり、仮に両方の風門113、124が閉じている場合のことも想定すると、排気機の初期風量をゼロに設定するのは適切ではないとも考えられる。この時、排気側の一回(1単位)の風量増減量を9m3/分としたのは、排気側の最大換気量を8分割したときの風速変化量が、9÷2.5434÷60=0.06m/秒となり、目標風速の許容誤差である0.1m/秒より小さいことから、フィードバック制御の一回毎の増減値として適していると考えられるためである。
【0049】
タイマー始動後1分が経過したら(ST403)、タイマーを停止し、一分ごとに行う、フィードバック制御を開始する。本事例では、第二風速計の221風速計測値(一分ごとの移動平均)と目標値(0.9m/秒)とを対比する(ST404)。
【0050】
目標値-計測値が0以上のときは(ST404: YES)、トンネル内の実際の風速が目標値に比べて弱いということであり、図7のST405に進む。この場合、さらに、目標値-計測値が0.1以上ならば(ST405: YES)、実際の風速がかなり弱いことになり、図7のST406に進み、送気運転の換気機(ここでは例えば第一換気機111)の風量を一段階(+19m3/分)上げる(ST407)。ここで、設定した1単位は、換気機の送気運転時の最大風量である150m3/分を(排気運転時の1単位と同様に)8分割した値である(150÷8≒19 m3/分、19 m3/分÷2.5434m2÷60=0.125 m/秒に相当)。送気運転の換気機(ここでは例えば第一換気機111)が最大送気出力になっている場合(ST406: YES)、排気運転の換気機(ここでは例えば第二換気機121)の排気出力が最大(ここでは75m3/分)に達するまでは(ST408: NO)、図7のST409に進み、排気運転の換気機(第二換気機121)の出力を1単位(9m3/分)アップさせる(ST409)。そして、決定した風量にてフローの頭に戻り、1分間同じ風量で換気を行う(ST402、ST403)。風速の「目標値-計測値」が0m/秒以上0.1m/秒未満になるまでST402-ST409をループして繰り返すことで、最終的には第二風速計の221風速計測値、すなわち坑内の風速は目標の風速の範囲の中で安定する。風速の目標値を0.9m/秒に設定したから、風速0.8m/秒以上になるはずである。
【0051】
なお、仮に、送気も排気も最大出力で稼働しているにもかかわらず、風速が目標の範囲に入らない場合は例えば監視モニタ300から監視員にエラー報告をする(ST410)。
【0052】
目標値-計測値が0より小さいときは(ST404: NO)、トンネル内風速が目標に比べて強いことになる。この場合、さらに、目標値-計測値が-0.1m/秒よりさらに小さいならば(ST420: YES)、排気運転の換気機(第二換気機121)の排気出力が最小(ここでは9m3/分)に達するまでは(ST421: NO)、排気運転の換気機(第二換気機)の出力を1単位(9m3/分)ずつダウンさせる(ST422)。そして、決定した風量にてフローの頭(ST402)に戻り、1分間同じ風量で換気を行う。排気運転の換気機(第二換気機121)の排気出力が最小(ここでは9m3/分)に達していたら(ST421: YES)、送気運転の換気機(第一換気機111)の送気出力が最小(ここでは19m3/分)に達するまでは(ST423: NO)、送気運転の換気機(第一換気機111)の送気出力を一単位(19m3/分)減少させる(ST424)。そして、決定した風量にてフローの頭(ST401)に戻り、1分間同じ風量で換気を行う。風速の目標値-計測値が-0.1m/秒から0m/秒未満になるまで繰り返すことで、最終的には第二風速計221の風速計測値、すなわち坑内の風速は目標の風速の範囲の中で安定する。風速の目標値を0.9m/秒に設定したから、風速1.0m/秒以下になるはずである。
【0053】
なお、仮に、送気も排気も最小出力で稼働しているにもかかわらず、風速が目標の範囲に入らない場合(ST423: YES)は例えば監視モニタ300から監視員にエラー報告をする。
トンネル10が数百メートルや数キロメートルもあると、第一坑口11と第二坑口12とでは外の気圧や風速が想定外に違うことはあり、換気機111、121が正常に稼働していてもトンネル内の気流を所期の通りにコントロールできないことは有り得る。
【0054】
(運転の停止)
空調システム100の運転の停止(ST500)で行われる制御の流れを図9および図10に示す。空調システム100の運転の停止にあたって(ST500)、運転オフの操作はどちらの換気装置110、120の操作盤114、124でも受け付けることができる。ここでは、監視員が第一換気装置110の第一操作盤114で運転オフボタン134を押すとする(ST510)。自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御部115)は、自装置110も他装置120も運転状態がオンであること(すなわち、自装置110と他装置120が連動制御状態にあること)を確認したうえで(ST520: YES)、自装置(第一換気装置110)の換気機(第一換気機111)の稼働を停止する(ST530)。
そして、他装置(第二換気装置120)に向けて運転オフ指令を送信する(ST540)。
【0055】
他装置(第二換気装置120)は、運転オフ指令を受信する(ST550: YES)と、他装置(第二換気装置120)は換気機(第二換気機121)の稼働を停止する(ST610)。それと同時に、相手装置(ここでは第一換気装置110)に向けて受信確認を送信する(ST620)。その上で、他装置(第二換気装置120)は、運転状態をオフにする(ST630)。
【0056】
自装置(第一換気装置110)の制御部(第一制御部115)は、他装置120に運転オフ指令を送信した後、他装置(第二換気装置120)からの受信確認を確認して(ST550: YES)、自装置(第一換気装置)の運転状態をオフにする(ST560)。
【0057】
運転状態をオフにした後、気流の向きを変えて再始動したければ、運転モードの選択設定に戻り、運転モードの選択(気流の向きの選択)をして、運転を再開する。
【0058】
このようなトンネル空調システムによって、トンネル内の気流の向きを強制的に切り替えることができるようになった。このとき、上記に説明したトンネル内風速のフィードバック制御により、トンネル内の風速を自動で一定範囲内に保つことができるようになった。また、本実施形態によれば、数百メートルや数キロメートルも離れている換気装置同士を確実に連係させることができ、トンネル内作業員の安全および衛生を確保することができる。
【0059】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態を説明する。
(トンネル内作業)
第一実施形態で説明したトンネル空調システムによって気流の向きを切り替えながら、有害作業と一般作業とを並行的に行うことにより、トンネル内作業を効率的に行うことができる。ここでは、管路更生工法の一つであるパイプインパイプ(PIP)工法を例に説明する。パイプインパイプ工法の一種として巻き込み管によるパイプインパイプ工法がある。巻き込み管によるパイプインパイプ工法は、既設管の径に近い径で内側に新管を設置できるので、少ない断面減少で老朽化した管路を更生できることから、管路更生としては望ましい工法である。ただし、新管を設置するにあたっては、管軸方向および円周方向に溶接(接着)作業が必要であるから、溶接(接着)作業時に有害物質が生じる。このような有害物質の発生を伴う作業(有害作業)は、資格を有し、専門の訓練を受け、防護服や防塵マスクをした専門作業員が行うもので、有害作業を行っているときにはトンネル内に他の一般作業を行う人員は入れない。そのため、巻き込み管によるパイプインパイプ工法は時間(日数)を要する工事であった。
【0060】
本実施形態としては、トンネル空調システムによってトンネル内の気流の向きと風速をコントロールすることにより、有害作業が行われている区域の風上側では安全衛生環境を確実に確保できるようにして、有害作業と一般作業とをトンネル内で並行して行うことを提案する。これにより工期が画期的に短縮できる。
【0061】
巻き込み管によるパイプインパイプ工法では主に次の三つの工程がある。なお、巻き込み管が鋼製(巻き込み鋼管)の場合、この後、鋼管の内面を塗装する工程があるが、この工程は乾燥前の塗装面への埃などの付着を防止するため、上流側でも下流側でも他工程との同時作業は基本的に行わないことから、本実施例の説明では省略する。
(1) 引き込み設置工程(引き込み作業)
(2) 接続工程(接続作業)
(3) 裏込め工程
【0062】
(1) 引き込み設置工程では、管軸方向に切って小さく巻き込んだ新管をトンネル内に引き込んで、所定位置に置いて拡げて設置する。
(2) 接続工程では、まず管軸方向の切開部分を接続(溶接)して管にし、さらに既に設置されている新管に引き寄せて、円周方向を接続する。鋼管であれば溶接であるし、塩ビ管のような樹脂であれば有機溶剤で接着することになる。
(3) 裏込め工程は、既設老朽管と内側の新管との間にモルタル等を充填する工程である。
【0063】
接続工程が有害作業であり、また、一番時間がかかるクリティカルパスでもある。引き込み設置工程、及び、裏込め工程は、一般作業である。ここでは、一例として、一つの有害作業(一つの管の接続作業)に二時間掛かり、一つの一般作業(引き込み作業)に一時間掛かるとする。この時、トンネル内の気流を制御することで、有害作業と一般作業を同時に施工し、総作業時間(工期)を短縮することを考える。
【0064】
図11図12図13を参照しながら管路更生の手順を説明する。なお、図11から図13では、図のスペースの都合上、トンネル空調システム100を簡略化あるいは省略して示している。
トンネルの更生にあたって、第一坑口11と第二坑口12との中央部分から施工を開始する。図11において、トンネルの中央から新管を設置し、そして、中央から両側の坑口に向かって新管の設置が行われている。図11では、トンネルの中央から順次第一坑口11と第二坑口12の両側の坑口に向かって設置された新管の両端で、一番新しく置いた二つの新管の溶接を進行中である。このとき、図11において、第一坑口11から第二坑口12に向かう第一方向気流を確保するとする。すると、溶接を行っている区間の風上になる第一坑口11側は有害物質が無いので、一般作業を行うことができる。このとき、溶接を行っている区間の風上にあたる第一坑口11側で実施できる作業を第一側安全作業と呼ぶ。すなわち、第一坑口11から巻き込み新管を引き込んでトンネル内を運搬し、次の設置位置において拡げて置いておくことができる。
【0065】
そして、図12に示すように、気流の向きを変えて、第二坑口12から第一坑口11に向かう第二方向気流を確保するとする。すると、溶接を行っている区間の風上になる第二坑口12側は有害物質が無いので、一般作業を行うことができる。このとき溶接を行っている区間の風上にあたる第二坑口12側で実施できる作業を第二側安全作業と呼ぶ。すなわち、第二坑口12から巻き込み新管を引き込んでトンネル内を運搬し、次の設置位置において拡げて置いておくことができる。続いて、図13のように、第一坑口11から第二坑口12に向かう第一方向気流を確保し、風上になる第一坑口11側は有害物質が無いので、一般作業(例えば引き込み設置)を行うことができる。
【0066】
これにより、溶接作業を行っている間に、坑内の気流について、第一坑口11から第二坑口12に向かって風が流れる第一方向気流と、第二坑口12から第一坑口11に向かって風が流れる第二方向気流とを、交互に切り替えながら、気流の風上側で新管引き込み作業を行うことで、次に設置固定する新管を、トンネルの両側の坑口から運び入れることができる。そして、溶接作業は、引き込み作業がすでに終わっているので、待ち時間なく次の溶接作業をできる。このようにして従来よりも圧倒的に工事期間を短縮することができるようになる。
【0067】
上記の例では、有害作業の方が一般作業よりも時間が掛かることを想定したが、逆に、一般作業の方が有害作業よりも時間が掛かるとした場合でも、一般作業の方を継続しながら一般作業の方が風上になるように気流の向きを変えて、その風下側で有害作業を同時並行に実施できれば、やはり、工期は短縮できる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態の説明では、運転モードの選択(気流の向きの選択)や切り替えは、監視員が操作盤でマニュアル操作する場合を例に説明したが、作業内容の時間割や日割りが予め決まっていれば、それに合わせて運転プログラムを組んでおき、例えば、監視モニタや、第一制御部あるいは第二制御部に運転プログラムを格納しておいて、運転開始/停止、モード(気流の向き)切り替え、が自動的に行われるようにしてもよい。
さらには、本事例では、送風量を増加させる時には送気機の風量を先に最大にしてから排気機の風量を増加させているが、先に排気機の風量を最大にしてから送風機の風量を最大にしてもよい。同様に、本事例では、送風量を減少させる時には排気機の風量を先に最小にしてから送気機の風量を減少させているが、先に送気機の風量を最小にしてから排気機の風量を減少させてもよい。そして、送気機および排気機の最小風量については、起動時に大量の消費電力を消費することを踏まえて、送気機は最小値を19m3/分、排気機は9m3/分としたが、より大きな風量変化幅を確保するため、送気機、排気機の最小出力を0m3/分としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 トンネル
11 第一坑口
12 第二坑口
100 トンネル空調システム
110 第一換気装置
111 第一換気機
112 第一風管
113 第一風門
114 第一操作盤
131 オンボタン
132 送気運転選択ボタン
133 排気運転選択ボタン
134 オフボタン
115 第一制御部
120 第二換気装置
121 第二換気機
122 第二風管
123 第二風門
124 第二操作盤
125 第二制御部
210 第一環境測定装置
211 第一風速計
212 第一粉塵計
220 第二環境測定装置
221 第二風速計
222 第二粉塵計
300 監視モニタ
【要約】
【課題】作業員の安全衛生を確実に保ちつつも工期を短縮できるトンネル内作業方法を提供する。
【解決手段】トンネル内において、有害物を発する有害作業と、有害物を発しない一般作業と、を行うにあたって、トンネル内の気流を、第一坑口から第二坑口に向かう第一方向気流とした状態で、有害作業を実行している有害区域の第一側において一般作業を並行して実行する第一側安全作業と、トンネル内の気流を、第二坑口から第一坑口に向かう第二方向気流とした状態で、有害作業を実行している有害区域の第二側において一般作業を並行して実行する第二側安全作業と、があり、第一側安全作業と第二側安全作業とを時間ごとに切り替えながらトンネル内作業を進行する。
【選択図】図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13